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番組を見た人からの通報で、その認知症患者が、7年前に行方不明となり警察に捜索願が出されていた東京在住の方だったことが判明し、夫と再会できたと続報をニュースでやっていました。
NHKの調べによると、認知症患者が行方不明となって警察に届けられた件数は2012年の1年間で9607人で、大半はすぐに見つかるそうですが、見つかったときにすでに死亡していた方が351人、年末時点で行方不明のままという人が208人もいたそうです。
上記のケースは東京在住の患者が群馬県で発見され、着ていた衣服に名前が書かれていたのにも関わらず、警察間の情報共有の不手際や連携の悪さが露呈したわけですが、認知症患者の徘徊の多くは、住まいの近くで発見されるというケースが大半ということで、こうした都道府県をまたがっての捜索や身元照会に不備があると言われても仕方がありません。
盛岡在住の患者が京都で発見された例も出ていました。新幹線を乗り継いで5~6時間、距離にすると約1000kmの距離を患者は移動しています。
「認知症女性」700キロ離れた盛岡に警察官が送り届ける…京都の寺で保護
そして今後、現在65歳前後の団塊世代が、認知症に罹りやすい75歳前後の後期高齢に入っていくにつれ、今後もこうしたケースが増えていくことが予想されます。
さらに、要介護者の増加に伴って、すでに専門の24時間体制の介護施設や介護人が不足してきており、政府や国は認知症患者の自宅介護政策を強く推し進めています。
これはどういうことかと言えば、夜中でもいつ起き出して外へ飛び出してしまうかわからない認知症患者を家族、と言ってもその多くは同じく高齢の配偶者が24時間監視をしていなくてはならないということで、これは現実的に不可能とも思えます。
また例え息子や娘と同居していたとしても、ずっと介護にかかりきりになると、外では働けず、恋愛や結婚もできず、24時間、親の介護だけをすることになり、それもまた限界があります。
でもそうしないと、自宅介護の場合、家族はどういうことになるかと言うと、
二審も家族に賠償命令 認知症徘徊電車訴訟で名古屋高裁 2014/4/24
愛知県大府市で2007年、電車にはねられ、死亡した認知症患者の男性の家族に対し、JR東海が列車遅延などの720万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は一審・名古屋地裁に続き、男性の妻の責任を認めた上で、約360万円の賠償を命じた。
つまり91才の認知症患者が家族の見張りの隙を突いて外出し徘徊した結果、電車にはねられ死亡。その患者(夫)が外出した時に、うつらうつらしていて気がつかなかった85才の妻にその責任があり、鉄道会社に損害賠償金を支払えとの判決です。
もちろん鉄道会社も事故で大きな損害を受けており、今後のことを考えると、前例として残るだけに一歩も引けないでしょう。
でも自分より元気で力の強い認知症患者がその気になれば、自宅から抜け出すことを止める手段は家族にはなく、それこそ人権侵害になりそうですが、手足を縛っておくか、鎖でつないでおく以外難しそうです。
ちなみに前述の7年間身元不明だった患者は、身元がわかるまで仮の名前で生活保護を受けていて、その公費(税金)が使われた費用は7年総額でおよそ1000万円。
今回家族が見つかったことで、法令上はその費用を家族が速やかに返却しなくてはなりませんが、これも「ご無体な」って感じがします。
このケースでは群馬県館林市の安楽岡一雄市長が、「認知症は社会全体の問題で、人道的見地から請求すべきでない」と判断したそうで、ホッとしましたが、こうしたケースが今後増えてきた時に、果たしていつまでも温情的判断が下されるのかわかりません。
その行方不明になったまま見つからない認知症患者の話しに戻りますが、NHKの全国放送で、ゴールデンタイムに放送されたから身元が判明したものの、そうでなければこの患者は身元不明者のまま一生を終わっていたでしょう。
その後も18年間身元不明で狭山市の施設で保護されていた認知症の男性が、東京在住の方だったことが判明したというニュースがありましたが、これも当時に捜索願が出ていながら、なぜ今まで発見できなかったのか不思議です。
東京・渋谷区の「野村正吉」さんか 埼玉・狭山市で保護、18年の認知症男性
どうして警察が行方不明者の届け出を受けていながら、この認知症患者をすぐに発見できなかったのか、ささいなミスもあったようですが、優秀とされる日本の警察にしては残念なことです。
今回NHKがそのような警察の行方不明者捜索の問題をやんわり指摘したこともあり、あわてて警察署の連携や捜索方針の見直しなど対策を講じているようですが、今後急増していく中で、根本的な解決をするためには、全国一斉に「顔認識システム」を導入するのが一番手っ取り早いのではないでしょうか。
つまり身元不明者や中には身元不明で亡くなった方、身元がハッキリしない受刑者などをすべて顔認識ソフトで登録し、行方不明者の届け出があったときに、写真を持ってきてもらい、それを登録照合すれば一発だったハズです。
登録されるタイミングで、行方不明の捜索願か、身元不明者の登録か、どちらが先であっても、後から登録した時点での検索で発見が可能です。
あと身元不明のままで亡くなる人の数は、1年間に1000人から1400人に達します。そうした人の写真は、過去何十年とすべて撮られているでしょうから、過去の行方不明者の捜索でもそれを使うことも可能です。
最近の顔認識の正誤率は、一般的なものでも98%前後まで達しています。
つまり顔正面の写真さえあれば、生死に関係なく、経年変化があっても、特徴を一瞬で見分けられますし、完全一致はしなくてもかなり似ているとか捜索を効率化させることも可能です。
すでに一部の犯罪捜査では、犯人が駅や街頭の膨大な防犯カメラに写っていないかを調べるときに使われているとも聞きます。
顔認識ソフトはすでに一般的になりつつあり、カメラや画像処理ソフトでも使われていて、かなり普及しています。もっと高機能、高効率なものでも、時間をかけてじっくり検討し、何度もテストを繰り返して慎重に導入するほどのものではなく、コストもそんなに大きいものではありません。
要は、全国一斉に基準を決めてすぐにやるかやらないか、だけのことでしょう。そうすれば前述のような不幸な身元不明者(本人も家族も)を減らすことができます。
将来的には、累犯者や、指名手配犯などの写真も取り込み、プライバシー情報には注意しながらも、犯罪捜査や、再犯予防・抑止にも使っていけることを考えれば、従来からある指紋照合DBとは別に、顔認識ソフトと顔データの情報共有をもっと早くから取り入れてもよさそうに思います。
そんなに導入を躊躇うようななにか問題があるのでしょうかね?
【関連リンク】
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
763 認知症患者の増大で国は衰退する?
647 決して他人事ではないので、認知症高齢者患者の急増が気になる
575 自殺者数と失業者数の相関関係
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