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いまでは電車やバスに乗ると当たり前のように優先座席(シルバーシート)があります。この優先座席、高齢者・身体障害者・怪我人・妊婦・乳幼児連れなどを対象にできるだけ席を譲りましょうという主旨で1970年代から徐々に拡がってきました。

1970年代と言えば、高度成長期のど真ん中で、団塊世代が一気に社会に出てきて、通勤時には電車もバスも超満員のすし詰め状態が一番激しかった頃です。

そういう若い世代が多いときに、敬老精神や身障者を守るマナーを広く国民に植え付けるという意味では絶妙のいいタイミングだったのでしょう。

しかしそれから40年が過ぎ、すでに国民の4人に一人、まもなく3人に一人が高齢者となる社会に、ごく一部に限られた優先座席が果たしてこのままでいいのか疑問でもあります。

つまり優先座席がわざわざある以上「年寄りや身障者はまず優先座席に行くべきで、優先席以外で当たり前のように席を譲ってもらえると思うのは大きな勘違い」と普通の人が思っても不思議ではありません。

優先席付近とそうでない席で、高齢者や幼児を抱えた人が、席を譲ってもらえる確率はかなり違っています(筆者調べ)。

高齢者と妊婦や幼児連れ、障害者などを含めると優先席を必要とする人は年々増え続け、時間帯にもよりますが、電車やバスの利用者の1/3ぐらいになってきていると思われますが、優先席数は座席数全体の1/9~1/10ぐらいしかないのが実情です(小田急電鉄車両の場合)。

20120801_2.jpgそこで横浜市営地下鉄は2003年から全席を優先席としましたが、実際的にはあまりうまくいっていないようです。

それに4年先だち1999年には関西の阪急電鉄および能勢電鉄・神戸電鉄が全席優先席と定めましたが、不評なことから2007年には廃止して、従来の特定の席だけに優先席を設ける方式に戻りました。

いずれにしてもそれがうまくいかない理由として「席が差別化されてないと譲ってもらえない」ということが一番の理由だそうです。ま、なんとなくわかります。

東京都の地下鉄ではこの6月より優先席を増加させました。いわゆる優先席の常道である車両の端、連結部分の近くをいままで片側だけだったのを両端ともすべて優先席としました。これならわかりやすくて、いいかもしれません。

多くの場合、優先席付近では医療機器に影響を与えないよう携帯電話の使用は控え、電源を切るようにと大きく表示され、時々アナウンスもされますが、実際それを守っている人はあまりいません。そんな多くの人が守れもしないルールをそのまま放置しておいていいのかこれも疑問に感じている点です。

ごくまれに「ここは携帯電話は禁止だよ」と注意をする勇気ある人がいますが、逆ギレされて、中には事件に巻き込まれてしまうことがありますので、おいそれとできることではありません。

電車内で携帯使用注意され、ホームで線路に突き落とし 殺人未遂で逮捕
バス車内での電話使用を注意され、催涙スプレー噴射
上記のような逆ギレ事件はいくらでもあります。

以前男性が電車内で女子大生に痴漢をしたと逮捕されましたが、どうもその後を調べていくと、電車内で携帯電話を使用していたその女子大生に注意したところ、その意趣返しでえん罪をきせられた可能性があるようです。

結局その男性は容疑不十分で無罪釈放されましたがそれまで21日間も拘留されました。釈放後国家賠償請求の民事裁判を起こしましたが今度は「痴漢をしていない証拠」が出せずに敗訴となっています(男性の立場からするといったいどういう証拠を出せというのだろう?)。

そういう報道や事例を知るとおいそれと人に恨みを買うようなことなどできません。

話しを優先席に戻して、よく「大人が優先席に座ったまま、高齢者や身体障害者が近くに来ても席を譲らないのはけしからん」という偽善的な話しをよく目にします。

しかし優先席に座っている「普通に見える大人」にどのような障害や優先席に座っている事情があるなんて、外見だけではわかりません。一見健常者に見えても、長くは立っていられない怪我や病気、苦痛を持っていないと、どうしてわかるのでしょうか。

私は股関節症を煩い、外見上は普通の健常者と変わりませんが、長く立っているのがつらく、席が空いていれば優先席であろうとどこでも座ります。

しかし、優先席に座ったときは、精神的に非常につらいことになります。それは気のせいかも知れませんが上記のように「なんでお前がここに座ってんだよ」という刺々しい周囲からの視線です。そして混んでくると肉体的痛みと闘うか、それとも精神的苦痛と闘うかのせめぎ合いをすることになります。

よぼよぼで今にも死にそうなお年寄りや、足に包帯を巻いて松葉杖でもついていれば、そのようなことは思われないのでしょうけど、世の中には身体にハンデを抱えながらも、できるだけ健常者と同じ仕事や生活をしようと努力し、そしてその努力をすればするほど、健常者と同じ扱いをされてつらい思いをします。

なにが言いたいかというと、世の中には自分とは違う様々な事情を抱えた人がいるので「外見だけで判断するんじゃねぇ!」ってことです、要は。

それでも、目の前にいかにも譲って欲しそうな顔をした高齢者がやって来た場合は、黙ってすっと立ち上がって席を譲っています。

しかしそういう高齢者に限って、大きなリュック背負って山歩きを楽しんできた帰りとか、仲間とつるんで観劇してお土産の紙袋をいっぱい抱え元気そうなおばさま連中だったりするんですけどね。それも外見だけではわからないので仕方ありません。



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