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ワークシェアリングとは、ひとつの仕事を複数の人で分かち合うことで、企業側からすれば効率的に人員を配置することができ、また働く側からするとフルタイムで働けない人や、残業や休日出勤など長時間労働を避けプライベート時間を大切にできるというもので、今の生活重視志向のライフスタイルとはうまくマッチしたものと考えられています。

しかし残念ながらワークシェアを希望する人と、求める企業側とのミスマッチが多く、また労働管理上の負担になることから、一部の長時間に及ぶような仕事以外を除き、まだ一般的に普及しているとは言えません。

工場などでは忙しいときにはラインを24時間稼働し、そこで働く人は3~4交代制で働くこともあるわけで、同様に長時間営業の飲食店やコンビニなどでも社員やバイトのシフトを組んで交代で働いていますので、一部の業種や職種ではワークシェアリングがおこなわれているのも事実です。

その他にも24時間休むことができない入院患者がいる病院や介護施設、朝から夜まで長時間対応が当たり前になってきたコールセンター業務、その他一部の長時間対応のサービス業、休みなく毎日動かす必要がある交通機関などでも同じ仕事を複数名で分かち合っているのが普通でしょう。

しかし一般事務職や経理事務、法人向け営業職などホワイトカラーと呼ばれている仕事では、業務の特殊性や連続性、業務量に繁閑があったりしてその導入が進まず、結果として一部の人が長時間残業したり休日出勤をして業務処理をするということが日常的におこなわれています。

またホワイトカラー以外の仕事でも職人と言える職種など人本位(この人がいるからこの仕事ができる)というの職業では導入が進みません。

昼間の時間だけでなく24時間動かし続ければもっと効率が良い運用が可能となり、コスト削減にもつながりそうな仕事もあると思うのですけどね。

私の考えでは、すべての業務においてワークシェアリングは可能で、ホワイトカラー職や職人と言われる職においても、いち早く導入できた企業こそ、コストと便利さで生き残っていくのではないかと思っています。

まずなぜホワイトカラー職でワークシェアリングの導入が進まないかと言えば、ひとつには企業側の考え方として「サービス残業含め残業や休日出勤をして、ひとりでこなせているのだからそれでいいじゃない」という思考停止、あるいは「配置の手間や新たな人の教育に時間がかかるしこれ以上仕事を増やしたくない」という後ろ向きの理由が多そうです。

個人に頼る働き方、働かせ方は、従来のように「終身雇用+企業へのロイヤリティが高い従業員」が多い中ではそれでよかったのかもしれませんが、新卒社員が3年で3割辞めていく時代になってくると通用しなくなってきていますので、見直されるべきでしょう。

また労務管理なんて自社でやらずとも人材派遣業やコンサル会社などいくらでも代行してくれるところがあります。

次に従業員側の問題として、ちょっとゆがんだ見方ですが「今の仕事を失いたくないばかりに、ひとりで仕事を抱え込んでしまっている」ことがよくあります。

別の見方をすれば「慣れた仕事をマイペースでおこなうのが楽だから、新しいことに挑戦する気もないし、今の仕事のままがいい」とも言い直せます。何年も異動がない(異動させられない)ベテラン社員にはこうした人は少なくありません。

そしてその慣れた仕事を囲い込むためにサービス残業や休日出勤もへっちゃらとなるので、会社側は「残業や休日出勤もいとわずよく貢献してくれている」と間違った評価をつけます。

やがてその人の労をねぎらい昇進させようと思い、今の仕事を後輩に託し、新たな上位の仕事を割り振ろうと提案すると、そこで一悶着が起きることになります。「この仕事はわたしにしかできない。私でなにが不満なのか?」と反論されます。

ひとりに長く囲い抱え込まれた仕事は、普通では考えられないほど複雑化され、その人でなければ理解できないようにブラックボックスとなっていることが多いのです。

その人が意図してやったわけではないにしろ、問題が発生するたびに局所的につぎはぎで応急処置をしてきたため、その担当者の頭の中だけにしか対応マニュアルがないということになります。

そうなってしまうと、その仕事がやがて業務のボトルネックとなり、企業の発展も合理化も新陳代謝なにもできなくなり、もちろんその仕事を複数の人でワークシェアすることなどできません。

そこで新しいビジネスが思い浮かんだのですが、「ワークシェアリング導入コンサルタント」です。

まずワークシェアリングの導入における中長期的なメリット、費用対効果、導入することで見えてくる様々な業務の課題などの説明の後、ひとりに重要な仕事を任せるリスク、そこから発生する問題や犯罪、監査やモニタリングの形骸化と限界、会社業績と連動した人件費などについて解説。これはおそらくどの中小企業でも納得してくれるでしょう。

次に、どこの会社でも頭を悩ませている、重要な仕事をひとりに任せきってしまってブラックボックス化している状態からの脱出法です。ここがコンサルの最大のノウハウになります。

ブラックボックス化している業務の整理とフローの作成、判断基準のシンプル化をマニュアル化して、同時にそれぞれの作業時間や月間・年間の業務量の変化を調べます。

また同時に業務の中でシステム化(IT化)できるところはシステム化する提案をおこない、うまくすればそちらでも稼ぐこともできるかも知れません。

そこまで出来上がるとあとはワークシェアで働く人をどのように探し、それをうまくコントロールするノウハウを提供するだけです。

そこは人材ビジネスで経験を積んだ人ならそう難しいものではありませんが、その業務の特性や想定とのギャップもあるでしょうから、完全にうまく回り出すまでの半年~1年ぐらいは我慢の日々が続くかも知れません。

ワークシェアリングの必要性はもう言うまでもなく、これからの少子化による労働者人口の減少と、やがては大量に引退していく経験豊富な社員の代替要員の確保、それに呼応した業務のシンプル化、見える化、効率化のためです。

すでに外食系の店舗はパートやアルバイト確保が困難で多くが閉鎖に追い込まれています。今はまだ労働者不足は不人気な外食や建設、介護などの一部業種が中心でしょうけど、やがては多くの職で非正規労働者の不足が危惧されています。

正規社員ですら例えば中小企業の場合、今までのように優秀で、健康で、気が利いて、しかも会社にロイヤリティを持って仕えてくれて、何十年も気持ちよく働いてくれる若い人がいつでも採用ができるということは考えられません。できると思っている経営者は、世間知らずもいいところです。

特に仕事本位ではなく、人本位でやってきた中小企業では、いちはやくそうした旧体制から脱出し、効率的で機動性のあるワークシェア体制で労働力をうまくコントロールできるようになったところが、順調に成果を上げていけるような気がします。零細企業においては社長以外はみなワークシェアリングで働く人というパターンも可能でしょう。

そしてここからが大事なのですが、元々ワークシェアリングは家事や子育てのため長時間勤務ができない女性に相応しい働き方と言われてきましたが、今では女性に限らず、正社員雇用から引退した高齢者にも向いた働き方と言えます。

企業側もせっかく高い家賃やリースで借りたオフィスや店舗、事務機器、工作機械、営業車を1日24時間中のせいぜい8~10時間しか使わないというのはもったいないと気がついてきているはずです。

子育てや介護にも忙しい女性だけで深夜勤務体制は難しくても、様々な業務の経験が豊富で、時間がいくらでもある定年を過ぎた高齢者にはなんの問題もありません。

もしこのオフィスや店舗、工作機械の活用時間をワークシェアリングを活用して、稼働時間を1.5倍に増やすことができれば、やがては売上や取引も増やすことが可能です。

少なくとも朝から夜まで働いて疲れ果てた社員やバイトに叱咤激励して売上を1.5倍にしようとするよりもずっと簡単です。

マイカーを持っている人は、いつも利用するガソリンスタンドは朝10時に開店し夜6時には閉店し土・日曜日は休業しているところではなく、土日曜日も含め深夜までオープンしている店を優先して利用しませんか?

コンビニも最初は「あいててよかった」と早朝や深夜でも店があいているのが最大のウリでスタートしましたが、今では同じものが安く売られているスーパーが営業している時間帯でもお客さんはコンビニを利用しています。

顧客や取引先だって、休業が多く営業時間の短いところよりは、いつでも欲しいときにすぐに応じてくれて手に入れられるところを優先するのではないでしょうか。

そうした顧客のニーズや生活時間の変化、働き方の多様化を考えると、企業(企業に限らず役所も個人事業も同じ)は営業時間の考え方をあらためることと、ワークシェアリングという働き方を今後の日本の労働市場でもっと取り入れるべきではないでしょうか。そしてその時、主役となるのが60歳以上の高齢者達なのです。

盛り上げておいてなんですが、日本の場合、こと労働問題に関する限り、民間企業の考え方はとても保守的なので、普及に向けて最善を尽くすとすれば、まず官公庁が率先してワークシェアリングを導入し(警察や消防などはすでに実施していますが)、朝6時から夜11時まで市役所や区役所の窓口が開いているとか、福祉事務所やハローワークも土曜日や日曜日にゆっくりと相談が出来、学校も平日に休んだ生徒が土・日曜日に出てくれば代わりの先生がいて補講が受けられるというようにならなければ、民間にまで拡がらずなかなか前には進まないかも知れませんね。


【関連リンク】
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
649 改正高年齢者雇用安定法
546 年金受給年齢の引き上げと高齢者雇用
499 定年後にどう生活していくか

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