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すでに様々なメディアでそのような報道がなされているので、知っている人も多いと思いますが、あらためて「増えつつある空き家」について検証してみます。

というのも私の家でも浴室など傷んできた水回りのリフォームを実施し、高齢化に対応すべく段差をなくしたりバリアフリーにしましたが、この家は高齢化社会と人口減の中、果たして今後資産価値はあるのだろうか?とちょっと打算的に考えたからです。

私は今のところは今後高齢になっても、この家に住み続けるつもりなので、資産価値があってもなくても関係ないのですが、いざというときには、家を売り払って静かな場所か、マンションのように保守メンテナンスや維持管理、防犯などに手間のかからない場所へ引っ越しを考えたときには気にかかるところです。

少し古いデータですが、2008年10月のデータでは国内にある総住宅数5759万戸に対して、総世帯数は4999万世帯で、差し引き約760万戸の空き家があると推定されています(総務省統計局平成20年住宅・土地統計調査)。

もちろん1世帯が別荘など複数の住居を保有し活用していたり、複数世帯が1軒の家やアパートの1部屋を共有して使っていたりすることもあるでしょうから必ずしも正確ではありませんが、これしかデータはないので。

この空き家と思われる割合を仮に賃貸住宅にあてはめてみると、空き家率は13.2%ということになります。そして直近の昨年2013年10月のデータは現在まだ未発表で、今年の秋頃には発表されると思いますが、空き家は5年前と比べ、世帯数の増加よりも増えているのは確実のようです。

まず空き家がなぜ発生するのかと言えば、

 1)新築の家に移る(別の空き家へ移るだけなら空き家は増えない)
 2)居住者が介護施設へ移ったり、亡くなり空き家となる(単身者の場合)
 3)高齢の親などを別居していた家族が引き取る、逆に別世帯の家族が親の家に同居
 4)新築が取り壊す住宅の数を上回る(高層化に建て替え部屋数が増えるなど)
 5)別世帯同士が1軒の家に住み、部屋をシェアして同居する
 6)世帯数が減る

などが考えられます。

日本の人口はすでに2007年頃をピークとして減りつつあり、最近まで伸び続けてきた世帯数もとうとう2010年をピークに下がりつつあります(厚労省平成23年国民生活基礎調査)。つまり世帯数も1世帯あたりの数も減っているということです。

1世帯当たりの人員数の減少については、65歳以上の高齢者だけの世帯の割合が全世帯数の20%以上を占めるようになり、そのうちの半分ぐらいが独居となってきているためで、今後もさらにその高齢者が独居する割合は確実に増えていくことになります。

参考:平均世帯人員:平成元年(1989年)3.10人→平成23年(2011年)2.58人
   高齢者世帯の割合:平成元年7.8%→平成23年20.5%

同居の複数世帯は別として、基本的に1世帯1家屋(集合住宅の場合は1部屋)が必要なので、空き家が増えていても同時に世帯数が増えていればその需要が伸びる可能性と資産価値はありますが、もうその見通しはありません。

あるいは需要の多い都市部の若者に人気の場所で、お洒落で値段が手頃なコンパクトタイプのマンションならばまだ需要は高いままあるでしょうけど。

空き家率が高まっている傾向があるということは、世帯数が増える以上に新築家屋が建てられ、入居者が見つからない古い家屋がそのまま残されていたり、多くの高齢者が新築マンションや家族の元へ引っ越しをしたり、あるいは故人となり、それまで住んでいた家がそのまま空き家として放置されているという事情があるのでしょう。

 住宅総数と空き家数推移(1963年~2008年)


グラフからはこの45年間のあいだずっと総住宅数は右肩上がりで増えていき、空き家もそれに歩調を合わせた形で増えていきます。特に1993年以降から空き家が急に増加していきますが、ちょうどバブルが崩壊し、長引く不況が始まる頃と一致します。

首都圏に限られますが、昨年(2013年)の新築マンションは前年の23.9%も増え、その戸数は56,476戸にのぼります。(不動産経済研究所)。それに対する取り壊された戸数については統計がなく不明ですが、現状ではまだ新築の供給が上回っているようです。

需要から考えるといつまでこのような新築物件の伸びが続くかは疑問ですが、やがては「建てても売れない」「売れ残り物件が多い」となれば、改築や取り壊しが必要な古い建物と同数近くまで新たな供給が減ってしまう可能性があります。というか世帯数が本格的に減少し始めたらそうなる可能性のほうが高そうです。

空き家率が高い地域はどのような理由かというと、ひとつは人口が多い都会で、人の入れ替わりが激しい地域、かつ投資目的などで新築住宅が次々と建設される場所で、その地域の産業が落ち込んでしまった際に多く発生します。

そしてもうひとつは、これが一番大きい理由ですが、地方の限界集落など、高齢者が多く、前述の通り高齢者が亡くなったあとの家や、介護や通院のため家族に引き取られ、それまで住んでいた家が空き家となって増えていくケースです。、この場合は、その地域の高齢化率と深く関係しています。



空き家率が上位の都道府県は、山梨県、和歌山県、高知県、長野県、香川県の順となっています。一方下位は沖縄県、神奈川県、埼玉県の順です。

都道府県別の高齢化率(2011年データ)と比べてみると、空き家率が一番高い山梨県の高齢化率は24.8%で全国25位と中位ですが、2位の和歌山県の高齢化率は27.5%で全国6位、3位の高知県も29.0%で全国3位と高齢化率の高い地域です。

同様に長野県は11位、香川県は18位です。必ずしも現在の高齢化率上位の地域と空き家率は合致していませんが、比較的高齢化率の高い地域ほど空き家率も高くなっていると言えます。

あと考えられる原因としては山梨県、長野県は比較的古い別荘が多い地域で、それが持ち主不在の空き家となってカウントされている可能性が考えられます。

空き家率が低い沖縄県は、高齢化率でももっとも低い17.3%、次の神奈川県、埼玉県も高齢化率は低く、20.6%と20.9%で全国45番目(低い方から3番目)と42番目です。これらからも高齢化率と空き家率の関係性は明かでしょう。

ただし問題は今から10年後で、団塊世代が介護の必要が出てくる後期高齢者に入ってくる頃、都道府県の高齢化率にも変化が現れ、その頃にはこの構図が大きく変わってくる可能性があります。

というのも団塊世代の多くは地方から都市部へ出て、その都市の郊外へ移り住むようになったその先駆けです。親が住む実家から離れた核家族化が特徴です。

つまりこれからは地方よりもその団塊世代が多く住む都市部近郊のほうが高齢化の速度が増してきます。もし高齢化が空き家を増やす大きな要因であるならば、都市部近郊の空き家は今後高齢化と同じように加速度をつけて増えていくことが予想されます。関東圏で言えば、神奈川、千葉、埼玉、東京の二十三区外あたりです。

しかも都市部では親子二世帯住宅を構えられるほど大きな土地や家を持っている人はわずかで、高齢の親と同居する家族は土地の広い地方と比べて多いとは思えません。

それは高齢者が施設へ入居するか、亡くなるまでは老朽化した狭い家やマンションに住み続け、空き家になった後は、とても若い人が住める状態ではなく、建て替えるか売却するかそのまま放置というパターンです。

結論としては、都市部近郊を含め、高齢化していく地域ではやがて空き家率も高くなり、したがって不動産価格も下落傾向になります。一方若者が好む都心に近い一部の地域では、少ない空き家や土地を巡って取り合いとなり、不動産価格が上昇する場所が出てきますので二極化すると言えるでしょう。

親が残してくれた郊外の家やマンションは、いずれも築後40年50年となり、老朽化が進み、設備も古く、相続した家族は早々に業者に売却してしまうか、売れなくてそのまま放置されてしまう可能性があります。

投資の一環で賃貸マンションや賃貸住宅を持つことは、流行の先端を走る成功者というイメージがありましたが、今後これも様変わりしていくでしょう。世帯数も減少していくことにより、都心の一等地や若者の人気の場所でなければ、借金返済を考慮したオーナーが希望する価格では貸せなくなる時代がやってきます。

赤字を抱える行政機関も動きます。コンパクトシティ構想は限界集落や準限界集落を抱える地方の自治体が、そうした広範囲なところにバラバラで住む人達を1箇所に集め、そこの中に日常生活に困らないよう病院や小売店などを集約し、狭い範囲でインフラも整備し、コストを抑えてコンパクトな町作りをしていくというもので、すでにいくつかの自治体では実践しています。

現在は富山県や震災被害の大きかった東北の地域など地方都市に限られていますが、今後は都市部周辺の郊外においても、赤字財政の自治体が県内の隅々まで道路や橋、公園、病院、学校、上下水道、ゴミ収集などインフラ整備やサービス提供をおこない、どこに住んでも快適な生活がおくれるという行政サービスから大転換をはかり、あまり余裕資金のない年金生活者を1箇所に集めるコンパクトシティ造りをおこなっていく可能性があります。

その時に、それまで住んでいた郊外の家やマンションは、限界集落に残された古家と同様、将来値段が付くものではなくなってしまうのでしょう。


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