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「七音(どれみ)」「希星(きらら)」「火星(まあず)」「天響(てぃな)」など日本ではいわゆるキラキラネームというどうにも読み方が難しい(っていうか読めるわけない)名前が流行っているそうですが、今回はファーストネーム(名)ではなく、ラストネーム(姓)の話しです。

韓国では金、李、朴、崔、鄭の姓が圧倒的多数を占め、金姓は国民の21%以上、李姓も15%近くを占めています。同様に中国でも王と李の姓がどちらも全国民の7%以上を占め、それらの姓を持つ人の数はそれぞれ約9,000万人以上という多さです。

これらは元々姓の数が少なかったとだけではなく、姓を持つ歴史の長さが大きく影響しています。中国は世界でもっとも早くから姓を名乗った国で、それは今から5千年前にさかのぼるそうです。

つまり通常一夫一妻制の元では、一般的に夫婦が結婚後にはどちらかの姓を名乗り、片方の姓はその時点で消えてしまうことになります。

ある姓が他の姓より最初は少し多いだけでも、結婚して二つの姓がひとつの姓になっていけば、多い姓が少ない姓より残る確率が高くなり、それが数千年の単位で何百世代にわたって2つの姓が1つに集約されることが繰り返されるのです。

そうすると最初から比率の高かった姓が、少ない姓を圧倒していき、やがては数種類に固定してしまいます。

日本の場合、私が子供の頃は鈴木姓が一番多いと言われていましたが、現在は佐藤、鈴木、高橋の順で多い姓のベスト3です。

そして1位の佐藤姓が全体に占める割合は、金姓の21%や王姓の7%には遠く及ばず、30万種とも言われる日本の姓の中で、せいぜい1.5%ぐらいですので、日本では姓を名乗る歴史はまだまだ始まったばかりと言っていいでしょう。

日本で国民すべてに姓が必須になったのは明治8年からと言われていますからまだ138年ほどです。世代で言えば25年ごとに世代が変わっていくと仮定すれば、その138年間で新しく世代が作られたのは5~6世代ほどです。5000年と138年ではまったく比較しようがありません。

さて、30代から40代の頃には仕事関係や友人関係の結婚式に招かれることが多く、その時にしばしば思ったのは、「せっかく綺麗な苗字なのに、旦那のありふれた平凡な名前に変わってしまうのがもったいないな」です。

通常は結婚すると夫になる男性の姓になるケースが多いのですが、妻側の姓が例えばですが「白鳥」とか「清泉」「朝霧」「水流」のように割と珍しくしかも爽やかな姓だと、それがひとつ消えてしまうことがすごく残念な気がしました。

外国人が日本に帰化したり日本国籍を取得する場合、新たな姓を作ることがよくあります。特に日本国籍がないといろいろと不自由な芸能人やサッカーや相撲などスポーツ選手に多くみられます。

サッカー(元)選手では、三都主アレサンドロ(旧名Alessandro Santos)、ラモス瑠偉(旧名Ruy Gon*alves Ramos Sobrinho)、呂比須ワグナー(旧名Wagner Augusto Lopes)、相撲界では曙太郎(旧名Chad George Haaheo Rowan)、武蔵丸光洋(旧名Fiamalu Penitani)、高見山大五郎(旧名Jesse James Wailani Kuhaulua)、小錦八十吉(旧名Saleva'a Fuauli Atisano'e)、ラグビー界ではニールソン武蓮伝(旧名Brendan Neilson)、真羽闘力(旧名Feletiliki Mau)、野球界からもダルビッシュ有などなど。

こうした、新しく作られた姓が今後どのような変遷をたどっていくのか興味あるところですが、100年先はもちろん50年先のことも私には確かめようがないでしょう。

特にラモスとかニールソンとかカタカナの姓は極めて珍しいので、子孫はそれをどう感じとり、先の人生に生かしていくことになるのでしょう。

日本人の人口減と移民政策によって100年後にはカタカナの苗字が珍しくなっているかもしれませんね。

あと、姓が新しく作られるケースとして、捨て子など親が不明のまま児童養護施設に預けられた場合、仮の名前(姓名)を行政府の長が定め、その名前で育てられ、その後養子などで新たな養父母の姓に変わらなければ、幼少の頃に付けられた姓名をそのまま使うことになるようです。

外国人が日本で産んだ子は、届け出をしなければ国籍が得られません。しかし不法滞在の外国人の場合、届け出をすると自分が不法滞在者であることがバレ強制送還されるので届け出をしないケースが増えています。そういう子は義務教育の学校にも行けず、親からも邪魔扱いされ虐待されがちになってしまいます。

日明恩氏の小説「そして、警官は奔る」では、そういう子ども達を非合法で預かり、不法滞在の親が働いている間、子供の世話をしているボランティアに「羽川のぞみ」という女性が登場します。

なぜ非合法と知りつつ、そのような子どもの世話をするボランティアをおこなっているのか?と警官の主人公は疑問を感じますが、この女性、産まれてまもなく多摩川近くに捨てられているのを発見され、児童養護施設で育ったという過去がわかります。

つまり「羽田近くの多摩川で見つかり保護されたが、希望をもって生きて欲しい」という願いを込めて行政が付けた姓名と主人公は推測するのです。

いずれにしても姓は簡単に変えることはできません。特殊な例として、犯罪絡みなどで本名のままでは普通の生活がおくれないという場合に裁判所の許可のもと、姓名を変更することが可能なようですが、それは極めてまれなケースです。

過去には総理大臣にまで上り詰めた「田中角栄」と同じ名前を子供につけた田中という夫婦の子供。元総理はその後刑事被告人となり世間を賑わせ、同時に子供が学校の同級生達からその名前のせいでいじめられることになり改名したとか、神戸の少年が引き起こした凶悪な殺人事件のあと、少年院から社会復帰する際に、元の名前が報道され知れ渡っていたので改名して出所したなど。

近年ではネットの中で、良くも悪くも姓名がずっと残ってしまうことがあり、それが完全に消せない場合、それによって、進学や就職、結婚などに不利になるケースが起こります。

そういう時に、裁判を起こしてでも姓名を変更したいという人が今後増えていく可能性がありそうです。ってもうすでに増えていても驚きません。

SNSは実名か匿名かという論争もよくありますが、実名の場合、例え自分にまったく非がなくとも、間違えられて犯罪者に祭り上げられたり誤用されてしまうことがないとは言えません。

大津市のいじめ自殺では、無関係な人が加害者の生徒の親と指摘され、それが一気に広まりました。そして一度書かれたものを間違いだからと言っても消してもらうには途方もない労力がかかります。

そういうのを見ると、あまりよく考えず、ムードや勢いだけでネット上に実名登録してむやみにプライバシィを公開してしまうのはどうかと思いますがどうでしょう。


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