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迷宮 (集英社文庫) 清水義範

著者はSF小説を得意としながらも、ミステリーやコラムっぽい話しまでかなり幅広く活躍されている方です。私も1990年代に短編集で「深夜の弁明」「ビビンパ」などを読んでいますが、非常にユニークな方という記憶があります。

この「迷宮」は1999年初出の小説なので今から13年前のものになります。ブックオフで購入したことがバレバレでして、その場合は著者にはまったく実入りがないので申し訳なさでいっぱいです。だからと言ってベタ褒めするようなお調子者ではないので、率直な読後感想です。

まず内容はいきなり驚き連発です。このようなスタイルは決して珍しくないと解説にありましたが、いやいやどうして十分に珍しいです。解説者の場合は「俺はお前等と違ってもっといっぱい読んでいるんだぞ」という見栄がありますから、知ったかぶりでもなんでも有効に使わなければ食っていけません。

まず病院と思える室内にひとりの男が連れてこられ、かと言ってなにか拘束されているようなわけではなく、単に過去に起きた特定のある凄惨な殺人事件の新聞記事や週刊誌記事、それを題材として小説を書こうとしている人の取材メモ、手紙などを治療の一環と称され読まされます。というか小説ですから文章で表されます。治療にしてはかなり過激とも思える療法です。

読者としてはその過去の殺人事件のことにだんだんと詳しくなっていき、それを読まされている男がおそらくこの事件に関わりのある人物だと感じてきます。記憶喪失の主人公も当然それに気付きはじめます。うん、これだけでもなにかゾクゾクします。

というだけの話しなんですが、組み立てが素晴らしいというか、作者が新聞記者が書いた原稿、週刊誌のライターが書いた原稿、小説家が取材したメモ、小説家が師と仰ぐ先生にこの件で相談した手紙、先生からの返事、警察の聴取記録などひとつの事件について様々なパターンでその真相を想像したり探って書いていくのはこれは凄いし、それが一気に読めるのはたいへん面白い試みです。ただ最後が突然終わるので、これがやっぱり清水義範氏の持ち味なんだなぁと思い知らされたり。

著者別読書感想(清水義範)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

阪急電車 (幻冬舎文庫) 有川浩

2004年「塩の街」でデビューしその後大活躍中の女性作家さんです。自らライトノベル作家と称するように、軽いノリで大人の機知をうまく表現する現代の売れっ子必須要素を備えている感じです。

この作品は「阪急電車 片道15分の奇跡」として映画化もされましたが、わずか片道15分の阪急今津線の各駅ごとに主人公を入れ替え、様々な人生模様を軽いタッチで描かれています。

同沿線には名門の関西学院大学や阪神競馬場、子供でも知っている宝塚歌劇場、大正時代にできた宝塚ホテルなどユニークで歴史ある施設が多い場所です。

そういえば1月に甲東園駅前にあるマクドナルドが関西学院大学にマナーの悪い学生を注意して欲しいとクレームを入れたら、学校側は出入りを禁止すると学生におふれを出したことがありました。その甲東園駅もこの今津線の駅のひとつです。

おそらくこの小説と映画のおかげで、あこがれて全国から若い人が押し寄せてきたのではないかと思われますが、なにかそうさせてしまいそうな、男女の微笑ましい出会いや、くだらないDV男と別れるきっかけとなる乗客のひと言など、ほのぼのとさせるものがあります。

残念ながら私の年齢では、もうときめきもなにも湧いてきませんが、青春時代を送るならこの街がいいなと思わせる、そして阪急電鉄から表彰状と金一封がもらえそうな同時進行の短編物語です。

著者別読書感想(有川浩)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ひとがた流し (新潮文庫) 北村薫

2005年から2006年にかけて朝日新聞に連載されていた小説です。主人公はテレビ局の独身中年女性アナウンサーで、高校、大学時代からの同性の友人達と今でも仲良く付き合っています。その女性同士の友情の話しが淡々と続いていきます。

序盤から終盤近くまで特に話しで盛り上がるところもなくずっと平板なまま過ぎていきます。眠たくなるのをこらえるのがたいへんでした。北村氏の小説にしては妙だなと思っていましたら、案の定終盤近くになってから主人公に大きな事件が起き、そこから一気に急展開となります。

女子アナと言えば華やかでモテモテで脚光を浴びてと思いがちですが、40歳を超えたベテラン局アナだと、そういう華やかな世界ではなく、ナレーションや取材先からの中継で時々顔をだす程度の地味な存在となってしまいます。

しかしベテランアナともなれば、ニュース番組でのメーンキャスターの道もあり、主人公は密かにその道を目指しています。そこへ行くまでの苦労話などはほとんど出てきませんが、ようやくその主役の座が回ってきそうなときに、思いもよらなかったことが起きるのです。

タイトルは主人公が子供の頃に、澄んだ綺麗な川に「ひとがた」の紙に願いを書いて流した行事について、ある本では「ひとがたに書くのは悲しみや持病など捨ててしまいたいこと」と書いてあり、それにずっと違和感を覚えていたところ、ある人から「願いを書くこともある」と聞いて、自分達のおこないが間違っていなかったことに安心するところから用いられています。しかしそのタイトルと、小説の中身とはあまり関係がなさそうです。

著者別読書感想(北村薫)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

読者は踊る (文春文庫) 斎藤美奈子

以前読んだ米原万里氏(故人)の書評本の中で、やたらと誉めちぎっていた斎藤美奈子氏の書評本を読んでみることにしました。米原万里氏の書評を読んだ時もそうでしたが、書評にはその中でお薦め本というのがあり、自分の趣味の中には入っていない本でも面白そうな本を積極的に取り込むことで知識や興味の偏りを防ごうとしています。米原氏の書評の中からは佐藤優氏の本などいくつか発掘できました。

この本では、聖書からグルメガイドや辞書、教科書、学習漫画まで広範囲に200冊以上の本に触れ、舌鋒鋭く、また諸先輩方々や業界の大物にもなんらひるむことなく、気の向くまま思うままに書かれているので、これがたいそう面白くて笑えます。しかし逆にすごく読みたくなる作家さんや本のことはあまり紹介されてなく、新たな分野や作家さんを発掘する目的だとちょっと物足りないかも。

著者は1956年生まれということで私と1歳違いの同年代です。ステレオタイプで語るわけではないのですが、この世代というのは何かにつけて団塊世代が食い散らかしたその後始末と、社会に入ってからも、ドカンと居座って騒がしいその(悪い)影響をモロに受けざるを得なかった世代で、多少は世の中に対して皮肉っぽくなるのも仕方なしです。

現在は朝日新聞の文芸時評を書いているそうですが、その団塊世代にもっとも支持されているであろうお堅い新聞ではおそらく控えめにしか書けずストレスが溜まりまくりでしょうが、自分の本なら名誉毀損になりはしまいか?と思えるギリギリまで、バッサリと斬り捨て御免ができます。

一方では著者本人も書評だけでなく小説などを書いていますので、自分の書いた本の書評についてもぜひ取り上げてもらいたいものです。おそらくその書評を書いた人や書評自体をまたバッサリと斬るのでしょう。

半端ではない読書量と、同じテーマの本を比較するために何冊も読むという執着心?、それになにも怖いものなしというところは、米原万里氏とも相通ずるところがあったのでしょう。この文庫版では解説に米原万里氏が登場しています。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

九つの殺人メルヘン (光文社文庫) 鯨 統一郎

鯨統一郎氏の小説は、早乙女静香シリーズの「邪馬台国はどこですか?」(1998年)に続き2冊目です。この「九つの殺人メルヘン」は2004年刊で、バーの中で謎を解くスタイルは「邪馬台国はどこですか?」と似ていますが、シリーズとしてはこちらは「桜川東子シリーズ」ということで別のものとなります。

タイトル通り九つのグリム童話に関連した不思議な殺人事件をテキパキと解決していくメルフェンを専攻する女子大生桜川東子と、バーのマスター、刑事、犯罪心理学者の三人の厄年トリオのうんちく話しが中心です。

童話の話し以外にも厄年トリオが、日本酒の話しや少年時代の思い出話し等、数々の雑学を披露してくれますので、飽きることがありません。しかし、デビュー作「邪馬台国はどこですか?」でも感心しましたが、鯨統一郎氏の守備範囲の広さには驚かされます。「2011年8月前半の読書

すでによく知られていることですが、グリム童話の本当のストーリーは、絵本やディズニー映画で描かれているのとは大きく違い、かなり残酷かつ、非道な内容であると解釈されていますが、その解釈をうまく利用しながら、身近で起きた殺人事件の謎解きをおこなっていきます。

登場する童話と新解釈は、
  ヘンデルとグレーテル→口減らしのための子捨て
  赤ずきん→不良娘の夜遊びと視覚失認症
  ブレーメンの音楽隊→死ぬ前の一瞬の夢
  シンデレラ→ガラスの靴は性の相性
  白雪姫→父親との近親相姦
  長靴をはいた猫→悪漢ネコのピカレスクロマン
  いばら姫(眠れる森の美女)→エクスタシーと性交渉禁止
  狼と七匹の子ヤギ→母親の愛人による子への虐待
  小人の靴屋→怠け者の願望

童話の新解釈本は今ではいろいろとありますが、本書の参考書籍にもなっている「メルヘンの深層―歴史が解く童話の謎」森義信著あたりを読んでみたくなりました。

著者別読書感想(鯨統一郎)

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