リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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沖で待つ (文春文庫) 絲山秋子
著者は1966年生まれで、大学卒業後、総合職として大手住宅設備機器メーカーの営業職を経験したのち、2003年に作家デビューされた方です。
その後いくつか文学賞を受賞されましたが、2005年にこの作品で芥川賞を受賞されています。
そのタイトルから、漁師さんの恋愛もの?ぐらいの想像しかなかったのですが、まったく違い、著者の住宅設備機器会社での仕事をメインに、恋愛とは違う新卒同期の友情?がテーマになっている話しです。
この文庫は、その受賞作と、やはり著者が仕事を辞めた後の経験を下敷きにしたと思われる「勤労感謝の日」と、すべてひらがなとカタカナで書かれた児童文学的な「みなみのしまのぶんたろう」の短篇とセットになっています。
どの作品も、なにかとても新鮮な感じで、面白く読めました。さすが芥川賞!です。正直、過去に読んだ中ではあまり面白いと思った芥川賞作品ってないのですけどね、、、
私も卒業後に入社した会社で、転勤が何度かあり、まったく知らない街にひとり住み、営業の仕事で地元の人と交渉する仕事をしてきたという共通点があり、主人公の心の中がよくわかります。
ただ、私の場合は、著者とは違い、楽観的で住めば都、どこへ行っても、その街が好きになり、このままずっと住んでも良いなと思いながら、数年後には後ろ髪を引かれつつ次の職場へ転勤していくという青春時代を送り、仕事も生活も人生でもっとも充実していた時期かも知れません。
タイトルは、主人公の同期の男性が書いた下手な詩の中に出てくる愛の言葉で、涙を誘う展開となっていきます。
★★★
◇著者別読書感想(絲山秋子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
瑕疵借り (講談社文庫) 松岡圭祐
2018年に単行本と文庫が同時に発売されたという珍しいパターンの作品です。著者としては先に単行本で回収したいでしょうけど、読者側としては大いに助かります。
著者の作品は「千里眼シリーズ」や催眠、マジックなどというものが多く、それらもいくつかは読みましたが、個人的には最近増えている歴史時代小説が気に入っています。
今回は、そのどちらでもなく、不動産の賃貸を借りている人が、孤独死で亡くなったあとしばらく発見されなかったり、部屋で自殺や事件が起きて亡くなった場合、その部屋や建物が事故物件扱いされることで起きる様々な「心理的瑕疵」がテーマです。
不動産業で不文律とされている「瑕疵借り」とは、そうした事故が起きた部屋に、誰かを一時的に住まわせることで、周囲の住人の「心理的瑕疵」を和らげたり、新たな入居者への重要事項説明で「瑕疵」の存在を早々に省いてしまおうとするものです。
私も読んで初めて知りましたが、お笑い芸人さんが笑いを取るためでもなければ、そうした瑕疵があるアパートやマンションに喜んで入居する人は少ないでしょうし、その部屋だけでなく、建物全体に影響することから、家主側からすればできるだけ早くそのような瑕疵の説明を終わらせたいということもわかります。
ただこの小説において事故物件に入居する主人公は、単にそういう家主の損得の意向を受けたものだけではなく、借主が死に至った謎や真の理由を解明し、瑕疵物件の「心理的瑕疵」にかかわる大きな不安を一掃することが目的です。そういう意味では、謎解きの探偵に近いものがあるとも言えます。
瑕疵物件と直接関係はないですが、偶然今月「高齢者の賃貸入居拒否問題と空き家 2021/10/9(土)」という記事を書いています。
不動産の話しは、身近でありながら、知らないことが数多くあり、調べてみると興味がわいてきます。
それに加えて、こうした小説を読むと、さらに深掘りして考えてみたいなと思えてきます。
小説では賃貸の事故物件が主ですが、分譲住宅においても当然事故物件は多くあり、これからも持ち家の高齢単身者の孤独死や自殺が全国各地で発生していきそうです。
というのも、自殺者の報道ではいじめなどを苦にした10代ばかりが取り上げられますが、実は年代層でみると60歳以上の自殺者が突出して多く、最近まで年間1万人を超えていました。
そうしたことも踏まえてこの小説の続編も期待したいところです。
★★☆
著者別読書感想(松岡圭祐)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
熊野古道殺人事件 (中公文庫) 内田康夫
文庫あとがきで知りましたが、この浅見光彦シリーズの長編ミステリーは、主人公が違う短篇2篇を組み合わせ、さらに新たに取材をした時に考えついたことを加えた特殊なものということです。
実はこの文庫は、テレビで浅見光彦シリーズのドラマを見て興味を持ち、2012年に一度読んでいましたが、なぜか感想を書いてなく、あらためて読んでみました。
1991年にノベルスとして初出ということですから、30年前のことで、文庫化されたのは1995年です。浅見光彦シリーズの長編としては75番目ということになります。
シリーズの特徴でもある「ご当地紀行小説」のひとつですが、今回はタイトルでもわかるように、巡礼者が今も多い熊野古道や、古い時代におこなわれていた宗教行事、補陀落渡海(ふだらくとかい)、人形供養の淡嶋神社、女の怖い情念を描いた安珍・清姫伝説など、紀州和歌山の見所が詰め込まれています。
登場人物はちょっとややこしく、主人公の浅見光彦、ワトソン役の作家内田康夫、その内田の旧友で大学教授とその妻、その教授の下で助手を務める男とその妻、研究室の学生達、あとはいつもの地元警察官などです。
そう言えば、シリーズにはつきものの、浅見光彦に好意を寄せる美しいヒロインがこの小説に限っては出てきません。
その代わり、いつもは裏方の作家内田康夫氏が光彦よりも先に事件の不可解な謎を知ったり、光彦の愛車ソアラを運転して大事故に遭うなど大活躍します。
熊野詣と言えば常道の熊野三山(新宮市の熊野速玉大社、田辺市の熊野本宮大社、那智勝浦町の熊野那智大社)が小説の舞台としては全然出てきませんが、これらは当たり前過ぎてわざと外したのかな?と思います。
近いうちに、熊野詣をしたい気持ちになりました。
★★☆
著者別読書感想(内田康夫)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
東京消滅 - 介護破綻と地方移住 (中公新書) 増田寛也
以前「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」(2014年刊)を読んでなかなか面白かったので、その続編とも言える本書(2015年刊)を読んでみました。
5月前半の読書と感想、書評(地方消滅 東京一極集中が招く人口急減)
2014年と2015年の2年間に3冊の書籍を一気に出されていますが、これはあとになってわかりましたが、2016年の東京都知事選に出るために「東京のことをこれだけ考えている」というものだった?とも思えます。
しかしその都知事選挙では自公などの推薦を受け、当時の安倍首相からもビデオメッセージをもらいながら小池氏に大差で惨敗しました。
ま、それはさておき、「地方消滅」と同様、様々な公表データを元にした細かな分析が延々と続きますので、老眼の入った眼にはつらく厳しい新書です。
そして著者の主張は、「日本版CCRC」と「東京圏から地方への移住政策」の二つです。
CCRCは、70年代のアメリカで始まった「高齢者が元気なうちに終末まで過ごす地域コミッティに参加する生活共同体」のことで、「Continuing Care Retirement Community」(直訳:継続ケア退職コミュニティ)の略です。
その日本版CCRCは、地方移住でも現在住んでいる地域でもどちらも良いのですが、大きな団地などによくある住民会理事がその団地の修繕計画や保安など様々なことを決めていくようなことを介護まで進め、地域で元気な住人(高齢者含む)が主体となって介護や援助が必要な高齢者の面倒を見ていき、自分が介護や援助が必要になったときには元気な人に世話を受けることになります。
アメリカでは、そうした高齢者ばかりが住む地域があり、リタイアした人達が楽しく余生を過ごす環境が整っています。
「都市から地方への移住」は、本書が書かれた以降にコロナ禍が起き、リモートワークが可能となった若い人の地方移住が流行ってきましたが、以前から言われてきたことです。
本書では、データを分析し、この先2040年頃にどこの地方なら医療や介護に余裕があるか?という具体的な地域まで記載されています。移住をしたいが場所は決まっていないと言う人には参考になりそうです。
国や自治体が進める移住政策に関して、明治時代から戦後にかけて南米やハワイ、満州、北朝鮮など様々な形で多くの国民を海外移住させたり地上の楽園と偽って帰還させ、また明治時代には北海道の奥地に国内移住を進めてきました。
これらは一種の棄民政策で、悲惨な結果になったことが多く、国や役人が言う移住政策など「まったく信用ができない!」というのが個人的な見解です。
国や自治体に頼らず、自分が住みたい場所をいくつも見て回り、お試しで少し住んでみて、それで決めるのならば問題はありませんが、少しでも国や役所が顔をのぞかせた瞬間、嫌悪する人はまだ多いのではないでしょうか。
それはともかく、そうした移住をいう人は限って「自分は生涯東京に在住が基本」です。それは、巨大企業出身の評論家などが「学生は大手ばかりに目を向けず、中小、ベンチャー企業に就職すべし!」というがごとしです。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
最後の命 (講談社文庫) 中村文則
2007年に単行本、2010年に文庫化された小説で、2014年には松本准平監督、柳楽優弥主演で映画も公開されています、見ていませんが。
どんなあらすじなのか知らずに読み始めましたが、一人称で語られる仕事を辞めたばかりの男性主人公が事件に巻き込まれていくのをドキドキしながら読みました。
最初にこの本のタイトルを見たとき、筒井康隆著「最後の伝令」をふと思い出しましたが、内容は全然違っていて、シリアスでミステリアスな自己精神分析チック小説でした。
子供の時に友人と一緒に見てしまったことがトラウマとなっていてその友人とは長く疎遠にしていたところ、突然連絡が来て会うところから物語は進んでいきます。
そのトラウマというのが思わせぶりでなかなか出てこないのでイラッとしますが、それでも同じ男性として主人公に共感したり感情移入したりしながら読めてなかなかおもしろかったです。
ただ、小説やドラマでは当たり前になっている、偶然で事故や事件が起きて・・・というのはどうもリアリティがなさ過ぎて、そういう箇所だけは遠い場所から冷ややかに眺めているという感情が出てきます。
自分にも小説の主人公のように人の生き死にではないものの、子供の頃に受けた強烈なトラウマがいくつかあり、50年以上経った今でも頭をよぎることがありますが、それがその後の人生に影響を受けたということはたぶんなく良かったと思います。
★★☆
著者別読書感想(中村文則)
【関連リンク】
10月前半の読書 後巷説百物語、すべては死にゆく、シルエット、ニュータウンは黄昏れて、60歳からの生き方再設計
9月後半の読書 ダークナンバー、人間の叡智、おにのさうし、センセイの鞄
9月前半の読書 蝶、ぬるい毒、殺し屋、やってます。、家守、うまくいっている人の考え方
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変形性股関節症が悪化ため2016年に右側、翌年2017年に左側の股関節を人工股関節に置換したあと年1回の定期検査へ行ってきました。右側が5年目、左側が4年目の検査です。
変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)2016/6/11(土)
人工股関節手術のその後とまとめ2017/11/18(土)
写真は2017年手術後のもの |
人工股関節の調子ですが、右側はまったく問題ないものの、左側に関しては術後から股関節付近からずっと痛みがあり、4年経った今でも歩いたり重心が左にかかると痛みが走ります。でも変形性股関節症の時のように我慢できない痛みではないので我慢しています。
痛みは圧がかかるとどこかの神経に触れているような感じで、変形性股関節症の時のような足全体がビリビリした痛みとは違い鈍痛が時々走るという感じです。医者の見立てでは「中殿筋が弱っているかも」ということですが、ちょっと違うような。
このことは定期検査の都度担当医に毎回話しをしていますが、X線画像を見る限りではなにも問題はないとのことです。
手術の時、左右で術後の様子が違ったのは、左側の手術後には傷痕付近が大きく腫れて抜糸後に水抜きをしたぐらいで特に大きな問題はありませんでした。
左側だけ痛みが走るので、歩くときも無意識に左側をカバーするため、左足の蹴りが満足にできず、ややぎこちない歩き方になっています。
そういうこともあり、定期検査の都度、処方薬の鎮痛・抗炎症剤のロキソプロフェンNaテープを処方してもらっています。
痛みの箇所がハッキリしている時(歩くと股関節付近のあちこちが痛むので固定しない)には風呂上がりに貼って寝ていますが、対処療法なので根治はあきらめています。
ただこのロキソテープはなかなか重宝していて、股関節以外の痛み(腰)や筋肉痛(足のふくらはぎなど)にも使えます。
ただ処方薬なので市販の湿布薬より強力で副作用もありますので、連続して同じ場所には使わないなど注意はしています。
【関連リンク】
1367 進化する人工股関節置換手術
1137 人工股関節、人工膝関節の寿命と再置換
1049 変形性股関節症の人工股関節置換手術まとめ
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テレビの情報番組を見ていると、「コロナ禍で自殺者が急増している」というコメントやナレーションをよく耳にします。
なにを根拠にしているのかなぁ?と思って調べてみました。
自殺者数は警察庁が出すデータと厚労省が出すデータの二種類があります。違いは、警察庁データが外国人を含めているのと、都道府県別データの中で自殺した場所で地域が決まるのに対して厚労省は住居地でカウントされるという違いで大差はありません。
厚労省のデータから2018年から4年間(2021年は9月まで)の月別自殺者数は下記の通りです。
それを折れ線グラフにしたものが下記です。赤の線が今年2021年です。
まず、自殺者の年間総数ですが、コロナの影響がない2019年と2020年を比較すると、2020年は前年比で4.5%増加しています。
同様に2019年の9月までの合計数と2021年の9月までの合計数を比較した場合、2.5%増です。2021年は伸びが大きく大きく鈍化してます。
さらにもう1年前の2018年と比べると、2020年(12ヶ月)は1.2%増、2021年(双方9ヶ月)は0.4%増で、同様に2020年から2021年にかけて伸びはかなり鈍化傾向にあります。
確かに、2018年、2019年と比べると、2020年、2021年はいずれも増えていますが、その差は失礼ながら誤差?とも思えるほどの小さなものです。
特にグラフは差がわかりやすいようにY軸目盛りの下限を調整していますが、フルスケールの目盛りにして比べるとかなり僅差に見えます。
元々、2009年に民主党が政権を取るまで、政府の無策もあってか自殺者は毎年3万名を超えるまでになり、2003年は年間34,000人を超えました。一昨年の2019年は20,169人で、2003年のピーク時から6割にまで下がっています。
民主党政権に変わって初めて自殺者を減らそうと様々な対策が取られるようになり、その後自民党政権に戻りましたが、民主党政権時代の3年間を含め10年間連続して下降してきました。
そして2020年には10年ぶりに再び上向きに変わってしまったわけですが、過去の自民党政権の自殺者対策の無策ぶりが明らかだけに、果たして今回増加に転じたのがコロナの影響なのかどうかは今のところ判然としません。
報道やコメンテーターの間ではわかりやすい「コロナ禍で絶望して自殺した人が多い」と、印象だけを元に発信しているのでしょうけど、コロナ禍が収まって日常が取り戻した後までみないと、2020年~2021年の増加がコロナ禍のせいだったのかどうか決めつけられないというのが私の実感です。
いずれにしても、2019年対比、2020年で4.5%増、2021年(9ヶ月)で2.5%増の微増ですから、「コロナ禍で自殺者が急増!」というのはちょっとどうかと思います。
なんでもコロナ禍のせいにすることが流行っていることが気にかかります。
「コロナのせいで再就職がうまくいかない」「コロナのせいで勉強ができない」「コロナのせいで会社が倒産した」「コロナのせいで友達ができない」「コロナのせいでストレスがたまる」「コロナのせいで結婚できない」「コロナのせいでやる気が出ない」「コロナのせいで・・・コロナのせいで・・・」
コロナ禍がまったく影響がないとは言えませんが、倒産するべくしてこの時期に倒産した企業まで「コロナのせい」にされているのを見るにつけ、人は「できない理由」「うまくいかない理由」「失敗した理由」を、自分以外の他になすりつけるのが習性なんだなぁと思ったり。
【関連リンク】
1504 交通事故死者数と自殺者の推移
1162 不登校と自殺
1076 繰り返すな過労自殺
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クイズです。全国に美術館はいくつあるでしょうか?
東京国立近代美術館 |
難しいのは、施設名に「美術館」とあればわかりやすいですが、必ずしもそう名称ばかりではありません。また常設のアートギャラリーのような小規模なところを含めるかどうかによっても変わってきそうです。
189箇所と一番数の少ない「日本美術倶楽部」の「全国の美術館」の一覧を見てみると、「国立公文書館」や「那須とりっくあーとぴあ」、「水戸芸術館」「東京オペラシティアートギャラリー」など美術館と銘打っていない施設もたくさんカウントされています。しかし「国立公文書館」って美術館なの?
さらに、美術館と博物館、アートギャラリーなど区分が付きにくい施設も多くあり、どこまで美術館とカウントするかで違ってきます。
英語の「Museum」は、博物館と美術館の両方の意味があり、特に美術に重きを置く場合「Art Museum」と、Artを前に付けているところもありますが、そういう決まりがあるわけではありません。
フランスのルーブル美術館は「Musee du Louvre(eは一部フランス文字)」、ロシアのエミルタージュ美術館は英語では「Hermitage Museum」、スペインのプラド美術館も「Museo del Prado」で特にArtという表現はつきません。
日本国内での美術館と博物館の分け方は、美術館は芸術的な作品を扱い、博物館は文化や歴史的なものを扱うということのようです。
そのためか、美術館が収集、展示するのは国内作品にこだわらず世界中の芸術作品が対象ですが、博物館は基本国内のものが中心です。
しかし大英博物館(British Museum)のように、世界各地から収奪?した作品を大量に展示している博物館もありますから、海外の作品があっても「文化や歴史的」な価値があれば良いと言うことになるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
京都国立博物館 |
国立博物館は、東京国立博物館(東京都)、京都国立博物館(京都府)、奈良国立博物館(奈良県)、九州国立博物館(福岡県)と全国に4箇所あります。
国立の美術館5箇所は、独立行政法人国立美術館が運営し、国立博物館は、独立行政法人国立文化財機構が運営しています。ま、両団体とも体の良い公務員の天下り団体でしょう。
過去に行ったことがある美術館はというと、、、あまり多くはないです。
なにか興味のあるイベントがおこなわれ、しかもそれがわからないと、単に常設展示だけを見に行こうというモチベーションはありません。常にアンテナを張り巡らせて、どこでなにがいつおこなわれているか?というのを知ることは結構手間暇のかかることです。
ちょっと古い話ですが、2019年の秋に「川崎市市民ミュージアム」で開催中だった「のらくろであります!田河水泡と子供マンガの遊園地<ワンダーランド>」を偶然なにかで見つけ、開催期間中に見に行くつもりだったのが、台風19号の影響で施設の一部が水没し、展示品にも被害が出て急遽休止になりました。
せっかく行く気満々(事前にいろいろと予習までしていた)でも、そういうことが起きますし、この1年半はコロナ禍で休館や予約制になっていたところも多かったようです。
20年ほど前、まだ40代だった頃に、早くリタイアして、世界の美術館巡りをしようと思って購入し、予習していたのが、「ヨーロッパの美術館」田辺徹著(1991/11/15発刊)と、「アメリカ、ヨーロッパ美術館紀行」中尾太郎著(1991/05/31発刊)です。
国内の主だった美術館さえ満足に回れていないのに、「いきなり欧米の美術館とは!」と今では思いますが、仕事に嫌気が差していた時期でもあり、夢でも見てないとやっていられなかったという事情もありました。
今は現実に戻り、海外の美術館はともかく、季節が良くコロナも下火になってきたこの秋に、まずは近場の美術館や史跡を巡ろうと思っているところです。
【関連リンク】
1460 時計を必要としない世界
1250 夏休み特別企画「山形鶴岡市加茂水族館」
678 東北巡り
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後巷説百物語 (角川文庫) 京極夏彦
「巷説百物語シリーズ」の第3作目で、2003年に単行本、2007年に文庫化され、2003年下半期の直木賞に輝いた作品です。
連作の中篇5作で構成されていて、それぞれのタイトルは「赤えいの魚」「天火」「山男」「五位の光」「風の神」となっていて、文庫で800ページを超えるかなりボリュームのある作品です。
シリーズは、「巷説百物語」(1999年)、「続巷説百物語」(2001年)と続き、この3作目のあとに、「前巷説百物語」(2007年)、「西巷説百物語」(2010年)と5作品があり、さらに現在シリーズ新作が雑誌に連載されているので、近いうちに6作目が登場予定です。
本当なら、シリーズ1作目から読みたかったのですが、つい直木賞受賞作というのに目がくらみこの3作目からとなってしまいました。
3作目の時代背景は、徳川時代から維新を経てご一新が起きた後の頃で、様々なところで騒がれる妖怪の仕業?と思える怪異な出来事や事件を論理的に説明がつくよう4人の男が調べていき、さらに江戸時代に各地を回って不思議な伝承などを集めていたという隠居した老人の元に集まって昔語りを聞くという流れです。
決して怪談話のようなものではなく、古来からあり、また古い書物や伝承で残っている不思議な現象や事件を逆手にとって、実はその現象は老人が若いときに出会った「小股潜りの又市」という人物が口先八丁、現代で言うとスマートな詐欺師が仕掛けていたという裏があったというスタイルで、爽快感こそあれ、おそろおどろしい怖さはありません。
「赤えいの魚」は秋田の男鹿半島近くの沖合に誰も近づけない不思議な島があるという謎、「天火」はいわゆる昔から言い伝えられている光る人魂の正体は?という話しなど、たいへん面白く読めました。
ただ大作ゆえ、文庫版は文字が詰め込まれて小さく、老眼が進んでいる我が眼には非常につらく、初めて遠近両用眼鏡を作りに走りましたが、発注から完成まで2週間もかかるということで、ついぞ間に合いませんでした。
★★★
著者別読書感想(京極夏彦)
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すべては死にゆく 二見書房 ローレンス・ブロック
しばらくマット・スカダーシリーズを読んでいなかったなと思って調べてみると、2017年にようやく見つけて読んだシリーズ第1作目の「過去からの弔鐘」(日本語版1987年)以来でした。
この「すべては死にゆく」は2005年に発刊(日本語版は2006年刊)で、もう10数年前に単行本が発刊された作品で、そのうち文庫化されるだろうと思ってずっと待っていましたが、全然その様子はなく、シリーズでその後の「償いの報酬」が文庫で出てきて結局あきらめて単行本を買いました。
シリーズは主人公の年齢も年齢ですから「償いの報酬」で終わりかなと思っていましたが、その次の「石を放つとき」(2020年)がすでに単行本で出ています。またこれも文庫化はされないのかな。
本編では主人公のスカダーが68歳になっていて、そろそろ探偵業から引退しようかという頃で、もちろんアルコールとも縁が切れていますが、禁酒を目的とするアルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous)の集会には律儀に参加しています。
マットスカダーシリーズはこの主人公が警察官時代に犯人逮捕の際、自分が撃った銃弾が跳弾して少女を殺してしまったトラウマから酒浸りとなり、警察を退職した後も、酒での失敗を繰り返す日々を送ります。
そしてあるとき恋人やAA集会で知り合ったよき助言者を得て、アルコール依存症から何度も何度も失敗しながら、ようやく抜け出すことに成功した姿を理解していなければ主人公を本当に理解できません。
このシリーズの主人公を「アル中探偵」という表現をされますがそれは第7作の「慈悲深い死」あたりまでで、それ以降は、なんとかアルコールを遠ざけて、ニューヨークの酒場でもコーヒーを飲んでいます。
詳細は、4年前に書いた「元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)」で書いています。
さて、ストーリーですが、主人公のマットと、殺人が趣味の犯人の視点の二つが中心で、その二つがジリジリと交差するところまで迫っていきます。
その殺人鬼の犯行の様子、ペドフィリアや死体損壊などいくつも書かれていて、読んでいてもあまり気持ちのよいものではありません。
犯人を究極のワルとしたいのはわかりますが、そこまで都合良く完全犯罪の殺人を繰り返すことが易々とできる一種の天才&運が強い男にしなくても良いのにと思ってしまいます。
時代背景はすでに携帯電話は当たり前になっていますが、NYの街中では防犯カメラの設置が進んでいないようで、犯人がどこに現れたかはわかっても、犯人の姿がなかなか捕らえられず、ちょっとイライラしてしまいました。
結局は勧善懲悪ですが、それにしてもマット・スカダーシリーズが久しぶりで期待が大きかったためかイマイチで、後味は決して良くないものでした。
★☆☆
著者別読書感想(ローレンス・ブロック)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
シルエット (角川文庫) 島本理生
著者の作品は初めて読みますが、30代後半の女性作家さんで、2018年には「ファーストラヴ」で直木賞を受賞されています。
この「シルエット」は2001年の作品でメジャーデビューの中篇作品で、その他に「植物たちの呼吸」「ヨル」の二つの短篇が収録されています。
内容的には、女子高生のベタベタな恋愛小説で、還暦過ぎたオッサンが読んで楽しいものではありませんが、時にはこうした異世界の話しを読むのも切り替えになっていいかな。
読んだ感想を書こうと一生懸命行に思い出して、さらに行間までを読もうと考えますが、ダメです、どうでもいいような話しばかりで、なにが言いたいのか、なにが目的なのか、どういう読後の感想を持つべきなのかさっぱりわからず、もうそういうさばけた若い感性は失っているせいか、なにも出てこずダメです。
★☆☆
◇著者別読書感想(島本理生)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫) 垣谷美雨
著者は私と同年代(著者が2つ若い)で、小説の中に反映される時代や考え方に共感を感じることができます。
この作品は、2013年に単行本、2015年に文庫化された長編小説ですが、著者のマイホーム購入とその後のドタバタを実際に経験したことに基づいて書かれていて、「その気持ち、わかるわかる」と面白く読めました。
著者の作品では、過去に「あなたの人生、片づけます」と「老後の資金がありません」を読んでいます。どちらも面白かったです。
タイトルから想像できるように、多摩ニュータウンの中の古びた団地の話しと、同時並行で進む女性の結婚観についての話しが交錯していきます。
バブル時に相次いで建設された、最寄り駅からバスで5分の場所にある中古の団地(4LDK!)を5千二百万円で購入した主人公の中年の主婦と、その団地で生まれ育ち、大学まで出たものの、内定していた会社が倒産したため就職ができず、アルバイトで学費の奨学金を返済しているその主人公の娘がもうひとりの主人公です。
団地を買った時がバブルの最盛期で、その後は資産価値として下落する一方になり、売っても住宅ローンの残金に足らず、売るに売れない状態になってしまうのは良くある話しです。
そんな中で、古くなってくる団地の建て替えと大規模修繕と住民の意見が分かれ対立していくというのもよく聞かれる話しです。
さらに駅からバスという場所柄、高層マンションを建てて新たに分譲することで住民の負担をなくす等価交換方式も売れる見込みがないことからどこのデベロッパーも乗ってくれません。
私の場合も、バブル時期に最寄り駅からバスで15分という中古マンションを買いましたが、バブル崩壊直後にわずか4年で売り払い、買った価格より少し高く売れたので、この主人公(著者?)のように「なぜこんなマイホーム買ったかかな、、、」という後悔はありませんでしたが、私も一歩間違えば同じ後悔をしていたでしょう。
そして小説と私の同様マンションでも1年交替で理事会があり、入居した翌年には順番が回ってきて、会計を担当しましたが、共益費や修繕積立金、町会費、駐車場代などを不払いする人がいたり、家主は住んでなく、借りて住んでる人もあったりして、それらの徴収がかなり大変だったとこを思い出します。
私もこの主人公と同様に、共同住宅は住みにくい!と早々にあきらめて一戸建てに住み替えましたが、そうした様々な気苦労も割り切れる人でないと、引く手あまたの立地物件でない限り、共同住宅には住んではいけないような気がします。
そうした前半はかなり暗い話しが多くて身につまされますが、人それぞれに譲れない事情があり、その中で共同生活する以上は、覚悟と長期的な戦略をもって臨まないとダメよというノウハウ本のようにも思えます。
ただ、もうひとつのストーリーとなっている、娘とその友人達と、都心の豪邸に住む大金持ちの御曹司との恋愛トラブルについては、あまりにもリアリティに欠けていて、リアルな団地問題とかけ離れ、ちょっと興ざめな面も感じました。
★★☆
著者別読書感想(垣谷美雨)
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60歳からの生き方再設計 (新潮新書) 矢部武
著者は1954年生まれということですから私と同年代(著者が3歳上)の方ですが、私ともっとも違うことが、著者は外資系企業に勤務されていたことから英語がかなりお得意で、アメリカ社会についての造詣も深そうです。
本書は2014年に発刊された定年後に気をつけないといけないことをよく言われていることがステレオタイプ的に書かれたものですが、取材した極めて珍しい?人の成功例がいくつか書かれています。
高齢者が正社員での再就職は言うまでもなく、アルバイトでも自分が希望する仕事はなかなか見つからないというのは誰でも知っていることです。
仕事が生き甲斐という人でも、もう貯蓄もあり、年金も十分にもらえるならば、とっとと引退して消費生活だけをするべきというのが私の持論です。
したがってそれとは正反対な話がこの本ではつらつらと書かれていますが、そんなにまでして働く意味が見いだせません。
タイトルの「生き方再設計」というのならば、仕事やボランティア以外の、趣味やなにもしない生き方で成功、満足している人の例も出さないと公平ではありません。おそらくその人達の方が一般的だし数も圧倒的に多そうです。
特に定年となった団塊世代以降のホワイトカラービジネスパーソンの多くは、人に教えるほどの英語力もなければ、建築士など特殊な技術や資格を持っている人は稀です。そうした特殊な人の定年後をメインに語られてもしらけるだけです。
ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、「定年後はこうするべきだ」「こうすればいい」「ひとはこうしてる」みたいな話しは、その人の価値観感そのものだけに、他人があれこれ言うのは難しそうです。
いっそ、勢古浩爾著の「定年後のリアル」のように、「人は知らないが、自分はこうしてる」という話しの方がおもしろいし参考になります。
★☆☆
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