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休日になるとつい行きたくなる大量の中古書籍などを扱っているブックオフですが、いつ行っても一般書店にはない活況ぶりで、これは儲かっているなぁって思っていました。

もっとも最近は書籍だけでなく衣料品や家電品まで並んでいるSUPER BAZAARという大型複合店へ行くことが多いのですが駐車場はいつもいっぱいで入場待ちしているような状態です。

調べてみるとそんな急拡大してきたブックオフも2014年に連結ベース792億円の売上高だったのが、2015年は743億円、2016年は766億円と、2014年の売上高を2年連続して超えられず、ここ数年は足踏みをしています。

ちなみに今年2017年3月期の連結予想売上は850億円ということですから、それが実現すれば大幅な増収となり、過去最大の売上を記録しそうです。最近のブックオフの収益の柱は中古書籍販売だけではありませんが、それにしても紙の書籍は強し!ってところを感じられます。



中古の書籍がいくら活発に売れようが、その本の著者にはなんのメリットはなく、よい作家、よい本に報いたい、応援したい、育てたいと願う真の読書家達にとって、ブックオフや古書店での購入は後ろめたい気持ちになります。

じゃ、もっと一般書店で著者に印税が支払われる新刊本を買えばいいじゃないか!ってことですが、ここ数年給料は下がり続ける一方で、食費や電気代やガス代、社会保険料などはジワジワと上がっていくアンバランスな中で、書籍などの購入費、仕分け項目で言えば新聞図書費とでも言うのでしょうか、これらの費用を下げざるを得ないというのも現実です。ごめんなさい。

考えてみると、昔から単行本にしても雑誌、文庫本にしても価格が上がることはあっても下がることはまずありません。

最近は電子版(電子書籍)だけは安く販売されるという書籍もありますが、紙の書籍の場合、物価とは関係なくずっと上がり続けています。書籍は出版社が自由に値段をつけられるはずですが、薄利多売をしようとする動きは見られません。

80年代か90年代にある出版社の文庫本の広告コピーに「コーヒー1杯の値段で買える文庫本」という見出しがありましたが、現在ではドトールコーヒーでブレンドコーヒーの値段は270円(Mサイズ)、スターバックスのドリップコーヒー280円(Short)、高級ホテルのコーヒーと味は変わらないと言われるセブンカフェでは150円(Lサイズ)ってことと、書店に並ぶ文庫本の平均価格は700円を超えているということを考えると、もはや文庫本の1冊の定価はとてもコーヒー1杯と見合う価格ではなくなり、それこそブックオフで販売されている中古価格と近くなっています。

本来なら、昔の活字を拾っていく活版印刷時代から、コストが大きく下がるデジタル製版となった現在でも、出版物の価格はまるで統制下であるかのように値下がりすることなく逆に上がり続けてきました。

統制と書きましたが、新品の書籍の場合「再販売価格維持制度(再販制度)」があって、競争や企業努力が排除され、価格が高値で維持される仕組みがあることも影響しているのでしょう。

この再販制度は元々は流通機能が脆弱だった時代に地域差をなくして等しく文化的な生活がおくれるようにするという立派な制度ですが、今ではそれが利権構造にしっかり組み込まれ、出版社や新聞社の甘えの構造となり、流通網が整備された中でも生き残っているゾンビのような存在です。

今回はその再販制度の話しではないので、深くは書きませんが、長らく続く出版不況のひとつの原因には、そうした再販制度が関与しているのは間違いがないところです。

さて、2017年になって2016年の各種年間データが出てくる頃ですが、まだ手元には詳細なものがないので、2015年までのデータを元に出版状況に触れておきます。

データの出典は全国出版協会です。

書籍・雑誌実売売上推移


書籍の売り上げは2006年頃まで1兆円規模の実売売上がありましたが、ここ数年著しく減少し、ここ10年間をみると平均で200億円ずつ減少しています。2015年は7936億円、2016年はさらに減少する見込みです。

雑誌は書籍以上に大きく下げていて、1999年まで実売売上が1兆5000億円以上あったものが、2015年は8075億円と約半減しています。この10年間で見ると1年で平均500億円ずつ減ってきています。先行きは暗いでしょうね。

一方で伸びているのが新刊本の点数です。多趣味、多様化の流れの中、多品種の書籍を揃えて購買意欲を喚起しようという作戦はわかりますが、製造業と似てきて儲かりにくい構造に陥ってしまっています。

そして多品種少量販売による利益減少のしわ寄せは、大手が占める出版社や印刷、流通ではなく、一般的には個人の著者や、弱小出版社、中小の一般書店、そして読者へと、立場の弱いところにいくのが通例でしょう。

出版社数推移


出版社は集英社や講談社、小学館、角川書店、日経BP、宝島社、文藝春秋など大手出版社もあれば、ニッチな専門に特化した数人規模の出版社まで多岐に渡ります。

1995年前後には4,500社を超える出版社がありましたが、その後ジワジワと減り続け、20年後の2015年には3,489社となり、1995年からすると75%程度になりました。

上記の通り、書籍で20数パーセント、雑誌で50%近い減少となっている中で、出版社が75%も生き残っているのが不思議とも思えますが、比較的根強い人気のコミックスや、専門性が強く需要は減ってもなくなくならない学術書、旅行など趣味の本、最近なら高齢化を反映して健康や医療の本などはまだまだ健闘しているのでしょう。

昨年2016年は音楽専科社、新思索社、東洋書店、マガジントップ、ガム出版など出版社の倒産や廃業の他、書籍取次中堅の太洋社や老舗書店芳林堂書店なども出版不況の中で倒産しています。

こうした出版不況でも各社共に力を入れている電子書籍は盛り上がっているのか?というと、確かに電子書籍の売り上げ自体は伸びていますが、実は電子書籍のほとんどがコミックで、電子書籍全体の中に占めるコミックの割合は8割を超えるそうです。

ミリオンセラー100万部が売れた大ヒット小説でも、その電子版はと言うとよくて10%、通常は5~6%に過ぎないそうです。5%では「盛り上がっている」とは言えませんね。

その原因は様々あるでしょうけど、元々読書する人が減ってきているという流れがあり、従来からの読書家は慣れた紙の書籍に愛着があり、したがって電子書籍を積極的に使うのは、携帯機器と相性がよい読書離れが一層進んでいる若者だけでしょう。

紙の書籍が手に入りにくくなれば今の読書家達も電子書籍への移行が進むでしょうけど、今のところ、翌日、下手すれば当日中に届くAmazonもあれば、都会では古書を大量に扱うブックオフがあちこちにあり、紙の書籍を手に入れるのにまったく不自由しません。

ある人は買うのも読んだ後に売るのもブックオフで、ブックオフが自分の書棚だとまで割り切っています。

その若者はと言うと、勉強でも人生哲学でも恋愛でも、なんでもコミックやアニメに置き換えてしまえる世代ですから、スマホでコミックを見るというのがマッチしているのでしょう。

スマホから一時も目が離せない若者に、じっくりと長い時間をかけて、想像力を駆使しながら文字ばかりを追わねばならない長編小説を読ませようと思っても不可能でしょうから。

電子書籍元年と言われた2010年からすでに7年間。あのときにはすぐにでも紙の書籍は電子書籍に置き換わりそうな勢いで語る人も多かったですが、いまそれを言うとバカにされるだけです。

紙の書籍との逆転は数年の後に一気にやってくるのか、それともまだあと数十年は紙の書籍が優勢で進むのでしょうか。

それはデジタルネイティブと呼ばれる1980年以降生まれの人達が、人口の半数を占めるようになる2020年から数年間の出版社の動向がポイントになってくるでしょう。


【関連リンク】
954 書店数や出版業界売上減と未来
755 電子書籍を普及させるには
743 出版社不況の現状


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