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1627
餃子の王将(以下、王将)は、1967年(昭和42年)に、創業者加藤朝雄氏が京都で誕生させた中華料理店ですが、2021年3月時点で直営店が528店舗(含む海外3店舗)、フランチャイズ店206店舗の734店舗を展開していて今や知らない日本人はいないでしょう。

創業当時、カウンターだけのこの小さな店が、これほど大化けするとは誰も想像しなかったと思いますが、そこは戦略と経営センスの賜と言えるのでしょう。

私が初めて王将に行ったのは、まだ小学生だった1968年頃に、新聞に挟み込まれていた「餃子1人前無料券」がついた新店オープンのチラシに釣られ、親に頼み込んで連れて行ってもらったのが最初です。

その時に食べた餃子の美味しさはこの世の物とは思えなかったほどです(その時生まれて初めて餃子を食べました)。熱いのに慌てて頬張ったので口の中はひどい火傷しましたけど。

1970年前後、普通の中華料理店で食べる餃子は、1人前が300円とか400円と他のチャーハンやラーメンとあまり変わらない価格が当たり前で、高級品と思っていましたが、王将の餃子は当時なんと1人前が60円でした。

60円ですよ、60円。「はやい、うまい、やすい」の吉野家の牛丼が1970年前後はおよそ200円の時代にです。

しかも加藤社長自らが「餃子1人前無料券」をあちこちでばらまいていたので、実質的に二人前(12個)食べても60円!こりゃ通いますよ。

1970年代の私が学生時代には、「お金のない学生は30分皿洗いすればなんでも無料!」とか「餃子10人前を30分以内に食べると無料」とかいろいろな話題を提供してくれました。今でもやっている店があるのかな?

そうした王将の魅力や加藤社長のよい人柄を感じたのか、それとも新卒の給料が平均大卒給料(12万円)の約2倍という好待遇が良かったのか、大学を出て王将へ入社する学生が急増しました。店にも「大卒店長募集!」とかの張り紙をよく見かけました。

大卒でも、最初は店の中で皿洗いから修行を積み、何年か後には店長として直営店を任されるという流れだったと思います。

1980年に社会人になり関西から東京へ引っ越したので、王将とも縁遠くなりそうでしたが、営業の仕事で新宿通りを歩いていたら、偶然バッタリ王将を発見しました。

もう懐かしさで仕事中で午後に人と会わなくちゃいけないのに、ランチで餃子をパクパク食べたのは言うまでもありません。

あとで知りましたが、王将の東京進出第1号店がその前年1979年に新宿区内にオープンしていました。当時はインターネットとかもなく、そういう情報は偶然に発見するしかありませんでした。

不幸な出来事もありました。

創業者の義理の弟で、創業後まもなくして加藤社長と一緒に王将をもりたててきた大東隆行氏は2000年から王将の社長を務められていましたが、2013年に何者かに本社工場の前で銃撃され亡くなります。まだ犯人は捕まっていません。

その大東社長は毎朝早くに出勤し、ひとりで本社工場の玄関や、周囲の道路をほうきとちりとりで掃除し散水するのが日課で、それを知っていた犯人(あるいは犯人を雇った黒幕)に狙われるという気の毒な事件でした。未だになぜ命まで狙われたのか理由がわかっていません。

もうひとつ、大阪王将という餃子を主体とする似た店(チェーン)がありますが、元々は創業者の親族が1969年に王将からのれんわけをしてもらい、まだ王将が進出していなかった大阪で「王将」という中華料理店を創業します。

しかしその「王将」が、王将がメインの営業圏内としていた京都に進出しようとしたときに、商標の問題で揉め裁判沙汰となりました(その後「大阪王将」と名称を変えて和解)。現在も王将とは資本関係はありません。

双方の餃子やチャーハンを食べ比べてみましたが、私的には軍配は元祖王将「餃子の王将」に上がります。馴染んでいる味と言うこともあるかも知れません。

最近は、家族にも王将の餃子やチャーハン、唐揚げ等のファンが多いので、月に1回ぐらいの割合で、持ち帰り(生餃子、チャーハン、酢豚、豚キムチ、唐揚げなど)を買って、家で焼いたり温めて食べています(冷めたチャーハンはレンジよりも炒め直すと美味しく食べられます)。

しかし今は餃子は1人前が240円、創業当時から50数年で4倍になっています。それでも十分安いけど、王将が全国区となったおかげで、世の中の餃子の値段が一気に下がったのは大きな貢献と言えます。

今では宇都宮餃子だ!いや浜松だ!宮崎だ!と名物餃子が出てきていますが、餃子がこれだけ安く提供され、庶民の食べ物になったのは王将のおかげと言っても良いでしょう。

旅行へ行ったときに、本来はその地の名物とかを食べるのが筋でしょうけど、今は、日本全国に王将がありますので、私は一人旅が多いせいか、現地の王将で夕食を食べることがままあります。

基本はどこでも同じ味で、間違いないのと、なんと言ってもお腹いっぱい夕食を食べても千円以内で済ませられるのも魅力です。

【関連リンク】
1607 代表的なB級ファストフードの価格推移
1165 ラーメンと私
1015 丼飯を日本の文化として育てていきたい



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1626
普段日常的に使っているトイレットペーパーにもいくつかの種類があります。これだけの種類が必要?って思うぐらいに、並べられているお店もあります。

一般的には、紙の厚さがシングル(1枚巻き)かダブル(2枚巻き)かぐらいしか興味がない人も多いかと思いますが、見ていると、シングル50m~100m、ダブル25m~50mとロールの長さに数種類があり、香り付きや柄付き、最近は3枚重ね、芯なし、エンボス加工などいろいろとバラエティに富んでいます。

トイレットペーパーの幅、長さ、芯の直径、水につけて溶ける速度など、一応はJIS規格でも定められていますが、あまりキッチリと守られてないようです。

長さについては、27.5、32.5、55、65、75、100mと6種類がJISで決まっていますが、これもあまり意味があるように思えません。現在のスタンダードはシングルで50~60m、ダブルで25~30mというところでしょうか。

以前、会社のビルのトイレで使われていたトイレットペーパーが、再生紙だと思いますがツルツルペラペラした、そう硬めのスーパーの新聞折り込みチラシのような紙質でした。

私は仕事上外へ出ることが多く、ビルの中で用をたすことが少なく、「こりゃ使えねぇ紙だな」と思いながらもどうでも良かったのですが、内勤の社員、特に女子社員の大不評を買っていました。

そこで社長の指示で、ビルメンテナンス業者にクレームを入れて、トイレットペーパーを変更してもらったことがありました。長さよりも大事なのは紙質ということです。

紙質はパルプ100%というのが最良で、再生紙を使ったものは環境に優しいものの、どうもお尻には優しくないようです。

テレビの情報番組の中で、あるコメンテーターが「私は香り付きのがいい!」と言っていましたが、この日用品につける化学合成した香料は、一部の人に香害やアレルギー反応を引き起こして問題となります。

個人的には、アレルギーこそないですが、年齢を重ねて、臭いに過敏になってきているせいか、石鹸、洗剤、柔軟剤に含まれる強烈な人工的な香りや、トイレの中の消臭剤などの化学香料にはいつも嫌悪感を持っています。

しかし、上記のコメンテーターと同様、それを希望する人がいてよく売れるのか、トイレットペーパー含め家庭用の日用品はほとんどが香り付きになっています。

それはともかく、全国家庭用薄紙工業組合連合会の調べによると、シングルとダブルそれぞれ1回分の平均使用量は、小便時の使用(女性)はシングル89cm、ダブルが66cm、大便時はシングル177cm、ダブル146cmということです。

また、日本トイレ協会の発表によると、トイレットペーパーの1回平均使用量(大・小合わせて)は80cmとされています。平均的なダブル30mのトイレットペーパーだと、37回分ということになります。またアメリカ人と日本人を比べると、アメリカ人のほうが使用量(長さ)は少ないようです。

日本人の使用量が多いひとつの要因として、ウォシュレットなど水洗浄装置が日本で普及しているせいだろうと思います。水で濡れるとすぐに破け(溶け)てしまうので、どうしても使用量が増えてしまいます。

シングルとダブルで、仮に長さが2倍で金額が2倍ならば、シングルのほうが使用量は少なくコスパは良いということになります。どうしてもダブルの場合、シングルの半分の量で済むということはなさそうです。

ちなみに、なぜトイレットペーパーにはシングルとダブル(最近はトリプルもある)の2種類が流通しているかと言うと、製造業者の人は「本当はダブルで使ってもらうほうが効率的だが、シングルを求める人が少なからずいるからシングルも作っている」と言うことでした。

あの薄い1枚で使うことはまずないので、確かにシングルは必要か?と言われるとその通りです。

あと、「トイレットペーパーを何枚も重ねて拭いたから手は汚れていない」と思ったら大きな間違いで、大腸菌はトイレットペーパーを10枚や20枚を重ねても簡単に通過して手に届くそうです。

なので大きい方をしたあとは必ず石鹸などでよく手を洗わなければ衛生上はダメと言うことです。

ちなみにうちは、妻と娘と一緒に住んでいて、それなりに使用量が多いので、いつもパルプ100%、ダブルの50mを探して購入しています。何度も交換するのが面倒ですから。

【関連リンク】
1541 トイレの記憶
1521 オシッコと非常用携帯トイレの話し
1350 トイレ個室の空き不足対策決定版



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1625
2019年7月にそれまで長く使ってきたJ:COMのケーブルテレビ兼ネットワーク兼電話回線の契約を解除して、テレビはアンテナを独自に建て、インターネットと電話回線はNUROの光ケーブル契約(NURO光G2V)に変更しました。

それについては下記に詳しく書いています。

やっとのことでJ:COMを退会した その1 2019/8/10(土)

ケーブルテレビの銅線を使ったネット回線に不満があったことも変更したひとつの理由で、NUROの光回線に変わって、その速さに満足していました。

しかし、最近というかここ数ヶ月、夕方から夜間にかけてネットを使うとアレ?動かないと思うことが多くなってきました。

ネットでやりとりする際のスピードは、契約している回線の問題以外に、接続しているサーバの負荷状態や、家の中にあるルーター能力やWi-Fi設定、有線LANケーブルの問題、さらにはPCやスマホの処理能力など様々な理由があります。

しかしやはり一番問題なのは、今回で言えばNUROの回線速度の問題のような気がします。

と言うのも、午前中の速度は、契約直後かそれよりも速いと思う反応速度が出ているにも関わらず、夜間になると、急速にスピードがハッキリ体感できるほどに落ちてくるからです。

家庭用のネット回線は、昼間よりも夜間のほうが混雑して速度が落ちるのもある程度は理解できます。しかしそれにも我慢の限度があります。

あまりにも「使えねぇー!」となると、仏の管理人でも鬼の形相に変わってきます。

その怒りに輪をかけるのが、やたらと流されているテレビのCMで「高速」「快適」「NUROにしないのもったいない」と繰り返されることです。

まずは、どれくらい昼と夜とで速度に差があるかを調べてみました。特定の要素が含まれないよう、2週間ぐらいに渡り、午前中、午後、夕方、夜間それぞれに不定期で37回計測してみました。

利用環境は、NUROが設置したONUから有線LANケーブルでPCへつないでいます。またWi-Fiや同じ回線を使う固定電話など他の利用がない時に計測しています。

計測ツールは、USEN GATE2の「インターネット回線スピードテスト」です。

まず一般的にわかりやすいダウンロードとアップロードの時間別テスト結果です。もちろん数値(Mbps)が大きいほど速くて優秀です。



午前中から夕方頃までは概ねダウンロード速度は600Mbpsを超えていて、これはまったく問題ないというか素晴らしいと思えるレベルです。

しかし一方では、夜間、特に21時以降は使い物にならないぐらいダウンロードもアップロードも速度の低下が見られます。想像を超えるあまりにも酷い状態です。

ちなみに、光回線ではないJ:COMのケーブル(銅線)回線の時(2019年夏頃)に計ったときは、夕方17時頃の平均速度で、ダウンロード105Mbps、アップロード9.4Mbpsでした。それよりはかろうじて上回っているものの、とても快適とは言えないスピードです。

最近は、ビジネスは当然、プライベートでも大きなデータやファイルをクラウド上に置いて作業をすることが多くなっています。そう言う時に、サクサク動かないと相当イライラすることになります。

つまり「リモートでの仕事やネットゲーム、動画の視聴、大きなファイルのダウンロードやアップロードなどは16時までに終えるように段取りをする!」というのがこのNURO光回線の使い方なのかも。使えねぇー

次に、Ping(回線のレスポンスや応答速度を表す数値)とJitter(Ping値の揺らぎ)テストです。詳しい説明は省きますが、数値(ms)が小さいほど回線速度が速く安定していて優秀です。



やはり夕方の17時以降は凸凹がありますが、Ping値は概ねスピードが悪化しています。Jitter値の悪化も夕方以降にだけ発生しています。回線がひどく混雑しているということなのでしょう。

下記はテスト結果のダウンロードが一番速かった午前9時5分と、一番遅かった午後21時46分のテスト結果画像です。

計測:金曜日09:05(午前) 計測:水曜日21:46(夜間)

ダウンロードの最良値808.31Mbpsと最悪値5.36Mbpsを比べるとなんと150倍の開きです。アップロードは約4倍の差です。

一番遅かった夜間の判定結果を見ると、webサービスは「webサイト閲覧」「SNS利用」「ビデオ通話」とも快適、動画閲覧は「高画質」「フルHD」は快適、「4K」はストレスの判定、ゲームは「オンラインゲーム」がストレス、「スマホアプリゲーム」は快適、ビジネスでは「メール」だけ快適、「ビデオ会議」は普通、「クラウド利用」と「大容量通信」はストレス判定です。

これだけ見ると、たいした問題ないじゃない?って思われそうですが、実際は夜間に動画や画像の多いFacebookを見るのさえ動きは緩慢でストレスを感じます。

いつ頃このように酷くなったのか?と言うとあまり印象は残っていないのですが、ここ半年ぐらいからでしょうか。

普段使うのは、SNSやブログ、ホームページ(2種類)への画像や動画のアップロードと、youtubeの視聴や、ブログ用の資料ダウンロードなどで、オンラインゲームやパワーユーザーのような使い方ではなく極めて大人しいものです。

そんなあまり使っていない私ですら「夜は使いものにならねぇー」と言っているぐらいですから、パワーユーザーはまったくダメダメでしょう。

莫大な経費をかけて面白くもないテレビコマーシャルをバンバン流すぐらいなら、夜間でも快適な回線速度を維持するため、増大する需要に合わせた設備投資にお金を使ってくれよって思います。

こんな状態だと、今年の7月で3年が経つので、そろそろ他を考える時期なのかも知れません。

【関連リンク】
1355 やっとのことでJ:COMを退会した その1
962 ケーブルテレビの契約見直し



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1624
虹色天気雨 (小学館文庫) 大島真須美

著者は今年還暦を迎える私とも近い世代で、1992年にメジャーデビューし、2019年には初めて書いた時代小説「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」で直木賞を受賞された方です。作品を読むのは今回が初めてです。

この作品は2006年単行本、2009年に文庫化された作品で、ビターシュガーシリーズとして続編の「ビターシュガー(虹色天気雨2)」が2010年に出版されています。

また2011年にはこの作品を原作とする全10回のドラマがNHKで製作され放送されました。

アラフォーの仲良し女性3人組が主な登場人物で、3人中ひとりだけ既婚者で小学生の子供がいます。

その子供を突然預かってくれと早朝に叩き起こされ、理由を聞くと旦那さんが仕事を放り出して突然家出したので探すのだと。そういうシーンから始まります。

登場人物の説明がなく、いったいどういう人達?どういう関係?とかわからず(後々なんとなくわかってくる)その流れをつかむまで謎ばかりで疲れます。ミステリー小説ではないのですけど。

とにかく女性が三人寄れば恋愛と男の話しばかりというのが普通過ぎて夢がなく、主人公の独身の女性は最近別れた男性に未練たっぷり、もうひとりの女性は愛情よりカメラマンで海外の仕事を優先する年下の恋人と関係がギグシャクしていてと、男にはなかなか理解しがたいねっとりした感情が繰り返されます。

昭和な男性は読むときっと辟易させられますが、同じような年齢、立場の女性には勇気と清涼感を与えるのでしょう。知らんけど。

続編は読みたい?ん~、しばらくはお腹いっぱいで読みたくはないかな。

★★☆

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老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書) 野澤千絵

著者の2016年刊新書「老いる家 崩れる街」を2018年に読んでいますが、その続編というか、ヒットした作品の柳の下のドジョウと思われるのが2018年に発刊されたのが本著です。

2018年7月前半の読書と感想、書評(老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路)

タイトルを見て、前のとなにが違う?と一瞬わかりませんでしたが、よく見ると現在進行形から過去形に、そして悲観論から楽観論(期待論)へと変わっています。

本書では、高齢者世帯が住んでいる持ち家の一軒家やマンションが今後急速に空き家となり、その不動産を相続する遺族や関係者にとってたいへんな問題となるという話しがメインです。

確かに高齢者だけが住む世帯が増えつつあります。そしてその高齢者が亡くなったり、自活できずに施設に入ったりすると、その空き家は一気に荒れてきます。

老朽化した一戸建ての場合は、雨漏りや倒壊の危険性があり、マンションの場合は、管理費や修繕積立金、修繕一時金の未払い金が積み上がっていきます。

そうした一戸建てやマンションを相続する人達は、そこに住むか、あるいはすぐに売却することができれば問題はありませんが、そうでない限り、相続放棄するか、放置せざるを得なく、そうした物件が今後20年ほど一気に増加することが予想されています。

私も知りませんでしたが、相続放棄すれば管理責任もなくなると思ったらそうではなく、倒壊の危険性のある建築物や、マンションの共同管理上の責任などからは逃れられません。

そうした相続人(主に子や孫)に負担をかけないように、今の高齢者は準備しておく必要があるということを伝えています。

ひとつだけ、嫌な表現だと思ったのは、不動産のことを負動産、相続のことを争続と表現して書かれていることです。

流行に乗るのもわからなくはありませんが、外国人を害人などと書くのと同様に、なにか不快で悪意を感じる言葉に思えます。一般個人ならともかく、少なくとも最高学府の教授先生が使う言葉ではないでしょう。

★★☆

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冷たい校舎の時は止まる(上)(下) (講談社文庫) 辻村深月

大学卒業後、団体職員として働きながら書いた実質的なデビュー作で、2004年に単行本、2007年に文庫化されました。

デビュー作というと荒削りなものが多い中、とても新人とは思えない書きっぷりで驚きました。

文庫で上・下巻計約1000ページ(単行本は3巻で計約800ページ)とかなり多い分量で、読み始める前まではやや身構えましたが、一度入っていくとグイグイと物語の中に吸い寄せられました。

内容は、8人の高校生クラスメイト達が、大雪の中、校舎に閉じ込められます。その2ヶ月前におこなわれた文化祭の最終日にはクラスメイトのひとりが校舎の屋上から飛び降り自殺をして亡くなるという事件が起きています。

ところがその閉じ込められた8人には誰が飛び降りたのか記憶が消されていて、そのクラスメイト8人の中のひとりではなかったか?その自殺した人間が作りだした精神世界に連れてこられたのか?という疑心暗鬼が生まれてきます。

とにかく8人の過去の闇、友人関係、親子関係、イジメ、親子心中、援助交際などが露わになってきますが、それにしても8人分あるので長いです。

ミステリー小説と言うことで、いろいろとルールに則した内容になっていますが、結果はちょっと意外でズルイという感じもしました。

面白かったけど、やっぱり長過ぎ。この内容だったら文庫1冊でなんとかして欲しいところですって言うか、8人もいるか?と思いましたが、8人が絶海の孤島に閉じ込められひとりずつ謎の死を遂げる「そして誰もいなくなった」をインスパイアしたものとなっているのでしょうかね。

★★☆

著者別読書感想(辻村深月)

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ドリーム・ハウス (新潮文庫) 小林信彦

数多くの小説やエッセイなどを出している著者の1992年に単行本、1996年に文庫化された中編小説です。

過去には著者の作品は、「ぼくたちの好きな戦争」「ムーン・リヴァーの向こう側」の2作だけ読んでいます。

主人公は売れっ子とは言えないまでも、様々なエッセイや講演会などを依頼されそれで食っていける専業の作家です。

住まいにはあまりこだわりはなくひとりでマンションに暮らしていますが、静かな書斎と広い書庫が欲しいと思っています。

戦後の祖父の時代に手に入れた実家にはあまり仲が良くない母親がひとりで住んでいますが、友人から交換殺人を持ちかけられたあとに、偶然なのか自然死で亡くなり、ひとりっ子の主人公は土地と古い建物を相続します。これがちょっとホラー1。

その相続した土地は公道との接続が悪く建築法で新築できない場所ですが、残った古家の改築ということであればほぼ新築同様に建設が可能だということがわかり、パチンコ屋で知り合った恋人とともに夢のマイホームを計画していくことになります。

ところが同じ敷地には亡くなった母親が契約書も作らずに破格の家賃で貸し出した隣家があり、どうすれば立ち退いてもらえるか弁護士とやりとりしている中、これまた偶然なのか、隣家が不在の時に失火が出てその家には住めなくなり出て行ってくれます。これもホラー2です。

さらに、家の改築が完成し、恋人と引っ越ししてきますが、、、これがまたホラー3ということになります。

確かに日本人は家を買うことを一生の目的としている面があります。特にこの小説が書かれた1992年というと、まだバブルの余韻が根深い頃で、土地神話などという言い方もされていました。

私も結婚後にはそれに翻弄されていくことになりますが、国民がみな同じ方向を向いて同じ事をしている姿というのはちょっと不気味な気もします。

そうしたマイホーム協奏曲と微妙なホラーとの合体で楽しめました。

★★☆

著者別読書感想(小林信彦)

【関連リンク】
 3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋
 2月後半 退廃姉妹、冬の旅、彼が通る不思議なコースを私も、IQ、かなたの子
 2月前半 流、女神記、遠い山なみの光、新・日本の階級

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1623
毎年3月末が近づくと、「年度末で忙しい」という声が聞こえてきます。学生時代は4月初旬に学年が変わったり、進学して学校が変わることで、特に年度末(3月末日)にこだわることがなく「忙しい」という意味がよくわかりませんでした。

社会人になってからその”大人の事情”を知ったのですが、役所や多くの企業では3月末に締めの決算があるので、その前に当年度予算を使い切ろうとか、売上を少しでも増やすために無理矢理商品を顧客に押し込んだり、逆に利益が多く出そうなので、4月以降に必要なものを3月末までに買ってしまい決算にその経費を反映させようといったことがよくおこなわれます。

ところで、この4月1日が年度初めで3月31日が年度終わりというのは、ちょっと中途半端でどういう理由があって決まったのかずっと不思議に思っていました。

調べてみると、、、、こ、これは!という、とんでもない事情がきっかけだということを発見しました。

その理由は後回しにして(ガタッ)、日本では7世紀(飛鳥時代)に律令制度が唐(中国)から導入され、そのひとつに旧暦1月から旧暦12月までを1年(度)とする制度が生まれたそうです。

それが長く続きましたが、新しくできた明治政府の大蔵省が明治2年(1869年)に、新米の収穫期に合わせた旧暦10月から旧暦9月までを会計年度とすることに変更します。

つまり、新米を収穫し、納税(上納)する10月から新年度ということでしょうか(旧暦10月1日は新暦の10月下旬頃)。米本位制は江戸時代までのことかと思っていましたが、近代明治政府でも使っていたわけです。

ところが明治5年(1872年)には、旧暦(太陰暦)から新暦(グレゴリオ暦)に変更となるタイミングで1月から12月を会計年度とすることが政府で決まり翌年明治6年から実施されます。

さらに混乱は続き、その明治6年に地租改正法が制定され、その地租の納期(最初の納期が8月)に合わせるため、明治8年からは7月~翌年6月の会計年度に変更されます。なぜ地租に合わせなきゃならなかったのか意味がわかりません。

さて、この後のことですが、明治15年(1882年)に、その後日清戦争へとつながっていく壬午事変が朝鮮半島で勃発し、大軍が海を渡る必要から帝国海軍の急拡張が必要となります。

明治17年度にはその莫大な財政赤字の穴埋めをするため、翌年度(明治18年度分)の酒造税の税収を前倒して繰り入れるという荒技が使われます。どうして酒造税?というのも意味不明です。

これを是正するため苦肉の策として、酒造税の納期(最初の納期が4月)に合わせ、明治19年4月から翌年3月を会計年度に変更することが決まりました。

もう無茶苦茶なつじつま合わせの荒療治が現在まで続く4月~3月の会計年度となっています。

日本の会計年度(その他多くの公的な年度)が、4月~3月なのは、このようにふざけた理由で決まったわけで、なにか合理的で日本風土や季節、科学的な理由に合わせた年度の設定ではないと言うことです。

この会計年度のように使われる「年度」は、会計以外にも民間企業(株式会社)の「事業年度」や、「貿易年度(1月~12月)」「米穀年度(11月~10月)」「麦年度(7~6月)」「砂糖年度(10~9月)」「酒造年度(7~6月)」「いも年度(9月~8月)」「でん粉年度(10月~9月)」「肥料年度(7~6月)」「農薬年度(10~9月)」など様々な年度があります。あまり聞いたことはない年度が多いですが。

世界の国々の会計年度はどうなっているかというと、

1月~12月制 中国・韓国・台湾・フランス・ドイツ・オランダ・ベルギー・スイス・ロシア・南米諸国など
4月~3月制 日本・インド・パキスタン・イギリス・デンマーク・カナダなど
7月~6月制 フィリピン・ノルウェー・スウェーデン・ギリシア・オーストラリアなど
10月~9月制 タイ・ミャンマー・アメリカ・ハイチなど

となっています。意外にも各国でいろいろあるのですね。4月~3月なんて日本ぐらいだろ?と思っていたら、イギリスやカナダ、インドなど結構メジャーな会計年度です。

学校が4月に始まり3月で終了するのは、やはり国の会計年度と関係があるそうで、国や自治体等の予算で学校が運営される小中学校の義務教育校や国公立学校が4~3月で決まれば、他の私立学校もそれに合わせることになります。

事業年度を自由に決めることができる株式会社では4~3月の3月末決算というのは、年1回決算の事業会社全体ではわずか19%しかありません。意外でしょ?(データ出典:ニッセイ基礎研究所)

しかし資本金1億円以上の企業で見ると54%、資本金100億円超の企業では74%となります。中堅企業や大企業は3月末決算が多いということです。

個人経営などの零細企業だと、あまり3月末決算にこだわらず、9月末締め(11%)、12月末締め(10%)の企業が比較的多いということです。

逆に少ないのは11月末締めと1月末締めで4%程度です。

そう言えば私が新卒で入社した会社(当時は資本金3千万円の小企業)は、決算が1月末でした。その後、会社の規模が大きく(現在は東証一部)なって、様々な不都合があり、決算時期の変更をしたことを思い出しました。

【関連リンク】
1525 異動や引越は喜び楽しめ
1318 3年以内に3割以上の人が辞めちゃうけど
1216 新卒学生の就職先選定の条件
727 大学生の就職率推移と卒業後の進路



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