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私が社会人1年生になってビジネスオフィスに出入りをするようになったのは1980年(昭和55年)のことです。

顧客先のオフィスへ行くことが多い営業職でスタートしましたが、東京には大手町ビルとか新大手町ビルのような、中に入ると迷子になりそうな巨大なオフィスビルがいくつもあることにまず圧倒されました。

丸の内や大手町にそびえ立つ三菱地所のオフィスビルは、戦後に建設されたものがほとんどですが、大手町ビルと新大手町ビルは1958年に当時東洋一のマンモスビル(高さではなく延べ床面積)として完成しました。つまり私とほぼ同年齢というロートル組です。

同じく三菱地所が建てた名古屋駅前にある大名古屋ビルヂングは、6年前の2015年に建て替えられましたが、その前のビルは1965年に建設されたもので、そのビルに一歩入ると、設えというか構造、意匠など、雰囲気が、大手町ビルとそっくりだったことを思い出します。当時の最先端オフィスビルがそのイメージだったのでしょう。

大手町ビルで思い出すのは、暑い夏、寒い冬、雨が続く梅雨時など、外回りの営業マンのちょっとした息抜きのオアシスとなる大きな書店「紀伊國屋書店」が入っていて、週に1回はその書店で新刊本のチェックなどをしていました。

当時大手町や丸の内、八重洲あたりは、神保町(三省堂や書泉グランデ)や新宿(紀伊國屋書店)、赤坂(文教堂)、渋谷(大盛堂や三省堂、紀伊國屋)、恵比寿(有隣堂)と並ぶというかそれ以上の大型書店のメッカでした。

丸善は元々日本橋に本店がありましたが、その後丸の内オアゾ(2004年~)の中に本店を移し、規模も大きくなりましたし、八重洲には八重洲ブックセンター(1978年~)がありました。

その中でも大手町ビルの1階に入っていた紀伊國屋書店が一番のお気に入りだったのは、巨大な大手町ビルのフロアを生かしてワンフロアにすべての書籍が並べられていて、他の大型書店のように種類によってフロアを上下行き来する必要がなく、文庫も新書も単行本も雑誌も一気にサクッと見ることができました。

さて、その大手町ビルですが、80年代の頃、ビルの中に入ると、薄暗い廊下のあちこち隅っこに、小さな金属製の丸いゴミ箱のようなものが置いてありました。

最初はなんだかわかりませんでしたが、あるときこれが痰壺なのかぁーって気がつきました。

若いときってほとんど痰が出てくることもなく、まったくそれが必要とは思いませんでしたが、年配の人が時々立ち止まってペッと吐いていることを見たことがあります。

しかし痰壺ですよ~今のオフィスからすれば考えられません。オフィスビルから徐々に痰壺が消えていったのはおそらく80年代後半ぐらいだと思います。

さらにオフィスビルのエレベータの前にはどこも灰皿が当たり前のように置いてありました。

なぜエレベータの前?ってことですが、エレベータの中は一応禁煙ですので、そこでタバコを捨ててエレベーターに乗るわけです。今からすると信じられない行動様式です。

オフィスの中、自分のデスクでタバコを吸うのは当たり前で、誰も文句を言う人はなく、オフィス内が煙でもうもうとしていることもしばしばありました。

今から思えば、すごい時代ですね~

80年代半ばに仕事のため香港にしばらく滞在した時にはもっと驚きました。

なんと、エレベータの中に灰皿が常備されていたのです。つまりエレベータ内でもタバコが吸えたのです。

さらに、休日に映画を見に行ったとき、上映途中、煙がもわーと上がるのですが、映画を見ながらタバコを吸うことができました。

映画館の席には灰皿なんかありませんので、吸ったタバコは足下に捨てていくというもう無茶苦茶な感じでしたが、それが特に違法でもマナー違反でもなく、普通だったのです。ちょっとカルチャーショックでした。

その他、オフィスビルで見かけなくなったのは、オフィスの中ですが、応接室に白いレースのカバーがかかった大きなソファです。

80年代頃までは、企業の応接室には当たり前のように、白いレースカバーをかけたやたらと柔らかなソファがどこでもありました。

そのソファとセットでテーブルの上にも白いレースがかけられていて、大きなガラスの灰皿と、タバコ入れが置いてあるのが普通でした。

仕事の先輩が応接室に通されて、顧客の担当者が来るまでのあいだに、そのテーブルに置かれたタバコを持ち帰ろうと数本まとめて手に取ったその瞬間に担当者が入ってきて気まずかったという話しは今では笑い話です。

それもやがては、資料やPCを置きやすい背の高い作業しやすいテーブルとイスのセットに置き換わっていきます。

別にそれらが懐かしいというわけではありませんが、現在国を挙げてリモートワークが推進している中で、現在のオフィスのあり方も急速に変化しています。

あと10年もすると、「2020年以前のオフィスってチームごとに島になっていて笑える~」とか「2020年までは自分の決まったデスクとチェアがあったのね?」となるのかも知れませんね。

【関連リンク】
1541 トイレの記憶
700  なにもかも懐かしい新入社員の頃
364  灰皿の行方と健康被害

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