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更年期障害は女性が罹る病気という認識が一般的ですが、もう10年以上前から男性にも及ぶことがよく知られています。

更年期障害は基本的にホルモンバランスが崩れることにより、心身の不調(ほてり・のぼせなどの血管運動神経症状)がみられる症状で、女性の場合は50歳前後の頃、閉経にともなう卵巣ホルモン(エストロゲン)の低下が主因とされます。

男性の場合もやはりホルモンが関わっていて、その中の「テストステロン」が関わってくると言われています。

あまり聞き慣れないホルモンですが女性と同様生殖機能に関係しています。

年代的には女性よりも少し幅が広く40歳以降に発症することが多いとされています。

女性の更年期障害は、医師にそれと診断される人は全体の2~3割程度に及ぶそうで、いわゆる心身症の症状、例えば動悸や息切れ、めまい、微熱、下痢、便秘、しびれ、知覚過敏など。ひどいと情緒不安定になりヒステリー傾向、抑鬱気分になります。

男性の場合は更年期障害で医者にかかってというケースは極めて少なく、40歳以降に起きる疲労感(だるさ)、性機能障害(EDなど)、抑うつ感、発汗、ほてり、睡眠障害などの症状は、仕事や家庭内からくるストレスや、ちょうど住宅や子供の学費、親の介護など経済的にプレッシャーが強まる時期でもあり、それらが原因で起きる症状と勘違いされがちですが、この更年期障害に罹っている可能性も多そうです。

そして私が関心を持って見ているのが、この男性更年期と自殺率との関係です。年齢層別の自殺者数統計を見ると、男性の更年期障害が発症する40歳以上の自殺率が特に高くなっているのです。

2013年の自殺者統計(男女別、5歳以上10歳刻み)では、「もっとも自殺者が多い年齢層と性別」をみると、55~64歳の男性で4,176人、次が45~54歳男性で3,548人、3番目が35~44歳男性で3,427人となっています。つまり自殺者数の多い年代トップ3を、男性更年期に罹る時期と同じ中高年男性が占めていることになります。

ちなみに女性の自殺者で多い年代は、75歳以上で1,754人、次が55~64歳で1,471人となっています。55~64歳の男女を比較すると男性の方が3倍近く多い自殺者を出しています。

更年期障害とは無縁な若い男性の自殺者数と比べると、25~34歳男性は2,404人、15~24歳男性は1,304人ですから、55~64歳男性はやはり1.7倍から3倍以上と大きな開きがあります。

人数だけでは人口が少ない世代と多い世代で不公正ですので、自殺率(人口10万人あたりの自殺者数、内閣府データ)で比較すると、各年代の中でもっとも自殺率が高いのは80歳以上男性の43人、次が50~59歳男性の42.8人、その次は70~79歳37.6人、その次は40~49歳男性の36.7人となっています。

やはり40代以上特に50代と病気とは無縁ではない80歳以上の自殺が多いということは確かです。



これらのことから男性の40歳から60歳ぐらいまでが自殺する人が多く、それはその年代特有の病気である更年期障害と大きく関わっているのではないかと推測することもできます。

私は58歳、更年期障害らしきことは今まで感じなかったのですが、つい最近になって、疲労感がいつまでも抜けず、覚えがない筋肉疲労を感じたり、身体全体や頭部に微熱が続いているような状態で、足元だけ急に冷え性となり、なにか今までの自分の身体と違ってきているぞと感じるようになってきました。これがもしかすると男性の更年期障害?かもしれません。

幸いなことに強いうつ傾向はなく、睡眠障害もないので、急に電車に飛び込んだり、クルマの運転中に意識をなくしたりというようなことはありませんが(あったらとてもブログには書けません)、全身がだるくて会社を休みたいと思う日が多くなってきたり、土・日曜日にしっかりと身体を休めていても、月曜日の朝から疲れているということがあり、困ったことです。

単に運動不足かなと思って、休日には股関節に負担がかからない程度の軽い運動を続け、体重や体脂肪率も2~30代の頃に戻って、健康診断(人間ドック)は数値的になにも問題がなさそうなのですが、どうも身体の違和感がぬぐいきれません。

40歳以上になって、そうした体調不良や自分の身体や精神状態に違和感を感じた場合、更年期障害を疑ってみるのもいいかも知れません。個人差があると思いますが、もし重く感じた場合は、「男性更年期外来」のある病院やクリニックへ行き、医者から薬を処方してもらうことで楽になることがあるそうです。ひとりで考え悩まない方がよさそうです。

[ 参考 ]
あなたの知らない「男性更年期の世界」(日経BPnet)

メンズヘルスメディカル:男性ホルモンによる男の悩み解決サイト(医療法人社団ウェルエイジング メンズヘルスクリニック東京)

男性更年期NAVI(日清製粉グループ)


男も更年期で老化する (小学館101新書)和田 秀樹
男の養生訓 男性更年期をのりきる知恵 (学研新書)松江一彦
引きこもり、うつ、男性更年期…その原因は!? がんばるほどツライ「下痢」という病 (静山社文庫)石蔵 文信
なぜ一流の男は精力が強いのか? ―男性ホルモン力を上げれば人生が変わる岡宮 裕


【関連リンク】
763 認知症患者の増大で国は衰退する?
738 日本人の年齢別死因は
737 日本人が罹りやすい病気
433 股関節唇損傷についての続編
417 もはや国民病とも言えるうつ病について考える その1

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高齢化社会が進んでいくにつれ、社会の中で活動する人の中に占める病人の割合が増えるということは間違いはありません。

幸いというか日本人の健康寿命(病気やけがなどによる介護の必要がなく健康的に生活できる期間)は、男性で71.11歳、女性が75.56歳と世界で最も長いということですが(出典:イギリスの医学雑誌「ランセット」)、同時に平均寿命も長いので、健康的に生活できない期間もまた多いと考えなくてはいけません。

病人と言っても通常の生活をおくることは支障がない人も多く、そういう人は恵まれていると言えます。

しかし自分の力だけでは立ち上がれなかったり、歩けなかったりする人も年齢とともに多くなります。

ほっておけばそういう人は寝たきりの生活となってしまい、介護者の負担も大きくなってくるわけです。

脳卒中後の後遺症や、股関節や膝関節の老化による変形、骨がもろくなってきての骨折など、特に高齢者に多い歩行困難という人の数は現在約40万人と言われていますが、その数は高齢者数の増加とともに急速に増えていくでしょう。

そうした歩行困難者に対して現在は病院やリハビリ施設での歩行訓練が唯一のケアで、最終的には車いす生活を勧めるということになっていきます。

最近になって実用的な歩行訓練器や、従来の車いすに代わる歩行困難者が外出しやすいパーソナルモビリティが次々登場してきています。これも高齢者増加の影響でしょう。

企業も比較的裕福な高齢者が増えてきたおかげで採算が取れるとみるや、今までは振り向きもしなかったそうした医療用補助具に続々と参入しています。

日本で成功すれば、やがては世界中の先進国が高齢化してくるので、ビジネス的にも先鞭がつけられますからね。

補助具は大きく分けると(1)歩行リハビリのサポート機器(2)トイレや日用品の買い物など外出時など日常の移動手段の提供です。(2)は室内用と外出用に分かれるかも知れません。

とにかく国も政府もこの先介護人材が不足することを見越して、「これからの介護は施設や専門の介護人を頼らず、家庭内でやってください」と宣言しています。

家庭内で寝たきりの要介護者を看ようとすれば、抱きかかえることができる健常者が常についてなくてはならず、非常に効率が悪い介助方法になります。

もし介護が歩行困難だけの場合、様々な機器を利用して、自力で歩くか、または移動が容易にすれば、介護者の負担を減らすことが可能になります。

そこでまず(1)の歩行訓練アシストとして出てきたのが、「Honda 歩行アシスト」という訓練器です。

ホンダの歩行訓練機器「Honda 歩行アシスト」を体験(webCG)

個人が購入して日々使うというものではなく、リハビリの施設などが導入し、患者がより早く楽に歩けるようになる訓練をするための装置です。将来的には個人が一定期間レンタルして一般家庭でも使えるようになるといいですね。

自動車メーカーで使われている技術の中に、自動車組みて工場の中で、立ったりしゃがんだりする際に工員の足腰に負担がかからないよう身体に装着する補助具があったり、重量物を持ち上げるときは、補助具の力を借りて軽々と持ち上げるよう工夫がされています。そうした技術も参考になっているかも知れません。

次に自宅のトイレなどの数歩なら歩けても、自宅から1km離れたスーパーへ買い物に行くのは無理という人向けに、今までなら普及している車いすまたは電動車いすを利用するというパターンでしたが、どうしても福祉目的で作られた車いすは画一的で自由度がなく、病院の中で介護者がいる前提で使うには問題がなくても、利用者のそれぞれの目的にあったものとは必ずしも言い難いものでした。

また保険が使えないと値段がめちゃ高いとか、重量が半端なくあり、ちょっと気軽に利用という感じでなかったり。

最新の車いす的なパーソナルモビリティは決して歩行困難者向けばかりではなく、広い敷地内の移動用だったり、自転車の代わりとして使われたりもします。それを歩行困難者がうまく利用すれば、足の不自由な人でも買い物や散歩など外出が気軽にできるようになるでしょう。

特に地方では人口減で公共交通機関が廃止されたり減便され、生活を維持するためにはひとり1台の自動車が必須という地域が増えています。しかし一方では高齢者は運転能力の問題から免許証の返還を求められるという矛盾も生じてきています。

そこで、高齢者にも安全で、免許証も不要なパーソナルモビリティが今後活躍しそうな感じです。でもまだ日本では法整備が遅れています。

パーソナルモビリティで一番有名なのは2001年にアメリカで発表された「セグウェー」ですが、国内では道路交通法に阻害され一般には普及には至っていません。それにあれは立ったまま乗るので健常者にはよくても足の悪い人には不向きです。

アメリカや欧州などでは、ゴルフ場や観光用、警備などで普及してきています。日本ではセグウェーに対抗するようなパーソナルモビリティのコンセプトモデルをトヨタやホンダが出していますが、法律の壁があって、実際にはほとんど販売されていません。

下記のような画期的な、携帯できるパーソナルモビリティも日本で開発されています。

日本の学生が開発した、持ち運べる電気自動車「WalkCar」がすごい

これは時速10km/hが出ると言うことで、実際はこれぐらいの速度が実用的なのでしょうけど、やはり日本では公道で使おうとすれば道交法の壁に引っかかってしまいそうです。

工場や病院内の私有地とかなら使えますが、それでは極めて限定的なものになってしまいます。

現在日本で使われているパーソナルモビリティは、免許が不要な高齢者向けのシニアカーというジャンルのものが主流です。

これは最大速度が6km/h以内で、電動車いすと同様、歩行者と認定されますので、公道の場合、車道ではなく歩道を走ることになります。この分野はすでにスズキやホンダなど自動車メーカーや、特化したベンチャー企業が参入しています。

車両扱いの「パーソナルモビリティ」と、速度制限6km/h以下に限定され、電動車いすと同様、歩行者扱いの「シニアカー」の二つが、今後どのように融合し、進化していくのかが注目されるところです。

その中間ぐらいに、免許が不要で、自転車と同様、車道が走れ(大きな道路では歩道も走れて)、最高速度6km/hの制限がないパーソナルモビリティがあれば地方都市では大いに役立つでしょう。生活を維持するため、やむを得ず軽自動車に乗っている地方の高齢者も、それに乗り換えることで、もっと便利になりそうです。

地方に住んでいてスーパーへ食料品や日用品を買いに行こうと思えば、片道5kmぐらい距離がある(自動車で40km/hで走って10分以内で到着)のは普通のことでしょう。

その距離をシニアカーの6km/hで向かえば片道で1時間近くかかり、暑い夏だと熱中症にかかり、寒い冬なら凍死、下手すりゃ途中でバッテリーが切れて立ち往生してしまいそうです。なので地方ではシニアカーは不向きです。

道交法や保安基準は戦後から現在まで時代の要請や世界基準の導入など、何度も変化してきました。パーソナルモビリティに関しても今までになかった乗り物ゆえ、「現行法上はダメ」と叫んでいるだけでなく、世界基準に早く合わせたものを早く作ってもらいたいものです(一部制約条件下で運用可にしている地域あり)。

手っ取り早く言うと、地域を限定してもいいので、免許が不要で15km/h(ママチャリの平均的速度)未満で走るパーソナルモビリティを公式に認めるとかです。

また自動車の自動運転技術が世界中で盛んに取り上げられていますが、この自動運転もパーソナルモビリティから始めると、スピードも遅いため、万が一のことが起きても大きな事故には至らず、様々なノウハウをためることができそうです。Googleの自動運転車プロトタイプ」もそうしたところから入ってきていますね。

そうした高齢者や交通弱者に優しいルールやインフラの整備が、進んでいけばいいのですが、借金まみれで少しでも福祉予算を削りたいのと、様々な利権が渦巻いていて、新しいことには消極的で、強い外圧でもなければ変わらない国としては、なかなかハードルが高そうです。

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【関連リンク】
889 公的な高齢者移住計画は成功するか?
888 火事と高齢化社会の因果関係
876 介護にまつわるあれこれ
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
658 自転車のマナー違反が特にひどい



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新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) 宮沢賢治

半世紀近く前、小学生の頃に兄がもっていた挿絵入りの本で読んだ記憶があるものの、内容をさっぱり覚えていなくて再度読み返しです。

著者宮沢賢治は岩手の詩人、児童作家で、1933年に37歳という若さで亡くなり、表題作は草稿として発見され、翌年に発刊されました。そのため、ところどころブランクがあったり、ページが飛んでいたりする箇所があります。そのため小説としてはまだ「未完成」の状態であり、内容の解釈は研究者や読者によって様々にとらえることができ、それもまた不思議な魅力となっています。

この文庫には有名な表題作「銀河鉄道の夜」の他、「双子の星」「よだかの星」「カイロ団長」「黄いろのトマト」「ひのきとひなげし」「シグナルとシグナレス」「マリヴロンと少女」「オツベルと象」「猫の事務所」「北守将軍と三人兄弟の医者」「セロ弾きのゴーシュ」「飢餓陣営」「ビジテリアン大祭」の14編が収められています。著作権が切れているので青空文庫でも読めるはずです。

宮沢賢治氏の文章にはすでに言われているように造語や比喩が多用されていて、それが読み手からすると想像力をたくましくさせます。ただそれだけにどう解釈していいかわからない、難しいということが言えます。

この未完の小説から派生したものは、小説、映画、ドラマ、コミック、ミュージカル、演劇など多くあり、またこの小説の響を受けた作品も数知れず、有名な松本零士氏の「銀河鉄道999」などもそのひとつとなっています。

起承転結があり、登場人物がハッキリしている現代小説に慣れた身としては、他の短編小説含め、なかなか読むのに苦労します(すぐに眠たくなる)が、頭の中を真っ白にして子供の頃に帰ったつもりで読むと、スーと入ってきますのでお勧めです。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

切れない糸 (創元推理文庫) 坂木 司

2005年に発表され2009年に文庫化された作品です。著者の作品はデビュー作「青空の卵」(2002年)や、「ワーキング・ホリデー」(2007年)、「和菓子のアン」(2010年)を読んでいて、割とお気に入りの作家さんです。

2月後半の読書 和菓子のアン

軽めの連作短編小説が多い作家さんで、この作品もその形式です。

そうした作風を見ると同じ覆面作家として活躍している鯨統一郎氏の作品とも共通するところがあり、違いは、坂木氏がお仕事系小説なのに対して、鯨氏は歴史モノ、偉人伝モノが多いということでしょうか。どちらも気軽な気分でシャーロックホームズ的な謎解きミステリー小説が読めるという点は共通しています。

内容は東京下町でクリーニング店を営む家の息子が主人公で、大学を出て、さぁ企業に就職という時に、父親が亡くなり家業を継ぐことになってしまいました。

同じく就職せずに近所の喫茶店でアルバイトをしている大学時代の友人が、主人公の周辺で起きる謎を解き明かしてくれるのは、「引きこもり探偵シリーズ」がデビューした「青空の卵」と共通するパターンです。

それぞれの謎の落としどころは、途中でほとんどわかってしまいますが、それでも刑事コロンボのように、謎がわかっていてもそれを解き明かしていく過程におもしろさがあり、気軽に読めるミステリーとしてお勧めです。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

音もなく少女は (文春文庫) ボストン テラン

2011年版このミステリーがすごい!(海外編)で第2位になった作品です。ちなみに同賞3位だった「卵をめぐる祖父の戦争」はすでに読みましたが、とても面白く、私のお気に入りの1冊となりました。それだけに読む前の期待度は高いです。

2月後半の読書と感想、書評「卵をめぐる祖父の戦争」

日本語翻訳版の発刊は2010年ですが、なぜか本国(米国)で発刊されたのは2012年と不思議な順序となっています。

著者はアメリカ在住の覆面作家で、生年月日等も不明ですが、デビュー作「神は銃弾」(1999年)が高く評価され、数々の賞を受賞しています。

ストーリーは麻薬の売人の父親を持つ耳の不自由な少女が主人公で、1950年代から70年代のアメリカの底辺に暮らす人々とその社会が舞台の小説です。

母親は父親の手によって殺されてしまいますが、闇へと葬られ罪に問われることはありません。少女は母親の友人で手話のできるドイツ系の中年女性によって保護されますが、法的には麻薬販売を生業としている父親が唯一の法的な保護者であり係累という難しい関係です。

麻薬取引にも利用されてきた少女を父親から引き離すため、父親の要求通りに多額のお金を渡すなど様々な努力をします。

やがて、少女はアメリカで成人とされる18歳になり、ようやく父親から法的に離れることができますが、今度は聾学校で知り合った少女を薬中毒の母親から引き離したことで、やはり売人のその子の父親から様々な嫌がらせを受けることになります。

とにかく話しの中身は身体障害や人種的な差別、偏見と、街にあふれる麻薬、暴力、貧困などに満ちあふれていて、読んでいてつらく暗澹たる思いをすることになります。

同年代のドラマと言えば「名犬ラッシー」や「パパは何でも知っている」、「奥さまは魔女」などで、白人のファミリーが裕福な暮らしをしているのがアメリカの風景と思いがちですが、一方ではこうした暗黒の社会も同時にあったのだということがよくわかります。

ただ、どうなのでしょうか、1950~70年代のアメリカ社会を浮き彫りにして、写実的には優れていると思いますが、小説として良くできているのかというと、あまりピンときません。期待が大きかっただけに、ちょっと残念な感じです。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

SOSの猿 (中公文庫) 伊坂幸太郎

2009年に単行本、2011年に文庫化された長編小説です。この作品は漫画家の五十嵐大介氏との競作企画で生まれた作品というちょっと変わった性質の作品となっています。したがって五十嵐大介氏の「SARU」という漫画と共通性があるそうです、読んでいないので知りませんが。

内容は、二人の主人公、家電量販店店員の遠藤二郎が副業としておこなっているエクソシスト(悪魔祓い)の物語「私の話」と、システム開発会社の品質管理調査員五十嵐真がクライアントの証券会社で起きた300億円の損失につながる株の誤発注事件調査の物語の「猿の話」とが交互に展開されていきます。ここでいう猿とは西遊記に登場する孫悟空と思っていて間違いないでしょう。

それだけ聞くとなんのこっちゃ?って思われますが、話しの中程まではやはりこの二つの物語はそれぞれなんのこっちゃ?って感じがずっと続きます。そこは頑張ってしのいでしのいで、二つの物語がぶつかり合うクライマックスへ向かっていくのです。

ただ、中盤から終盤にかけて、コンステレーションとかユングやフロイト、夢の分析、エジプト学者のドロシーとか出てきた日には、もう瞼がすぐに重たくなってきて、寝る前に読む本としては致命的にきつく、分量からすれば1時間×3日もあれば十分読めるところを睡魔との戦いで1週間ぐらいかかってしまいました。少なくとも疲れたときや寝る前に読む小説ではなさそうです。

★☆☆


【関連リンク】
 8月後半の読書 時が滲む朝、追風に帆を上げよ クリフトン年代記第4部、午前三時のルースター、八朔の雪
 8月前半の読書 超・格差社会アメリカの真実、恋する空港-あぽやん(2)、津軽殺人事件、恐山殺人事件
 7月後半の読書 星を継ぐもの、青が散る(上)(下)、月の上の観覧車、ジェントルマン

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955
ここ3年ほど毎年東北へクルマで出掛けていますが、各地の道の駅を利用してみて、観光バスが団体で乗り込んでくるようなすごく活気のあるところと、ほとんど閑散としてしまっているところと、いわゆる勝ち組と負け組がハッキリとついてきた感があります。

以前ブログに「地域活性化は道の駅で」、「道の駅は次の段階へ進めるか」というのを書きましたが、道の駅も2年前に全国1000カ所を突破し、やや飽和状態になってきたようで、ネガティブな話しも出てきています。

道の駅はコンビニに駆逐される? 誕生秘話と淘汰の時代
隣接する自治体が競うように建てたあげく、1キロごとに道の駅が並ぶ道路もある。また補助金事業の典型で、売るものに工夫がなく、参加事業者も行政への依存傾向が強い。そもそも何のために建てたのか目的が見えない。むしろ立派すぎる施設の維持費がかさんで、経営を圧迫する例が増えてきた。
(中略)
今後は淘汰が始まるだろう。いや、すでに始まっている。交通の主役が鉄道から道路に奪われたように、生ぬるい道の駅は、コンビニに駆逐される?

先述したように、その地域の観光拠点となっていて、休憩以外に利用できる「なにか」があり、多くの観光客が押し寄せるような道の駅もありますが、一方では寂れてしまっていて、薄暗く昼間でも営業しているのかどうかわからないような道の駅もあります。

そうした勝ち負けがつくのは、利便性というか設置場所という点が大きいのは言うまでもありません。

いくら便利な場所でも同じような施設が集中すると、客は分散し、また客の争奪戦で荒れ果て、共倒れしかねません。

そして次にはやはり美味しい名物があり、地域の名産品が購入でき、そして付加的に日帰り温泉があったり、遊園地が設置されていたりというお手軽なレジャーが味わえることが重要なのでしょう。

では名産品もなく、温泉もないと寂れるかと言うと、民間の知恵で必死に経営努力をしているところは、観光客だけではなく、地元の人にも愛されて、うまく回っているところも見受けられます。

ま、地元の人ばかりで観光客がちょっと近寄りがたい雰囲気のところもあり、悩ましいところですけどね。

どうしてもこうした道の駅の事業も、おつむの堅い町や村の役人が主導でおこなうと、施設の営業時間は朝9時から夕方5時までと決め、日が長い夏であろうと、観光シーズンでも関係なく、とてもサービス業とは思えない営業態度がかいま見られます。

やる気あるのか?って聞きたいぐらいです。ま、そういうところは補助金さえもらえればどうでもいいと、やる気はないのでしょうけどね。

残念ながら現在の道の駅は世間で行列ができるような有名店や人気店というのはほとんど入っていません。これはなぜなのかな?って思うと、道の駅のテナント誘致は基本的に地場企業優先で、他の地域の店舗やフランチャイズの店をどうも避けているような感じです。これもなにかお役人の発想のように思えてきます。

昔の高速道路のサービスエリアに入っていたレストランは、なにか官営っぽい匂いがする高くてまずくて従業員も公務員っぽくてやる気がないショボイところが多かったのですが、道路公団が民営化されて以降、有名ファストフード店、全国チェーンのコンビニ、そして有名レストランやラーメン店などが次々と出店し、素晴らしくよくなってきました。

そしてついにはアウトレット施設や、レジャー施設なども充実してきて、そこへ行くことが目的となっている人気の場所となってきています。

ただしそうしたものと無縁の単なるトイレ休憩や仮眠をとるための寂れた駐車場となってしまっているところもまだ残っていますが、それもいずれは変わっていくでしょう。

上記の記事の中では「コンビニのほうが品揃えもよく、やがては道の駅も淘汰されていくだろう」と書かれていますが、確かにコンビニと同じ土俵で戦おうとすれば、その洗練された販売ノウハウや、道の駅独自の防災機能としての備蓄義務など設備費の負担が重く勝ち目はありません。

ただ道の駅は一般的に安く広い土地を有効に利用できるというメリットがあり、また施設面積も大きく、さらに全国チェーン店ではないので料理や商品に地域色を出しやすいメリットも多くあります。

またサービスエリアでもやっているように、深夜までやっているような行列の絶えない人気ラーメン店や、人気のベーカリーをテナントに呼び込み、休憩のためではなくわざわざ「遠回りをしてでもあそこの道の駅に寄りたい」「デートでも使えるお洒落なレストランが入っている」「スーパーよりも食料品の品揃えがいい」というような客を捕まえるなど工夫が必要でしょう。これらはコンビニでは絶対にできないことですね。

今後はそうした努力と、官製ではなく、民間のマーケティング意識がよく考えられた道の駅だけが生き残り、役人主導で補助金目当ての道の駅は淘汰されていくことになるのでしょう。

しかし多少の優遇をすれば、自助努力でなんとでもなりそうなのに、どうして補助金など出すのでしょうね。これも利権につながっているのでしょうか。「道の駅経営コンサルタント」の仕事でもやろうかしら、、、


【関連リンク】
856 コンビニの活用はどこまで進むのか
813 地域活性化は道の駅で
719 道の駅は次の段階へ進めるか
711 地方が限界集落化していく
667 減りゆくガソリンスタンドが生き残る道
653 小売ビジネスはどこへいくのか
616 ガソリンスタンドの経営が厳しいと言うことはわかるが



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954
以前書店数が激減しているというブログを書いたのが、5年半前の2010年1月ですが、その後も順調?に減らしてきているようです。

書店数の推移(1999年~2014年、青、棒グラフ、単位:店舗数、出典:日本著者販促センターデータ)と出版物(書籍、雑誌合計)推定売上推移(2004年~2013年、赤、折れ線グラフ、単位:億円、出典:出版流通コンサルティング冬狐洞隆也氏のデータ)です。



書店数と出版物の売上が見事にリンクし、最近ちまたでは別にめずらしくはない綺麗な右肩下がりのグラフとなっています。

まず書店数ですが、1999年の22,296店から2014年には13,943店と、15年間で8,353店減らしています。このままのペースでいくと、あと20年もすれば計算上では国内の書店のほとんどが消えることになりそうです。

ま、多くの人は書籍はネットで、雑誌はコンビニで買うから書店が消えても不便を感じないかも知れません。外勤営業の人の無料&時間つぶしの場所がなくなるのは気の毒な限りですが。

それに数値ではわかりませんが、主に中小零細な書店中心に減っているようで、チェーン展開している大型書店はそれなりに頑張っているので、まだしばらくは大丈夫かと思います。

書店が減るのは書籍など出版刊行物が減ってきていることとも比例しています。

書籍や雑誌の売り上げは、2004年に22,428億円あったものが、10年後の2013年には16,823億円と5,605億円減らしています。

売上が16,000億円で、10年間で5600億円減ということは、こちらもこのままのペースだとあと30年ほどで売上0円になる勘定です。書店が20年で、出版社が30年で消滅ですか。

もちろん国内から書籍(電子書籍含め)がなくなることはないでしょうけど、構造転換しなければ、出版社も印刷会社も取り次ぎも書店も一往に厳しい状況になっていくばかりでしょう。(紙の)書籍ファンの私としては寂しい限りですが、、、

もうひとつ別のデータでは、「出版業界、5年間で1兆2500億円の売上減 帝国データバンクの経営動向調査」という記事がありました。

こちらは書籍や雑誌の売り上げだけでなく、出版業界(書店経営業者、出版社、出版取次業者)全体(製紙会社や印刷所は入っていない模様)の売上減少の話しです。

ザックリした概要を書くと、出版業界の2008年売上はおよそ6兆円あったが、この5年間で約1兆円ダウンして5兆円になった。

つまりこのペースで5年ごとに1兆円が減れば、25年後には売上が0になるという計算になります。当たり前ですが、上記の書店数や書籍売り上げの下降線と消滅する時期がほぼ同様になっています。

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さて、出版業界や書店に明るい材料や未来はあるのか?って聞かれると、特に根拠はいくら探し回っても出てきませんが、あるに違いないと思いたいです。

1970年代に旧ソ連で発達した角膜にメスを入れて視力を回復させる技術が確立され、その後レーザーメスが発明され、より安全確実な手術が可能となってきたのは承知のことです。

そうした技術が生まれたとき、私はこれで「眼鏡業界やコンタクトレンズ業界の人は10~20年後には完全に失業だな」と思っていましたが、それから40年経った今でも眼鏡もコンタクトもまだまだ健在です。

特に書籍はそれを作り出すコンテンツ力が重要で、いくら技術が進んでも自動的に面白い小説を創り出したり、過去の小説を現代風にアレンジをしてくれません。自動化や機械ができるのはせいぜい校正とか翻訳と言ったところでしょう。

人気作家が紙の書籍として出したいと望めばそれはかなうでしょうし、電子ブックと併用したり、初期費用をかけないよう電子版だけで発行というのも増えては来るでしょう。

配布方法や見る手段が変わっても魅力あるコンテンツを作り送り出すビジネスはなくなりはしないということです。

1980年以降に生まれた人は物心ついたときからPCや携帯電話などが身近なところにあり、デジタルネイティブと呼ばれていて、おそらく紙の書籍よりも電子書籍が普通という感覚を持っているいる人が多いのではないかと思います。

ただし同じデジタルネイティブでも、親がその世代ではないと、子供に対して紙の本や新聞を読めと勧めたり強制することもあり、一足飛びに完全デジタル世代にはならないでしょう。

紙の出版物が完全になくなっても差し支えない世代は、デジタルネイティブが親になり、その子供が社会に出てきてからになると思われます。

1980年生まれは現在35歳、結婚していればすでに親になっている人が多いでしょうが、その子供はと言うとまだ社会に出てきてはいません。それに残念なことに非婚化と少子化により、その世代は数的にメジャーとはなり得ません。

ということは、デジタルネイティブ世代前の最後の世代1970年代生まれの人達が寿命を迎えてほとんど姿を消すまでは、おそらく書籍にしろ新聞にしろ、その他出版物も現在と同じ紙のままで生き残るのではないかと思うわけです。

アナログ世代の最後に属する1975年生まれは今年40歳、普通に活動できる寿命が平均的に80歳だとするとあと40年ありますね。それまではボリュームは減り続けても、アナログの書籍や新聞の需要はあり、なくならないと考えられます。

ちなみに老若男女に支持されていそうな又吉直樹著の芥川賞受賞作品「火花」は、紙の単行本が150万部に対して電子書籍は10万部ということです。この電子書籍10万部という数字は発行元の文藝春秋社でも初のことだそうです。

つまり現在の書籍では、紙版15に対して電子版は1という比率(7%)が実態というか、いろいろと言われていますがまだ電子書籍は1割にも達していない、そんなものなのです。

さらに紙の書籍の廉価な文庫版が登場すれば、電子版との差はもっと広がりそうです。

やがてこの紙と電子版の割合が均衡し、そして逆転する時期が来るでしょうけど、先に述べた理由からして、それにはまだ10年以上はかかりそうに思われます。

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新聞ですが、相変わらず効率の悪い旧式のビジネスを踏襲し続けていて、まもなく大転換の時期がやってくるでしょう。

朝夕2回個別に宅配をするような、人手や人件費がかかり過ぎるビジネスは、大都市圏の集合住宅地域でないと維持できなくなるでしょう。その前に新聞をとる世帯が減少し続けています。

コストを下げるため配送や配達員に外国から安い労働力を入れますか?入ってきても、すぐにもっと割のいい楽な仕事に移っていくだけですよ。

新聞がどうしても紙で読みたい場合は、コンビニに買いに行くか、コンビニがない地域では新聞自動販売機で購入するとかになりそうです。あるいは月間購読料(約4,000円)が今の2倍とかになるかもです。

思いつきのアイデアですが、日本郵便とタイアップして、全国各地にある郵便ポストに新聞の自動販売機をくっつけるとかすればいいのかも知れません。補充は郵便物収集の日本郵便の人が一緒におこなえばいいのだし。

おそらく規制緩和が必要でしょうけど、それぐらいは既存の新聞配達所以外、誰の迷惑にもならないので簡単にできるでしょう。

すでに一部では進んできていますが、新聞は紙ではなく電子版へ移行していくのは確実です。

新聞を網羅的に見たいという人のために、大きめのタブレットも出てきていますが、高齢者にとっては重かったり設定が難しく使いづらいものです。

少なくとも新聞社は自社専用のタブレットを作って、購読者に無料で配布し顧客を囲い込むぐらいの思い切った戦略をとらない限り、ジリ貧に陥ってしまうでしょう。

自社専用タブレットならば、起動すればwi-hiにつながり、自社専用画面が表示され、お買い得品や旅行の案内など、新聞事業以外のネット通販など新しいビジネスへ拡がります。

端末ごとに個人が登録されていて、新聞購読代の引き落としをおこなっていれば、通販も独占でき、Amazonや楽天よりも有利に展開ができます。

そういう大きなビジネスチャンスをみすみす捨てて、個人が所有する汎用性があるパソコンやタブレット、スマホで「有料の電子版をどうぞ」という今のビジネスモデルは、まったく先見の明がないアホとしか言いようがありません。

長くなってしまいましたが、やりようによっては、出版社も新聞社も新たなビジネスチャンスは必ずあるけれど、それはアナログ世代が古いしがらみにまみれながら考えたり事業方針を決裁するようなモデルではなく、まったく新しい発想に立たなければ生み出されないだろうということです。

つまり大新聞社にしろ、大手出版社にしろ、早くデジタルネイティブの30代の役員、社長を据えて、必死に考えて実行したところだけに未来があるということでしょう。角川がドワンゴとくっついたりしたのはまさにその先鞭だと言えるでしょう。


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