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今日、10月10日は、我々世代(60歳以上)には1964年の東京オリンピックの開会式の日を記念して作られた祝日「体育の日」というイメージが強いのですが、2000年から施行されたハッピーマンデー法により10月の第2土曜日と変わりました。今年はおとといの8日でした。
もっと言うと、過去何十年かのデータを分析し、晴天になりやすい特異日がこの10月10日なので、開会式に決まったという話しも聞きました。そういう根拠のあった祝日を、連休を増やしてお金をもっと使わせようとするご都合主義で変えるのはどうなのでしょう。
さらにこの「体育の日」、2020年からは「スポーツの日」と名称が変わるそうです。偶然ですが、アメリカ(多くの州)でも同じ10月の第2月曜日は「コロンブス・デー」とする祝日だそうです。
この「コロンブス・デー」は、名称の通り1492年10月12日にクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸への発見および到着を祝うために設定された祝日です。
というぼやきに近い雑談はともかく、今回は「気になった記事」の紹介です。先月の記事ですの、もう旧聞になっているかもです。
東京は高給女と低収入男の「未婚アリ地獄」だ 「年収700万超未婚者」の過半が1都3県に住む(2018/09/04 東洋経済ONLINE)
生涯未婚率(50歳時点での未婚率)と年収との間には強い相関があります。しかし、男性と女性とではその相関は正反対です。「女性が直面する『稼ぐほど結婚できない』現実」という記事でも書きましたが、男性は年収が低いほど生涯未婚率が高くなるのに対して、女性は、年収が高くなるほど生涯未婚率が上がります。 |
長い見出しですが、概略を書いておくと、
・首都圏には若い人がたくさん集まってくる
・首都圏には男女ともに高収入の人が多い
・首都圏には未婚者が多い
・その中でも特に、男性の低所得者と女性の高所得者の未婚率が高い
ということです。
理由は想像できる通り、
・首都圏に本社機能が集中し優秀な人が集まってくる
・一方で首都圏には仕事や学校が多いので低所得者も集まってくる
・低所得の男性のところに嫁に来る(古い言い方ですが)女性は少ない
・高所得の女性は自分よりも高所得の男性を探し求める
と言うことらしいです。
でも例え未婚者が多くても、若い人が次々と集まってくるなら、街は活気にあふれ、商店が廃ることもなく、そのとばっちりを受ける地方はともかく、それはそれでいいんじゃないのか?と思うと、どうもそれだけではないらしく、、、
都民の4人に1人は高齢者 五輪後の政策提言まとめる(2018/09/04 テレビ朝日)
東京都の高齢者人口は2035年に約350万人に達し、都民の4人に1人が65歳以上の高齢者になると見込まれています。また、2025年には高齢者の約6人に1人が認知症になると予測 |
上の記事では、若い人が集まってくるけど未婚も増える首都圏。下の記事では、住民の4人にひとりが高齢者となる住民の高齢化に悩む首都圏を話題にしています。
え?若い人を引きつける首都圏?高齢者ばかりの首都圏?え、どっちなのよ?
という疑問はさておき、東京の高齢化率が4人にひとり、つまり高齢化率25%というのは日本全体で考えるとまだまだ若い!
現在すでに高齢化率30%を超えている自治体もあります(2015年秋田県33.8%、高知県32.8%など)
首都圏の話しに戻って、つまり若者に視点を置くと「非婚化」が見え、高齢者に視点を置けば「住人の高齢化や認知症患者の急増」が見えてくるのが今の東京や首都圏の課題となっているようです。
次に来るのは、こうした若い人には住みにくく、高齢者も医療や介護を受けたくても受け入れ施設や人員が不足していて、競争が激しさを増してくるという首都圏にやがて見切りをつけるのはいつ頃か?ってことかも知れません。
もっと言えば、そうした個人の動きよりも、もっと敏感に反応するのが民間企業ですので、大手企業の本社機能が次々と地方へ移転する時代がやってくるかも知れません。
そうした本社機能の地方移転が進めば、首都圏に高収入の人が集まるという点は解消していきそうです。
これだけネット環境が整備され、テレワークなども始まっているので、もう本社機能が狭くて高く、通勤に1時間以上もかかる東京や首都圏に置く必要などなくなってきています。
ところが現在はまだ企業の地方移転は、なかなか進まないようです。
企業の地方移転足踏み 政府新目標を自治体疑問視(SankeiBiz)
安倍政権が地方創生の一環として掲げた東京23区にある企業の地方移転が足踏みしている。取り組みが始まった2015年度からの3年間で本社機能などを地方に移した企業は19社にとどまり、雇用効果も限定的だ。 |
それでも将来には雪雪崩のように企業が地方へ移転する時がやってくると思っています。
国や役所があれこれと猿知恵働かしてもダメですが、地方移転が会社の利益につながるとみるや、その動きがとても早いのが企業です。
まずは総合商社や大手製造業の本社が、なにかと便利な成田周辺とかセントレアなど国際空港がある周辺に移転し、さらに日本を出て税金が優遇される国へ本社機能を移してしまうってことも当然考えられます。
製造業の本社や研究所、工場もユーザーが減り続ける日本よりも、需要が急増する東南アジアや平和が戻れば中東へ本社機能が流れていくのも自然です。貿易摩擦の解消にもなりますしね。
ドメスティック産業でも、税制優遇された地域、高度な人材が採用しやすい地域、災害に強く安心して仕事ができ、暮らせる地域、子供の教育やライフワークバランスを配慮した職場環境を従業員に提供できる地域へ移転というのが考えられます。
移動も全国に張り巡らされた新幹線網、整備された地方空港、リニアモーターカー、高速道路などが着実に進化していますので、地方へ行っても情報や教育の格差は減らせます。
別々の会社で働く夫婦共働きだったり、都市部に家を買ってしまった人にとっては、会社の遠隔地への移転となれば、一騒動が起きそうですが、企業にしてみれば個々の事情にいちいち構ってくれないのは過去を見てもわかる通りです。
首都機能の移転の話しは過去に何度も出ましたが、保守的で抵抗勢力が幅を利かせる行政府などの移転は遅々として進まず、10数年後を考えると、自由に動きやすい民間企業やリタイヤした高齢者から外国人だらけとなった首都圏を出て行くような気がしますが、さてどうでしょうか、、、
【関連リンク】
1089 プチ移住という選択
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
870 首都移転は実現可能か
816 2050年に向けてのグランドデザイン
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野球を観戦していて、非常にわかりにくいのがボーク(BALK)と振り逃げのルールです。
実は中学校では野球部に所属していましたが、恥ずかしながら、このへんのルールは、存在すること自体は知っていますが、詳細については当時からあまりよく知りません。
野球少年が知らなかったというぐらいですので、野球をやったことがない人には、見ていてもさっぱりわからなくても不思議ではありません。
また多少野球に関わっている人でも、正確な細かなルールを正しく把握しているか?と言うと、審判員として専門的に勉強でもしていないと、かなり怪しいところがあるでしょう。
ちなみにアマチュア野球の審判においても、アマチュア野球公認審判員として、国際審判員、1級審判員、2級審判員、3級審判員の4つのクラス分けがあり、それぞれに試験があり上級者ほど知識や経験は豊富です。
同じアマチュア野球でも、高校野球の審判員は、高校野球審判員というアマチュア野球公認審判員とは別の制度があり、各地の高野連に登録し講習など受ける必要があるそうです。
さて、本題に入りますが、一般的にボークと言えば、多くの人は、
「投手が投球動作中に投げるのをやめる」
「投手が投球動作中にボールを下に落としてしまう」
「投手がプレートを外さずに1塁や3塁に偽投をする」
「投球動作のワインドアップしてから投げるのをやめたり牽制球を投げる」
「牽制球を投げる時に、投げる方向へ足を踏み出さずに投げる」
あたりのことは知っていると思います。野球少年でもこれぐらいは知っています。
プロ野球や高校野球を見ていて、上記の他にも時々起きるボークの種類として、
「セットポジションで完全静止しない」
「バッターが構えていないあいだに投球動作に入る」
「ランナーのいない塁に牽制球を投げる」
「二段モーションや投球動作中に止まる」
など。
上記はいずれもピッチャープレートを踏んでいるときの動作で、プレートから軸足を外せば投手も野手と同じですから、偽投(投げるふり)も牽制球も自由です。
特に「牽制球を投げる方向へ足を踏み出さずに投げる」「セットポジションで完全静止しない」「二段モーションや投球動作中に止まる」については、審判によってボーク判定する場合としない場合があって、見ている方としてはややこしいです。
国際試合の場合には(審判員の)国によって、判定が緩やかなところがあったり、厳しかったりするので、それに早く適応するのが選手やコーチ、監督の能力とも言われます。
余談ですが、私も昔混乱したのですが、投手が「プレートを踏む」という表現は、多くの場合、文字通りピッチャープレートの上に完全に乗っかって踏んでいるわけではなく、ほとんどの投手は、プレートの手前で、スパイクの一部とプレートの表面が軽く接しているか、あるいは軸足をわずかにプレートに乗せているというのが正しい言い方だと思います。
今は知りませんが、私の現役だった頃はプレートは堅い木でできていて、あれの上に硬い金属製のスパイクがついているシューズで完全に乗っているとバランスがとりにくく、不安定でボールを投げるどころの話しではありません。
ボークになるのは上記だけでなく、もっと複雑なルールがあります。
例えば、「捕手(キャッチャー)のボーク」って知ってますか?
バッターを敬遠する時に、ピッチャーがリリースする前に捕手がキャッチャーボックスを外したら、これは捕手のボークとなり、投球はボールで、ランナーがいればそれぞれ進塁が出来ます。
2017年の高校野球の地方大会で、捕手のボークによりサヨナラ試合となったケースがありました。
捕手ボークでサヨナラ負け(高校野球・徳島大会)Youtube
このルール知らないと、敬遠するときに投手が横に外して投げやすいように、捕手は早めに横に出たくなりますよね。
変なのは、敬遠ではないときに、キャッチャーボックスから出ても、それはボークにはなりません。
ややこしいですね。
捕手のボークをとられたとき、「これは敬遠じゃない!盗塁を警戒して外したんだ!」というアピールが審判に通用するのかわかりません。投球の最初から捕手が立ち上がっていれば敬遠、そうでなければ敬遠ではないと判断されるのかな。
あと、時々起きるケースで、3塁ランナーがホームスチールを仕掛けた時、投手はいったんプレートから足を外してホームに(捕手に)投げれば問題ないですが、プレートを踏んだまま慌ててすぐに投げると、それは送球ではなく投球とされ、完全静止しないボークをとられることになり、3塁ランナーは進塁を許されることになります。
さらに、上記のホームスチールの場合、投手がプレートを外してホーム(捕手に)に送球(投球ではなく)した時、打者がその送球を投球と間違えて打った場合は、守備妨害となり、なんと打者ではなく3塁ランナーがアウトになってしまいます。ちょっと意外なルールですね。
それにしても、プレートからホンのわずかに足を外した程度だと、バッターにはわからないので、送球でも真ん中のストライクが来れば打ってしまいそうな気もします。
ついでにもっとややこしいルールをもうひとつ。
ボークと宣告された投球をバッターが打った場合はどうなるでしょうか?
ヒットになればそのままで続行、ランナーがいる場合は自動的にひとつだけ進塁が許されます。
ランナーがひとつの進塁だけでなく、欲張ってさらにその次の塁を狙うこともできますが、それは安全進塁権ではないので、ボールが転送されてタッチアウトになる可能性があります。
ボークを打って、バッターがアウトになった場合は、ランナーはひとつ進塁、バッターはボークをボールとカウントして打ち直しとなります。
ってことは、ボークとなった投球は、打者からすればダメ元でできる限り打ってみるのが正解ってことですね。
これも知りませんでした~
ここまでのルールを知っていたら、あなたはもうアマチュア野球博士です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次に振り逃げですが、一般的には「空振り三振した時に、捕手がボールをノーバウンドでキャッチできず、落球したり、捕球前にワンバンドしたり、後ろへそらしてしまった場合、バッターは1塁へ向かうことができ、タッチされず、1塁への送球よりも早くベースを踏めば記録上は三振ですが、セーフとなる」ぐらいのことは知っていると思います。
それでは、空振りではなく、見逃して三振の場合、振り逃げはできるか、できないか?
振り逃げっていうぐらいだから、バットを振らずに見送ってストライク!三振だとできなそうに思えますが、これもまた、三振の時、捕手が後逸したりすると、バッターは1塁へ走って、ボールより先にベースを踏むと振り逃げが成立するのです。
知ってました?
もっともストライク判定の球筋なら、通常の捕手であればそれを落球するケースは極めてまれなので、実際に起きることは少なそうです。
ただサイン違いで捕手が思っていない投球がきたり、ナックルボーラーとか捕手泣かせの変化球だと、ストライクゾーンにきても捕球できないケースはありそうですので、バッターは見逃し三振をしても、ちゃんと完全捕球されたかどうか確認が必要です。
いやー、これまた恥ずかしながら、最近まで知りませんでした。そう言われるとたまに起きています。
これは「振り逃げ」って日本語訳が間違いってことなんですね。振り逃げの原語は「Uncaught third strike」、直訳すれば「キャッチしてない3ストライク」ですから、振っても振らなくてもできるわけです。
そして振り逃げは、ランナーが1塁にいる場合には、できるケースと出来ないケースがあります。
さて、1塁にランナーがいると、振り逃げが成立しないのはどういう時か知ってますか?
これは割と簡単で、無死または1アウトの場合、1塁にランナーがいる(ランナーが1・2塁や1・3塁、満塁も同様)と振り逃げはできません。
と、言うことは、2アウトなら、1塁にランナーがいても、1・2塁でも満塁でも振り逃げができるってことです。
なぜか?
これは無死や1アウトでランナーが1塁にいても、もし三振、振り逃げができるのなら、捕手が故意に落球し、それをセカンドへ送球し1塁ランナーをフォースアウト、ファーストへ転送し、ダブルプレーが狙えるからなんです。
つまり振り逃げでバッターが1塁へ行こうとすると、1塁ランナーには進塁の義務が生じますので、無死や1アウトで1塁にランナーがいるときは、故意のダブルプレーができないよう振り逃げはできません。
2アウトの場合は、故意に落球してダブルプレーをとる必要はないので、振り逃げができることになります。
これは無死または1アウトでランナーがいる時の内野フライで、審判がインフィールドフライを宣告し、わざと落球してダブルプレイを狙うのを阻止しているのと似ています。
もっと言うと、2アウト満塁の時、振り逃げは成立しますが、落球したキャッチャーは、3塁ランナーがホームへ帰って来る前にボールを拾ってホームベースにタッチすれば3塁ランナーをホームベースでフォースアウトに出来ます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昔は、野球を始めとして体育系スポーツは、頭で考えるよりも、まず先に身体を鍛えて身体で覚えることが優先されていました。今でも体育会系の人は「脳みそが筋肉でできている」とからかわれます。
練習中は水を飲むのは禁止!、今では膝関節を痛めるというので禁止されているウサギ跳びの繰り返しなど、私の野球部時代は、非科学的、精神論が中心で、例えひどい雨が降った日でも、ルールや野球理論などの講習とかはやらず、教室や廊下などを使って体力、筋肉増進ばかりに励んでいました。
だから細かなルールなどはほとんど知らないまま大人になっていますw
今はそれじゃダメですね。
ルールをよく知り、どういう場面ではどう判断し行動するのが最適か、どこをどう鍛えると効率が良いとか、怪我をしにくくなるか、相手の弱点を突くにはどういう作戦が効果的か、など理論的、科学的、そして倫理的にもスポーツをやっていく上で守っていくべき事を学んでいく必要がありそうです。
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満願 (新潮文庫) 米澤穂信
2014年に単行本、2017年に文庫化されたベストセラー短編小説集です。
短編のそれぞれのタイトルは、「夜警」「死人宿」「柘榴」「万灯」「関守」「満願」で、6編が独自のストーリーとして構成されています。
その中の3編、「夜警」「万灯」「満願」は、この8月にNHKでドラマ化され放映されていました。
そのドラマはすべて見ましたが、その中の「万灯」は、映画でも主役を張れる俳優の西島秀俊が本格的な海外ロケをおこない、制作費が少なくて安いギャラのお笑い芸人を使ったバラエティぐらいしか作れない民放では製作不可能な1時間ドラマです。
6編のうち、ふたつを簡単に紹介しておきます。
まずテレビドラマ化もされた「万灯」。バングラデシュで天然ガス開発のために赴任した商社マンが主人公で、その開発の拠点とするためにある村に目を付けて、交渉を始めます。
ところが、英国に留学した経験があるこの村の若いリーダーが、この国の資源は自国の発展のために使うからと交渉が進みません。
そうこうしていると、村の若いリーダーと対立している別のリーダー達から、開発で村が裕福になるなら、拠点として村を使っても良いと話しが来ます。
ただしそれには条件がつき、それが資源開発に反対する若いリーダーを殺してくれというもので、背には腹を変えられず、それに従うことになりますが、、、
ただ、普通の商社マンが、仕事のためなら簡単に人を殺してしまうと言う設定は、会社のためなら命がけで競争に明け暮れた高度成長期の頃の商社マンならともかく、現代の風潮から言ってちょっとどうなのかなと。
もうひとつは、「関守」という短編で、これは他の作品と少し違う、ブラックミステリー。
伊豆の峠道でクルマの転落事故が相次いで起きた場所があると聞き、それをネタにした怪奇現象記事を書こうと考えたフリーライターが、その峠近くに古くからあるドライブインへ行き、店を守る老婆から過去に起きた事故や、立ち寄った人のことを聞き出します。
事故に遭った人はそれぞれ年齢や職業など様々ですが、事故を起こす前にみなこのドライブインに立ち寄っていることを知ります。
そして詳しく話しを聞いていくうちに、なぜそれらの人達が崖から転落して亡くなってしまったのか、それを聞いたライターは、、、
と、かなりスリル満点で、どの作品も面白かったです。
★★★
◇著者別読書感想(米澤穂信)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) 東野圭吾
2012年刊、2014年に文庫版が発刊された、第1章から第5章までつながる中編の連作小説で、2017年には日本と中国でそれぞれ映画化されています。
日本版映画の監督は廣木隆一、出演者は山田涼介、西田敏行、尾野真千子などで公開済み。
一方の中国版は今年2018年10月に日本で公開されます(香港・中国・日本合作)。中国版では日本版の西田敏行と同じ役にジェッキー・チェンが従来のイメージとは違う老け役で登場しているそうです。
東京近郊の住宅地で、以前は活気があったものの、最近は人口流出が続き、商店街もシャッターが降りているようなイメージのある高台にある古びた雑貨店が舞台です。
話しに出てくる年代が、ビートルズが解散した1970年、政治的理由でボイコットしたモスクワオリンピックの1980年前後、そしてこの小説が書かれた現代(2010年頃?)と、行ったり来たりして、今読んでいるのはいつの年代?って迷ってしまうことがあります。
現代の人が書いた文章を1970年代の人が読むと、「携帯で」とか「ネットで」と書いてあっても、まったく意味が通じないということにあらためてそうだったなぁと思いました。
ネタバレが少し入りますが、つまり、1970年代から80年代に雑貨店を営んでいた経営者が、子供からの質問に対し、一つ一つ丁寧に返事を返していたことが拡がっていき、やがて人生相談など深刻な話しが持ち込まれるようになります。
それにも一生懸命返事を書いてきたことが、その後の人生に役立ったのかどうか知りたくて、自分が死んだあとの30年後に相談者にアドバイスが役立ったかどうかを書いてもらい、再び雑貨店のポストに投函して欲しいと息子に遺言で頼みます。
すると不思議なことに、その30年後に届くお礼の手紙が、その経営者が死ぬ直前に、時空を超えて届くという奇跡が起きます。
その時代感が上記に書いたようにちょっと複雑ですが、面白く楽しく読むことが出来ました。さすがベストセラー作家の作品だけあります。
★★★
◇著者別読書感想(東野圭吾)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
花まんま (文春文庫) 朱川湊人
ちょっと不思議な短編ミステリー、「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の六編が収められた小説で、2005年に発刊、2008年に文庫化されています。そして2005年にはこの作品で直木賞を受賞されています。
著者は1963年(昭和38年)生まれですから、私とは6年違いで、同世代と言うにはちょっとアレですけど、小説を読んでいると、同世代の人?と思えるような表現や事象がよく登場して、懐かしい思いに浸ることができました。
それは著者の幼少期(9歳まで)は大阪の下町?で暮らしていたということで、昭和30~40年代の頃の大阪の下町が色濃く描かれています。なぜかわかりませんが、織田作之助賞を受賞されていないことが不思議なぐらいです。
どの短編も魅力的で、しかも読みやすく、後味も悪くない作品に仕上がっていて、直木賞もなるほどと納得がいく出来映えです。
関西人なら誰でもわかる共感性も感じられ、「在日朝鮮人」「差別部落」「飛田新地」など、そこで生活している人にとっての日常と同居している濃い話題がサラリと入ってくるところなど、心地よいぐらいです。
6編のうち、特に好きなのは、小さな女の子が主人公で、飼うと幸せになれると言われ、怪しげな露店で買った謎の生き物の話し「妖精生物」と、部落差別で友人が出来ない少年に、故郷の弟を思い出すと公園墓地で話しかけてきた下手な関西弁を使う若い女性との短い出会いと別れを描いた「凍蝶」かな。
いずれも悲しいお話ですが、後を引かない悲しさで、大げさに言うと、逆に生きる活力が得られそうな話しです。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
雑学の威力 (小学館新書) やくみつる
漫画家というか最近はテレビのコメンテーターや相撲のゲストなどで有名な著者の2016年発刊の新書です。
中身はタイトルそのままということで、特に説明する必要はなさそうですが、私はほとんど見ていませんが、クイズ番組などでの博識ぶりは子供の頃からの一風変わった趣味と好奇心、そして人から「物知りですね~」と言われたい一心から様々な努力をして雑学力を高めていった話しが書かれています。
そう言えばクイズダービーでブレークした同じく漫画家の黒鉄ヒロシ氏や故はらたいら氏もたいへんに博識な方です(でした)。
それらの方に共通している時事漫画を描く上では、様々な方面に感度の良いアンテナを張り巡らしていることが大事で、それが結果的に時事問題以外の雑学全般にも連鎖的に詳しくなっていくのでしょう。
それにあまり良い意味では使われない「衒学的(げんがくてき:学があることをひけらかす)」なことを自ら求めていると公言していると書かれていて、テレビの場でもそうした自信たっぷりと言うか、自慢気な雰囲気があることにこの新書を読んで納得です。
個人的には、どちらかと言うと自分が体育会系に近いので、理屈や知識でやりこめる、こういうタイプの人は苦手なのですが、テレビや新聞等で見かける分にはユニークな素養と趣味の持ち主としてリスペクトしておきたいと思います。野球や相撲を題材にした1コマ漫画も面白いものが多いですし。
自分が新入社員の頃には、NHKの元アナウンサー鈴木健二氏が司会を務める「クイズ面白ゼミナール」の前にいつも言っていた「知るは楽しみなりと申しまして、知識をたくさん持つことは人生を楽しくしてくれるものでございます」を実践しようと、駅のホームで電車を待っている間にも、広告の看板を読み、流行を知ったり、景気の良さそうな業界を感じ取ったりと意識して知識を吸収するように心掛けていました。
そういうことの積み重ねが、その後の人生において、いろいろと身を助けてくれたこともあり、そうした雑学の威力は十分に同意するところです。
あとがきに、先々月寄って見学してきたばかりの、知る人ぞ知る鶴岡市の加茂水族館の話しがちょっと出ていてビックリ。
なんでも雑食性のウマヅラハギが集団で好物のエチゼンクラゲを襲って食い散らかす鬼畜なショーをクラゲで有名な加茂水族館でやれば盛り上がるのでは?というようなお話でした。
新書にはよくありがちなことですが、著者のちょっと自慢げな表現や事例が鼻につくところが減点1の★2です。
★★☆
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私たちの国に起きたこと (小学館新書) 海老名香葉子
初代林家三平の妻、長女・海老名美どり、次女・泰葉、長男・泰孝(九代目林家正蔵)、次男・泰助(二代目林家三平)の母として有名な著者で、落語一家の家族を書いた著述も多くあります。
この作品は、著者が11歳の時に起きた東京大空襲で、両親や兄弟を亡くすという壮絶な体験をしたのちに、貧しい戦後を親戚をたらい回しにされながらも生き抜き、縁があってまだ無名の落語家(初代林家三平)と結婚して現在までの話しが書かれている2015年発刊の新書です。
東京の下町で伝統ある釣り竿を製造販売していた家に生まれますが、ひとりで疎開をしていた3月10日に東京大空襲があり、兄の三男だけは生き延びて再会しますが、あとの親兄弟6人は行方不明となってしまいます。
自宅も焼けて跡かたなくなり、終戦後は戦災孤児として親戚の家を転々としますが、どこも自分の家族を養うことで手一杯で、歓迎されません。
そんなとき、亡くなった父親と釣りを通じて懇意にしていた顧客の3代目三遊亭金馬師匠を訪ねたところ、初めて歓迎してくれ、その後その家の子供のように育てられます。
そして落語家の林家三平との結婚、その後有名になっていく落語家の妻として、夫の闘病と死と、事実上、本人の自伝となっています。
その中でも特に戦災で家や家族を失った子供達の悲惨な状況を余すところなく書かれていて、それがこの新書の主題となっているようです。
★★☆
【関連リンク】
9月前半の読書 幻の女、幸福な生活、神様のボート、それは経費で落とそう
8月後半の読書 村上海賊の娘(1)(2)(3)(4)、京都ぎらい、眼球綺譚
8月前半の読書 ドグラ・マグラ(上)(下)、11 eleven、「子供を殺してください」という親たち
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子供の頃に親に買ってもらってうれしかった玩具はそれぞれ世代によって変わってきます。
例えば有名なところで、1983年に初めて任天堂からファミコンが出た時には、当時10歳~18歳ぐらいまでの子供は必死に親にねだったのではないでしょうか。
初代のファミコンは、国内で約1900万台が売れたと言いますから、当時日本の全世帯数3800万世帯(1985年)で割ると、ちょうど2世帯に1台の割合でファミコンが売れたことになります。
冷蔵庫やテレビと言った生活家電製品ならともかく、たかが子供の玩具で全世帯の半分、しかも他の家電商品とは違い、任天堂1社だけが独占して製造販売する商品ですから驚きます。
そのファミコンが普及してきた1885年に10~18歳と言うと、1967年~1975年生まれの人達ですので、現在は40代、ちょうど団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)とかぶっていることも大ヒットした要因のひとつでしょう。
その他、2000年以前の子供達に大人気だったオモチャを書いておくと、プラレール、任天堂ゲームボーイ、任天堂DS、任天堂Wii、PlayStation、ミニ4駆、たまごっち、ベイブレード、ポケモンカードゲーム、ガンプラなどなど。
私も子供にリクエストされた任天堂DSやWii、ベイブレードを量販店に朝早くから並んで買いに行った記憶があります。
さらにファミコンの登場する前には、アメリカでヒットした人生ゲームが1968年に日本で販売され大ヒットしました。その頃子供だったのは、1958年~1966年生まれで、現在50代です。
私の子供の頃を振り返ると、友達の家でよく遊んだゲームが、人生ゲーム、ツイスター、ポンジャン、Nゲージ鉄道模型。
私が(兄と共用で)買ってもらって友達とよく遊んだのが野球盤、レーダー作戦ゲームとバンカース。つまりすべてアナログゲームで、ファミコン世代より前の世代ということです。
高校生時代にはアーケードゲームとしてパックマンやブロック崩しなどが出てきました。インベーダーゲームが登場したのは大学生の頃でした。
同世代の友人の中には、100円玉を積み上げて喫茶店でインベーダーゲームに熱中している人もいましたが、私はなぜかあまり興味がなく、冷ややかに見ているだけでした。
というより、そちら(テレビゲーム)の才能はからっきしということに早く気がついたということです。
さらにもっと幼い幼児の頃に買ってもらってうれしかったのが、乾電池で動く鉄人28号のオモチャや、上に座って遊べる特急こだま(新幹線になる前の151系?)の大きなオモチャ。時代ですね~
小学生の中程になると、買ってもらうと言うより、お小遣いをためて近所の店によく買いに行っていたのは、太平洋戦争で使われた戦闘機や艦船、テレビに出てくる乗り物のプラモデルで、飛燕や雷電、紫電改、ムスタング、コルセア、ロンメル、レオパルト、大和、イ号、Uボート、サンダーバードなど次々と買っては作っていました。
今でもプラモデル屋さんを見かけると、買いはしませんが懐かしくなって店の中をのぞきたくなります。
但し、最初に本格的にプラモデルを作ったのは、親からクリスマスだったか誕生日だったか忘れましたが買ってもらった姫路城だった記憶があります。それでプラモデル作りの楽しさに目覚めたと言っても良いでしょう。
女の子のオモチャには詳しくないのでわからないのですが、男の子のオモチャに関しては、ある程度わかりますので、年齢が不明の人に、「小学生の頃にどんなオモチャで遊んだか?」と聞けば、だいたいの年齢がわかります。
古いレトロな玩具は、今ではオークションなどで高額で取引されています。そういうのを集めている人が多いのでしょうね。
もし押し入れの中からほこりをかぶった玩具が出てきたら、すぐに捨ててしまわず、ちょっとオークションで値段を調べてみると驚くかもですよ。
上記に書いた私が小学生の頃に買ってもらったレーダー作戦ゲーム(当時の価格で3000円ぐらい?)が、程度の良いものが今は1万円ぐらいで販売されていたりします。残しておけば良かったなーw
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私が新入社員だった40年前、いやそのずっと前から、割と最近まで営々と続いてきた会社や役所の慣例みたいなものがあります。
4月に一斉に新入社員が入ると、外からかかってくる電話をその新入社員達が真っ先にとって、説明をしたり、担当へつなぐとのが当たり前の仕事になっていました。
新人に電話を取らせるのは、
1)まだ仕事が少ないので一番手が空いている
2)社外や社内の関係者の名前を覚えることでその後の仕事に役立つ
3)学生時代とは違うビジネス言葉の使い方や礼儀作法を実践で学ぶ
4)外部の人と話をすることで会社の業務内容や外部の意見などに詳しくなる
5)引っ込み思案な人でも積極性が養われる
など、多くのメリットがありました。
しかし、1990年代後半頃から、業務の連絡には電子メールが普及してきて、電話で話しをするという機会が相当減ってきています。
また企業も業務の効率化を進め、社員の生産性を上げていくために、できるだけ電話でのやりとりを減らしていくようになり、「問い合わせはフォームから」とか「メールでお問い合わせください」のようなスタイルが定着しています。
中には業務集中時間と称して「何時から何時までは電話禁止」とかを内外に対して打ち出し、外線を断っている会社もあったぐらいです(今でも続いているのか不明)。
ただ、主な取引相手や消費者が子供や高齢者、IT弱者の場合は、まだ電話や手紙がメインの通信手段というケースもあり、そうした顧客を第一に考えないといけない企業は電話や手紙をすぐに切り捨てられません。
そういう人達向けにはすでに自動応答サービスが主流となっていて、それでも解決しない場合のみ人につながるという設定になっています。
それもあと10年も経てば、電話での問い合わせはAI(人工知能)がおこない、生身の人が対応することはなくなっていくと思われます。
いずれにしても、コストも手間もかかる電話応対は、生産性向上、作業の効率化という点では無用の長物で、緊急事態というような場合を除き、徐々に削減されていくことは間違いないでしょう。
個人的には電話というのは相手の都合を全く無視して、忙しいときでも手が離せないときでもいきなり割り込んでくるもので、家族が危篤とか、直ちに停止しなければ被害が出ると言った緊急連絡以外は、なくなってもよいと思っています。
平日の昼間に自宅にいると、それは毎日毎日様々なところからセールスの電話がかかってきます。今時そうしたセールス手法が効果的だとは思わないのですが、それしか方法を思いつかない商売人が多いと言うことなのでしょう。
ネットをあまり使わない高齢者ユーザーが多いテレビショッピングも、コスト面から考えれば、人手や設備費のかかるコールセンターよりも、ネット上でオーダーしてもらえれば、コストが大きく下げられますので、今後ネット通販会社と価格競争となった場合は、価格を下げるためにそうせざるを得なくなってくるでしょう。
私は新入社員の頃はもちろん、長くサービス業の営業職でしたので、電話が鳴るとすぐに出て対応するというのが長らく習性となっていました。今は営業職ではないので電話を取ることはほとんどありませんが。
そうした習性はやはり新入社員の時に、最初はおっかなびっくりで、時には応対のまずさで先輩に叱られ、言葉遣いの誤りを訂正され、身をもって覚えていったものです。
一般企業や役所では、4月から5月頃に電話をすると、いかにも「新入社員です」という人が電話に出て、質問や取り次ぎを頼んでもなかなか要領を得なかったり、話しがしどろもどろになってしまうことがよくあります。
それが会社や役所の中で、毎年、季節の風物詩みたいになっていて、一種微笑ましいとさえ思っていました。
ところが、上記のように、最近では取引先へ電話をすることも滅多になく、ということは、新入社員は研修では多少学ぶものの、実地では電話応対についてほとんど経験することもなく過ごしてきているはずです。
先輩や上司も、電話のやりとりについて、経験させておいて、間違いを指摘して叱ると、パワハラだと言われかねない社会情勢ということもあります。
それがよいことなのか、やむを得ないことなのか、わかりませんが、いわゆるコミュニケーション障害というか、人と直接話をするのが苦手な人を多く作り出している気がします。
メールやSNSなら活発に発言が出来る人も、人の目を見てちゃんと挨拶が出来ない、ふらっといなくなったと思ったら誰にも告げず勝手に帰宅していた、お客様と同席してもボーとしたままでなにも発言しないといった人が次々と出来上がっていきます。
ちょっと方向性は違いますが、優秀な官僚が集まるお役所でも同様に電話対応の是非が問われているようです。
新人の「電話対応業務」削減は効率化か怠慢か?財務省内で侃々諤々の議論(産経ニュース)
「問い合わせでなくて、文句や苦情といった内容のものも多い。忍耐力はつくが人材を育てる観点では電話対応業務を従来通り続けることには疑問もある」そう話すのは、40代の女性職員。(中略) 一方、こうした電話対応業務を「新人が勉強する絶好の機会」と評価する声も少なくない。 |
つまり電話応対という仕事が、新人教育として効果的であるという意見と、もうそれは時代遅れで、働き方改革を進めていく上で弊害だと言う意見に分かれます。
私の意見としては、どちらがどうだという決めつけはできません。例えば、サービス業のようなところでは、電話でもメールでも顧客対応は極めて大事なので、そうしたことをしっかり身体で覚えていくことが必要と感じます。
しかし、BtoB(取引相手が企業同士)の仕事や、顧客対応以外の例えば製造やシステム開発のような仕事であれば、今後電話で処理することはほとんどなく、あえてそれの習得に時間を割くこともないかなと思ったりします。
ただその場合でも本人のためにはそうした経験を積むことで、将来様々な場面で生きることになるとは思いますが。
さて、企業の生産性向上や効率化と、個人のコミュニケーション能力向上と対人関係の訓練、この先、このふたつの将来を考えると、どう考え、行動するのが一番よいのでしょうかね。
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