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1387
夜と霧の隅で (新潮文庫) 北杜夫

1960年に出版された短編と中編の小説集で、1960年上期の芥川賞受賞作です。著者は医者として勤務をしながら、数多くの著作がありますが、中でも「どくとるマンボウ航海記」「楡家の人びと」などが有名です。また若い頃から始めた登山にも造詣が深く、本書にも登山をテーマにした短編が含まれています。

収録されている作品は、「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「霊媒のいる町」「谿間にて」「夜と霧の隅で」の6編で、その中の表題となっている中編の「夜と霧の隅で」は、ナチスドイツでヒトラーが抵抗勢力や病人等を社会から排除するよう命じた「夜と霧」と言われる命令をモチーフとした作品です。

その「夜と霧」は戦後に小説や映画になっていますが、当時のナチスが捕虜やナチスに反抗する思想犯、ユダヤ人、異教徒などを収容所に送り込み、最終的には誰にも知らされることなく、夜霧に紛れるかのようにして殺してしまうという1941年にヒトラーが命じた作戦ですが、その中には精神病などの患者も含まれていたと言うことです。

その「夜と霧」作戦下の精神病棟で、ユダヤ系の妻が連行され、それをきっかけに精神に異常をきたし治療を受けていた日本人外交官の姿と、なんとか患者達をひとりでも多く救いたいと、絶望的な治療に取り組む医師達の物語です。

「岩尾根にて」は、命綱もなく危険な登山を見かけ、その後会話をすると、ほとんど意識がない状態で崖を登っているという人だったり、崖を登っていると、墜落死した人を見つけたりと、本格的な登山をする人ならあるあるなのかも知れませんがゾッとします。

その他の短編も、著者の経験から発想した物語っぽくて、なにかリアリティがあってドキドキします。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

我が家のヒミツ (集英社文庫) 奥田英朗

2015年単行本刊、2018年文庫版刊の短編小説集です。

著者の作品は好きで、文庫になっているものはほとんど読んでいます。こうした短編小説も多くありますが、著者の作品では、本格的なミステリー小説が秀逸と思っています。でもN木賞に輝いたのは、コミカル路線の連作短編小説でしたね。

今回の著者と同様の短編小説集では、「家日和」(文庫版2010年刊)は2010年に、「我が家の問題」(文庫版2014年)は2019年にそれぞれ読んでいます。

2019年7月後半の読書「我が家の問題」

今回収録されている短編は、「虫歯とピアニスト」、「正雄の秋」、「アンナの十二月」、「手紙に乗せて」、「妊婦と隣人」、「妻と選挙」の6編です。

実は上記の「我が家の問題」は、著者の作品としては、あまり面白く感じず、昭和時代の夫婦関係を引きずったままのように見えて、低い評価をしました。

しかし今回の著書は同じような一般家庭と夫婦をテーマにしながらも、もっと奥深い感じがして面白く読めました。

著者からすれば、「別に前作から変化はない」ということでしょうけど、読み手側のその時々の精神状態によっても変わってくるのか、今回は別物?と感じました。

「虫歯とピアニスト」は、昔に憧れていたピアニストが、自分の勤務する歯医者へやってきた話し。「正雄の秋」は熾烈な会社の中での出世競争で、好きではなかった同期に負けてしまった話し、「アンナの十二月」は、自分の出生の秘密を知り、実の父親に会いに行った話し、「手紙に乗せて」は、妻を亡くした男性同士の相哀れむ手紙、「妊婦と隣人」は産休のため家にいることになり、それで知ることになった不可解な隣人、「妻と選挙」は、N木賞作家で今は落ち目になった作家の妻が、市会議員選挙に出馬するという出来事。

どれも上々の出来と言えます。

★★☆

◇著者別読書感想(奥田英朗)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

朽ちないサクラ (徳間文庫) 柚月裕子

著者の作品は「最後の証人」(2010年刊、文庫2011年刊)を2012年に読んで以来7年ぶりとなります。

2012年4月後半の読書「最後の証人」

この作品は、2015年刊(文庫は2018年刊)の長編小説で、女性作家としては割と珍しい、警察ものミステリー小説です。

元々、法廷もの小説がお得意な著者ですから、その延長線というか手前にある警察署や刑事、公安といった知識もお持ちなのでしょう。

タイトルの「サクラ」は一般的には警察をイメージしますが、ここでは警察内部の符丁として使われているらしい公安警察を指しています。

女性作家らしく、主人公は民間企業を辞めて、地元に戻り、地方の警察署に事務職員として勤務する女性で、その主人公の親友だった女性新聞記者が何者かに殺害されたことで、事件に首を突っ込んでいくというパターンです。

警察と公安(警備局)との関係など、内部の事情はあまり外部に出てくることはありませんし、まして最近の骨抜きされたメディアが警察を敵に回すようなスクープを掲載するとも思えなく、リアリティはどこまであるのかというのはよくわかりません。

しかし過去に現実に起きた、ストーカー殺人事件や、新興宗教団体のテロ活動など、身近なテーマも盛り込み、サスペンスドラマとしてうまく仕上がっています。

終わり方が、主人公の続編も期待できるような感じでしたが、現在のところ、出てはいないようです。

★★☆

◇著者別読書感想(柚月裕子)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

天魔ゆく空(上)(下) (講談社文庫)(上)(下) 真保裕一

2011年に単行本、2014年に文庫化された長編時代小説です。この著者には珍しい時代小説ですが、過去に明智光秀を主人公にした「覇王の番人」を読んでいます。

2013年11月後半の読書「覇王の番人」

元々、著者の作品は、現代の外交官や警察官、自衛隊員などを主人公としたハードボイルド系ミステリーや、原題のお仕事系小説から入ってきたので、こうした時代小説というのは最初はちょっとどうかな?って思っていました。

しかし上記の「覇王の番人」がそこそこ堪能することができ、心配は杞憂でした。またそれら以外にもコミカル系の小説などもあり、幅が広い知識と才能はお見事です。

同じように、ハードボイルド小説と時代小説を取り混ぜて発表されている直木賞作家佐々木譲氏と、なにか作風にも共通するところがあるような気がします。

内容ですが、多くの日本人にはなかなか理解しにくい、室町幕府を開いた足利幕府の末期、応仁の乱の終盤からこの物語は始まります。

幕府内で権力を持つ細川本家筋の細川政元を主人公にして、鎌倉時代を築いた源氏の係留で、150年ほど続いてきた足利将軍時代が跡継ぎ争いで弱体化し、やがて全国各地で将軍の言いなりにはならない有力者が続々と登場し、国盗り物語の戦国時代へと入っていく時代の話しです。

戦国時代のまっただ中、織田信長がおこなった、家族を政略結婚に出す、一揆弾圧、比叡山焼き討ち、将軍の追放などをこの幕臣の細川政元がすでに70年前におこなっていたのですね。

私もこの時代のことはまったく知識がないまま読み始めたのですが、これを読むと、なぜ応仁の乱が起きて、それが収束した後に室町幕府が壊れていったのかがよくわかります。

主な登場人物は、足利義政(第8代将軍)、日野富子(義正の正室)、足利義視(義正の弟)、足利義稙(義材、義視の子、10代将軍)、清晃(足利義澄、11代将軍)、細川勝元(細川京兆家当主、守護大名)、細川政元(勝元の子)、洞松院(勝元の娘)、細川政国(政元の後見人)、畠山政長、畠山義就、山名宗全、赤松政則、大内義興、六角高頼、上杉房定など。

とにかく似たような名前の登場人物が入り乱れていっぱいいるので、誰が誰やら混乱します。

この物語の数十年後には、本格的な戦国時代が到来し、武田信玄、上杉謙信、織田信長など地方の有力者が力を付け、覇権を争い群雄割拠することになります。

いや、当時の事実関係は誰にもわかりませんが、これほど難解な時代をわかりやすく整理して読ませてくれる小説として面白かったです。

★★☆

◇著者別読書感想(真保裕一)

【関連リンク】
 11月前半の読書 人斬り以蔵、晴れた日は図書館へいこう、アンガーマネジメント入門、幕末時そば伝
 10月後半の読書 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い、オネスティ、生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント、敦煌
 10月前半の読書 その女アレックス、レオナルドの扉、「やりがいのある仕事」という幻想、ノボさん



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1386
小林浩志著「アンガーマネジメント入門」を読み、少し変化を感じてきたことがあります。

年齢とともに感情抑制が困難になってくるとよく言われます。社会でも高齢者がキレると言う話しをしばしば耳にするようになって来ました。

ただ、キレるのが決して高齢者ばかりではないことは、高速道でのあおり暴力事件をみるとわかるとおりですが。

小池都知事も派手な衣装がお好きで、若いなーと思っていましたが、いつの間にか立派な高齢者の仲間入り67歳なのですね。

高齢者の怒りは認知症への入り口と言われていて、怒りを頻発しているとあまり良いことではなさそうです。

高齢者が些細なことで怒り出すようになったら、初期の認知症を疑えとも言われています。

また介護施設では、認知症患者の怒りから発生する暴力や暴言などで、介護者が心身ともに傷ついて、生傷が絶えないとか、勤務が長続きしないという話しをよく聞きます。

個人的にも、若い時と比べて、ホンの些細なことでもムカッとくることが多くなり、このままでは、単なるキレやすい高齢者の一員となってしまい、認知症も心配なので、アンガーマネジメントを学び実践しようと思っています。

アンガーマネジメントには怒りを抑え込む方法としていくつかの方法が紹介されていますが、その人の性格や立場など様々な要素でその有効な方法が違ってきます。

またその怒りの源泉(原因)が、どういう内容かによっても対処法が違ってくるでしょう。

そうした怒りの抑制手法に対し、自分に合った方法の選択、怒りを感じたときの冷静な分析など、今まで自由に自己中心的な行動を当たり前に行ってきた人にとってそれを乗り越える壁は低くありません。

ずっと昔のことですが、勤務していた会社の後輩が、通勤電車の中で他の男性とトラブルとなり、電車を降りてからその男性を殴ってしまい、傷害の現行犯で逮捕されるという事が起きました。普段は真面目でおとなしい大卒の社員ですがちょっとした諍いでカッとなって手を出してしまったようです。

そうなると、会社としては就業規則に照らし合わせ懲戒解雇処分にせざるを得なく、ひとりの人生がたった一度の怒りが元で大きく狂うことになります。(その彼については、過去の評価を勘案して、事件が和解した終結後に再雇用が認められました)

また最近、ドライブレコーダーに記録されるようになってから煽り運転問題が噴出していますが、運転中のトラブルや暴力事件も、ちょっとした、「道を譲らない」「クラクションを鳴らされた」「パッシングされた」などでカチンときた自信過剰で沸点の低い愚かなドライバーが社会には普通にいることが原因です。

昔はドライバー同士の事件というと、反社会的勢力が、他人のクルマにわざと接触させて、脅して賠償や慰謝料を要求するというのが一般的でしたが、最近は素人が平気でそういうことをするようになりました。

ごく身近にそうした、怒りのせいで逮捕されたり、仕事を失ってしまったりした人がいると、しばらくの間は抑制効果はありますが、そうしたことを考えない人もいるでしょうし、考えていても他人のこととしてやがては忘れてしまいます。

そこで理論的なアンガーマネジメントです。

怒りの感情をアンガーマネジメントでは、第1次感情と第2次感情にわけています。

第1次感情とは、不安、恐怖、つらい、疲れた、悲しい、淋しい、ストレスがあることなどのことで、第1次感情が蓄積され続けると、コップから水が溢れてしまうように、許容範囲を超えてしまい、この時に現れるのが、怒りの感情です。つまり、怒りは第2次感情です。

先の煽り運転で言えば第1次感情として「道を譲ってくれない、イライラするな~」とストレスが溜まり、第2次感情でそれが怒りに変わります。

普通の人なら、そうしたストレスが溜まっても、それが怒りに発展するのは少数で、そこからさらに怒りを暴力行動まで移す人は極めて少数でしょう。

その第1次感情のストレスが、怒りに変わるのを遅らせたり、消し去ったり、溜める容量を増やしたりするのがアンガーマネジメントの本質です。

また、第2次感情の怒りの種類としては、「持続性のある怒り」「強度が高い怒り」「頻度が高い怒り」「攻撃性がある怒り」があり、それぞれに応じた対処法が求められます。

過去の出来事を何度も思い出してクヨクヨ悩み、それがムラムラと怒りへと変わってくるのが「持続性のある怒り」で、「強度が高い怒り」は、何度も繰り返してあおり運転をするなど、ちょっとしたことでもムカッときてそれが暴力まで増幅していくような怒りです。

些細なことでも過敏に反応してイライラがつのっていくのが「頻度の高い怒り」、モノを投げつけたり蹴飛ばしたりする激しい怒りが「攻撃性がある怒り」です。

そうした怒りに対して、自分にできそうなこととして、

1)冷静になるため少し時間をおく
2)深呼吸する
3)その場から逃げ出す
4)自分ではどうしようもない事柄にまで意識・関心を持たない
5)リラックスできるイメージを想像する
6)ストレスや不満を書きだしておく


など、それぞれに対する怒りのコントロール法がありますので、自分に合った方法を身につけておくこと役立ちそうです。

私個人の問題として、もう自分の力ではどうすることもできないような事に対する怒りについても、「あのときこうすれば良かった」とか「あいつに仕返しをしてやりたい・・・」とグジグジと考え続けてしまう傾向があり、それによって夜なかなか寝付けないことがあります。

しかし最近は、アンガーマネジメントのおかげで、「もう終わったことに関していくら思い直しても、今さらどうすることもできないし、考えても仕方ない」と割り切れるようになり、別のもっとリラックスできるイメージを思い浮かべることで、快眠ができるようになりました。

過去の出来事や失敗を思い返して「反省する」のも時には大事ですが、それよりもっと大事なことが、「考えすぎていつまでも悩まない」ってことでしょう。

アンガーマネジメントで一番効果があると思ったのは、急な怒りに襲われたときは、10秒ぐらいジッと我慢して他のことを考えると、「つまらないことで怒っては自分を下げるだけ」ということが理にかなっていること。

アンガーマネジメントでは「怒りのピークは6秒」と言われていますので、10秒置けば、たいていの怒りが「つまらないこと」と思えるようになりました。その効果はてきめんです。

高齢者はキレやすいというのが一般的な評判ですが、そうならないためにこれからもアンガーマネジメントを取り入れ実践したいと思っています。

【参考書籍】
パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門: 怒り、イライラのコントロールで、職場は変わる! 成果が上がる!(小林浩志著)
アンガーマネジメント入門(安藤俊介著)
自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック(安藤俊介著)
マンガでやさしくわかるアンガーマネジメント(戸田久実著)

【関連リンク】
1285 怒りを抑制するアンガーマネジメント
1231 クルマの修理であれこれ考えたこと
984 広告とブラック企業と心の病
585 川崎市営の駐輪場が理不尽な大幅値上げ1

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1385
久しぶりに有効求人倍率と完全失業率の長期データを上げておきます。1963年から2019年までの総務省統計局長期データを引っ張り出し、見やすくグラフ化しました。

有効求人倍率は元データに年間平均値がありますので、それを利用しますが、完全失業率は、月ごとのデータしかみつからなかったので、その年の1月のデータ(年間平均とは違う)を元にしています。

有効求人倍率は、職安で仕事を探しに来た人に、どれだけの求人数があるかという値で、その割合が高いほど求人難(売り手市場)で、低いと求職する人は多くても求人がない状態(買い手市場)となります。

これらのデータは全国平均ですが、大都会ほど求人は多くあり、地方へ行くと求人が少ないという傾向があります。

完全失業率は、失業中で働く意欲があり、職安へ行き、求職の申し込みをしている人の数を全労働者で割った割合です。ただこれにはいろいろと問題があり、単に失業保険をもらうために、働く気はないけど「表向き仕事を探している」人達が失業者に含まれ、逆に仕事をしたいが、民間職業紹介を利用するなど、様々な理由で職安で求職をしていない人達の数は含まれないなどがあります。

それらはともかく、他に求人倍率や失業率を求める方法はないので、この大本営、いえ総務省発表のデータを使うしかありません。



1960年代から1970年代のいわゆる高度成長期は、失業率も有効求人倍率も現在よりずっと低く、現在以上に人手不足が慢性化していますが、同時に求人もそれほど増えない状態が続きます。いわゆるパート・アルバイト以外は終身雇用が当たり前で、転職市場というのがない時代です。

ところが1973年以降、不安定な中東情勢の影響を受け、2度に渡るオイルショックで求人倍率が下がり、失業率が高まるという相反関係が顕著に出現します。

一般的に失業者が減ると、逆に有効求人倍率は上がります。そのことは1980年代後半のバブル景気で求人が活発化し失業率が下がり、求人倍率は上がることになりますが、その直後1990年代に入ると、再び失業率が上がり、求人倍率は下がることになります。

バブル崩壊後の不況が収まりきらない2000年頃には今度はITバブル崩壊が起きて失業率が5%を越えるという状態になりました。そのことがその後長く異常事態として尾を引くことになる就職氷河期世代の誕生です。

ようやく不況の最悪状態を抜け出せた2007年には今度はアメリカ発のリーマンショックに見舞われ、再び構造不況に突入します。

政治の世界では、その日本経済が最悪のタイミングだった2009年に、国民の不満が爆発し、何でも良いから政治を変えてみようと民主党政権が誕生し、ようやく雇用の悪化を食い止めることができました。

いえ、別に民主党政権の人達が頑張って立て直したというのではなく、バブル崩壊以降、悪夢の自民党政権が終わったことで、ようやく負の遺産の精算と、古い価値観、凝り固まっていた利権などしがらみから少しだけ脱却ができたのかなと思います。

その民主党政権も東日本大震災での原発事故処理や、沖縄基地移転問題でケチをつけ、あえなく崩壊しましたが、好転に転じ始めたあとの漁夫の利を得たのが自民党の現政権ということです。

ま、政治的な話しは、それぞれの信条や利権も複雑に絡み合って人それぞれですから、深くは書きませんが、過去最悪だった雇用状況を好転させ、また年間3万人を超えていた自殺者が顕著に減ったのが、民主党政権に交代してからの2010年頃で、偶然だったかも知れませんが、政権交代によって成し遂げられた数少ない成果と実績と言えます。

それらを考えると、他の先進国と同様、定期的な政権交代は、経済を活性化させる意味合いで必要なのかも知れません。

あとは、東京オリンピック後の景気落ち込みがどのぐらいの規模で、その不況期間がいつまで続くかというのが今後の興味ポイントで、もし就職や転職を考えているのなら、できるだけ早く決めちゃうのが良さそうです。


【関連リンク】
866 失業率とか雇用状況
807 労働人口と非労働人口推移と完全失業率
705 有効求人倍率と完全失業率から推測する未来
498 失業率推移ではなく失業者数推移でみると
446 失業率統計の話し


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1384
2008年に民主党政権が誕生し、それにより長年自民党政権下において族議員や官僚達が好き勝手にしてきた旧社会保険庁の年金行政にメスが入り、そのでたらめな使い方や納付記録のミスについて明らかとなり、腐りきった社会保険庁は廃止されました。ま、体よく臭い物に蓋をしたという感じではありますが。

そして2009年から「ねんきん定期便」という過去の保険料納付実績や将来受給できる年金見込み額など書いたものを納付者に郵送する制度が出来ました。一部は前自民党政権時からの継続ですが、民主党政権、そしてミスター年金長妻昭氏が厚労省大臣に変わって画期的に良くなったことのひとつです。

2009年にそれまで意図して表面化させず、闇の中だった年金制度を積極的に国民に知らせるようになり、最初に郵送されたのが「特別便」で、その後は年に1回はがきで通知されます。

さらに35歳、45歳、59歳になったときには定期便より詳しく年金加入履歴などが含まれた分厚い封書が送られてきます。私の場合、35歳、45歳の時にはまだこの制度がなく、59歳になった時に届きました。

もっとも、それら通知にかかる莫大なコストは今まで積み立ててきた年金を使われているのでしょうけど、少なくとも若い頃から年金に対する関心が高まってきたことは良しとしましょう。

また「ねんきん定期便」などに記載されている「ねんきんネットサービス」を使えば、将来、いつまで働いて保険料を収めれば、もらえる年金はいくらになりそうとかシミュレーションできるようになり、便利に使えるようになっています。

但しそのシミュレーションは当然ながら現行の社会保険制度なので、10年20年と長期的に見ると将来社会保険制度が変わると、もらえるようになる時期や額も変わってきます。

そしてその制度改変により、今後もらえる年金が増えると言うことは絶対になく、収める社会保険料が増加し、もらえる年齢が後ろへ延期されたり、もらえる年金が減少したりするのは年金財政を見る限り自明の理です。

さて、その「ねんきん定期便」ですが、ジックリ読み込む人は、年金受給が目の前に迫っている人以外は少ないと思います。

特に年金がもらえるまでまだ20年以上ある(現在45歳以下の人)と、そんな先まで考えられないと、せいぜい過去の記録に間違いがないかぐらいしかチェックしないのではないでしょうか。

私の場合、あと数年でもらえるようになるので、結構真剣に読み込んでいます。まもなくやってくる切実な問題ですからね。

私も40代始め頃までは、将来は年金なんてあてにならないから、しっかり貯金をして、それで余生は悠々自適に過ごすのだと思っていましたが、リストラに遭って一時期無収入となり、しかもこの時期には二人の子供が私立高校、大学へ進学し、それまで早期引退のために貯めていた貯金はすっかりなくなってしまいました。

そして結局は「老後は年金だけが頼りです~」となってしまいました。おバカな話しですけど。

いま、「年金なんて~」と思っている若い人がいれば、「年金は最後の砦」と、肝に銘じておくことが大事かも。

だって、リストラの私と違い、めちゃ仕事が出来て、「リストラなんて怖くない!」という人でも、いつ病魔に襲われたり、事故に遭って仕事が思うようにできなくなることだってあります。

また、自分はいたって健康でも、両親や配偶者や子供が病気や事故で長期にわたり、お金のかかる治療や療養を長期間続けなければならないとも限りません。そう、世の中ってリスクだらけです。

10年20年とこの先、生きていると、マーフィーの法則ではないけれども、人生はすべて自分の計算通り、思惑通り、理想通りには決して進まないって事です。

私に送られてきたねんきん定期便を読むと、過去40年間に支払ってきた年金額は、失業中に支払った国民年金と会社員が支払う一般厚生年金を全部合わせて累計納付額がなんと2050万円!です。40年で割ると年間平均51万円となります。

もっと言うと、厚生年金保険料の場合は、この額と同額を会社が収めているので、私個人としては年額100万円、40年間で4000万円を国に支払っていることになります。

もちろんいまの年金制度は積立方式ではなく賦課方式なので、自分が支払った年金がそのままもらえるわけではないことはよく理解しています。

一般的に厚生年金の年額平均は男性で18~20万円とか言われていますから、その倍以上を支払っていたことになります。むーん、知らないうちに天引きされていたので、あらためて考えると凄い金額ですね。

こうなった理由は明らかで、20代後半から40代前半にかけて、おそらくその年代としては高額所得者だった影響があります。

その期間は昼も夜もなく、休みなど年に数日という、今で言えば十分に過労死認定がされる働き方を20数年間続けていたこともあり、その結果として生活や家庭を犠牲にし、ただ収入だけは多かった(当然のごとく使い方もひどく荒かった)ということです。今ではそんな働き方をさせる会社はもうないでしょうけど、、、

そうした若い頃に身を削って厚生年金を平均よりも多く納めてきたおかげで、まもなく引退した後にもらえる年金額(報酬比例部分)は、公表されている平均的なサラリーマン夫婦よりも多少は多くなっています。

平均より倍額以上支払っているのだから、もらうのも倍以上か?というと、もちろん全然そんなことはありません。せいぜいモデル平均より2割程度多いかなという程度です。

そのおかげで、すぐには「モデル世帯の場合2000万円が不足!」とはならないので、標準的な暮らしさえしていれば多少は安心と思っています。

しかしそれは現在の制度の元でシミュレーションした結果であって、数年後に本当にその額がもらえるのか?逆に年金が高額ということで足切りをされたり、所得税(年金に所得税がかかるなんて!)や住民税、固定資産税、介護保険料、国民健康保険料がさらに増額されたりして、実質の年金手取りが大きく減ってしまうのか?など不安材料は尽きません。

でも今さらどうしようもなく、預貯金はほとんどないまま、年金生活に突入するしかありません。

そんなわけですから、まだ年金受給まで10年以上ある方は、その最後の10年で、チマチマとで良いので資産を増やしていくことを強くお勧めします。

【参考本】
あなたの年金2019-2020年版
ねんきん定期便がよくわかる本―あなたの年金完全チェック!
「ねんきん定期便」活用法

【関連リンク】
1136 定年延長の功罪と年代格差
1010 不本意な非正規雇用とその実態
970 生活保護世帯の増加は高齢者増加だけが原因なのか?
921 もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ
680 サラリーマンなら関係ないが、国民年金の滞納率



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1383
人斬り以蔵 (新潮文庫) 司馬遼太郎

1964年頃に書かれた短編小説を、その後1969年に8作品をまとめて文庫化した短編時代小説集です。実在する人物と、しない人物が混ざり合わさっていて、どこまでが実際に起きた事象や行動か、あるいはまったくの創造の産物かなどわかりにくいです。

「鬼謀の人」は幕末の写真に残っている異様な顔(巨大なおでこ)をした有名な兵学者大村益次郎と、明治維新の立役者桂小五郎(木戸孝允)との関わり合いが面白い内容でした。

表題になっている「人斬り以蔵」は、土佐藩郷氏出身で剣の達人岡田以蔵と、同じ土佐藩出身の武市半平太が過激な尊皇攘夷を目指す土佐勤王党で一緒になり、以蔵は自分を取り上げてくれた武市のためとして攘夷に邪魔な相手を斬りまくりますが、出身が足軽という家系で軽く見られることに反発し、そしてなんにでも首を突っ込みたい性格を周囲にやがては疎まれ、別々の道へ進む姿を描いています。

「割って、城を」は戦国時代から安土桃山時代にかけての武将鎌田善十(鎌田刑部左衛門)と古田織部正重然が、それまでの戦国時代の武士が、命を賭けて戦うという姿から、お茶をたしなみ芸術を愛でるという姿へ変化していく様が書かれています。

「おお、大砲」は、徳川家康が大坂城を攻略した後に、不要となった大筒(大砲)をもらい受け、大切に何代にもわたり幕末まで保管してきた奈良の弱小藩を描いた作品。

「言い触らし団右衛門」は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将塙団右衛門が、自分の名前を世の中に売り込むため、様々な方法を使うことが、現在の売名行為に炎上商法を使うこととダブっていて面白いところ。

「大夫殿坂」は岡山の津山藩から、商業の街、大坂の出先機関、大坂蔵屋敷へやってきた井沢斧八郎が、その大坂で兄が新撰組の隊士に殺されたことを突き止め、その復讐をする物語です。

最後の決闘シーンは、たった2行ですけど映画「用心棒」のクライマックスシーンを彷彿とさせます。

「美濃浪人」は美濃で養子に入った先の義父が医者だったことから、緒方洪庵に学び、医者として活躍する所郁太郎と、長州藩の武士で後に政治家になった井上馨が刺客に襲われ時に命を救った話し。

「売ろう物語」は安土桃山時代から江戸時代初期の武将後藤又兵衛の物語を抽出したものです。

又兵衛は名高い武将ということもあり、黒田官兵衛→仙石秀久→黒田官兵衛→黒田長政→池田忠継→豊臣秀頼と請われるままに主君を変えてきたことでも有名です。一説には報酬に不満があったとか。

上の「言い触らし団右衛門」にもありましたが、世継ぎではない、貧しい中からのし上がってきた武将は手柄を立てて名を馳せ、それに見合う石高を得るというのが理想だったのでしょう。

でも最後は、負けるのを覚悟して大坂城へ入り、大坂夏の陣で討ち死にします。

こうした主人公にはならない脇役の人達を取り上げた小説というのも、なかなか面白みがあって良いものです。

★★☆

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晴れた日は図書館へいこう (ポプラ文庫ピュアフル) 緑川聖司

現在では怪談や霊感など多くの推理小説を手掛ける著者の長編デビュー作品が、この2003年にマイナー出版社から単行本(2013年文庫化)として出版された児童文学作品という異例の作家さんです。

著者としては児童文学に重きを置いているわけではなく、本来書きたいのは、世の中の不思議などをテーマとした推理ものなのでしょう。しかし児童文学作家として名声を浴び、戸惑いもあるのかも知れません。

それはさておき、60過ぎたオッサンが、児童文学?という気もしますが、なかなかどうして、面白く読ませていただきました。

この小説は、「わたしの本」「長い旅」「ゆれた本のなぞ」「消えた本のなぞ」「エピローグはプロローグ」の短編連作の5作品からなっています。

時には甘ったるいファンタジー小説も読みますが、こうした小学生が主人公のちょっとした疑問や謎解きの話しは肩も凝らないし、あまり考え込むこともなく、サラッと読めて気分転換にちょうど良いです。

★★☆

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パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門: 怒り、イライラのコントロールで、職場は変わる! 成果が上がる! 小林浩志

著者は特定社会保険労務士で行政書士など資格を持つ日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーターで、この著書は2014年に発刊されています。

若いときから割と怒りっぽいタイプと言われていましたが(自覚はなし)、50を過ぎてから丸くなってくるのかと思いきや、どうにも怒りがムクムクと湧いてくるシーンが度々あり、自分では怒りっぽくなったなぁと自覚するようになりました。

例えばお店でちょっとした店員さんのミスでも怒りが湧いてくると言うような感じで、このままキレやすいオヤジになるのも困ったことになりそうで、以前、日本アンガーマネジメント協会が主催している入門講座を受講しようと申込みまでしたのですが、別の用事が入りキャンセルしたという過去があります。

とりあえず、本でも読んでおこうかと思って、お約束の協会代表理事安藤俊介氏の本を探していたのですが、なかなか見つけられず、先にこちらの本を見つけて購入した次第です。

買ってから気がついたのですが、タイトルの上に「パワハラ防止のための」という副題?が入っていて、これは部下を持つ上司に向けた本であることがわかります。

なので、ちょっと目的とするキレない高齢者というのにはあまりマッチしていませんが、これからはその方が需要がありそうだから、そのうち出てくるかな。

本文で紹介されていますが、キレる原因となる個人の「強いこだわり」「譲れない価値観」の種類には、(1)道徳心(2)利己心(3)自尊心(4)執着心(5)警戒心(6)自立心があり、それらの強さが度を超すと怒りに変わるということです。

例えば最近よくあるあおり運転による暴力は、利己心が度を超し、自分の走行の邪魔をしたというところで怒りが満ちているのでしょう。

また自尊心が高いと、ちょっとした注意をされたことでプライドを傷つけられたと怒りが沸点に達し、満員電車内で喧嘩沙汰がおきたりします。

あとは、自分ではどうしようもない(変えられない)ことに対して怒っても生産的ではなく、健康上もよくないというのはよく理解出来ます。例えば、日本経済の行方について心配したり、もっと身近なところでは隣人の攻撃的な性格を変えることは個人の力ではどうしようもないとか。

そうした論理的な怒りの質や、それらの対処法をなどを学ぶことで、温和な生活に、、、というのが理想ですけど、なかなか思うようにいきません。

でも何かあったときに、それを思い出せるように繰り返して学んでおくことが必要でしょう。

★★☆

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幕末時そば伝 (実業之日本社文庫) 鯨統一郎

2007年に「異譚・千早振る」として出版され、その後2011年に「幕末時そば伝」と改題されて文庫版が出ました。

この著者の作品はいくつか読みましたが、古代史ミステリーの解釈などでは目からうろこで、専門家ウケは悪そうですけど、素人に対してはそれなりに説得力があって楽しく読めます。

2011年8月前半の読書「邪馬台国はどこですか?」邪馬台国は岩手の山中に!?
2012年2月前半の読書「九つの殺人メルヘン」グリム童話の残酷さ!?
2013年3月前半の読書「ニライカナイの語り部」作家六波羅一輝シリーズ第2作目!
2013年10月後半の読書「新・世界の七不思議」早乙女静香シリーズ!ノアの箱船と桃太郎!?
2015年10月前半の読書「努力しないで作家になる方法」著者の作家デビューに至るまでの奮闘記?
2016年4月前半の読書「新・日本の七不思議」皆既日食が起きて卑弥呼が死んだ?

守備範囲も相当に広く、日本史だけではなく世界史ミステリーもあり、そうしたネタ探しはどうやっているのか、次はなにが出てくるのかと興味津々です。
今回のは少し前に書かれた作品ですが、有名な古典落語をベースにして、「もし、こうだったら」「あの真実はこうだった」など、コミカル路線で時代の新解釈の内容となっています。

そのためには、元の落語を多少なり知ってないと、面白くないかも知れません。それだけに、興味をひいてこの作品を読むのは古典落語に馴染みのあるかなり年配に限る?という気もします。

出てくる落語は、いずれも有名な古典落語、「粗忽長屋」、「千早振る」、「湯屋番」、「長屋の花見」、「まんじゅう怖い」、「道具屋」、「目黒のさんま」、「時そば」です。

最近は古典落語をテレビで見ることもすっかり減ってしまい、週に1回ある「NHK日本の話芸」の中に時々古典落語が登場するぐらいです。

若い人には、うるさいだけのドタバタコント芸のほうがウケが良いらしく、若い落語家も古典よりも新作落語で動きの激しいコント的な落語をするようになり、静かにしっとりと聞かせる古典落語はもう高齢者にしか需要はなさそうなのが残念です。

★★☆

【関連リンク】
 10月後半の読書 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い、オネスティ、生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント、敦煌
 10月前半の読書 その女アレックス、レオナルドの扉、「やりがいのある仕事」という幻想、ノボさん
 9月後半の読書 赤ひげ診療譚、非属の才能、笑うハーレキン、土の中の子供、あこがれ

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