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1538
過去にも日本の農業について書いてきましたが、時々データの更新を加えて現状について軽く触れておきます。

大きく変化していく農業従事者 2015/12/12(土)

農業の大規模化と零細な起業 2013/6/29(土)

日本は世界第5位の農業大国という事実 2010/10/11(月)

総人口はもちろん、生産年齢人口も減少している中で、当然ながら農業従事者数も統計のある1960年以降、右下がりで減少を続けています。

下記のデータやグラフの農業従事者数は、農業就業人口のうち普段仕事として自営農家に従事した世帯員数で、1985年以降は販売農家(経営耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家)の人数です。


出典:農林水産省 農林業センサス累年統計年齢別基幹的農業従事者数

1960年と2020年を比べると、この60年間で1,175万人から136万人へとわずか1割近くまで減少してきました。

ただ農業は、1960年代までの従来農法から、肥料、土壌や品種の改良、大規模農業、会社組織化など様々な工夫や規制緩和がおこなわれ、めざましい生産効率の向上があります。

そのため、農業従事者が減る同じ割合で農作物収穫高が減っているかというとそうではなく、収穫高が大きく変動するのは気候や災害と言ったことが多いようです。

食の安全性については、書籍やメディアなど様々な場所で時々問題提起されていますが、都市部に住む大半の人にはあまり関心がなく、せいぜい「有機栽培ならきっと安全安心でしょ?」ぐらいが庶民の感覚でしょう。

その辺りの諸問題について考察するのはまた改めてとして、人口が減り、高齢化が進めば、食糧や食品の国内需要はますます減少していき、内需向けだけでは成長産業にはなりません。

ならば海外へ輸出!と行きたいところですが、日本よりも人件費が安く、土地も広くて大規模化が容易で、災害も少ないところと勝負するには、よほどの品質やブランド(ボジョレー・ヌーヴォーのような)がないと難しいでしょう。農産品のソニーやトヨタが作れればいいのですけどね。

テレビを見ていると、若い人を中心に、新しく農業をしようとする人達がここ数年間よく出てきますが、どうも焼け石に水のようです。

今の農業従事者の平均年齢は2020年が67.8歳で、5年前の2015年から0.7歳さらに高齢化していています。

2013年から2019年までの新規就農者推移は下記のようになっています。


出典:農林水産省 経営・構造統計課 新規就農者調査

2015年には新規就農者がピークに達してしまい、その後はまた減少、横ばいが続いています。

さらに農業従事者の平均年齢が68歳近いということは、つまり、(1)仕事として魅力がない(2)お金を稼げない(3)参入するには障壁が高いなどがありそうです。

それについて書きだしたら、新書1冊分ぐらい書けそうですが、そういうモチベーションもないので誰か専門家にお任せします。

10年ぐらい前には、リタイアした団塊世代が出身地の地方へ戻り、家業だった農業をするのでは?という意見を聞いたことがあります。

しかし今さら、地方移住なんて便利な都会生活に慣れた家族が理解してくれないし、例え戻っても、荒れ果てた休耕地を一からまともな農地にするのはとても高齢者にできることではありません。せいぜい自分が食べる分だけを細々と作る家庭菜園レベルでしょう。

外国人技能実習生のうち、農業で働く外国人数はおよそ3万名、日本人の新規就農者が5~6万名ですから、農業の現場に新しく入ってくる若い人の割合で言うと、3人にひとりは外国人ということになります。

これからの日本の農業、どういう方向へ向かうのでしょうね。また後日に考えて書いてみたいと思います。

【関連リンク】
981 大きく変化していく農業従事者

923 ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか

747 農家の知恵はいまの熱中症を予防する

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1537
コロナ禍の中で、テレビのニュースや情報番組を見ていると必ず映し出されるのが、品川駅通路や渋谷のスクランブル交差点、新宿南口です。

10年ほど前までは、通勤風景の映像と言えば、東京駅から群れになったビジネスパーソンが吐き出される映像がよく使われていましたが、現在は地下道を使う人が多くなり、地上の通路は閑散としていて絵にならないので上記の場所に変更されています。

また観光地や繁華街の人出を見るときには、湘南江ノ島付近、京都嵐山渡月橋、浅草雷門と仲見世、大阪道頓堀戎橋、銀座和光前が定番です。

そうした定番の映像、人の流れがどうなっているかを定点観測で見るのに都合が良いのかも知れませんが、いつも同じ場所の映像ばかり繰り返して流されると、地球温暖化の話しの時には「南極の氷塊が割れて海の中に滑落しているシーン、干ばつなど食糧危機の話しになるとアフリカで飢えて痩せ細った子供のシーンが毎回繰り返して流されるのとなにか同じに見えてしまいます。

そうした同じ映像を繰り返す印象操作?は、トランプ元大統領が大きな口をあけて吠えまくっている画像、北朝鮮で行進する兵士とハイテンションで指導者を褒め称えるアナウンサーのシーン、プラカードを持ってデモばかりやっているアメリカ人映像、ロケットランチャーを持ってポーズを決めている中東の民兵?のシーンなどなど。

何度も繰り返してそれを映像で見せられると、見る人はそれがディフォルトで日常であり、常識と錯覚してしまいます。

別に東京のビジネスパーソンは、品川や渋谷に集中しているわけではなく、観光客も浅草や嵐山ばかりに行くわけでもなく、単にサマになる絵として、人が密になっていそうな場所を選び、しかも密に見えるような構図で撮影しているだけだと理解している人がどれだけいるのか疑問に思います。

放送局が意図してやっているのか、無意識にやっているのか不明ですが、そうした定番映像を繰り返し流すのは、考えすぎ!って叱られそうですが、視聴者になにか思うところのイメージを焼き付ける印象操作のように思ってしまいます。

あと、印象操作とは関係ないですが、定番と言えば、広さや量の基準で「東京ドーム何個分(何杯分)」とか、高さや長さでは「東京タワー何個分」という比較対象の使われ方があります。

これも東京都心部に住んでいるか通勤している人ならすぐにピンとくるかも知れませんが、地方に住んで、東京に一度も来たことがなければ、その大きさなどわからないので、近くで見たり入場したした人だけが、なんとなく想像できる、無関係な人にはまったく無意味な表現法です。

東京タワーを近くで見たり、東京ドームに入場したことがある人が一億二千万人の何パーセントいるでしょう?10%?20%?せいぜい多めに見ても30%ぐらいじゃないでしょうか?

もっと言えば、ビールの年間消費量などで、「東京ドーム何杯分」とか言われても、東京ドームに何度か行ったことがある私でも、さっぱりどういう意味がわかりません。

ドーム内の控え室や機械室など含むドーム敷地の全容積で計算しているのか、グラウンドの面積×天井の高さなのか、意味不明でホントバカちゃうかって思います。

いずれにしても、テレビで流される映像は、ライブでない限り、いつも同じものを使い回しされますので、それが日常と思い込んでしまうことに少し危険な香りを感じてしまいます。

テレビの見過ぎ?リモートワーク&その後のリタイア後、確かにそれもあるかも、、、

【関連リンク】
1487 毎週繰り返し録画してみているテレビ番組一覧
1436 コロナ時代のテレビ番組と再放送
1355 やっとのことでJ:COMを退会した その1
1329 テレビCMを見なくなって久しい



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1536
「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks) 川島博之

2009年に発刊された元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の著者が書いた科学分野の単行本です。

様々なデータを駆使し、以前から言われてきた食糧危機の誤りを正していきます。

例えば、「世界一の人口の中国が裕福になり世界中から食糧を買い集めて食糧不足に陥る」や、「温暖化によって作物が作れなくなる」、「穀物がバイオ燃料に転嫁されていくと食用がなくなる」などなど。

読んでみると、世界中でおこなわれている生産調整、日本で言えば減反ですが、これが相当な面積だそうです。

アメリカでもトウモロコシなどそうした減反のために農家に対して多額の補助金を出しているようで、そういうことを考えると、もっと需要があれば(お金になるならば)まだまだ供給はできます。

さらに温暖化の影響で、作物が作れなくなる地域ができる一方で、例えば今まで作物が作れなかった例えばシベリアなどの地域で新たに農業ができる可能性などにも触れています。

北海道でも何十年前なら米を作るのは無理と言われていましたが、品種改良と気候変動で、今では広大な農場で美味しいお米が作れています。

1970年代に、「あと数年で石油がなくなる!」と騒いで、世界中で何度か石油ショックが起きましたが、それから50年経った今、「石油がなくなる!」という人はいません。逆にいまは環境問題から石油に代わるエネルギーを模索しています。それと似たようなことが起きているということです。

ただ、机上の計算と実際の現場とでは食い違ったりすることがありますので、そこのところの実証ができているものではないことを付け加えておきます。

例えば、減反で休耕して何年も経った農地で、急に作付けをおこなおうとしてもできず、従来の生産高に戻るまで10数年かかったりすることもあるようです。そうした現場の話しは、ジャーナリストではないので、ほとんどありません。

とは言え、知らなかったことが豊富に書かれているので、食糧問題に危機感を持っている人は、一度読むことをお薦めします。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

泥棒はクロゼットのなか (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 146-5)) ローレンス・ブロック

原題は「The Burglar in the Closet」で、1978年に発表された作品です(翻訳版文庫は1993年発刊)。「泥棒バーニイ・シリーズ」の第2作目となります。

過去にはシリーズ3作目の「泥棒は詩を口ずさむ」と、6作目の「泥棒は野球カードを集める」を読んでいます。

2013年2月の後半の読書(泥棒は詩を口ずさむ)

ブロックと言えばハードボイルド探偵小説「マット・スカダー・シリーズ」が特に有名ですが、スカダーの長編が17作品に対し、このバーニイの長編は11作品と、それに次いで多いシリーズ作品となっています。

私のマット・スカダー好きは下記に書いてます。

元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)

馴染みの歯科医に離婚した妻の住まいに侵入して結婚中に買ってやった宝石類を盗んで欲しいと頼まれた主人公は、軽い仕事と思って請け負います。

セキュリティの厳しいアパートに侵入し、宝石を物色していたところ、思わぬ速さで住人が帰って来てクローゼットの中に閉じ込められることになります。

シャワーにでも入ればその間に抜け出せると思っていたら、案の定というか、その女性は一緒にいた男性に刺されて殺されてしまいます。しかも、集めた宝石を入れたバッグも持ち去られてしまいます。

このままだと、離婚した旦那に調べが入り、アパートに侵入することを知っている自分が最大の容疑者となるのも時間の問題?ということで、警察から逃げながら犯人捜しを始めます。

なかなか手の込んだ複雑な人間模様で登場人物も多く疲れますが、決してスーパーマンではなく、人間味あふれる泥棒が主人公で気楽に楽しめます。

★★☆

著者別読書感想(ローレンス・ブロック)

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愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない (集英社文庫) 伊集院静

2014年に単行本、2017年に文庫化された自伝的長編小説です。

と、言うことは、亡くなった前妻夏目雅子さんのことを「愚者」とは何事!とちょっと不審に思いながら読み始めました。

著者の自伝的小説と言えば、私も読みましたが「海峡」、「春雷(海峡 少年篇)」、「岬へ(海峡・青春篇)」の三部作が有名です。

タイトルにある愚者とは、もちろん若くして亡くなった前妻のことではなく、気の合った友人、スポーツ紙の競馬担当記者、弱小芸能プロダクションの社長、小説を書くように執拗に迫る出版社の編集者の三人のことを指しています。

妻の死で、酒とギャンブルに溺れていた主人公が、それら3人の友人と深く関わっていくことで、再生していく姿を描いています。

この著者の自伝的な話しを読んでいると、なんとこの人のごく近い周囲には死が満ちあふれているのだろうと思ってしまいます。もちろん本人の責任ではないのですけど、、、

最初は子供の頃、一緒にいた幼い弟が海で溺れて亡くなり、周囲の猛反対を押し切って結婚した夏目雅子、この小説に登場する上記の3人(生死がわからない人含む)や、応援していた年配の競輪選手、小説を書くきっかけとなった阿佐田哲也(色川武大)との出会いと死など、常に死がつきまとっています。

暗く重い内容が続きますが、今の著者を知っていれば、そうしたモヤモヤも我慢して読めます。

著者は昨年2020年にくも膜下出血で手術を受けましたが、予後は良さそうで、また「ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石」(2013年)のような、明るく面白い小説を期待したいところです。

2019年10月前半の読書(ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石)

★★☆

著者別読書感想(伊集院静)

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屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫) 今村昌弘

2017年に単行本、2019年に文庫化された長編ミステリー小説です。著者の本は今回初めて読みますが、名前の印象から50~60代のベテラン作家さん?と思っていたら、まだ30代の新進気鋭?な作家さんでした。

この作品を原作として2019年に木村ひさし監督、神木隆之介、浜辺美波、中村倫也など出演で映画が、また同年に少年ジャンプ+で漫画が連載されています。

ミステリーの常道とも言える、隔離された山の中の旅館で合宿中だった学生たちの中で起きる連続殺人と、それだけに飽き足らず、テロ集団による野外イベントでの化学汚染で大量のゾンビが発生し、生き残った学生たちが追いつめられていくという荒唐無稽な内容です。

う~ん、鮎川哲也賞受賞や、本格ミステリ大賞受賞など、最近はこうした突拍子もない破天荒なストーリーがウケているのか!?って気もします。

確かについつい先を読ませる内容ですが、別にドキドキもしないし、感情移入などほど遠いし、人里離れた旅館とは言え、取引業者や通行人なども多いはずなのが完全に孤立していたりします。

さらに、なぜここにゾンビ、、、って、最近読んだ山口雅也著「生ける屍の死」や、スティーヴン・キング著「呪われた町」の中にもゾンビがゾロゾロ登場しています。鬼滅の刃に出てくる鬼に噛まれて鬼になるのもゾンビと似たようなものですね。

個人的には小説の中に、タイムスリップ(この小説には出てきません)とゾンビは飽きたから「もういいや~」って感じです。

最後の犯人捜しの謎解きがなかなか面白かったのが救いです。

★★☆

【関連リンク】
 4月後半の読書 ふりだしに戻る(上)(下)、極上の孤独、ゼロの迎撃、チェーン・ポイズン
 4月前半の読書 獄中記 煉獄篇、さよなら、ニルヴァーナ、邪馬台国殺人紀行、眠りの森
 3月後半の読書 証言拒否 リンカーン弁護士、コンビニ人間、官報複合体、レプリカたちの夜

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1535
シュテファン・ツヴァイク著の伝記「マリー・アントワネット」、遠藤周作著の小説「王妃マリー・アントワネット」を読んで、18世紀頃のフランスや、今はなきフランス王政のことが結構理解できましたので、備忘録じゃないですが、主要な人物別に簡単にまとめておきたいと思います。

1760年代から1780年代の日本は、10代将軍徳川家治(1760年~)、11代将軍徳川家斉(1787年~)の時代で、江戸中期の鎖国の真っ只中、特に新しい動きはない時代でした。ただ、江戸で明和の大火(1772年)、岩木山、浅間山の噴火などが続き、天明の大飢饉(1782年)を引き起こし数十万人が餓死したと言われる頃の話しです。


1)マリー・アントワネット

1755年オーストラリアのハプスブルク家王女マリア・テレジアの11女として生まれ、14歳の時に、それまで犬猿の仲だった隣国フランスの王太子(後にルイ16世として即位)に嫁ぎ、ベルサイユ宮殿に入ります。

マリー・アントワネットは勉強が嫌いでフランス語が話せず、まだ14歳の若さで政治にも王室行事にも関心がなく、関心があるのは演劇(鑑賞と自ら出演)やオペラ鑑賞、社交界で最先端を行く奇抜なファッションと宝石などアクセラリー、トランプやカジノなどのゲームや賭け事などです。自分が目立ち、周囲からチヤホヤされるのが大好きだったようです。

フランス国内は英国との7年戦争(1754年から1763年)などで経済が疲弊し、国民が重税にあえいでいる中での貴族の特権や、王室の浪費に対して国民の不満がたまっていて、1789年に国民革命が勃発、多くの貴族や王家は一転してとらわれの身になります。

マリー・アントワネットの恋人とも言われるスウェーデン人貴族のフェルセンなどの力を借りて、一度は軟禁先からの逃亡を企てますが、逃げ切れずに捕まり再び軟禁されます。

そして1793年にコンコルド広場において、夫のルイ16世の処刑から9ヶ月後、断頭台ギロチンによる公開処刑され38歳で刑死します。

ちなみにギロチンはフランス人のギヨタン氏が受刑者に苦痛を伴わない処刑法として発案(その名前が由来で英語読みがギロチン)し、マリー・アントワネット処刑の前年1792年から使用されました。

それまでの処刑法は、刑吏が大なたで首を切り落としたり、両手両足をクルマで四方へ引っ張る方法など刑によっていくつかの方法がありました。

  ◇   ◇   ◇

2)ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

天才作曲家と言われるモーツァルトは、1756年オーストラリア生まれ、マリー・アントアネットより1歳下で、ほぼ同年代です。

父親はオーストラリアの宮廷作曲家であり、すでに早熟の天才作曲家・演奏家として活躍していたモーツァルト6歳の時に、王女だった7歳のマリー・アントワネットと出会い、「将来お嫁さんにしてあげる」と言ったという逸話があります。遠藤周作著の小説に少しだけ出てきます。

その後、二人が出会ったという記録はなさそうです。マリー・アントワネットより2年早く、1791年にオーストリアで病死します。

もし、マリー・アントワネットが政略結婚でフランスへいかず、モーツァルトと結婚していれば、母国オーストリアの地で、天命が尽きるまで心穏やかに平和に暮らしていたのかも知れません。

  ◇   ◇   ◇

3)カリオストロ

1743年イタリア生まれの稀代の詐欺師で、アヴァンチュリエ(山師)と呼ばれていましたが、富裕層から金品をまきあげて貧しい人に与えていたという鼠小僧的な義賊の側面もあったとか。

フランス王室やマリー・アントワネットの評判を一気に貶めることとなった、宝石商から高級首飾りを王室の名を騙り、騙し取られた「首飾り事件(1785年)」という大きな事件が起きますが、その黒幕だったのではないかと言われていました。

しかし当時の裁判では無罪になっています。遠藤周作の小説では、黒幕説で描かれています。

モーリス・ルブラン著のアルセーヌ・ルパンシリーズ「カリオストロ伯爵夫人」は、そのカリオストロの娘という設定で、ルパンのライバルとして出てきます。

またモンキーパンチ原作、宮崎駿監督の映画「ルパン三世 カリオストロの城」のカリオストロは、このルパンシリーズをヒントに名称を使ったようですが、上記の伯爵個人とはまったく関係がなく(由来がなく)、フランス近郊の架空の小国の名称とその統治者がカリオストロという設定です。

  ◇   ◇   ◇

4)マルキ・ド・サド

サディズムという言葉の由来となったフランスの貴族であり小説家のマルキ・ド・サド(侯爵)は、 1740年フランスパリ生まれで、マリー・アントワネットが生きた時代(サドが15歳年上)とかぶります。

そのためか、遠藤周作著の小説では、時々変人として登場してきます。

貴族だったとはいえ、札付きということもあり、マリー・アントワネットと直接会ったことはなさそうですが、暴行や虐待などで収監されていたバスティーユ監獄からの王政批判の訴えが、フランス王室を転覆させるフランス革命のきっかけを作ったとも言われています。

革命後も、しばしば監獄や精神病院に収監され、1795年にフランスシャラントン精神病院で死亡(55歳)します。

  ◇   ◇   ◇

5)ナポレオン・ボナパルト(1769年~1821年)

マリー・アントワネットと時代はかぶっているものの、王室と一軍人ということでなんの関係もなさそうですが、私が気になったのは、フランス革命で国王ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットを処刑し、フランス国民主体の共和国制に移行したはずなのに、その国民革命に協力した一軍人のナポレオンが、革命から数年後の1804年にはフランス皇帝を名乗っていたことがよく理解できませんでした。歴史は繰り返すと言いますが。

で、調べてみると、フランスの9世紀以降の中世は、日本の戦国時代と同様に各地域で群雄割拠していて、その中の一番の支配者(名門家)が勝手に国王を名乗っていたようです。

上記のフランス革命で一時期は王制から共和制に移行し、一度はフランスから国王(皇帝)は消えたものの、オーストリアやイタリアとの戦争で連戦連勝し、国の英雄としてフランス国民の信頼を勝ち得たナポレオン(1世)が国民議会の承認を得て1804年にボナパルト王朝を作ります。しかしあれだけ王制(王政・君主制)を嫌がっていたのにフランス人も懲りない人達です。

しかしフランス革命が起きたときにはまだ若干20歳で駆け出しの軍人だったナポレオンが、その15年後に皇帝まで上り詰めていくというのはなんだか凄い話しです。

尾張の小国の跡取りのうつけが、一度は担いだ将軍を追い出し、次は天皇の座を狙っていたという(諸説あり)信長伝説ともかぶります。

それまで負け知らずだったナポレオンですが、スペインやオーストリア、そしてロシアに敗北しセントヘレナへ流刑されそこで亡くなります。亡くなったのが1821年5月5日で、今からちょうど200年前です。

その後はまたルイ王朝(ルイ18世)が復活しますが、ナポレオン(3世)が奪還、1870年に崩壊するまでフランスでは王制が生き延びることになります。

そして1871年以降はフランスに皇帝や国王はいなくなり、元首は王や皇帝ではなく選挙で選ばれた大統領になります。フランス初代の大統領は、ルイ・ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン3世)で、2代目はアドルフ・ティエールです。

  ◇   ◇   ◇

と、ここまで5人の簡単な略歴を書きましたが、伝記や小説にはそれぞれ何十名という登場人物が出てきて、なかなか興味深い話しでした。

そして、ふと、ヴェルサイユ宮殿の造営など王朝として絶頂期だったルイ14世時代から3代目のルイ16世で、それまでのたまりに溜まったツケが暴発し、国民の不満が爆発し革命が起き王朝が崩壊する動き、これは日本の近くにある某国にも今後当てはまるのかもなぁと思っています。

つまり戦後のドサクサで建国者となった主席(最高指導者)から、その最高指導者から世襲してきた今の3代目最高指導者ですが、国民の生活そっちのけで軍備を増強し、家族と一部の幹部だけが贅沢な暮らしができる状態が、歴史を振り返ってみるといつまでも続くわけはないような気がします。

フランス革命に遅れて230数年後、東アジアの片隅で起きるかもしれない国民革命が、数年後かに世界を揺らすことになるかも知れません。

【関連リンク】
1480 10月後半の読書と感想、書評(マリー・アントワネット)
1453 ビザなし渡航できる最強パスポートは日本が3年連続世界一
998 天皇陛下の外国訪問


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1534
東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に4月25日から5月11日の期間で出されていた緊急事態宣言も延長の方向で進められています。

中途半端な解除だと、ちょうど7月のオリンピック開催の頃には4回目の緊急事態宣言を出すことになりそうと言われています。

もし、実質、戒厳令下でのオリンピック開催となると、これまた世界中に日本の感染病対策の甘さとリスクを宣伝するようで恥さらしのような気がしますがどうなのでしょう。

1960年代の高度成長期から、東京、大阪を中心とする大都市圏へ地方の農村部や離島から多くの人が仕事を求めて集まってきました。

やがては、その地方から出てきた世代の子供が育ち、大学や専門学校など多くの教育機関も大都市圏に集中して作られることになり、その影響もあって「学ぶためには大都市へ」と、地方に住む若者が都会へ集まってきます。

そうして、1980年代以降、人口の大都市圏、特に首都圏への一極集中が極まっていくことになります。

1990年以降、なんどか、首都機能移転の話しが出ては消えを繰り返しました。国会でも1992年に「国会等の移転に関する法律」が成立していますが、現在は凍結されたままです。

国土交通省「首都機能移転の考え方」

首都機能移転にはそれぞれメリットデメリットがあり、費用も膨大なだけに、今の政治家が生きている数十年のあいだにはなにも進まないだろうと思います。

もし、一気にそれが進むことがあるとしたら、首都直下地震が起きて、かなり大きな被害が及んだ場合、「やっぱり一極集中はダメね」ということで、政治家や官僚が混乱極まる東京から家族を伴い逃げ出すように、地方で新しい首都を作ろうと重い腰をあげて動き出すかなと思っています。

しかし、今回のコロナ禍を見ていると、この感染症パンデミックが首都機能移転を後押しするかもと思い始めてきました。

感染症の対策に一番効果がありそうなのは、ワクチン接種ですが、新しいウイルスのワクチンを開発し、それを国民に行き渡らせるには相当の年月が必要なことが明らかになりました。

次に有効なのは、人と人の接触を避ける人流抑制です。つまり大都市のような人が密集する場所が感染症を拡げていくことがわかりました。

コロナウイルスはすでにワクチンが作られ、それが世界中に到達するあと1年後ぐらいには、もう普通のインフルエンザ並みの感染症になっていくと思われます。

しかし、今後、コロナウイルスよりもっと感染しやすく、重症化、致死率の高い新たなウイルスが今後も次々と出てくることは考えておく必要があるでしょう。

そうした感染症パンデミックに強い国家を考えると、やはり首都機能や大企業の地方分散化ということになってきそうです。

今回のコロナ禍で、データのクラウド化、リモートワークがかなり普及してきました。これも地方移転に拍車がかかる要因となります。

「クラウドはセキュリティに不安が~」「ビジネスは相手と直接顔を合わせて~」なんていう人には、個人情報漏洩事件で一番多いのは、個人のデータ持ち出しや紛失だし、日本の課題でもある生産性向上に反する直接面会など減らしていくべきということを理解させるべきでしょう。もう今は昭和でも平成でもないのですから。

中途半端に感染症が収束するより、大都市部でもっとひどい状態に陥ると、東日本大震災時の原発メルトダウンでそうだったように、家族とともに都市部から逃げ出す富裕層、政治家、役人、企業経営者が出てくるので、それぐらいの衝撃が起きると、一気に首都機能移転や企業の地方移転が一気に加速するのかも知れません。

【関連リンク】
1464 エッセンシャルワーカーへの感謝と憧れ
1443 コロナ失業者増加で自殺者数はどうなる?
870  首都移転は実現可能か
611  海外移転で製造業の労働者はどこへいったのか?

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