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日本のプロ野球(NPB)とアメリカのメジャー(MLB)にはそれぞれFA制度がありますが、その違いというのが非常にわかりにくいので、簡単にまとめておくことにします。
例えば、メジャーリーグに移籍した日本選手が、通常なら6年後に利用できるFAですが、それより短い期間でFAを使って移籍することもあります。
例えば2012年のシーズンからヤクルトからブルワーズへポスティングシステムで移籍した青木宣親選手は、2年後の2014年シーズンはトレードでロイヤルズへ移籍、そのシーズンが終了後メジャー経験3年でFAを取得し、2015年シーズンはSFジャイアンツへ移籍しました。
え、3年?6年じゃないの?って思いますよね。
また選手がNPB内でFAを行使し国内移籍した場合、移籍先から移籍元へ選手やお金で補償する場合があったりなかったりします。これもよくわかりませんでした。
さらにNPBには国内FAと海外FAというのがあり、権利を得ても利用しない選手も多く、制度自体に実効性があるのか?という疑問もあります。
まずNPBのFA制度ですが、例外などもありますが、大雑把に言うと、
・高校生ドラフト入団の選手は8年、大学・社会人入団選手は7年で国内FA権取得
・累計9年で海外FA権取得
ここでいう年数は出場選手登録(一軍登録)のことで、2軍との行き来やトレード等でチームが変わった場合は通算して計算します。
怪我もなく、不調で2軍で調整とかもなく、シーンズン中はフルに1軍で7~8年過ごせば国内FAが取得できますが、海外FAは少なくとも9年は取得できないので、20代でFA権を得るというのはかなりハードルが高いのが現状です。
なので、20代の内にメジャーへ行きたい場合、イチロー(マリナーズ移籍当時26歳)や田中将大(ヤンキースへ移籍当時25歳)などはポスティングシステムという所属球団が移籍に合意し、移籍先から補償金が得られる形での海外挑戦をおこなうことになります。この場合は、FA制度で決められている年数とは関係がありません。
日本人選手で、このFA制度を使って初めてメジャーに移籍したのは、1998年に当時32歳の吉井理人(ヤクルト→メッツ)選手が最初です。その後、移籍当時29歳の木田優夫(オリックス→タイガース)、移籍当時31歳の佐々木主浩(横浜→マリナーズ)などがいます。
このFA制度ができる以前にメジャーに渡ったNHK BSのメジャー中継でお馴染みの村上雅則氏は、1964年に南海からサンフランシスコ・ジャイアンツ傘下の1Aフレズノ野球留学のため派遣され、そのままメジャー昇格を勝ち取りました。その年、アジア人初のメジャーでの勝利投手になっています。
同じくFA制度がない時に、野茂英雄氏は鈴木監督や球団との不和もあり近鉄を任意引退し、1995年ロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約、その後の大活躍は有名です。
一般的に野球選手の一番旬の時期は、20代半ば~30代前半ですので、海外FA権を取得する時は、そのピークを過ぎてからということになります。制度自体にちょっと選手側にとっては不利です。
次にメジャー(MLB)のFA制度ですが、シンプルでアクティブ・ロースター(NPBでいう一軍登録)が6年間でFAの権利を取得できます。高校出身の選手なら、働き盛りの20代半ばで取得できます。
ただMLBでいうFAは、NPBのFAとはだいぶんと違っていて、フリーエージェント、文字通り自由契約なので、NPBで言うところの戦力外(契約外)になった場合も多く含まれます。
メジャーでFAの資格を持っている!と言ってもそれは必ずしも選手にとってハッピーではなく、契約してくれる球団がなく、戦力外として浪人中ということがしばしばあるわけです。
ヤンキースとの7年契約を終わり、FA資格を持っていた田中将大選手は、次の球団を自由に選べるため日本の楽天に移籍しました。
また、選手と球団と契約するときに、契約(期間)が終了した時点でFAとするという条項を入れることが可能で、その場合、3年契約であれば、3年後にFA権を取得することができます。
2014年に楽天からヤンキースへポスティングで移籍した田中将大選手は、最初7年契約でしたが、その契約の中には4年終了後にFAを取得できるという内容でした。
結果的には当初の予定通り7年間の契約を全うしましたが、もし気に入らなければ途中で移籍することも可能だったわけです。
個人的な感想を言うならば、NPBのFA権取得時期を高校出身者も含め国内・海外と区別なく6~7年に短縮し、移籍市場をもっと活発にすると同時に、完全移籍だけでなく、メジャー球団との期限付きレンタル移籍を容易にするシステムを作ればどうかなと。
つまり、レンタル期間中はFA権の行使は保留され、期限を設けることで、行きっぱなしということはなく、期限が来たら元のチームに戻ってこられるというサッカーではクラブ間同士でよくあるレンタル制度と同じような方法です。
そうすれば、行く選手も、球団側も、リスクを大いに減らすことができ、レンタル期限がきた時に、選手と双方の球団が話し合い、そのままレンタル先へ移籍(移籍元には金額的補償)するという新しい移籍方法も可能になってきます。
お試しで日本人選手またはメジャー選手をそれぞれの希望する球団が使え、成績が残せなければレンタル期限で終了して元の球団へ、うまく順応して成績を残せればそのまま移籍交渉ができます。
選手にとっても、退路を断っての完全移籍よりも、もっと気軽に数年間メジャー経験(家族なども含めて)が積めるというメリットがあり、そこでやっていける自信がつき、レンタル先の球団に求められたら完全移籍するという道が開けます。
逆にメジャー側にとっても、控えに回らざるを得ないメジャー選手が、NPBのレギュラーとして活躍できる機会があり、期限後もそのまま日本でずっとプレーしたい!という可能性もあります。
球団にとっても、今は同じポジションにスター選手がいるので控えだが、数年後にはきっと活躍してくれるだろうという場合、レンタル期間の数年間、武者修行を兼ねて行ってこい!ということができます。
どうでしょうかね?
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コロナ自粛の影響もあって、テレビネタでお茶を濁すことになりますが、昨年2020年にNHK BSで放送された三船敏郎生誕100年「映画俳優・三船敏郎~サムライと呼ばれた男の実情~」という番組を録画して見ました。
そして今年1月に放送されたドキュメント72時間「北九州 100年続く人情市場」という番組を見て、この二つの番組に共通する、近いようでほとんど知らない日本の100年前ってどういう時代だったのだろうと、ふと気になりました。
そう言えば、学校では1300年前の大化の改新や、830年前の源平合戦などは習ったものの、100年前の近代史はほとんど習っていません。
その前に、100年前を経験している現在100歳以上の人ってどのぐらいいるか知ってますか?
2020年9月時点の住民基本台帳では、100歳以上人口は80,450人。50年連続で増加し、初の8万人超えです。男女比は88%が女性で、こればかりは努力しても男女平等とはいかないようです。
100年前の1920年はどういった時代背景があるかというと、欧州で1914年から始まり、1919年のヴェルサイユ条約締結まで続いた第1次世界大戦が終結した直後で、日本は戦勝国になりましたが、それまでの戦争特需景気の反動で一転して不況へと向かっていく転換点となります。
同時に1920年以降、大正デモクラシーという政治的な信条が急伸し、社会主義思想の拡大や、一般市民への参政権などの要求など、近代政治体制が育まれていくことになります。
そうそう、大ヒットしたコミックやアニメの「鬼滅の刃」の時代設定は、ちょうどこの100年ぐらい前の頃が舞台で、着ている服装、ところどころに出てくる町並や人々の生活風景は、その頃の時代をベースに描かれています。
1920年は和暦では大正9年で、当時の内閣総理大臣は原敬、世界を見ると第1次世界大戦の反省から国際連盟が設立され、日本も加入しました(1935年に脱退)。
国内の企業では、日立製作所、スズキの前身鈴木式織機、マツダの前身東洋工業が設立されました。昨年100周年を迎えたはずですが、コロナ禍の中、あまり大きなイベントや記念行事ができず、悔しい思いをされたでしょう。
社会では、読売新聞社が主催する「東京箱根間往復大学駅伝競走」(箱根駅伝)の第1回目が開催され、まだ当時は女性に参政権がなかった中で、平塚らいてう、市川房枝らが日本初の婦人団体「新婦人協会」を結成しています。
学校教育法以前の大学令により慶応大学、早稲田大学、明治大学、法政大学、中央大学、日本大学、國學院大學、同志社大学が設立されています(前身の学校や団体の歴史は別)。
100年前に生まれた人で、三船敏郎(1997年没)以外の有名人は、長谷川町子(1992年没)、豊田穣(1994年没)、高木彬光(1995年没)、阿川弘之(2015年没)、山口淑子(李香蘭 左写真)(2014年没)、森光子(2012年没)、原節子(2015年没)、川上哲治(2013年没)、西本幸雄(2011年没)、別当薫(1999年没)、ユル・ブリンナー(1985年没)、ミヤコ蝶々(2000年没)など。さすがに100歳を超えて長生きされている有名な方はいらっしゃいません(敬称略)。
100年前の映像はほとんどありませんが、2020年の映像はたっぷりとあります。
今から100年後の人達は、100年前の2020年を教科書や歴史書ではなく、主として映像を通して見て学び、知ることになるのでしょう。
悲惨な戦争や災害が多かったこの100年でしたが、この先、100年は、少なくとも日本においては戦争がない、平和で自然災害が起きても備えがあって良かったという100年になってもらいたいものです。
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6年前に書いた「お薦めの面白い小説(国内本) 2015/5/9(土)」の更新版を書いておきます。
2015年5月9日以降に読んだ本は635冊でした。その中には、小説(国内/海外)やエッセイ、新書、ビジネス書などが含まれますが、今回は国内小説限定で28冊のお勧め文庫本を選びました。
書籍タイトルのリンク先は、私が書いた複数書籍の感想集へ飛びますが、その記事の下の方にある場合は少し下へスクロールをして見てください。
恍惚の人 1972年に刊行され日本中に一大ブームを巻き起こし、翌年には森繁久彌、高峰秀子主演で映画化もされた作品です。認知症老人役の森繁久彌氏は当時はまだ60歳でした。 当時は現在のように高齢化社会でもなく、また認知症やアルツハイマー病という名称もなく、いわゆる呆け老人とか痴呆、耄碌(もうろく)爺じいとか言っていた時代です。・・・ |
有吉佐和子 | |
紀ノ川 1959年刊ですのでおよそ60年前に書かれた作品です。和歌山出身の著者がその故郷を舞台にして、激動の明治、大正、昭和とつながっていく、およそ60年にわたる「花」「文緒」「華子」3代の女系女子を主人公にした小説です。 1964年にNHKでテレビドラマ化され、1966年には中村登監督、司葉子、岩下志麻などの出演で映画も製作されました。いずれも見ていませんが、映画は機会があればそのうち見たいなと思っています。・・・ |
有吉佐和子 | |
羆嵐 1977年に発表された作品です。舞台は今からちょうど100年前、1915年、大正時代の北海道の中西部、三毛別の山中に移住してきた開拓農民が暮らす寒村で起きた三毛別羆(さんけべつひぐま)事件を題材としたドキュメンタリー的な小説となっています。 三毛別羆(ひぐま)事件とは、すでに冬眠しているはずの巨大なヒグマが、北海道の山中の部落(三毛別)に現れ、そこの開拓民達を数日間にわたり襲い、幼児や妊婦を含む6人(胎児を含めて7人とする場合もあり)を食い殺し、3人に重症を負わせたという事件です。・・・ |
吉村昭 | |
渇いた夏 「私立探偵・神山健介シリーズ」の最初の作品で、2008年に単行本、2010年に文庫化されています。著者は元々はフリーカメラマンや冒険家として活躍後、ノンフィクション、フィクションとその活躍の場を拡げてきたという多彩な才能の持ち主です。 著者の作品では過去に「KAPPA」と「Tengu」の「有賀雄二郎シリーズ」を読みましたが、いずれも意外性と物事の洞察力に光ったところがあり、なかなか面白かった記憶があります。・・・ |
柴田哲孝 | |
折れた竜骨 2010年単行本、2013年に文庫化されたミステリー小説で、それまで著者が得意としてきた青春ミステリーから大きく舵をきって12世紀頃、中世ヨーロッパファンタジーロマンあふれる推理小説となっています。 12世紀というと日本では平安時代末期から鎌倉時代というあたりになります。・・・ |
米澤穂信 | |
小説 上杉鷹山 1983年に初出、その後文庫化された著者の代表作とも言える名著の誉れ高い作品です。 1961年にJ・F・ケネディが大統領になったとき、日本人記者がインタビューで「日本人で尊敬する人は?」と質問した時に「上杉鷹山」と答えたことは有名な話しで、その頃上杉鷹山を知る日本人はインタビューした記者を含め、ほとんどいませんでした。・・・ |
童門冬二 | |
海賊と呼ばれた男 出光興産創業者の出光佐三をモデルとした作品で、2013年に本屋大賞を受賞しています。 2016年には映画が公開される予定で、監督は山崎貴、主演は岡田准一の「永遠の0」コンビとなります。 私が生まれる前の話しがメインなので、よく知らなかったことも多いのですが、戦後の占領統治時代に、世界第2位の海軍力を持っていた英国と石油メジャーに対し、敗戦国(日本)の1民間人が堂々と喧嘩を売って、しかもそれに勝利をした日本人がいたことをこの小説で始めて知りました。・・・ |
百田尚樹 | |
八甲田山死の彷徨 1902年の明治時代に実際に起きた「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材にした小説で、1971年に単行本、1978年に文庫化されました。 私も映画館へ見に行った高倉健主演の1977年公開の映画「八甲田山」の原作として有名ですが、映像では描ききれない著者の想いが詰まった山岳小説として読みました。・・・ |
新田次郎 | |
シューマンの指 2010年に書き下ろし小説として発刊された小説ですが、この2010年は講談社創業100年とシューマン生誕200年の年ということもあるそうです。 著者の作品は5月にコミカルでライトノベル的な「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」を読んでいますが、本当に同じ作家さんの作品なの?と思うぐらいにその文体、構成、ジャンルが違っています。・・・ |
奥泉光 | |
天空の蜂 1995年に単行本、1998年に文庫化された書き下ろし長編小説です。2015年には堤幸彦監督、江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵などの出演で映画化されています。 今や押しも押されぬ不動の人気作家の著者ですが、この小説が出た当時はデビュー10年に満たない若手作家のひとりでした。 もっともこの頃から多くの意欲的な作品を次々出して、人気作家の階段を上り始めていましたが。・・・ |
東野圭吾 | |
ナミヤ雑貨店の奇蹟 2012年刊、2014年に文庫版が発刊された、第1章から第5章までつながる中編の連作小説で、2017年には日本と中国でそれぞれ映画化されています。 日本版映画の監督は廣木隆一、出演者は山田涼介、西田敏行、尾野真千子などで公開済み。 一方の中国版は今年2018年10月に日本で公開されます(香港・中国・日本合作)。中国版では日本版の西田敏行と同じ役にジェッキー・チェンが従来のイメージとは違う老け役で登場しているそうです。・・・ |
東野圭吾 | |
村上海賊の娘 2013年に単行本が、2016年に文庫が発刊された、長編時代小説です。 好きな作家さんで、他のすべての長編小説「小太郎の左腕」、「忍びの国」、「のぼうの城」を過去に読んでいます。 織田信長や豊臣秀吉、毛利元就など戦国時代の英雄を語るときに、必ずと言っていいほど脇役として出てくる瀬戸内海に出没していた一大勢力の村上海賊が主人公です。・・・ |
和田 竜 | |
開かせていただき光栄です 著者は1986年に「恋紅」で直木賞を受賞されている方で、私はこの著者の作品を読むのはこれが最初です。今回読んだ作品は2011年単行本、2013年に文庫化された長編ミステリー小説です。 タイトルがちょっと意味不明ですが、これは解剖医が遺体にメスを入れるときに、「お会いできて光栄です」という挨拶をもじって遺体に対して感謝の意味を込めてかける言葉です。・・・ |
皆川博子 | |
八月十五日に吹く風 先に文庫本を2017年に発刊後、数ヶ月語に単行本を発刊するという非常に珍しいパターンの戦記物小説です。小説とは言っても多くを実名で書かれているらしいノンフィクションに近い小説となっています。 著者は千里眼シリーズなどで有名で、数多くの映画やドラマの原作ともなっている小説があります。そうした現代を舞台とした作品の他に、近代歴史時代小説作品も少ないながらあり、この著作もそれに該当します。・・・ |
松岡圭祐 | |
ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石 2013年に単行本、2016年に文庫化された小説で、若い頃からの正岡子規と夏目漱石の友情と、正岡子規が後世に残した偉大な文化などの話しが中心となっています。 正岡子規(1867年~1902年)というと、真横から撮影されたはげ頭の頭部が異常にでかい?写真がすぐ思い浮かび、ちょっととっつきにくそうな感じがしますが、四国松山から上京し、東大へ通っていた頃は誰もから好かれる好男子だったのですね。・・・ |
伊集院静 | |
赤ひげ診療譚 小説の初出は1958年に雑誌にて連載され、1959年に単行本が発刊されました。今からなんと60年前のことです。 この時代小説は、連作の短編集で、「狂女の話」「駆込み訴え」「むじな長屋」「三度目の正直」「徒労に賭ける」「鶯ばか」「おくめ殺し」「氷の下の芽」の8編が収録されています。 「赤ひげ」はこの小説を原作として1965年に公開された黒澤明監督、三船敏郎主演の映画として有名です。・・・ |
山本周五郎 | |
夜と霧の隅で 1960年に出版された短編と中編の小説集で、1960年上期の芥川賞受賞作です。著者は医者として勤務をしながら、数多くの著作がありますが、中でも「どくとるマンボウ航海記」「楡家の人びと」などが有名です。また若い頃から始めた登山にも造詣が深く、本書にも登山をテーマにした短編が含まれています。 収録されている作品は、「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「霊媒のいる町」「谿間にて」「夜と霧の隅で」の6編で、その中の表題となっている中編の「夜と霧の隅で」は、ナチスドイツでヒトラーが抵抗勢力や病人等を社会から排除するよう命じた「夜と霧」と言われる命令をモチーフとした作品です。・・・ |
北杜夫 | |
約束の海 2013年に89歳で亡くなった著者の遺作となる小説で、週刊誌に連載中に亡くなったため、予定では3部作品のところ、この第1部で終わってしまった未完の作品です。2014年に単行本、2016年に文庫本が発刊されました。 著者の本は、過去に「沈まぬ太陽」(1~5巻)、「大地の子」(1~4巻)、「運命の人」(1~4巻)、「女系家族」(1~2巻)を読んでいて、面白いけど長い!というのが特徴ですが、今回は未完ということで1巻のみ、勝手なもので逆に物足りなく感じました。・・・ |
山崎豊子 | |
俘虜記 著者は外国語に堪能だったことから太平洋戦争中、フィリピンで暗号手として配属されていたものの、米軍の捕虜となり、その後終戦で帰国します。 そしてその実体験を元にして1948年にこの「俘虜記」の前半(捉まるまで)を発表します。最終的に第4章までが完成したのは1949年で、基本は著者自身の体験談と、その時に思った心理的な描写や考察が書かれていて、私を主人公としたほぼノンフィクションに近い小説というスタイルとなっています。・・・ |
大岡昇平 | |
スロウハイツの神様 著者の小説は以前短編集の「ツナグ」(2010年刊)を読んでいます。この2007年刊(文庫版は2010年刊)の長編小説が2作目です。 読んでみてすぐに思ったのは、これは映画化するのに向いた作品で、既にあるなら見てみたいと思いましたが、残念ながら制作はされていません。どうしてかな? ストーリーは、東京郊外にあるスローハイツという元旅館をリフォームした古びたシェアハウスに住むアーティスト達の人間模様というドラマです。テラスハウスじゃないですが、今なら若者に受けそうなテーマでしょ?・・・ |
辻村深月 | |
光圀伝 2012年に単行本、2015年に文庫化された、水戸黄門様として有名な徳川光圀(1628年~1700年)の伝記風歴史小説です。 著者の作品は、過去に「天地明察」(2009年)、「マルドゥック・スクランブル」(2003年)を読んでいます。本書のような歴史物から、SFまで幅が広い作家さんです。 なんでも地元水戸市では、観光振興や話題作りのため、この作品を原作とした大河ドラマの制作をNHKに提案しているのだとか。・・・ |
冲方 丁 | |
生ける屍の死 この著者の小説を読むのはこれが最初ですが、1989年に「鮎川哲也と十三の謎」で発表したこの作品が実質デビュー作です。文庫版は1996年に東京創元社、2018年に全面改稿版が光文社から出版されています。 舞台はアメリカのニューイングランドにある田舎町で、主人公はアメリカ人ですが、ルーツは日本人とアメリカ人のハーフという設定です。・・・ |
山口雅也 | |
涙香迷宮 2016年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。この著者の作品を読むのは今回が初めてです。 小説のタイトルにもなっている「涙香」とは、実際に明治から大正時代にかけて新聞業界等で活躍した「黒岩涙香(本名:黒岩周六)」のことで、この人物が書き残したとされる詩文をめぐるミステリーがテーマです。 正直、この「黒岩涙香」という人物のことは初めて知りました。・・・ |
竹本健治 | |
よろずのことに気をつけよ 2011年に江戸川乱歩賞を受賞したこの作品は2011年に単行本、2013年に文庫本として発刊されています。この方の著作を読むのはこれが最初です。 著者はフリーで服飾デザイナーをし、さらに作家活動もして「法医昆虫学捜査官シリーズ」というちょっと毛色の変わった作品などを書いています。 この小説はシリーズ作品ではありませんが、主人公は毛色の変わった文化人類学、その中でも特異な呪術を専門に研究しているという貧乏な独身の学者です。・・・ |
川瀬七緒 | |
邂逅の森 私と同年代の著者が2004年に直木賞を受賞した作品で、一般には馴染みがなく、近代化で消えつつあるマタギと呼ばれる山の狩猟民を描いた小説です。 マタギとヒグマが登場した小説としては、過去に吉村昭著で実話の巨大な羆が村を襲った1915年(大正4年)の三毛別羆事件を題材にした「羆嵐」を読みました。 こちら(邂逅の森)の小説は、時代は大正末期から昭和初期の頃の話しで、世界を見ると、第一次世界大戦や、日露戦争、満州事変ぐらいの時代背景です。・・・ |
熊谷達也 | |
さよならの手口 初めて読む作家さんの推理小説ですが、あとで調べてみてわかったのが、以前NHKで放送されたドラマ「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」の原作だということ。 ドラマはチラッと見ただけですが、小説を読んでイメージした主人公とかなり違っているな~という感じです。 というのもドラマの主人公役のシシド・カフカは、ハーフで帰国子女で歌手でドラマー、モデルもこなす身長175cmと大柄でスマート。・・・ |
若竹七海 | |
ブラックボックス 週刊朝日に連載され、2013年に単行本、2016年に文庫版が発刊された長編小説です。1997年に「女たちのジハード」で直木賞を受賞している著者の小説は、2003年に読んだ「弥勒」以降、計8冊になります(なぜか「長女たち」が2冊ありそれをカウントすると9冊)。いずれにしても外れのない作家さんで、安心して読むことができます。・・・ |
篠田節子 | |
高熱隧道 1967年に単行本として発刊されたノンフィクション小説です。完全なノンフィクションではないのは、登場する人物や企業が、それぞれモデルはあるものの、実際の名称からは変えていたりするからです。 戦前の1936年に着工した黒部川第三発電所(仙人谷ダム)を建設するため、その工事資材を運び込むためのトロッコを走らせるトンネル軌道工事が小説のメインとなっています。・・・ |
吉村昭 |
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終電車(原題:Le Dernier Metro) 1980年 仏(日本公開1982年)
監督:フランソワ・トリュフォー 出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー
内容はまったく知らないまま見ましたが、タイトル名だけは知っていたフランス映画です。
主演のカトリーヌ・ドヌーヴは上映当時34歳という脂がのっているころで、20代の頃の「シェルブールの雨傘」(1964)や「昼顔」(1967年)の時よりもより円熟味が出ています。
映画の舞台は、第二次大戦中、ドイツ軍に占領されているフランスパリにある劇場で、そこの女主人はナチスに気を遣いつつお芝居を上演を続けています。
その女主人の夫はユダヤ人と言うこともあり、表向きは外国へ亡命していることになっていますが、実は劇場の地下で密かに住んでいて、都度演出や劇場の経営について妻にアドバイスを送っています。
新しい俳優を使い、新しい劇の上演をおこなうことになりますが、ゲシュタポの急襲が起き、間一髪で隠れていた夫は、新しい俳優の行動で助かりますが、その時に夫から俳優に対して「妻はあなたに気がある」と伝えられ、一夜をともに過ごすことになります。
と、いわば夫公認の妻の不倫ですが、これを見た多くの奥方様は、こういう旦那がいればなんと素晴らしい!と思ったことでしょうね。
★☆☆
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ガス灯(原題:Gaslight) 1944年 米(日本公開1947年)
監督:ジョージ・キューカー 出演:シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン
この映画は1940年の英国制作と1944年の米国制作の2つがあります。今回見たのは、イングリッド・バーグマン主演の1944年米国版です。
時代は馬車が主役の1980年代後半のロンドン、主人公の女性は、何者かに殺害された叔母が住んでいたロンドンの邸宅を譲られ、旅先のイタリアで知り合った男性と結婚し、その邸宅に住むことになります。
しかし叔母の殺害については事件が解決されてなく、夜には邸宅の天井から足音が聞こえたり、ガス灯が突然に消えたり、ありもしないものが見えたり、夫からも忘れ物が多いということをたびたび注意されるようになり、精神的に不安定になり追いつめられていきます。このあたりはホラー映画?って感じもします。
以前から勤めているメイドが主人公の身を案じ、刑事に相談したことから、刑事が足音の謎やガス灯が夜に不安定に点いたり消えたりする理由を調べていくことになります。
元は舞台上演がされていたそうで、それに向いていて場面展開が少なく、ほぼ邸宅の中での出来事がほとんどです。
そうした変化に乏しい中で、29歳の可愛いイングリッド・バーグマンが、追いつめられ苦悩に身もだえる姿に、多くの男性諸氏はドキドキしたのでしょう。今で言うところの大人のアイドル映画ってところです。
★★☆
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白い恐怖(原題:Spellbound) 1945年 米(日本公開1951年)
監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック
ヒッチコック、イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペックと名監督に名優が揃えば面白くないわけがないというヒット前提のスリラー映画です。
まずはヒッチコックのカメオ出演、毎度楽しみですが、今回も一発では発見できず。あとで登場場面を調べ見直してやっとわかったぐらいで、かなり注意深くみていないとわかりません。
邦題の「白い・・」は精神科病院が舞台だから「白い巨塔」のようなイメージで?と勝手に想像していたら、まったく違いました。
なにか事件に巻き込まれ記憶喪失にある男が、病院長としてやってきますが、なぜか白に黒っぽいストライプを見ると頭痛の発作に見舞われます。その発作の原因となる白い場所のことがタイトルになっているのですね。
イングリッド・バーグマン演じる有能な女医が、その記憶喪失の男とともに、原因を調べに行くわけですが、その男はどうも殺人事件の容疑者で手配されているということがわかってきます。
女医の老齢の恩師を訪ね、記憶喪失の治療に協力してもらいながら、好きになった男のために奔走するバーグマンという上記の「ガス灯」でも書きましたが、大人のアイドル感全開映画です。
古い映画ですから、スキーをしているシーン(動かない人物とバック映像の合成)などは今からすればお笑い場面以外のなにものでもありませんが、ストーリーはたいへんよくできていて十分面白く見ることができました。
★★★
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トゥルー・クライム(原題:True Crime) 1999年 米
監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド、イザイア・ワシントン、ジェームズ・ウッズ
原作は米国の作家アンドリュー・クラヴァンの小説「真夜中の死線(原題:True Crime)」です。
女性問題で閑職に追いやられていた敏腕新聞記者が、コンビニ強盗で殺人を犯した黒人死刑囚の最後の言葉を聞くために刑務所へ取材に行きます。
そこでの会話から、「これはえん罪かも」と、死刑執行まで12時間しかない中で、記者が調査を開始します。
とにかく展開が急で、のめり込んでいき、見ていてもそわそわと落ち着きません。結果はアメリカ映画ですので、ハッピーエンドですが、刑事でもない一記者が12時間で調べ上げられることが、なぜ何ヶ月もかかる取り調べと裁判で判明しないのか?は不明なところです。
ひとつには犯人は貧しい黒人で、被害者は白人という構図だと言うことですが、それにしてもえらくずさんな感じがしないでもありません。
しかしたった12時間に起きたことを映画で描くというのもチャレンジングな感じでそのスピード感は心地よかったです。
★★☆
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湯を沸かすほどの熱い愛 2016年 「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
監督:中野量太 出演者:宮沢りえ、杉咲花、松坂桃李、オダギリジョー
日本アカデミー賞では、優秀作品賞や最優秀主演女優賞など6部門を受賞した映画ですけど、まったく知りませんでした。当然、内容も予備知識もなく見ました。
主人公役は宮沢りえですが、その旦那(お似合いのオダギリジョー)は愛人を作って家を出て行ってしまい、同居している娘(下着姿になる杉咲花)も学校でいじめに遭って不登校になってしまう中、家業の銭湯を閉め、アルバイトで家計をしのいでいます。
ところが、体調が思わしくなく、病院で検査をしたところ、末期癌とわかり、治療もできず、余命は2~3ヶ月と告知されてしまいます。
その余命のある間に、しておかなければならないことを、順々に片づけていくというストーリーです。
こうした「最高の人生の見つけ方」「マイ・ライフ」「1リットルの涙」「君の膵臓を食べたい」「世界の中心で、愛をさけぶ」「こんな夜更けにバナナかよ」など、主人公が白血病だ、末期癌だ、難病だという「死期近い主人公」映画や小説(実話含め)は数多ありますが、エンタメに数多く出てくるというのは、やはり観客や読者に感動を与え泣かせるもっとも近道なのでしょうね(悪い意味ではなく)。
ともあれ、詳しい内容は書きませんが、本来なら余命を告知されると、普通は大きな衝撃を受け、ガックリ寝込みそうな中、それまでとはうってかわり、動ける限り、積極的、行動的になり、様々な難題に向かって取り組む姿が見ていて泣けます。
いや、まれに見る素晴らしい映画でした。ただ最後のシーンは、ちょっとコンプライアンス的にいただけない。
★★★
【関連リンク】
2020年11~12月 48時間PART2/帰って来たふたり(1990年)、レディ・プレイヤー1(2018年)、こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年)、天国は待ってくれる(1943年)
2020年8~10月 免許がない(1994年)、日々是好日(2018年)、助太刀屋助六(2002年)、ニューヨーク東8番街の奇跡(1987年)、ブリジット・ジョーンズの日記(2001年)
2020年7月 嘘八百 2018年、東京マグニチュード8.0(2009年)、深夜の告白(1944年)、知りすぎていた男(1956年)、ウエスタン(1968年)
2020年5~6月 海外特派員(1940年)、黄金狂時代(1925年)、殺人狂時代(1947年)、真珠の耳飾りの少女 (2003年)、お早よう(1959年)
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草花たちの静かな誓い (集英社文庫) 宮本輝
著者がお得意とする人生を前向きに切り開いていく主人公を描いた、各種のうんちくが満載の長編小説で、地方新聞の連載小説として掲載され、その後2016年に単行本、2020年に文庫化されました。
主人公が仲良くしてきた父親の妹の叔母は、両親の反対をおして職場で知り合ったアメリカ人と結婚していましたが、大きな財産を残したまま、日本への旅行中に突然他界します。
先に亡くなっていたアメリカ人の夫の墓に納骨するためにロスへ渡りますが、そこの法律事務所で聞かされたのは、巨額な債券や高級邸宅など総額40億円以上の財産を、他に身寄りがないので甥の主人公に譲るというということ。
但し、20年前に行方不明になったひとり娘がもし生きて見つかれば、その財産の7割を娘に譲って欲しいという口頭での付け足しがあります。
20年間、金に糸目を付けず両親が必死に探して見つからなかった娘を、引き続き探して欲しいということなのか?というやっかいな遺言を受け取り悩みます。
海外に住む親戚が亡くなって巨額の遺産が転がり込むという夢物語は、誰もが一度は夢想しそうですが、現実的にそれが実現することは100%ないことは誰も知っています。
もしそうなったとき、また年間何万人もの子供が行方不明になるアメリカで、20年以上前の事件を掘り返すという難題と向き合い、主人公は自分の新しい人生をどう作っていくのか?という「もし」がいっぱいのストーリーです。
自分ならどうするだろ?とか考えながら、主人公になった気分で読めてアッという間にクライマックスへ向かいました。その後の主人公の姿を描く続編をお願いしたい気分でいっぱいです。
★★☆
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ワン・シング 一点集中がもたらす驚きの効果 ゲアリー・ケラー
2014年に発刊されたビジネス書で、著者はテキサスを舞台に一代で全米最大の不動産企業群を作りあげたという起業家で、本書はアメリカで累計130万部を売り上げたそうです。
タイトルにすべて凝縮されていますが、あれもこれもやろうではなく、常にもっとも重要で、それをすることで他のことがより便利になることだけをするべきというもの。
ドミノ倒しの最初の一押しに例えていますが、そうした最重要なことの探し方、選び方、そのための時間の取り方などが優しく書かれています。
私の若い頃のビジネスマンは、同時にいくつもの作業や思考をができる人が優秀で、仕事が早いと賞賛されてきました。でもそれは今の世の中というかビジネス界においては時代遅れというか、劣化ということなのでしょう、早く引退して良かったと思える内容です。
ただ、自慢でも何でもないですが、私自身、仕事をする上で、もっとも重要視していたことがあり、それは「集中力」でした。
集中することで仕事が早く進められることを経験上知っていて、そしてそれはひとつのことに集中することがもっとも効率的だということを知っていました。
でも若いときにこれを読んで、「なるほど!」と、周囲の雑音を気にせず、指示や命令に逆らってまで、自分が選んだ一番大事なことだけを優先してできただろうかな?と考えてしまいます。
それじゃーダメとか言われそうですが、問題なく「THE ONE THING」が実践できそうなのは、ある程度、自分で仕事が選べるミドルクラスになってからかも知れません。
★★☆
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そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ・クリスティー
1939年に発刊された伝説的な長編ミステリー小説で、最初の日本語版書籍は1955年に発刊されています。「オリエント急行殺人事件」などとともに、クリスティの代表作とも言える作品です。
原題(英国)は出版当初は「Ten Little Niggers」、当時はそうではなかった差別語?のためか、途中から改題されて「And Then There Were None」となりました。
外部から閉ざされた英国の島に招待された10人の客が、部屋に飾ってある10人のインディアンの子供達と、ひとりずつ消えていくという童謡になぞらえ、次々と殺されていくと言う、その後の多くのミステリー小説に大きな影響を与えた作品です。
事件後の警察の調査では、生存者がいず、誰が犯人かまったくつかめない状態でしたが、犯人が犯行に至る理由やそれぞれの殺害方法について記した手紙を、ビンに詰めて海に流しておいたものが後日見つかり事件の詳細がわかるという流れです。
ミステリーファンには今さらと言われそうですが、子供の頃に、テレビでやっていた映画をみた記憶はあるものの、小説を読むのはこれが初めてです。
謎解きの力を求められ、中盤辺りで「犯人はきっとこいつだ!その理由は・・・」と自信をもって思ったものの、違っていてガックリです。
でも一部の推理(考え方)は当たっていて、そういう楽しみ方もできる、優れたミステリーです。
時代は第二次大戦前で、当然ながら携帯電話や警察の科学捜査など様々な要素が今の時代とは違っています。
そうしたことも含めて、今読んでも決して古さを感じさせないのは名作の所以でもあるのでしょう。いや面白かったです。
★★★
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悪寒 (集英社文庫) 伊岡瞬
2017年に単行本、2019年に文庫化された長編小説です。ミステリーのジャンルに入るのでしょうけど、ビジネス小説の要素もあり、また夫婦や親子など家族をも描いてもいます。
著者の作品は2018年に「代償」を読んでいます。めちゃ暗い惨めな思いをした小説でした。
2018年11月後半の読書と感想、書評(代償)
主人公は、丸の内に本社のある大手製薬会社に勤務していましたが、上司の指示で公務員へ便宜を図ったことで、その責任を問われ、単身赴任で地方の孫会社へ飛ばされてしまい、ふつふつとした鬱憤がたまる日々を送っています。
そこへある日、妻から要領を得ないメールが送られてきて、連絡を取ろうとしますが取れません。そこで深夜バスで家族が住む東京へ戻ってきますが、その途中で、警察から妻が殺人容疑で緊急逮捕されたと連絡が入ります。
しかも殺されたのが、主人公の元上司でワンマン経営者の跡取り息子で、殺害場所は自宅、ウイスキーボトルで2度殴っての殺害ということがわかります。
なぜ?どうして?ということから、主人公は警察や妻の妹から話しを聞き、また独力でも調べていくという流れです。
その主人公、典型的な会社人間で、自分の意見というものはなく、その時々の権力者次第でコロコロと態度や考えが変わってしまう小心者ということで、まったくイライラさせられます。
でももし自分も長く会社人間で、要領は決して良くなかったから、同じ人種なんだろうなと同類哀れみも感じるところです。
最後はちょっと無理目な結果で、なんだか残念でスッキリしない思いですが、意外性を出したかったのでしょう。
★★☆
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逢魔が時に会いましょう (集英社文庫) 萩原浩
2018年に発刊された文庫で、「座敷わらしの右手」「河童沼の水底から」「天狗の来た道」の連作短編小説です。
あとがきを読むと、前の二つの小説は21年前の2000年に小説すばるに掲載されたものだそうで、最後の1作は2018年に書き下ろされました。
座敷わらしと言えば水谷豊主演で映画にもなった著者の小説「愛しの座敷わらし」をすぐに思い浮かべました。
座敷わらしの舞台は遠野ですが、私も数年前に「遠野ふるさと村」などを観光で見てきました。そこには曲屋など古民家が保存されていますが、私が子供の頃、夏休みの度に行った地方にある母親の実家が似たような古民家で、懐かしいような気がしました。
また、遠野と言えば柳田國男著の「遠野物語」です。8年前に読みました。もちろん座敷わらしの話しも出てきます。
2013年8月後半の読書と感想、書評(遠野物語)
遠野にも河童淵がありましたが、この小説で出てくる二つ目の短編で河童の舞台は、富士山の裾野辺りが舞台です。
そして最後の天狗伝説のある場所は、広島の北方、島根、鳥取との県境あたりが舞台です。
主人公は、貧乏な文学部の女子大生4年生で、就活はあきらめ、大学院へ進もうとしているところ、民俗学者を紹介され、そこでフィールドワークを手伝うことになります。
最近読んだ小説二つにもありましたが、女子大生(短大生)と(考古)学者というカップリングはよくあるパターンみたいですね。華やかにもなり、小説にしやすいのでしょうね。
妖怪ものですがまったくホラーという感じではなく、ライトにサクッと読めますので、気分転換などに読むといいかもです。
★★☆
【関連リンク】
2月前半の読書 見えない鎖、Iターン、逮捕されるまで 空白の2年7ヶ月の記録、健康という病
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