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557
日本の人口増加は2006年にピークを迎え、これから数十年間は減っていく傾向にありますが、一方自動車運転免許証を取得した人の数(累計)はまだわずかですが毎年増加しています。人口が減っているのになぜ増加?と言えば取得率がごくわずかながら上昇しているということでしょう。

その運転免許証を取得した人の数を1966年(昭和41年)からグラフにすると下記のようになります。取得者数とともに、総人口に占める割合も出しています。

  画像クリックすると多少拡大します
Picture0079s.jpg

自動車販売会社は、クルマが売れない売れないと嘆いていますが、毎年着実に運転免許証の取得者数は増えていっているのに不思議なことです。もちろん免許を取ったからと言って新車を購入するわけではありませんから、その因果関係はわかりません。

明らかなのは、(1)若い人の人口が減りその取得者数も減っている(2)若い人は概ね貧乏なので新車を買えない(3)高齢者は新車を買う資金はあるが若い人のように頻繁に乗り換えをしないで1台に長く乗ると言ったところでしょうか。

ただ2005年ぐらいからは免許証取得者数の伸びはほぼ横ばいになってきていますので、国内の自動車販売関連に勤務する人は不安になってくるのもわかります。

次に、乗用車の新車販売台数のグラフを作ろうとしたのですが、なぜか、直近10年ぐらいのデータしか見つけられず、それではバブルの頃の状況がわからないので、仕方なく乗用車の保有台数と、保有台数の前年増加率を合わせたグラフを作ってみました。

 Picture0082s.jpg

保有台数というのは、「前年保有台数+新車登録+中古車登録-廃車」なので、その年の新車販売台数の傾向はハッキリとつかめませんが仕方がありません。

このグラフでは主に前年からの伸び率を見ると、クルマが売れる、売れていないの傾向が見て取れます。

1970年代中盤までは前年比で二桁以上の伸びですから新車も中古車も売れて売れてという状態だったのでしょう。1980年代のバブルの頃はもっと売れたように思っていましたが、意外に売れ出したのはバブルも終焉に近い1989年頃からです。ちょうどバブルカーの典型と言われた初代シーマが登場した頃ですね。

1989年から1991年頃の3年間ぐらい増加率は一桁ですがまずまずの伸びを示し、バブルが弾けた1992年以降、20年間はひたすら保有増加率は下がり続け、2000年中盤頃からは増加はしなくなりました。

上記2つのグラフを合わせてみると下記のようになります。保有増加率と比較するため、運転免許証取得者の前年増加率を加えてみました。

 Picture0078s.jpg

こうして見ると、免許証取得者数の増加率も、乗用車保有数の増加率も仲良く限りなく0に近いところまで落ちてきています。これが需要の飽和状態ということなのか、それとも不況による買い控えなのか、それとも脱クルマ社会の始まりなのか、いろいろと議論があるところだと思います。

しかし免許証の取得増加が増えないというのは不況のせいとは思えません。逆に不況になると少しでも手に職を付けるために運転免許ぐらいは取得しようと思うからです。明らかに人口減と取得率の頭打ちによるものでしょう。

駐車場代、ガソリン代、保険料、各種税金などクルマの維持経費の高騰による、クルマ離れが進んでいることもよく言われます。身近なところでも空きになった月極駐車場が目立ったり、ガソリンスタンドが廃業するのをよく目にします。

ライフスタイルを変えて、住居費用は高くはなるけれど今までより都会に近い便利な場所に住み、電車やバス、自転車をメインに利用して、その代わりにクルマを手放す人が増えているとも聞きます。クルマが必要なときはレンタカーやカーシェアリングを使えばいいという割り切った考え方です。これも都会ではあるでしょう。

しかし私が一番感じるのは、そう言った外因による販売減ではなく、自動車メーカーや販売会社の内因にこそ大きな原因があるのではないかと思っています。

確かにいまは国内で販売する台数よりも圧倒的に海外へ輸出して(あるいは現地生産して)販売する台数のほうが多く、国内市場に向いたマーケティングでニーズを満たすよりも、いかに外国で大量に売れるかを追及するほうがメリットが大きいでしょう。

そしてエコブームと言えばそればかりに技術やリソースをシフトしてしまい、国内の需要を掘り起こすようなニッチな需要を無視をしてきました。以前なら国内需要に向けた専用の乗用車がたくさんあり、その中で厳しい競争もしてきましたが、いまは海外輸出モデルが中心にあり、それを国内でも少数販売するという逆転現象が起きています。

これではとても国内のユーザーが満足できるはずもなく、クルマの性能が上がって耐久性が増したこともあり、軽自動車を除き新車の販売が止まってしまったのではないかと思っています。


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556
歳を取ってくると「塩分控えめに」とよく言われます。一般的に知られていることとしては「塩分を摂りすぎると高血圧症になり、心臓に負担がかかり、下手をすれば心臓麻痺を引き起こす」という論理です。

この論理自体は間違っていないのですが、この塩分の摂取量にはいろいろと疑問な点があります。

私はと言えば、とにかく甘いものも好きですが、塩っ辛いものも大好きで、コロッケ、トンカツなどの揚げ物はもちろん、ハンバーグ、カレー、天ぷら、ポテトサラダにも気が向けばソースをジャブジャブとかけて食べます。

また醤油も好きで、漬け物や餃子・シュウマイ、お浸し、冷や奴、炒め物にこれまたジャブジャブとかけて食べています。

子供の頃からそういう味好みだったので、親から「そんなに塩分をたくさん摂っていると胃ガンになる」と脅されていましたが、3年ほど前にストレスによる胃潰瘍になり、胃カメラを3回飲んだときに、塩分の過多摂取が気になって、ついでに胃や食道のガンの早期発見を依頼しましたが「胃潰瘍の箇所以外は綺麗なものです」と特に心配はなさそうでした。

塩の話に戻りますが、塩を摂取過多すると、高血圧、心臓病、腎臓病、胃ガン、鼻咽頭癌の原因になると言われています。一方摂取不足では、血中のイオン濃度が低くなり、熱中症や全身痙攣による昏睡を引き起こすことがあります。スポーツや激しい肉体労働で脱水症状を起こすのはこれでしょう。この血中イオン濃度を一定に保つために、塩分を欲したり、逆に汗をかいたときや排尿で塩分を排出したりして身体は調節をしています。

このイオン濃度のバランスを考えた食事をするというのは、外食が多く、またインスタント食品を食べる機会が多い現代人にはなかなか難しいようです。特にあまり運動もしなくなった高齢者の場合、汗をかかないので塩分はさほど必要なくなり、減塩食を摂るように言われることが多いのでしょう。しかしただ単に塩分を減らせば健康にいいというものではありません。

そこで塩分を摂りすぎた時には、塩分の排出を促すためカリウムと水分を多目にとるといいとされています。カリウムは野菜や果物に多く含まれていますが、その中でも干し柿(柿もOK)や焼き芋、ほうれん草、納豆、長いも、キウイ、グレープフルーツ、メロン、バナナなど。果物には食後のデザートにちょうどいいものが多いので、カロリーオーバーしなければ習慣にするのもいいかもしれません。

一般の家庭で使われている塩(食塩)は、海水や岩塩を元にしたイオン交換膜製塩法によって生成される塩化ナトリウムがほとんどです。この塩には本来ならば海水の中の塩分や岩塩に含まれているミネラル成分(マグネシウム、カリウム、カルシウム)が失われていて、ほぼ純粋なナトリウムだけが抽出されています。

先述の通り本来なら自然の塩に含まれるカリウムはナトリウムを体外に排出する効果があるのですが、イオン交換膜製塩法で作られた食塩にはそれが含まれていないため、余計ナトリウムの過剰摂取となってしまうわけです。人間がずっとミネラル分が豊富な天然の塩だけを使っていれば、「塩分控えめに!」なんてことにはならなかったかもしれません。

私が学生時代はまだ塩は専売公社だけで販売されていましたが、1985年以降、塩の製造・販売が自由化されてきました。それによって自然塩ブームが起き、再び各種ミネラル成分が豊富な(あとで別にカリウムやマグネシウムを加えたりするものもある)食塩が増えてきました。

生命維持には不可欠な塩ですが、やはり健康を考えると、高額になりますができるだけ自然のままの塩、例えば「岩塩など自然に結晶化された塩」、「加熱処理されていない塩」、「塩田で作った塩」、「にがり(海水からとれる塩化マグネシウム)成分の多い塩」などが健康にはいいようです。

ただ食塩の中には過大表示のものも多く、業界の自主ルールで自然塩の名称に「自然」や「天然」「ミネラルたっぷり」とかの表示は使えなくなり、ブランドで売っていく手法、例えば伯方の塩 」「沖縄の海水塩 美ら海育ち 」「粟国の塩天日塩「フリュードメールドゲランド ゲランドの塩「海の果実」などという表示が主流となってきたいます。だから中身は実際によく見ないとわからないと言うことですね。

スーパーなどで自然塩を選ぶときは、
 (1)ナトリウム(塩化ナトリウム)の含有割合が比較的少ない
 (2)他のミネラルが豊富であること
 (3)加熱処理がされていないもの
 (4)塩の公正マーク(食用塩公正取引協議会)がついている

がベターだとのことです。

外国産と国産では一概に比較できませんが、日本人の身体にはやっぱり日本または日本近くでとれた食塩が身体には合うのではないでしょうか(個人的な思い)。しかし上記の条件を満たす健康に良さそうな塩はなかなか高そうです。

天然塩で有名なところへ行った時のお土産に天然塩を買って来るのもいいかもしれませんね。特に会社で相性の悪い人に渡して「敵に塩を送る」ってジョークでもかませば、その後の仕事は円滑にいくこと間違いなしです。(なわけないか)

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555
灰色の嵐 (ハヤカワ・ミステリ文庫) ロバート・B・パーカー

残り少なくなってきたスペンサーシリーズ36作目は、過去(「悪党」「冷たい銃声」)に登場し、最初はスペンサーの命を奪う目的だったのが、その後は和解し、時には仲間としても活躍するようになった全身灰色ずくめの腕利き殺し屋グレイ・マンと再び対決することになります。

この謎だらけでクールなグレイ・マンの人気は高いのですが、この小説で再び適役となってしまった以上、主人公は死ぬわけにはいかないので結局グレイ・マンが死んでしまうのかとちょっと残念に思いながら読み進めます。

最初に娘の結婚パーティが開かれる島の女主人に護衛を依頼されながら、スペンサーの目の前でその娘が誘拐され、花婿や護衛が殺される事件が勃発し、その主犯がなんと顔見知りのグレイ・マン。そこから二人の闘いが切って落とされます。その後ボストンへ戻ってからは、「なぜグレイ・マンともあろう男がこのような雑な事件を起こしたのか?」「裏で糸を引いているのは誰か?」などを相棒ホークとともに調査を始めます。

しかし「首を突っ込むな」というグレイ・マンの警告に対し、一歩も引くことはないスペンサーをやがてつけ狙う殺し屋が現れたり、グレイ・マンや、パーティが開かれた島の持ち主、その元結婚相手などを調べていくうちに、徐々に謎が明らかとなっていきます。

このあたりは、いつものことですが、「わからない時は、とにかくいろんな人を尋ね歩き、つつき回すと、それを気に入らないと思う奴らがしびれを切らせて尻尾を出す」ということで、その通りになっていきます。

そして、最後の対決のためグレイ・マンがスペンサーの部屋へやってきて語る自身の過去とは、、、う~ん、、、

■スペンサーシリーズに関連した過去記事
 スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
 ハードボイルド的男臭さ満点小説

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

城をとる話 (光文社文庫) 司馬遼太郎

最初読む前、タイトルだけを見て想像していた本の中身は、戦国時代に数々の城が攻められ、そして落城してきましたので、その城をとるための傾向と分析かなと勝手に思ってました。しかしまったくそうではなく、架空の人物がある建築中の城を取ってやろうとする物語です。

解説を読んで知ったのですが、この小説は1965年に日経新聞に連載されたもので、元々は仲のよかった石原裕次郎に、映画にしたいから自分を主人公にした時代劇を書いて欲しいと頼まれたものです。石原裕次郎と時代劇というのも珍しいですね。

映画は小説が連載中に「城取り」というタイトルで舛田利雄監督、石原裕次郎主演で制作され上映されましたが、当時私はまだ7歳なので知るよしもありません。団塊世代以上の人なら観たことあるのかも知れません。

さて内容は、豊臣側と徳川側が日本を二分している1600年頃の会津の北方、豊臣側の上杉景勝と徳川方の伊達政宗が対峙する中で、伊達側が国境に戦闘用の城を築城し始めたことで、上杉側の客分がひとりで城を乗っ取ってみせると豪語します。

途中で味方につけた山賊や巫女、商人などとともに城近くの村に入り、そこの百姓を動かして城を乗っ取ろうとするのですが、伊達方もなかなか強力で、、、とまぁ言うことですが、中盤までののんびりとしたムードが一転して激しい戦闘シーンへと移っていく迫力と、知恵比べなど見どころも満載です。

著者別読書感想(司馬遼太郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

雷桜 (角川文庫) 宇江佐 真理

私はまだ映画は観ていないのですが、小説よりも岡田将生、蒼井優の二人が主演した2010年の映画が先に有名になった感があります。

内容は時代劇で、身分の違う二人が出会い、そして別れざるを得ない悲恋です。ま、ハーレクイーンやディズニー映画の時代劇版と言いましょうか。

著者の宇江佐真理氏の本は、今回初めて読みましたが、過去には吉川英治文学賞をとった「深川恋物語」や、直木賞候補にもなり、シリーズ化されている「髪結い伊三次捕物余話」など多くの時代小説があります。

「雷桜」のようなやや甘ったるい小説を書かれているので、失礼ながら若い新進作家かなと思っていましたが、50代も半ばになった私よりも8つも年上の方でした。

この小説で出てくるメインの人物はいずれも架空ですが、主人公の父親に当たる十一代将軍徳川家斉は実在し、その息子の中には小説で出てくるのと同様、徳川御三家のひとつ紀州藩へ婿養子として入った人物が確かにいます。このように、実在した人物をうまく使い、小説を創り上げるのは醍醐味でもあり私は大好きです。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

風が強く吹いている (新潮文庫) 三浦しをん

この歳になってくると、スポコン青春ドラマは敬遠しがちになってくるので、自ら進んでは読まないであろう、この本は2007年の本屋大賞で3位になった作品ということで買ってみました。

著者の三浦しをん氏は2006年に「まほろ駅前多田便利軒」で、20代の若さながら直木賞を受賞したすごい方ですが、私が同氏の本を読むのはこれが初めてです。

内容は東京にある私立大学に通う学生達が入居しているオンボロアパートの住人達10名が、主人公のリーダーに引っ張られ、数々の試練を乗り越え陸上競技の名門校と伍して闘い、箱根駅伝の出場キップを手に入れ、220km先のゴールを目指す10カ月間が描かれています。

一般的に陸上競技とは縁がなく、西日本以西で生まれ、その地で育った人にとって箱根駅伝というのは単なる「学生の地方大会」ということで、どうしてそれを昼間からテレビがゆっくり見られる大事なお正月に、朝から昼過ぎまでずっとテレビ生中継されているのか不思議に思うことがあります。

ただこの箱根駅伝、歴史はすごいものがあって、大正9年(1920年)に早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学などが参加して開催したのが最初で、途中太平洋戦争時に何度か中止になったことががありましたが、今年(2011年)は第87回というものです。東京六大学野球ですら1925年の開始ですからそれよりも前ということです。

その箱根駅伝のうんちくなどもわかりやすく書かれていて、これを読むと箱根駅伝に興味のなかった人も、「どれ、次は見てみようか」と思うようになります。

私事で申し訳ないのですが、私は短距離走ならクラスでもトップクラスにいる自信があったのですが(短距離リレーなどはいつも選抜メンバー)、長距離走はてんで自信がなく、中・高・大で長距離走があるといつも平均か平均のちょっと下あたりをウロウロしていました。

そういうこともあり、長距離走にはほとんど関心がない私ですが、それでも読み始めると感情移入してしまい、最後はドキドキウルルものです。映画化もされているそうで、機会があったら今度DVDを借りてこようかと思っています。

著者別読書感想(三浦しをん)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ワーキング・ホリデー (文春文庫) 坂木司

タイトルからはまったく想像できない内容ですが、とてもいい感じの小説でした。坂木司氏は先日デビュー作の「青空の卵」に続き2冊目です。

小説やドラマ、映画なんかによく登場する「ものすごくよくできた子供」が登場します。この大人顔負けに知識が豊富で、お手伝いや家事を嫌がらず、そしてかわいげもあるという「よくできた子供」というのは実際にはまずお目にかかることはありませんが、大人、特に子を持つ親からすると理想形の子供ということなのでしょう。

恋愛小説には整った顔の男女が登場するように、親子が主人公になる小説には、必ずと言っていいほど、出来の悪い親と、出来のいい子供のコンビが登場します。もうそれにはヘキヘキしますが、そうでもないと単なるドキュメンタリーチックな悪ガキ、家庭崩壊物語か、それともサザエさんやドラえもんのような風刺的アニメにしかなりようがないのでしょう。

さて、この物語の親子ですが、父親は新宿のホストクラブに勤めるあまり人気のない若きホスト。そこへ突然見知らぬ小学生が尋ねてきて「お父さん」と、、、

昔付き合っていた彼女が別れた後こっそり産んでいたことを知り愕然とするも、ホスト仲間やクラブ経営者の助けもあってホストを辞め、宅配便会社へ転職し、夏休みの間その子供と一緒に生活をすることになります。

あり得ない話とはいえ、いきなり小学生の子を持つことになった父親と、人見知りもしない掃除洗濯料理となんでもござれのよい子との感情の機微などがうまく描かれています。そしてお約束のように夏休みが終わりに近づいてきて、親子が離ればなれになる時が迫ってきます。

無理矢理に話しを盛り上げるでもなく、淡々と親子関係と宅配運送業の仕事が描かれていて好感が持てます。脇役のホスト仲間やホストクラブ経営者、宅配会社の同僚や上司などが魅力たっぷりで、映画化されるときっと面白くなりそうな感じです。

著者別読書感想(坂木司)



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554
民主党の公約でもあった労働者派遣法の改正(改悪?)がようやく動き始めました。もうとっくに廃案になったんじゃなかったのか?と思っていましたが、まだしぶとく生き延びていました。

ちなみに私は以前その人材ビジネスに近い業界に長くいたことがあり、様々な労働現場の事情などを雇う側と雇われる側のそれぞれの立場を知っていることから、当初から検討されてきた「登録型派遣の禁止」や「製造業派遣の禁止」には強く反対の立場(意見)です。

反対の理由は、
1)就業形態(労働者側)、雇用形態(雇用主側)の自由化を維持すること
(お役所の利権拡大につながる規制で縛るのはよくない。働き方を考えて選ぶのは個人であるべき)
2)ILO(国際労働機関)の条約違反になること
(この国際条約を元に労働者派遣を許可してきた経緯がある。つまり、まだ完全ではないもののグローバルスタンダードを守るべき)
3)利権まみれの役人や公的職業紹介サービスがまったく信用がおけないこと
(求職支援やアドバイザリー業務などの多くは利益誘導のため厚労省関係団体などに丸投げしていることからもわかる。また雇用保険の巨額の無駄遣いが明らかになっても役人は誰も責任をとらない。リストラのない公務員にリストラされた失業者の立場になって考えたり支援することは不可能であり民間の知恵と工夫に任せるべき)
4)雇用拡大=失業者救済につながること
(民間企業であれば創意工夫や企業努力によって個人や役人では探せない雇用を創り出し求職者に提供することができる)
5)少子化、高齢化社会において規制による雇用形態の硬直化は、企業、労働者双方に負担を強いることになる
(雇う側に選ぶ自由がなければ雇用リスクを考え採用抑制し、正社員に多くの負担をかけることになる。また新卒者や高齢者などパフォーマンスの悪い従業員を減らしいびつな雇用になる)
などです。

で、今の臨時国会で成立させようとしている新たな「労働者派遣法改正案」ですが、当初の目論見であった派遣切りの温床と言われてきた「登録型派遣の禁止」や「製造業派遣の禁止」については自民党、公明党の反対を飲む形で事実上断念することになったようです。

またイメージが先行して批判の強かった「日雇い派遣」については、当初は「2カ月以内の日雇い派遣の禁止」だったのを「世帯主に対して1カ月以内の日雇い派遣の禁止」とだいぶんと案は緩くなったようです。

これで主婦や学生などの短期派遣(直接契約で言うところの短期パート、短期アルバイト)は救われることになります。また企業側も社員の休暇や休職中の社員の代替を派遣でまかなうという柔軟な対応が今まで通り可能で、休めない社員や休職、即退職勧奨という事態も防げます。

ただ、特に製造業派遣で問題化した「ワーキング・プア」、非正規社員の収入の低さ対策については特に議論となっていないようです。これは派遣であろうと直接雇用であろうと非正規社員であればほとんど変わらないか、逆に直接雇用のほうが、雇用主が求職者の足下を見てもっと低くなる可能性すらありますので、一般的には労働者派遣の問題と言うことではないように思われます。

このワーキング・プア対策では法を改正し最低賃金を引き上げる方法がありますが、民間の人材サービス企業が、「そのような低賃金の仕事は労働者のためにならないので引き受けない」という毅然とした態度で臨むこともまた重要だろうと思っています。現状の買い手市場の中ではとても厳しい話しだと思いますが、使用者側も「安かろう悪かろう」は熱心に説得すれば理解してくれるはずです。

そして法律を少し変えたところで、ワーキング・プアの根本的な解決にはまったく至らないのは明かです。タイの水害で図らずも知ることとなりましたが、日本の製造業の多くはより安い労働力を求め海外へ次々と出て行っています。つまり日本国内の製造業の仕事はここ数年間で大幅に減ってしまったということです。

もし法律を変えて最低賃金が大幅に上がると、日本のビジネスの海外移転はより加速していくことになり、非正規の製造業労働者だけでなく、製造業以外の会社においても国内のマネジメントや管理部門が縮小されることになります。すでに製造業以外の様々なサービス提供会社の海外進出が目立ってきています。

もし現在も製造業で淡々と工員生活をおくっているのならば、また製造業でなくても、会社が海外ビジネスを拡大し始めたようなら、少しでも早く、より付加価値のある技術や知識を身に付け、専門分野の知識以外に例えば語学力、コミュニケーション力、プレゼン力、幅広い人脈、リーダーシップなどにも磨きをかけていかなければ、数年先に今の職があるとは誰も約束ができないでしょう。

もうひとつ、今回の改正では派遣会社に対し「派遣料金と派遣労働者の賃金の差額(マージン)」に関する情報開示の義務付けが修正案に盛り込まれるようです。これは以前から案にあがっていました。

これについては私はどちらでもいいと思っていますが、ただその情報だけをパッと見て、「○○円(あるいは○%)もマージンを取られるのは搾取だ!」と派遣労働者に言われたり、「おたくはマージン取りすぎだからもっと安くして」と顧客の派遣先企業に値切られたりすることになるのでしょう。その矢面に立つのは会社の幹部ではなく現場の一営業担当者達で、まったくお気の毒としか言えません。

そのマージンの中には派遣会社の事業運営費(人件費、家賃、求人・営業広告費、派遣社員を含む福利厚生費や社会保険料の会社負担分とその事務管理費、給料振り込み手数料、給与支払い借り入れ利息など)が当然含まれますので、「マージン=利益」ではもちろんないのですが、単純にマージンだけを見て「けしからん!」と会社や営業担当者に怒りをぶつけてくる人もきっといるでしょうね。

事務職メインの派遣会社の場合、通常粗利は30%ぐらい、例えば請求が2300円/h、派遣労働者時間給1610円ですが、この30%(690円)がマージンということになるのか、それともその中から間接的に派遣労働者に還元される社会保険料、労働保険料、福利厚生費、有給休暇、損害保険分など(ザックリ言えば5%~8%)を差し引いた残りがマージンとなるのか詳しくは知りません。

上記にも書いたとおり、実際の利益は、派遣会社の人件費や家賃、広告費等を差し引いたものとなり、おそらくよくて請求金額の5~6%、普通なら2~4%ってところでしょう。それでも毎日請求2300円/hで7時間、1カ月20日間、1000人をフルに派遣すれば、請求単価2300円×1日7時間×利益率3%×1000人×20日=9,660.000円が毎月純利益となります。

ちなみに、1000人をコンスタントに派遣して年商(売上)約40億円企業ですが、派遣会社の中では100位以内にも入れない零細です。

しかし実際にはライバル企業と競争が激しく粗利30%が維持できなかったり(わずか3%程度値引きするだけで利益が飛んでしまう厳しい環境)、派遣した人が突然正当な理由なく辞めてしまって請求ができなかったり(支払は請求できなくても働いた分しなくちゃいけない)、派遣法が変わってシステムの大幅改修が必要となったりで、とても小規模では維持ができない業界になってきています。

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553
社会人になって最初に先輩から教わるのが、間違えやすい取引先名や顧客の正式名称などがあります。例えばキノンの「ヤ」は大文字で書きキノンではないとか、シチハタではなくシチハタだとか、味の素ゼネラルフーではなく味の素ゼネラルフーだとか、サイボズではなくサイボズだとかです。

キヤノンは新製品に期待と願望を込め観音菩薩にあやかりたいという意味でカンノン「KWANON」というブランド名を付けたことに由来します。そこから世界に通用する名前と言うことで「Canon」に変わりました。そういうことを知っていると、呼び方はキャノンなのに、文字にするとキヤノンなのかという謎が少し解明します。

似たような名前では、1977年設立の比較的新しい会社ですが、日本の情報データセンターの先駆けと言われているミロク情報サービスの「ミロク」は、京都広隆寺にある、国宝第一号の、弥勒菩薩半跏思惟像(通常は弥勒菩薩)からとられています。

自動券売機やヘルス機器などで有名なオムロンは、立石一真という人が戦前に京都で創業し、当初は立石電機という名称でした。戦後まもなく本社や主力工場を戦争の被害がなかった京都市右京区花園に移し、事業を拡大していきます。

一時期本社のあった花園には、すぐ近くに御室の桜で有名な仁和寺や、西の御所と言われる妙心寺などがあり、その辺り一帯は1000年以上前から御室(おむろ)と呼ばれており、それをもじって「オムロン」というブランド名を立ち上げ、やがて社名もそれに変えてしまいました。

子供の頃には変な名前だとずっと不思議に思っていたブリヂストン(Bridgestone)は、創業者の石橋正二郎氏の石(stone)と橋(bridge)を逆にしてくっつけた名前として有名ですし、サントリーも創業者の鳥井信治郎氏の「とりいさん」のサンとトリイを逆転させた造語です。

略称がそのまま社名となった企業も多いです。ウイスキーで有名なニッカは「大日本果汁」の日と果をとったもので、自動車の日産は想像通り「日本産業」を縮めたもの、IBM(日本IBM)は今でも米国の正式名称は「International Business Machines」で、直訳すれば「国際ビジネス機器」とベタな名称、NCR(日本NCR)なんかは創業当時作っていたレジスターからとった「National Cash Register」がもともとの名称でこれも直訳すれば「全国現金精算機」です。

トヨタ自動車の本社は愛知県豊田市にありますが、これは偶然でも地名から取ったのではなく、創業者の名前が先で、後になってから行政が多額の税金を納めてくれる巨大企業に媚びを売るためでしょう、企業名を地名にしてしまった一例です。

豊田市付近は元々は挙母市(ころもし)という読みにくいけどユニークな名称で、奈良時代から続く由緒ある地名だったそうです。

本来その土地の地名にはずっと古くからの言い伝えや歴史があるもので、企業城下町だから、市町村合併だからと言って易々と人名や企業名、意味不明の名称(群馬県みどり市など)に変えてはもらいたくないものです。

同じ自動車メーカーでもホンダ(本田技研工業)の場合は、主力工場のある三重県鈴鹿市が、これまた軽薄な役人の考えそうなことで「地名を鈴鹿から本田に変えましょう」と本田宗一郎に提案したところ、「鈴鹿という綺麗で歴史ある地名を残す方がいい」と断ったという話しがあります。

公私混同が嫌いで、自分の会社には親族を誰ひとり入社させず、社名に自分の名前を付けたのが事業家として最大の失敗とまで言ってのけた本田宗一郎らしい言葉です。

合併により足して二で割った名称もよく使われます。東芝は元々東京芝浦電気を短縮したものですが、その東京芝浦電気は東京電気と芝浦製作所の合併によってできた会社です。

石川島播磨重工業は石川島重工業と播磨造船所の合併から、KDDIはKDDとIDOとDDIの3社合併によるもの、その他ニチメン(日綿)と日商岩井が合併して双日(ふたつの日)と安易と言うかシンプルというか。

プロバイダーのNIFTYは富士通のカラーが強いのですが、日商岩井(NI)と富士通(FT)を足してyを付けたものです。

その富士通は親会社の富士電機製造の「フ」と当初関係の深かったドイツのシーメンス(ドイツ語ではジーメンス)の「ジ」を組み合わせ、メイン商品の通信機の「通」を組み合わせたと言われています。

というか元々富士通の親会社の富士電機製造の名称自体が古河電気工業とジーメンスのそれぞれ一語をとり、日独が敵同士で戦った第一次世界大戦後の1923年に設立されたという説が主です。

その頃はドイツの通信技術と日本のそれではたいへん大きな開きがあり、ほとんどがドイツから教えられてきたというのが実際で、そう考えると今は大きな顔している富士通や富士電機は、少なくともドイツやドイツ人には足を向けては寝られないはずなのです。

龍馬伝でブレークした岩崎弥太郎が作った「三菱」のブランド名は、使用にいくつもの厳しい制限があることで有名で、例え子会社だからと言って社名に三菱を名乗ることができません。

ちなみに三菱鉛筆は1925年に創業された岩崎家とは関係のない会社で、今でも三菱(財閥)グループと資本的には一切関係がなく、製品に三菱のロゴマークを使ったのも三菱財閥よりも先だったということで、互いに商標権で喧嘩をすることもなく両立しています。

今はもうなくなっていますが、20数年前に大阪に「三菱商事」というサラ金チェーンがありましたが、社名の読み方が「さんびししょうじ」で、いかにも大阪商人らしいなぁと思って見てました。

銀行はしばしば合併する企業ですが、3行が合併すると太陽神戸三井銀行(後にさくら銀行経由三井住友銀行)とか三菱東京UFJ銀行とかややこしくていけません。

いっそ、全部くっつけて本東京第一勧業長期大和太陽神戸三井住友東海三和富士協和三菱興業埼銀行にしてしまえばいいのにと思ってしまいます。略して日玉銀行。CMキャラクターはもちろん目玉おやじでしょう。

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