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写楽 閉じた国の幻 (新潮文庫)(上)(下) 島田 荘司

数多くの推理小説やエッセイ、ノンフィクションまで出している島田荘司氏の2010年の作品(文庫は2013年)です。私は過去に御手洗潔シリーズの「眩暈」を読んでいます。

写楽と言えば浮世絵師として日本人はもちろん、世界でもレンブラントやベラスケスと並ぶ「世界三大肖像画家」として有名ですが、謎が多い人物で、本名や生没年月日、出生地などはわかっていません。

それだけに推理小説などでは格好のテーマになり、皆川博子氏原作の「写楽」は篠田正浩監督により2009年に映画化もされています。

写楽が残したとされる作品は、江戸中期1794年から翌年にかけてわずか10ヶ月間だけで145点の錦絵を描いた(平均2日に1作)とされ、突然現れ、そして忽然と跡形もなく消えてしまいました。

「描いた」と書きましたが、写楽の浮世絵は版画なので、その下絵など原画は見つかっていません。

Sharaku_Otani_Oniji.jpg当時江戸で人気が高かった葛飾北斎や喜多川歌麿、作家十返舎一九などとも活躍した年代がかぶり、それら浮世絵師や戯作者が一時だけ別名で描いたものではないかという噂もありますが、現代では能役者斎藤十郎兵衛だったという説が有力となっています。

上記の映画「写楽」では大道芸人が書いたさらし首に感動した版元が、役者絵の浮世絵を描かせたという設定になっています。

しかしそれらの説にもいくつか錯誤や無理な解釈があるようで、「写楽は俺だ」と名乗っても別段差し障りがないはずなのに、そうしなかったのはどうしてか?

多くの人なら名誉なことなのでそうするし、例え本人が言わなくても、その周囲にいた人達が噂をしたり書き記しても不思議ではありません。しかし写楽の正体は固く隠され、作品を出した10ヶ月間しかその名前は登場してこないのです。

この小説では浮世絵を研究する学者が主人公ですが、自分の不注意で子供を回転ドア事故で亡くしてしまい、それが元で元々すれ違いの多かった妻に家から追い出され、過去に出した北斎の論文本にもインチキ学者とケチがつけられ、自殺を考えるまで追い詰められていきます。

ストーリーに幅を持たせるためなのか、本題の写楽とは関係のないこの私生活に起きる不幸が、どうも話しをとっ散らかしてしまっていて、しかもそれに関する話しがやたらと長いのが少し残念な気がしますが、その子供の事故が元となり、大学教授との出会いや江戸時代から脈々と続く日本とオランダとの関係を演出するため仕方がなかったのでしょう。

その主人公と知り合った大学教授、出版社の担当者などが協力し合ってその謎に近づいていくわけですが、もしかすると写楽研究がひっくり返るのでは?と思うような、現実に存在する新たな証拠を出してその推理を導き出しています。

そして著者渾身の結論を導き出した後、まだ今後の展開を匂わせる終わり方で、おそらくいつかその推理を補強する新たな証拠を積み上げた続編が書かれるのでしょう。それも楽しみです。

高層ビルに使われる回転ドアと写楽の浮世絵の関係など、想像を超えた展開と、日本人としてあまり認めたくない斬新な解釈と驚嘆の事実など、これは写楽に興味があるなしにかかわらず、華やかだった江戸庶民文化を知る意味でも、ぜひ多くの人にお勧めしたい作品です。

著者別読書感想(島田荘司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

なぜ日本でiPhoneが生まれなかったのか? 上村輝之

著者上村氏は弁理士の他、様々な肩書きを持つ方で、こういう有能で多才な人はベタな商売までもお上手という見本のようなアドバルーン的な本です。いや皮肉ではなく感心してのことです。

内容は大きく前半部と後半部に分かれていて、前半部分はもの作りに重点を置いてきた日本メーカーの没落と、新しい価値観を創造してきたアップルやダイソンなどの違いを丁寧に解説。

そんな当たり前のこと知ってら!という方も、あらためて整理をしながら読んでおくと、後半主にページを割いて書かれている複雑なTRIZ(トゥリーズ)のことが素晴らしく思えてくるところがミソです。

旧ソ連で提唱され、今では多くの企業で採用されているTRIZとは、直訳すると発明的問題解決理論(なんのこっちゃ)のことですが、簡単に言えば思考理論の一種で、それを学ぶと創造的能力が向上し、企業にとっては競争力向上につながるというものらしいです。

クリティカルシンキングやロジカルシンキングを学んで実践したけれど、うまくいかず挫折した人にどうでしょうか。ちょうどリンゴダイエットやバナナダイエットに失敗した人にキウイダイエットを紹介するようなものかも知れません(違う)。

いま成功している企業もまた、多くの失敗をしているのが普通で、その成功すら10年後はどうなっているかわからない先行きが不透明で、いとも簡単にひっくり返される激しい企業競争の世界なので、これが正解!というものはどこにもないのですが、新興宗教と似ていてこのような多才な人が言うことなら信じてみようかと思わせるところがすごいです。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

夕映え天使 (新潮文庫) 浅田次郎

浅田次郎氏のお洒落な大人の感性を試されるような6編を収めた短編集です。それぞれのタイトルは、1.夕映え天使、2.切符、3.特別な日、4.琥珀、5.丘の上の白い家、6.樹海の人となっています。

そう言えば50冊以上持っている浅田次郎氏の小説を読むのは久しぶりだなと思って調べてみると2011年9月に「ハッピー・リタイアメント」を読んで以来、約2年ぶりのことです。なぜか少しあいだが空いてしまいました。

ただ浅田次郎氏の作品は文庫化されると内容やタイトルに関係なくすぐに買ってしまうので、昨年(2012年)、書店の文庫新刊コーナーで平積みされていた徳間文庫の「姫椿」を買ったら、2003年に新刊文庫で購入した文春文庫の「姫椿」と同じで(そりゃそうだ)、なにか詐欺に遭ったような気分でした。9年前に一度文庫化された本を新刊として売るなよまったく、出版社の策略に見事引っかかりました。

新装刊の場合だと、奥付の発刊日を見るとその作品が新しいものかどうかが判断付きますが、出版社が違う場合はそれではわかりません。売れっ子の作品は、そのように違う出版社から発刊されると新刊扱いになるので気をつけないといけません。

タイトルにもなっている「夕映え天使」は、ワケありの男女、と言ってもどこにでもいそうな中年男女の機微に触れるような味わい深い作品で、「切符」は親に捨てられた子供と祖父との暖かな日常に起きた出来事にまつわる話し、「特別な日」は定年退職の当日、本当なら自分が役員になれると思っていたのに、そうはならなかった本当の理由が終盤一気にわかるという浅田氏としては異色のSFチックな話しです。

「琥珀」は定年間近になって妻から離縁された刑事が、休暇でふと訪れた三陸の寂しい町で、時効間近の殺人事件の手配犯とバッタリ出くわすことになる話し、「丘の上の白い家」は貧しい家の少年とその仲間が出会った裕福な少女の思惑が引き起こした不幸な出来事で、いずれももう少し膨らませた内容で読みたいと思わせる秀作揃いです。

最後の「樹海の人」は少し趣が違っていて、浅田氏が自衛隊に入隊していた頃の出来事で、訓練のため富士山の樹海の中で1人取り残されサバイバル訓練をしていたときにふと現れた謎じみた男性のことを、自殺するために樹海に入ってきた自分の未来の姿ではないかという妄想じみた話し。

その訓練中に密かに持っていった本がトルーマン・カポーティの「ティファニーで朝食を」で、訓練から撤収する際、雨で濡れそびたその本を捨てていこうとしたら、謎の男性から持っていくよう渡されて、今でもちゃんと保管してある。

で、浅田氏が自衛隊に入隊したのは三島由紀夫が自衛隊で割腹自殺をしたことを機に決めたのは有名な話し。そして三島由紀夫が来日したカポーティと面会した後、「カポーティは自殺する」と予言していたという(結果は自殺したのは三島でカポーティは60才の時心臓発作で病死)。なにか連綿とした不思議なえにしを感じさせられます。

著者別読書感想(浅田次郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

純平、考え直せ 奥田英朗

2004年に「空中ブランコ」で直木賞を受賞している奥田氏の作品は、文庫になっている小説はほとんど読んでいます。この「純平、考え直せ」は2009年から2010年にかけて小説宝石に連載された作品ですが、4月末現在まだ文庫化はされていません。

著者の作品は昨年「オリンピックの身代金」を読みましたが、こちらはシリアスな小説で、1964年当時の高度成長まっただ中の日本を、浮かれたありきたりの視点ではなく、東京など大都市だけが繁栄し、東北の寒村など地方は貧しいまま置いていかれ、そこから出稼ぎに来ている肉体労働者と、贅沢で華やかな東京で暮らす人達とを対比をするやり方に感心しました。

この「純平、考え直せ」はユニークなタイトルですが、最近は映画にもなった朝井リョウ氏の「桐島、部活やめるってよ」(2010年2月刊)などもあり、こういう呼びかけるタイトルが流行ってきているのでしょうか。

主人公の純平は22才で新宿歌舞伎町を根城とするヤクザの見習い中。まだまだ下っ端で使いっ走りの身ながら、組員の半数は刑務所へ入っている中で、今まではどうにか無難にしのいできています。

ところが組同士の争いから、組の親分から抗争相手の幹部の命をとるため鉄砲玉として任命され、ようやく男を上げるときがきたと意気上がる中、なぜか周囲にいる人達からは心配され、そして様々な世話も焼かれ、あげくにはネット上にもその話しが掲載されてしまいます。

個人的には官僚やヤクザをヒーロー扱いするたぐいの話しは好かないのですが、そこは奥田氏の書いたものなので、不快感は感じずスラスラと読めます。

奥田流「サウスバウンド 」や「イン・ザ・プール 」などに共通するコメディタッチの軽いノリの小説です。

著者別読書感想(奥田英朗)


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