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20代の頃、もう30年近く前になりますが、大阪で数年間働いていました。仕事は企業相手の営業職で、担当エリア制になっていたので年配の前任者から地区と顧客を引き継ぎました。

担当したのは主として大阪のビジネス街の中心地、中央区の狭い一角で、端から端まで徒歩で歩いていける範囲です。

大阪のビジネス街の地理が不案内だったので、自分の足でエリアを何度もグルグルと歩き回り、既存の顧客を担当しつつ戦略を考えて新しい見込み顧客を開拓していくのが仕事です。

大阪の中心部を歩いてみて面白いなぁって思ったのは、ある地域にライバルでもある同業者が固まってあることです。

繊維関連なら船場や久太郎町、証券会社なら北浜、総合商社は本町、阿波座は電子や機械部品商社などなど。

東京でも兜町に証券会社、秋葉原に家電販売店がかたまっているとかはありますが、もっといろいろな業界ごとに固まり、その密度が濃いというか。

その中でも異彩を放っていたのは道修町(どしょうまち)で、一方通行の狭い道路の両側に製薬メーカーや薬の卸業がこれでもかってほど固まって本支店(オフィス)を構えています。

しかも当時には誰もが知っているような大メーカーが、戦前の建物?って思うような古い歴史を感じさせるビルで本店を構えていたりして驚きました(30年ほど前のことで、今ではさすがに建て替えられているようです)。

薬はそれこそ江戸時代から大きな商売の種になっていましたが、それにしても老舗の製薬会社や薬問屋が、江戸時代のまま、今でも大阪の中心部に集まって本店、支店、営業所を構えているというのは壮観でした。

その道修町のすぐ近くには有名な「適塾(てきじゅく)」跡もあり、こちらは医者でもあった緒方洪庵が開いた蘭学の塾で、大村益次郎や福澤諭吉が学び、大阪大学医学部の元となった学校です。道修町の医薬品と、そのすぐそばにあった適塾との関係に思いを寄せたりします。

大阪道修町に拠点がある製薬、化成品会社を列挙しておくと、カイゲンファーマ(本社)、小林製薬(本社)、塩野義製薬(本社)、大日本住友製薬(大阪本社)、武田薬品工業(本社)、田辺三菱製薬(本社)、扶桑薬品工業(本社)、丸善薬品産業(本社)、和光純薬工業(本社)、小野薬品工業(本店)、田村薬品工業(本社)、中間物商事(本社)、DSファーマバイオメディカル(本社)、天藤製薬(大阪本社)、ニプロファーマ(本社)、伊藤由製薬、乾卯栄養化学、イワキ、エビス薬品、関西薬品、小城製薬、金剛薬品、シオエ製薬、鈴粉末薬品、関商、第一三共、ダイト、大鵬薬品工業、高砂薬業、東洋製薬化成、常盤植物化学研究所、日新化成、日本新薬、日本製薬、日本バルク薬品、日本粉末薬品、日野薬品、富士化学工業、富士カプセル、堀江生薬、丸三薬品、丸善製薬、三国、八ツ目製薬、山善製薬、横内製薬、米山薬品工業、興和など(順不同)。

30年前から吸収や合併などもあり、だいぶんと社名が変わったりしていますが、それでもまだこれだけの会社が狭い道修町の一角に店を連ねています。

製薬会社と言えば、近代以降は研究開発施設や製造工場、倉庫・流通などの部門が必要で、こうした街の中心部にあるのはいわゆる営業販売部門と本社事務部門だけということになりますが、この業界、高齢化社会ということもあって、いまは割と景気がよさそうなのです。

話しが急展開するようですが、いま、松井大阪府知事が中心となり、2度目の大阪万博を開催できないかと旗を振っています。

「思いつきの発想」経済界総スカン!? 松井知事が2度目の大阪万博にこだわるワケ

2度目の大阪万博では、これから多くの先進国が迎える高齢化を先取りしてきた日本の得意分野の「健康」「長寿」をテーマとして、医療や介護、薬品、バイオなどの分野に焦点をあてようというもので、超高齢化を迎えている日本の、大阪道修町を抱える大阪市としては、目の付け所は青色吐息のシャープ(本社大阪市)と違ってイイカかもって思ったりします。

もちろんまもなくおこなわれる大阪府知事選挙で松井知事が圧勝して再選されることが絶対条件でしょうけど、東京で二度目のオリンピック、それなら大阪では二度目の万博という発想はシンプルで悪くはないと思います。

年齢が高齢化して新しいことはなにも受け入れられない頭が硬直化しつつある多くの大阪府民からは不評を買うことになるでしょうけれど。

もちろん団塊世代が押し寄せた1970年の万博と違って、国内の観光客はあてにできませんので、海外、特にアジアからの観光客をどれだけ呼び込めるかというのがキーとなりそうです。

日本ブームでもあり、USJや京都・奈良など世界に通用する観光資源が近くにあり、私は十分に勝算はあると思いますけどね。

別に万博だから箱物を作ってと言う旧来の発想ではなく、高齢者が生き生きと暮らせる先進的でお洒落で楽しめるコンパクトシティのモデルを大阪郊外に作り(万博終了後はもちろん高齢者用に有効活用)、そこへ視察&体験に来てもらおうというのであれば既存の施設や改築する施設も利用してそれで十分に対応が可能かなと。

来場者には日本が誇る世界最先端の医療検査機器でおもてなしをして、手軽に全身の精密診断が受けられ、詳しい検査レポートが1時間でもらえるとか、必要に応じて薬もすぐに処方してもらえるとか、医療と健康に特化したサービスを提供しなくちゃなりません。

また大阪万博と言いつつ、日本の各地の観光も兼ねられるよう、人気の高い京都や神戸、奈良、和歌山あたりまでひっくるめて会場や展示場、提携宿泊施設を拡げ、関西全域でおもてなししていくという方向性も考えられます。リニア新幹線が大阪までつながっていれば、これもいい引きになります。

もちろん何事にも反対する人はいるでしょうけど、できれば大阪市や堺市の企業が中心となって、民間の知恵とお金で税金は投入せずに立派にやっていけるのであれば、これからの日本の歩む道を世界に対して示すいいPRになっていいのではないでしょうか。


【関連リンク】
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