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民王(文春文庫) 池井戸潤

2010年単行本、2013年に文庫化された日本を舞台にし、政治を扱ったコメディSF小説です。

漢字が読めない総理大臣とか、理想を追い求めて政治家になったものの、政治力学と利権誘導などにまみれていく中で変わっていく政治家などが面白おかしく書かれています。

さらにSF要素として、アメリカの製薬会社で密かに開発された意識を別人と変換できる技術がテロ組織に漏洩して、総理大臣とそのバカ息子の意識が入れ替わるというとんでもない内容です。

著者の小説では、リコール隠しの「空飛ぶタイヤ」や、ゼネコンの談合問題を描いた「鉄の骨」、不良債権まみれの都市銀行が舞台の「果つる底なき」など硬派なものが好きですが、こうしたおちゃらけた小説も書いていたとはちょっと意外な感じがしました。

感想としては、ちょっとふざけ過ぎということで、評価は厳しいものとなります。それは上記にも書いたように「硬派なビジネス系小説」を書く(書いて欲しい)作家というイメージが私の中にはあり、それとの落差が許容できなかったためと思われます。

銀行員出身の著者にしてみれば、政治を扱うことと、それをコメディに仕立てるのはおそらくチャレンジだったと思いますが、空回りしてしまったようです。

★☆☆

著者別読書感想(池井戸潤)

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震災列島(講談社文庫) 石黒耀

以前、デビュー作の霧島火山噴火を描いた「死都日本」(2002年)を読んだことがあるパニック系?小説を得意とする著者の第2作目がこの「震災列島」です。

本職は内科医ということで、北杜夫氏、渡辺淳一氏、北村薫氏、帚木蓬生氏、久坂部羊氏、海堂尊氏、知念実希人氏、夏川草介氏など、才能ある人はなにをやってもできちゃうものです。

本著は2004年に単行本として、2010年に文庫化されています。つまりここが重要なんですが東日本大震災が起きるずっと前に、発生場所こそ違いますが、大地震と大きな津波、そして原発事故を予言していた小説です。

内容は、地面に穴を掘る掘削業者の主人公は、東海地震が起きれば、名古屋市内でも名港に近い自宅周辺では津波が到達するだろうと思っています。

そしてその住宅地には暴力団組織のフロント企業が進出してきて、東海地震にかこつけて地上げをしようと狙っています。

そして住民に対する嫌がらせが始まり、住民組合の会長をやっている主人公の父親と一緒にフロント企業へ苦情を申し立てにいき一悶着を起こします。すると主人公の娘を誘拐し重傷を負わせ、自殺へと追い込む暴挙に出てきます。

それに対して主人公は、暴力ではかなわないので、地震や地盤の知識を生かし、さらに調べて東海地震と東南海地震が必ず連動して起きるだろうことを予測して、暴力団を一網打尽にすることを計画します。

というような流れですが、個人の復讐劇だけではなく、危険な場所に立地している静岡の浜岡原発で地震による冷却水に問題が発生して建屋が水素爆発したり、管理棟の免震構造が不十分なことなど、東日本大地震を完全に予言していたと言っても良い内容です。

さらに本書の中では、政府が東海地震が起きると世界中から日本売りが殺到することを予測して、日銀とあらかじめ計画を立て非常事態が起きた際には国民の資産をすべて一時凍結する施策を練っていきます。

それだけに内容豊富で、文庫としては約2冊分になる617ページの長編です。

★★☆

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神と罌粟(ハヤカワ文庫) ティム・ベイカー

本著はオーストラリア人(今はフランスに在住)の著者の2作目の長編小説で、2018年に発刊され、日本語翻訳版は2020年に出版されました。

タイトルにある罌粟は「ケシ」と読みますが、医療用のモルヒネの原料として使われる一方、ヘロインなど麻薬を作る原料を指すことが多いです。原題は「CITY WITHOUT STARS」で直訳すると「星のない街」です。

舞台は2000年頃、アメリカとの国境沿いにあるメキシコの架空の街です。全編メキシコが舞台の日本語翻訳小説というのは珍しいです。今まで読んだことはなかったような気がします。

そこでは経済特区の工場が建ち並び、多くの貧しい女性労働者が、中国との激しい価格競争のために低賃金で雇われています。

そしてその街では過去から800名を超える女性が誘拐され殺されるという事件が連続して発生していますが、なぜか警察の捜査はおざなりで犯人逮捕には至っていません。

主人公と言えるのは、労働組合の女性活動家(オルグ)、女性フォトジャーナリスト、他の地区から移動してこの連続女性誘拐殺人事件の捜査にあたる刑事、犯罪組織カルテルの首領、幼い頃に虐待を受けていたカトリック教会の神父の5人です。

それぞれが語り手としてランダムに出てきて、さらに登場人物がざっと30人ぐらいいますので、ついていくのが結構しんどかったです。

さらにメキシコ人の名前や地名が日本人にあまり馴染みがないこともあってなかなか覚えられず、誰が誰だった?と、半分ぐらいまでは「登場人物一覧」と首っ引き状態でした。

警察組織や上司も腐敗しているようで、そのためあまり乗り気ではない相棒と二人だけで謎の解明と犯人逮捕へ突き進む刑事はわかりやすい構図なので、つい感情移入していきます。

その周囲では聖職者の不正と犯罪組織カルテルの結びつき、さらにはアメリカの麻薬捜査機関が出てきて邪魔をしたり、低賃金にあえぐ女性労働者を組織化し、無謀にも工場の中でストライキを画策しようとする活動家など、様々な話題がとっちらかってしまい、これほどいっぱい詰め込む必要があるの?という感じもします。

文庫としては多い510ページの長編で、登場人物や地名の難しさもあり、読むのに結構時間を要しましたが、日本とはあまり縁のないメキシコの国内事情などが少しわかって(20年以上前の架空の話ですが)それなりに楽しめました。

★★☆

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ブラフマンの埋葬(講談社文庫) 小川洋子

少し前に読んだ「ミーナの行進」(2006年)の2年前に発刊された作品で2004年に単行本、2007年に文庫化されています。

「ミーナの行進」が自分の子供時代を彷彿させるというかヒントにしたような内容だったのに対し、この著作は見事なまでの想像だけで創作したような作品感があります。

2022年4月後半の読書と感想、書評(ミーナの行進)

しかも女性作家の小説に多い(というかほとんどがそう)自分を投影した女性を主人公にするのではなく、若い男性が主人公の話で、男性独特の感情の機微がうまく表現されています。

国内の辺鄙な場所にある資産家の大きな別荘を改築して、芸術家達が自由に使える「芸術家の家」の管理人の青年と、あるとき青年の元に怪我をして助けを求めてきた子犬のような謎の生物「ブラフマン」との出会いと別れまでの短い物語です。

その生き物は全身毛に覆われていて肉球もあり子犬のようですが、手足の爪のあいだに水かきがあり、池に連れて行くと喜々として飛び込んで泳ぐという、河童の子供か?と思ってしまいました。河童は全身が毛に覆われているとは思えませんが、私は見たことがないので。

青年のひとり語りで、町にある雑貨屋の娘への淡い想いや、古くから芸術家の家を作業場としている墓碑銘を専門的に彫る石工師との友情、生きた動物の毛アレルギーの手編み作家の高齢女性との諍いなどとともに、その町ができた経緯などがうまく物語に散りばめられてとても面白かったです。

この著作を入れてまだ3作目ですので、これからもっと読んでみたいと思ってます。

★★★

著者別読書感想(小川洋子)

【関連リンク】
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師
 10月前半 サラバ(上)(中)(下)、ペスト、団塊の秋

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