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現在住んでいる住宅を購入したのは1992年ですから、今の家の住宅ローンは27年半かかってようやくすべて支払い終えることができました。\(^o^)/

当初は、25年ローンで60歳になる前に終える予定でしたが、途中、挫折時期(リストラ退職)があり、その時に、銀行と交渉し、月々の支払額を下げてもらう代わりに、2年半ローン支払期間を延ばすこととなり、本当は避けたかった60歳を過ぎてからのローン終了となりました。

長期間の予定は、決してその予定通りに事は運ばないって事が身をもって体験できました。これは若い人へ向けの教訓です。

現在の一戸建て住宅を買う前には、1988年に中古マンションを購入していて、やはりその時住宅ローンを買い換えるまで約4年間支払っていた(一戸建てを買うときにマンションは売却し、その売却費でローンは完済)ので、それと合わせると31年半、今までの人生の半分をローンにまみれて過ごしてきたことになります。

今回、27年半のローンの完済(当時高利子のため、返済総額は借りた金額の倍近く)にあたって、銀行から感謝状と副賞で世界一周旅行でも贈られるのかと期待しましたが、もちろんそんなわけもなく、淡々と抵当権を抹消するための書類が送られてきただけです。

銀行のWebサイトで住宅ローン完済後の確認をしていたら「抵当権の移転登記手続を行ったうえでご返却いたしますので、お時間をいただきます。ご了承ください。」と書かれていたので、「お!登記簿の抹消登記まで銀行側でやってくれるのか?」と淡い期待をしていましたが、「晴れた日に傘を貸し、雨が降ると傘を取り上げる」と言われている、ケチ臭い銀行では下々のユーザーの役立つことはなにもしてくれません。ハイハイ、わかってますとも。

要は、抵当権設定契約書の抵当権は抹消しておくから、あとは自分で勝手にやってくれと、という記載のある「抵当権設定契約証書」と、「登記識別情報通知」「委任状」「印鑑証明書」が送られてきました。

登記簿をみるたびに(滅多に見ないけど)モヤモヤしてきた抵当権ですが、ローンを完済したので、さっそく抹消手続きをすることにしました。

不動産登記簿から抵当権を抹消する手続きは、必要書類を揃えて司法書士さんに頼めば、登録免許税にかかる印紙代は別として5千円~1万円の手数料でサクッとやってくれるそうですが、ブログのネタにもなりそうなので、自分でおこなうことにしました。

抵当権を抹消すれば、晴れて私だけの財産となり、売るにも貸すにも壊すにも燃やすにも自由(自宅でも放火すると非現住建造物等放火罪に問われる可能性があります)です。

自由という響き!最高です!っていうか、築30年近い建物には財産価値はなく、価値は土地にしかありませんけどね。

さて、登記の手続きですが、単に抵当権抹消手続きだけと思って調べていくと、それだけでは終わらないことがわかりました。

それは今の不動産を購入(契約)したときは、前のマンション住まいの時なので、登記簿の名義人(=所有者)の住所は旧住所のままです。さすがにこれは変更しておいた方が良いでしょう。

それには「所有権登記名義人住所変更」で、「住所移転」の申請(登記)が必要です。

今回は、土地と建物と、共有の私道部分がありますので、その3つの登記にそれぞれ「住所移転」が必要です。

その申請のためには、先に市区町村で前の住所から今の住所へ転入したという記載がある「住民票」を事前に取得しておきます。登記名義人の住所が変わったことを証明する公的書類です。

そして同時におこなうのが本命でもある「抵当権抹消」申請手続きです。

必要な申請書には下記が必要です。

1)金融機関から抵当権設定契約証書、登記識別情報通知書、金融機関の委任状
2)抵当権抹消登記申請書(法務局のネット経由で入手)
※金融機関の印鑑証明も銀行から送られてきましたが、これは登記には不要です

各申請書は法務局のサイト(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudousan3.html)から無料で入手できます。法務局にも置いてあるそうです。

登記にかかる費用は、「所有権登記名義人住所変更(名義人住所変更)」で登録免許税が土地(私有地と共有地)と建物それぞれに1,000円で合計3,000円、それと「抵当権抹消登記申請書」は同じく登録免許税が土地(私有地と共有地)と建物それぞれに1,000円で合計3,000円で、合計すると6,000円。意外と高くつきました。

あと、申請時に添付する「住民票」(手数料300円)と、後日「登記完了証」を返送してもらうための簡易書留封書と切手代がかかります(後日法務局へ取りに行けば返信用封筒と切手は不要)。もし「登記完了証」だけでなく、変更記載が済んだ登記簿(登記事項証明書等)を取得したいなら、その申請と費用はまた別に必要です。

整理すると、必要なのは

・住民票(市区町村)
・登記申請書 所有権登記名義人住所変更(法務局)
・登記申請書 抵当権抹消(法務局)
・抵当権設定契約証書、登記識別情報通知書、金融機関の委任状(銀行)
・簡易書留の返信用封筒と切手
・印紙(6千円)
・認印

今回登記手続きは初めてだったので、先に法務局へ電話をし相談予約を取りました。そこで、予め準備した書類の確認をしてもらってから、印紙を購入してその場で申請(提出)することにしました。

申請書は、ネットにあるPDFを印刷し手書きでも記入できますが、Wordと一太郎のフォームもあり、それに入力して作成が可能です。

Wordで入力するほうが、複数の書類を作るときコピペができるから楽です。そして用紙はA4なので、入力したものを自宅で印刷してもっていきます。わからないところは後で書き込めるようブランクで良いと思います。

当日、法務局の担当者に作成した書類をチェックしてもらったら、何カ所か、追加で記載したり、単純ミスで修正しなければならない箇所がありました。作り直しではなく、そのまま手書きで記入・修正し、横に捨て印を押すことで問題はありませんでした。

申請書類がすべて整ったら法務局内に併設されている売店で印紙を購入し、(貼らずに)一緒に別の申請窓口へ提出し完了です。時間にして20分ほどかな。

「登記完了証」と、提出後返却してもらう「抵当権設定契約証書(抹消済み)」は、書留で返送してもらうことにして、十分な切手を貼って(切手を貼らず切手を一緒に渡しておけば、必要な分だけ貼り、余りは封筒に入れて返却してくれるそうです)渡しておきました。

今回初めて知ったのは、市区町村で決められている住所(住民票)の所番地と、法務局が不動産登記で使う、不動産の位置を示す所番地とは必ずしも一致しないってこと。

したがって、不動産の登記簿に記載されている土地や建物の所番地と、その同じ場所に住んでいても名義人(=所有者)の住所が違っていることがあります。

これを不自然に思い、登記簿の不動産登記住所も、名義人の所番地に変更できないのか?と法務局の人に聞きましたが、縦割り行政のためなのか、よくわかりませんが、それはできない(不要)とのこと。

住民票をもらいに区役所へ行ったとき、ちなみに区役所の帳簿上はどうなっているの?と確認したところ、なにやら古くて分厚い台帳を出してきて、見せてくれました。

帳簿に書かれてる所番地を見ると、分割される前の所番地しかなく、登記簿に記載されている近い所番地を見ると、おそらく分譲住宅が建つ前の、アパートらしき建物と持ち主の名前が記載されていました。

もう28年も前にその土地の所有者(土地を分割し分譲されたので複数いる)は変わっているのに、区役所の台帳は更新されず古いままなのですね。ちょっと不思議。

一応、区役所の人にも、これは変更しなくて良いのか?と聞きましたが、よくわからないという対応でした。

法務局へ登記すればそれが自動的に市区町村に持ち主の情報が来て、そこの土地は誰のものと修正されるわけでもなく、どういう更新状態になっているのかよくわかりませんでした。住民税やら固定資産税に影響はないのかしら。

もちろん、住宅が分譲され引っ越しをした時に、玄関のところに貼る新しい住居番号表示板を市から発行してもらい、住民税や固定資産税もちゃんと支払っていますから、市はちゃんと新しく所番地ができて、その持ち主を捕捉しています。

不動産業界にいる人ならば、そうした登記簿上の所番地と、実際に使われている所番地が違うという点は珍しくもなく普通なのでしょうけど、一般人からすると、その点がどうもモヤ~とします。

このあたりの事情をご存じの方がいれば教えてくださるとありがたいです。

【関連リンク】
1363 屋根と外壁の塗装をおこなった記録
1341 最新の住宅と空き家統計について語る
1227 今の低い住宅ローン金利が羨ましい世代
1103 高齢者の賃貸アパート入居問題



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1416
日本の領土の中に、定住者がいる島(有人離島)の数と、無人島の数は各々どのぐらいあるでしょうか?

答えは本州や北海道など定住者のいる有人離島は432、無人島はなんと6,415あるとのことです(Wikipedia)。

有人島を含む島の数では世界の中で第8位ということです。

世界1位はスウェーデン、2位はフィンランド、3位はノルウェーなどで、もっと多いかなと思っていたインドネシアは5位、フィリピンは7位となっています。

そうした世界の中でも島が多い日本の無人島の中で、もっとも大きな島は北海道最西端の日本海上にある渡島大島で火山島です(写真は小笠原諸島の西之島)。

個人的には、無人島と言えば、子供の頃に本で読んだ「ロビンソン・クルーソー」や、テレビで夢中になった見た「冒険ガボテン島」のイメージで、なにか夢とロマンを感じます。でも実際は、その島に誰も住まない(住めない)理由があり、厳しい環境で思っていたのと違うのでしょう。

そう言えば、トム・ハンクス主演の「キャスト・アウェイ」(2000年)は、素晴らしい無人島漂流映画でした。

飛行機事故で奇跡的にひとり無人島で生き残った主人公が、厳しい環境の中で何度も挫折を味わいながらもたくましく島からの脱出を試みる内容です。

ザ!鉄腕!DASH!!というテレビ番組で、瀬戸内海にある愛媛県松島市に属する無人島の由利島を番組の中では「DASH島」と勝手に名付けて、TOKIOのメンバーとスタッフ達によって開拓されつつありますが、この島は昭和40年(1965年)頃までは島民が普通に暮らしていました。番組内でも当時の建物や設備がよく出てきます。

そうした無人島は、定住者こそいないものの、現在でも様々に利用されている島がある一方、利用されていない島が圧倒的多数を占めています。

利用できない理由はそれぞれあり、元々は海底火山の噴火や隆起でできた島が多いので、将来噴火のおそれがあり危険だったり、島全体が固い溶岩だらけで農業に向かない土地だったり、切り立った崖ばかりで資材を輸送するための港湾設備が作れなかったりします。

サンダーバードの基地のように、大金持ちが道楽として別荘に使う分には良いかも知れません。歌手のさだまさし氏も、故郷長崎に無人島を購入し、ずいぶん前ですが、ビフォーアフターでリフォームしていました。

それはともかく、日本では人口減少が進み、離島へのアクセスの便益がはかれず、過疎化した地域の島民は生活や家族のために島から移住するしかないということもあるでしょう。

しかし使われていない、何千もある無人島をなんとか有効活用できる方法はないのでしょうか?

眉を吊り上げられそうな、よからぬ事を言えば、

・放射能や細菌など、万が一のことが起きても被害が最小限で済む研究施設や長期保管場所
・死刑制度に代わり、近い将来に作られそうな無期刑の犯罪人の収監所
・処理能力が限界に近づいている産業廃棄物の処理場や埋立場所

あまり非難はされなさそうな使い方として

・完全自動化でロボットしかいない有害物質や騒音を出す無人工場建設
・不法入国者の強制帰国までの収監場所
・自衛隊や警察の訓練場所(すでに使われてます)
・映画やドラマの大規模セットとロケ地
・自動車や二輪車などの走行試験所、サーキット場
・民間ロケットの共同打上げ設備
・島全体を霊園としてお墓と各種宗教施設

などでしょうか。固くなった頭の私ではこれぐらいしか思い浮かびませんが、若い人に考えさせればもっと様々なアイデアが出てきそうです。

最近の環境保全の観点からは、自然をそのまま残し、様々な動植物の生息地として一番の天敵の人を近づけないという利用方法もありますが、すべての無人島をそのように保存するだけではなにかもったいない気もします。

でも、単にリゾート施設を作るとか、遊園地を作るなどは、もはや離島に作るメリットはなく、少子化し、高齢化社会においてはさほど需要もないのでダメで、それなら高齢者収容施設を作るというのも姥捨て山的でお勧めしません。

そこで、考えているのは、行き場がなく、今のままだと福島から一歩も外へ出せない放射能汚染物質や今後何十年もかけて取り出す核燃料廃棄物、そして海水に混ぜて海に流そうとしている汚染水について、これ以上議論をしても一歩も前に進みそうもない問題のひとつの解決方法です。

国や自治体が所有していて、近くに住民がいない遠方の無人島に、陸揚げする港湾設備と、数百年でも漏れ出したり壊れない巨大なコンクリート製の核廃棄物の棺を建設するというのが、もっとも現実的な解決法ではないのかと思ったりします。

ただ列島に点在している島は、海底火山が隆起したケースが多く、「数百年後でも噴火する可能性がある島だからダメ!」と言う人が必ずいます。また「万一の時、綺麗な海を汚染する可能性がある!」と言います。

でも、それを言えば予期しない自然災害が起きるのは、多くの人が暮らしている本土上でも同じですし、汚れた廃棄物を身近な場所に置いていることのほうが、国民の安全を守るべき国の罪は大きいのではないでしょうか。

もし反対をするのなら、より良い対案を出してから感情論ではなく、冷静に論理的に反対してもらいたいものです。

【関連リンク】
1024  沖縄へ行く観光客はなにを求めるか
854 生ごみのリサイクルについて知っていますか?
846 みちのく急ぎ旅 前編
678 東北巡り
434 尖閣諸島と日中問題

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1415
弁護士の血 (ハヤカワ・ミステリ文庫) スティーヴ・キャヴァナー

北アイルランド出身の著者が、ニューヨークを舞台にした2015年に翻訳文庫版が発刊された法廷ミステリー小説で、原題は「THE DEFENCE」です。まる直訳では「弁護側」という意味でしょうか。

弁護士が主人公の小説というのは、ジョン・グリシャム著の小説「法律事務所」(映画では「ザ・ファーム 法律事務所や「評決のとき」など、数々ありますが、私が好きなのは、マイクル・コナリー著の「リンカーン弁護士シリーズ」の主人公ミック・ハラーです。

この小説と同様、弁護士なのに割とハードボイルドっぽい印象ですが、刑事「ハリーボッシュシリーズ」と同じ著者なので、その流れということがあります。

主人公は元保険金詐欺師であり、その後は立ち直って敏腕弁護士として活躍していましたが、ある裁判で加害者の無罪を勝ち取ったことで新たな犯罪を誘発してしまい、それがきっかけでアル中となってしまい、妻子とも別居している状態。

そんな時に、子供が誘拐されたうえ、自分の身体にリモート式爆弾のベルトを巻かれ、ニューヨークで暗躍しているロシアンマフィアのボスの裁判に被告弁護士になるよう強要されます。

裁判で証言に出てくる殺人の実行犯を爆殺するという目的ですが、そこは元詐欺師、口八丁手八丁で、証人を爆殺するよりもっと良い手があると、マフィアの信用を得ていきます。

ま、こうした小説ではハッピーエンドが当たり前ですから、結果は明らかですが、その弁護士の手口やマフィアを相手にして煙に巻くところに読者はきっと歓声をあげたくなるのでしょう。

おそらくこの手の小説は、あわよくば映画化されて一気にメジャーになっていくことも考えられているのでしょう、ニューヨークの裁判所を爆破するなど映像化するにあたっても見所満載に作られているのはご愛敬という感じです。つまらないハリウッド映画の見過ぎでしょう。

この不死身の主人公のシリーズ、その後何作かは続くようですが、今のところ翻訳版はでていないようです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)  加藤陽子

著者は歴史学者で東京大学教授というエリート学者さんで、この著書は2009年に単行本として、2016年に文庫版が発刊されています。

この著作は、高校生に対し、日清、日露、第一次、第二次世界大戦(太平洋戦争)の4度もの戦争へ突き進んだ日本の国内事情や、中国や欧州を初めとする世界の状勢、思惑などを、資料や日記を元にしてわかりやすく解説した講義録という形式です。

今時の高校生で、日清・日露・第一次世界大戦のことを知っている人はいないだろ?と思いますが、この講義に出てきた高校生達(エリート進学校)は、相当に事前勉強してきたのか、著者の質問に対して的確な回答をしていて驚きです。

私も、中学生や高校生で歴史を学んだ時は、せいぜい明治、大正時代ぐらいまでで、第二次大戦まではたどり着いていませんでした。

その一番近い第二次世界大戦でも、20才以下の若者にとっては、「え?日本とアメリカが血を血で洗う戦争をしたって?うそでしょ~!」ってところでしょう。

こうした歴史の話しは、講義をする人(及び、その先生や家族、友人など周囲の人)の思想や信条が嫌でも反映されるのと、参考にする記録や文献もそうした自分の思想信条に合致したものだけを集めて使うことで、いくらでも偏った内容にすることができます。それゆえいかに公平性を保てるかが教師の腕の見せ所でしょう。

それは現在の新聞やテレビ放送も同じことで、各々が主張したいところだけをつまんで記事にしたり放送することで、読者や視聴者が勝手にそれが真実だと思ってくれます。

なので、こういう歴史講義というのはとても難しく、ある人にとっては「そうなんだ」で済みますが、ある人にとっては「いや、まったく違っている」と思うこともあるわけです。

なので、高校生にこうした生々しい歴史を自分の解釈を元に教えることよりも、「事実だけを並べ、あとは自分の頭で考え、疑問を次々と出す」という訓練がより重要なのかも知れません。

この本を読んでいて、決して嘘は書いていないと思いますが、自分の頭で考えるより先に、先生が「たぶんこうだっただろう」という話しが多く、高校生達に自分の想像を誘導している感じが少しして、まだ頭が柔らかで思想も固まっていない高校生には危険かもなぁってちょっと思いました。

しかし一般的な大人でも知らなかったことが多く「こういうことだったのか」「いやでもそれはちょっと違うぞ」と、自己責任で考えられる人が読めば、たいへんよい刺激剤となりそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

雪の断章 (創元推理文庫) 佐々木丸美

著者は北海道出身で、2005年に56歳で亡くなられています。この小説は、1975年に単行本(文庫版は2008年刊)が発刊された著者のデビュー作です。

また監督に相米慎二、主演が斉藤由貴と榎木孝明で、35年前になりますが1985年に公開された映画「雪の断章 -情熱-」の原作となっています。

物語にスピード感はなく、かなり長い小説(文庫版429ページ)で、途中で何度もイライラ感が募りましたが、心の揺れ動きを表しているのでしょうけど、何度も同じようなことで話しが行ったり来たりし、まどろっこしい感じです。

主人公は、両親がわからず物心が付いた頃から孤児院で過ごしていた女の子と、その子が養子に出されたあと、その家の同い年の子と仲違いし、養子先の家を飛び出し、札幌の大通公園を彷徨っていたところで助けられた若い男性です。

孤児や孤児院のことは今までの人生の中では縁がなく、よくわからないのですが、孤児になると、ここまで、誰も信用せず、相談もできす、内向的になり、ひねくれるものなのか?という主人公の設定に無理があるかも。

小説の上で、「孤児だから」というデフォルメした性格付けにしたかったのかも知れませんが、ちょっとやり過ぎな感じです。

もし「孤児ならこういう考え方をするだろう」とか、著者が勝手に考えて書いたのならば、なんでもOKな小説としては良いのかも知れませんが、実際に孤児だった人が読むと、これは共感ではなく失望を覚えるかも知れません。

そうした孤児が子供から大学生へと成長していく過程で、身近なところで大きな事件が起き、やがては育ての親の独身男性に恋心を抱いていくという、ミステリー要素も少し加わった恋愛小説という感じです。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 前野ウルド浩太郎

著者は芸能人ではなく、日本の農学者であり昆虫学者の方で、1980年生まれと言うから今年で不惑の40歳、研究者としては若い方です。

実は、表紙(カバー)に載っているバッタのかぶり物をした著者らしい人物から、売れないお笑い芸能人が、ネタとして本を書いたぐらいにしか思ってませんでした。

本書は、2017年に出版され、中央公論・新書大賞などいくつもの賞をとった作品です。

タイトルがユニークで、この書籍はどういうジャンルに分けられるのかと調べたら、Amazonでは「科学・テクノロジー>生物・バイオテクノロジー」というジャンルでした。

このジャンルに多い「人体の進化」や「植物図鑑」などからだと、ベストセラーはあまりないような気がします。出版社もきっと冒険だったでしょうね。

大学4年、大学院2年、博士課程3年を生物学を究めていき、いわゆるポスドクとして、本来なら大学や研究機関等に就職するパターンが多いそうですが、質の高い論文を書いて海外のサイエンス雑誌に掲載されたような人でないと、なかなか希望する先へ就職できないそうです。

著者はその中には含まれず、しかも昆虫、その中でもバッタに恋したばかりに、国内での需要はなく、2年間の研究費を得てアフリカのモータリアへフィールドワークに出掛けることになります。

そうしたアフリカへ行くことになったいきさつや、アフリカでのフィールドワークや生活の話しがメインですが、とても面白く興味がわきます。

私自身は子供の頃は山の麓の田舎住まいでしたから、昆虫とは友達で、バッタやイナゴはいつも身近な存在でした。しかし大人になってからは、もう目にすることもありません。

そうそう、ネットの記事で、バッタのソフトクリームとかいうのを見て「えぐぅー」と思ったぐらいです。

読んでいると、東北の田畑を荒らすトノサマバッタの大量発生を描いた、西村寿行著「蒼茫の大地、滅ぶ」(1978年)と、それを原作としたコミック(田辺節雄作)が出てきました。当時高校生時代、両方とも読んでいて今でも強く印象に残っています。

国内では最近そうしたバッタの被害は起きていないそうですが、アフリカでは大規模な発生が起きているそうで、先進国からの支援でその対策や研究が進められているそうです。

但し、実際にアフリカの厳しい環境のフィールドで、研究する学者は少なく、それに価値を見いだした著者の奮闘が感動モノで笑えもします。

そのようなことを書いていたら、ニュースでバッタ大量発生の記事を発見しました。

パキスタンでバッタ大量発生 過去30年で最悪の作物被害 2020年3月8日(AFPBB News)
パキスタンでバッタが大量発生し、国内の農業地帯では過去30年間近くで最悪の被害が出ている。特に農業の中心地で作物が壊滅的な打撃を受け、食料価格の急騰を招いている。

著者はさっそく駆けつけているのでしょうか?

★★★

【関連リンク】
 2月後半の読書 華竜の宮(上)(下) 、その時までサヨナラ、定年前後の「やってはいけない」 、悪童日記
 2月前半の読書 家霊、転生、人口と日本経済、カエルの楽園、ベストセラー小説の書き方
 1月後半の読書 新編 銀河鉄道の夜、この世でいちばん大事な「カネ」の話、蒼猫のいる家、教養としてのテクノロジー



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1414
日本ではイタリア料理によく出てくる調味料タバスコについての話しです。

タバスコという名称は、タバスコで使われる唐辛子の原産地がメキシコのタバスコ州で、その唐辛子をタバスコペッパーと呼ばれていることからだそうです。

実はこのタバスコについて、私はたいへん痛い痛い忘れ得ぬ想い出があり、タバスコを見るたびに今でもトラウマを感じています。

それは私がまだ小学生だった頃、母親と二人でなにかのお祝いで、初めて高級レストランへ行きました。時はまだ1960年代の話しです。

タバスコは戦後まもなく日本に入ってきていましたが、その時はまだ家庭の中では一般的ではなく、1970年代になってから、アントニオ猪木氏がタバスコの販売権を取得し、広告塔の役目を果たし、一気に知名度を高めます。

その後1980年以降に何度か激辛ブームが起きて、その中にあって、特に家庭の中では手軽さもあり不動の地位を占めています。

つまり、その時は私も母親もタバスコのことはなにも知りませんでした。

その高級レストランで頼んだ料理の中にタバスコを付けて食べると美味しい料理があったのだと思いますが、一緒に出てきたタバスコを見て、「この色だとケチャップみたいなもの?」と勝手に判断し、料理にかけたところ、全然中身が出てこないので、意地になって懸命に何度もフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリ、苦労してタバスコの中身の半分ぐらいを料理にかけました。

母親も知らないので、なにも言いません。もちろん先に味見をするなんて賢い子ではありません。

そしてそれを食べたときの衝撃は今も鮮やかに残っていますが、とにかく口から火が出ました。しかし滅多にない高級レストランの料理です、残すのはもったいない、必死の形相で食べましたよ~半泣きしながら。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

そんなタバスコですが、1865年にアメリカのマキルヘニー社が考案し、現在も製法は変わっていません(参考:wikipedia)。

日本ではパスタやピザなどに必須とされる調味料ですが、他国では特にそういう風習はないそうです。本場のアメリカでも、ステーキソースやマヨネーズに混ぜたり、牡蠣料理にかけたりする程度です。

日本人観光客がイタリアのレストランで、本場のパスタやピザを注文し、ウェーターに「タバスコはないの?」と聞いたら変な顔されたと聞いたことがありますが、本場のイタリア料理店にタバスコはまず置いてないそうです。日本だけの風習なのですね。

しかし日本で改良された中華麺が、カップ麺やラーメンとして中国に逆上陸したり、最近は日本風のカレーライスを本場インドで流行らせようとしていることを考えると、何年か後には、イタリアでもパスタやピザにタバスコをかけるという(野蛮な)風習ができるかも知れません。

そう言えば、元々イタリアではパスタはコース料理の前菜であって、ひとつの独立した料理ではなかったのが、日本流のランチのパスタ料理のように、独立したひとつの料理として出すようになってきたと聞いたことがあります。

日本国内でのタバスコの販売は、何社かが販売権を持っていますが、その中では群馬県にある正田醤油(創業明治6年)がもっとも多くを販売しているそうです。

この正田醤油は、前の皇后、現在の上皇后美智子様(旧姓は正田美智子)とは縁戚関係のある会社だそうです。とっても名門なんですね。

【お勧め激辛通販商品】

【関連リンク】
1332 鰹節の歴史とこれから
1201 カレーライスは最強の国民食だが問題もあり
1028 グルコサミンとコンドロイチンを飲み続けた結果
1015 丼飯を日本の文化として育てていきたい
682 我が家の食文化は子供たちへ伝えられているか?

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1413
ペイルライダー (原題 Pale Rider) 1985年米
監督 クリント・イーストウッド 出演者 クリント・イーストウッド、マイケル・モリアーティ、キャリー・スノッドグレス

19世紀の西部で細々と金鉱掘りをしている集落の土地を力尽くで奪おうとする町の有力者に対し、流れ者でやってきたやたらと喧嘩に強い牧師が首を突っ込み救うという「シェーン」と「荒野のストレンジャー」を合わせたような西部劇で、黒澤監督の「七人の侍」や「用心棒」とも通じるところがあります。

タイトルの「ペイルライダー」とは、「ヨハネの黙示録の四騎士のうち、死を司るとされる第四の騎士」のことで、片っ端から悪?を殺していくというアメ~リカンな内容となっています。

誰しも、権力者や悪人富豪に苦しめられ窮地に立たされたときには、誰か助けに来てくれないか?と願うことがありますが、せめて空想の映画の中だけでもそれを具現化してくれるものです。そうして古くから、弱者や貧しい人はガス抜きをしてきたのでしょう。

とにかくイーストウッドが強すぎです。公開された1985年というと、ダーティーハリー4と5の間の作品ということになります。

まだ若く活きがよく(とはいえ当時既に55歳ですが)、その後の「許されざる者」(1992年)や「マディソン郡の橋」(1995年)、「グラン・トリノ」(2008年)など、アクションを抑えたシリアス路線前の作品です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

アラバマ物語 (原題:To Kill a Mockingbird) 1962年米
監督 ロバート・マリガン 出演者 グレゴリー・ペック、メアリー・バダム、フィリップ・アルフォード

1962年度アカデミー賞で主演男優賞他二部門で受賞、同年ゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞した作品です。

黒人差別が根強く残っている1930年代の南部アラバマ州の町で弁護士をしているのが主人公で、あるとき、白人女性をレイプした罪で黒人男性が訴えられ、その黒人男性の弁護士を保安官から依頼され受けます。

黒人の弁護をすることで、家族含め黒人差別をする町の人から非難を浴び続けることになります。

このドラマにはもうひとり主人公がいて、それが弁護士の娘です。

この物語自体をその娘が子供の頃の思い出を語るというスタイルをとっています。原作もこの弁護士の娘が大人になって書いた自伝的な小説です。

タイトル「To Kill a Mockingbird」は、父親が、子供に、「やがて銃を撃つことになるだろうけど、人になんの害も与えないモッキンバード(鳥)を撃ち殺すことは罪になる」と話したことがベースとなっています。

黒人差別を描いた映画では、私は「ミシシッピ・バーニング」が印象深く残っていますが、奴隷制度とともに、アメリカに長く残る黒歴史を描いています。

そうした中で、60年代の「良きアメリカ人代表」として、グレゴリー・ペックぐらい似合う俳優はないですね。今で言えば、ブルース・ウィリスやハリソン・フォードってところでしょうか。

★★☆

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マスカレード・ホテル 2019年 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会
監督 鈴木雅之 出演者 木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世

東野圭吾の2011年発刊の小説を原作とするミステリー映画です。2014年に原作の小説を読んでいますから、概ね内容は知っていたつもりでしたが、6年前と言うこともあって、すっかり大事なところは抜け落ちてました。

ストーリーは、都内の高級ホテルを舞台に、連続殺人犯?が殺害予告をおこなったため、そのホテルにキムタク刑事やその他の刑事がホテルマンとして潜り込み、怪しい犯人を突き止めようとします。

テンポよくストーリーは進んでいき、ホテルの裏側も垣間見え、非日常感を味わえます。

実は私も学生時代に観光ホテルで数年間アルバイトをしていたことがあり、ホテルの裏側についてもある程度は知っていますが、仕事は部屋の清掃だったため、直接お客様と接することはほとんどなく(たまに連泊で部屋に居残っている客はいた)、今回キムタクが演じたフロントマンやベルボーイなどは、実際は素人がすぐにできっこない極めて難しい仕事なのでしょう。

そのキムタク刑事へのフロント業務の指導役が長澤まさみで、二人の掛け合いが魅力の映画となっています。

原作でも犯人はまったく想像がつきませんでしたが、映画においても難解な仕組みとなっていて、「そこまで複雑にする?」って感じでややリアリティには欠けるかもしれません。

★★☆

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疾風ロンド 2016年 東映
監督 吉田照幸 出演者 阿部寛、大倉忠義、大島優子、柄本明、ムロツヨシ

上のマスカレードホテルに続き、東野圭吾の小説が原作の映画です。

内容はコミカルなクライム映画で、ワクチンがなく世界を消滅させる新しい生物兵器の開発に成功した科学者が、それを研究所から外へ持ち出して冬山に埋め、雪が溶けて温度が上がると漏れ出すようにします。そして研究所には、隠し場所を知りたければ3億円を払えと要求を突きつけます。

しかし、脅迫状を出したすぐあとに、交通事故で犯人は死亡。雪山に隠した場所の写真と、電波発信機を手がかりに、研究所は秘密裏に捜索をおこないます。

というのも、警察に通報すると、違法で危険な研究がおこなわれていたことがオープンになり、保身にしか関心がない所長はじめ、研究所が危機に陥るという判断からです。

雪山での捜索なので、スキーが下手な研究員は、スキー場の救助員や、オリンピックを目指しているスノーボーダー達を巧く丸め込み、さらに地元の中学生なども巻き込んで、どうにか場所を特定し、発見することができます。

しかし、その生物兵器を奪い取り、海外へ持って行き、高値で売ろうと画策している研究員とその弟に生物兵器が奪われて、、、という、二転三転の事態が起きます。

犯人が隠した場所というかロケ場所が、懐かしい長野の野沢温泉スキー場で、このスキー場へは遠い昔、2度ばかり訪れたことがありますが、もう何十年も前のことで、その面影はすっかり変わっていて、どこがどこだかよくわかりませんでした。

東野作品が数多く映画化されるのは、それだけ映像化に向いた作品なのでしょうけど、個人的にはもう少し文芸作品というか、じっくり時間をかけた大作を期待したいところです。それだけなにか低予算で「一丁上がり~」って雰囲気の中身がスカスカな映画でした。

最近はテレビドラマ(特にNHK)の作品の方が、映画よりもずっとお金がかかっていそうで、アニメ以外の日本映画の凋落が気になるところです。

★☆☆

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ブラジルから来た少年(原題:The Boys from Brazil) 1978年 米・英
監督 フランクリン・J・シャフナー 出演者 グレゴリー・ペック、ローレンス・オリヴィエ

ロズマリーの赤ちゃん」(1967年)などの著作がある、アメリカの著名な作家アイラ・レヴィンが1976年に発表した同名の小説が原作です。

この小説は、先般読んだディーン・R.・クーンツクーンツ著「ベストセラー小説の書き方」でお勧め小説と紹介されていました。

監督は「猿の惑星」(1968年)や「パピヨン」(1973年)などの監督だったシャフナー、主演は元ナチスの悪役医師役にグレゴリー・ペックと、それを追いつめるユダヤ人役にローレンス・オリヴィエと名優コンビで、内容の濃い良い作品に仕上がっています。

ミステリー映画なので、内容について詳しくは書きませんが、比較的古い映画(44年前)だけに、現代のスピード感や人種問題や医療技術などに整合性がとれていないか心配していましたが、そんな心配はまったく無用、最新映画かと思うぐらいの迫力とテンポで楽しめました。


【関連リンク】
2019年11~12月 億男(2018年)、バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016年)、マーニー(1964年)、赤ひげ (1965年)
2019年10月 遥かなる大地へ(1992年)、モンスター上司(2011年)、ワイルドカード(2015年)、早春(1956年)
2019年9月 この世界の片隅に(2016年)、東京暮色(1957年)、大殺陣(1964年)、横道世之介(2013年)、ジョバンニの島(2014年)

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