リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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景気回復感による人手不足、求人しても集まらないというニュースが目立ちますが、その本質はといえば、新しく労働力に加わってくる若い人のおよそ倍近い数の団塊世代が65才を迎え、次々と仕事からリタイアしていっている状況ですので、国内の総労働者人口が大きく減っていることに他なりません。
それを証拠に、ひどい求人難に陥っているのは、建設労働者や飲食サービス業、介護の現場などで、給料が低い上に仕事は厳しく、若者に人気がない職業であると同時に、引退した高齢者や家庭にいる女性が代われる(やりたいと思う)仕事ではないので、特に重点的に人手不足が起きているわけです。
同様に給料が安いと言われていてもタクシードライバーや、トラック運転手、ビルメンテナンス、警備員、マンションや駐車場の管理人、水道や電気、ガスメーターの検針員、簡易な宅配便の配達員と言った仕事は、比較的高齢者でも就きやすい仕事なので、さほど人員不足という話しは聞こえてきません。
一部の飲食店やコンビニなどでは、やむにやまれず年配女性のパートや中高年者のアルバイトを積極的に雇うようになってきていますが、基本はまだ若くて元気で、重い荷物も手際よく運べてハキハキと接客し、テキパキ機敏に動ける若い人を望んでいるのは間違いありません。
東京商工リサーチによると、今年の1~4月で、後継者難や人手不足を理由とした倒産が全国で85件あったそうです。特にその中の実に94%、80件を占めるのが、後継者が見つからず、事業を辞めてしまうケースで、最近目立って多くなっているようです。
帝国データバンクの調査では高齢化が顕著に進む四国4県の中で、「2013年に休業、廃業、解散した事業が1000件を超え、倒産件数の6.4倍になっている」というデータもありました。そうした休廃業した業種は、建設業、サービス業、小売業の3つで約70%を占めています。
後継者がいなくて倒産したり、廃業に追い込まれるそれらの多くは、個人事業的な零細ビジネスと思われますが、昔ながらの商売や工場を、事業主の子供達が後を継ぐのを嫌がったり、あるいは跡継ぎの子供がいなくてというケースが多いように思われます。
昔のように子供が4人も5人もいれば、長男が継がなくとも次男や三男が跡を継いだでしょうが、現在のように子供はひとりかふたりという状況ではそれも難しそうです。
国や自治体は起業や創職を支援し、起業家を育成するのが社会の活性化と発展につながるとして、積極的に展開をしています。その一方では次々と後継者不足という理由で廃業や倒産があるというのは、マッチポンプでなんとももったいない限りです。
倒産や廃業に追い込まれるビジネスの多くは、すでに需要がなくなったビジネスが多そうですが、そこを基にして新しいビジネスや商品開発、販売手法など建て直せるという事業も少なくないでしょう。
若い現役世代の中には、事業プランも意欲もありながら、それをおこなう資金も体制もなく、断念せざるを得ない人が数多くいると思います。
親の商売は長男が継いでいるので、次男や三男は同様の商売を始めたくても、親からは支援を受けられず、仕方なく勤め人をしているという人や、アイデアを実現するために会社を辞めて独立したいけど、家族もいるのでいきなり無収入になるリスクは負えないという人もいるでしょう。
また一方では、事業を引き継いでくれるのなら、その会社の資産はほとんど無償で提供してもいいと思っている人もいるでしょう。取引先や常連客、出資者などに迷惑をかけないよう、廃業、解散または倒産させるのは意外と時間とお金がかかるものです。
そうした新たに事業を始めたいと思っている人と、事業を引き継いで欲しいと言う人を結びつけることをもっと積極的に国や自治体がおこなってもいいのではないでしょうか。
とか、書いていたら、次のようなニュースが飛び込んできました。
ベンチャー支援:政府 大企業と連携促進(毎日新聞)
ベンチャー企業と大企業が連携して新規事業を創造する「ベンチャー創造協議会」(仮称)や、後継者不足の企業と創業希望者を橋渡しする「後継者人材バンク」(仮称)の設置が柱。 (中略) 後継者人材バンクは後継者不足に悩む企業と、起業家をマッチングすることを想定。「団塊世代」の経営者の引退が加速する中、中小・中堅企業の後継者不足が従来以上に深刻化しており、人材バンクに登録した起業家に事業継承や、新事業への転換を進めてもらうのが狙いだ。 |
ちゃんと一応は考えていたんですね。うまく機能するのかどうかはこれからの進め方次第って感じです。
ビジネス経験もない学者先生や親方日の丸の役人、天下り官僚、融通も利かずベンチャー精神の欠片もない大企業のサラリーマンの送り込み先とならないことを祈るばかりです。各地にあるいくつかのNPO法人などからアイデアを募集し、委託して競わせるような形がいいかもしれません。
すでにある事業を引き継ぐ人は、最初は自分が望む通りのものではないかも知れませんが、従来からある設備と販売ルートなどがある程度は確保された中での出発となり、起業リスクが多少なり抑えられます。
もちろん事業を伸ばすには、旧来のやり方だけに頼っていてはダメで、大胆に常に新しい顧客開拓、新製品の開発、柔軟な発想など起業家としての質が問われることになります。そしてそれらが軌道に乗ったところで、自分が本当にやりたかったことに手を出せばいいのです。
後継者がなく事業を譲りたい人は、アカの他人に売るなら少しでも高く売りつけたいと思うのは心情的に理解できますが、それではまずうまくいかないことを理解してもらい、例えばその事業で今後利益が出たときに何パーセントかをロイヤリティとして支払ってもらうとか、無償で譲る資産と引き替えに新しい会社の株式の何割かを無償で発行してもらい、成功すればいずれ買い取ってもらうとか、事業が成功したときに恩恵が得られるような形まで譲歩してもらう必要があります。
そうすることで、売った側も、売りっぱなしではなく、その後も事業を継続して成功をしてもらいたいので、できる限りの協力を惜しまず、事業がうまく継続して軌道に乗れば双方ともに恩恵があるという仕組みが作れます。
人間の欲は果てしないので、なかなかそのように考えてくれる欲の突っ張った事業家は少なそうですが。
昔からある個人タクシー免許の譲渡や、酒類販売業免許の譲渡、その他にも権利譲渡いう形で他人へ売って引退するという一種の既得権制度や慣例、風習がありますが、一部の人口が集中している地域を除き、果たして今後もその意味があるのかどうかは疑問です。
まとまったお金のない若い人には、そうした免許は親から譲られない限り、権利を得るのは敷居が高く、もっと若い人が参入して産業を活性化させるためには、そういった古い既得権をなくすか、あるいは別の形に変えていくことも必要ではないでしょうか。
調べると個人タクシーにしても、酒類販売にしても、貨物運送業にしても、たばこ販売業の許可にしても、最近は不況の影響と規制緩和などもあり、昔のように高額な既得権益で売買されるということは、少なくなってきているようですね。地域にもよるのでしょうけど。
いずれにしても、すでに十分な資産や投資が得られる恵まれた人以外は、まったく無から事業を立ち上げるより、そのベースとなる事業なり設備、販売ルート、顧客があるほうがリスクは低くなります。
そうした仕組みをもっと有効に利用するため、引退する人と若い人の仲介をするというのはビジネスとしてできるかどうかはわかりませんが、自治体や公的機関がもっと積極的に取り組んでもよさそうに思います。
【関連リンク】
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
711 地方が限界集落化していく
706 高齢化社会の行方
527 教員の高齢化について
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絆 (講談社文庫) 江上剛
著者は元銀行員でビジネス書やビジネス系の小説が多い作家さんですが、この小説は二人の幼なじみの少年二人が、昭和の時代をそれぞれ違った道で生きてきた大河ドラマ的な小説で、2007年に単行本、2009年に文庫版が発刊されています。
私は著者の作品では過去に「非情銀行」だけ読んでいますが、著者と私は4歳違い(著者のほうが年上)ということもあり、生きてきた時代はほぼ同年代と言ってもいいでしょう。
この作品の中で、主人公がまだ少年だった頃の描写は、著者が子供の頃の情景を元に描いたものと考えられますが、それは現代の日本からすると、考えがたいほど貧しく、そして差別や古くからの風習がまだ根強く残っていた社会で、大阪万博が開催された1970年頃以前は、それが田舎というか地方の現実だったことを思い起こさせます。
いまでこそ格差社会などという名前を付けて貧富の差や勝ち組負け組などと騒いでいますが、昭和30年代と言えば、今よりももっと差別や貧富格差は激しく、それこそ子供を育てるお金がない人は、実質的に子供を売り飛ばすがごとく赤子の時に養子へと出したり、「捨て子」と言って、親から捨てられ養護施設に収容される子供の数は決して少なくありませんでした。
この主人公も丹波の田舎町で母ひとり子ひとりの貧しい暮らしをしていましたが、小学生の時に唯一の肉親の母親に先立たれ、意地悪なお金持ちの同級生の家に引き取られることになり、その同級生と母親に奴隷のようなひどい扱いを受けながら、どうにか高校まで進みます。どうしてこの家に引き取られたのかは最後のほうで明かになります。
引き取られた家の同級生が女性を襲い、その共犯にされそうになり、同級生を殴ったことから、家出同然に大阪へ飛び出しますが、捨てる神あれば拾う神もあり、そこで偶然知り合った愛知県尾西市(現一宮市)にある染色会社の社長に気に入られて入社することになります。この子供時代の苦労話しはまるで男性版「おしん」です。
主人公は工場で働き、やがては子供がいない経営者に信頼されて養子となり、会社の跡継ぎになってからも、この幼なじみとの縁は切れず、逆に様々な場面で騙されたり無理難題を押しつけられ、それでもあきれるほど我慢を続ける主人公には、さすがに読んでいてもあきれるばかりです。しかしそれは最後の最後でひっくり返されます。
巻頭に「アセ興株式会社 社長森雄三氏」に捧げる旨のことが書かれていますので、この小説のモデルとなった方なのでしょう。現在その会社は匠染色という社名に代わり、経営者も変わっているようです。
◇著者別読書感想(江上剛)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
裁きの鐘は:クリフトン年代記 第3部 (新潮文庫)(上)(下) ジェフリー・アーチャー
時のみぞ知る:クリフトン年代記 第1部、死もまた我等なり:クリフトン年代記 第2部に続く第3部です。2014年4月1日に文庫版が発売されました。
簡単に1部と2部のあらすじを書くと、貧乏な家の生まれだった主人公と名門家で大金持ちの少年が、寄宿舎で知り合い親友同士となります。
しかしその後この二人は父親が同じで異母兄弟ではないかという疑いがかかり、その親友の妹と恋仲になっていた主人公は、恋人と結婚することをあきらめ、逃げるように一人アメリカへ旅立ってしまいます。
イギリスからアメリカへ向かう客船に船員として乗船中に、Uボートの攻撃を受け、船は沈んでしまいますが、主人公は幸い近くの船に救助されます。このどさくさを利用して、新しく生まれ変わるチャンスだと考え、アメリカへ上陸する時には沈没で亡くなった同僚の船員の名前を告げます。
ところが名を騙った同僚船員は殺人犯として手配されている男で、主人公は捕まり、裁判にかけられ、そして弁護士にもうまく騙され結果的に有罪判決を受け、刑務所で服役することになります。
イギリスに残してきた親友の妹の恋人は、主人公の子を産み、そして主人公が生きていることを信じ、ニューヨークまで追いかけてきますが、その居場所が判明したとき、主人公は刑を減免してもらうのと引き替えにアメリカ軍に入隊し、ヨーロッパ戦線へ旅立ったあとでした。
ここまでが1部と2部のおおまかなあらすじです。
さてこの3部は、第二次大戦が連合国軍の勝利で終わり、主人公は勲章を得て帰国を果たし、そして恋人と無事に結婚することができて平穏な日々をおくっています。
ところが名門家の財産を引き継いだ妻の兄である親友が、結婚相手に選んだ女性が、財産目当てと思われる高慢な貴族階級出身者で、母親が亡くなった後の財産を巡って一悶着が起きます。
結局はその女性とは別れることになりますが、主人公とその親友に対して執拗な悪意を持つ学生時代のライバルと組み、イギリスの国会議員である庶民院の選挙で邪魔をされたり、インサイダー取引に利用されたりと散々な目に遭います。
また、主人公の息子は成績は悪くないものの、数々の校則違反を犯し、卒業間近に停学処分を喰らうことなったり、奨学生として入学が決まっていたケンブリッジ大学の推薦が取り消されそうになる事態が発生します。
さらに両親が用事でアメリカへ渡っている隙に、ロンドンへ遊びに行き、同級生の家へ行くと、今度はそこの父親に利用され、本人が知らないうちにアルゼンチンから偽札の運び屋の仕事をすることになります。
もうジェットコースターのように次々と危険と謀略がいっぱいで、これはもう漫画の世界と言っていいでしょう。
この第3部は第二次大戦が終わってしばらく経った1950年代までで、最終的にはサッチャー首相が登場する1980年頃までの第10部まで続くそうで、前回に書いた宮本輝氏の「流転の海」シリーズや五木寛之氏の「青春の門」シリーズと同様、現在74歳の著者が、あと何年かかるかわからないシリーズの最後までちゃんと書けるのか?ってちょっと心配なところもあります。
もしかすると、緻密に計算され、人間の機微をうまくとらえ、しかもウィットに富んでいた「ケインとアベル」のような過去の多くの作品から、ただ乱雑で派手なばかりのB級アクション映画のようなストーリーへと最近毛色が変わっていることからすると、すでに実際は誰か別人のゴーストが書いているのかなぁって気もしないでもありません。
◇著者別読書感想(ジェフリー・アーチャー)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
男の作法 (新潮文庫) 池波正太郎
「鬼平犯科帳」や「剣客商売シリーズ」「真田太平記」など多くの時代小説を残した著者ですが、1990年に亡くなっています。この本は1981年に発刊されその後文庫化されたもので、やはり数多くあるエッセイ作品のひとつです。
実は私はこの著者の本では20年前に「鬼平犯科帳」を1冊だけ買って読んだものの、あまり面白いとは思わず、その後は一冊も手に取ることはありませんでした。なんというか波長が合わないというか、いまいち肌に合わない感じがしています。
しかし実際に数多くのファンがいるわけで、20年も経ってあまり食わず嫌いもなんだかなと思って、これから少しずつ読んでみようと思っています。で、いきなりエッセイかい!って気もしますが、まずは著者のことをよく知ろうと思ったわけで。
このエッセイでは江戸っ子気質そのままの著者が考えてきた料理、酒、服装、家、妻、女などの様々な作法や考え方について、、インタビューをうけて好き放題に語ったものをまとめた形式になっています。
したがって決して厳格なマナー本ではなく、しかも30年以上前の話しでもあるので、平成の男子がそのまま真似をするとただ変人扱いされてしまうこともありそうです。
あと文章は口語をそのまま使っていますので、「あれ」とか「これ」とか「こうして」「こういうふうに」とか、いったいなにを言っているのか読む側にはさっぱり想像がつかず、イライラするような部分もあり、もう少しなんとかならないのかなぁと思ってみたり。熱烈な池波ファンならそれも味があっていいと許せるのでしょうね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
きみの友だち (新潮文庫) 重松清
元々小説新潮に掲載された短編連作の小説で、2005年に単行本、2008年に文庫化されています。2008年には石橋杏奈主演で映画も作られていますが、あまり評判にはならなかったようです。
短編ごとに主人公というか登場人物は変わりますが、その中心にいるのは小学生の時に、自分の不注意でクルマにはねられ松葉杖の生活を余儀なくされた少女です。
あえて言うまでもなく、もうすぐ思春期を迎えようとする、心身ともに不安定な今どきの10代の少女や少年のキラキラした姿を、中高年の著者が描き、そして「きみたち」として描かれたものを、中高年の私が読むという、こっぱずかしい側面もあります。
収録されている短編は「あいあい傘」「ねじれの位置」「ふらふら」「ぐりこ」「にゃんこの目」「別れの曲」「千羽鶴」「かげふみ」「花いちもんめ」「きみの友だち」の各編から成り立っています。
途中少し中だるみするところもありましたが、上記の足の悪い主人公の元へ集まってきた、成長した彼女ら彼らが登場する最後の短編で、あらためて友達の意味を考えさせられるいい仕上がりとなっています。
今まで著者の作品の中では「その日のまえに」や「カシオペアの丘で」などの、壮年や中高年男性が主人公で、昔の仲間や友達、恋人、故郷などを懐かしく振り返るというテーストの作品を中心に12作品読んできました。
こうした思春期の少年少女を主人公とした作品も数多くあるのは知っていましたが、「いまさら少年少女ばかりが主人公の小説なんて」と思う気持ちもあり、なかなか手を出せませんでしたが、こうして読んでみると、今の若い人の悩みや考え方が多少は理解できるようになったかなと、勝手に自分に言い訳めいたような気分になります。
◇著者別読書感想(重松清)
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宮仕えに汲々したサラリーマンなら一度は考えることとして独立起業があります。
ソフトバンクの孫さんやホリエモンさんのようにサラリーマン経験はなく、学校を終えてすぐ(あるいは学校在籍中)に起業した事業家のように特別な才能と幸運に恵まれた人は別として、多くの起業人は数年から十数年のサラリーマン経験をしてから独立するケースがほとんどだろうと思います。
また脱サラで起業した人の中にも、何年働いたら会社を辞めて独立すると計画を立てて就職する人もいれば、会社勤めしている中で、自分の居場所はここではないと、転職のひとつの形として独立起業をする方もいるでしょう。
一度でも会社勤めをするということは、ビジネス感覚を養い、人脈を作り、一個人だと知り得ない業界知識やノウハウが身について将来独立する上においてそれらが大いに役立つことは確かです。
起業するにあたっては、人それぞれ置かれている環境や、強い意志、周囲の理解、家族の援助など様々な要因があってのことなので、そのいずれが正しいという解答はありません。
レアなケースとして50代、60代になってから起業する人が最近は増えているようです(増えてきたと言うより、元々その年代の人口が多いため、その年代で起業する人の割合は変わらなくても実質数が増えて目立ってきたということもあるでしょうけど)。
ただ私の考えでは、独立起業を決意するなら遅くとも40歳までに判断すべきだろうと思っています。アイデアと資金さえあれば、もちろんもっと早く20代のうちに独立を目指すのも問題ありません。
なぜ40歳までか?
通常大学を出てすぐに就職した場合、20年経つと年齢は42歳。この年齢になると、中小企業なら部次長クラス、大手企業なら課長クラスで、社内では重要ポジションに身を置き、さらに今後上(部長や取締役)を狙えるかどうか非常に大事な時期に入ってきます。
この段階まで来てしまうと、よほどのことがない限り、転職や勤務先を辞めてリスクを冒すのは生涯賃金とリスクを考えると割りに合うとは思えません。
さらに平均的にこの年代になると配偶者と扶養する子供がいて、住宅ローンまで抱え込んでいることが多い年代でもあります。配偶者とはともかく、子供がいるとリスクはなかなか冒せません。
またバブル崩壊後に年功序列が崩れはじめ、年収カーブが従来なら50代半ばまではずっと右肩上がりだったのが、最近では40代でもっとも高くなるケースが増えてきています(国の統計平均では現在最も年収が高いのは50代前半)。
そして今後はもっと若手の早期登用が進むと思われ、この年収カーブがより40代ピーク、技術系職に至っては30代ピークへと移っていく可能性があります。
そうしたことを考えると、独立起業を目指すなら、晩婚化でまだ配偶者がいなかったり、いても配偶者は自立して働いているとかで、少なくとも扶養すべき子供がいない30代前半、遅くとも39歳までにしておくべきだということです。
独立して例え仕事がうまくいったとしても、数年間は毎月の収入が安定しなかったり、社会的信用が得られず、引っ越したくても家の賃貸契約を断られたり、買おうと思っても住宅ローンの審査が通らなかったりすることがあります。
また子供がいると義務教育期間はともかく、やがて多額の教育費(高校・大学とも私立だと入学金・授業料だけで1000万近く)がかかり、ある程度の蓄えが必要です。個人事業の場合、例え儲かっていても自転車操業的に自己資金をまず優先して使ってしまうのでまとまった貯蓄がない場合が多く、そうしたことも事前に考えておかなければなりません。
一方、転職の場合は、中途入社の場合は即戦力を求められるケースがほとんどなので、それなりの経験や知識があれば40代でも可能性はあり、起業するよりもリスクは少ないでしょう。ただしこの場合、現在勤務をしていて現役バリという状況下での転職活動に限ります。
いつでも就職できるとタカをくくって、40代で退職後に1年間放浪生活やボランティアでもして、さて就職しようとすると、かなり高度な専門職以外では苦労することになるでょう。
どうしても40代で1年間の放浪生活をしたいなら、就職できない場合、自分で起業するしかありませんが、当然さらにリスクも高くなります。
40~50代で早期退職制度を使って辞める人が結構いますが、辞めてから数年は割り増しされた退職金などで優雅な生活が送れるものの、その後の10~15年間はまた働いて稼がなければなりません。これが結構大変です。
大手メーカーを(早期退職などで)辞めた人が、アジアの競合企業から誘いを受けて、ノウハウや機密資料を持ち出すようなことが起きるのも、給料の高さにひかれてというより、国内で就職しようとしても他の仕事に簡単に就けないからだと見ています。
脱サラで起業をしている人の中を見ていると、上記にも書いたとおり、若いときから計画的に独立を目指して貯金をし、人脈も作り、勉強もして、家族の協力も得てという方がもっとも成功しているように思われます。
脱サラした起業事例は、実のところ成功例ばかりが取り上げられて、その何倍、何十倍いや何百倍とあるはずの失敗例はほとんど取り上げられることはありません。しかし間違いなく成功例の裏側にはその何百倍もの失敗例があるはずなのです。
中途採用活動をやっていると、履歴書の勤務歴の欄に前の会社を退職後しばらく期間が空いていたり、会社解散のため退職のような書き方をされている方が結構見受けられます。
その不自然さを尋ねるとたいていは「起業したがうまくいかずに解散した」とか「知人と一緒に起業したがいろいろあって自分は離脱した」とかです。
失敗したことを堂々と履歴書に書いて説明できる人はそれだけで立派だと思いますが、実のところあまり触れられたくない感じの方が多いようです。
個人的には例え失敗したとしても起業にチャレンジしたことは素晴らしいことだと思いますが、一般企業の採用担当者からすると、若干違って見えてくるからかも知れません。
たまたま採用担当者が同じような経験者で脱サラ起業に理解のある人ならまだいいのですが、たいていはその会社にずっと長くしがみついている人で、「脱サラ=裏切り者、職場放棄」と思っている人も少なくないからです。
つまり一度企業を辞めて脱サラした人は、行動力があり自己顕示欲が強いだけに、ノウハウや取引先情報を盗んでまた脱サラするのではないか?と疑ってかかります。
これは転職回数が多い人を見る目と同じですが、脱サラ起業する人のほうが行動力やバイタリティがあり、その分会社に大きな損害を与えてしまう可能性が高そうに見えて敬遠しがちなのです。
なので、独立起業するときは、事業がうまくいかなかったとき、再就職も簡単ではないということも考えて、両親や知人に返すあてのないまま借金することや、配偶者や扶養する子供がいるならなおのこと、慎重にことを運ばねばなりません。
逆に、配偶者や子供や住宅ローンなどのしがらみさえなければ、ちょっとした思いつきで起業をすることもできます。とにかく最低自分だけが食っていける収入があればいいのであれば、意外となんとかなるものです。
そう考えると、自分のキャリアプランを考えるのは、20代のはじめから始まっていて、人生の中で大きな転機となる結婚・出産・持ち家をどのタイミングでどうするかなど考えていかなければなりません。特に結婚や出産は相手の都合もあるので、自分ひとりで決定できず、早めの対応が必要となってくるでしょう。
もし家族がいて住宅ローンもあるのに、そうしても起業したいというのなら、勤務している会社は辞めずに、休日や夜間にできる仕事を考えて興すべきでしょう。
こういう事を書くと、「そんな生半可な気持ちでは一生成功しない!」とか非難を浴びそうですが、それはあまりにも現実を知らなすぎです。
自分ひとりが路頭に迷うのは勝手ですが、大切な家族や出資者を巻き込んで、負けが圧倒的に多い博打みたいなことは避けるべきです。
公務員の場合は法律で決められていて兼業は御法度ですが、民間企業の場合は会社の就業規則に兼業禁止事項があったとしても、それが明らかに就業時間や労働の質に影響を及ぼすような場合を除き、就業規則違反には当たらないというのが過去の判例にもあります。憲法で保障されている「職業選択の自由」と、拘束されない休日に、本業には支障のない範囲で働いてどこが悪いのか?って当然の判例でしょう。
最初のうちは副業でスタートして、もしそれだけで十分ビジネスとしてやっていけそうとわかれば、会社を辞めて専念するということもできます。
そうしたケースで成功するのは100にひとつあるかどうかも疑わしいのですが、それぐらい家族に対する責任があるということです。
あと、50才過ぎてから起業を考える人もいるでしょう。これは、将来IPOして金儲けがしたいとか、もう宮仕えは嫌だからという理由ではなく、概ね定年がなくずっと働ける、自分の事業を興したいという思いからです。
確かに年金がこの先どうなるかもわからず、しかも満額出るのが65才から、若い人を中心に「高齢者の年金はもらいすぎだ!」という声などがあり、60才以降の生活や仕事の不安から、まだ元気なうちに、暖めてきた事業を思い切って始めるという人が多そうです。
若いときよりも人脈や経験、そして資金力もあり、起業しやすい環境にありますが、問題は体力や健康、そして苦労をする覚悟があるかどうかでしょう。
私なんかは、20代30代に体力の限界まで闇雲に働いてきて、40代で身体のあちこちが悲鳴を上げ、もう60過ぎてからはできれば働きたくない思いがいっぱいなので、とてもそういう気持ちにはなれませんが、働くことが人生に潤いを与えてくれるという人も多そうで、それはそれで結構なことです。
ただこの場合も、事業のため家族の日々の生活費にまで手を出してしまうようなリスクを冒すべきではなく、例えば後継者がいなくて廃業や解散寸前の事業を、貯金の一部でまかなえる費用で譲り受けたり、弟子入りをしていずれは引き継ぐというようなリスクを減らすように考えなくてはいけないでしょう。
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番組を見た人からの通報で、その認知症患者が、7年前に行方不明となり警察に捜索願が出されていた東京在住の方だったことが判明し、夫と再会できたと続報をニュースでやっていました。
NHKの調べによると、認知症患者が行方不明となって警察に届けられた件数は2012年の1年間で9607人で、大半はすぐに見つかるそうですが、見つかったときにすでに死亡していた方が351人、年末時点で行方不明のままという人が208人もいたそうです。
上記のケースは東京在住の患者が群馬県で発見され、着ていた衣服に名前が書かれていたのにも関わらず、警察間の情報共有の不手際や連携の悪さが露呈したわけですが、認知症患者の徘徊の多くは、住まいの近くで発見されるというケースが大半ということで、こうした都道府県をまたがっての捜索や身元照会に不備があると言われても仕方がありません。
盛岡在住の患者が京都で発見された例も出ていました。新幹線を乗り継いで5~6時間、距離にすると約1000kmの距離を患者は移動しています。
「認知症女性」700キロ離れた盛岡に警察官が送り届ける…京都の寺で保護
そして今後、現在65歳前後の団塊世代が、認知症に罹りやすい75歳前後の後期高齢に入っていくにつれ、今後もこうしたケースが増えていくことが予想されます。
さらに、要介護者の増加に伴って、すでに専門の24時間体制の介護施設や介護人が不足してきており、政府や国は認知症患者の自宅介護政策を強く推し進めています。
これはどういうことかと言えば、夜中でもいつ起き出して外へ飛び出してしまうかわからない認知症患者を家族、と言ってもその多くは同じく高齢の配偶者が24時間監視をしていなくてはならないということで、これは現実的に不可能とも思えます。
また例え息子や娘と同居していたとしても、ずっと介護にかかりきりになると、外では働けず、恋愛や結婚もできず、24時間、親の介護だけをすることになり、それもまた限界があります。
でもそうしないと、自宅介護の場合、家族はどういうことになるかと言うと、
二審も家族に賠償命令 認知症徘徊電車訴訟で名古屋高裁 2014/4/24
愛知県大府市で2007年、電車にはねられ、死亡した認知症患者の男性の家族に対し、JR東海が列車遅延などの720万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は一審・名古屋地裁に続き、男性の妻の責任を認めた上で、約360万円の賠償を命じた。
つまり91才の認知症患者が家族の見張りの隙を突いて外出し徘徊した結果、電車にはねられ死亡。その患者(夫)が外出した時に、うつらうつらしていて気がつかなかった85才の妻にその責任があり、鉄道会社に損害賠償金を支払えとの判決です。
もちろん鉄道会社も事故で大きな損害を受けており、今後のことを考えると、前例として残るだけに一歩も引けないでしょう。
でも自分より元気で力の強い認知症患者がその気になれば、自宅から抜け出すことを止める手段は家族にはなく、それこそ人権侵害になりそうですが、手足を縛っておくか、鎖でつないでおく以外難しそうです。
ちなみに前述の7年間身元不明だった患者は、身元がわかるまで仮の名前で生活保護を受けていて、その公費(税金)が使われた費用は7年総額でおよそ1000万円。
今回家族が見つかったことで、法令上はその費用を家族が速やかに返却しなくてはなりませんが、これも「ご無体な」って感じがします。
このケースでは群馬県館林市の安楽岡一雄市長が、「認知症は社会全体の問題で、人道的見地から請求すべきでない」と判断したそうで、ホッとしましたが、こうしたケースが今後増えてきた時に、果たしていつまでも温情的判断が下されるのかわかりません。
その行方不明になったまま見つからない認知症患者の話しに戻りますが、NHKの全国放送で、ゴールデンタイムに放送されたから身元が判明したものの、そうでなければこの患者は身元不明者のまま一生を終わっていたでしょう。
その後も18年間身元不明で狭山市の施設で保護されていた認知症の男性が、東京在住の方だったことが判明したというニュースがありましたが、これも当時に捜索願が出ていながら、なぜ今まで発見できなかったのか不思議です。
東京・渋谷区の「野村正吉」さんか 埼玉・狭山市で保護、18年の認知症男性
どうして警察が行方不明者の届け出を受けていながら、この認知症患者をすぐに発見できなかったのか、ささいなミスもあったようですが、優秀とされる日本の警察にしては残念なことです。
今回NHKがそのような警察の行方不明者捜索の問題をやんわり指摘したこともあり、あわてて警察署の連携や捜索方針の見直しなど対策を講じているようですが、今後急増していく中で、根本的な解決をするためには、全国一斉に「顔認識システム」を導入するのが一番手っ取り早いのではないでしょうか。
つまり身元不明者や中には身元不明で亡くなった方、身元がハッキリしない受刑者などをすべて顔認識ソフトで登録し、行方不明者の届け出があったときに、写真を持ってきてもらい、それを登録照合すれば一発だったハズです。
登録されるタイミングで、行方不明の捜索願か、身元不明者の登録か、どちらが先であっても、後から登録した時点での検索で発見が可能です。
あと身元不明のままで亡くなる人の数は、1年間に1000人から1400人に達します。そうした人の写真は、過去何十年とすべて撮られているでしょうから、過去の行方不明者の捜索でもそれを使うことも可能です。
最近の顔認識の正誤率は、一般的なものでも98%前後まで達しています。
つまり顔正面の写真さえあれば、生死に関係なく、経年変化があっても、特徴を一瞬で見分けられますし、完全一致はしなくてもかなり似ているとか捜索を効率化させることも可能です。
すでに一部の犯罪捜査では、犯人が駅や街頭の膨大な防犯カメラに写っていないかを調べるときに使われているとも聞きます。
顔認識ソフトはすでに一般的になりつつあり、カメラや画像処理ソフトでも使われていて、かなり普及しています。もっと高機能、高効率なものでも、時間をかけてじっくり検討し、何度もテストを繰り返して慎重に導入するほどのものではなく、コストもそんなに大きいものではありません。
要は、全国一斉に基準を決めてすぐにやるかやらないか、だけのことでしょう。そうすれば前述のような不幸な身元不明者(本人も家族も)を減らすことができます。
将来的には、累犯者や、指名手配犯などの写真も取り込み、プライバシー情報には注意しながらも、犯罪捜査や、再犯予防・抑止にも使っていけることを考えれば、従来からある指紋照合DBとは別に、顔認識ソフトと顔データの情報共有をもっと早くから取り入れてもよさそうに思います。
そんなに導入を躊躇うようななにか問題があるのでしょうかね?
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高齢者向けビジネス(第1部 居住編)、高齢者向けビジネス(第2部 趣味編)に続く第3弾は仕事編です。仕事のビジネスっていうのもなんか変なのですが、いわゆる生活費を稼ぐため、あるいは生き甲斐やちょっとした小遣いを稼ぐために働き続ける高齢者向けのサポートビジネスと言ったほうがいいかもしれません。
生活費を稼ぐために働く場合ならば、できるだけフルタイムの正社員勤務が望ましいですが、55歳を超えてから新たに正社員で雇ってもらえる可能性は、よほど強い縁故や専門技能でももっていないと皆無でしょうから、一般的には長期間+フルタイムで働ける契約社員や嘱託などの非正規雇用に頼らざるを得ません。
また稼ぐつもりなら土・日曜日が出勤(代わりに平日が休み)の業務や、深夜・早朝勤務といった普通一般の人があまり好まない勤務体制で働くことで、「非正規+高齢」という大きなハンデを乗り越える必要があるでしょう。もちろん特殊な資格があればそれを生かせればより有利です。
一方、生き甲斐のために働き続けたいとか、年金にプラスして少しお小遣いを稼ぎたいという高齢者は、毎日、月~金で朝から晩までのフルタイムで働く必要はなく、空いた時間や無理のない程度に働くというパートやアルバイト、派遣、ワークシェアリングといった形での労働が適しています。
ずっと昔から高齢者を対象とした派遣ビジネスというのは盛んに行われています。自由化が進む派遣業界も、以前は派遣期間や派遣職種など厳しい制約がありましたが、高齢者(60歳以上)の派遣の場合は、それらの制限(対象職種や期間など)が撤廃されていて割と自由にできるというメリットが労使双方にあります。
また4月に書いた「今こそワークシェアリングを根付かせるチャンス(かも)」では、元々主婦や学生など短時間労働を希望する人や、夜間に学校へ通う人、逆に昼間勉強したり用事があって夜しか働けないという人がワークシェアリングを使うものでしたが、これからは時間に余裕のある元気な高齢者がひとつの仕事を分け合って働く仕組みとして有効だと書きました。
繰り返しになりますが、高齢者が若い人のパートやアルバイトと比べて有利な点は、一般的に社会経験が豊富で(対人関係のトラブルが少ないとか、暗算での計算が速いとか、仕事の要領がいいとか飲み込みが早い)、働く時間帯は早朝から深夜まで割と自由に設定ができ(勤務シフトが組みやすい)、さらに長年社会人としての自覚があり、信用や信義を重んじますので、若い人よりは無断欠勤や遅刻、突然の退職なども少ないときています(人によるところが大きいですが)。
もちろん体力がない、病気や怪我をすると完治するまで時間がかかる、長時間ひとつのことに集中できない、機敏に動けない、ITに弱い、眼や耳が悪い、若い社員が父親のような高齢者を使いにくい、などデメリットもありますが、それらを考慮した上で、1日4~5時間の短時間勤務で高齢者シフトを回していくという働き方は、それなりに労使双方にとってメリットのあることではないでしょうか。
それらの仕組みを1企業でおこなうのは求人やシフト作成、勤怠管理、給料計算・支払など労務管理上面倒なので、できれば派遣会社や人材コンサル会社が代行して募集~労務管理をおこなうのがベターと思われます。
一例を挙げると、マンションの管理人は住み込みでなければ通常は平日のみ9時~17時までの勤務体制が普通ですが、保安上や宅配便の代理受け取りなど考慮すれば、土・日曜日も含め24時間とは言わないまでも8時~23時頃まで管理人が常駐すれば、昼間は働いている人でも管理人とコミュニケーション(頼み事だとか、設備の修理依頼など)がとれますし、また1人住まいの高齢者や、両親がともに働いて夜まで子供だけの世帯を気にかけておくこともできます。
この8時~23時の1日15時間勤務は、ワークシェアリングで6名(1日5時間ずつ3人のシフトで1日おきに勤務)の管理人がシフトを組めば可能で、年金をもらっている高齢者にとってはほどよい勤務時間・日数です。
利用者側も部屋を別に用意して住み込みの管理人を雇ったり、同様の時間を専門の警備会社に委託するよりもずっと格安で済むはずです。
人材派遣といえば以前なら主婦や子育ての終わった女性が再び社会に復帰する際に利用したり、プログラマのような専門技能を持つ人がフリーの立場で働いたり、製造業などで時期によって業務量に波があったりする季節労働的な働き方をする人に向いたものとされましたが、これからはサービス業を中心に、恒常的な高齢者派遣ビジネスが主役に躍り出ても不思議ではありません。
ひとつの例ですが、株式会社高齢社という「高齢者の高齢者のための高齢者による」会社がもう10年以上前に設立され成果をあげています。
またその他多くの派遣会社がシニア派遣と銘打った独自のサービスを展開しています。
私もあと4年にせまる定年後にはこれらのサービスに登録し、お世話になるかも知れません。
次に高齢者の仕事と言ってもその体力や健康状態で様々変わってくると思われます。
派遣の場合だと主としてサービス業(ビルメンテ、修繕・修理・点検、飲食店、販売店、駐車場、警備、管理人、電話応対、配達、チラシ配りなど)ですが、これから高齢者がおこなう仕事の中でもっと流行りそうなのは、自宅でもできる内職系がヒットする予感があります。
内職というと今までのイメージは主婦などがおこなう翻訳、データ入力、採点、シール貼り、DM発送、テレアポ、刺繍や裁縫などなど。
しかし社会経験が豊富な高齢者がおこなう内職は、各種のネット販売やネット仲介、ネット売買代行、ホームページ更新、データサーチャー、メルマガ執筆・配信代行、技術マニュアル製作、ネットワーク監視、講演・演説のシナリオ作成、翻訳・校正、投資相談、節税相談など幅はさらに拡がっていきそうです。
一般的な高齢者の場合、ある程度の年金をもらっていますので、毎日フルタイムで働く必要がある人ばかりではありません。もっと言えば貯金もあるので月に数万円の小遣いが稼げばいいという人もたくさんいます。
それならば、アフェリエイトや仲介、代行のネットビジネスをすることで、ある程度知識と経験を積めばそう難しいことではありません。
とにかく時間はいくらでもありますから、会社で働きながら副業でそうしたことをやっている人からすると羨ましいぐらい自由な時間があるわけです。
そしてそれが高じ、月に十数万円も稼ぐようになってくると、もう立派な個人ビジネス、個人事業主です。最近増殖してきているCGMというビジネスモデルがありますが、それはアマチュアの読者に記事やコンテンツを書いてもらって、それをたくさん集めてメディアと称する「人のフンドシで相撲を取る」ものです。つまり裏を返せば普通の読者が書いたものがお金に替わることもよくある話しなのです。
そのひとつにレストランや物販の評価サイトでサクラの書き込みをするようなあまりお勧めできないネット内職もありますが、そうした人を騙す目的ではなく、地元企業に地域の名所紹介文を頼まれて書いたり、近所の商店会のホームページに沿革やPRコピーを書いたりと、最初のうちは頼まれてボランティアで引き受けていたとしても、それが評判になると次は有償で依頼されて、人に喜ばれるような仕事もあるでしょう。
但し、文章がそこそこ書けると言うだけでいきなりプロのライターになろうと考えるのは大甘で、ただでさえフリーライターをやっていて、それだけで食えている人はごくごくわずか、せいぜい自分の目が届く範囲で、基本は趣味の延長ぐらいと考え、まずは副業的な小遣い稼ぎに徹したほうがいいでしょう。
ネットでできる仕事がいいと思うのは、実に高齢者向けの仕事だからです。
まず自宅の中にネット環境さえあればできます。団塊世代以下で技術職やホワイトカラーだった人ならまずPCは扱えるでしょう。
しかも文章を書くのは昔から書籍や新聞を熱心によく読み、稟議書や報告書、起案書、マニュアルなどビジネス文書を書くのも手慣れたものです。
最新テクノロジーや知らない業界のルールなどは新たに勉強していく必要がありますが、そうした副業用勉強パックを高齢者に向けて販売するのもひとつの仕事になるかも知れません。前回書いた趣味編の料理教室の下の階では高齢者向けの「ネットビジネス教室」ができるかもしれませんね。
この高齢者がおこなうネットビジネスで注目したいのは、実は私がやりたいと思っていることですが、地方の農産品のネット直販をごく少量から引き受けて代行するビジネスです。
自分の実家のある出身地にいる古い友人・知人や、旅行先で知り合った農家さんでもいいのでそういう人から農産品販売の委託を受けます。
つまり小さな農家が自分でわざわざ楽天やyahoo!ショッピングに店を構える必要などなく、親しくなった農家の人から毎朝FAXかメールで「今日はダイコンとニンジン各50本、ハクサイ30個、自家製タクアン漬け20本を1個○○円で売りたい」と委託されたら、それを利用料のかからないyahoo!ショッピングに写真入りで出品し、購入者が現れたらその送り先を農家に伝え、送料と販売価格の何割かを農家の人に渡すというスキームが出来上がります。
売れなければそれは市場価格に合っていないということですから、それを伝えてノウハウを積んでいけば、やがては常連さんもつき、売れ残りもなくなっていくようになります。
JAや会社が事業としておこなうなら、ある程度まとまった分量と、形の整った製品(規格品)でなければ成立しませんが、小遣い稼ぎの個人がおこなうなら、どんなに少量の出品でも、また曲がったキュウリでも、表面に少し傷が入った果物でも出品が可能です。
個人でおこなうなら、少量であっても複数の農家と手を組み、毎日2~3時間やればそこそこの小遣いにはなりそうです。
私なら近所の道の駅へ行って、そこで販売されている地元特産品(加工品や農産物)の製造者と交渉し、まだネット販売を手掛けていない商品の代行販売をおこない、売れたらその手数料を得るというところから始めますね。仕入や発送、入金管理等が不要でノーリスクですから。
そして自宅の押し入れの中や倉庫に眠っていて、捨てたい、あるいは誰かにあげたいと思っているものって結構あるものです。
ご近所の中で顔が広い方であれば、知り合いの方にそうしたものを出してもらって、代わりにネットオークションに出品し、落札価格の20~30%程度を手数料としてもらうというビジネスもすぐにでも始められそうな仕事です。
落札後のクレームなど、リスクがまったくないとは言えませんが、通常ならご近所さんにも喜ばれ、買った人にも喜ばれ、3者3得の満足が得られそうです。
【関連リンク】
820 高齢者向けビジネス(第2部 趣味編)
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733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
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