リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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私が会社に入社したのは1980年ですが、その時経理部の人から「確実に儲けたいならなんでもいいから新規公開株の公募に投資せよ!」と言われました。
確かにその頃(1980年代)からバブルが終わるまで、いやおそらくバブルが弾けたあとの2000年頃までは、公募されるブックビルディングの公募価格と実際の公開直後の初値を比べると、6~7割の銘柄は初値が上回り、残りも公募価格よりも大きく下がるということはほとんどなく、横ばいだったように思います(未確認)。
もっとも史上最高の平均価格を付けたバブル時以降は、例え公開直後の初値では上回っていても、その後数カ月の間に公募価格を割り込み、ひどいのは紙くず同然や、1/10以下になってしまうような新規上場株も多く見られました。
つまりその頃までは、公募価格で買うことさえすれば、6~7割の勝率があり、欲を出してもっと上がるかもと持ち続けたりしないで、初値でとっとと売ってしまえば確実に儲けることができる投資だったというのが新規上場株だったのです。
しかし2000年頃からは、次第に公募価格を初値が下回るケースが増えてきて、とても6割の勝率を期待できるものではなくなりました。大きな要因としては平均株価がバブル以降下落し続け、日本の株式へ投資をする人(外国人含む)が減ってきたということでしょう。
そして従来ならば業界紙や証券会社の営業マンからしか情報が得られなかった新規上場株が、ネット取引が急増し、誰でもが簡単に情報を得ることができるようになったことはいいとしても、期待度が大きな人気株ばかりに購入希望が殺到し、逆に期待度が薄いと公募株は余って上がらない(逆に下がってしまう)ということがあるのでしょう。
最近8カ月間の例で見ると、
22社中、公募価格から初値が5%以上上昇したものが8社、逆に初値が5%以上下落したものは6社、ほぼ横ばい(-5%~+5%)だったものが8社となり、勝ちは36%、負けが27%、引き分けが36%という結果になります。ちなみに引き分けでは証券会社への手数料や、売却時の税金を差し引くと結局は損をすることになってしまいます。
比較のため、1980年代のがみつからないので、バブルもはじけた後の2000年のデータを比較してみましょう。
つまり、以前とは違い、公開株を公募価格で買っても、やや勝ちが上回るものの、もはや大勝ちすることは滅多になく、この8カ月間で言えば、初値が公募価格のほぼ2倍になった駅探(現在は大きく下げ初値の約1/7の749円)、2倍以上になったKLab(現在価格は順調に伸ばし初値の1.3倍の5,180円)やブレインパッド(現在価格は初値の2/3に下がり4,230円)ぐらいしかうま味はなかったということでしょう。
いずれにしても、もう新規公開株取引は、新入社員がなけなしのお金をつぎ込んでやるようなものではなく、余裕のあるところでしか、できなくなってきたようです。
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スマートフォン(スマートホン)の売上が絶好調で、ジェフリー・A・ムーア氏のキャズム理論で言うところのアーリーアダプターの領域は完全に超越し、メインストリームのマジョリティへと移行しています。
私は昨年の秋、迷った末に、月々の支払が半額以下で済む不人気ガラ携を2年縛りで購入したので、晴れて買い替えができるのは1年後で、レイトマジョリティまたはラガード(遅延者)に入ることになりそうです。入るかどうかもわかりませんが。
スマホ含め携帯電話というのは、ほとんどが2年契約で縛られていることが多いので、通常はなにかエポックメーキングな進化が起きると、そこから約2年間でガラリと環境が変わってしまいます。2008年に登場したiPhone3G、2009年のiPhone3GSはまだイノベーターやアーリーアダプターの一部への普及が中心でしたが、2010年の4G発売以降、それのライバルであるAndroidOSを使ったスマホ(Xperia X10など)とともに一気に普及が進みました。
一般層への普及が始まってから1年が経過したことで、今では街中や電車の中では実感値として半数の人がスマホを使っている状況です。単純に考えるとあと1年経てばほぼすべての人がスマホへ変わってしまう計算になりますが、もちろん2年で機種交換しない人や、電話とメールしか使わないという人がいますので、全部が変わることはないでしょう。
テレビや新聞では、電力会社の広告宣伝費が抜けてしまった穴埋めなのか、いま唯一と言っていいほど景気がよく大量の広告発注がある通信会社(DoCoMoなど)やモバイルゲーム業界に恩を売るため、盛んにスマホの便利さと有効性を取り上げています。そしてテレビや新聞での取り上げ方を見ていると、その対象は女性と高齢者向けです。
つまり、元々若い男性はスマホのようなガジェット好きが多く、今さら力を入れて訴求する必要はないのですが、長い間日本独自仕様のガラ携に慣れ親しんできた女性と、まだ携帯自体の普及率が低い高齢者向けに強くスマホをアピールすることが広告主や広告代理店から求められていると言うことでしょう。
携帯からスマホへ移ることにより、通信各社はより高額のつなぎ放題プランが契約でき、今までせいぜい月3~4千円程度だった基本料、通話料、各種オプションなど含む月額総支払い額が、安くなってきたとは言えデータ通信定額制+通話料+オプション等で月額が7~8千円近くまで上昇し、さらにスマホを活用するには欠かせないスマホ独自のソフトウェアであるアプリ販売という新しく稼げるビジネスが加わり(iPhoneの場合は主としてApple社が大きく儲かる仕組みだが)どこもホクホクです。
一方大量のデータを送受信するスマホの普及に相まって、回線が混雑し、通信障害が起きることは当然予想されます。通信会社各社はその改善に力を入れると口を揃えていますが、この急激なデータ通信の増加には全然追いついていけません。中には定額制をやめて従量制(使った分だけ課金)を取り入れようという動きすらあります。なにか時代を逆行する考え方です。
そこで混雑する携帯電話用回線を少しでもやわらげるため、通常の回線とは別に無線LANの一種であるWi-Fi(ワイファイ wireless fidelity)を利用してその代替をしようという動きも活発です。
Wi-Fiは高速大量データ通信が得意ですので、データ通信には適していますが、携帯電話の電波と比べ広範囲に届かないので、本来スマホがスマホとしてもっとも活躍するはずの歩行中やクルマ・電車の中ではWi-Fiは使えず、どうしても都会のターミナル駅の中やカフェの中など一部地域の一部スポットだけに限定されています。カフェの中のWi-Fiにつなぎたいならなにもスマホでなくとも、タブレットでもノートPCでもいいじゃないかと思うのですが。
以上はスマホに関して現状起きている事実ですが、さてここからは私の勝手な意見です。
特定のビジネスパーソン以外に、いま本当にスマホが必要かと言うと甚だ疑問に思います。通常のガラ携とスマホでなにが決定的に違うかと言えば、Webへのアクセスが容易であることと、独自のアプリが豊富にあるということぐらいでしょう。
しかし最近のガラ携はWebへのアクセスは普通に当たり前になってきていますし、ガラ携用のアプリも決して少なくはありません。国別のインターネットへのアクセス数(率)を出すときには日本ではDoCoMoのi-mode利用者もその数に含めているぐらいです。
例えば専業主婦(夫)やパート勤めの人、ビジネスパーソンでも内勤が中心の人、引退した高齢者、理系ではない高校生以下などは、おそらく身近なところにテレビ、新聞、それに通話やメールができる携帯電話があり、また会社や学校、自宅にはネット接続できるパソコンやゲーム機などがあると思われます。そしてなにより時間に追われて移動中にもネットにアクセスしなければならないという状況にあるとは思えません(もちろん必要があればガラ携でもできますが)。
特に中高年者が街中でスマホを利用しているところを見ると「メガネを持ち上げ頭の上にのっけてから、おもむろに顔から10cmのところまで近づけ(老眼で小さな文字が見えない)、両手を使っておぼつかない震える指で操作している」と、とてもスマートフォンをスマートに使っている雰囲気ではなく、通信会社に恩を売りたいテレビ局としては絶対に使えない絵でしょう。
そこまでしてまで小さな小さな画面を見ながら操作をするぐらいなら、どうせ自分の時間はたっぷりあるでしょうから、「オフィスか自宅へ戻って、大きなモニターと快適なキーボードがついているPCでやればいいじゃん」と思ってしまいます。
もっと言えば主婦や学生など自分で稼いでもいない人に、月8千円×24カ月(約20万円/2年)もかかる常時接続用高機能端末(スマホ)が本当に必要なのか?と思ってしまいます。通常の通話とメールだけなら、パワーユーザーでなければ月せいぜい2~3千円(7.2万円/2年)で済むガラ携かPHSで十分ではないでしょうか。みんなメディアや通信会社、携帯メーカー、モバイル系ソフト会社に騙されています。
と考える私の考え方が古く、すでに骨董品なのでしょう。
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年金受給年齢の引き上げがまた議論されています。
現在は、1994年の改正で、60歳代前半の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢を2013年までに段階的に60歳から65歳に引き上げ、さらに2000年の改正で、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給を2025年までに段階的に60歳から65歳に引き上げることになっていますが、それではとても追いつかないということで、その65歳を68歳や70歳まで引き上げることが検討されています。
数が多く政治的にも影響の大きい団塊世代をうまくハズして、それ以下の世代で痛みを分かち合ってくれという思惑でしたが、景気の回復や早い時期からの増税がうまくいかず、そこへ持ってきて大震災と原発事故です。
人口構成的に今後も景気の低迷から脱する見込みはないので、生活保護申請者や非正規雇用が増え、税収も保険料収入も伸びず、とうとう年金破綻が直前に迫ってきて、年金利権を欲しいままにしてきた役人に急かされて改正に着手せざると得なくなったということでしょう。
でもちょっと待ってくれ。多くの団塊の世代とその勤務先が支払ってきた多額の年金積立金は過去の少なかった高齢者に全部配賦してしまったということなのでしょうか?さらに過去何度か役人の言うままに年金負担率は上昇をし続けてきてきましたが、それはすでにもうないと。
本当に足らないのかどうか、役人以外がちゃんと精査しているのでしょうか?単純に少子化高齢化になってしまったとグラフを見せて「足りない、足りない」と言われても私はとうてい納得ができません。
この年金制度という怪物は本当にややこしくて、簡単に説明することはできないようになっていて、それが安易な反対意見を封じ込める作戦のひとつでもあるのでしょう。
もしかすると、まだ不足はないけれど天下り団体に渡す余剰金が足りないので、天下りする予定の役人達が騒いでいるだけなのかも知れません。少なくとも年金運用の過去10年間の収入と支出の明細、今後30年の予測などを第三者機関がキチンと精査し分析した資料があれば見てみたいものです。
確か年金機構は世界最大級の資金運用機関で投資家だと聞いたことがありますが、普通に考えればその利子や投機のリターンで、とんでもないほど儲けることも可能なはずです。
さて次に、年金支給年齢引き上げ問題と直接絡んでくる問題として、高齢者の雇用問題があります。
1994年と2000年の改正で、本来60歳から満額もらえるはずだった年金が、段階的ではあるものの65歳以上でないともらえなくなります。つまり一般的な60歳定年で会社を追い出されると、5年間は無収入になる可能性がありますから、その手当をしなければなりません。65歳でもらえればまだいいほうで、今の話しの方向性は68歳まで無収入になります。
2006年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法ですが、これは上記の年金受給年齢引き上げに合わせ、企業に60歳定年を廃するか65歳まで継続雇用するよう義務を定めたものです。しかし資金力のある一流大企業ならともかく、一般社員までバッサリと切っているような経営状況が厳しい中小零細企業においては必ずしもそれが守れるとは思えません。
それに、さすがに「今の60歳は元気だ!」と言っても、30代40代と比べて体力、集中力、忍耐力など明らかに落ちてきます。目や歯が悪くなり、物覚えや記憶力が落ち、膝や腰、肩などの関節痛に悩まされるのが普通です。
そういう人達に今までと同じ仕事をしてもらうには無理があり、単に「60歳以降も継続雇用だ」という乱暴な法律や議論ではうまくいきません。まだ役所や大企業ならそういう高齢者向きの仕事を創り出すことも可能かもしれませんが、日本の企業数の95%を占める50名以下の中小零細企業にはそういうことはできません。
65歳まで雇用、5割以下、厚労省調査―希望者全員、大企業24% 厚生労働省は11日、2011年の高年齢者雇用に関する調査結果をまとめた。65歳まで希望者全員が働ける企業の割合は前の年に比べて1.7ポイント上昇したものの、全体の48%にとどまった。13年度以降、厚生年金の支給開始年齢は60歳から65歳に段階的に上がる。一段の引き上げも検討されているが、高齢者雇用の拡大は容易ではなく「年金も仕事もない」というケースが増える恐れもある。 31人以上の社員が働く13万8千社が回答した。定年を過ぎた60歳以上の人にも働く場を確保するため、厚労省は06年度から企業に65歳までの雇用確保を義務付けている。ただ、労使協定などを結べば再雇用ルールを独自で定められる。 このため、65歳まで希望者全員が働ける企業は全体の半分に届かない。規模別でみると中小企業が51%、大企業が24%となっている。高齢者雇用を増やすと若者の採用にしわ寄せが来る可能性が高いため、企業は「65歳までの雇用」に慎重になっている (2011/10/13 日本経済新聞) |
まだこの高年齢者雇用安定法で雇用者と企業が裁判で争っているケースは少ないですが、それは今はまだ定額部分のみが0で、報酬比例部分は60歳から支給されているからでしょう。しかし今後60歳で定額部分はもちろん比例報酬部分ももらえなくなる2015年頃(昭和28~30年生まれ)からは、この問題はたいへん大きくなっていくことでしょう。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」改正後の裁判例(厚労省資料PDF)
それでなくても若年層の失業率が増え、その一因は中高年層が解雇できないためだと言われているなかで、定年で追い出された60歳以上の高齢者は、年金が支給されるまでの蓄えがあればいいですが、なければ即生活保護申請です。
そのような高齢者に税金から支払われる生活保護で支援するならば、年金を支払うのとどこが違うの?と思ってしまいます。つまり若い人が「どうせ俺等には年金出そうもないから年金払わない。もし高齢者になって困れば生活保護申請すりゃいいんでしょ?」となってしまいます。
一部の議員から「年金は全額税金でまかなうべき」という意見も、私を含め真面目にずっと支払ってきた人からするととてもアンフェアに思いますが、こうなるともう仕方がないのかなという気がします。
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ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫) 浅田次郎
ジェフリー・アーチャーやコナリー、フォーサイスなどと同様、文庫が出てくればなにも考えずにすぐに買ってしまう浅田次郎氏の小説です。タイトルからもわかるように、幸せな定年を迎えようと、これから定年を迎えようとする人には羨ましい限りの話しがいっぱい出てきます。
主人公は役所を早期に肩を叩かれたノンキャリア公務員で、典型的な天下りとして60歳定年までの5年間を過ごすため、戦後まもなくGHQの指導の元で作られた中小企業協会へ入社することになります。
解説で勝間和代氏が書いているとおり、この天下りの仕組みや仕事?の内容はまさに現実そのもので、とにかく5年間なにもしないでジッとしていれば多額の退職金がもらえてハッピーリタイアメントできるという素晴らしきかな人生はと言わんばかりの世界が描かれています。
しかし意外だったのはもう枯れてしまっていると思っていた新顔の二人が実はまだ枯れていない上に、一人は独身、一人は離婚し一家離散した後と言うこともあり、家族のためとかしがらみもなにも持っていないため、本来の仕事にせいを出してしまい、様々なことが起きてしまいます。
いずれにしても中高年者の悲哀が十分に描かれていますが、中でも『どれほど視力に自信があり、どれほど注意力にすぐれていても、けっして自分の目に見えぬ人間が世界にただひとりだけいる。ほかでもない自分自身である。だからたいていの人間は、自分が最も華やいでいた時代の姿を心の鏡にとどめて、誰の目にもそう映っているにちがいないと誤解している。その錯覚に気付いてさえいれば齢なりに尊敬もされ、大人になることも美しく老いることもできるのだが、それはなかなか難しい。』という文章に、ショックを受けない中高年者は少なくないはずです。
特にこの本の主人公のように仕事一筋で生きてきた人にとっては。
あと、小説の中に「つぶれたリーマン(ブラザーズ証券)の(サラ)リーマンが可哀想」という表現が何度か出てきますが、私に言わせれば「リーマンのリーマンは上下を問わず実力以上の高額な報酬を長期間にわたりもらい続けていたわけだからいきなりクビになっても平気の屁」だと思います。なので全然可哀想じゃありません。
もっともつぶれる直前に入社した人は「お気の毒様、あぶく銭をもらい損ねたね」としか言えませんが、正しいリーマンならば新橋の焼鳥屋でサワーをチビチビと飲むのであって、リーマンのリーマンのように六本木ヒルズでワインなどかっくらうのではありません。
◇著者別読書感想(浅田次郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
中国人の本音 中華ネット掲示板を読んでみた 安田 峰俊
近くて遠い国と言われながらも、すでに日本の貿易相手国としては戦後ずっと最大だったアメリカを抜いて一番大きくなった中国ですが、その実態と中国人の本音を正しく理解するには既存のメディアでは難しいのでしょう。
そこで、著者は中国への留学経験を生かし、日中の諸問題を討議できるサイトを運営していて、そこに書かれた両国民の意見や、中国のサイトに書かれたQ&Aサイトなどをピックアップし、この本にまとめました。
ネットに書き込みをする人達ですから、比較的若い年代層が多そうですが、日本の2chなどはかなり年齢層は高くなってきているとも聞きますので、そのあたりは不明です。
内容は「日本のサブカルチャー」「遠い過去になってしまった天安門事件」「中国にもしっかりといる日本のネトウヨ的な人達」「台湾やチベット・ウイグルの問題について」「中国国内のネット規制」などについて、中国人の本音が書かれています。
確かに毎年首相が替わり、長期的な国家戦略が組めず、リーダーシップも発揮できず国際社会においても右往左往している日本と、一党独裁で長期政権が可能、強い国作りにリーダーシップを発揮できる中国の政治と、果たしてもし国同士で競争するとしたらどちらが優れているかというと明らかなような気もします。
別に競争なんかする必要がないというのであれば、優劣をつけることもありませんが、ずっとアジアの盟主だった日本が一番と今でも思い続けている人が多く、中国の躍進には目を背け、様々な問題(事故や民族紛争、人権弾圧など)を過大にとらえ「やっぱり中国は遅れている」と溜飲を下げている人が多そうです。
しかし人口は日本の11倍以上、国土面積は25倍、国内総生産は日本を抜いて世界2位の中国をいつまでも遅れた国として見下しているのはもう完全に時代遅れの唐変木でしょう。
この本を読むと、島国根性の日本人とは大きく違う、広大な大陸国家に住む中国人の壮大な世界観や不満はあるけれど、これだけの大国家を統一し、動かしていくには仕方がないという政治体制への同調とあきらめがよく見て取れます。意外にも中国のネットを使っている人は、日本人以上にリベラルな人が多いのかもしれません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
木曜組曲 (徳間文庫) 恩田陸
恩田陸さんの小説は大好きで、「黒と茶の幻想」「光の帝国 常野物語」「まひるの月を追いかけて」「夜のピクニック」など十数冊は読んできましたが、最近はもっと視野を広くしようと考え、あまり読んだことのない人の作品を中心に買っていましたので久しぶりです。
しかしこの作家さんは多作ながら描く対象は広く、作品ごとに違った印象を受けます。
この小説はいかにもアガサ・クリスティをインスパイヤして書かれた風で、密室で亡くなった女流作家の縁者達関係者一同が集まって、謎解きをするというミステリー小説で、2002年には映画化もされています。
閉ざされた家の中で関係者が順番に推理したり告白していくという映画としてはもっとも低予算で製作できるスタイルです。
たいへんよくできた推理小説ですが、ひとつだけ言うと、一般的にミステリー小説の主人公というのは大括りに言うと「作家または編集者」か「刑事」のどちらかと言ってもいいほど頻繁に登場します。
京都では「石を投げると学生か坊主に当たる」と言われますが、ミステリー小説界では「石を投げれば作家か警官に当たる」というのは世間一般から見ると、とても異常な世界に映ります。
それはもちろん恩田陸氏に限ったことではないのですが、作家さんが住む世界では同業者か出版社の編集部がもっとも近しい間柄で、手っ取り早くその人達を主人公にしてしまうのが仕事の中身についてもよくわかっていて楽なのでしょうけど、恩田氏ほどの才覚と幅広い知識があるならば、すぐ身近にいそうな人達を主人公にするような安易な設定は避けてもらいたかったなと思うのが残念なところです。
◇著者別読書感想(恩田陸)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ドリームガール (ハヤカワ・ミステリ文庫) ロバート・B・パーカー
昨年死去したロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズの小説も未読分が残りあと数冊となってきましたが、大手書店やamazonでも在庫がなくなっているものもあり、たまたま見つけるとすぐに買ってしまいます。
このドリームガールは比較的新しく日本では2007年頃に出版されたもので、ちょうどその頃は他のシリーズが立て続けに文庫で刊行されていて、なぜかこの作品を見逃していました。
ロバート・B・パーカーや主人公スペンサー、あるいはハードボイルド小説については過去何度か書いています。
スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
今回は過去に2度(「儀式」と「海馬を馴らす」)危ないところを救い出した女性が、スペンサーの本拠地ボストンで高級娼館を経営していたところ、そこへ謎の相手から妨害が入るようになり、スペンサーが乗り出すというストーリーです。
助っ人にはホークはもちろん、最強のゲイと言われているテディ・サップも応援に駆けつけます。このテディ、名前がサップとつくので、どうしても私のイメージとしてはボブ・サップとなってしまうのですが、こちらは白人の銃使いです。
この小説のヒロインは少女の頃から売春をしていて、現在もその中から抜け出せずにいます。
スペンサーと恋人スーザンとの会話の中で娼婦についての話しとなり、スペンサーは若い頃に兵士として従軍していた時、その休暇を使い仲間達と「巣鴨のホテルに泊まり、娼婦を買い、そして戦地へ戻った。娼婦を買ったのはその時が最後」と語る場面がありますが、過去の話とはいえ恋人に自分が娼婦を買ったことがあるなんて話しをするとはなんともはやです。
そこで、あれ?スペンサーってベトナム(実質的なアメリカ参戦は1965年~1975年)へ行ったことあったっけ?と思いましたが、スペンサーシリーズ第1作目は1973年の発行で、その時既に警察官を経験した上で、探偵に職を変えていましたからちょっと無理があります。
解説を読んでわかったのですが、スペンサーは1950年代の朝鮮戦争へ兵士として行ったことになっていたそうで、このシリーズが大ヒットして、約40年間も続いてしまったものだから、そこのあたりの年代が合わなくなってきたということです。
確かに仮に20歳で朝鮮戦争へ従軍していたとすれば、今は80歳近い年齢となりますから、ちょっとハードボイルドのイメージが崩れてしまいます。小説の中でも「戦地に行った」としか書いてなくぼかした扱いになっています。
小説の中では一切年齢は明かしてきませんでしたが、イメージとしてはスペンサーはシリーズ最初の頃は30代後半、最近のものは40代の半ばという感じがします。理由は、ボストン市警の警部(マーティン・クワーク)にいつもタメ口を聞いているので、さすがに30代ではありえないだろうと。
40年経っても主人公はまったく変わらないか、せいぜい10歳ぐらいしか歳をとらないのは、サザエさんやちびまる子ちゃんを見てもわかるとおりです。
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
※スペンサーシリーズの参考サイト(Clues Are My Game SPENSER with an S)
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なんでも勤め人が30代になっても管理職になりたがらず、指示された仕事は上手にこなすものの、自主的に動くことができず、残業や休日出勤をできるだけ避け、マイペースで働く人が増えてきているのだとか。
2011/10/05 日経産業新聞 ぶら下がる30代の活性術「辞めたくない。昇進したくもない」 「辞めません。でも、責任の大きな仕事は無理です」――。日本経済の長期停滞を背景に、昇進に関心を持たず、転職などのリスクも避ける30歳代の社員が増えているという。受け身で仕事はこなすが、人材コンサルティング会社シェイクの吉田実 社長は、こうした現象を会社への「新ぶら下がり」と指摘。思い当たる企業は対策が必要かもしれない。 |
「ぶらさがり族」とは、90年代にブラザーと言われる外国人に身も心も入れあげる日本女子のことを揶揄して使われていたことがありますが、今では一般的に、「会社や役所、大口顧客、配偶者(夫や妻)などに、たいした貢献はしていないのにそれに頼りきって得られる利益だけはしっかり享受するずる賢い人達」のこと(私の想定)で、景気のいい時には目立たないものの、バブルがはじけた後、長期的な景気低迷期に入ると「役に立たないヤツは食わせていけない」と、俄然「貢献度」が注視されるようになります。
しかし今の30代前後の人達に対し気の毒に思うのは、以前ならある年代になって管理職になると基本給も手当も増えて大幅な給料アップになりましたが、雇用者保護の法令遵守と景気低迷の中では、非管理職にはキッチリと残業代がつくものの(中堅企業以上の場合)、管理職になったとたん、残業代がつかなくなり、一方仕事量は増え、責任が重くなります。つまり管理職になったとたん、手取りの年収は逆に下がってしまうという現象があちこちで起きています。
基本給が上がれば一般的には賞与に貢献しそうですが、それもやはり好景気の時の話しで、売上・利益とも前年割れが続く状態になると、逆に管理職のほうが責任を問われマイナス査定を受けやすく、非管理職より大きな比率でダウンして少なくなってしまうという悲惨な目に遭うこともあります。
さらに、少し上の年代には、数でも質でも圧倒的に上回る40代前後の激戦を戦い抜いてきたいわゆる団塊ジュニアが待ちかまえ、頭を押さえつけてきますから、不自由極まりありません。ようやく団塊世代が引退し、上のポストに空きが出てきたと思ったら、不況と団塊ジュニアのせいで、若手が会社の中でのし上がるのは至難の業です。
そしてそろそろ管理職(リーダーや課長)になり始める30代前後の人達は、すぐ上の先輩から「管理職になっても給料が実質上がらないこと」「管理職になると面倒な仕事が増えること」「仕事上関わる人が増え人間関係がたいへんなこと」「管理職には早朝、夜間、休日に遠慮なく指示が飛んでくること」「部下達の面倒をしっかりみてやらないとすぐクレームがつくこと」など聞かされると、そりゃ「偉くなりたい」というモチベーションは一気に下がってしまうことでしょう。
企業経営者側にとっては、経験も実績も積んだ働き盛りの社員が、率先して動かず、指示待ちでムダ飯を食ってもらいたくないと思うのは当然のことです。そこでなにかの本で読んだか、アホなコンサルタントに騙されて「成果報酬」などという一見すると公平そうな、実のところは経営者にとって都合のいい人事政策をどこからともなく持ち出してくることになります。
仕事に役立つ能力には肉体、精神、知能、知識、経験、ひらめき、リーダーシップ、プロセスなどいくつもありますが、それらについては考慮せず、結果がたまたまよかったという、それだけを最大限に評価しちゃいましょうという割り切った考え方が成果報酬制度です。あと成果主義とか言っておきながら諸々の条件などを付け加えるのが日本流ですが、それがまた曖昧模糊としています。
その曖昧模糊のもっとも大きなものとして、成果主義の最後に、経営者や上長が独自に判断し、その社員が好きか嫌いかで大きくポイントを動かしたりしますから、まったくなにをか言わんやです。結果的には不景気な時は成果主義をとることで会社は人件費を抑えることができ、大いに経費節減でき助かるのです。今後しばらくは期待薄ですが、もし好景気になれば、成果主義から、また年功序列や能力主義に戻せばいいだけです。
なので、30代前後の若手~中堅社員においては、入社してから一度たりともいい思い(思ってもいなかった額の賞与が支給されたとか、非常に高評価で二段階特進したとか)を経験せず、これからもそういうことがまったく期待できないと思っているので、頑張るだけムダと、ぶら下がり族に成り下がっても仕方がありません。
日本の各企業も、すでに国内向けだけの従来の仕事で稼ぐことは難しく、海外へ出て稼ぐか、既存の仕事からアイデアと工夫して新たな需要を他よりも早く発掘していくしか伸ばす余地はありません。これから激しい競争を勝ち抜いて真面目でモチベーションの高い状態で会社に入ってくる人達には、なんとも皮肉な現実が待ち受けていることでしょう。
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貯まった1円玉はどうする?
スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
日本の農業はどこへ向かうか
米の生産量減少に歯止めはかかるか
客員教授と非常勤講師ってなんだ?
天然素材でも綿はよく燃えるらしいことがわかった
リタイア後の心配事
2021年版出版社不況
変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)
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