リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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先日放送があったNHKスペシャル「熟年サバイバル~年金減額時代を生きる~」に出演していた藻谷浩介氏は「2000万円以上の現金資産を持つ裕福な高齢者が多いことを示すグラフがあったが、これは団塊世代が裕福なのではなく、団塊世代に土地を売ったり商売してきたその上の世代(の一部)がとても裕福なのだ」という趣旨の発言がありました。
統計では60才以上の世帯主の世帯平均貯蓄額は2000万円を軽く超え、さらに持ち家率も90%以上と高く、不動産等の資産を含めると1世帯当たり平均でざっと5000万円近い資産を持っていると考えられますが、その高齢者の詳細な年代別内訳については定かではありません。
グラフ1 世帯主年代別1世帯当たり平均貯蓄額
グラフ2 世帯主年代別持ち家率
上記のグラフだけを見ると逃げ切り世代と言われる団塊世代(現在64~67才)もおしなべて裕福だと思いがちですが、決してそうばかりとは言えず、団塊世代が結婚し、子供が生まれ、住宅不足になり、そこで住宅用不動産が超売手市場となり、先祖から相続したり安いときに買った土地を、団塊世代達に高額で売った世代が一番多くの富を得たということです。
それでもグラフから見て取れるように60代後半の団塊世代はまだ恵まれているほうで、少なくとも年金は60才から支給され、退職金も当初の見込みよりは多少減額されつつあるとはいえ、ちゃんと支払われているケースが多く、さらに大手企業退職者には、一度破綻した日本航空ですら、OB達には多額の企業年金が支払われています。いまの50代、40代が定年を迎える頃には、年金の支給開始が遅れ、退職金や企業年金も今までと同等というわけにはいかないでしょう。
そういうことを考えると、雇用問題の議論の場にいつも上がる「中高年層の定年延長または延長雇用義務化」vs「若年層の就職難や非正規社員化」という二つの対立軸だけで話しが終始してしまうことにどうも賛同ができません。
こうした超高齢化社会に起きうるひずみは数十年前からわかっていたのですが、政治家や実質的に国の政策を作ってきた官僚達の無為無策の結果、雇用問題も社会保障制度も待ったなしの非常事態となってきました。
そこで、若年層ばかりではなく、安心した老後が迎えられなくなる中高年層に対しても雇用の確保をおこなうことがひとつ。そして年金受給や老人医療保険など社会保障制度において、これから高齢期を迎えるものの蓄えがない人達に多くの負担をしわ寄せするのではなく、完全に逃げ切った今の高齢者富裕層にも応分の負担をしてもらうべきではないかと考えます。
世界一の個人貯金額を誇る我が国の個人金融資産は総額で1500兆円という膨大なものがありますが、その6割以上が60才以上の高齢者が持っています。この1500億円の6割の900兆円はなにもしなければ、そのまま遺産として遺族の相続人や事業後継者に引き継がれていくだけで、消費や税金などで社会に循環していくことはほとんどありません。
そこで新たに目をつけるのは相続税と譲与税です。
現在の相続税は、大ざっぱに言えば残された財産3000万円以下で15%、1億円以下で30%、3億円超で50%となっています(もう少し細分化されている)が、実際には遺族には様々な控除もあり、実際に相続税を支払っているのは100人に4人という少なさです。
この相続税を、1000万円を越える部分に手っ取り早く90%課税をしてしまえばいいのです。それで困る人はほとんどいません。
こういうことを書くと「ルサンチマン(強者に対しての、弱い者の憤りや怨恨、憎悪、非難の感情)」と言う人が現れますが、税金というのは、もともとは集められるところからお金を集め、それを社会の中で再配分するためのものです。そうでなければ所得税や相続税の累進課税など憲法で認められた法の下の平等ではなくなってしまいます。
あるいは世界の潮流は相続税の廃止や軽減という方向にもあるという人がいます。
しかし日本はそれらの他の国と違い、これから成長が見込まれる国ではなく、今後人口が減っていき、高齢者ばかりの国になっていきます。そういう日本の国情を考えると、成功してお金持ちになった人には生きているあいだはどれほど贅沢をしても好きにしてもらうけど、死んだ後はその余ったお金を、国民の福祉や医療に充てさせてもらおうという考え方は決して間違ってはいません。
つまり世界でも例を見ない超高齢化社会では従来と同じ発想ではダメで、独自の政策を新しく作っていかなければならないのです。そしてこの政策はやがて、同じく高齢化していく多くの国々で「日本モデル」と称せられるようになるかも知れません。
もし今のままの制度が続けば、日本はお金持ちの子供は、高度な教育が受けられるうえに、潤沢な資金を受け継ぎ、そうでない人は高等教育は受けられず、ずっと貧乏のままという、いわば一部の貴族と平民ばかりの社会になってしまいます。
本来その巨額マネーを相続する人が一番困る?
親から金銭的な財産をもらうっていうのは、不労所得で宝くじに当たるかどうかという違いですからあきらめてもらっていいのではないでしょうか。たまたま自分の親にたっぷりと資産があったからというだけで、必要以上の資産が引き継げる特権を与えなくても、自分の努力と才覚で親と同じようにお金持ちになればいいだけです。
別にゼロからのスタートというわけではなく、控除分1000万円+遺産の10%でもあれば十分でしょうし、親が裕福ならばすでに立派な高等教育や、親から引き継いだ有力者との人脈など目に見えない財産をすでにもらっているはずです。親のマイナスの遺産を引き継がなければならない子供もいっぱいいるのが今の世の中にあってです。
そうすることができれば、今後20年間、現金900兆円+不動産などにかかる相続税がたっぷりと入ってくることになるので、それで超高齢化を支える社会保障、福祉や医療を手厚くしていくことができます。
もちろん税金に取られるぐらいなら生きている間に使ってしまおうという人も出てくるでしょう。そうすればタンスの中や銀行の中で死蔵されていたお金が市中に回るようになり、雇用も増えるし内需が拡大し、やがてはインフレに振れるので国内経済としてはありがたいことです。
こんないいことをなぜやらないのか?と言えば、法律を決める人達の多くは、親から様々な遺産や恩恵を受けてきた二世、三世の政治家だったり高級官僚だったりします。つまり自分で自分(の子供や家族)のクビを絞めてしまうことはできません。それがこの政策の一番のハードルでしょうね。国会議員削減や公務員改革が進まず、国民が望んでいる感覚と大きくずれているのも、我が身かわいさで同じことなのです。
またそのようなことをすると、お金持ちが日本から逃げていくと人は言います。とにかくダメな理由をいくつでも作ってくるでしょう。
いいじゃないですか、そういう「自分の金は自分のもの、他人の金も自分のもの」という金亡者には安全で、清潔で、医療が発達していて、言葉の心配もなく、四季折々の風景が楽しめる美しい日本を捨てて、どこへでも行ってもらったらと割り切りましょう。すべての(高齢の)お金持ちが海外に移住するとも思えませんし、逆に世界中のお金持ちが住みたがる安全で清潔な医療先進国、介護先進国を日本は目指せばいいのではないでしょうか。
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その頃までは「おしゃべり」と言えば女性の専権事項のようなもので(差別とかでなく当時の一般論として)、男性は無口なほうが値打ちがあり、沈着冷静、口数が少なく謎めいた男性のほうが女性によくモテたという時代がありました。
それが80年代後半以降のバブル時期以降、大きく変わってしまい、男女ともに「無口」=「主張がない」、あるいは「無口」=「根暗」、「無口」=「消極的」などと、「無口」という言葉にはネガティブな要素がつけられるようになりました。
また現代では社会に出る時に必要とされるビジネス能力のひとつに「コミュニケーション能力」が新たに加えられるようになり、無口な人はコミュニケーション能力が低いとされてしました。
ま、確かに今の社会では「あの人無口なので、何を考えているのかさっぱりわからない」と、仕事の相手として敬遠されることもあるでしょう。
逆に頭の回転の早くてそれをうまく口に出せる人が有能であると勝手に決めつけてしまう風潮があります。
でもだからと言って「無口」=「ネガティブ」ととらえるのはどうかと思うわけで、人によってインプットした後、何度もよく熟考して、アウトプットするまでの時間や、判断を下すまでのスピードには差があって当たり前です。レストランで料理を選ぶときだってそうでしょ?
それを一部の人の感覚的なスピードで判断して早い遅いの優劣をつけるのは一種の差別につながっているのではないかと思うわけです。「お前は走るのが遅いから人間として劣っている」とは言いませんよね?それと同じはずです。
自慢じゃありませんが、私自身はどちらかというと口数は少ない方で、普段から軽口もあまり言えるタイプではありません。しかしそれで今まで困ったことはほとんどありません。生きてきた時代がよかったせいかもしれません。
社会人となり仕事上では営業の仕事を長くやってきたこともあり、知らない人に声をかけたり、相手の年齢にかかわらず気軽に会話をすることにはなんの抵抗もありません。それらは高校時代から始めていた様々な接客を含むアルバイトや、就職してから自然と身につけた後天的な能力です。
ただ世間の風潮というのは「よく喋り」「声がでかく」「表情豊か」な人がポジティブととらえる向きがあり、これはもしかすると、テレビのバカバカしいバラエティ番組でひな壇に並び、リアクション芸人とか言う、大げさにわめいている下劣な芸人さんが流行しだした頃と妙に一致していて、悲しいかなそういう人が今の時代にはもてはやされているようです。
つまらない世の中になったものです。
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一方では従業員が1000人以上の大企業では22%ということです。1000人以上の大企業と5人未満の零細企業とでは3年以内に退職する人の割合は3倍近くの開きがあるとの結果です。
また新卒3年以内の離職率が高い業種として、宿泊業・飲食サービス業が51%、教育・学習支援業が49%、医療・福祉が38%となっていてサービス業関連は全体平均の31%を上回る結果となっています。
サービス業は一般的に製造業や建設業、流通業などと比べると中小零細企業が多いのでそのような結果でも特に驚きません。どうせ業種で比較するなら規模が同じところの比較があるといいのですが、全体での比較だとこの数値だけでは判断ができません。
大企業に入社した新人は、中小零細企業へ入社するより安定した勤務と収入が得られるということで、これが私が繰り返し言う「コメンテーターや識者が公に言う嘘に惑わされず、まず大企業を目指すべき」最大の理由です。
「大学卒業しての就職で中小零細企業に入る人は、みんな我慢や能力が足りないだけだろ?」と言われそうですが、もちろんそんなことはありません。
中には大企業に入れるだけの能力や才能がありながら、意図して中小零細企業に入る人もいますが、多くの場合運悪く採用試験の成績で落ちたり、それ以前に出身校でダメだしされていたり、有力なコネがなかったり、あるいは最初からあきらめて中小零細に活路を見出した人達です。
社会人としてのスタート時点では、テストの成績や出身大学がものを言う時代でもなく個人の潜在能力に大きな差などありません。
大企業なら数十人、数百人の採用をおこない、すぐに戦力とならなくても余裕があります。しかし中小零細企業はそうはいきません。1日でも早く新人を戦力化しなければ、それだけコストと先輩社員の負担が増えて困ります。
つまり新人の戦力化に期待する要求度は大企業より中小企業のほうがずっと高く、大企業よりも早く仕事を覚えさせて実戦に投入されます。それはそれでやる気のある人にとっては決して悪いことばかりではないでしょう。
しかし決定的に違うのは、新人に対して早くから企業に多大な貢献を要求をする中小零細企業と、入社数年間は勉強期間と割り切れる大企業とで、そこに大きな差が出てしまいます。
厚労省はこの結果だけをみて「中小企業では採用と雇用のミスマッチが起きている」と判断していますが、大企業並みかそれ以上の待遇や条件の厚労省など中央機関にいる人や中小企業で働いた経験もない学者先生には、中小零細企業の採用と雇用の実態などわかるわけもなく、分析などできないでしょう。
これは「雇用のミスマッチ」などではなく、大企業と中小零細企業の(給料など)待遇、勤務条件、教育、福利厚生、要求事項の違いで、安い給料で深夜までサービス残業当たり前、土日も出勤、労基法など関係なし、研修などなく、すべて仕事は自分で考えろ的な多くの中小零細企業で、さらにその上終身雇用が壊れてきたことも加わり退職率が上がるのは極めて当たり前のことです。
要は大企業に入社した有能な人がその中小零細企業へ来たとしても同じことで、マッチングではなく、すべては勤務先において、社員を大切にし長い目で人を育てていく環境にあるかないかという伝統であり社風であり、それを許すことができる余裕があるかないかなのです。
逆に言えば従業員が1000人以上の大企業でも22%が3年以内に辞めているというのは、昭和感覚で言えばまったく驚くべき数値で、30年前なら考えられないことでしょう。それだけ今の大企業も、中小企業並みに経営環境、労働情勢の厳しさが増し、新人に対して手厚くサポートができなくなってきている証左かもしれません。
新人が3年以内に退職するのは、30年前と比べると新卒入社数年で再就職をする第2新卒市場が整ってきたことも関係していると思われます。しかし私に言わせると、せっかく苦労して大企業に就職しておきながら、3年未満で転職すれば、今までよりも環境悪化が確実の中小企業や非正規雇用の道しかありません。
その不合理と将来にわたる不利な条件となることをまだ社会人になって2~3年の若者では理解ができないのでしょう。有川浩氏著の小説「フリーター、家を買う。
大企業に勤めたら、嫌なことがあっても転職してはいけないと言っているのではありません。
大企業には様々な自分が成長できる研修機会や大企業同士の有能な人達と知り合いになれる場があります。留学や資格を取るための補助や支援制度だってあります。
そういった中小企業では得られない経験や人脈、資格を一通り得てしまえば、あとは本人のやりたいこと、目指すことを自由にやればいいのです。そのためには最低でも5年、できれば10年は大企業に居座るのがいいでしょう。
社会で活躍している多くの有名人達の多くは、その略歴を見ると学校卒業後、最初はだいたい大手企業や中央官庁に勤めています。
それをみれば明らかなのですが、そういう新卒即大企業就職組から学生に向けて発せられる「やる気があるなら中小企業を目指せ!」という言葉はどうしてもうさん臭く聞こえてしまうのです。
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ダブル・ファンタジー (文春文庫)
2009年刊(文庫は2011年刊)の長編小説で、中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞の文学賞トリプル受賞という高評価な作品で期待をしつつ読み始めました。
結婚している35才の売れっ子女性脚本家が主人公で、旦那はそれまで勤めていた会社を辞め、妻が仕事に集中できるよう家事を一切を引き受け、また仕事のマネージャーとして妻をサポートしています。
しかしいきなり冒頭で、自宅に出張ホストを呼びつけての濡れ場が展開され、いったいどういうストーリーなのか、単なる女性向けのエロ小説か?とも思いつつ読み進めると、次には主人公と師匠と仰ぐ売れっ子演出家の男性との退屈でベタな不倫を匂わすメールのやりとりが延々繰り返されます。ここらで読むのを断念するかと何度思ったことか。
これはおそらく週刊文春への連載小説という性格があったのでしょうね。飽きられないように時々は激しい濡れ場を挟むのは一種読者サービスで、そうしないと毎週買ってくれません。
村山由佳氏と言えば2003年の直木賞受賞作「星々の舟
しかし結局、どこまでいっても女性主人公の異常とも思える旺盛な性欲が、世の中の倫理や道徳など吹き飛ばし、勘違いしている旦那とは別れられないまま、男をとっかえひっかえしつつ、ただ官能の世界を重ねていき、その都度男のテクニックを事細かく評価していくという困ったちゃんです。
きっと現実社会で欲求不満な女性読者(週刊文集にどれほどの女性読者がいるのかは知りませんが)にとっては「その夢のようなモテモテの環境に一度は浸ってみたい」と気持ちのいい気分にさせてくれるのかもしれません。おぞましい限りです。
したがって枯れつつある中年男性が読んで面白いわけもなく、文学賞受賞作だからといって、必ずしも読む価値があるとは限らないという見本のようなものでしょう。
◇著者別読書感想(村山由佳)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一刀斎夢録 (文春文庫)
単行本が2011年刊、文庫本は2013年刊の浅田次郎作品文庫新作で、新選組の中で一番腕が立つとも言われていた新選組三番隊長・斎藤一(さいとうはじめ)が主人公の小説です。
新選組が壊滅した後は会津で闘ったものの降伏とあいなり、その後改名して藤田五郎と名乗り警視庁勤めをしていた時、腕はべらぼうに立つが、散々人を斬ってきた斎藤一の本名が警視庁の中で出てくるのはさすがにまずかろうと、名前をひっくり返した一刀斎という隠語で語られるようになり、それがタイトルとなっています。
著者は新選組がたいへんお好きなようで、過去には「輪違屋糸里
映画になった「壬生義士伝
その一刀斎の小説ですが、物語の出だしは皇居のそばをひとりで馬に乗って名残惜しく散策する乃木将軍です。
乃木将軍といえば世界に日本という強国があることを知らしめた日露戦争で活躍した武人で有名ですが、明治天皇が崩御されたあと、天皇に殉じるため妻と一緒に自害を果たし、それはつまり明治という世が名実ともに終わったことを指しているわけです。
やがてもうひとりの主人公で、陸軍近衛師団の梶原中尉が、剣道仲間から教わり、老いた斎藤一が住む家を訪ね、1週間連続してその壮大なる剣士の語り部を聞くという流れです。
壬生浪士組の成り立ち、芹沢鴨の暗殺(暗殺には立ち合わず、芹沢と仲のよかった永倉を見張っておく役目、坂本竜馬の暗殺(自分がひとりで得意の居合いで斬り、自分が去った後、つけてきた京都見廻組がとどめを刺したと語る)、伊東甲子太郎ら御陵衛士暗殺の油小路事件、負け戦だった鳥羽・伏見の戦い、勝安房守(勝海舟)にはめられた感のある甲州勝沼の戦い、死に場所を求めて最後の砦となる会津へ下る話しなど戊辰戦争のこと、降伏し謹慎後に警視庁に勤めるようになり、その警察官として参加した西南戦争など新選組というか幕末から明治にかけての話しがこれでもかというほど(著者の想像や推測も含め)登場してきます。
特にクライマックスの西南戦争では、鳥羽伏見の戦いでは薩摩藩に裏切られ、敗走する結果となった新選組など幕府側の志士達の生き残りが、今度は逆に官軍となり西郷隆盛率いる旧薩摩藩士と戦うという構図に不思議な縁を感じます。
これはもしかすると武士世界が終わり、全国にはびこっていた不平士族達を抑え込み、明治政府を安定させるために大久保利通と西郷隆盛の策略にはめられたか?との疑念をもちます。
そう考えると、明治政府に楯突き、多くの官軍兵士を殺したはずの西郷どんが、戦争終結後まもなく首都東京の上野公園に銅像が建てられ英雄視されるのも不思議ではなかろうと。
そして最後に待ち受けていたのは、不思議な縁を持つ二人の鬼と呼ばれる師弟が激突することになります。
いや~面白い、楽しい、こうした江戸前の頑固一徹オヤジの語りをさせると浅田次郎氏の右に出る者はいません。
余談ですが、読み続けていて、斎藤一の語りの聞き役だった梶原という近衛師団の陸軍中尉が陸軍内で一二をを争う剣道の達人という設定になっているので、その梶原中尉が新選組の中で斎藤一がただひとり実戦的な居合いを教えた元浮浪児だった弟子市村鉄之介の子供だったとか、ゆかりがあったというオチが最後につくのかなと思っていましたが、残念ながらそれはありませんでした。
◇著者別読書感想(浅田次郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
小太郎の左腕 (小学館文庫)
映画化もされた「のぼうの城
ちなみに映画「のぼうの城
この小説のストーリーは、祖父と山で暮らしている小太郎という子供が、雑賀衆の血筋に目覚め、メキメキと射撃の腕を上げていき、その子供を不利だった隣国との戦争でうまく利用した武将との関係をドラマチックに描いた小説です。
雑賀衆とは、16世紀頃、和歌山で発達した鉄砲など武器製造や、それを扱う専門家を養成していた武装組織で、戦国時代には織田信長や豊臣秀吉とも闘いました。
タイトルにもなっている小太郎という子供がその雑賀衆の末裔で、その天性で身についた射撃の腕にいちはやく気がついた武将が、鳥を撃つのにも心で詫びているその優しい心をもった子供に対し、躊躇なく人を撃つことができるように、少年の唯一の心の拠り所であり、身内である祖父を殺め、その責任をすべて敵方になすりつけ、復讐のためと味方につけます。
しかしその純粋な子供を騙して殺人マシンに変えてしまった後ろめたい気持ちが、やがては武将を追い詰めることになり、想定はしていたものの驚愕のクライマックスへと突入していきます。
内容は映画化にも向いていそうなエンタテーメントですが、上記の「のぼうの城」と比べると、派手さや迫力に乏しく、しかも史実に沿った内容でもないので、時代劇や歴史ファンの心をつかむのはちょっと難易度が高そうです。
◇著者別読書感想(和田竜)
【関連リンク】
10月後半の読書 時のみぞ知る(上) クリフトン年代記 第1部(上)(下)、湾岸リベンジャー、新・世界の七不思議
10月前半の読書 私の男、恋愛時代(上)(下) 、小説・震災後、通天閣
9月後半の読書 脳に悪い7つの習慣、コンダクター、ガセネッタ&シモネッタ、その街の今は
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765
日本は世界の国と比較して労働生産性が低いと言われています。どれぐらい低いかと言えば下記のOECDが発表する統計データを元にした数値とグラフがよく使われています。
労働生産性上位30国
1人当たり国内総生産とは、その国の国内総生産額(GDP)を総人口で割った数値で、労働生産性は就業人数で割った数字です。日本のように少子化でリタイヤした高齢者の比率が急激に進むと就業人口が大きく減ってきますので、もしGDPに変化がなければ1人当たりGDPや労働生産性は今後高まっていく可能性があります。
1人当たりGDPと労働生産性のトップはルクセンブルグで、人口が少ない(486,000人)割りに重工業が発達していて、さらに国際的な金融センターもあり、それらが効率よく機能していて労働生産性が高くなるそうです。その他比較的人口が少なく、その国が推し進める主要産業がヒットしている国々が上位にきています。
日本は主要先進七カ国(黄色)の中では労働生産性は最も低く、国民1人当たりのGDPでも最下位のイタリアに続きブービーという散々な状況です。
これらを見て、日本人の労働生産性の低さを嘆く人が多いのですが、私はそれにはなにも関心がありません。
私も30年以上社会人をやってきて、その中ではわずかな期間ながら外国人(アメリカ人、カナダ人、香港人、韓国人、インド人、ドイツ人)と一緒に仕事をやってきた経験があり、彼らの仕事に対する考え方や、合理性にうなづく点は多々ありました。
そして平均的な日本の会社では仕事の進め方や時間の使い方に無駄が多いと感じたこともあります。一般的に「お役所仕事」と言えばもっとも効率が悪い保守的で前例主義の働き方で、それが今までの代表的な日本の生産性です。
それでもやっぱり、この日本人の特性や感性を考えると単に「労働生産性を上げる」ことはいいことだと思わないのです。
わかりやすく説明すると、製造業において労働生産性を上げるというのは、「生産効率を上げ同じ時間で同じ(ような)製品をたくさん作る」「人がやっていたことを正確で速い機械(ロボット)に置き換える」「安い労働力の海外へ工場を移転する」などが考えられます。
しかし「生産性を上げる」の名の下に、それまで人が丁寧に作り込んでいた製品を、効率とスピードを重視するばかりに精度が落ちてしまったり(品質劣化)、検品ではギリギリセーフの不良製品が多く混じったり(歩留まり悪化、初期不良の増加)、機械(ロボット)で作ることを優先し(失業者増加)、製品の機能やデザイン、美的センスが失われたり(製品の画一化、製品を使い続けたいというファンやロイヤリティの高い消費者減少)していきます。
1970年代以降から1980年代の日本の工業製品はそれこそ世界を席巻していたと言ってもよいでしょう。その頃でもすでに「労働生産性」という意味ではトヨタの「カンバン方式」や米国から持ってきた大量生産のノウハウが生かされていましたが、現在製造業の現場でおこなわれているほどの究極的なものではありません。
そして当時日本で作られたMade in JAPANの製品は、今では過剰品質とも言えるほどの「質がよくて壊れない」という伝説を作り上げることができました。
なんしろアメリカの高価で精巧な誘導ミサイルに使われている部品より、ソニーのビデオデッキに使われている部品のほうがはるかに精度が高かったという時代です。
また例え製品が壊れても「修理が簡単にでき、交換部品もすぐに手に入る」ことも大きなメリットでした。
それが90年代以降経済成長が止まり、製造業が軒並み目一杯のコスト削減や、それこそ労働生産性を上げてライバルに打ち勝つため、そして利益を出すため必死で改革を推し進めました。
その結果どうなったかと言えば、工場の海外移転と大量の失業者、工業製品の品質低下、そしてMade in JAPANの崩壊です。すでに日本が世界に誇った家電製品や、最近はバイクや自動車まで海外生産する時代となりました。
日本だから作れるという工業製品は、極めて特殊で精緻を極めたいわば芸術的作品のみとなり、最近の海外製の家電は安いけれど初期不良が多く、また耐久性がなくてすぐに壊れ、中の主要な部品はブラックボックス化されていて簡単には修理ができないという「次は買いたくない3拍子」が揃ってています。労働生産性をむやみに上げてきた結果、このようなつまらないことが起きたわけです。
さらに日本の労働生産性を産業別に見ると、すでに製造業の労働生産性は主要7カ国中ではアメリカに次いで第2位と高くなっています。つまり低いと言われる労働生産性は製造業以外のところで起きていることがわかります。
他国と比べて労働生産性が低い業種は卸し業、小売業、飲食業、金融業、不動産業、建設業と言ったところです。
では小売業や飲食業の労働生産性を上げるにはどうすればいいでしょうか?
答えは「お・も・て・な・し」の心をスパッとやめてしまえば労働生産性は上がります。
店員を大幅に削減し、わざわざ来店時の挨拶やお声掛けは不要、いちいち客の好みを聞いてアドバイスをしたり、客に水やおしぼりを運ぶなんてのも効率が悪いので廃止。店員数を極限まで減らし、単なるレジ打ちやセルフサービスにしてしまえばいいのです。
それで(客が減らなければ)生産性はグッと上がります。味で勝負の行列のできるラーメン店などではすぐに実践できそうです。
不動産業にしても、法律で定められている「重要事項説明」なんてしち面倒臭いことは規制緩和して廃止し、宅建などの資格も大幅緩和、誰でも参入が容易にすることでずっと効率は高まるでしょう。
大きな建物を造る際の近隣住民説明なんて義務も手間がかかりすぎるので廃止。賃貸マンションの紹介もわざわざ従業員がクルマで送迎して何部屋も見て回るなんて無駄の骨頂は即刻廃止し、客には間取り図とGoogleストリートビューや動画を見てもらい即決してもらいます。
金融業もお金のない若者や中小零細企業などは相手にせず、お金持ちの高齢者や大企業、優良企業だけを優遇するサービスを展開。
一流の銀行や証券会社で口座を作るには個人で1千万円以上、法人なら1億円以上の貯金が必須とか。銀行が相手にしない貧乏人や零細企業にはきっとサラ金や闇金、地元の信用金庫、JAなどが相手にしてくれるでしょう。
日本では就業人員がこれからどんどんと減っていくのですから、効率の悪い貧乏人相手の仕事や無駄が多い仕事を次々と廃し、もっと生産性が高く、高付加価値を生みだす仕事に就かせなくてはなりません。
・・・という日本がお好みであれば、自然と労働生産性は向上していくのでしょう。私は嫌だけどね。
繰り返すと、労働生産性を上げようというのは、政治家や経営者にとっては願ったりかなったりのことで、誰も反対しません。だってそれによって自分(政治家や経営者)は名を上げたり儲かるわけですから。
では雇われている人が、労働生産性を上げることは?
考え方ですが、労働生産性を上げたことで、それによって浮いた時間が自分のために回せるのか?と言えば、それは現実的ではなく、浮いた時間は新たに別の仕事や労働生産性の低い人の仕事をを余分に入れられ、そして「もっと労働生産性を上げようね」でお終いっていうのが実際のところでしょう。
また労働生産性が向上したことで、その分の売上が伸びて給与にも反映されれば経営者も従業員もお互いハッピーですが、人口が減っていく国内向け、新興国との競争が激しい海外向けの市場においても、今後大きく成長し規模が拡大していく産業というものはほとんどありません。規模が拡大せずに生産性だけ上がると、結局は雇用が減っていくだけです。
一部の外資系企業のように、個人個人の具体的な目標がハッキリと決められていて、それを半期か四半期ごとにクリアさえすれば、あとは勤務中になにをしていようと、時間をどう使おうと勝手というところなら、自分の労働生産性を頑張って上げて、例え部下や同僚が苦しんでいても見て見ぬふりをして定時でさっさと帰社し、ひとりだけ長い有給休暇を取るのもアリでしょうけど、今のほとんどの日本企業でそのようなことが許される環境ではないことは誰でも知っているはずです。
よかれと思い自分の労働生産性を頑張って上げ、そして労働生産性の低い部下や上司の分まで仕事を回され、そのせいでストレスや疲労がたまり、とうとう身体を壊して、、、というようにならないことを願うばかりです。
但し、競争の激しい民間企業の中では、個人の労働生産性が周囲と比べて著しく低い場合、昨今は真っ先にリストラの対象となる可能性があります。なので決して個人の労働生産性が低いことをただ推奨しているわけではなく、身体をこわさない程度にほどほどにねって言うことです。
【関連リンク】
725 農業の大規模化と零細な起業
639 前からだけど日本の大手製造業はやっぱり変だぞ
636 昨今の新入社員は終身雇用制を支持している
611 海外移転で製造業の労働者はどこへいったのか?
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