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親しい友人や知人から借金を頼まれたら、あなたは気前よく貸しますか?それとも断固断りますか?
昔から知人や友人とのお金の貸し借りについては美談もあれば、悲惨な結末もあります。
私の知っている身近なところであったことで、まずは美談というか幸運から言うと、友人が知人から借金を頼まれ、あまり深く理由も聞かずに数十万円を貸しました。
その知人は小さな会社を起業していて、自己資金だけでは足りず、さらに追加の事業資金が必要で、友人などに借りまくっていましたが、たまたまうまく時流に乗ってその事業が大成功。数年後にその知人から借金分の代わりに未公開株を応分をもらい、その後にマザーズへ上場。
結果論ですが、友人は上場益で数百万円の利益を得たというものがありました。
こういう知人や借金なら大歓迎ですが、事業への投資と言っても成功する率よりも失敗する率のほうが圧倒的に多いのが通常ですから、もし「事業のためお金を貸して」と言われていたら友人は貸したかどうか。
逆に悲惨な結末の話はいくつもあります。
私の親戚で、少し年上の人が親から引き継いだ商売をやっていて、あるとき「店を改修するので少しお金を貸して欲しい」と頼まれました。
店は順調そうに見えていた(詳しくチェックしたわけではなく)のですが、その頃はすでに火の車状態で、私以外に多くの人から借金をしていたことがあとでわかりました。
お金を貸した後に会ったときに雑談をしていた時、以前はBMWに乗っていたことを知っていたので、いまは何に乗っているの?と聞くと、「ボルボ(スウェーデン製の高級車)を買った」と。
おいおい、金を貸したこちらは小型国産車、しかもすでに8年ぐらい経過しているボロいクルマに乗っているのに、借金した人がボルボの新車だと?と内心むかつきました。
昔からええ格好しいで、周囲に見栄を張る人だったので、立場もわきまえずに簡単には性格は変わらないものなんだなと思いました。
簡単に貸した私が悪いのですが、ため息をついて「それはないんじゃないの~?」と嫌みのひとつも言いたくなったのをグッと飲み込みました。
結局、その事業(店)は赤字続きで、家賃が高いビルに入っていた貸店舗から撤退(廃業)せざるを得なくなり、私への借金はその後十数年してから親戚と言うことと、また少額ということもあり分割で返却されましたが、その他に借りていた大きな借金は踏み倒したようです。
その他にも知人から事業資金として数十万円を貸した金が戻ってこなかったことがあります。上に書いた成功例ではなく普通の事業失敗談です。気前がよすぎたのでしょうか、
その知人はやがて音信が取れなくなりました。何百万とか何千万とかを貸して踏み倒されたわけではないので、まだ世間一般ではマシな方かも知れません。
会社の中でもお金の貸し借りはよくあります。
私が大学卒業後に入った会社で、新入社員の時に仕事を丁寧に教えてくれた先輩が数年で突然退職されました。
その時は私は地方の支店に勤務していて東京でおこなわれた送別会には出られず、退職理由や退職後の予定などの話を聞くことができませんでしたが(当時はまだ電子メールなどなかった)、後で他の社員に聞くと、ギャンブルや派手な飲酒で会社から給料の前借りをして、それでも足りずに先輩の上司からも多額の借金をしていて、礼儀と品性と信用に重きを置いていた会社も退職を勧奨せざるを得なかったそうです。
今でもその先輩の上司だった人(私にとっても元上司)と時々会って会食しながら話しをする機会がありますが、信用して数百万円ものお金を貸して踏み倒された苦い経験はあまり思い出したくないようです。
「金は借りてもならず、貸してもならない。 貸せば金を失うし、友も失う。 借りれば倹約が馬鹿らしくなる。 」と格言を残したのはシェイクスピアですが、まさにその通りのことが、何度も目の前で起きました。
直接の借金ではありませんが、親戚の子供が大学進学するときに借りる学生ローン(数百万円)の連帯保証人を頼まれ受けざるを得なかったことがあります。子供の学生ローンの連帯保証人には、その親はなれないということでした。
電話ひとつで簡単に頼まれ、郵送で送られて来た契約書だけで安易に連帯保証人になるのは躊躇われましたが、親戚づきあい上やむを得ませんでした。
その親戚の子供は大学を卒業してから10年ほどでローンは全額無事に返却できたらしく、ホッとしましたが、最近は大学進学者の半分以上が返済ありの奨学金や学生ローンを利用しているので、そのような連帯保証人を頼まれる人も多いと思います。
承知のことですが、連帯保証というのは、本来返却すべきローンを借りた人がなんらかの都合で返却できなかったとき、有無を言わせず連帯保証人に返却する義務が生じるというものです。
しかも通常はやむを得ない理由がなく1回でも返却が滞ると、残り全額を一括して支払う義務が直ちに生じます。つまり借りた人がもし行方不明になるとか、病気や事故で入院して稼ぎがないと、連帯保証人が全額を支払わなければなりません。
最近は大学卒業後に就職せず、フリーターで起業を夢見て仲間達と準備?している人もいます。
そう言う人が毎月やってくる学生ローンや奨学金の返済を食費を削ってでも滞りなくキチンと毎月毎月支払い続けることができるのかというとなんとも心許ないというのが実情です。まったく怖いことです。
ともかく、友達の中でいい人にならなくていいから、お金の貸し借りは避けるようにと子供には言い聞かせています。
最初は千円、5千円の少額から始まり、それはすぐに返却されますが、次に1万円、10万円、30万円と徐々に増えていき、やがて返却ができずどこかへ去って行くというのが悪意のある借金の常道ですから気をつけたいものです。
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ラプラスの魔女(角川文庫) 東野圭吾
2015年に単行本、2018年に文庫化された長編ミステリー小説です。2018年には三池崇史監督、櫻井翔、広瀬すず出演で映画が製作されています。
タイトルのラプラスとは、1700年代にフランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスによって提唱された「周囲の物理現象を見て解析できる能力があれば、極めて高い近未来の予測が可能になる」という「ラプラスの悪魔」と呼ばれる超人間的知性のことで、現代では量子学によってその可能性は否定されています。
もっと簡単に言うと、気象で言うと天気予報も近未来に起きる現象を予想していますが、スーパーコンピュータに頼らずとも空を見ただけで、次に何が起きるか、例えばその先の木に1時間後に雷が落ちるとか、どこそこの地域に雹が降ってくるとかがわかる特殊能力です。
主人公は複数いて、そうしたラプラスの悪魔の才能を得た二人の男女、地球化学の学者、元警官でラプラスの魔女を護衛する男、火山性ガスで中毒死した事故を殺人事件ではないかと疑い追う刑事など。様々な視点で描かれています。
もしそうしたラプラスの悪魔の能力を得た人間が、それを利用して完全犯罪を計画すればどうなるかということがメインの内容です。
小説や映画の世界にはしばしば超能力の持ち主が登場してきますが、そういうものにはもう飽き飽きしている人(私です)にも、この話は的確な未来予測能力ということで、なにか現実でもあり得そうでワクワクします。
私だったら、まず競馬場のパドックへ行き、次のレースでどの馬が勝つのかを予測します。下世話な話ですけど。
★★☆
◇著者別読書感想(東野圭吾)
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幸福な王子 ワイルド童話全集(新潮文庫) オスカー・ワイルド
世界的に有名な童話「幸福な王子」の他、「ナイチンゲールとばらの花」「わがままな大男」「忠実な友達」「すばらしいロケット」「若い王」「王女の誕生日」「漁師とその魂」「星の子」の計9篇が収録されています。
童話とは言え、かなりややこしい話や解釈の自由度があり、大人が読んでも難解なものもあります。
「幸せな王子」も銅像とツバメの会話がメインですが、同様にナイチンゲール(花の種類)など植物や花火のロケット、鳥などあらゆるものに生命や意志がありそれら同士で会話ができるのが新鮮というか、でも人間との会話はできないとかで大人のリアルな感覚で読むと混乱してきます。
「幸福な王子」でもそうでしたが、ハッピーエンドで終わるものはなく、世の中の不条理とか、人の身勝手さ、傲慢、そしてけなげな花や鳥たちといった童話ですから~という感じです。
一番長い「漁師とその魂」だけはちょっと趣が違い、若い漁師が人魚に恋し、魂を失えば海の中で人魚と一緒になれると教えられ魂を分離することに成功します。
その魂だけが各地に出向き様々な経験を積んでいき、海へ行って若者に呼びかけて海から出てこさせます。私にはなにが言いたかったのか、意味がよくわかりませんでした。
残念ながら、世の中の汚いものを見過ぎて、純粋な気持ちで童話を読み、理解することができなくなってしまったようです。
そう言えば、以前に桐生操著の「本当は恐ろしいグリム童話〈2〉」を読んだとき、グリム童話ではありませんが「幸福な王子」が収録されていました。
◇2012年11月後半の読書(本当は恐ろしいグリム童話2)
また、偶然ですが、今年7月29日から公開されている映画「今夜、世界からこの恋が消えても」(2022年)の主題歌で、ヨルシカの「左右盲」は、昨年から続いている文学オマージュ作品のひとつで、この童話「幸福な王子」を歌詞のモチーフにしています。
他のグリム童話が、実は童話には相応しくないエログロで暴力的な表現などが満載ですが、この「幸福な王子」は、本書含めて一般的な童話では省略されている一緒に戦い生き残った婚約者がいて、今も悲しみ伏せっているのを勇気づけようとツバメに薔薇を届けてもらうなどさらに清らかな内容と言うことでした。
ただそれって本著にある「ナイチンゲールとばらの花」と混同してない?って気もします。
★☆☆
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忘れられた巨人(ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ
著者の作品を読むのはこれで4作目となりますが、以前に読んだ「わたしを離さないで」(2005年)を発刊した後、10年間のブランクが開き、2015年に発刊されたのがこの作品というのはあとで知りました。
◇2014年11月後半の読書と感想、書評(わたしを離さないで)
この長編小説のジャンルは著者の作品では珍しいファンタジーですが、子供向けの暖かなファンタジーではなく、イギリスの古代史をテーマにしたアングロサクソン人と、グレートブリテンの名の由来にもなっているブリトン人の対立がテーマとなっています。
あまり日本人には馴染みがない内容ですが、そのような英国史の物語を日系英国人(両親はともに日本人で、6歳まで長崎に在住)の著者が書くというのも面白いです。
主人公は、ブリトン人の老夫婦で、現在の村での生活に不満があり、ずっと前に出て行った息子に会うため遠出の旅に出ます。
村から一歩出ると、鬼や敵対するサクソン人、盗賊などが旅の障害となりますが、人々の記憶を失わせる原因となっている竜を敵に軍事利用されるのを防ぐためにやってきたブリトン人の騎士や、ブリトンの君主だったアーサー王に命ぜられ竜退治に執念を燃やしているブリトン人の老兵士などとともに様々な困難を乗り越えていきます。
まだ未開の土地が多かった5~6世紀の英国で、竜やら鬼やらが出てくるというところがファンタジーなんですね。5世紀と言えば日本では倭国という大和朝廷ができ、そこの代々の王がやがて天皇となっていくという時代です。
タイトルはサクソン人の騎士がその頃は多くの人種が英国で割拠している中で「昔に地中に埋められたサクソン人の巨人がやがて動き出す」と予言をしたように、やがて英国に住んでいたブリトン人やケルト人はサクソン人に駆逐されていくことになります。
まったく知らない歴史なので初めて知ることが多く、なかなか理解ができないのと、同時に新たな興味が湧いてくるのとがせめぎ合います。
しかし最後は特に話がつながるようなクライマックスなどもなく、英国料理のように評価すること自体が難しく、個人的には仲の良かった老夫婦が、なにか寂しい終わり方になっていてちょっと残念に思います。
★★☆
◇著者別読書感想(カズオ・イシグロ)
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献灯使(講談社文庫) 多和田葉子
1993年に「犬婿入り」で芥川賞、2003年に「容疑者の夜行列車」で谷崎潤一郎賞など数多くの賞を受賞されているドイツ在住の詩人と小説家として活躍されている方で、著書を読むのは今回が初めてです。
本著は2014年に単行本、2017年に文庫化された短・中篇小説で、「献灯使」「韋駄天どこまでも」「不死の島」「彼岸」「動物たちのバベル」の5篇が収録されています。
中でも表題の「献灯使」だけは中篇で最初にあります。しかし読み始めるとなにか不思議な世界観で、その設定が意味不明でわからず、読み進めていくのが苦痛となりました。
他の短篇を後から読むとわかりましたが、調べると「不死の島」が2012年に初出で最初、「動物たちのバベル」が2013年でその次、その他が2014年に文芸誌などで初出のもので、書かれた順で読めば小説の舞台とか状況が少しは理解した上で読めたのですが、なぜなのか不明ですが、あえて出版順とは逆の構成となっています。つまり「想像力の乏しい読者は二度、三度繰り返して読め!」ということなのかな。
それはさておき、いずれもテーマは東日本大震災や原発事故の後に書かれた悲惨な日本の未来を描いたSFで、女性の作家でSF作品を書く人は今まで少なく、意外な感じがしました。
しかし面白かったか?と聞かれると、、、この作品は私の好みではないです。折を見てまた別の作品を読んでみたいと思います。
★☆☆
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安倍元首相への銃撃事件をきっかけに旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の話題が再び熱を帯びていました。
再びというのは、山崎浩子さん(1993年に脱会)と桜田淳子さんが合同結婚式に参加した1992年の時に芸能ネタや霊感商法などのトラブルネタで大いに盛り上がり、その時以来30年ぶりにその名前を聞いたという人も多いのではないでしょうか。
ブログでは、あまり「政治」「宗教」「思想」については書かないようにしています。理由は人それぞれの思いや考えがあり、自分の考えを不特定な相手に主張したいとは思わないのと、つまらない話ですが私自身「興味がない」ということが大きいです。
今回、旧統一教会の話題が毎日出てきて、ふと思ったのは、「(信者の)桜田淳子さんは今はどうしているのかな?」ということ。
桜田淳子さんは私と1歳違いの同年代で、その歩んできた道は天と地の違いほどありますが、彼女がデビューした中学生の頃に、同じく多感な中学生活を送りました。
あまりアイドルとかには興味がなく汗臭い体育会系部活をしていたり、高校生時代にはアルバイトと受験勉強にのめり込んでいましたが、それでも山口百恵、桜田淳子、森昌子の花の中三トリオ+天地真理の4人はいつも学校で話題になり気になっていました。
桜田淳子さんの持ち歌で有名なのは「ようこそここへ~クッククック・・・」の「わたしの青い鳥」(1973年)で、彼女がテレビで紹介される時にはほぼ確実にその歌がバックに流れます。
他にどんな歌があったっけ?と思って、調べる前に一生懸命に思い出してみたところ、「来て 来て 来て 来て サンタモニカ~」の歌い出しを思い出しましたが、曲名が出てこず、調べると「サンタモニカの風」(1979年)でした。
山口百恵さんの曲なら「ひと夏の経験」「秋桜」「横須賀ストーリー」「美・サイレント」「プレイバックPart2」「イミテーションゴールド」「いい日旅立ち」「さよならの向こう側」などすぐに10ぐらいは出てきそうですが、桜田淳子さんの曲ってなぜかあまり記憶にないのです。
調べると、シングルレコード販売数でオリコンチャートの1位となったのは1974年の「はじめての出来事」(52.7万枚)だけですが、この曲のメロディを聴けばおそらく知っているでしょうけど、曲名にはまったく記憶がありません。ちなみに代表曲の「わたしの青い鳥」はオリコンチャートで最高位は18位(15.9万枚)でした。
その桜田淳子さんですが、1992年の合同結婚式後は実質上芸能界から引退状態で、公的な場に出てきたのは、2013年にデビュー時代からお世話になってきた恩人のサン・ミュージックの代表が亡くなったときお通夜に参列されたぐらいです。
そして2018年には新たなアルバムを発表し、ファン向けの音楽イベントを銀座博品館劇場でおこなったというのはなにかネットニュースだったかでチラッと見たことがあります。
合同結婚式以降、歌手や芸能人としてはほぼ引退に追い込まれましたが、統一教会の広告塔として、あるいは慰問やボランティアとしてあちこちで活躍され、また一緒になった会社役員だった夫との間にもうけた1男2女を育て上げ、現在も夫婦仲良く暮らしているそうです。
今回の騒動を毎日嫌でも聞かされ、どんな思いなのでしょうか。
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1654
子供の頃(1970年代)、理科の時間に習った「水」「金」「地」「火」「木」「土」「天」「冥」「海」は、太陽の周囲を回る9つの惑星で、太陽に近い順から並べた水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、冥王星、海王星のことでした。
しかし今から16年前の2006年に、国際天文学連合(IAU)が惑星を再定義した際に、冥王星はサイズが当初想定していたよりもずっと小さい(直径で地球の約1/5)ことや、「自分の軌道近くから他の天体を排除している」と判断されて準惑星に降格となり、太陽系惑星は冥王星を除く8個と決まりました。
下記の写真は、天体間の距離を無視した太陽と惑星の大きさをイメージ化したものです。左端の巨大な太陽から「水星」「金星」「地球と月」「火星」「木星」「土星」「天王星」「海王星」です。
惑星の中では木星と土星の大きさが群を抜いているのがわかります。
次は、ある程度惑星間の距離感がわかる太陽系惑星のCGです。
火星と木星の間は広く(5.5億km)開いていて、その間には数多くの小惑星が回っていることがわかります。
当然、太陽から遠くなるにつれて温度は下がっていきますので、火星ぐらいはまだしも(それでも平均気温はマイナス63度)、木星や土星ぐらい離れるととても生物が住める環境ではないでしょう。
IAUが認定している準惑星は、冥王星、セレス、エリス、ハウメア、マケマケの5つですが、冥王星以外の準惑星を知っている人は少なそうです。
太陽系の惑星の中で一番大きいのは木星ですが、直径でみると地球の約11倍あります。
表面積で言えば、地球の表面積は約5億11百万平方キロメートルですが、木星のそれは約6200億平方キロメートルで、表面積比は地球の1200倍という広さです。
もし木星が地球の位置にあり、地球と同じ環境に恵まれていれば、やたらと広い表面積があるので、醜い領土争いなど起きないかも知れません。
もちろん海面以外の地上で、人が安全に暮らせる肥沃な土地がどれほどあるかによるでしょうけど、それとも人間の欲には限りがないので、例え十分に持っていても、某R国のように、もっともっと、奪ってでも欲しいとなるのでしょうか。
ところがあまり知られていませんが、実のところ木星はガス惑星で岩石や地面というものがありません。つまり木星に住むことはもちろん、降り立つことすらできません。せいぜい、木星の周りを周回している地球で言えば月のような衛星には降り立つことは可能のようです。
木星を舞台にした小説は数多くあり、古くはアイザック・アシモフ著の「木星買います」(1955年)や、ジェイムズ・P・ホーガン著の「星を継ぐもの」(1977年)のシリーズがあります。
「星を継ぐもの」は、地球より少し小さい木星の第三衛星ガニメデに宇宙船の残骸が見つかり、その謎とともに物語は佳境に入っていきます。
小松左京著の「さよならジュピター」(1980年)は、太陽系に近づくブラックホールの軌道を変えるために巨大な木星をぶつけて爆発させようという荒技を描いた小説で、1984年に映画にもなりました。
できれば1980年以降に判明した最新の科学技術情報を折り込み、SFX技術を駆使し、山崎貴監督あたりにリメーク作品を製作してもらいたいものです。
現在のところ人類は火星への興味が盛んで2040年代にはNASAが有人探査を計画しているようですが、その火星を足がかりとしてぜひ木星の衛星への人類到達を生きている間に実現して欲しいですが、やっぱ無理かな。
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1653
よもつひらさか(集英社文庫) 今邑彩
1999年単行本、2002年に文庫化された短編小説集で、「見知らぬあなた」「ささやく鏡」「茉莉花」「時を重ねて」「ハーフ・アンド・ハーフ」「双頭の影」「家に着くまで」「夢の中へ…」「穴二つ」「遠い窓」「生まれ変わり」「よもつひらさか」の12篇が収録されています。
著者の作品は「いつもの朝に」(2006年)と「ルームメイト」(1997年)を読んでいますが、ミステリーやホラー、ファンタジー、多重人格などの精神疾患など幅広い複雑な人間関係の内容で、現実的には「ん?」と思いますが、エンタメとしては十分楽しめます。
タイトルにもなっている「よもつひらさか」は、漢字にすると「黄泉比良坂」で、古事記に出てきますが、イザナギとその妻だったイザナミが黄泉の国(死者の国)と現世の境目で起きる話で、この話は先般読んだ桐野夏生著の「女神記」にも出てくる有名な話しです。
現在の島根県松江市東出雲町揖屋に伝承地としてそれを模した場所があります。
その坂道を嫁いだ娘の家へ孫の顔をみるため歩いて向かっていた高齢男性が、坂道の入り口で道標のように建てられていた石碑をしゃがんで見ていたら立ちくらみをして、よろめいたところ穂高で登山をしてきて帰る途中という地元の男性に助けられます。
そしてその地元の男性と一緒に坂道を登っていきますが、坂道の名前の由来について聞くと、男性が言うには、坂道の最初と最後に石碑が建っていて、その間は黄泉の国とつながっているらしいこと、ひとりで歩いていると、亡くなった知人が亡霊として出てきて黄泉の国へ引き込もうとすること、子供の頃に友人が危ない目に遭ったことなど聞かされます。
亡霊はひとりで歩く人になにか食べ物や嗜好品を与えようとし、それを口にすると死んで黄泉の国へ行くことを聞かされ、高齢男性は、そう言えば坂道の入り口で立ち眩みをしたとき、男性から水筒の水を飲まされたことに気づき・・・という感じです。怖いですねぇ、、
その他、寺の天井に浮き出ているシミが双頭の怪物のように見える「双頭の影」、以前は画家と心臓病で亡くなる幼い娘が住んでいたという古い洋館に引っ越してきた父娘ですが、娘の部屋にかかっていた絵画が日によって微妙に変わっていることに気がついた娘がとった行動とは?の「遠い窓」など、なかなか怖くも楽しめるものでした。
★★☆
◇著者別読書感想(今邑彩)
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中庭の出来事(新潮文庫) 恩田陸
2006年に単行本、2009年に文庫化された長編ミステリー小説です。初出は2003年から2004年にかけて今はなき新潮ケータイ文庫でデジタル配信された連載小説です。
正直に言うと、1回読んだだけではなにを言いたかったのか、なにがミステリーなのか、誰が誰なのかよくわかりません。
場面が次々と変わり、現実に起きたことなのか、お芝居の中なのか混乱し、これほど複雑にする必要があるのか疑問です。
個人的には著者の作品は好きですけど、この小説に関してはちょっといただけない感じです。元はケータイ文庫として若い人向けに合わせたものかも知れませんが、逆に連載小説として途切れ途切れで読むとなおさら前後の関係がわからなくなり意味不明になってしまいそう。
内容は、劇の売れっ子脚本家がパーティーの中で毒殺されますが、その謎を中心に展開されますが、同時に、新宿の高層ビルの地下にある中庭で急死した女性、寂れた廃線の駅を夏場だけ演劇の会場として使ってそこで起きた不思議な現象などなど。
特に主人公がいないという点が誰の視点かわからず物語をわかりにくくしています。
そんなわけで、読むのが結構つらかったです。
★☆☆
◇著者別読書感想(恩田陸)
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わらの女(創元社推理文庫) カトリーヌ・アルレー
1924年生まれのフランスの作家さんで、数多くの推理小説を書いています。2022年時点で98歳ですがご健在のようです。
この作品は1956年に出版され、世界的なベストセラーになります。原題はフランス語で「La femme de paille」と邦題と同じ意味です。
1964年にはショーン・コネリーなどの出演で映画も作られていますが、こちらはアメリカ映画なのでタイトルは「WOMAN OF STRAW」となっています。
小説の舞台は、まだ第二次世界大戦の記憶が深く残っている1950年代のヨーロッパとアメリカです。
主人公の女性は敗戦国ドイツ出身の34歳独身女性で、家族など身内は戦争ですべて死に、孤独を埋め、貧しい生活から抜け出すために裕福な結婚相手を探しています。
新聞広告で見つけた縁談に飛びついたところ、募集したのは世界的な大富豪の秘書で、「自分の言うとおりにすればその富豪の妻になれる」「妻となってすでに高齢の大富豪がいずれ亡くなれば莫大な遺産を相続できるので自分にも分け前が欲しい」と共謀を持ちかけてきます。
貧しい生活から抜け出すためには、その秘書からの共謀計画を受けるしかなく、ことは順調に運んでいきますが、、、
文庫の解説の中でも触れられていましたが、私も読んでいて「遺産相続する相手を(犯人が)殺した場合、当然(犯人には)その相続権が無効となるが、無効となればその相続権がさらに犯人の親族へ移ることはないだろう?」と不思議に思いました。
その点は著者があとで指摘され間違いに気がついたと言うことですが、あえて修正はしないでそのまま残っています。ハッピーエンドではなく、完全犯罪を描いた作品ですが、やはり完全犯罪とは言えどこかに穴があるものです。
★★☆
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P・O・S キャメルマート京洛病院店の四季(ハヤカワ文庫JA) 鏑木蓮
2017年に文庫化された書き下ろし作品で、一応は長編スタイルですが、中身はいくつかのエピソードを順番に並べた連作短篇のような内容となっています。舞台は著者の出身地でもあり居住地の京都です。
タイトルのPOSとはコンビニで導入が広まった「Point Of Sales」の略で、一般的には「販売時点情報管理」のシステムを指します。
コンビニにおいて、そのPOSで得られた情報を分析すれば、「いつ何がどれだけ売れるか」がわかり、事前の仕入れや新商品の導入などに役立ちます。
主人公は、東京に本部があるコンビニチェーンの本部社員(スーパーバイザー)ですが、レギュラーというフランチャイズではない直営店の京洛病院店の臨時店長として単身赴任してきます。この直営店の成績が悪く、建て直しに送り込まれてきたという構図です。
そのコンビニのモデルは、京都府立医科大学附属病院の中に設置されているローソン 京都府立医大病院店と思われます。「徒歩5分で鴨川」に出られ、「上流に賀茂大橋が見える」と書いてあるので明らかです。
ちなみにこの病院には50年ほど前に1ヶ月ほど入院したことがあります。もちろんその時にはコンビニなどはなく、代わりに薄暗い売店があったような気がします。
コンビニの従業員が、来店客の様々なニーズと問題を解決していくという、おとぎ話のような話で、あまりリアリティはありません。また1社員の思いつきで次々とプライベート商品が即刻に作られるというのも、巨大なコンビニ組織の中ではあり得そうもありません。
それでも、似たようなエピソードなどを元に考えているのかな?と思われるところもあり、また以前NHKのドキュメント72時間で同じような病院内コンビニを撮影していたときに、小説の中でも出てくるように夜勤明けの女医さんが毎日栄養ドリンクをグビグビッとやっているシーンが出ていました。
私が数年前に人工股関節置換手術で10日間×2回入院していた時も、院内のコンビニにはよくお世話になりましたが、この小説に出てくるような24時間営業でもなく、美味しいローソンの店内コーヒーのようなものはなく残念でした。最近は大きな病院の中にはほとんどコンビニが進出しているようです。
小説では、徘徊で身元が不明の認知症患者や、ペットを使ったアニマルセラピーの話、京都らしく映画や特撮ドラマ関係者の話なども織り交ぜられて、いろいろと役立つ話があって楽しいものでした。
★★☆
◇著者別読書感想(鏑木蓮)
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6月前半 凍える牙、脳寿命を延ばす、ありふれた祈り、倒立する塔の殺人
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