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1602
梟の城 owl's castle(1999年) 東宝
監督 篠田正浩 出演者 中井貴一、鶴田真由、葉月里緒菜

1963年(昭和38年)に工藤栄一監督、大友柳太朗主演で映画化されていますのでリメーク版ということになります。原作は、1960年に発刊された司馬遼太郎氏の直木賞受賞作品「梟の城」です。

実はこの映画、20数年前にロードショーを映画館で見ていて、さらに原作小説も読んでいながら、絢爛豪華な大坂城と秀吉が出てきて、石川五右衛門が釜ゆでされるぐらいしか記憶になく、この機会にもう一度録画して見てみました。

ストーリーは伊賀の忍者が主人公で、織田信長勢の伊賀攻めで散らばってしまった忍者達が、その後はそれぞれの戦国時代の大名に仕え、敵と味方に分かれて戦うという内容です。

主人公は、両親を殺された恨みで、織田信長亡き後の後継者秀吉を狙って大坂城へ忍び込みます。

同時に、主人公のライバルだった男は甲賀忍者と組んで、私利私欲を追求し奉公所へ出仕していて主人公を殺そうと対決しますが、逆に秀吉の部下に捕まってしまい、名を聞かれたときに「石川五右衛門」と名乗り、その後、秀吉を殺そうと大坂城に忍び込んだとされ釜ゆでにされます。

葉月里緒奈演じる木ざるは伊賀者の末裔のくノ一、鶴田真由演じる小萩は服部半蔵の策で主人公を見張る役目にされたくノ一という展開で忍びだらけの映画で楽しめます。

まだ1999年ですからCGで描くVFX(視覚効果)はまだ使われてなく、SFX(特殊撮影)の世界ですから、忍者が飛んだり消えたりするシーンはちょっとチャチですが、ハリウッドでリメーク版でも作ってもらうとどうなるかなぁーって想像が膨らみます。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

007 スペクター(原題: Spectre)(2015年) 英・米
監督 サム・メンデス 出演者 ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ

プロローグはいきなりメキシコシティにある建物の大爆破から始まり、MI6本部がある英国はもちろん、イタリア、オーストリア、モロッコ、北アフリカの砂漠、最後はやはりロンドンと場面は駆け回ります。

お馴染みのお約束、爆破シーン、カーチェイス、ヘリコプターアクション、スペクターに捕縛され絶体絶命のピンチなどもちゃんと盛り込まれています。

本作がボンドシリーズで24作目となりますが、もうどれがどれだかよくわからなくなっています。ロジャー・ムーアが演じていた頃までは、題名を聞くと「あぁアレね」とわかったのですが、、、

東西冷戦や、南米やアフリカ、中東、アジアの極端な独裁国のようなわかりやすい英米の敵がいたときには、映画も描きやすかったでしょうけど、今は変に敵国を名指し、または仮想敵としてしまうと政治問題化しますので、独立したテロリストという描き方しかできなくなり、やや悪役に魅力がなくなってしまっています。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

勝手にしやがれ(1960年) 仏
監督 ジャン=リュック・ゴダール 出演者 ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ

原題はフランス語で意味は「息をのむ」「息せきって」という意味ですが、アメリカで1983年にリメークされたときには「Breathless(ブレスレス)」という直訳のタイトルが付けられました。

内容は、ラテン系らしく陽気な犯罪者(ベルモント)を主人公としたものですが、警官殺しという重犯罪で追われながらも、もっぱらガールフレンドとの恋愛は欠かせないという一種お気楽なストーリーです。

1960年頃というと、フランスでも戦争が終結して15年ほど経ち、時代はようやく経済も好調になっていて社会も明るくなっていた頃だったでしょう。

映画でも街にあふれるクルマやファッションがオシャレで、花のパリを強く印象づけています。

日本でも世界でもたいへん評価が高い作品(アメリカではリメーク作品が作られ、ドイツではベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、沢田研二が歌った「勝手にしやがれ」はこの映画がベースとか)ですが、個人的にはこうした後先をなにも考えない犯罪者の心理がまったく理解できません。

なので単なる想像の中での出来事ぐらいにしか思えず(だから映画なんでしょうけど)、見ていてもどこか冷めた目でしか見られません。

きっと60年代に青春時代を過ごした、やがては過激派なども産む(日本では団塊世代とその少し上)にとってはこうした反社会的でありながらも淡々として、明るくて仲間にも恵まれ、なんにでも同化していける主人公に共感できたのでしょう。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

TOKYO JOE マフィアを売った男((原題:Tokyo Joe: The Man Who Brought Down the Chicago Mob))(2008年)
監督 小栗謙一

1980年代、シカゴでイタリアンマフィアの幹部にまで上り詰めた実在の日系2世「ケン・エトー(衛藤 健)」の生涯をFBI女性捜査官エレイン・C・スミスを始め、様々な関係者に語らせていくドキュメンタリー映画です。原作はそのエレイン・C・スミスが書いた同名のノンフィクションです。

その主人公は、戦前にアメリカへ移住した日本人両親のもと、1919年に生まれます。父親は関西学院大学の創設にも関わった教師で、一家を連れて渡米した後は宗教にはまり、宣教師として活動します。

仏教徒だった母親は渡米後にうつ病となり帰国してしまい、子供だった当時の主人公は厳格な父親の元で弟とともに過ごしますが、14歳で家を飛び出して職を転々とします。やがて太平洋戦争が始まり、日本人収容所に入れられます。

戦争が終わったあと、シカゴのイタリアマフィアの使い走りから始めますが、やがてその才能を発揮し、白人以外は幹部になれない中で、異例の出世を果たします。

賭博などの罪で逮捕されますが、マフィアが大金を積んで保釈されます。しかし釈放されたあとすぐに二人の殺し屋に銃弾を浴びせられ瀕死の重傷を負いますが、命は助かります。

つまり、「逮捕されて仲間を売った」と思われたわけで、その裏切りを知り、FBIが提案してきた保護プログラム(すべて証言する代わりに国が保護をする)を受けることになります。

その証言のおかげで、シカゴのイタリアンマフィアは壊滅状態に陥ることになります。

証言したケン・エトーは、名前を変え、安全な住居を与えられ、2004年に85歳の人生を全うします。

こういう数奇な運命をたどった日本人がアメリカにいたということを初めて知りましたが、なかなか興味深いドキュメンタリー映画でした。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 2020年 アニプレックス他
監督:外崎春雄 原作:吾峠呼世晴『鬼滅の刃』

今さらですが、テレビでやっていたので録画して見ました。正直還暦過ぎたオッサンには、これのどこに熱狂する要素があるのかまったく理解不能ですが、自分が子供の頃には、ウルトラマンやマグマ大使、巨人の星などに夢中だったことを考えると、流行なんだろうなぁという感想です。

水戸黄門のドラマと同じで、主人公やその他レギュラーの仲間達はどんな苦境に陥っても死なず、目的を達するということがわかっていながら、それがクセになってしまうのはいつものことです。

このシリーズは、主人公が家族を鬼に殺され、修行して鬼殺隊に加わったということを知っていないと意味がわからないことも多そうです。

というか、劇場版ではどうしても時間の関係から原作(漫画)やテレビアニメ放送の中から多くの部分をカットして作られているので、鬼に「下弦の壱」とか「上弦の参」など、鬼退治をする鬼殺隊にも「炎柱」などクラスというかランクがあったりしますが、そういう様々な細かなことは映画ではほとんど説明がないのでスルーしながら見るしかありません。

ま、あまり深いことは考えずに、出てくる様々な仕掛けやアクションをみて楽しむというのが、マニア以外の楽しみ方なのでしょう。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ロープ(原題:Rope) 1948年米(日本公開は1962年)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演者:ジェームズ・スチュワート、ジョン・ドール、ファーリー・グレンジャー

1924年にアメリカで実際に起きたシカゴ大学の学生二人が、完全犯罪をやり遂げようと、裕福な家の知り合いの少年を誘拐し、身代金誘拐を装いながら、すぐに殺した殺人事件「レオポルドとローブ事件」を題材に小説化された原作を映画化されたものです。

原題の「Rope」は犯人のひとりの名前「Loeb」と似ていますが、それとは関係がなく、映画の中で殺人に使った道具がロープで、そのロープをなにも知らない被害者の父親に貸し出した書籍をまとめるのに使って渡すなどその異常性を象徴したものです。

この映画の最大の特徴は、一見してワンカットで最後まで進むことです。つまり場面展開がなく、時間も映画を見ている人と同じで進んでいきます。またヒッチコック初のカラー作品というのも特徴です。

最初にマンションの上から遠目に地上を歩くカメオ出演のヒッチコックなどを映したあと、そのままカメラはマンションの室内を映し出し、殺人シーン、その死体を部屋の中にある古いチェストの中に隠し、その部屋に被害者の家族や婚約者など関係者のゲストを集め、自分たちの送別パーティを催します。

全編カットのないワンシーンですから、俳優は台詞を覚えるのが大変だったろうなぁーと思いましたが、そこは当時のフィルムは最長15分程度しか回せなかったらしいので、フィルムのつなぎ目がわからないよう、いろいろ工夫がなされていました。

それにしてもワンカットが非常に長い演技を強いられる俳優は、台詞や動きを覚えるのが大変だっただろうなぁーと思わずにいられません。

★★☆

【関連リンク】
2021年9~10月 陰陽師II(2003年)、エージェント:ライアン(2014年)、アンダーグラウンド(1995年) 、悪い種子(1956年)

2021年7~8月 悪の法則(2013年)、断崖(1941年)、ミッドナイト イン パリ(2011年)、記憶にございません!(2019年)、戦場(1949年)

2021年5~6月 新選組(1969年)、座頭市と用心棒(1970年)、パットン大戦車軍団(1970年)、シング・ストリート 未来へのうた(2016年)


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1601
毎年恒例の自己中で選ぶ「昨年読んだ中でのベスト書籍」大賞の発表です。

通常の賞がその年か前年に発刊されたばかりの新しい書籍が対象になることが多いのに対し、あくまでこの1年間に私が読んだ書籍からの選考となります。したがって何十年も前の古い本も含んでいます。

って言うか、新刊本、しかも単行本はほとんど買わないので(著者さんの印税にはあまり貢献できていません)、いずれも数年前の書籍(文庫か新書)がメインです。古くても新書とはこれ如何に。新刊でも古典と呼ぶが如しです、、、

一昨年の2020年に読んだ書籍は計105冊(94作品)で、そのうち「新書・エッセイ・ビジネス・ノンフィクション」が29作品(30冊)、「海外小説」は14作品(19冊)、「国内小説」は、51作品(56冊)でした。1作品で上下巻とかありますので冊数と作品数は違います。

完全にリタイア後の昨年2021年に読んだ全書籍は計112冊(93作品)でした。作品数は2020年から1作品減ですが、冊数は7冊の増加となりました。リタイア後、しかもコロナ禍で自宅にこもっている時間が多かった割にはあまり伸びずです。

「武田信玄」と「錨を上げよ」が1作品で各4巻、「オリジン」が3巻、「クリフトン年代記」の5部から7部や、「王妃マリー・アントワネット」、「黄砂の籠城」などの10作品が各2巻と、1作品で複数巻(冊)の書籍が昨年は多かったので作品数は減っても冊数が増えた理由です。

比較的よく読書をした2019年は115冊(108作品)でしたので、それとは3冊(15作品)及びませんでしたが、ここ10年間ではそれに次ぐ冊数となりました。

2019年は今と違ってまだ仕事をしていましたが、読書量からすると、どれだけ暇だったんだ?って感じです。

それはともかく、「新書・エッセイ・ビジネス・ノンフィクション」は22作品(22冊)で前年から7作品減(8冊減)、「海外小説」は13作品(21冊)で前年比で1作品減(3冊増)、「国内小説」は、58作品(69冊)で前年比で7作品増(13冊増)となりました。

大雑把に言えば、新書、エッセイ等が減り、海外小説は横ばい、増えたのは国内小説で、その国内小説では作品数も増えましたが冊数がより大きく増加しました。やはり仕事を引退すると、ビジネス書やハウツー本を読まなくなってしまいます。

それでは部門ごとに大賞の発表です。

  ◇   ◇   ◇

「新書・エッセイ・ビジネス・ノンフィクション」部門は22作品読みましたが、その中から大賞候補は、

生きて帰ってきた男 小熊英二
カラー版 宇宙を読む 谷口義明
無人島に生きる十六人 須川邦彦
桶川ストーカー殺人事件 清水潔
獄中記 煉獄篇 ジェフリー・アーチャー
官報複合体 牧野洋

の6作品です。どれも選りすぐりの面白さで、選ぶのが毎年苦労するのがこの部門です。

その中から大賞は、、、、、、

無人島に生きる十六人 須川邦彦著

に決定です!パチパチパチ・・

読書感想は、
7月前半の読書と感想。書評(無人島に生きる十六人)2021/7/14(水)

このノンフィクションは今から120年前の明治32年(1899年)に海洋漁業調査中の日本の帆船が、ハワイから日本へ向かう時に嵐に遭いミッドウェー近海で難破し、木が1本もない珊瑚礁でできた平らな小さな無人島に流れ着きます。

優れたリーダー(船長)がいて、生き抜くために様々な工夫と、お互いが助け合い、約4ヶ月後に偶然近くを通った日本船に救助されるまでの実話が元になっています。

映画にでもなっていれば、この出来事は有名になっていたでしょうけど、ほとんどの日本人には知られていないことだと思います。

もうひとつ、特別にどうしても大賞を与えたいのが、

カラー版 宇宙を読む 谷口義明著

読書感想は、上記「無人島に生きる十六人」と同じ

7月前半の読書と感想。書評(宇宙を読む) 2021/7/14(水)

これは壮大で夢のある科学(天文学)の話しで、数値や事象など理解できない面もありましたが、晴れた夜空を見上げる度にこの本に掲載されていた美しいカラー写真や、宇宙の謎を解き明かそうとする科学者の奮闘が思い浮かびます。

小さなお子さんや彼女がそばにいて、雑談しながら星を見上げ、本に書かれていたネタ(「あのミルキーウェー(天の川銀河)の中には太陽のような明るい恒星が2000億個以上もあるんだよ~それだけあれば地球とそっくりな環境の星もありそうだね」とか)をしてあげると、もう尊敬されること間違いなしです。

ただ、未来ある子供や彼女には、いくら本書に書かれていても、「あと50億年もすればついに太陽が燃え尽きて、地球も滅亡するんだけどねぇ、、」など、暗くなる話しはしないようにしましょう。

  ◇   ◇   ◇

次に「海外小説」部門は13作品の中から大賞候補作品は下記の7作品です。

剣より強し クリフトン年代記 第5部(上)(下) ジェフリー・アーチャー
機は熟せり クリフトン年代記 第6部(上)(下) ジェフリー・アーチャー
永遠に残るは クリフトン年代記 第7部(上)(下) ジェフリー・アーチャー
運命のコイン(上)(下) ジェフリー・アーチャー
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー
死の接吻 アイラ・レヴィン
オリジン(上)(中)(下) ダン・ブラウン

大賞は、、、、

そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー著

読書感想は、
2月後半の読書と感想、書評(そして誰もいなくなった) 2021/2/27(土)

古典の名作の部類ですけど、さすがに82年前(1939年)に発刊されたこの作品を上回るミステリーはそうそう現れないでしょう。名前だけはよく知っていながら、読んだのは(たぶん)初めてです。

昨年は、ジェフリー・アーチャー著の本が多かったですが、この著者の小説は当たり外れがないというか、どれもたいへん面白く、自ずと大賞候補に多く上がってきます。

クリフトン年代記は、1部から7部までの大河小説的に長く、登場人物達の過去に起きた対立や曰くを思い出すのがたいへんでしたが、どれもドキドキのスリルがあり面白かったです。

ただ初期の頃の「ケインとアベル」が私にとってはあまりに衝撃的でしたので、それと比べると、ストーリーのつくりかたが大枠では似ているので、インパクトは薄れてしまっています。

ダン・ブラウンの小説は、「ラングドンシリーズ」他、長編小説はすべて読んでいますが、今回の「オリジン」も古い宗教と新しいAI技術とをうまく融合させ、世界中の宗教家を震撼させるような壮大なストーリーで、とても楽しく読めました。

  ◇   ◇   ◇

最後にもっとも作品数が多い「国内小説」部門は、58作品の中から大賞候補作は、下記の10作品に絞りました。

シャーロック・ホームズ対伊藤博文 松岡圭祐
それまでの明日 原りょう
王妃マリー・アントワネット(上)(下) 遠藤周作
黄砂の籠城(上)(下) 松岡圭祐
沖で待つ 絲山秋子
家守 歌野晶午
海の見える理髪店 荻原浩
後巷説百物語 京極夏彦
地のはてから(上)(下) 乃南アサ
風に舞いあがるビニールシート 森絵都

この中から大賞は、、、、

後巷説百物語 京極夏彦著

に決定です!!おめでとうございます~パチパチパチ・・

読書感想は、
10月前半の読書と感想、書評(後巷説百物語)2021/10/16(土)

1冊で800ページもある連作5篇の中篇小説集ですが、魅力ある小悪党の「小股潜りの又市」が活躍し、それが粋で奇想天外、タイトルからするとなにかおどろおどろしそうで怖そうですが、実は楽しく面白く読ませます。

この巷説百物語シリーズはいくつか出ていますが、その以外で評判が良い著者の同種の小説も読みたくなり、怪談シリーズの「嗤う伊右衛門」と「覘き小平次」はすでに購入済みです。

残念ながら大賞には少し及びませんでしたが、次点は下記の2作品です。

黄砂の籠城(上)(下) 松岡圭祐著
地のはてから(上)(下) 乃南アサ著

読書感想は、
6月後半の読書と感想、書評(黄砂の籠城) 2021/6/30(水)
8月前半の読書と感想、書評(地のはてから) 2021/8/14(土)

どちらの作品も、現代ではなく、明治や大正時代の話しです。こうした近代に分類される時代の話しは学校ではほとんど習った記憶がなく、知識を得るにはこうした小説を読んだり、テレビでドキュメンタリーを見たりするしかありません。

特に「黄砂の籠城」は実際に起きた有名な事件を元に、実在する人物の名前を使ったノンフィクションに近い小説で、多くの日本人が知らなかったことが多く登場します。

昨年のリス天読書大賞を受賞した熊谷達也著「邂逅の森」も、似たような近代の時代に生きるマタギの主人公を深く描いた小説でしたが、個人的にはそういう割と最近のことなのに、知らなかったことがわかる小説が好きなんだと思います。

以上、各部門、年間ベスト大賞受賞おめでとうございました。

今年もよい本に巡り会えますように!

【関連リンク】
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
1295 リス天管理人が2019年に読んだベスト書籍
1295 リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍
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1600
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

狙ったわけではなく、日記はちょうど1600回の節目のスタートとなりました。いやめでたい。

リタイア後の読書生活はどうなるかな?と思っていましたが、ほぼ現役時代から変わらないペースで読んでいます。

リタイア後なら時間がいっぱいあってもっと読める?と思いましたが、あれこれやること、やりたいことはそれなりにあり読書に割ける時間は現役時代と変わらないということです。

違うのは、ビジネス書を読むことはかなり減りました。そりゃそうです。

でも最新のテクノロジーや、ビジネス手法などからあまり疎くなってしまうのも怖いので、時々は少し遅れてでもそうした書籍を読みたいと思っています。

さて、今年も読書感想からスタートです。


錨を上げよ(1)出航篇 (幻冬舎文庫) (2)座礁篇 (3)漂流篇 (4)抜錨篇 百田尚樹

2010年に単行本、2019年に文庫化された長編青春小説です。青春というのは、著者自身が経験してきたことを主人公に重ね合わせた少年から青年にかけての成長物語です。

文庫4冊で計1500ページを超えるかなりの長編ですが、シンプルな一人称だけの話しなので一気に読めます。

この小説が書かれたのは、2006年に「永遠の0」でメジャーデビューするずっと前の1985年頃、著者の29歳の頃だったそうです。多彩な人ですが、若い頃から創作力と文才はあったのですね。

著者は私よりも1歳年上の同年代、しかも同じ頃に同じ京都にある大学(大学は違いますが)へ通っていたということで、大学生時代の風俗やバンカラな描写はたいへん懐かしく感じます。

そう言えば五木寛之氏の「青春の門」でも大学時代の様々な出来事が主要な小説のテーマになっていましたが、時代背景や主人公の性格が全然違うとは言え、なんとなくそれを思い浮かべました。

京都の大学生活を描いた小説と言えば、時代は違いますが、万城目学著の「鴨川ホルモー」や、森見登美彦氏の小説にも時々出てきます。

大学生ではないですが、京都のバンカラな風土を描いていた花村萬月著の「百万遍 古都恋情」が面白かったです。

今でこそ大学授業料はとんでもなく高騰していますが、当時(1970年代)はまだ国立で年間10万円台、私立でも15~30万円と破格でした。ただ著者が通った同志社は突出して高かった記憶があります。

学費が比較的安かったことで、本書でも出てきますが、将来の展望が見えず、大学8回生など留年をしている人は多かった時代です。

著者やこの主人公が通っていた同志社や学連の巣窟京都大学と違って私が行っていた大学は学生運動とはまったく縁がないところだった(本書にも出てくるキャンディーズを学園祭に呼んだ学校)のと、4年間ずっとアルバイトに明け暮れていたので、小説に出てくる学生運動家との接点はありませんでした。

ただ、バイト先で一緒に働いていた某大学の学生が、明治政府の最高権力者を祀る神社の爆弾放火事件に関係していたということで、警察が家にまで聞きに(調べに?)来たことはありました。

さて、本書の内容ですが、(1)出航篇は、主人公は3人兄弟(ずっと後にもうひとり弟が生まれて4人兄弟)の長男で、大阪の淀川近くの貧しい家で育ちます。勉強はさっぱりですが腕力と度胸だけあって喧嘩にはめっぽう強い典型的な不良少年です。

そしてさすがに中卒では将来困るだろうと、偏差値が低い商業高校へ進学しますが、そこは勉強ができない不良の吹きだまりで、学校側は生徒会と応援団と組み、生徒を規則と権力と暴力でがんじがらめにするという今ではすぐに問題となりそうな校風で、主人公は何度も事件を起こして謹慎処分を喰らい、4年をかけてようやく卒業することになります。

また在学中にバイクの免許を取り、中古バイクを買って夏休みに行き当たりばったりのツーリングをしますが、途中でバイクを盗まれたり、逆に暴走族のたまり場へ行き、他人のバイクを盗んだり、東京のぼったくりバーで呼び込みのアルバイトをしたりと、もうハチャメチャです。

(2)座礁篇では、高校卒業後に大阪のスーパーへ就職し、アパートでひとり住まいを始めます。

しかし根っからの遅刻クセや、気に入らない上司との軋轢、さらにスーパーにアルバイトに来ていた女子大生への一方的な恋愛感情が破綻(ほぼストーカー)したこともあり3ヶ月で辞めてしまいます。

その後、遠回りしたもののアルバイトをしながら大学を目指そうと猛勉強を開始し、東大は落ちますが、関西私大の雄、同志社大に合格し入学することになります。

大学ではまだ60年代の学生運動の残り火がある中で、文系サークルに加入しますが、そこの上級生の女性に一方的に惚れてしまい、今なら十分ストーカー規制法に抵触しそうな行動から、散々な目に遭います。懲りない主人公です。

主人公の中学生の頃から何度も惚れて討ち死にしている女性に対する強烈な思い込みとその行動は、当時だからまだ許されますが、とにかく自己中で勝手なものですが、あくまで小説ですから仕方ないですね。

(3)漂流篇では、大学を途中で投げ出し、あてもないまま東京へ向かい、野宿をしながら様々なアルバイトをして糊口をしのぎます。

その中で、長く続いたのがレコード販売会社で、クラシックレコードの販売で才能を発揮し、新たに輸入版販売を手がけます。

しかしそこでも女性関係でトラブり、仕事をキッパリ辞めてテレビで見た北海道の漁業へ飛び込みます。

そこでは未経験ということもありまともな仕事にはありつけず、声がかかったのはソ連領に入ってウニを採るリスクは高いが一攫千金の特攻隊漁船で、そこで地力を付け自ら船を調達し、船長となってぼろ儲けの仕事を始めます。

(4)抜錨篇は、大阪で一目惚れで結婚し、テレビの放送作家の仕事を始めますが、あるとき妻の浮気を目の当たりにし離婚、そして風俗店の店長と共にタイへ渡り女性を日本へ送り込む仕事や、タイ人の元恋人を連れ戻しにやってきた日本人とヤクザの騒動に巻き込まれていきます。

まったくとんでもないストーリーです。以上

★★☆

著者別読書感想(百田尚樹)

【関連リンク】
 12月前半 しゃばけ、深海のアトム(上)(下) 、ノモンハンの夏、玻璃の天
 11月後半 海の見える理髪店、ダナエ、それまでの明日、死の接吻
 11月前半 風に舞いあがるビニールシート、探偵刑事、桶川ストーカー殺人事件、白い声

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1599
Merry Christmas!

今年もいよいよ暮れてきました。

ちょっと早めですが、今回が今年最後のブログ記事となります。読んでいただいた方、今年もありがとうございました。

昨年に続き、今年もコロナで始まりコロナで終わりそうな1年でした。まったくいいかげん気が滅入ってきます。

自粛ムードで若い人が溜まったマグマを噴火させて、ハメを外したくなる気持ちも少しはわかりますが、そこはまもなく高齢者に加わろうかという良識ある大人?(私)としては、ひたすら我慢、忍耐です。お金も乏しいですしね。

それはさておき2021年のブログ記事は、本年最後のこの記事を含めると、昨年と同数の102記事になります。3.58日に1記事の割合で、月に平均8.5記事でした。

ビジネス現役中とリタイア後で記事数が変わらないというのは、ビジネスに身が入っていなかったか、あるいは時間の使い方が巧かったか、その両方だったかです。

テーマ別に、その代表的な記事(リンク)を書いておきます。

  ◇   ◇   ◇

記事数が一番多い「読書、書籍関連」は31記事で、昨年から1本増です。基本的には読んだ本の感想が中心ですが、中には、過去に読んだ書籍で、お勧め本をまとめたシリーズがあります。

1559 浅田次郎の歩き方
1516 お薦め小説 2021年版(国内小説)
1520 お薦め小説 2021年版(海外小説)
1528 お勧め新書、エッセイ、ノンフィクション 2021年版

  ◇   ◇   ◇

「統計」テーマは17記事で昨年から3本増えました。代表的なものは、

1598 日本と世界の平均気温
1591 ゴルフをプレイしている年代層割合に驚いた
1556 寝たきりの人はどのぐらいいるのか
1524 2020年自動車(メーカー別、ブランド別、輸入車)販売台数
1522 戦国武将たちの身長は?

  ◇   ◇   ◇

「映画/テレビ」テーマは8記事で、昨年と同数です。「見た映画」の感想以外に下記のような記事があります。

1537 定番映像に危険な香り
1517 100年前の日本とは?

  ◇   ◇   ◇

「健康/食品」テーマは7記事で昨年から2本減です。

1572 快眠のための枕とは
1543 ウォーキングを継続するための工夫
1513 男性の変形性股関節症は診断が難しい

  ◇   ◇   ◇

「雇用/リストラ/ビジネス」テーマは、昨年12記事から9記事へと減少です。仕事を辞めて1年を超えましたから仕方ないでしょう。

1590 昨今は面接時の質問に注意
1587 地方の道の駅の正しい方向性は
1567 退職して無職・無収入の身に起きること
1544 コロナ禍で零細企業は生き残れるか
1512 2021年版出版社不況

  ◇   ◇   ◇

「クルマ/事故」テーマは3記事で昨年と同数です。

1576 可搬式速度違反自動取締装置は手強い
1560 ドライバーの交通ルールとマナー
1505 日本のEVシフトは環境問題ではなく経済問題

  ◇   ◇   ◇

「高齢者」テーマは昨年と同じく3記事です。

1594 知っていそうで知らないディサービス
1577 高齢者の賃貸入居拒否問題と空き家
1503 地域別100歳以上の高齢者数

  ◇   ◇   ◇

「生活/DIY」テーマでは昨年は4記事ありましたが、今年は下記の2記事だけです。

1548 窓ガラスの熱割れで火災保険は使えるか?
1546 窓ガラスのひび割れ修理

  ◇   ◇   ◇

「お金」テーマも少なく下記の2記事のみです。

1563 年金未納問題とFIRE
1539 金利金利金利

  ◇   ◇   ◇

「その他」ではいくつか力作(自称)もあります。

1580 美術館と博物館
1550 天文とは天から届く文(ふみ)
1535 マリー・アントワネットの時代
1510 日本のお城は美しい
1507 神社の種類について


来年こそコロナに打ち勝って下火となり、以前の日常が戻ってくることを願うばかりです。

引き続き来年もよろしくお願いいたします。

【関連リンク】
1497 日記で振り返る2020年
1395 日記で振り返る2019年
1290 日記で振り返る2018年

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1598
日本には四季があり、それぞれの季節を肌で感じることができるというのが一般的な日本人の季節感です。

しかしこれは日本列島という南北に長い国にとって、すべての地域で共通して言えることではありません。

下記は日本の主要地点の月別平均気温グラフです。


データ出典:気象庁

例えば、1月の平均気温は北海道の旭川では-7℃に対して、東京は5.4℃、福岡6.9℃、沖縄は17.3℃です。旭川と那覇では24.3℃の違いがあります。

夏場(8月)はその差はずっと縮まりますが、旭川が21.2℃に対して那覇は29.0℃で差は7.8℃あります。冬と比べるとその差は1/3と意外と小さい印象です。

しかしこれだけの差があれば、生活スタイルや植生までも大きく変わってきて、四季と言っても旭川と那覇ではまったく違ったものとなりそうです。

その点、多くの人口をを擁する東京や名古屋、大阪、福岡という大都市圏は、一番寒い旭川と一番暑い那覇のちょうど中間の気温に収まっていて、先人達も寒すぎず、暑すぎず、「気候が住みやすそうなところ」に多く集まってきたということでよくできたものです。

では、世界の主要都市の平均気温はと言うと、様々あって確かに日本のように冬と夏とで大きな気温差があるところは珍しいかも知れません。

日本列島の大きさをヨーロッパに置いてみると下記の図のようになります(南北の経度は正確ではありません)。



日本列島の大きさは、ヨーロッパで言うと北はオランダやドイツ、中程にはフランスやスイス、南はスペインやモロッコまで広範に拡がります。

これだけ南北に長いと、国内でスキーとサーフィンが同時にできたり、生活に必要な水が豊富に得られる雨期があったりなかったり、作物も温暖な地域と寒冷な地域でそれぞれ別の品種が採れ、四方は海なので侵略がしにくく、逆に外へ出るには開放感があって、そうした地勢は、四方が陸続きの国境でひしめき合っているヨーロッパの国々にとっては羨ましく思われるでしょう。

上図は、「THE TRUE SIZE OF・・・

で簡単に作成ができます。
【使い方】左上のボックスにJapanと入れて検索すると、日本の形が別色になりそれを世界中自由に動かすことができます。なかなか便利です。

世界の主要都市の年間平均気温は下記の通りです。


データ出典:気象庁

バンコク(タイ)の平均気温は、1年中30度前後で四季はありません。ハワイは25℃前後とバンコクよりは低いですが、冬でも23℃を下回りません。

平均的に暑いのは容易に想像できますが、リヤド(サウジアラビア)とニューデリー(インド)で、冬でも15℃以上、夏は何ヶ月間も30℃を超えます。

東京と似た平均気温をもつ国は意外と多く、ニューヨーク、ソウル、北京、マドリードなど。

それらの国より一段低いのが、ジュネーブ、ベルリン、モスクワ、ヘルシンキなど。

アフリカの北東部にあり、赤道にも近く、暑い国と思っていたエジプトは、意外にも年間を通して17℃前後と快適なところです。さすがに世界最古級の文明が発達した地域で、ここでも「人は気候の住みやすいところに集まる」は常套なようです。

お金持ちな人がリタイア後に生活をするのはマイアミやハワイ、ニースなど比較的年中温暖な地域が多いですが、気候だけで言うのなら、エジプトや南半球で夏と冬が逆転しますが、暑すぎず、寒すぎない、さらに夏と冬であまり気温の変化が少ない(冬は25℃以下、夏は11℃以上)のアルゼンチンなどが狙い目です。

ただ、その両方とも、残念ながら治安と安定した経済という面ではちょっと心配な国ですけどね。

【関連リンク】
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