リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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2012年度末の「対外資産残高」が過去最高の296兆3150億円となり、これで22年連続して日本は世界一の債権国という状態が続いています。
自分自身は借金(住宅ローン)まみれですが、国はしっかりと貸し出す側にまわっていることを知ると、なんだか少し嬉しくもあり、自分はなにをやってんだと落ち込むこともありです。
ロバート・キヨサキ著「金持ち父さん、貧乏父さん」でも、お金持ちになるには「借りる側」ではなく、早く「貸す側」になることだというのが信念として貫かれていますが、将来にわたって、借りるリスクは大いにあっても貸し出すリスクはそう大きいものではありません。
この「対外資産残高」、わかりやすく言えば、日本(個人、企業、政府)が世界中に持っている様々な海外の資産(対外資産)から、海外の負債(対外負債)を引いたものですが、それが世界一多いということは、表面上は世界一の債権国、つまりはお金持ちの国ということになります。
なにかよくわからない人も、そのように聞けば悪い気はしませんが、私を含む一般的な庶民からすると、現実的にお金持ちとは縁遠く、対外資産というのがどうもピンときません。
ちなみに「対外資産残高」の多い1位はダントツで日本ですが、以下は2位が中国で150兆2875億円、3位がドイツで121兆8960億円となっています。
日本は2位の中国の2倍近い対外資産残高を持っているのですね。アメリカはというと、これがまた主要国としてはダントツの大赤字です。ちょっと意外でしょ。
ただ、個人資産に当てはめてみると、その年のある時点で赤字だからと言っても、それだけをみて貧乏な人かというと必ずしもそうとは言えず、例えば事業や不動産などで多額の借金をして投資をしていれば、今は赤字だけどもそれに見合う以上の資産、例えば将来上場する予定の企業の未公開株や、大規模な開発が直近にある駅前の土地を持っているかもしれません。
そういう将来性のある不動産や債券をいっぱい持っている人を貧乏とは言えません。
一般的な日本人の価値観としては、お金があればそれを貯蓄や投資にまわし、残高を赤字にするよりも、地道に銀行に預けておき、黒字にしたままチマチマと利子をもらうほうがいいという感覚ですが、世界を見ると必ずしもそれがいいと考える人ばかりではありません。
では対外資産にはどういうものがあるでしょうか?
日本政府がアメリカ国債を頼まれて(押しつけられて)買ったというニュースはよく聞きますが、こうした外国の国債や外国企業の債券を日本政府や日本企業、日本人個人が買ったものがそれにあたります。
また日本企業が中国に進出し工場を建て、工作機械や設備を購入し設置しています。これらも日本企業の海外資産です。さらに日本企業が外国企業をM&Aして傘下に収めた場合、その会社は日本の海外資産となります。
一方対外負債は、資産の逆で、外国企業が日本企業を買収したり、日本国債や日本企業の株を外国人が購入した場合などです。
なので国内の企業や不動産などに外国資本が投資をすればするほど対外負債は増えることになりますが、そのこと自体が必ずしも悪いことではないことはおわかりでしょう。
ざっくり分けると対外資産は「直接投資」「証券投資」「その他投資」「外貨準備」の4つに、対外負債は「直接投資」「証券投資」「その他投資」の3つに分けることができます。
では、ちょっと考えてみてください。
日本の製造業が海外に進出する話しはよく聞きますが、外国の製造業が日本に進出してくるという話しは滅多に聞きません。
先進国同士でもアメリカ企業に投資をしたり、アメリカに現地法人や研究所を作ることはよくあります。
しかし小売り業やサービス業はともかく、外国企業が日本にやってきて生産設備を作ったり研究所を開設するという話しは極めて稀です。
そう考えると、日本は海外投資をするばかりで、逆に日本国内へ投資をしてくれる外国企業は少なく、日本は買う一方(資産)で、買われることはなく(負債)、したがって意図してというよりかは構造的に大きく黒字になってしまうというのが実態のようです。
したがって、この対外資産が圧倒的に対外負債より多いということが、本当に喜んでいていいのかちょっと複雑なところがあります。
下記のグラフはブルーの棒グラフは財が資産残高推移で、右肩上がりで順調な伸びを示しています。これはこれで決して悪いことではありません。
しかし折れ線グラフは対外直接投資の資産と対外直接投資の負債の推移です。もちろん上にある茶色の線が対外資産(日本が外国へ直接投資した資産額)で、緑線は対外負債(外国が日本に直接投資をした負債)を現します。
この対外資産と対外負債はかなりの差がありますが、近年その差がますます拡大しているように見えます。
それはどういうことかと言うと、外国から見ると「日本は投資するに値せず」ということで、外国資本は日本を避けて、おそらく中国やシンガポール、中東などへ投資を積極的におこなっているのではないかと推定できます。
そりゃ長引く不況やデフレで経済が疲弊し、さらに今後は超高齢化社会を迎える国よりも、成長著しく若々しい国へ投資する方が誰が見ても理にかなっているからです。
もし外国企業が、元気のない日本企業を買収して再建してくれたり、日本国内に研究・開発拠点や生産拠点を次々と作ってくれると、日本人の雇用も増え、経済も活性化してくるでしょうが、よくご存じの通りそうはなっていません。
この資産と負債の折れ線グラフによく似たものがあります。それは来日する外国人数と外国へ出掛ける日本人数の推移です。
つまり外国に出掛ける日本人と来日する外国人の数はおよそ2~2.5倍ぐらいの差があり、圧倒的に日本人が外国へ出掛ける人の数が多いです。
観光やビジネスにおいて、日本から外国へいくことは多くても、その逆は極めて少ないということで、対外資産残高と負債の関係とうまく合致しているようです。
元々日本人は世界一の貯蓄率を誇ると言うぐらいローリスクローリターンの地道な銀行貯金や、さらに利子すら付かないタンス預金が大好きな国民ですから、国と国の収支バランスをみても同じような結果となるのでしょう。それが面白いところです。
多くの学者や政治家が、グローバル化に合わせて日本も変わらなきゃと言いますし、それは日本が再び鎖国でもしない限り、間違ってはいません。
猪瀬直樹東京都知事が、日本のビジネスタイムを2時間早めて、金融マーケットを東京-ロンドン-ニューヨークの3地点の必ずどこかが開いている状態にしては?という提案がありました。
当然そう言うアイデアは他国に真似のできない日本の地政学上の特性を生かしたひとつのアイデアでしょう。
ただし始業を2時間早めるのは金融機関(銀行・証券)と金融庁だけにしておいて、あとは関係ないのでいまのままでもいいような気がします。通勤時間帯の分散にもなっていいことです。
今後不活性化が顕著になりそうな日本経済をもっと活性化したいのならば、例えば外国の製薬会社などバイオテクノロジーの大規模な研究所を税制面や環境面で優遇し、国内へ積極的に誘致し、そこに多国籍の研究者や日本の若い研究者を送り込むような政策が必要です。
そうすれば付随して日本人の新たな雇用も生まれるでしょうし、高齢化社会の中で需要の高い医療の発展にもなります。
しかし現状では優秀な研究者はヨーロッパやシンガポールやアメリカなどに集まり逆に日本の技術者も外国企業や外国の学生のために働くという形になっています。
なぜそういうことになってしまったかと言えば、
(1)日本に外国企業が拠点を設けるのに税制など有利な点がない
(2)様々な既得権益者を守る規制や法律が複雑にあり外国企業が進出しにくい
(3)東大派閥など学術分野において古い制度や慣習があり、新参者を受け入れない体質がある
(4)労働者の多くは製造業向けの教育を施され現代の企業に向かない(例えば英語ができないとか論理的思考がうまくないとか)
(5)80年代のバブル以降、土地代や労働賃金、生活費が高い
(6)図抜けた世界のトップクラスの学校がなく才能も平凡
などでしょうか。
外国企業が日本国内に研究所や生産設備、流通拠点などの投資をすることは、対外資産から言えば負債となりますが、そういう負債なら不況の続く国内において本来歓迎すべきではないでしょうか?
でも木を見て森を見ない人は、対外資産が大きく黒字だということだけを見て喜びますが、それは必ずしも正しくはありません。
世界から日本を見た場合、人や企業同士の交流はあまりなく、余った金をいくらでもすぐに貸し出してくれる単なる高利貸しか金満家という国になってしまっているのではないでしょうか?
そうだとすれば、いずれは「金の切れ目は縁の切れ目」となってしまうかもしれません。
【関連リンク】
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著者別読書感想INDEX
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大卒の就職率が年々落ちてきているような話しになっていますが、実際のところはどうなのか、自分なりに事実を知るために統計データを集めてみました。
一概に就職率と言っても、各大学が公表する就職率はその大学独自のものなので、大学同士の比較には使えても、全体の統計には向きません。
一般的に使われるのは厚労省と文科省が共同して出している「大学等卒業者の就職状況調査」です。
まず、一般的に公表されている就職率(就職決定者/卒業生のうち就職希望者)と、就職希望率(卒業後、就職を希望する人の率)のグラフです。こちらは1997年から2013年までの16年間のデータしかありません。
これを見ると、2008年3月卒の96.9%を最高にして、その後リーマンショックの影響が大きかったと思われますが、91%までダウンし、その後2012年3月卒以降、93%程度まで持ち直してきています。
直近の2012年と2013年3月卒の93%は過去16年間を見ると、決して悪い数字ではありません。卒業後に就職を希望する就職希望率も凸凹はありますが、概ね70%前後で推移していてあまり変動傾向は見られません。
次に、大学全卒業生に対して就職した人がどれほどいるかという就職率と就職者数をグラフにしてみました。こちらは1950年からの63年間の推移です。
このグラフの就職率は「就職者÷卒業者」で算出されますが、その母数を卒業者全員とするので、実際には大学院などへの進学者、家業に就く人、卒業後すぐ起業したり、医学部の場合は臨床研修医になったり、就職を希望せずフリーターとして生活している人なども数多く含まれることになります。
つまり就職率60%と言っても、就職しなかった40%のうち39%は就職を希望していない場合もあり得るわけです。それについては後ほど。
例えば景気が悪くていい就職先が見つからなければ進学しようという裕福な人もいるので、一般的に不況時には卒業後の進学率が上昇し、結果就職率を下げる結果となります。
また時代の変化と働き方の多様化で、学生時代のアルバイト先でそのままフリーター生活をおくったり、起業して就職しない人も50年前と比べると相当多くなってきているでしょう。
こちらのロングレンジのグラフで見ると、就職率はバブルが崩壊する1992年頃までは70~80%をずっと維持してきましたが、その後20年間は60%前後まで下がってきています。
1990年頃から就職率が急速に落ち、就職者数も2005年頃までは減少傾向、2006年から2009年までは上昇へと移ります。ここ最近はちょっと上下動が激しそうで、企業の採用意欲にもやや混乱が生じているようです。
一方大学卒業生は2000年頃から横ばいとなり、今後は少子化と大学授業料の高騰の影響もあり、これ以上増えることはあまりなさそうです。
このグラフを見る限り、就職率(ピンク色)は下がってきていると言えそうです。しかし大学生の卒業者数と就職率の関係を見ると、卒業生が増加すると就職率が下がり、減ったり横ばいになると就職率は上がるという関係性も見られます。
つまり、大卒者の就職率が悪化する原因のひとつには大学への進学率が高まり卒業生が増えすぎたためとも言えるわけです。
次に文科省の「学校基本調査」を見てみましょう。こちらで卒業後の進路がある程度把握ができます。古いデータは見つからなかったので2003年から2012年までの大学卒業後の進路をグラフです。
卒業者のうち、就職した人の率はこの10年のあいだでも55%(2003年)~70%(2008年)とかなり幅があります。進学率は11%(2003年)~16%(2010年)と増えていますが就職率ほどの開きはありません。
最近は若者の非正規雇用問題が叫ばれているので、さぞかしここ数年は大卒者の卒業後に「一時的な仕事に就いた者≒非正規雇用」が多いのではと思いきや、2003年の4.6%から徐々に下がっていて、2008年は2.1%まで下がり、2012年は少し増えて3.5%というところ。
意外にも騒ぐほどには大学卒業後の非正規雇用は多くない(100人に2~3人)と言えるのではないでしょうか。
おそらく大卒後3年以内に正社員を退職し、フリーターとなる人も多いと聞きますので、就職率とも併せて大学卒業しても正社員として就職できないという錯誤がまことしやかに言われている気がします。
決して大卒後に就職できずフリーターになったり、「進学も仕事もしない者」になった人が、ここ10年間を見る限り現在だけが異常に多いというわけではなさそうです。
そしてこのグラフで見るべきは、就職者数(グラフの薄青色)で、リーマンショックが起きた2008年頃までは順調に増加傾向にあった大卒就職者数が、2010年に一気に下落しました。
やはり就職者数は景気の行方に大きく左右されます。就職者数が減った分、増加したのは「進学者」「一時的な仕事に就いた者」「進学も仕事もしない者」です。
謎なのは「進学も仕事もしない者」(グレー)の数が「進学者」(青)よりも常に上回っていて毎年9万人前後に達します。この人達はいったいどういう人なのかがよくわかりません。
想像するに、留学する準備(語学の勉強とか)をしている人、臨床研修医のような立場の人、起業した人その準備をしている人はまぁわかりますが、今の世の中で大卒後自宅で花嫁(花婿)修業をしている人がそれほど多いとも思えませんし、ニートも毎年3万人が増えていると言ってもそれは全年代に対してのことですからやっぱりよくわかりません。
もしかすると農業や個人商店などの家業に就く人の場合、就職ではなくここに入ってしまうのかも知れません。この数字の多さが今後の脅威(例えば年金不払いや生活保護受給の増加とか)にならないことを願うばかりです。
【関連リンク】
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560 若者の大企業志向を非難する前に
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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
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ツ、イ、ラ、ク (角川文庫) 姫野カオルコ
2003年の作品で、受賞は逃しましたが直木賞の候補に選ばれた作品です。少し前には「ハルカ・エイティ」(2005年作品)を読みましたが、両作品とも受賞は逃しましたが直木賞の候補に挙がった作品です。
主人公の女性の小学校時代から中学校時代の話しがメインで、同級生や親友、先生などの狭い範囲の中での交際や恋愛、友情、痴話喧嘩などがギュッと詰まっていて、50も半ばのオッサン(自分)にとっては、まぶしいような、あまりにも遠すぎて実感が湧かず、残念ですが読んでいてあまり愉快なものではありません。
小中学生の頃は男子より女子のほうが成長が早く大人だと言いますが、私の中学生の頃と言えば、男ばかりのクラブ活動で毎日汗まみれだったことや、せいぜい同性同士でエッチ系な映画を見に行ったり、ごくごくまれ~に(健全な)デートと言ったところで、この小説に登場するような「あいつとあいつは完全にデキている」とか「先生を異性として見る」というような浮ついた話しはほとんどなかったような気がします。その頃の私の狭い範囲の中ではということですが。
しかし現実には小・中学生同士の異性関係や教師との関係など、事件や話題としてはよく社会問題となっていることもあり、著者が中学生当時にも、そういうことが実際に起きていたり、噂にあがっていたのでしょう。
ただ、なんというか、あまり面白味のない平凡な毎日に、思春期を迎えた女子中学生が性に目覚め、やがては破綻を迎えるというできれば10代、遅くとも20代前半のあいだに読んでおくといいかもと思う作品でした。ま、中学校の校内の図書館には置いてはないでしょうけどね。
◇著者別読書感想(姫野カオルコ)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
終の住処 (新潮文庫) 磯崎憲一郎
この本が発刊された2009年当時著者は44才、まだ夫婦の機微や人生について経験上から多くを語れるわけではないでしょうが、意外にも老成されているのか、それとも小説家としての才能なのか、なかなか味わい深い作品です。この「終の住処」は2009年の芥川賞を受賞しています。またこの本には「ペナント」という短編も一緒に収録されています。
文章は読みやすい文体で淡々としながら、改行は少なく主人公の思いがダラダラとつづられています。ただ、主人公のサラリーマンが、妻と11年も会話を交わさず、その間に8人の女性と浮気を続けているというストーリーにはどうも現実性がなく、ホラーかSF小説を読んでいるような気がします。
例えば「普通のサラリーマンが、電車の中で目があっただけの見知らぬ女性の後をつけていって、そのまま自宅に入れてもらって関係を持つ」なんていうのは、エロ系男性週刊誌の小説でもあり得ないでしょう。
この主人公の自慢たらしい半生とユニークな夫婦生活を独特の文体で表現したことが、人の内面を見事に浮かび上がらせたかはともかく、賞に値するものなのかは、私にはよくわかりません。
「ペナント」も軽いタッチの作品ですが、私も小学生の頃にペナントを集めていたことをふと思いだしました。今では買うこともありませんが、当時ペナント集めはそこそこ流行っていて、自分が行った先だけでなく、親や兄弟が行った先でも必ずペナントを買ってきてくれて、壁に貼る場所がなくなり、天井に円を描くように貼っていた思い出があります。ちょっと懐かしくなってこの小作品には好意を寄せました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
判決の誤差 (双葉文庫) 戸梶圭太
2008年発刊、2011年に文庫化された作品です。本格的社会派ミステリー作品もありますが、コミカルな内容のものが多く、気楽に読めてしまえるのが特徴でもあります。2008年には自ら監督・制作・脚本・音楽とこなした「生活保護打ち切り隊 [DVD]」という未来の足立区をパロった作品がありますが、ぜひ見てみたいものです。
この著者の作品は、2001年に椎名桔平主演で映画化もされた「溺れる魚 」を読みましたが、それ以来の2冊目です。
この小説は2009年から施行された裁判員制度についてコミカルな小説仕立てで作られていますが、2008年の初出ということは、まだ裁判員制度の実例がない時に書かれたものです。したがって、現行の制度からすると、おかしなところもありますが、それはご愛敬ということで、栽培員制度が始まる前に書かれたというところに価値を見出せそうです。
ストーリーは、エリートサラリーマンの他、パチンコばかりしていて生活保護を打ち切られた暴力性向のあるオヤジ、親の遺産で派手な生活をおくっている躁鬱病持ち、女子高生に恐喝されているオタク、落ち目になってきて会社をクビにされた元アイドル歌手など、現実的には選ばれそうもない裁判員ばかりが集められ、殺人事件の裁判を進めていきます。
こういった法廷ドラマの場合、最後の判決直前にどんでん返しがあり、最後の判決でクライマックスを迎えるパターンなのですが、この小説ではそのあたりの詰めというか盛り上がりに欠け、バカバカしくもなんとなくドタバタしたままスッと終わってしまったという感じです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの (PHP新書) 中島義道
「闘う哲学者」として有名な著者はいわゆる昭和時代の頑固オヤジとも共通するところがあり、好き嫌いが激しく、筋の通らないことが頑として認めず、上司であろうが有名人であろうが、間違っていると思うことはズバッと指摘をして嫌われるというなかなか現代社会には珍しい大学教授です。
以前「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」を読みましたが、世の中の常識というまやかしにとらわれていて、自分の考えを持つということをほとんど捨ててしまった自分の脳天をポカリと張られたような気がする作品で印象深いものがあります。
この本でも序盤に授業中に私語をする学生の話し、私語が止んでも今度は死語となってしまう感性などについて、誤解を恐れずズバズバとわかりやすく教育論を展開されています。
特に日本中にはびこっているマナーの告知や標語(ポスターや放送)にはかなりの枚数を割いて不快感を表し疑問を投げかけています。確かにどこの役所にもバカのひとつ覚えみたく交通安全や障がい者へのいたわり、不法投棄の防止、ルールを守って安全な暮らしを的な言葉が氾濫しています。私は特に駅や車内での不要な放送が多すぎるといつも憤っています。若い人のように大きな耳栓(え?違う)をしようかと思っています。
一方では、駐輪禁止の大きな看板の周辺には大量の放置自転車があり、電車の優先席付近で携帯電話の使用を禁止する警告があちこちにベタベタ貼られ、さらに車内放送でも繰り返し注意喚起しているにもかかわらず、優先席でなにはばかることなく携帯電話を使っている人が多くいるのが今の日本の現状です。外国では車内で電話使うのは当たり前という声も聞きますが、なにもそうだからと言ってルールを無視して真似しなくても。
著者は、それらの原因のひとつには、子供の頃から、無意味で退屈な校長先生や会社に入ってからは社長や上司の訓辞を聞かされ、さして意味のない注意喚起ポスターを毎日眺め、館内、車内で放送を聞かされているうちに、人の話や注意を真面目に聞くという感覚が麻痺し、人が自分に話をしているときでも、自分は関係のないことをしても平気という習性になってしまっていると。
そして「思いやり」や「優しさ」を押しつけることで、人との対決を避け、結局は対話をさせない風土が根付いてしまっていると著者は言っています。
それは「思いやり」や「優しさ」という美名の元に相手を傷つけないよう配慮して沈黙する社会ではなく、言葉を尽くして相手と対立し最終的には責任を引き受ける社会で、他者の異質性を尊重する社会を目指すべきではないかと言っています。
さらに、対話を望まない人は、それも自由であるものの、そうした行動は同時に他人の言葉も封じていることとなり、他人の叫びを聞かない(聞こえない)耳を作ってしまい、それを圧殺し、対話を求める人に対して加害者であると結論づけています。
様々なエピソードが面白く(調布市内の無法自転車置き場の話しや交差点に置かれている「守ろうよ 私の好きな 街だから」という立て看板などに対するクレーム)よくここまで言うなと思いますが、話しはストレートでブレがなく快活です。
◇著者別読書感想(中島義道)
【関連リンク】
6月前半の読書 誰か Somebody、発達障害に気づかない大人たち、ひまわり事件、錏娥哢た(アガルタ)
5月後半の読書 散る。アウト、盗作(上)(下)、黄昏の百合の骨、兎の眼
5月前半の読書 すべてがFになる、マンチュリアン・リポート、砂の上のあなた、寝ながら学べる構造主義
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著者別読書感想INDEX
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製造業の場合は、最初は町の小さな個人経営の店からスタートし、やがて世界に誇れるホンダやパナソニックが生まれてきたように、規模を拡大化していくところも出てきたのに、農業など一次産業ではなぜか大規模な事業として成功し、国際的な企業になったところがありません。
日本の農業は有史以来ずっと個人か零細経営でおこなわれてきて、それじゃ国際的な競争に勝てるわけもないし、ましてや補助金や有利な税制なしに事業を長く継続していくことすら難しいだろうという話し(何事にも例外はありますが)には異議なしです。
なので、日本の農業も生産性を高め国際競争にも負けないように、個人主体の農業を集約し、大規模農業に変えていく必要があると言われています。それは実際に可能なことでしょうか?
ちょっと話を変えて、日本と比べるとずっと国土の狭いオランダが世界の農産物輸出額で2位というのにも驚かされますが、その農業は国を挙げて徹底しています。
農産物・食料品の輸出 国別ランキング(2011年 単位は百万米ドル 出典UNCTAD)
1 | アメリカ | 131,254 |
2 | オランダ | 114,762 |
3 | ドイツ | 79,592 |
4 | ブラジル | 77,389 |
5 | フランス | 73,724 |
すごい!最先端ハイテク農業(NHK)
いま国や農業関係者が熱い視線を注いでいる国がある。九州と同程度の面積にも関わらず、世界第2位の農業輸出国であるオランダだ。その秘密は、世界最先端の「スマートアグリ」。日本のIT農業や植物工場とは桁違いの規模と徹底ぶりで、トマトやパプリカなどを栽培している。東京ドーム何十倍もの敷地、光量やCO2濃度など500以上の項目で制御された人工繊維の畑。さらに、コンサルタントが研究機関の先端技術と農家を結び、常に最適な農業が追求されている。 |
30年前まではオランダの農業も日本と同じような規模、生産性だったのが、日本は国策として人モノカネを都市部に集中させ、工業やサービス、金融へ重点を置いてきたのに対し、オランダはフィリップスやユニリーバなど世界的に有名な工業製品もありますが、農業の将来を見据え、国を挙げて力を入れてきた結果ということなのでしょう。
これから日本の人口は減るものの、世界人口はずっと増え続けますから、日本の農業もうまくやれば有望な輸出産業となり得るはずです。土地も農村を中心に休耕地が増え、温暖化の影響で耕作できる地域や期間が増えているにも関わらずです。
しかし残念ながら、なにも変えたくないという抵抗勢力には逆らいたくない行政も政治も動かず、そしてTPP交渉において「日本の農業を守れ!」と既得権益者と一体となって気勢を上げる結果となっています(私はいまだTPPの全体像がわからず賛否保留です)。
一方、製造業を含む第二次、第三次産業は、2000年以降、円高と新興国の追い上げにより、動きの鈍い巨大企業が国際競争で負け相当なダメージを受け、それと対応するかのように、ずいぶんと前から「起業マインドを育てなければ」とか「日本でグーグルやアマゾンのような新規ビジネスをなぜ興せない」と言ったベンチャー待望論的な論調が起きています。
起業すると言うことは基本的に個人か零細からスタートするのが一般的ですので、上記の話しを要約すれば「一次産業は個を集約して大規模化を目指し、二次三次産業は零細に帰れ」とそれぞれ現在の状態とは反対のことを言っているのに過ぎず違和感を持ちます。
違和感の原因は、日本には二次三次産業においては、すでに中小零細企業はいっぱいあり、法人格の99.9%が個人零細企業と言ってもいいぐらいです。つまりベンチャー企業と言えるものも含めて、日本には零細企業は新たに作らなくてもすでにいっぱいあるわけです。それをこれ以上増やしてどうするのでしょう。
そしてこの多くの個人零細企業を集約すれば大企業にできるのでしょうか?昔ながらのおじいさんおばあさんがやっている個人商店を単に集めて郊外に大きなショッピングセンターを作るようなものですが、それだけで果たしてうまくいくでしょうか?それと同じことを農業でやろうとしても、うまくいくとも思えません。
つまり個を集約して大規模な事業体を作るというのは、机上のアイデアとしては理解できますが、現実的には例外を除き難しいということなのです。
なぜか?
それは新しい発想や画期的なアイデアを持つ優れた強力なリーダーが、既得権にまみれ旧態依然の規制などで身動きが取れない農業分野では生まれにくいという問題と考えられます。
小さなことですが、わかりやすいこととして、分譲マンションが老朽化してきて建て替えるか、補修するかで意見が食い違った場合、金銭が絡んできますのでその多くは住民同士で対立してしまいます。
ここで粘り強く根気があって、しかも整然と論理的な話しができるリーダーが登場すると問題が解決することがままあります。しかしそういうリーダーがいないと、結局何年かかってもなにも進展しないことになります。
長く個人で経営してきたような店や会社を集約化してひとつの大きな会社にしようとしても、みんなが同意見にはならず、簡単ではありません。特に個人事業主など小さくても鶏頭だった人達ばかりで、プライド(感情面)や利害(実利面)も大きく関わってきます。
地方都市で、古い商店が集まり、町や市から補助金を得て、ひとつの大きなショッピングセンターを作り、そこにみんなテナントとして入ろうというプロジェクトが時々見受けられます。
しかしその多くはうまくいっていないようです。結局はみんな自分個人の利益が最優先で、将来性や全体最適、客の利便性、地域のマーケティングを考える強力なリーダーがいないと大きなプロジェクトは失敗します。
先祖代々からの土地や伝統といったものを有する農業でもそれは同じことで、個々の農地を借り上げ、自分の考えとは違う方法で農作物を大規模に作ろうとするプロジェクトには多くの農家はそう簡単には乗ってくれません。
農家とべったりの農協など既得権益団体も、資本力のある事業家がやってくるのは、自分たちが守ってきた聖域を侵されることになるので絶対反対です。
工業やサービスと同様に、農業分野においても本田宗一郎や松下幸之助のようなリーダーが現れ、それに加て既得権益者ばかり有利な各種規制や優遇税制が撤廃されない限り、あるいは国が積極的に主導してきた旧国鉄や旧電電公社のように、多少強引でもお上が全面的に作り上げていく事業でなければ、一気に大規模化していくのは難しいのではないかなというのが私の結論です。
そしてそのようなリーダーがもし現れたとしても、あえて農協や農水省などしがらみや障壁の高いところにチャレンジするのではなく、それとは違う分野でスタートするでしょう。
すでに農業や畜産分野において、何人かがチャレンジし始めているようですが、様々な障壁や妨害があり、どこも順調と言えないところに今の日本の病巣があるのではないでしょうか。
最後に私の考えとして、まず「不自然に思える農業は成功しない」と言うこと。これは最近話題にはなっていますが、都市部で小さな部屋やコンテナの中で農作物を栽培していますが、あきらかに土地活用法が間違っています。単に一時だけ話題を提供しているに過ぎず、長続きしません。
やはり農業は最近の工業生産のように多品種少量生産ではなく、効率よく大規模でおこなわなければなりません。それこそ70年代から80年代に日本が世界を席巻した大量生産のノウハウが生かせます。
さらにオランダの例ではないですが、元々製造業にロボットを使い始めたのは日本で、近代的な工場ではあらゆるところがオートメーション化されています。それを農業にもっと取り入れて、ただの野菜工場ではなく、種まきから生育管理、収穫までを人手を使わずロボットとIT、バイオやセンサー技術を統合した最先端工場を世界に先駆けて展開すべきではないでしょうか。もちろん工場の規模は世界最大級のものを目指します。
もしこれが成功すれば、世界中にこのシステムを販売できますし、日本企業が海外で事業展開することも可能です。ただ国が率先してスタートしなければ、不景気の今、残念ながら様々なリスクや障壁があるこの分野に、投資をしようとする民間企業はそう多くはないでしょう。
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結婚しない(できない)男女の問題があると同時に、せっかく結婚しても離婚する夫婦の数も相変わらず高水準を維持しています。
国民生活白書によると離婚率とは千人あたりの離婚した件数の割合で現しますが、過去に離婚率がもっとも高かったのは2002年の2.3で、この年の離婚件数は289,836組でした。
つまりこの年は、50組(100名)の夫婦のうち約11組(23名)が離婚しているという勘定になります。およそ2割強のカップルが離婚しているということで、事象が2割を超えるともう社会的に普通のことととして珍しくもありません。
厚生労働省平成23年(2011)人口動態統計の年間推計より抜粋しグラフ化
ただ2002年以降の離婚率は、概ね横ばいか下がっていて大震災のあった2011年は1.86と2.0を割りますが、グラフにはありませんが、最新の2012年は1.88とまたやや上昇する気配があります。
都道府県別でみると離婚率の高いのは、沖縄県、大阪府、北海道、福岡、宮崎がベスト5で、低いのは富山県、新潟県、福井県、島根県、石川県。離婚率の高い県は大都市もあれば地方もあり、あまり特徴がありません。
逆に低いところはベスト5のうち4県が北陸という特徴があり、さらに島根県も含めると日本海側ばかりということになります(2010年データ)。
一方、千人あたりの婚姻率は、2011年には過去最低の5.3で、40年前の1971年の10.5と比較するとおよそ半分に下がっています。
婚姻率と離婚率には因果関係はなさそうですが、離婚率の上昇傾向よりも婚姻率の低下傾向のほうがずっと強そうで問題も深刻です。
都道府県別に見ると、婚姻率が低いのは、秋田県、青森県、岩手県、高知県、山形県で、逆に高いのは東京都、沖縄県、愛知県、神奈川県、大阪府となっています。
意外に思ったのは保守的な地方のほうが婚姻率は高そうに思いますが、沖縄県以外では大都市部の婚姻率の高さが目立ちます。
仕事や進学のために大都市に若者が集まるから婚姻率が高いのでしょうか。沖縄は婚姻率も高いけど離婚率も高いというのはなぜでしょうね。熱しやすく冷めやすい?
世の中にはまだまだ「結婚して一人前」とか、「家を継ぐための結婚」とか、結婚する本人達以外のところで儀式を求められることが多いのですが、案外すでに双方が生活力(経済力)をもつカップルにとっては、結婚という形式にこだわらない同居生活が進んでいるようにも思えます。
売れっ子で生活力のある女優や女性歌手など芸能人では、以前からそうした内縁関係を持つ「事実上の夫婦」は多く、過去の話やすでに婚姻届を出した人もいますが、萬田久子や高岡早紀、都はるみ、夏木マリ、浅野ゆう子、坂口良子、吉田美和、ヨーコ・オノもそうですね。また子供ができてから入籍するカップルも、それまで同居生活をしていれば内縁関係または事実婚と言ってもいいでしょう。
現在では結婚してから産む(嫡出子、婚内子)のと、未婚で父親の認知のないままで産む(非摘出子、婚外子)のとでは、以前あった戸籍上の差別(区分)はなくなりましたが、社会的ないわれのない差別や、法定相続などではまだ不利益な条件が残っています。今後はそうした不平等な権利は改正されたり、なくなっていく方向へ進んでいくのでしょう。
そうしてカップルが結婚をして、法律上の籍を入れるメリットがなくなれば、制度としての結婚はますます減り、統計上の婚姻率はもっと下がることになりそうです。特に夫婦とも働いていて、子供は作らないというカップルや、中高年同士のカップルにとっては、わざわざ籍を入れる必要性もありません。
家同士の親戚を集めての結婚式や披露宴に多額の費用を使うぐらいなら、そのお金で二人でゆっくり南の島へ行って楽しんでくるというカップルが増えてもまったく不思議ではありません。
そして国としても、従来は世帯ごと扶養家族ごと、基本的には婚姻関係にある家族単位で、税金や社会保障、各種補助金などの制度を設計・運用をしてきましたので、それを個人ごとにあらためるなど実態に合わせて法整備も変えていく必要に迫られるでしょう。
日本も地方に住む跡取り息子は無理としても、都市部に住むカップルにとっては、事実婚(籍を入れない同居)が急速に進み、欧州、特に北欧並みの事実婚が全体の半数近くを占めるようになるのもそう遠くないかも知れません。
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