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NHKなどで高齢者の貧困問題が取り上げられ、それに対する支援の必要性をマスコミが訴えかけると、一部の人からは「お金持ちのほとんどは高齢者なんだから、これ以上高齢者を優遇する政策なんて必要ないじゃん!」「支援するにも財源はどこよ?」ってもっともらしく言う人がいます。

その根拠として、よく使われるのが下記の総務省統計局の家計調査などです。

総務省統計局家計調査
貯蓄・負債編 二人以上の世帯 世帯主の年齢階級別(2013年度)


これを見る限り、60~70歳と70歳以上の高齢者の貯蓄金額が突出していて、全体の割合でも60歳以上の世帯主がいる二人以上の世帯の貯蓄額は全体の半数を超えています。

ま、ちょうど高齢者の仲間入りをした団塊世代は、長年働いてきたことによる退職金や貯蓄で資産形成ができていること、年代的にも親からの遺産相続を終えて、人生でもっとも多くの資産を保有していると言っても間違いないでしょう。だからと言って現在の高齢者の大半が資産家というわけではありません。

つまり「世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の分布」を見てみると、2000万円以上の世帯資産を持つ裕福な高齢者世帯が43%あるのに対し、300万円未満の資産しかない二人以上の高齢者世帯も11%以上あります。

さらに「二人以上の高齢者世帯」ではなく、個人(単身世帯含む)で見た場合、60歳以上の高齢者では「2000万円以上」の貯蓄があると答えた人は15.3%、「1000万円以上」で26.1%に対し、「貯蓄なし」が9.9%、「貯蓄なし」を含め「300万円未満」が30.4%にのぼります。

つまり60歳以上高齢者全体でみると約3割が貯蓄は300万円未満という、いわば貧困状態なのです。(出典:内閣府平成23年度高齢者の経済生活に関する意識調査結果)



300万円近くも貯蓄があればいいじゃないと思うのは現役で働いている人だけで、健康の問題等で働けない人や、働きたくてもそうそう仕事が見つからない高齢者の場合、今後得られる収入は年金しかなく、300万円未満の貯金というのは、大きな病気や怪我でもして入院したり、また家の修繕など、ちょっとしたことですぐになくなってしまいかねない実に心許ないものです。

総務省統計局データと内閣府意識調査のデータで結構貯蓄額に差があり「?」と思うところもありますが、これらの調査データというのは、全国民対象の国勢調査以外では何千万人の各世代からせいぜい千人程度のアンケートや調査表のサンプルをとって得られたもので、必ずしも実態を現しているものではありません。

例えば、資産がほとんどない人と、数千万円の資産がある人に「保有資産のアンケート」が送られた場合、どちらのほうが回収率が高いかと言えば、調査と税務署と関係がなく秘密が保持されるのが前提であれば、資産がある人からのほうが回収率が高いのは明かです。

そういう偏りの積み重ねと、極めて少数のサンプル数での統計データですから、内容に大きく食い違いがあっても不思議ではありません。

それはともかく、高齢者、65歳以上と仮定すればおよそ3200万人ですが、貯蓄額が300万円に満たない30%の人数と言えば960万人です。

前述の通り、「恵まれた高齢者にこれ以上手厚くする必要などない!」という人もいますが、二人以上いる世帯の平均貯蓄額平均(1101万円)に遠く及ばない、高齢者の30%、960万人を、国は将来のある若者のために見捨ててしまって構わないというつもりでしょうか。

それともそういう高齢者は家族や親戚が手厚くサポートをするべきだと言うのでしょうか?

この家族(息子や娘)が自分の親など高齢者の生活の面倒を見なくちゃいけないという流れは一見正しそうですが、それが結果的に貧困の連鎖を続けることになります。

つまり、貧しい親を子供が介護や金銭的な支援をしなければならないと、その子供は高等教育を受けたくても、親の介護の世話や医療費を稼ぐために受けられず、そして学歴がなく働ける時間に制限があるため非正規労働しか選べず、いつまでも貧困から脱出できない人を作るということです。

高齢者向けの支援を反対する人って、高齢者向けの費用を削って、あるいは高齢者も負担する消費税をもっと取って、その中から若者向け、少子化対策にもっとお金を使えと言います。

では、現在、若者の支援や、少子化対策に国のお金(税金)は使われていないのでしょうか?

内閣府 行政刷新会議事務局の発表しているデータでは、(主として若者の)就労支援(120億円)、求職者支援(628億円)、非正規から正規社員化支援(194億円)、雇用創出(350億円)、待機児童ゼロ施策(200億円)、35人以下学級の促進(教職員の増員)、高校授業料の無料化、新たな子供手当、学校施設整備などにも使える地域自主戦略交付金(1兆円)などがあります。

被災地支援の復興予算19兆円に比べるとごくわずかですが、それは高齢者向け支援も同じ事で、高齢者が受けられる支援というものは特に目新しいものはなく、逆に高齢者医療費の負担増など負担を増やす方向にあります。

だからNHKなども「高齢者の貧困問題をなんとかしないと」と問題提起しているわけです。

ちなみに国が決めている高齢者向けとされている介護支援(33億円)、地域医療支援(19億円)というのがありますが、介護支援策=介護事業者や介護者への支援、地域医療支援は都市部に集中する高度医療から在宅医療や中小の地域病院の活用ということで、決して貧困層の高齢者のための支援ではありません。

それらを並べて比べてみると、高齢者からは、「若者や現役世代への優遇策ばかりで、もっと切実な貧困にあえぐ高齢者福祉に力を入れてくれよ」という声が出ても不思議ではないのです。

なぜそういう「高齢者支援ばかり優遇されている」と思われるのでしょうか?

もちろん日和見主義の一部マスコミの世論誘導もありますが、ひとつは年金の将来像が見えないので、今の高齢者がもらっている年金を若い人がうらやむ気持ちから。

次に高度成長と終身雇用を生き延びてきた高齢者が得た退職金が、終身雇用と年功序列賃金の崩壊で今後は消えつつあることに対する不安。

3つめに旧厚生省・医学界・医薬業界などにつきまとう規制と既得権益による医療費高騰のツケが回ってきて、税金で負担する医療費支出が膨大になりすぎてしまったこと(それを高齢者に責任転嫁している)。

そして最後に政治に関心の高い団塊世代以上の国民の声が、政治や社会の声に反映しやすいことなどが考えられます。声が大きいと、それだけ目立ちますので、なにか高齢者ばかり優遇されているという錯覚を覚えます。

そんなわけで、高齢者向けの社会福祉コストがかかりすぎ!って言うのなら、若い人達や現役世代への支援コストと比較してものを言えよってことで、単に老い先短いいうだけで、困っている高齢者を切り捨ててしまうような社会保障なんて許せるか!っていうのが私の結論です。


【関連リンク】
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
574 仕事を引退する時、貯蓄はいくら必要か

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871
何ものも恐れるな〈上〉(中)(下) ディーン・R. クーンツ

数多くのヒット作を生み出してきた人気作家ですが、なぜか1999年に単行本で発刊され、その後文庫化はされていません。発刊したのが「超訳」で有名?なアカデミー出版という英語教材などが中心の小さな会社?だからでしょうか。またAmazonで探しても上中下巻の上巻だけしか売られていません。そんなの買わないってば。

内容はクーンツお得意のバイオホラー、医療ホラーもので、古くは「ウォッチャーズ」「心の昏き川」などに代表されるものと大差ありませんが、毎度ドキドキさせられ、時間を忘れて3巻はあっという間に読み終えてしまいます。

遺伝子工学により生まれたなぞの動物や生物と人間の闘いって書いちゃうと、荒唐無稽なものになってしまいますが、ま、それはあえて否定しません。クーンツファンならそれも承知の上で読んでいるわけですから。

主人公は色素性乾皮症(XP)と言われる遺伝性の難病患者で、日光はもちろん、電球などの明るい光りをも皮膚や目に当たると組織が壊れ、癌が発生してしまう病気の持ち主です。

したがって、外へ出る時は日光があたらない夜中で、しかも街灯やクルマのライトにあたらないよう夏でも肌を出せず、紫外線を通さないゴーグルや手袋が必須、顔にはクリームを塗ります。部屋の中でもロウソク程度の灯りにしなくてはならず、そうした大きなハンデキャップを背負った主人公が、愛犬のレトリバーと、両親の死の謎について調べていきます。

タイトルは主人公が死に直面した父親から「何ものも恐れるな。怖いものなどなにもない」と言い聞かされ、降りかかる数々の災難にも負けず、勇気と知恵を出して巨悪と正面切って対決するところから付けられているように思われます。

なお米国ではこの小説の続編として「Seize the Night (Moonlight Bay Trilogy) 」が出ているようですが、翻訳版はまだ出てません。

著者別読書感想(ディーン・R・クーンツ)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

木暮荘物語 (祥伝社文庫) 三浦しをん

2014年10月に文庫版が発刊(単行本は2010年発刊)されたばかりの連作短編小説です。小田急線世田谷代田駅から徒歩で数分にある(架空の)オンボロアパート木暮荘を舞台として、そこの大家さんや住人、通りすがりの人に起きる様々な風景が描かれています。

著者の書いた小説で最初に読んだのが「風が強く吹いている」でしたが、こちらも大学の陸上部の住人が住む世田谷のおんぼろ下宿が舞台で、共通性を感じるというか著者自身この街に強い愛着があるのでしょう。

短編のそれぞれタイトルは、「シンプリーヘブン」「心身」「柱の実り」「黒い飲み物」「穴」「ピース」「嘘の味」で、シンプリーヘブンはアパートの住人の若い女性がフラリと外国に旅に出掛けて3年ぶりに戻ってきた元彼と、現在付き合っている今彼との奇妙な三角関係で悩むストーリーなど、おかしくもあり、奇妙な人間関係が展開されます。

しかし、主人公が男性の場合でも、やっぱり女性視点だなぁって強く感じます。女性の登場人物はステレオタイプと言っちゃなんですが、いずれも気だてもよく可愛く性はおおらかで、男性は風俗嬢を部屋に呼ぼうとする老人でも、天井の穴から女子大生の生活を覗く独身男でも、それなりに周囲の女性からは拒絶反応がなく、嫌われず、ありえねぇって感じ。

どうもこうした甘ったるくて都合のいい人間関係が主役の小説が最近多くて、中年域を完全に超えて、まもなく高齢域に入らんとする私には、ちょっとキツイかなぁって感じです。

著者の作品では前述の「風が強く吹いている」や「神去なあなあ日常」、「舟を編む」など、ひとつのことに打ち込む男性を主人公にした小説はたいへん面白く書かれていると思うのですが、なぜか女性を主人公にすると、変にわざとらしく作ってしまうのか、ベタになってしまっている感じがして、そうも好きになれません。これから読む前にそこのところ選ばなくては。

著者別読書感想(三浦しをん)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ファイアボール・ブルース (文春文庫) 桐野 夏生

この小説の初出は1995年の「ファイアボール・ブルース―逃亡」で、1998年に改題されてこの文庫版が発刊されています。そして2002年には続編の「ファイアボール・ブルース」が出ています。

主人公はマイナーな女子プロセス団体に所属するレスラーで、まだ勝ち星はなし、マチュアレスリングで優勝経験のあるレスラーの付き人もしています。

プロレスの場合、基本は筋書きのあるスポーツではあるものの、そういうところは一切触れられず、一途に強い者が勝つ式の純情路線まっしぐらで描かれています。

本場アメリカからやってきたという触れ込みの女子レスラーとの対戦で、ほとんど試合をしないまま会場から逃げ出したレスラーを不審に思った対戦者と主人公、それにマイナーなプロレス専門誌の編集者兼記者が、東京の川に浮かんだ謎の外国人女性との関係に迫っていきます。

ま、プロレスは小さな子供の時に父親が見ているときに一緒に見ていたぐらいで、たいして興味はなく、女子プロレスに至ってはテレビ放送もほとんどないし、一時期は歌手としてデビューしたレスラーもいたようですが、まったく興味も関心もなく、当然ながらなにも知りません。

そう言えば数年前には不知火京介著の「マッチメイク」を読みました。こちらは男性のプロレスラーが主人公で、どちらもその普段の生活や興業の模様がよく描かれています。それにどちらも殺人事件が身近に起きてと、純粋なプロレス青春群像ってやつでないのは残念です。

非日常でないのはプロレスだけで十分なので、加えて非日常的な殺人事件など絡ませなくても十分に面白そうなストーリーができそうに思えるのですが、そのように願う読者は贅沢でアマちゃんなのでしょうか。

著者別読書感想(桐野夏生)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

梅干しはデパ地下よりBARで売れ!? 小寺正典

著者は松下電器産業(現Panasonic)出身のビジネスコンサルタントで、前著「役割を全うする生き方があなたを成功に導く―やり遂げる力・関わる力」に続く2冊目のビジネス書とのことです。

今回は前著とは違って、わかりやすいマーケティングの入門書という位置付けで、まるで漫画かライトノベルを読むような感覚で、気楽に読み進められます。

最近はこうしたドラマ風のストーリー性をもたせたビジネス書も多く、特に若い人にも取っつきやすくていい傾向です。私もビジネス書を読むときは、なにか正座でもして姿勢を正して読まないといけないかと思いますが(思うだけでしませんが)、こうした小説風のものなら寝ころんで読んでも違和感はありません。

主人公は和歌山の老舗梅干し製造会社の若社長。同業者や海外製品などに苦戦を強いられている中で、幼なじみの同級生でずっと東京に行っていた女性が親の介護のために和歌山へ帰ってきて、この梅干し会社に入社したことで、マーケティング手法を活用し大きな改革が進められていきます。

この女性こそ、東京の大手食品会社でプロダクトマネージャーをやってきたマーケティングのプロで、今まで老舗という立場に甘えてきた企業や古参の社員にカツを入れていきます。

梅干しというと我が家でもそうですが、私は大好きですが、子供や若い人にはあまり人気がなく、高齢者が中心の消費者となっています。つまり先細りの衰退産業と言えるかもしれません。

しかし伝統的な梅干しは見方を変えれば世界にも誇れる健康食品でもあり、酸っぱく塩辛いというイメージから脱することができれば新たな需要も生まれ、というところから大きな夢と無限の可能性が広がっていきます。

今後このマーケティングのプロを主人公にした続編が出ると面白いかもしれません。次はどの業界へ飛び込むのかと考えると楽しみです。

【関連リンク】
 10月後半の読書 シッダールタ、おひとりさまの老後、正義を振りかざす君へ、宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作、肩ごしの恋人
 10月前半の読書 プラナリア、暗闇にひと突き、「反原発」の不都合な真実、クリムゾンの迷宮、監査難民
 9月後半の読書 マスカレード・ホテル、西の魔女が死んだ、オレ様化する子どもたち、ペンギン・ハイウェイ、動物農場



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870
大政奉還で江戸時代が終わり、天皇が京都を出て東京に居を定めて以降、法的にはなんの定めもありませんが、日本の首都はなんとなく東京ということになっています。

その後東京は政治・経済の中心地として栄え、人が多く集まることで、文化や学問も東京に集中し、ここに一極集中というなにかと便利でもありながら、生活者にとっては不便を強いることも多い、世界の中でも異例の巨大都市を作り上げてきました。

安倍晋三首相が10月の参院予算委員会で答弁に答える形で、首都機能移転構想について「地方創生を考える上で、東京一極集中の是正は重要な課題だ」と述べ、前向きな姿勢を示しました。

過去にも何度となく東京の一極集中を緩和し、また防災リスクをなくすため首都機能を移転してはどうかという話しが浮かんでは消えていました。

首都機能の移転とは、

1)天皇の皇居を移転
2)国会や政府機能の移転
3)中央行政・司法機関の移転

などがごっちゃになっていることがありますが、概ね話題としてあがるのは、2)と3)が多いのではないでしょうか。

1)の皇居移転は、東京周辺の環境の悪化や、首都圏大規模災害時や凶悪テロからの予防と安全対策を考えてとも言われてきましたが、その後環境は改善し、政治的、宗教的な凶悪テロ活動が沈静化している現在では、あまり移転する理由はなさそうです。

したがってここでは2)と3)について少し話を進めるとして、かなり真剣に検討されたのが今から20~30年前のバブル景気の頃で、東京の中心部にある政府や国の機関を地方に移転させ、その跡地をバブルで膨らんでいる三菱地所や森ビルなどに売れば、地方にかなり広大で豪華な新首都の建設が可能だとまことしやかに語られていました。

世界を見ると、政治と経済の中心地を分けている国は結構多く、アメリカのワシントンとニューヨーク、ドイツのベルリンとフランクフルト、カナダのオタワとトロント、オーストラリアのキャンベラとシドニー、オランダのデンハーグとアムステルダム、インドのニューデリーとムンバイ・デリー、ブラジルのブラジリアとサンパウロなどがあります。

東京と同様に政治と経済の中心が同じ都市にあるのは、英国のロンドンやフランスのパリ、ロシアのモスクワ、イタリアのローマ、中国の北京、韓国のソウルなど。

国内の首都移転の議論では、阪神大震災や東北大震災を経験し、それらの規模の震災が東京で発生した場合、経済はもちろんのこと、政治も同時にストップしてしまうリスクが高いと言われています。

確かに人口減少時代に入ったとはいえ、東京はまだ人口が増え続け、古い木造の過密した住宅や、狭くて曲がりくねった道路など、防災に適していない場所が多く、また人口過密ゆえ、もし大事が起きると避難する場所や経路が少なく、そしてなにより生活インフラや流通機能が失われ、生き延びるための水や食料、燃料などがすぐに尽きてしまい3千万人以上と言われる首都圏の住人が想像を絶する大混乱に陥ることになります。

首都圏はほとんど被害がなかった東日本大震災の時ですら、ガソリン不足は深刻で、お米やミネラルウォーターも品不足が何週間も続きました。もし道路などインフラが寸断され物流が停まり、電気やガス、水道が使えなくなった、もう阿鼻叫喚の地獄絵図です。

そうした混乱の中でも、政府や行政の首都機能が混乱した現場から離れた場所にあり、機能が維持できれば、まだ緊急事態の対応が速やかにできそうです。

首都移転の必要性はそうした自然災害が多い日本の事情が最大の理由ですが、それ以外に、寂れていく地方の活性化という問題も合わせて考えることが可能です。

つまり新しい首都を地方へ移転することで、移転先やその周辺では巨大な経済圏が生まれます。移転により転居する公務員とその家族の住居はもとより、交通網や飛行場などのインフラ整備、国の外郭団体や公共事業関連企業などの移転や新設など巨大な新たな需要が発生します。

そんな予算はどこにある?また子供達に借金をつけ回すのか?って心配する人が出てくるでしょう。

移転の費用は確かにバブルの頃なら国会や霞ヶ関の国有地、一等地に建つ議員や公務員宿舎などを払い下げることである程度まかなえたでしょうけど、都心とはいえ大きく下落した今ではそれだけでは十分とは言えません。

しかし同時に地方で買うことになる新しい土地もバブルの頃よりもずっと安く(国有地や公有地ならタダ)済みますので、現在でもそれを新首都建設の中心財源として考えることは可能です。

そして東京に首都機能がいずれなくなるとわかっても、東京の中心地の土地が今よりもそうは暴落しないでしょう。投資が必要なら、昔マンハッタンのビルをジャパンマネーで買いまくったように、今度はチャイナマネーをうまく使えばいいのです。

さて最近といってももう15年ほど前ですが、政府から委託を受けた有識者が提案した「国会等移転審議会答申」というものがあります。

これは、国の三権の中枢機能である国会・内閣・中央省庁及び最高裁判所の地方への移転を構想したもので、かなり長いもので全部は読んでいませんが、その中でも多くの人の関心が一番高い「移転先候補地」について簡単に書いておきます。

もちろん当時、新聞等でも報道はされていましたが、15年も経ってもうすっかり忘れてしまっている人も多いでしょう(私も忘れてました)。

ただこの答申は上記の通り1999年に出されたもので、東日本大震災やその後の原発事故に関しては当然ながら考慮されていません。しかしこの候補地選定において、東日本大震災が大きく影響するかというとそれはありません。

で、まず移転先候補地としてあげられたのは、

1)宮城
2)栃木・福島
3)茨城
4)岐阜・愛知
5)静岡・愛知
6)三重・畿央

の6地域です。



その6地域のメリット・デメリットを重み付けで総合評価した上位2つが、
1)栃木・福島353点
2)岐阜・愛知340点
です。

使われた総合評価とは、例えば「外国や経済の中心地東京とのアクセスの容易さ」とか、「地震や火山災害の安全性」、「水供給の安定性」、「地形の良好性」「景観、環境」など、首都として相応しい多くの評価点からなります。

また「土地の取得のしやすさ(国有地が多いとか土地利用密度の高低)」などもポイントとして加算されます。

2011年の原発事故のあとの現在ならそれに「電力供給の安定性」とか「原発に重大事故が起きても避難地域にならない場所」とか加わりそうです。

候補地となった栃木・福島地域とは具体的にはどこかと言うと「栃木県の那須地域と福島県の阿武隈地域にまたがる地域」で、那須塩原市と白河市にかけてのイメージでしょうか。昨年その近くをクルマで走りましたが、山間地域で土地の利用度は低いように感じました。

温泉地やスキー場が近く、リゾート地としては申し分ないのですが、新しく使える平坦な場所がどれほどあるのかなって気もします。

次点となった岐阜・愛知地区は、多治見市、土岐市から瀬戸市、豊田市にかけての場所と思われます。こちらは濃尾平野の一角とその周辺の山や高原地域が多く、なんとなく新首都のイメージが作れそうです。

また本州の大動脈が交わる位置でもあり、東京や東海、関西、北陸地域へのアクセスもいいところで、リニアが通れば新首都駅ができ、東京まで1時間かからず行くことができそうです。昔1年だけ名古屋に住んでいたとき、どこにいくのにも便利な場所だなって思った記憶があります。

ただこのエリアは大都市名古屋に近く、別の目的のひとつである「地方の活性化」というにはあまり役立ちそうもなく、また東南海地震の震源地や、その他多くの活断層からも近いという懸念点が指摘されています。

その他にも、総合評価はそれほど高くはないものの、茨城地区の常陸那珂市周辺、三重地区の鈴鹿から四日市、畿央地区は京都・奈良・三重県の府県境などが候補に挙がっています。

それぞれに一長一短あり、選定の基準の優先度が例えばコスト面とすれば、土地代が安く、国有地・公有地、または大企業の工場跡地などが多い地域ほど有利になったりします。

で、私感ですが、この候補地が発表された後、東日本大震災が起き、東北復興ということも合わせて考えれば、15年前に一番評価の高かった栃木・福島地区案が一番相応しいかなと思います。

そうすれば、エリアは離れていますが、津波と原発事故で大きな打撃を受けた福島県民や東北の経済界のためになりそうです。

と、書いてきてなんですが、この首都機能移転計画は、おそらく今後ずっと絵に描いた餅のままで、実現することはないでしょう。

理由は、

1)霞ヶ関の官僚達が全員反対し、政治家は官僚を敵に回すと失脚することを知っている
2)首都移転よりその代案的な道州制の勢いが強まっている
3)財政悪化で巨大公共事業を始めることができない
4)ひとつの政権や党の長期政権・安定多数が長く続かない
5)やがて東京の人口減が始まり、移転の優先度が低くなる

などでしょうか。

特に1)が大きく、今の官僚には逆らえない自民党政権では絶対に不可能で、政権が改革派に変わったとしても、その基盤が安定するには何年、何十年もかかり、こうした官僚には嫌われ、しかも選挙で票にはつながらない大プロジェクトに関わっている余裕はないでしょう。

もし過去に首都機能移転ができたとしたら、比較的政権が安定していた中曽根首相か、小泉首相の頃だったでしょうけど、もう今は少しの失点でも与野党が入れ替わる可能性がある不安定な時代で、こうした長期的なプロジェクトを安定して推進できる器量をもった(逆の言い方をすれば独裁的な)強いリーダーは出てこないでしょう。

もし今後首都機能移転ができるとしたら、、、

それは首都直下型地震が起きて、東京が壊滅状態になったときです。その時には当然ながら東京では住民の生活と経済活動の復興が急がれ、国や政府機関は一時周辺地域へ移されるでしょう。

そして間近で地獄を見た東京に戻るなら、もっと安全で快適な場所へ移ろうという官僚や政治家の機運が高まる可能性があります。


【関連図書】

首都崩壊 高嶋 哲夫
日本史の謎は「地形」で解ける 竹村 公太郎
世界の首都移転―遷都で読み解く国家戦略 山口 広文
道州制で日本はこう変わる ~都道府県がなくなる日~ 田村 秀

【関連リンク】
816 2050年に向けてのグランドデザイン
807 労働人口と非労働人口推移と完全失業率
715 人口減少と鉄道路線廃止
711 地方が限界集落化していく
617 人口減少と年金受給者増加
583 人口が減るのもいいんじゃない

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869
ビジネス誌などでよく見掛けるのが「働かないおじさん」というなんとも嫌みで、オジサン達を見下した感のある内容とタイトルです。

なぜあのオジサンは、働かないのか?」(東洋経済オンライン)

なぜ?企業にいるのか… 「働かないオジサン」「働くほど有害無益なオジサン」 」(SankeiBiz)

特集ワイド:「働かないおじさん」増殖中!? 原因は大企業の年齢構成の悪さ?(毎日新聞)

オジサン世代に増殖中!職場の「お荷物」社員Part 2 働かない社員を量産 大企業人事部の“大罪”」(週刊ダイヤモンド)


元々、この「働かないオジサン」という言葉は、楠木新著の「働かないオジサンの給料はなぜ高いのか」から派生してきたものかと思われますが、年齢に関わらず、どの年代にも「働かない」、正確に言えば「役に立っていない」人の割合は一定数必ずいるもので、「働かないオジサン」というのは、一種の「近頃の若い奴らは・・・」というのとある意味同じようなものなのかも知れません。

働かないでニートや引きこもりをしている人や、ちゃっかり専業主婦しているセレブな若奥様や、「低賃金で働くぐらいなら生活保護を受給した方が、、、」っていう、「働かない人達」ではなく、一応ちゃんと毎日会社へは通勤して家族を養っている「働かないオジサン」ばかりをやり玉に挙げるのは、一番批判しやすいせいなのかどうかわかりませんが、とても悪意に満ちています。

そこで、「働かないオジサン」を責めたり、茶化したりされる、いくつかの原因と理由を考えてみました。

1)今の40代半ば以上の人は新卒で入社するときには「終身雇用」「年功序列」と言われて入って、若いうちは忍耐して我慢だぞと先輩や上司に言われて安い給料でこき使われてきた人が多いが、いつの間にか「終身雇用はなかった」ことにされてしまい、それでモチベーションが大きく下がり、若い人からは「働かないオジサン」と見える。

2)定年が近くに見えてくると、もうやる気や向上心はなくなり、って言うか、新しいことにチャレンジする意欲がなくなり、周囲からは、毎日ぼんやりしているだけと見られてしまう。

3)子供も成長して社会人となり、家での居場所がなくなり、仕事や家庭の場以外の、例えば趣味や同好の仲間との活動、興味がメインとなり、それらが忙しくて、もう仕事どころではなくなってしまう。

4)20代や30代の若い人からすれば、今の50代は年金や退職金などギリギリ逃げ切れそうな世代と映り(実際の完全な逃げ切り世代は団塊世代まで)、それゆえ、うらやましさ、ひがみなどが入り交じった批判しても許される対象となる。

5)ともかく終身雇用だと信じてきた今のオジサンは、団塊世代の先輩方を見習って、50代は「なにもしなくても高収入」という思い込みがあり、その分30代、40代には身体を壊しながらも会社に尽くしてきた。それなのになんで50代にもなって必死に働かないといけないの?という複雑な思いがある。

ま、今のオジサンの思い込みを批判したり、若い人の気持ちを代弁しても、今までの先輩達が過去何十年とずっと「働かないオジサン」をやってきたのだから、どうしてもその影響は受けてしまうでしょう。

大手企業なら、50代にもなれば、ごく一部の部長や役員になれる人は除いて、昔で言う窓際族となり、関連子会社への片道切符の出向などで、第2の職場を与えられ、そこで定年まで(働かずに)おとなしく勤め上げるっていうのが普通でした。

ちなみに「窓際族」という言葉は今の若い人は知らないでしょうけど、1977~1978年頃から使われだした言葉で、「閑職に追いやられた中高年社員」の意です。つまり今から36~37年前からこのような「働かないオジサン」は普通に実在していましたし、おそらくそれ以前もいたはずです。

そして社会人となった80年代のバブルの頃は、「年功序列と終身雇用こそが世界一の経済力を築きあげた日本の成長力の秘訣!」なんて自信満々で言われていたのですから、今のおじさん達はそれを信用しないわけがありません。

なのに、2000年頃から急に「それではダメ、オジサンも目一杯に若い人と同じか、それ以上に働かなくっちゃ!」って言われても、、、ってところです。

そういう意味でも年功序列、終身雇用を含めて無事に逃げ切れたのは団塊世代までで、今のオジサンだけを責めるのはちょっと筋違いのような気もするわけです。なわけないか、、、

すみません、オチも結論もなにもありません。


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868
労働者派遣法が改正される方向で進められています。

今回の主な改正趣旨としては、
(1)特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制とする。
(2)すべての業務に3年の期間制限

となっていて、私の個人的感想を言えば、可もなく不可もなくどうでもいいやという感じですが、労組を中心として反対意見の声は根強く出ています。

派遣労働者の数は、全雇用労働者(5522万人)に占める割合からするとわずか1.6%、非正規労働者(1813万名)の割合からしてもたったの5%足らずという少なさでありながら、なぜこの派遣労働だけがいつも非難の的にされるのかがよくわかりません。

本当なら、非正規雇用の中で多くを占めるアルバイト・パートや、契約社員、嘱託について、社会の保険加入、最低賃金の引き上げや労働条件の改善、希望する人の正社員登用などをもっと強く訴えかけるべきではないのかなといつも思ってしまいます。

総務省統計局 平成24年 労働力調査年報より雇用者の就業状態をグラフ化


さらに言うと正社員雇用に就けない(就きたくない)ので、契約社員や派遣などに頼っている人達の意見も取り入れて、転勤のない地域限定正規社員制度とか、介護や子育てのために時短就労が可能な正社員制度の導入推進活動、有給休暇の完全取得促進、そして正社員の残業を減らし、中小企業では当たり前の違法状態の残業を厳しく取り締まる法律を作らせるとか、他にやることあるでしょ?って言いたいところです。

なにも1.6%の派遣労働者のために、国会を揺さぶっての大騒ぎなどしなくってもってところですが、これが日本の中では普通にまかり通っている「巨悪には目をつぶり、些細なことは針小棒大に祭り上げて糾弾する」、こそくな役人どもと、それに付き従うマスコミがよく使う手で、その手を盲目的に労組までが使ってどうするよと言いたいところです。

そして、それには話題性を高めるため「年越し派遣村」などと実体を伴わない名称を付け、自分の名前を売りこみ、知らない間に内閣府などの潜り込みに成功した湯浅なにがしの戦略が効いたのは言うまでもありません。

さて、まず(1)の派遣事業の許可制ですが、正社員として雇った人を別の企業などに派遣をする場合の特定派遣事業について届け出制から許可制に移行というのは、事業者にとってはちょっと気の毒な感じがします。

特定派遣事業だけやってきた事業者の手間や経費が増えることで、当然ながらその分派遣労働者の賃金にしわ寄せがいき、さらに面倒なお役所への申請作業に嫌気して事業を撤退するところも出てくるでしょう。

ま、事業をやるやらないは自由ですが、そこからあふれた派遣労働者は失業し、新たな就職先を探さなければなりません。

許可制に変わって嬉しいのは権限がより強化される厚生労働省や地方の労働局、ハローワークなど、官僚や役人達だけ。

つまり仕事が増える(=予算が増える)のと、さじ加減でどうにでもできる支配下の派遣事業者が増え(権限が大きくなる)、天下り先の確保にも有効です。

(2)の期間制限については、コロコロとよく変わるので、なにがなんだかよくわかりませんが、今まで期間に制限のなかった職種においても3年以内という制限が設けられるということで、これに対してなぜ労組が反対するのかわかりません。

人材派遣は元々テンポラリー(臨時)システムとも言われるとおり、あくまで臨時雇い的なところからスタートしています。

しかし業種や職種によっては臨時とは1日なのか、1ヶ月なのか、1年なのか、3年なのか曖昧なところがあり、例えば、リニアモーターカーの建設や、東京オリンピックみたいな大きなプロジェクトなどは5年10年単位の一時的な仕事やその雇用も考えられます。

ノーベル賞を受賞した学者さんが、あるプロジェクトで研究結果が出るまでには何年もかかるが、その研究を手伝ってくれる専門性の高い派遣社員(契約社員?)の期限(補助金対象期間)が決められていて困ると訴えていたこともあります。

ハッキリと期間が決まっている仕事であれば、3年以内なら派遣、それ以上なら契約社員とか、まだ対応できますが、そうではない場合に融通が利かず困る人も出てくるのでしょう。

ま、でも一般的にさすがに3年以上継続する場合は臨時的とは言えないでしょうということから、3年以内で決まったようなところもあり、今回ひとつの企業の同一職種で3年以上同じ人を派遣してはならぬということが決まれば、誰でもできる仕事なら3年置きに事業者は派遣社員を入れ替えるだけのことで、入れ替えられてしまうことになる「3年前よりは確実に3歳年齢が上がった労働者」は、また仕事探しを始めなければならず、すぐに次の仕事にありつけなければ失業してしまうという憂き目に遭うことになります。

いったい誰のための3年制限なのでしょうかね。

長期の就労を希望していても、3年以上はダメよと、それが嫌なら正規雇用に就きなさいというのが国の考え方なのでしょうが、残業や転勤ができなくて正社員雇用を求めない人や、自分で働く地域を選び、家事や介護の関係で定時勤務を事前に約束してもらえる派遣就労を希望する人も多く、そうした労働者側のニーズや希望を考えられていないように思えます。

労働者の中には様々な考えや条件の中から正社員を選んだり、パートや派遣を選ぶ人がいるのが普通です。正社員には正社員のメリットがあるようにパートにはパートの、嘱託には嘱託の、そして派遣には派遣のメリットがあります。

そうした労働者側の考えを無視して、わずか1.6%の比較的叩きやすくニュースでも取り上げられやすい派遣業界や派遣就労そのものに牙をむいて「なんでも反対」では昔ながらの30~40年前の硬直した社会党や労組となにも変わりません。

派遣業界もイメージを大事にするためか、残念ながらいつも叩かれるままで、嵐が過ぎ去るのをジッとおとなしく待つだけというのも情けない話しです。

それには事業が厚生労働省の許可制で首根っこを押さえられていて、自由な動きを制限されているということもあるでしょう。

しかし業界団体としては、国の雇用を守るのは自分たちなんだという気概を見せてもらい、派遣業界が今まで日本の経済発展と雇用の拡大にどれほどの役割を担ってきたのか、もっと国民にわかりやすくPRすべきでしょう。わずか1.6%ではそれも言いにくいでしょうけど。

鉄鋼や金融、商社、通信、建設、製造業などと比べると、まだ比較的新しい業界団体で、その力も立場も弱いので、なかなか統一した広報ができていないようですが、最初に派遣法ができてもうすぐ30年になります。そろそろ派遣会社の逆襲に期待したいところですが、叶わぬ夢でしょうかね。


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