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カラー版 宇宙を読む (中公新書) 谷口義明
2006年発刊の科学・技術分野の新書です。著者は東北大学理学部天文学科卒の専門家で他にも著書がいくつかあります。
天文学や星座にはあまり興味はないのですが、それでも冬の透き通った夜空に明るく拡がるオリオン座などを見ていると、諸行無常を感じたりする普通の感性を持っています。
新書では珍しく「カラー版」として、カラー写真を使って現代の技術で捕らえられた様々な星や銀河など、わかりやすく解説してくれています。
わかりやすく、と書きましたが、実は1/3ぐらいは私には理解不能でした。
というのも、天文学で使われる言葉(用語)は一種独特で、馴染みがなく、すぐにどこかへ飛んで行ってしまって覚えられません。年齢のせいもあるでしょうけど、、、
特に星やガス雲に存在している分子ガスやら、星から発せられる電磁波の波長についてどういう特性があって天文とどういう関係があるとか書かれてもちんぷんかんぷんです。
あとは、銀河の大きさ(天の川銀河の直径は10万光年)や、ひとつの銀河に含まれる星の数(天の川の場合、太陽のような恒星だけで2000億個以上)、太陽以外の恒星と地球との距離(一番近い恒星で4.3光年≒40兆km)とか、想像を遙かに超えて何千億個とか何百光年とかの値が次々と出てきて、なにかと比較できるようなものはなく(富士山の高さは東京タワー11個分とか)、イメージが作れません。
例えば太陽の寿命はおよそ100億年で、すでに46億年が経っているので、残りは50数億年で、その後は寿命が尽きて地球を含め惑星も終わると書かれていて、「そっか50億年後に地球はなくなるんだー」と、なにか焦燥感に襲われたり、「当たり前だけど何事にも終わりがあるのだなぁ」と哲学的になったり忙しいです。
でも、これは面白いです、お薦めです。知っておいてすぐ役に立つものではありませんが、大人の教養としてなかなかキラッと光るものがありそうです。星だけに。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
夏の情婦 (集英社文庫) 佐藤正午
過去に著者の作品を読んだと思ってましたが、調べると読むのはこれが初めてでした。本屋さんの棚でよく見かける名前でしたので、読んだことがあるとばかり思ってました。
そう言えば、著者の原作を元にした、1987年公開の映画「永遠の1/2」を見たことがあります。その時の記憶があったのかも知れません。
著者は私よりも二つ上のほぼ同年代の方で、「月の満ち欠け」で2017年の直木賞を受賞されています。
この作品は、「二十歳」「夏の情婦」「片恋」「傘を探す」「恋人」の5篇の短編集です。
どれも魅力的でしたが、特に「傘を探す」は予定調和的なコミカルな面があり、面白く読めました。
著者の出身地、佐世保が舞台と思われるものが多く、また大学を中退してアルバイトで生活していたりと著者自身の経験や思いを反映した作品となっています。
それにしてもどの短編の主人公も少しワルで女にもてて、「恋人」ではいかようにでもコントロールできる精力絶倫でという著者自身を反映しているとしたら羨ましい限りですが、小説ですから当然脚色はオーバー目ということなのでしょう。
著者としては1988年単行本、1993年文庫版という割と初期の作品で、変に手馴れたところはなく、一生懸命にマジメに書きました~ってところが見られる文章でした。
★★☆
◇著者別読書感想(佐藤正午)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
永遠の出口 (集英社文庫(日本)) 森絵都
著者の作品は以前「カラフル」(1998年)を読んでいます。2003年単行本、2006年文庫版発刊のこの作品は、小学3年生から高校を卒業するところまでの少女の青春物語?で、ちょっと還暦過ぎたおっさんが読むには無理がありました。
絵本作家としても活躍する著者ですから、子供の揺れ動く心理描写や淡い恋愛などはお手のものという感じですが、いったいこれはどういう人(読者層)向けに書いた小説なんだろう?とちょっと不思議に思いました。
甘酸っぱい自分の子供時代を思い浮かべてこの小説の主人公に感情移入しながら読むとしたら、20代~30代の女性かなぁと思いますが、現在50歳を超えている著者の子供時代を思い浮かべて描いていそうなので、当然携帯やスマホなんてものはないし、20代の人にはなかなか想像し難そうな青春時代です。
とすると、著者と同年代付近の女性向けなのか、う~む、よくわかりません。
タイトルは、「永遠に・・」という言葉に弱い妹が、姉からいつもからかうように「もう永遠に見られないからね」とか「永遠に食べられないから」と言われて悲しい思いをしていた子供時代から、永遠に残り続けるものはなにもないことを悟り、それでも永遠に憧れていくというファンタジー?かと思ってしまうような内容です。
主人公が高校3年生の時に、学園祭で天体ショーのガイドを務めることになり、基本的な天文の知識を学習していた時、「太陽系は50億年前にできて、50億年後には滅びる」ことを知ります。
ちょうど私も先日「宇宙を読む」を読み、同じことを知り、軽い衝撃を受けたばかりなので、なんとなく主人公がそのことで「永遠なんてないんだ」と悟ってしまうことは理解できます。
エピローグでは、高校卒業後の人生に少し触れていますが、結局はなにを言いたかった?というのはオジサンには最後までわからずじまいでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(森絵都)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
無人島に生きる十六人 (新潮文庫) 須川邦彦
最初に言っておきます。「これは凄い本を見つけた!」です。
著者の須川氏は、明治13年生まれ、商船学校を出て日露戦争、第一次世界大戦にも出征し、その後は東京高等商船学校など教育関係に従事されていた方です。
ここで書かれている話しは小説ではなく、直接遭難した関係者から話しを聞いて文章で起こした海洋ノンフィクションです。
無人島ものの小説や映画は数多くありますが、そのほとんどがフィクションやファンタジーもので、実際にそんなことはないだろうって思いますが、こうした(無人島で長期間生活後に生還)ことってあるのだなぁって感激しました。
過去に見た無人島映画の中で、特に印象に残っているのがトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」です。これはお勧めです。
個人的には夢とロマンあふれる無人島生活ものの小説や映画が大好きですが、実際の無人島生活の記録としては貴重で、しかも悲惨さはなく、希望を持って統制の取れた生活をおくり、日本人として誇らしく思える内容でした。
過去に無人島をテーマにした記事を書いています。こちらは夢やロマンではなく、実経済面での利用法提案ですけど。
無人島をもっと活用できないか? 2020/3/18(水)
さて、この本について、簡単に紹介しておくと、1941年に少年倶楽部に連載され、その後何度か書籍化されていますが、最新のものは今回手に取った2003年に発行された新潮文庫です。
今から120年前、明治32年(1899年)に海洋漁業調査中の民間の帆船龍睡丸がミッドウェー近海で座礁、沈没してしまい、近くの珊瑚礁でできた小島に乗船員全員が上陸、船から持ち出せたのはわずかな食糧と備品類だけです。
小島は細長い約4000坪(正方形なら一辺115m四方ぐらいの広さ、サッカーグラウンド2面分ぐらい)で海抜は高い場所でも4mぐらい、土地は平らで木も生えていない無人島です。
水がないと生きられないのでまず井戸を掘りますが、塩気たっぷりの水しか出ず、あとは雨を帆布で受けて集めるしかなく一番苦心します。食料は、正覚坊(青ウミガメ)や、針金で釣った魚です。
そうした中で、船長を中心にして全員が規律を守り、役割を決め、24時間見張り番を立て、様々な工夫を凝らしながら、ひたすら救助を待ちます。
と言った内容ですが、無人島生活のノウハウが満載で、実際に経験した人でないとわからないことばかりです。
さて、そのような極限状態の中で、メンバーは生き残り、無事日本に帰ってこられるのか!?って、ハッピーエンドで終わりますから安心してください。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
MISSING (角川文庫) 本多孝好
「眠りの海」「祈灯」「蝉の証」「瑠璃」「彼の棲む場所」の5編からなる短編小説集で、1999年に単行本、2001年に文庫が発刊されています。
著者の作品は、過去に「チェーン・ポイズン」(2008年刊)、「FINE DAYS」(2003年刊)「MOMENT」(2002年刊)の3冊を読んでいます。
正直言うと、あまり印象に残りにくい淡々とした文章と内容で、昨年に読んだばかりの「チェーン・ポイズン」は別として、他の2作品のことはまったく覚えていません。
人の生き様、死に様やちょっとホラー?なところもあり、そうした刺激的な話しにはまると、それなりに楽しめそうですが、自殺であれ、病気であれ、交通事故であれ、話しの中で人がすぐ死んでばかりいる小説は個人的に好きではなく、この短編もそのひとつになります。
それはともかく、著者は今は天命を知る年齢ですが、この短編集が書かれたのは20代という若さで、まだ死というものははるか遠くにあり、身近ではないことから安易に扱えるのだろうと想像しますが、あと20年もすれば変わってくるかも知れません。
ただ、最近、脂がのっている頃かと思いきや、2019年以降は新刊がないようで、ちょっと心配しています。
著者別読書感想INDEX(本多孝好)
★☆☆
【関連リンク】
6月後半の読書 騙し絵の檻、思い出袋、パンク侍、斬られて候、黄砂の籠城(上)(下)
6月前半の読書 オリジン、ゴルディアスの結び目、デフレーション“日本の慢性病"の全貌を解明する、望郷
5月後半の読書 ザ・チーム、緋色の記憶、ビット・トレーダー、王妃マリー・アントワネット
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