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一般的にニュースなどで報道される刑法事件は、芸能人など有名人でもなければ刑法犯の中でも重大な殺人事件などごく一部だけです。
過去にも刑法犯の種別など書いたことがありますが、国内刑法犯の割合と認知件数の推移について不定期でも見ておくため、書いておきます。
刑法犯は、2019年1年間で748,559件の認知件数があります。
認知件数ですので、検挙数や逮捕者数とは違い、犯罪が発生しそれが警察事案となった件数と言ってもよいでしょう。
刑法犯は比較的軽いものは万引きや空き巣などの窃盗や詐欺、風営法違反など、凶悪なものは飲酒運転でのひき逃げや暴行、強盗、殺人などがあります。
その中でなんと言っても数的に圧倒的に多いのは窃盗(自転車盗、車上狙い、万引き、ひったくり、置き引きなど)です。
窃盗だけで刑法犯全体の71%(侵入盗8%+侵入盗以外63%)も占め、その窃盗犯の中の1割(刑法犯全体では8%)が空き巣や店舗荒らしなどの侵入盗になります。
データ出典:警察庁 警察白書
2019年は認知件数は748,559件ですが、実際に逮捕や検察官への送致(警察が被疑者の身柄や記録を検察官に引き継ぐこと)等される検挙数は294,206件で、検挙人数は192,607人です。
但し、逮捕や検挙されても微罪などの場合は、検察(司法手続き)へ送致されずに微罪処分(前科は付かず前歴が残る)で済ませる場合もありますから、すべて裁判にかけられるというわけではありません。
つまり刑事犯として認知したものの、誤解から生じたことだったり、被害者が告訴を取り下げたり、軽微ですぐに和解が成立していたりすると不起訴になるケースも多いと言うことでしょう。
桶川ストーカー殺人事件のように、面倒だから告訴状を被害届に警察が勝手に書き換えたり、殺人事件でもまともに捜査をしないで放置し、警察の失態を隠そうと事件をうやむやにしておくとかでなければ良いのですけどね。
未だに「最近、犯罪が増えている!」と勘違いしている人が時々いますが、もちろんそんなことはなく刑法犯は大きく減少しています。
データ出典:警察庁 警察白書
2002年(平成14年)には刑法犯が285万件を超えていましたが、その後は17年連続して減少し、2019年は75万件と2002年の1/3以下へと減少し、戦後もっとも少なくなっています。
刑法犯が多かった20年前、2002年と言うと、サッカーW杯日韓大会が開催され日本代表が初のベスト16入り、ノーベル賞では小柴昌俊氏(物理学賞)、田中耕一氏(化学賞)のW受賞など明るい話題もありましたが、三島女子短大生焼殺事件、北九州監禁殺人事件、平野母子殺害事件、群馬女子高生誘拐殺人事件、マブチモーター社長宅殺人放火事件、石井紘基刺殺事件など凶悪事件も多く発生した年でした。
その2002年以降はずっと下降傾向でしたが、ここ1~2年は、コロナ禍で自粛を強いられ、閉塞感が高まり、さらに仕事がうまくいかない、モノが売れない、客が来ないなどで経済的に追いつめられての犯行というのが増えている気がします。
値上げラッシュで生活が厳しくなる年金生活の高齢者の犯罪も、この世代の人数が元々特出して多いだけに目立ちそうです。
そうした犯罪を防止し、取り締まる警察官ですが、日本の警察官の人数はおよそ26万名(2017年)で、人口千人あたりにすると、2.06人(0.2%)人です。
人口が減ってきているのにこの10年間でなぜか1万人近く(2007年25.1万人)も増えています。
最近は交番の中はいつも不在で電話が置いてあるだけになっているのに不思議ですね。
この数は他国と比べてどうなのか?と思って調べたものの、新しい適切なデータが見つかりません。
ちょっと古いですが、2008年のeurostatのデータでは、人口千人あたりで警察官が多いのはスペイン4.9人、トルコ4.8人、ギリシャ・ポルトガル4.5人で、少ないのは、フィンランド1.5人、ノルウェー1.6人です。
日本はデンークやスウェーデン、カナダと同じ2.0人と全体で見ると少数派に入りそうです。
その他の国では、オーストラリアが2.2人、米国2.3人、英国2.7人、ドイツ3.0人、フランス3.6人、イタリア4.1人などとなっています。
国によっては、国内の治安を維持するのは警察官だけではなく、様々な制度や形態があるので、一致した数値を求めるのは難しいかも知れません。特に共産国や非民主主義国の実態は不明です。
北欧の国は比較的安全と言われていますが、最近はテロ事件なども起きています。一番良いのは、街の風景の中には武装した警察官の姿が一切見えず、万が一なにか起きたときには素早く警察官が現場に到着するような国家です。
少なくとも、武装した警察官が市民側に向いて銃や盾で威嚇するような事態だけはなってもらいたくないものです。
【関連リンク】
1402 警察官の年齢構成はどうなっている
914 殺人事件の国際比較
850 少年犯罪は増加、凶悪化しているのか?
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海の見える理髪店 (集英社文庫) 荻原浩
2016年に単行本、2019年に文庫化された短篇集で、2016年の直木三十五賞を受賞した作品です。1997年に「オロロ畑でつかまえて」でデビューしてから22年目での受賞となりました。
私はそのデビュー作含め過去に23作品を読んでいますが、もっと早く受賞していても全然おかしくはない活躍ぶりです。
この短篇集は、それぞれ独自の「海の見える理髪店」、「いつか来た道」、「遠くから来た手紙」、「空は今日もスカイ」、「時のない時計」、「成人式」の6篇が収録されています。
共通するテーマはハッキリとは書かれてはいませんが「家族」とか「血縁」というところでしょうか。
中でも本のタイトルにもなっている「海の見える理髪店」は短篇ながら2世代の濃い人生が語られ、読者もあれこれと想像を膨らませる展開で、最後に感動と涙を誘う展開へ向かいます。これは素晴らしい。
著者の長編小説にも素晴らしいものがたくさんありますが、それと比べると短篇にはコミカルな妖怪モノなどちょっと息抜き?って感じで印象深いものはあまりなかったのですが、これは大人の深い小説で確かに一級品です。
「海の見える理髪店」が男同士の関係なら、「いつか来た道」は同じテーマでの女同士の関係を描いています。この二つはペアと言っても良いかも知れません。
★★★
著者別読書感想(荻原浩)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ダナエ (文春文庫) 藤原伊織
ちょっと古い2007年単行本、2009年文庫化された短・中篇小説集で、「ダナエ」、「まぼろしの虹」、「水母(くらげ)」の3篇の構成です。
本のタイトルになっている「ダナエ」とは私は知らなかったのですが、オランダの画家レンブラントがギリシャ神話をテーマにして1636年に描いた大きな裸婦(ダナエ)の絵画のことです。(レンブラント以外にも多くの著名画家がダナエをテーマに絵画を描いています)
そしてこの絵画は1985年にリトアニア人の青年に硫酸を浴びせかけられ、さらに刃物で切りつけられたという過去があります。
それになぞった形で、そこそこ著名になった主人公の画家が描いた妻の父親で大企業のオーナーの肖像画を展示中、硫酸をかけてナイフで傷つけられるという事件が起きます。
神話では美しいダナエは権力者の父親に軟禁されていましたが、全知全能の神ゼウスの子を産むことになり、その子がダナエの父親を殺すというストーリーに沿った形で、絵のモデルとなった主人公の義理の父親の元へ殺人予告メールが届きます。
絵画の世界に詳しくないとさっぱり理解できないところですが、小説の中でそうした説明がちゃんとされますので安心して読めます。ギリシャ神話って深いですからね。
惜しむらくは中篇なので、事件やギリシャ神話の解説などでバタバタとしているうちにアッという間にクライマックスに入ってしまい、「起ーーーー承ーー転/結」って感じ。尻切れトンボじゃないですが、終わり方が慌ただしくてちょっと残念な感じです。
あとの2篇は印象の薄い短篇で、ちょっと迫力に欠けてしまっています。
★★☆
◇著者別読書感想(藤原伊織)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
それまでの明日 (早川書房) 原りょう
「そして夜は甦る」(1988年)、「私が殺した少女」(1989年)、「さらば長き眠り」(1995年)、「愚か者死すべし」(2004年)に続く5作目の長編小説です。過去の作品はいずれも文庫化されてまもなく買って読んでいます。
もちろんこれも前作に続きレイモンド・チャンドラーに影響を受けて創造した「私立探偵沢崎シリーズ」で、2018年に単行本、2020年に文庫化されました。
東野圭吾氏や貫井徳郎氏のように1年に何冊もの長編小説を書く作家さんも多い中、30年で5作品だけです。
しかもこの「それまでの明日」が出たのはその前の「愚か者死すべし」が出てから14年が経っていました。
これでちゃんとプロの作家として生活ができているのかは大きなお世話ですが心配になります。
それはそうと、この作品も過去の作品同様たいへん面白く読めました。ちょっと冗長な感じはしましたが。
シリアスな場面とコミカルな思いがうまくマッチしていて、読むのに疲れません。ただ登場人物の半分が過去のシリーズに出てきた人なので、それらを読んでいないとどういう関係なのかわかりにくいかも知れません。
ストーリーは、赤坂にある老舗の料亭への融資に関連してそこの女将を調べて欲しいと、ある消費者金融会社の支店長に頼まれたものの、調べるとその女将はすでに亡くなっていてそれ以上調査するのかどうかを依頼人に聞くため勤務場所へ行くと、そこで二人組の武装強盗に遭ってしまいます。
そこから話しはややこしくなってくるのですが、暴力団の抗争と裏金の隠し資金、強盗事件で一緒に人質になった謎の若いベンチャー企業経営者の関わり、依頼人の支店長の失踪、腐れ縁の新宿警察署警部補との丁々発止、探偵事務所のビル取り壊しによる移転交渉と連絡先不明の隣部屋の写真家などなど。
マーローと同様、一人称で語られていくストーリーなので、登場人物が多くても会って話しを聞いているのは常に誰か一人だけですので、混乱することがなく次々とやっかいごとが降りかかってきても順序よくこなれていきます。
そして最後には、次作へつながりそうな終わり方をしていますので、また十数年後になるのかも知れませんが、楽しみに待つことにします。
いや~マーローは消え、スペンサーもいなくなり、スカダーは時の流れと共にすっかり老人になってしまい、頼みはこの探偵沢崎だけです。
そう言えば、文庫あとがきに、著者はギャビン・ライアル著の「ハリイ・マクシム少佐シリーズ」が気に入っているということが書かれていたので、今後はそちらも読んでみようと思っています。その文庫帯の推薦文を著者が書いていたりしています。ライアルの作品では有名な「深夜プラス1」だけは25年前に読んでいますから懐かしいです。
★★★
◇著者別読書感想(原尞)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1) アイラ・レヴィン
著者はアメリカの作家で、今回の「死の接吻(原題:A Kiss Before Dying、1953年)の他にも有名な「ローズマリーの赤ちゃん(1967年)」や「ブラジルから来た少年(1976年)」など大ヒット作を残した方で、いずれも原作を元に映画化されています。
著者の作品を読むのは今回が初めてですが、昨年、映画の「ブラジルから来た少年」を見ました。そちらもとても面白かったです。
この作品は今から68年も前に書かれたサスペンススリラー小説ですが、まったく古くささは感じられません。
貧しい出ながら容姿に恵まれた男性が、大企業オーナーで富豪の三女に狙いを付けてうまく関係を持ちますが、予想外の妊娠が発覚します。
まだお互い大学生同士ということもあり、このままデキちゃった結婚をすると、風紀に厳しい父親から絶縁されかねないと判断し、殺人に手を染め、さらにその上の姉の次女に乗り換え、さらにはその上の長女へと、、、
うーこれ以上は書けません。
とにかく、発刊の時期や時代背景はなにも知らずに読んでいたので、現代の小説か?ぐらいに思っていました。それほど新鮮で素晴らしい内容です。
その中で、その主人公とも言える犯人の男性が、大学に入る前に陸軍に所属していた時、太平洋戦争で日本軍兵士を目の前で殺した回想シーンが出てきますので、「あ、これは70年も前の物語なんだ」と感じた次第です。
著者にとってはこの作品がデビューの長編小説で、いきなり著名なエドガー賞処女長編賞を受賞します。
その後の活躍は上記に書いたとおりで作品数は少ないものの、出せば世界的なベストセラーという才能のある方で、今後他の作品も読みたいと思います。
★★★
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現役時代、人材ビジネス業界に長くいたので、多いときは1日10名以上の面接を毎日する機会があり、さらに慣れていると言うことで人事部に頼まれ、新卒や中途採用の正社員や契約社員の面接をする機会が多くありました。
さらにこれは面接とは違いますが、年2回、社員の人事考課で多くの社員面談をする機会もあり、人との面接、面談をこなしてきた数は国内有数かも知れません。
おかげで人を見る能力は鍛えられました。
そうした面接の中でも社員採用の場合は、あまり履歴書は見ないで、軽い世間話をしながら人となりを見ることに重きを置いていました。
新卒の場合は、一般的によく言われる「地頭」重視ではなく、「やる気」「本気度」「可能性」「誠実性」「礼儀やマナー」などを、中途採用の場合は「誠実性」「過去職の退職理由」「理想の生き方」「やりたい仕事」などをメインに聞いていました。
そして、その中で世間話の一環でよく聞いたのが「最近どういう本を読みましたか?」という質問。
どういう志向の人なのか、なにに興味を持っているのかをサラリと聞くためでもあります。
この質問にすぐに答えられる人は意外と少なく、しばらくジッと考えたすえ「少年ジャンプです」とマジ顔で答えた新卒で就活中の最高学府の学生さんもいました。
よくある無難な答えとして「村上春樹をよく読みます」とか「宮部みゆきの火車です」と、軽めの小説をひねり出してくる人が多かったです。
残念ながら「イワン・ツルゲーネフです」とか「ジェフリー・チョーサーです。チョーサーの作品はは長編も好きですが、詩がとても素敵だと思います」などと即座に答えてくれる人は、数百名の中でひとりもいませんでした。
読書好きな人なら答えはすぐに出てくるでしょうけど、採用面接ともなれば「思想や宗教本ではなく無難なモノを選んで答えた方が良さそうだな」と、読書家ではない人は、「ハテ、前に本を読んだのはいつだっけ?大学の教科書じゃダメだろうな?うーんどうしよう」という感じですぐには返答が返ってきません。
しかし、この「愛読書は?」的な質問は、昨今では採用面接ではダメなんですってね。知りませんでした。
少なくとも私がその手の質問をしていたのは、15年以上前のことですから許してもらえるでしょう。
採用面接でNG質問「愛読書は?」急増、巣ごもりで「読書が趣味」の高校生増え(読売新聞)
「愛読書は?」。企業の採用選考の面接では、能力や適性に関係がない質問だとして「NG」とされるが、滋賀県教育委員会の高校生対象の独自調査で、愛読書を尋ねた事例が昨年度は前年度の3倍近くに増えたことがわかった。 中略 採用側が能力や適性に関係ない事柄を質問することは就職差別につながる恐れがある。厚生労働省はホームページで、両親の仕事などの「家族」、愛読書や尊敬する人物などの「思想信条」に関することを不適切な質問として例示 |
ということらしいです。
「愛読書」は「思想信条」に影響するらしいけど「最近読んだ本」はどうなのでしょう?やっぱり返答によっては「思想信条」に関わったり、「能力や適性に関係がない質問」とされるのでしょうか。
私は、履歴書に書いてあることに関連した質問をしても、あらかじめ無難でお利口さんの返答を用意しているのはわかりきっているので、それとは関係がない「最近読んだ本」を世間話的に聞くことで、「予期しないことへの対応力」や「軽い雑談的な話しをして緊張を解いてあげよう」というつもりなんですが、返答次第では「愛読書」と同様「思想信条」に関することになるのかも知れません。
しかし、特に履歴書の中に「趣味:読書」と書いてあれば、どういう分野(人文科学とか外国語とか歴史とかビジネス書とか古典小説とか)が好きなのかを面接官が知りたいと思うのは普通のことだと思います。しかし厳密に言うとそれすら「能力や適性に関係がない質問」としてダメなんでしょうね。
なにかそれは違うような気がしますけど、最近読んだ書籍によって、「彼の思想は危険かも」「彼女の趣向はやっかいそう」という判断につながりかねないとも言えませんから難しいものです。一般的に人事部って企業の中でも一番保守的な考えをする人が多いセクションですから。
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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) 森絵都
2006年上半期の直木賞を受賞した短篇小説集です。短篇のタイトルは「器を探して」「 犬の散歩」「守護神」「鐘の音」「ジェネレーションX」「風に舞いあがるビニールシート」の6篇です。
著者の作品は過去に「カラフル」(1998年)と「永遠の出口」(2003年)の2作を読んでいます。
さすが賞を得るだけあってどれもおもしろく良い短篇小説でした。
その中でも個人的に一番気に入ったのは4つめの「鐘の音」で、これは仏像を彫る仏師になろうと美大までいき、そこでの評価も高かったのにかかわらず、自己葛藤で満足ができず、悩んだ結果、古い仏像を修復する仏像修復師に弟子入りした男が主人公です。
こうした仏師や仏像修復師の仕事って一般的には馴染みがない世界で、こうした小説の世界で初めて知ることができ、興味をそそられます。
師匠の元で仏像修復を続けていると、あるとき、珍しい不空羂索(ふくうけんじゃく)観音像の修復をすることになります。
こうした仏像にも様々な宗派や形態があることすらあまり知りませんでした。
主人公が修復することになった古い仏像にはなにか違和感がつきまといますが、なぜか強く引き寄せられるものがあり、それが結果的には全国の寺社を渡り歩く修復師を辞め、つきあっていた女性の元へ帰る結果となります。
人を寄せ付けず世渡りが下手な芸術家として苦悩する主人公と、「あらゆる衆生をもれなく救済する観音」の不空羂索観音との関係はとてもわかりやすくて良かったです。
★★★
◇著者別読書感想(森絵都)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
探偵刑事 (実業之日本社文庫) 南英男
作品中に、ネット検索なども出てきて、若い作家さんかと思っていたら、今年77歳のベテラン作家さんでした。今回初めて著作を手に取ったもので、失礼しました。
この作品は、2018年文庫書き下ろし作品で、タイトル通り、主人公は警視庁捜査1課の刑事でありながらも、昔お世話になった先輩刑事がリタイア後にやっていた探偵事務所の仕事を手伝っています。
厳密に言えば公務員法違反になりますが、探偵の方は一切報酬を受け取らず、休日や業務時間後におこなっています。
よく私立探偵の小説では、警察官のフリをして、相手に喋らせる手法や場面が出てきますが、こちらは現職の刑事だけあって、探偵としての聞き込みでも、ヤクザや反社組織に対して容赦なく、そりゃーずるい!て思わなくもなく。
警察庁の監察官は、警察官の不正がないかを調べますが、意外なことに、主任監察官が部下の監察官に対し疑いを持ち、その証拠を主人公に密かにつかんで欲しいと頼まれます。
しかし、その疑惑の対象となった監察官は、主人公の目の前で鮮やかに拉致されてしまい、その後他殺体として発見されます。
同時に、元々パートナーと共に担当している4年前の未解決事件、ジャーナリストが殺害された捜査をしつつ、探偵の仕事として売春組織に軟禁されている女子大生を事件化せずに救出と、読んでいても、話題があちこちに飛んでいき追うのがたいへんです。
でも、あまり危機というか、こうした小説ではつきものの主人公が奈落に落とされるようなことはなく、理解ある上司やコンビを組むパートナーにも恵まれ、八面六臂の活躍は読んでいてスカッとします。
一箇所、明らかなミスを発見。プロの校正者に出していないの丸わかりです。
86ページ「溝口が数人のホステスに見送られて」と「溝口が気に入ったホステスを」はいずれも「手島が・・」の誤り。溝口はの前のページでその1時間前にひとりで店を後にしています。
こうした安易なミスは、通常の雑誌掲載→単行本→文庫では、多くのプロの目がチェックしているのでまず起きませんが、書き下ろしの場合は経費削減?のためか、校正が不十分で起きるのでしょう。編集者の力量がなかったとも言えます。
それはさておき、ちょっとうまくいき過ぎてスリルはないものの、おもしろく読めましたので、著者の他の小説も読んでみようと思いました。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
桶川ストーカー殺人事件―遺言―(新潮文庫) 清水潔
前に読んだ「足利事件」を追ったノンフィクション「殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―」を読んで、事件記者としての厳しさと醍醐味を味わえたので、こちらのノンフィクションも読んでみました。
202年12月前半の読書と感想(殺人犯はそこにいる)
多くの人が衝撃を受けた「桶川ストーカー事件」ですが、私も当時の新聞やテレビで、「オミズ商売していた綺麗な女子大生がストーカーに襲われた」ぐらいにしか記憶は残っていませんでした。
事件が起きたのは今から22年前の1999年で、埼玉の桶川市で起きました。
ややこしかったのは、ストーカーとして疑われていた男性と、駅前で女性を刺した犯人の特徴がまったく一致せず、警察内部でも混乱していた様子がうかがえました。
しかし、この本でわかったのは、事前にストーカー相談をし、告訴状まで出していたに関わらず、警察はまったく相手にせず、告訴状も面倒なので、警察内部で勝手に被害届に偽造していたことが判明します。
そうすると警察としては、必死にそうした怠慢を隠蔽するため、被害者の女性を風俗で働く派手好き女性というイメージを拡げていきます。
実際は友人に頼まれ2週間だけスナックでアルバイトをしたことがあるだけで、事件当日身につけていたものに大事に使い古された腕時計やバッグがブランド物だったというだけでした。
また告訴状に書かれていたストーカー男性を検挙すると、それまでの警察の対応が間違っていたことになるので、そのストーカーを探すことはせず、また殺人犯に対する捜査にも消極的な姿勢が見られました。
そうした中で、当時写真週刊誌「FOCUS」の記者だった著者が、被害者の友人や家族などに接触し、信頼を得て犯人捜しを始めますが、警察権力なしで事件を追いかける難しさ、根気と熱意、編集部との関係など、今さらながらドキドキしてしまいます。
しかしこの本を読んで何度もしつこいほど繰り返して書かれていたことが、「ここまで警察組織は腐っている!?」ということです。
今でも殺人事件の記者会見の場で、亡くなった被害者の方への哀悼や尊厳もなく、捜査本部の警察官がニヤニヤしながら集まった記者に対して「厳しい質問のないようによろしく」とわけのわからないことを最初に言い、被害者が刺された場所を記者に聞かれて、「脇腹かな」と満面の笑みで答える捜査1課長代理や上尾署長(いずれも当時)の動画がyoutubeに残っていますが、元々精神的におかしい人達なのか、別世界の人としか思えません。あるいは警察組織に長くいるとこういう性格になってしまうのでしょうか。
ともかく、こうした警察権力の闇、もしかすると加害者側となんらかの関係があって隠し通したかった反社会勢力と警察との関係をあぶり出そうとする命知らず?のジャーナリストがいて、それを警察発表しか載せられない御用記者クラブのしがらみがない雑誌社がまだあった(FOCUSは休刊しましたが)ということは少し救われた思いです。
そしてこうした警察の怠慢や不祥事を国会で野党議員が取り上げ、この事件の反省から、ストーカー規制法ができたのは有名です。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
白い声〈上〉〈下〉 (新潮文庫) 伊集院静
2002年に単行本、2005年に文庫化された恋愛長編小説です。
ただ先に言っておくと恋愛と言うにはあまりにも身勝手で節操のない色情ダメ男と、幼いときから規律正しいクリスチャンとして育てられた若い女性との一方的な恋愛ですので、あまり気分が良い恋愛物ではありません。
小説の舞台となるのは、金沢の街と、スペイン北部のバルセロナからサンティアゴ巡礼の道などで、スペイン大好きな人には恋愛部分はすっ飛ばし、紀行小説としても楽しめるかもしれません。
主人公は、父親の仕事の関係で中学生の頃までスペインで過ごした後、訳あって叔母が住む金沢で高校生活を送っている女性。
もうひとりの主人公は、能登半島で極貧生活を送ったあと、20歳でベストセラー小説を書いて一躍作家になったものの、様々な鬱積にまみれ、その後20年間次作が書けず、ジゴロというか女のヒモの生活を続けている男性。
暴力と血にまみれ、女にだらしなく、口だけは巧いこういうワル男はモテるのだ!と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、その男のことを知る人は皆「あの男には近づかない方が良い」と言っても、「あの人はそんな人ではありません」と繰り返し、なすがままにされ、それで満足を得る聖女のような主人公もちょっとあり得そうもない感じです。
著者らしい小説と言えばそうなのかも知れませんが、個人的には花村萬月氏の小説と、白川道氏の小説と、宮本輝氏の小説を足して3で割ったような、なにか中途半端な感じがしました。
軟弱でモテない男性にとっては夢のような物語でしょうが、恋愛部分はただただ男の願望だけが詰め込まれていてつまらないものでした。
なお、この小説は2011年にも一度読んで感想も書いていました。10年前とは言え、後になって気がつくとは、歳のせいにしたくないけど、毎度のことながらことながらトホホです。
★☆☆
著者別読書感想(伊集院静)
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沖で待つ (文春文庫) 絲山秋子
著者は1966年生まれで、大学卒業後、総合職として大手住宅設備機器メーカーの営業職を経験したのち、2003年に作家デビューされた方です。
その後いくつか文学賞を受賞されましたが、2005年にこの作品で芥川賞を受賞されています。
そのタイトルから、漁師さんの恋愛もの?ぐらいの想像しかなかったのですが、まったく違い、著者の住宅設備機器会社での仕事をメインに、恋愛とは違う新卒同期の友情?がテーマになっている話しです。
この文庫は、その受賞作と、やはり著者が仕事を辞めた後の経験を下敷きにしたと思われる「勤労感謝の日」と、すべてひらがなとカタカナで書かれた児童文学的な「みなみのしまのぶんたろう」の短篇とセットになっています。
どの作品も、なにかとても新鮮な感じで、面白く読めました。さすが芥川賞!です。正直、過去に読んだ中ではあまり面白いと思った芥川賞作品ってないのですけどね、、、
私も卒業後に入社した会社で、転勤が何度かあり、まったく知らない街にひとり住み、営業の仕事で地元の人と交渉する仕事をしてきたという共通点があり、主人公の心の中がよくわかります。
ただ、私の場合は、著者とは違い、楽観的で住めば都、どこへ行っても、その街が好きになり、このままずっと住んでも良いなと思いながら、数年後には後ろ髪を引かれつつ次の職場へ転勤していくという青春時代を送り、仕事も生活も人生でもっとも充実していた時期かも知れません。
タイトルは、主人公の同期の男性が書いた下手な詩の中に出てくる愛の言葉で、涙を誘う展開となっていきます。
★★★
◇著者別読書感想(絲山秋子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
瑕疵借り (講談社文庫) 松岡圭祐
2018年に単行本と文庫が同時に発売されたという珍しいパターンの作品です。著者としては先に単行本で回収したいでしょうけど、読者側としては大いに助かります。
著者の作品は「千里眼シリーズ」や催眠、マジックなどというものが多く、それらもいくつかは読みましたが、個人的には最近増えている歴史時代小説が気に入っています。
今回は、そのどちらでもなく、不動産の賃貸を借りている人が、孤独死で亡くなったあとしばらく発見されなかったり、部屋で自殺や事件が起きて亡くなった場合、その部屋や建物が事故物件扱いされることで起きる様々な「心理的瑕疵」がテーマです。
不動産業で不文律とされている「瑕疵借り」とは、そうした事故が起きた部屋に、誰かを一時的に住まわせることで、周囲の住人の「心理的瑕疵」を和らげたり、新たな入居者への重要事項説明で「瑕疵」の存在を早々に省いてしまおうとするものです。
私も読んで初めて知りましたが、お笑い芸人さんが笑いを取るためでもなければ、そうした瑕疵があるアパートやマンションに喜んで入居する人は少ないでしょうし、その部屋だけでなく、建物全体に影響することから、家主側からすればできるだけ早くそのような瑕疵の説明を終わらせたいということもわかります。
ただこの小説において事故物件に入居する主人公は、単にそういう家主の損得の意向を受けたものだけではなく、借主が死に至った謎や真の理由を解明し、瑕疵物件の「心理的瑕疵」にかかわる大きな不安を一掃することが目的です。そういう意味では、謎解きの探偵に近いものがあるとも言えます。
瑕疵物件と直接関係はないですが、偶然今月「高齢者の賃貸入居拒否問題と空き家 2021/10/9(土)」という記事を書いています。
不動産の話しは、身近でありながら、知らないことが数多くあり、調べてみると興味がわいてきます。
それに加えて、こうした小説を読むと、さらに深掘りして考えてみたいなと思えてきます。
小説では賃貸の事故物件が主ですが、分譲住宅においても当然事故物件は多くあり、これからも持ち家の高齢単身者の孤独死や自殺が全国各地で発生していきそうです。
というのも、自殺者の報道ではいじめなどを苦にした10代ばかりが取り上げられますが、実は年代層でみると60歳以上の自殺者が突出して多く、最近まで年間1万人を超えていました。
そうしたことも踏まえてこの小説の続編も期待したいところです。
★★☆
著者別読書感想(松岡圭祐)
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熊野古道殺人事件 (中公文庫) 内田康夫
文庫あとがきで知りましたが、この浅見光彦シリーズの長編ミステリーは、主人公が違う短篇2篇を組み合わせ、さらに新たに取材をした時に考えついたことを加えた特殊なものということです。
実はこの文庫は、テレビで浅見光彦シリーズのドラマを見て興味を持ち、2012年に一度読んでいましたが、なぜか感想を書いてなく、あらためて読んでみました。
1991年にノベルスとして初出ということですから、30年前のことで、文庫化されたのは1995年です。浅見光彦シリーズの長編としては75番目ということになります。
シリーズの特徴でもある「ご当地紀行小説」のひとつですが、今回はタイトルでもわかるように、巡礼者が今も多い熊野古道や、古い時代におこなわれていた宗教行事、補陀落渡海(ふだらくとかい)、人形供養の淡嶋神社、女の怖い情念を描いた安珍・清姫伝説など、紀州和歌山の見所が詰め込まれています。
登場人物はちょっとややこしく、主人公の浅見光彦、ワトソン役の作家内田康夫、その内田の旧友で大学教授とその妻、その教授の下で助手を務める男とその妻、研究室の学生達、あとはいつもの地元警察官などです。
そう言えば、シリーズにはつきものの、浅見光彦に好意を寄せる美しいヒロインがこの小説に限っては出てきません。
その代わり、いつもは裏方の作家内田康夫氏が光彦よりも先に事件の不可解な謎を知ったり、光彦の愛車ソアラを運転して大事故に遭うなど大活躍します。
熊野詣と言えば常道の熊野三山(新宮市の熊野速玉大社、田辺市の熊野本宮大社、那智勝浦町の熊野那智大社)が小説の舞台としては全然出てきませんが、これらは当たり前過ぎてわざと外したのかな?と思います。
近いうちに、熊野詣をしたい気持ちになりました。
★★☆
著者別読書感想(内田康夫)
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東京消滅 - 介護破綻と地方移住 (中公新書) 増田寛也
以前「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」(2014年刊)を読んでなかなか面白かったので、その続編とも言える本書(2015年刊)を読んでみました。
5月前半の読書と感想、書評(地方消滅 東京一極集中が招く人口急減)
2014年と2015年の2年間に3冊の書籍を一気に出されていますが、これはあとになってわかりましたが、2016年の東京都知事選に出るために「東京のことをこれだけ考えている」というものだった?とも思えます。
しかしその都知事選挙では自公などの推薦を受け、当時の安倍首相からもビデオメッセージをもらいながら小池氏に大差で惨敗しました。
ま、それはさておき、「地方消滅」と同様、様々な公表データを元にした細かな分析が延々と続きますので、老眼の入った眼にはつらく厳しい新書です。
そして著者の主張は、「日本版CCRC」と「東京圏から地方への移住政策」の二つです。
CCRCは、70年代のアメリカで始まった「高齢者が元気なうちに終末まで過ごす地域コミッティに参加する生活共同体」のことで、「Continuing Care Retirement Community」(直訳:継続ケア退職コミュニティ)の略です。
その日本版CCRCは、地方移住でも現在住んでいる地域でもどちらも良いのですが、大きな団地などによくある住民会理事がその団地の修繕計画や保安など様々なことを決めていくようなことを介護まで進め、地域で元気な住人(高齢者含む)が主体となって介護や援助が必要な高齢者の面倒を見ていき、自分が介護や援助が必要になったときには元気な人に世話を受けることになります。
アメリカでは、そうした高齢者ばかりが住む地域があり、リタイアした人達が楽しく余生を過ごす環境が整っています。
「都市から地方への移住」は、本書が書かれた以降にコロナ禍が起き、リモートワークが可能となった若い人の地方移住が流行ってきましたが、以前から言われてきたことです。
本書では、データを分析し、この先2040年頃にどこの地方なら医療や介護に余裕があるか?という具体的な地域まで記載されています。移住をしたいが場所は決まっていないと言う人には参考になりそうです。
国や自治体が進める移住政策に関して、明治時代から戦後にかけて南米やハワイ、満州、北朝鮮など様々な形で多くの国民を海外移住させたり地上の楽園と偽って帰還させ、また明治時代には北海道の奥地に国内移住を進めてきました。
これらは一種の棄民政策で、悲惨な結果になったことが多く、国や役人が言う移住政策など「まったく信用ができない!」というのが個人的な見解です。
国や自治体に頼らず、自分が住みたい場所をいくつも見て回り、お試しで少し住んでみて、それで決めるのならば問題はありませんが、少しでも国や役所が顔をのぞかせた瞬間、嫌悪する人はまだ多いのではないでしょうか。
それはともかく、そうした移住をいう人は限って「自分は生涯東京に在住が基本」です。それは、巨大企業出身の評論家などが「学生は大手ばかりに目を向けず、中小、ベンチャー企業に就職すべし!」というがごとしです。
★☆☆
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最後の命 (講談社文庫) 中村文則
2007年に単行本、2010年に文庫化された小説で、2014年には松本准平監督、柳楽優弥主演で映画も公開されています、見ていませんが。
どんなあらすじなのか知らずに読み始めましたが、一人称で語られる仕事を辞めたばかりの男性主人公が事件に巻き込まれていくのをドキドキしながら読みました。
最初にこの本のタイトルを見たとき、筒井康隆著「最後の伝令」をふと思い出しましたが、内容は全然違っていて、シリアスでミステリアスな自己精神分析チック小説でした。
子供の時に友人と一緒に見てしまったことがトラウマとなっていてその友人とは長く疎遠にしていたところ、突然連絡が来て会うところから物語は進んでいきます。
そのトラウマというのが思わせぶりでなかなか出てこないのでイラッとしますが、それでも同じ男性として主人公に共感したり感情移入したりしながら読めてなかなかおもしろかったです。
ただ、小説やドラマでは当たり前になっている、偶然で事故や事件が起きて・・・というのはどうもリアリティがなさ過ぎて、そういう箇所だけは遠い場所から冷ややかに眺めているという感情が出てきます。
自分にも小説の主人公のように人の生き死にではないものの、子供の頃に受けた強烈なトラウマがいくつかあり、50年以上経った今でも頭をよぎることがありますが、それがその後の人生に影響を受けたということはたぶんなく良かったと思います。
★★☆
著者別読書感想(中村文則)
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