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幸い我が家では現在のところ高齢の親の介護問題について頭を痛める事態には陥っていないものの、社会では相当大きな問題となってきています。

ひとつには、高齢の親を介護するために、働いている現役世代が仕事を辞めたり休職して在宅介護をするのか、逆に親を子供が働く都市部へ呼び寄せて介護をしていくのかという地理的、場所の問題。

小説ですが、「介護退職」(楡周平著)や「二人静」(盛田隆二著)では働きながら介護をする厳しさと苦悩、「風のささやき 介護する人への13の話 」や「昭和の犬 」(姫野カオルコ著)では遠距離介護のたいへんさがよく書かれていました。

もうひとつは、高齢者の健康問題と介護施設の問題です。

後者の長期にわたり24時間介護してもらえる施設については以前、

老人ホームについて調べてみた(1)

老人ホームについて調べてみた(2)

で書きましたが、多額のお金が工面できる人は、「介護付有料老人ホーム」など、24時間介護の施設に入居することで家族も安心ということがわかりました。但しそれも医療行為が伴わない場合に限られます。

お金がない場合や慢性的に医療行為が伴う場合、公的な施設に入居するためには、要介護認定が高く、競争率が比較的低い地方であれば、公的な施設「特別養護老人ホーム」や「介護療養型医療施設」「介護老人保健施設」などが数ヶ月~数年待ちとなりますが、なんとか入居が可能ということもわかりました。

お金がなくて、都市部でという人は、さすがに24時間介護サービス付きとはいきませんが、「サービス付き高齢者向け住宅」や「グループホーム」、、「シルバーハウジング」等があり、それにも入れなければ現状ではやや問題が多いとされる「無届け介護ハウス」というものもあります。

今回は、介護施設に頼らない、在宅介護をどうやっていくか?という問題を考えてみたいと思います。

都市部に住む団塊世代以前の人の多くは、元々地方出身者で、仕事を引退した後は、再び地方へ帰っていくのかと思っていましたが、40年以上慣れ親しんだ都会のコミュニティや資産を捨て去ることはできず、そのまま都市部郊外で住み続ける傾向があります。

覚悟の地方移住か都市部で介護難民か

でも書きましたが、高齢となり、やがて健康を害した時に、都市部においての介護施設は満員で、介護要員の不足もあって、やがて介護難民となり行き場がなくなる恐れが危惧されています。

その点、すでに高齢化率が30%を超えている地方では、比較的その要介護高齢者の受け入れできる施設やノウハウが多くあり、要介護になる前に地方へ移住をし、新たなコミュニティに参加をしてその準備をしておこうという動きがあります。

それがアメリカで流行っているCCRC(Continuing Care Retirement Community)の日本版です。直訳すれば「継続的なケア付き高齢者たちの共同体」ということになり、いま国や地方公共団体は都市部への集中を避けようと盛んにPRしています。

ただし、日本人高齢者はどうも環境の変化に抵抗感が強く、なかなか地方への移住は進まないようです。そりゃそうでしょう。

高齢者の6割以上が地方移住に「NO!」。日本版CCRCを待ち受ける前途多難な道のりとは?(みんなの介護)

私個人的には、引退後は地方でのんびりゆったりと暮らしたいと思っていても、たぶんご近所さん達とコミュニティを確立している妻はそういうのを嫌うでしょうし、なにかにつけて便利な都会暮らしに慣れてしまった身には、地方暮らしの不便さも十分にわかります。

そして高齢の親が元気なうちはまだよいとして、介護が必要となた時に、さすがに在宅で老老介護を何年も続けるのは無理があり、結局は施設に頼らざるを得なくなるでしょう。しかし都市部にはなかなか施設の空きがない。

富裕層ではないごくごく平均的な我が家も、余裕ある老後資金があるわけではなく、というかほとんど3人の子供の教育費に使ってしまったので貯金はまったくと言っていいほどなく、途中で転職しているので満足な退職金もありません。

とすると、何かあったときに、子供と遠く離れているのが、お互いにとって障害になることを考えると、働く子供の近く、つまりは都会で暮らさざるを得ないという結論に至ってしまうでしょう。

さらに、テレビでやていましたが、地方に住む高齢の親を、子供が暮らす都市部に呼び寄せることが流行しているそうです。

ふるさとの親どう支える? ~広がる“呼び寄せ高齢者”~(NHK)
首都圏に住む4、50代の4割が地方出身者です。ふるさとの親に介護が必要になった場合、以前は子どもが帰ったり、通ったりして支えていました。でも今、増えているのは、親に子どもの暮らす都会に来てもらう「呼び寄せ高齢者」です。

都市部では既存の住人の高齢化率が加速度的に高まっていく中で、さらにそれに輪をかけて地方に住む高齢者を都市部に呼び寄せてどうするの?という気もしますが、介護する子供側にとっては、地方に住む親の介護の厳しさもあって、やむを得ない選択ということなのでしょう。

これでは都市部において高齢者向けの施設や介護要員がますます不足していくことになりそうです。

高齢者側にとっては、先述のCCRCを受け入れて、高齢者が集まり、合理的な介護をサービスを受け、また相互に支え合うようなコミュニティを作っていくしか当面は解決がなさそうに思うのですが、保守的に頭が固まった高齢者にとってはつらい選択になってしまうのでしょう。


【関連リンク】
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
946 介護人材を増やす
888 火事と高齢化社会の因果関係
876 介護にまつわるあれこれ
865 仕事と介護の両立という難題



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一般的に高齢化社会と言われますが、高齢者とは何歳からが高齢者なのか?ってところが結構曖昧です。

wikipediaで調べたのですが、

・国連では60歳以上を高齢者
・国連の世界保険機構(WHO)では65歳以上が高齢者
・定年退職者もしくは老齢年金給付対象以上(60~65歳?)を高齢者
・日本の医療に関する法律では65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者
・雇用に関する高年齢者雇用安定法では55歳以上を高年齢者
・公的機関が行う人口調査では65歳以上を高齢者

と、結構バラバラな感じです。

国内では人口調査などに使われる65歳以上が高齢者というのが一般的にマスコミも使うことが多いのでしょうけど、戦後急速に寿命が延びてきたことで、高齢者という概念も変化してきているというのが実際なのでしょう。

ちなみにすでに亡くなっている私の父親は、大正8年(1919年)生まれでしたが、父親が今の私よりも若い55歳だった1974年の一般的な会社の定年は55歳でした。

55歳で定年を迎え、その後5年間は嘱託契約で勤め、60歳から老齢年金をもらうという流れが普通の時代でした。

戦後すぐに生まれたいわゆる団塊世代は、60歳定年の時代で、その60歳で老齢年金が支給されるもっともお得というか納得感のある世代です。

さすがに政治(政治家)に影響力が大きな世代だけあって、うまく美味しいところだけをもって逃げ切ったというところでしょうか。

現在はと言うと、段階的ではあるものの老齢年金の支給は65歳まで延期され、しかし定年は60歳のままですので、その間は会社にすがってでも残って稼いでねということになっています。

今後この65歳以上の高齢者の数は、現在40代前半の団塊ジュニア世代が65歳以上にすっぽりと含まれるまでは年々増え続けることになります。自分もその中に入るわけですが、考えただけで恐ろしい限りです。

なにが恐ろしいかって?

だって高齢者、しかも年金は減らされる一方の下流老人ばかりになっていく国に、明るい未来なんかあるはずもなく。

・老人は食が細いので食料生産が落ち込む
・老人は旅行やスポーツをしないので観光業界、スポーツ業界は縮小する
・老人は外食しないので居酒屋、レストランなど外食業界は壊滅
・老人は転居や引越しをしないので、住宅や家電の売上は減少が続く
・老人は他人の子供が嫌いなので幼稚園や保育園が新設は無理
・老人は投資よりもより安全な貯蓄や国債を好むので株価は上がらない
・老人はクルマを運転しないので新車は売れない
・老人は新しい学びには拒絶反応を示し教育に関心がなく
・老人は他人とのコミュニケーションを嫌がり外出する機会が減る

いやいや、団塊世代なんて元気いっぱいで、旅行や新車や投資意欲もまだまだ健在ですぜ!って言う人もいるでしょうけど、10年後、彼らがすっかり後期高齢者になってしまった時も今と同じようにエネルギーがみなぎって活発でしょうか?と言うとそうは思いません。

数少ない成長産業と言えるのは、医療、医薬品、リフォーム、介護、墓地、葬祭業界ってところでしょうか。

その中でも福祉予算で補われる医療や医薬品、介護はともかく、このまま下流老人が増えていくと、その他の有料サービスの将来は富裕層向けに限られて、決して明るくない気がします。

食品も富裕層向けの高級食材と、下流老人向けのものとに二分化されていきそうです。

すでに高齢化率が5割を超える市町村を見るとわかりますが、まともな地場産業はなく、都市部からの様々な行政の援助なしでは充実した住民サービスは受けられず、町や村がいつ消滅するか?っていうところにきています。

2010年の国勢調査による市町村の高齢化ランキング


いずれにしても今後日本の多くの市町村では65歳以上人口が3割から4割近くを占めることになっていきます。

ま、あまり下流だの孤独死だの暗いことばかり考えているのではますます国力が低下していきますので、ここはパッと明るく、お金がなくても、健康でなくても、幸せな気持ちで毎日が過ごせる平和な長寿老人国家を目指しませんか。

幸い日本には豊かな自然と、世界に誇れる実質的な食料自給率(生産額ベース)があり、老人が毎日食うだけの食料ぐらいなら自分で生産ができるぐらいの環境とスペースと技術ベースがあります。

ITを駆使した農業法人が、高齢者を現物支給の形で雇う(正確には家庭菜園の延長として無償で貸し出す)ようなモデルも考えられそうです。

例えば生産する野菜や果物の10%をそこで働く高齢者に分配することで双方にメリットが出ます。高齢者は週に数回農園で作業を手伝えば現金の代わりに収穫物がもらえてそれが日々の食料になるということです。

そろそろ、日本もお金至上主義から脱する時代になってきたのかも知れません。


【関連リンク】
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
719 道の駅は次の段階へ進めるか
711 地方が限界集落化していく


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地味に個人の感想ですが、20代の頃に80年代のバブルを経験した現在50代の人達に共通することはと言えば、やはりあの頃の突き抜けた景気浮揚感というか、足が地に着いていないようなフワフワ感がつきまとっているように思えます。

どういうところにそれが現れるかと言えば、まず「コツコツと努力しているとむくわれる」「老後のため若い頃からずっと貯金をしてきた」なんて人はほとんどなく、「お金が手元にあれば使ってしまう」「お金が手元になければ借りて使ってしまう」「転職してもなんとかなるさ」「この先、老後もなんとかなるさ」といったような感覚でしょうか。

バブル景気に湧いたとき、団塊世代はそれなりに社会人として知恵も経験もある地位に就いている30代に入っていて、すでに結婚をし、子育て中ということもあり、お金の使い方は慎重、また将来に向けての投資には熱心という感じですが、独身の20代でいきなり札束が舞うバブルを迎えた今の50代にお金の重要性や将来への投資を期待してもそりゃ無理というものです。

それを示すように、少し前ですが、このような記事がありました。

アラフィフ世代はお金が貯められない?背後にバブルの影響も(AERA2016年4月25日号)
「それぞれの世代には、思春期を過ごした時代のエートスが身体化されています。バブル期に分不相応の浮かれ方をした世代の『なんとかなるわ』という楽観主義は、年を重ねても変わらないでしょう。とりわけこの世代のわかりやすい拝金主義とブランド志向は成長経済型ですね」
(中略)
「本人たちは浪費しているつもりはないのに、なぜかお金が貯まらないという家庭は多い。(中略)50歳前後のアラフィフ家庭は貯金ができないところが増えている」
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(15年、2人以上世帯)によると、年間手取り収入(臨時収入を含む)の貯蓄割合が「ゼロ」の人は、50代で23%にのぼる。年収の5%未満も9.7%。3割以上がほとんど貯蓄できていないことがわかる。

結局何が言いたいかと言うと、現在65歳以上になった団塊世代は退職金も年金も満額支給された最後の世代となり、老後はほぼ安泰ですが、その先、現在の50代が65歳になる10年後は、昨今世間を騒がせている「下流老人」「老後破産」はその数たるや桁が違ってくるのではないかと思うわけです。

今の50代は、成果主義やら能力主義という経営側に都合のいい言葉で、終身雇用制度に自らピリオドを打ち、大企業勤めであっても転職や独立を積極的におこなった最初の世代です。

転職を繰り返して、退職金がもらえない、もらっても相当に少ないという定年退職者が数多く出てきます。

また転職を繰り返すうちに非正規社員やフリーランスとなり、年金も厚生年金ではなく国民年金として納めていると65歳以降にもらえる年金額も生活保護レベルかそれ以下まで下がってしまいます。

まだ心身とも健康であればいいのですが、人間50年という敦盛じゃないけれど、50代以降は身体のどこかしらに変調をきたすものです。

そうすると、できる仕事が限られたり、毎月医療費がかかってきて、考えていた優雅な老後生活は遠のくばかりです。

数十年前までは、子供が結婚すると親が結婚費用や新生活の費用を出してやったりということがよくありました。

そうすることで、やがて親が働けなくなった時、体調を崩して寝込むようになった時には子供が親の面倒を見るという相互扶助が自然におこなわれていたわけです。

でもその子供が今は結婚せずに親の家にパラサイトし、それでなくても細くなっている大黒柱をかじって(家計を喰い)、親たちはとても余裕のある定年後の引退生活とはなりにくくなっています。

パラサイト同居していることで、親子関係の関係も相互扶助から、責任のなすりつけ合い(家庭内暴力)、子の引きこもりや介護離職で親の年金だけが頼り、そして親子共倒れへと陥ってしまうケースも出てきそうです。身内の関係ほど激しい憎悪が生まれることはないですからね。

私も間違いなくその20代でバブルを経験し、質素、節約とは無縁の生活を長く続けてきたおかげで、この先どうなってしまうのだろう?と不安が過ぎりますが、結局は「なんとかなるだろう」で自己解決してしまう、一種この年代特有の病気に罹ってしまっているのかも知れません。


【関連リンク】
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
829 「最後の昭和企業戦士」五十代の悲劇
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
349 しらけ世代と団塊世代ジュニア

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前回は公的機関が運営する老人ホームについて書きましたが、今回は民間の老人ホームについてです。

高齢でも自宅があり、家族が同居していて、心身ともに健康であれば、あえて老人ホームに入居する必要はありません。

また家が老朽化し日常生活をおくる上で不便であったり、日用品等の買い物が不自由な場合は、また別の公的な支援、居宅支援サービス等が受けられます。

政府としても要介護の高齢者増加に対応し、負担の大きな医療や介護施設を増やすのではなく、できるだけ自宅療養、自宅介護を推進していく方向でまとまっています。

しかし寝たきりの高齢者や、徘徊をともなう重度認知症高齢者など、自宅で24時間介護をおこなうのは無理という場合、まずは安い公的施設を頼り、その長い順番に愕然として、それから民間の有料介護施設を探すというパターンが多くなるのでしょう。このあたりは長い順番待ちの認可保育園と有料の認可外保育園と同じような関係です。

高齢者が先を見越して自分達で老人ホームを探して率先して入ってくれると、その家族は大いに助かるわけですが、そうした高齢者は極めて少ないでしょう。

それは住み慣れた環境や、知人・友人のコミュニティなどがあり、それら一切を捨てて新しい環境に入っていくには年を取りすぎたと言う堂々巡りの話しになってしまいます。また高齢者は一般的に保守的になりますから、そのような新たな環境を望みません。

多くの場合、長く住み続けている家で、不自由な暮らしでも耐えて住み続け、老夫婦のうちどちらかが倒れて寝たきりとなってしまい、24時間介護が必要になると、そこで初めて老人ホームの入居を考えるということになりそうです。

それは調べてみてわかったのですが、老人ホームの部屋はほとんどがシングル仕様で、夫婦で住むという部屋はかなり少ないことからもわかります。つまり配偶者が寝たきりになったり、亡くなってから入居する人が多いということです。

その民間の有料老人ホームですが、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。

公的機関がおこなっている介護施設だとおよそ月額7~10万円程度ですが、民間の施設は安くても月額12万円以上で、さらに入居時に数百万円~数千万円が必要なところが多いようです。

費用の高さはサービスの充実度、環境の快適性などと比例し、直結しています。

「介護付有料老人ホーム」・・・初期費用は0~数千万円、月額費用はおよそ12~30万円
「住宅型有料老人ホーム」・・・初期費用は0~数千万円、月額費用はおよそ12~30万円
「健康型有料老人ホーム」・・・初期費用は0~数億円、月額費用はおよそ10~40万円

多いのは「介護付有料老人ホーム」(3,308箇所、203,914居室)と「住宅型有料老人ホーム」(5,100箇所、143,466居室)で、「健康型有料老人ホーム」はまだ16箇所、611居室しかありません(出典:2014年厚生労働省「介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて」)。

「介護付」と「住宅型」との違いは、要支援度が高い場合は、常駐の介護士を置く「介護付」の施設を選ぶことになり、比較的自立生活がおくれる高齢者、必要なときだけ介護サービスを受ける「住宅型」となるようです。

「住宅型」の場合は介護士は施設には常駐していないので、要介護の割合が高くなると、対応が厳しくなるのと、個別に頼むと別途追加の費用がかかることになります。

つまり当初は要支援度が低く「住宅型」に入ったものの、加齢や認知症が悪化したりして要支援度が上がった場合、「住宅型」では対応できず退所を求められることがあるそうです。

健康に不調を抱える高齢者とその家族にとっては、その選択は悩ましいところでしょう。

次に、有料老人ホームの枠外で、「サービス付き高齢者向け住宅」(4891棟)、「グループホーム」(12,537棟)、「シルバーハウジング」(883棟)という施設があります。

健康な高齢者が入れる小規模な「サービス付き高齢者向け住宅」と「グループホーム」は比較的価格が低く抑えられており、数も増えてきていますが、それぞれ運営する規模が小さいところが多いだけに、その施設やサービスの品質にはピンキリありそうです。

初期費用はどちらも初期費用0~数百万円、月額費用はおよそ15~30万円です。

健康を害した場合や当初から介護が必要な場合は、公的な施設の「特別養護老人ホーム」を申し込み、そこがダメなら要介護度に応じて民間の「介護付・住宅型の各有料老人ホーム」を申し込むというパターンが多そうですが、比較的健康であれば「サービス付き高齢者向け住宅」や「グループホーム」など範囲は拡がります。

もちろん民間施設の場合、地域や設備、サービス内容によって、様々な料金体系が設定されており、高級ホテルのような施設もあれば、ベニヤ板で1部屋を間仕切りをして部屋数を増やしているような(たぶん違法)施設まで様々です。

さらに最近は「無届け介護ハウス」というものが急増しています。

「無届け介護ハウス」は、法律で義務づけられた届け出を行わないまま、空き家などで高齢者に介護サービスを提供する、有料老人ホームのことで、一概に問題とは言えないまでも、様々な問題を抱えていることも確かなようです。

無届け介護ハウス 全国1650超で過去最多に(NHK)
背景には、特別養護老人ホームなどの公的な施設が足りず、介護が必要になっても自宅で暮らすことが難しい1人暮らしなどの高齢者の増加があるとみられます。都道府県別で最も多いのは、北海道で523件、次いで神奈川県が112件、愛知県が107件などとなっています。

お金がなくて民間の介護付き老人ホームに入れない場合、公的な「特養」などの長い順番待ちをせざるを得ないわけですが、その待っている間はどうすればいいのかって言うと、こうした無届けでも安価で介護をしてくれる民間施設を利用するしかないというのが現状です。

当然、民間企業経営の施設は利益を上げることが目的ですから、都市部にありながらも安くてサービスが充実ということはほぼ考えられません。ある程度のサービスの質を求めるのであれば、高級ホテルや旅館住まいに匹敵する以上の費用がかかることを覚悟しておかなければならないでしょう。

夫婦とも健康でいればいいのですが、片方でも重度の介護が必要となると、老老介護にも限界があり、介護サービス付きのホームに頼らざるを得ません。

「介護付き老人ホーム」に夫婦の年金の範囲で入ることが可能なのは公的施設の場合で、都市部だと民間の施設の場合だと年金だけですべてを賄うのはまず厳しそうです。

そうなると多くの人は、老後のために蓄えた貯金を崩していくか、あるいは自宅を売却し、そのお金を入所一時金や月々の不足分に充てることが必要になってきます。

ただこれもあと何年生きるか(=住み続けるか)というのがわからないだけに、子供達からの資金面での援助がないと、厳しいものがありそうです。

そう考えると、なんとしてでも、健康で自立できる老後がおくれるようにしておかなければ、今後は公的な支援がほとんど期待できない状況では、非常に苦しい老後が待っていることになりそうで、憂鬱になってきそうです。


【関連リンク】
946 介護人材を増やす
876 介護にまつわるあれこれ
865 仕事と介護の両立という難題
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
568 老人虐待と介護の問題



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私の住んでいる地域(神奈川県東部)でも明らかに高齢者住人の割合が増えていて、空き地や農地だったところ、そして普通のアパートやマンションだった跡地に、老人ホームが建設されるパターンが目に見えて増えてきました。

一般的に老人ホームや介護施設というと、高齢者が不自由なく終の棲家として余生を過ごす集合住宅の施設というイメージがあります。

しかし終の棲家となる長期間利用できる老人ホームは限られていて、大きく分けると、療養型(一時滞在)老人ホームと、終身型老人ホームに分かれるようです。

基本は自分の家(持ち家でも借家でも)で、できるだけ長く老後を過ごし、最後に身体の自由が利かなくなり食事など生活に支障が出てから終の棲家となる老人ホームに入るというのが望ましい形なのでしょうけど、なかなかそううまくいかないのが世の常です。

特に核家族化で老夫婦だけの生活であれば、夫婦のどちらかが健康を害すると、老老介護となり、日常生活がだんだんと厳しくなってきます。その結果介護付きだったり、医療設備付きだったり、3食サービス付きの老人ホームなどへ入居せざるを得ないという流れです。

また同じ老人ホームという名称でも、介護の要不要、運営母体が公共か民間かなど、様々な形態があり、それぞれに入居条件、サービス内容、入居できる期間、入居(利用)費用が違ってきます。こうしたいくつもある施設で、入居できる条件や、費用負担の差などがまたややこしいです。

ここではあまり細かく分類すると、役所の案内書のようにわかりづらくなってしまいそうなので、大ざっぱな話しにとどめておきます。いずれ自分もお世話になるかもしれないので、その備忘録的見地という位置づけです。

したがって細かな点では、例外があったり、地域によって差があったり、いくらでもつっこみを入れることができますが、それはご勘弁ください。

老人ホームの種類や特徴は、下記のサイトが割とわかりやすく書かれていますのでご参考に。
老人ホーム・介護施設の種類と特徴」(HOME'S介護)

 ◇ ◇ ◇   ◇ ◇ ◇

まず今回は、その中でも公的な老人福祉施設について調べたことをまとめておきます。

高齢者が利用できる公的な福祉施設としては、自活できる人向けの「福祉施設」と、介護が必要な人向けの「介護保険施設」と2種類があります。

「福祉施設」としては「養護老人ホーム」と「ケアハウス(軽費老人ホーム)」があり、それぞれに入居できる条件等が決まっています。

介護が必要な場合は「介護保険施設」の利用となりますが、それらとの境界線は、どうも曖昧なところがあるようで簡単には表せません。

どちらかと言えばこの「福祉施設」は身寄りや安定収入のない高齢者で、例えば生活保護を受けているような方が多いように思えます。必ずしもそうでない人も多くいらっしゃるとは思いますが。

公的な介護保険施設には「特別養護老人ホーム(特養)」、「介護老人保健施設(老健)」、「介護療養型医療施設」という3つの形態の施設があります。

聞くことが多い「特別養護老人ホーム」は、心身の病気(障害者)や高齢で介護が必要な場合に、その要介護の度合いによって利用することができます。

費用も安く初期費用は0円、月額費用はおよそ5~13万円となっています。なんと言っても初期費用が不要かつ月額も安いというのが絶対的魅力です。

月額は本人の年金でなんとかまかなえそうですから、家族の負担もあまり必要となりません。

もし十分な蓄えがない高齢者でも、いざとなればここに入れるというルートが確立されていれば、老後の不安というものがずっと減り、死ぬその時まで「老後のために」と貯蓄に励むようなことがなくなるのでしょうけどね。

また社会問題化しつつありますが、高齢の父親や母親が要介護者となり、その看護や介護を子供がしていると働けず、親子共倒れになってしまうので、なんとかこうした施設に預けたいけど、なかなか受け入れてもらえないというパターンがあります。

それは高齢化のスピードが急すぎて(当然何十年も前からわかっていたことですが)施設の数が十分でなく、要介護の人は増え続けていますので、まったくその数が不足していて、実際には何年待っても入居ができないというのが実情です。

「特養」は全国に7,865箇所あり51万6千の居室があります(2014年度)。

それでも現在で全国でなんと50万人を越す人が待機しているという話しもあり、よほど運とツキと強いコネがないと、申し込んでも数年のあいだに入居できる見込みは薄いようです。

入れた人と入れない人(の家族)の格差が今後あからさまに生じてきそうです。

平均すれば1施設の居室は66部屋で、1施設あたり平均すると約60名以上の待機者がいますので、それはいまいる入居者全員が亡くなってから、ようやく最後に並んだ自分が入居できるという勘定になります。

さらに入居は必ずしも並んだ順ではなく、緊急性が高いと判断される場合もあり、そのあたりのことはよくわかりません。

待機者をなくすには、現在ある「特養」の同じ数を作ればとりあえずは間に合いますが、現在すでにそれだけの予算がないのと、団塊世代が75歳以上になる10年後にはおそらくまた数十万名の待機者が新たに増えることになりそうです。

少し前に「保育園落ちた、日本死ね」のブログが盛り上がっていましたが、同時に要介護の高齢者とその家族にとっては「特養入れず、日本死ね」と言いたくなりそうで、これからますます大きな社会問題となっていきそうです。

なぜその「特養」が人気なのかと言うと、公的機関の運営で料金が安いことが一番の理由ですが、年齢に関係なく重度の要介護者用の施設で、現実的にはそこを出ると他では暮らせないので、終身で利用できることが本人や家族にとって大きな魅力だからでしょう。つまり要介護者の終の棲家であるわけです。

また医療の高度化により寿命が伸びるのにしたがい、寝たきりの状態でも、長生きをする高齢者が増えてきていて、そのため入居者の入れ替わりが少なく、したがって部屋に空きが出ないということです。

その点「介護老人保健施設」は、同様に公的機関の施設で料金も安いのですが、在宅復帰の短期利用を目的とする施設なので、3ヶ月ごとに状態の審査があり、復帰可能と判断されると退所を求められます。費用は初期費用が0円、月額費用はおよそ8~13万円です。

「特養」のような終身とか長期の利用ができない仕組みになっている分だけ入所者の入れ替わりがあり、「特養」と比べるとまだ入りやすいのですが、病院と同様、一時避難的な施設とも言えるでしょう。

「老健」は2014年度で全国で3,994箇所、34万9千の居室数がありますが、それでも施設によっては数百名の待機者がいるようです。

それでもこちらは終身の「特養」と違うので、地域によるでしょうけど、待機する時間はまだマシなのかも知れません。

「介護療養型医療施設」はより重度の介護が必要な場合等に入所できる公的機関の施設ですが、医療を目的とする施設なので、「特養」のように終身利用は想定しておらず、「老健」同様改善したと認められると退所を求められます。

2014年度で全国に1,575箇所、7万3百の居室があります。費用は初期費用が0円、月額費用はおよそ9~17万円となっています。

いずれにしても公的な施設では、重度の介護や緊急の医療が必要な場合を除き、入居は期待薄と考えた方がよさそうです。

また「老健」や「療養型医療施設」に一旦入居ができても、それは一時的なもので、そこで長期間暮らせるわけではないので、その次を考えておかねばなりません。

高齢者の場合、若い人と違い、しばらく療養したからと言って、すっかり改善するってケースは少なく、老化と共に徐々に悪化していくのが普通です。

それなのに、「多少改善したから退所」と言われても、働きながら介護をしなければならない家族としては困ってしまうでしょうね。

となると、やっぱりお金はかかりますが、民間の有料介護付き老人ホームということも考えておかなければなりません。それは次回に。

老人ホームについて調べてみた(2) 2016/4/27(水)

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