リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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教団X (集英社文庫)
2005年に「土の中の子供
この著者の作品は過去に読んだと思っていましたが、勘違いで読むのは初めてです。書店で名前をよく目にしていたためか読んだとばかり思っていました。
単行本で570ページ、文庫で600ページを超える長編ですが、話の流れやテンポはよく、苦になりません。訳あって単行本で読んだので、その本の重さを支え続けるのには辟易しましたが、、、
最終的にはオーム真理教のように若者を取り込みながら拡大していくカルト集団の暴走が描かれていますが、そうした宗教はいつの時代でもどこの国でも起きうることで、ありえねぇと一笑に付してしまうことは出来ませんでした。
また同時に、まともな集会や団体でも、そうしたカルトの疑いをかけられてしまうと、国家権力やマスメディアに一方的に叩かれ存続すらできなくなってしまうという見本でもあるでしょう。難しいですね。
オーム事件では多くの人が犠牲となり現在でも後遺症に苦しむ人がいます。この教団Xのように、現役の自衛隊員を洗脳して取り込み、他国へ攻撃を仕掛けるようなことが起きると、国内問題で済まなくなってきます。逆のケース(他国の軍人が暴走して日本を攻撃する)も考えられます。
わかりやすい国際テロリストはもちろん、そうした洗脳などによる想定外の出来事が起きる可能性があることを国際社会の中で共有し、互いに冷静な判断と対応をおこなう取り決めが必要なんだろうなと思った次第です。
宗教関係の小説には、常になにか重苦しい雰囲気がつきまといますが、そうした悪意的に決めつけもどうかとは思いますが、今はそれが社会の通念になっているのでしょう。
気持ち悪さと、そんな単純なことではないだろう?という思いなどが混ざり合って、考えさせられる小説でした。
★★☆
◇著者別読書感想(中村文則)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
新個人主義のすすめ (集英社新書 (0427))
著者の名前をもじって「りんぼう先生」というのはずっと以前から知っていましたが、著作を読むのはこれが初めてです。ちょうど激しい競争を勝ち抜いてこられた団塊世代の方ですね。
この新書は2008年に発刊され、すでに11年が経過していますが、数多くの著作の中でもよく売れているようです。
個人主義とは、全体主義とか集団主義との対語で、個人の権利や自由を尊重する考え方で、古くから集団を作ってその中だけで生きてきた農耕民族の日本人がもっとも苦手とする考え方です。
著者はとにかく英国流の個人主義が大好きで、そればかりをまるで恋は盲目的に語りかけますが、そこまで力が入ると逆にだんだんと冷めてきてしまうのが残念です。
そして、こんな日本人の集団主義的な組織では、日本が戦争に勝てるわけがないと断言されていますが、日本が対外戦争で負けたのはあの1回とせいぜい援軍として送った白村江の戦いぐらいで、元寇から日清・日露・第一次世界大戦などその他多くの戦争ではすべて日本がすべて勝っているという著者にとって不都合な事実を無視するのもどうでしょうか。
新・個人主義の理想もいいのですが、せっかく日本独自に育んできた集団主義を下敷きにし、新・集団主義を形成していく方が日本人に合った良いものが、長い時間をかけずとも作れそうな気がしますがどうなのでしょうね。
★★☆
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暗夜を渉る―ジェッシイ・ストーン・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
すでにスペンサーシリーズで人気を博していた著者が、新たな主人公を用い1997年に発刊(翻訳版は1998年)された新シリーズ「ジェッシイ・ストーン・シリーズ」の第1作目の作品で、翻訳文庫版は2001年に発刊されています。
このシリーズは、別の作家が後を引き継いで続編を出していると言うことですが、翻訳はされていないのか見かけません。
そしてこのシリーズは、2010年に著者が亡くなるまでに、下記の合計9作品が作られています。
作品名 | 原題 | 発刊年 |
暗夜を渉る | Night Passage | 1997 |
忍び寄る牙 |
Trouble in Paradise | 1998 |
湖水に消える |
Death in Paradise | 2001 |
影に潜む |
Stone Cold | 2003 |
訣別の海 |
Sea Change | 2006 |
秘められた貌 |
High Profile | 2007 |
容赦なき牙 |
Stranger in Paradise | 2008 |
夜も昼も |
Night and Day | 2009 |
暁に立つ |
Split Image | 2010 |
ストーリーは、主人公がロサンゼルス警察の殺人課にいた当時、女優志望の女性と出会い結婚するも、その後妻の浮気が発覚したことで悩み、アルコール依存となり離婚します。
そして勤務中に酒を飲むようになりロス市警をクビになりますが、たまたま遠く離れた東海岸の小さな町で保安官を募集していてそこで採用されます。
1からやり直そうとアメリカ大陸を縦断するルート66を使って西海岸から東海岸までクルマで走ります。その大陸を横断するロードムービー的な情感が描かれていて素晴らしいです。
そして到着した町の保安官として就任し、実質的に町を牛耳る大物(=悪)と対峙するという、お決まり?の警察小説になっていきます。
このシリーズの舞台は、スペンサーシリーズがメインとするボストンにほど近く、この第1作目にはスペンサーシリーズに時々登場するマフィアのボス、ジノやその用心棒のガンマン、ヴィニー・モリス、州警察のヒーリー警部なども登場してきます。
逆にスペンサーシリーズの「真相」にもジェッシイ・ストーンが登場してきたり、行き来があって、馴染みの読者は思わずニヤリとなります。
◆ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ
◆スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著 一覧
新しい主人公登場という回でもあって、ボリュームも内容も濃く、なかなか面白く出来上がっていました。
ただスペンサーのようにハードボイルドか?って思って読むと、愛する女性に出て行かれてグジグジと悩み割り切れない生煮えの半熟卵って感じで、著者の作品としてはまたひと味違った面を味わえてそれはそれで楽しいかも知れません。
★★★
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
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何者 (新潮文庫)
2012年単行本、2015年文庫本が発刊された著者6作目の小説で、第148回直木三十五賞の受賞作です。男性では最年少(24歳)での受賞となりました。
また2016年には三浦大輔監督、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉などの出演で映画化
内容は、2005年頃まで続いた就職氷河期が終わり、やや新卒就職戦線も楽になってきた2010年頃の話しですが、大手有名企業に就職するのは相変わらずハードルが高い頃でした。
ネット情報やSNSを駆使し、様々な新たな就職活動がおこなわれだした頃でもあり、そうした一喜一憂の就職活動が4名の男女を通して描かれています。
主人公はアルバイトをしながら学生の劇団に所属し、台本を書いたり公演をおこなったりしています。2DKのアパートでシェアルームしている同級生の友人はバンドのボーカルとして活動しています。
そして同じアパート内に、同じ大学で就職活動をしている女子学生がいて、共通の友人同士の関係で4人がお互いに情報交換しながら就活の共同戦線を張ることにします。
しかし、うまく行く人もいれば、焦りばかり募り、落ちてばかりする人もいて、だんだんとその仲間意識にヒビが入っていきますが、その辺りの感情の動きがうまく捉えられていて、面白い作品となっています。
私が就職したのはもう40年も前のことで、時代もその方法も全然違い、へぇー!と驚きの連続でした。
もっとも私は当時就職活動らしいことはほとんどせず、「どこでもいいや、雇ってくれるなら」というやる気のなさと意識低い系でしたので、有名どころか中堅企業にもひっかからず、社員数わずか20数名という零細企業に入ることになります。
でもその会社が40過ぎで退職する頃には、グループ企業を合わせると社員数は数千名という大企業になっていたわけで、人生なんてホントわかりません。
私のことはともかく、これから就職活動する人が、この実体験に近そうな小説を読むと、なんだか就活って面倒くさそうだとか、気持ちが落ち込みそうだと思われて心配です。もちろん就活って決して楽しいものではないですけどね。
★★☆
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リアルワールド (集英社文庫)
2003年に単行本、2006年に文庫化された小説です。2003年と言えば、著者にとっては1999年に「柔らかな頬
どういう小説かまったく知らずに読み始めましたが、さすがに売れっ子作家さんの作品だけあって、外れはないです。
主人公が現代の女子高校生という、私にとっては一番感情移入できない苦手な作品でしたが、漫画を読む感じで、次々とテンポよく事件が展開していき、ボリュームも少ないのでサクッと読めて退屈はしません。
若い人達の感情がこの小説に登場するような人ばかりだと、もっと複雑で混乱した社会になるのでしょうけど、これはあくまでも知的な作家さんがエンタメとして書いたもので、そう割り切って読むことを求められます。
それでも登場する女子高生が「死は誰もがいずれ経験するんだから、むしろわかりやすい結末を選んだっていう意味で敗北に近い。相手を殺すのは、自分の憤怒や屈辱や欲望に落とし前を付けただけで、それで問題が終了した訳じゃないのだから、取り返しがつかないことじゃない」とか「過酷な電車通学を選んだ両親への天誅。それが証拠に、謂われのない悪意を受けることがしばしばあったし、私は必要以上に邪険に扱われた。これが現実なのだ」と、心の中で考えるとか、あまりにも突飛推しもなく飛躍しすぎです。
著者の作品は調べると過去に「顔に降りかかる雨
もっともリアルなことから遠そうで、破天荒なフィクションの世界を書いてくれる作家さんと言うことで、全般的に私の評価は高いです。
★★☆
◇著者別読書感想(桐野夏生)
【関連リンク】
3月前半の読書 悟浄出立、言ってはいけない 残酷すぎる真実、死者の奢り・飼育、獏の檻、君の膵臓をたべたい
2月後半の読書 手のひらの音符、あの女、いつまでも若いと思うなよ、残穢、悲しみのイレーヌ
2月前半の読書 まほろ駅前番外地、謎解き 関ヶ原合戦、ダブル・フォールト、嗤う名医、はなとゆめ
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悟浄出立 (新潮文庫)
2014年単行本、2016年に文庫化された長編小説で、西遊記に関連し、脇役の沙悟浄を語り手として、同じく脇役の八戒について考察する今で言うところのスピンアウト的な話しの「悟浄出立」を含む、「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤憤」「父司馬遷」の中国の古典を題材とした5編の短編小説です。
「悟浄出立」は元々は中島敦が西遊記に関連して書いた「光と風と夢・わが西遊記
「趙雲西航」は三国志でお馴染みの若武者趙雲が主人公で、諸葛亮孔明や張飛などが出てきて三国志ファンなら十分に楽しめます。三国志では脇役に追いやられてしまった趙雲ですが、上記の沙悟浄と同様、その心理描写が上手く作られています。
「虞姫寂静」は「項羽と劉邦の戦い」で、最後は四面楚歌で滅ぼされてしまう秦末期時代の楚の武将項羽の愛人虞美人が主役です。日本でも虞美人草で有名ですね。
「法家孤憤」は秦の始皇帝暗殺未遂事件を起こした荊軻と名前が同じ発音の官吏が主人公、「父司馬遷」は壮大な史記を書いた司馬遷の娘を主人公としています。
あの有名な司馬遷が、味方の名将をかばったために、汚名を着せられて男性器を切除する刑に処せられていたとは知りませんでした。
そうした、歴史書や歴史物語では不遇の扱いの脇役達を生き生きと描いたのがこの作品で、歴史についてあまり知らなくても十分に楽しめますが、ある程度は予備知識として持っているともっと楽しめそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(万城目学)
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言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)
宝島30の元編集長だった著者は、名前を見ると女性ジャーナリストだと思っていましたが男性です。小説もいくつか書いておられますが、著書を読むのはこれが初めてです。
タイトルだけ見ると「大げさな~」と思っていましたが、中身はもっと過激、こんなこと書いて良いの?というようなことがズバズバ出てきます。炎上商法も真っ青な感じで、恥ずかしながら衝撃を受けてしまいました。
2016年に発刊された新書ですが、世の中のこと、仕組み、裏の裏をもっと知りたい!って言う人にお勧めです。よく知られていることや都市伝説的な話しもありますが、一応出てきたネタはすべて出典が書かれています。
その書かれていることの論拠として書いてある各種の論文や研究データなどの出典ですが、時代によってそうしたものも変化していくことはよくあることなので、どこまで信じるか、確率をどのように判断するかなど、当然のことですが読後は個人の判断に委ねられています。
それにしても、世の中の人権団体など各種団体から激しい抗議活動を展開されてもおかしくない内容です。
しかし実際には人は表面的に言わないだけで、なんとなくそう思っている、感じていることも多くあるのではないでしょうか。
いくつかピックアップしておくと、
・親が犯罪者の場合、子も犯罪者となる確率は高い
・黒人やヒスパニック系の知能は白人やアジア系人種に劣る
・レイプは男性からすると生存本能に合理的理由がある
・美人とブスでは3000万円以上の収入格差がある
・細面で長い顔よりも丸顔または四角い顔のほうが収入が高い
・父親の10%が知らずに他人の子を扶養している
・子孫を残すのに合理的な方法は一夫一妻ではなく一夫多妻
・女子校より共学校のほうが女学生の望まない妊娠が多い
英国での調査ですが「父親の10%が実は知らずに他人の子を扶養している」なんてのは、喜多嶋舞とできちゃった婚をしたのち離婚し、子供の養育を引き受けたところ、実は実子ではなかったことが判明した大沢樹生氏の悲しい顔が思い浮かびます。
細面よりも丸顔または角張った四角い顔の方が野心が大きく収入も多いというのは、カルロス・ゴーン氏の顔写真が出てくるたびに納得してしまいます。
アメリカを初めとする白人が支配している多民族国家の中で、黒人とヒスパニック系は一緒ぐたにして語られることが多いのに対し、アジア系はまた違った語られ方をするのもなんとなく違和感が解けた感じです。
芸能ネタはともかく、こうした「言ってはいけない」不都合な事実や解釈、統計データは、エビデンスの信用がどこまであるかどうかでなく、誰しも身近に感じてはいるのでしょう。
★★☆
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死者の奢り・飼育 (新潮文庫)
1994年にノーベル文学賞を受賞された著者の作品を読むのはこれが初めてです。なぜだか不明ですが、同じノーベル文学賞を受賞した川端康成氏や日系人のカズオ・イシグロ氏、ずっと毎年候補に挙がりながら受賞を果たせずにいる村上春樹氏と比べると、著者の作品があまりメディアには取り上げられず、話題にされないのは、何者かに抑圧されているせいか?って気もします。
それが著者が国家主義や天皇制に対して一貫して反対する立場をとっているということや、文化勲章を辞退したりと思想的に長いものには巻かれろが基本のメディアにはちょっと扱いづらく、敬遠されているせいなのかも知れません。もったいない限りです。
それはともかく、この作品をきっかけとしてこの著者の作品に興味が起きたので、今後ちょっと意識して過去の作品を探して読んでみようかなと思います。
この作品は60年前の1958年刊のそれまでに発表した短編を集めた文庫本で、「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」の6編が収められています。現在84歳になる著者がまだ23歳の時の作品です。
そしてこの中の短編小説「飼育」で、石原慎太郎と同じく当時最年少の23歳で、芥川賞を受賞しています。
医学部の死体処理室でアルバイトをする学生と、なにも言わぬ大きな容器の中に浮き沈みする死体達との会話が不気味な「死者の奢り」、脊椎カリエスで手足が自由に動かせない少年達の療養と、そこから回復して出て行く少年を描く「他人の足」、戦時中に地方の田舎の寒村に墜落した飛行機から脱出し生き残ったアメリカの黒人兵と村の子供達との交流と悲惨な結末をむかえる「飼育」など。
その中では、まず「飼育」は賞を取ったというだけでなくとても印象に残る作品ですが、その他の「死者の奢り」や「不意の唖」もなかなか20代でここまで書けるとは思えない、文学的才能を感じる良い作品だと思います。
★★☆
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貘の檻(ばくのおり) (新潮文庫)
2014年に単行本、2016年に文庫化された長編ミステリー小説です。文庫で570ページ、謎多きミステリーだけに、些細なことも見逃さないよう熟読したので、とても長く感じました。
しかしそのおかげもあり、小説の半ば頃に「きっとこいつが諸悪の根源だろう?」と気がつき、結果的にそれが正しいことがわかりました。
だいたい最後になって悪意の本性を現すミステリー小説の悪人は、その最後の時まで主人公にとっては優しく頼りがいや思いやりがあり、しかも社会的に信用がおける立派な人というのが通例です。
もっとも最初から怪しそうな人や悪そうな人が「やっぱり犯人でした」では面白みに欠け、善良な人が「実は」と転換するのが小説やドラマの定番とならざるを得ません。
さて、主人公は長野の山奥の村で子供時代を過ごし、山で猟師をしていた父親が殺人事件の容疑者とされたまま死亡してしまい、逃げるように母親の実家へと移り住みます。
さらに悪夢を断ち切るように上京し、大学へ入り、就職、結婚をし、子供もできたところで、毎日不安な夢に悩まされ続け、それが家庭崩壊、離婚へとつながっていきます。
別れた妻に引き取られていた小学生の息子と月1度の面会した後、悪夢から逃げるために電車に飛び込み死のうとホームに立った時、父親が容疑者とされた殺人事件に関係し、32年間生死が不明だった女性が反対側のホームで電車に轢かれて亡くなります。
ここから最後まで、話しは子供時代を過ごし、父親が亡くなった山奥の集落が舞台となります。
当時の父親に起きたことや、集落の歴史などがわかってきて、主人公が子供の頃に目撃し、それを封印してきた事柄が目覚めていきます。
最初はホラー小説なのかな?と思ってましたが、ジャンルとしては完全なミステリ-で、名探偵こそ出てきませんが、やたらとその村に歴史に詳しいカメラマンと、封印されてきた過去の出来事などを解いていきます。
様々な設定には、やや無理さや強引なところも感じますが、おしなべて小説らしいと言うか、映像化してもそれなりの面白いミステリーができそうな作品と言っておきましょう。
★★☆
◇著者別読書感想(道尾秀介)
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君の膵臓をたべたい (双葉文庫)
2015年に単行本、2017年に文庫化された青春お涙ちょうだいロマンス小説です。
2017年に映画化
また日本アカデミー賞の作品賞や新人俳優賞なども受賞していました。私もこの映画は、小説を読む前にテレビ放映の録画版ですが見ています。
◇1282 2018年9~10月に見た映画「君の膵臓をたべたい(2017年)」
著者はずっと女性だとばかり思っていましたが、男性なんですね。知りませんでした。この作品が実質的なデビュー作ということです。
主人公は読書だけが趣味という友人が誰もいない暗い内向的な男子高校生で、あるとき病院の待合室で共病文庫と書かれた本を拾い、中を見ると、膵臓(すいぞう)の病気で余命が少ないので日記代わりにこれを書いていることがわかります。
そしてその文庫を書いていたのが、なんと同じ学校のクラスメートの(可愛い?)女子高生という、非現実的であり得そうもない出会いから二人の恋愛感情が持ち上がってきます。
タイトルは、昔の非科学的な病気治療法に「悪いところの部位を食べると治る」ということから、ホルモン料理で膵臓を食べて自分の膵臓を治したいという冗談から来ているもので、決して人食小説ではありません。
映画の時にも書きましたが、基本的に余命少ない女子高生とその同級生の淡い恋というパターンは、片山恭一著の大ヒット小説とそれを原作とした映画「世界の中心で、愛をさけぶ
そうした青春悲恋ものには一定の少なくないファンがいるでしょうから、今後も世代が一巡する10数年周期で同様のパターンがヒット作として出てくるのでしょう。
小説よりも先に見た映画では、大人となって教師になった主人公が、12年前の懐かしい過去を振り返るようなスタイルでしたが、原作では主人公が高校生のまま終わり、その後のエピローグは出てきません。
★★☆
【関連リンク】
2月後半の読書 手のひらの音符、あの女、いつまでも若いと思うなよ、残穢、悲しみのイレーヌ
2月前半の読書 まほろ駅前番外地、謎解き 関ヶ原合戦、ダブル・フォールト、嗤う名医、はなとゆめ
1月後半の読書 本能寺の変 四二七年目の真実、欲しい、アキラとあきら、ひとり暮らし
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手のひらの音符 (新潮文庫)
2009年に「いつまでも白い羽根
著者の経歴を見るとたいへんユニークで、大学卒業後に新聞社へ入って記者など3年半、その後、タンザニアの大学へ入ったかと思うと、卒業せず帰国して大阪文学学校へ入学。そこで小説を書くが芽が出ず、結婚、出産。
その後看護専門学校へ入学し、看護師資格を取得し、病院に勤務。同時に再び大阪文学学校で学び、書いた小説が認められてデビューと、3人分ぐらいの人生を1人で経験している感じの人です。
この小説の45歳独身女性の主人公は、貧しい家庭環境で育ちながら、同じ団地に住む父親を早くに亡くし、貧しい上に複雑な家庭の兄弟達との深い絆で結ばれた青春時代を過ごします。
その後主人公は、子供の頃から憧れていた服飾デザインの仕事をしていますが、勤務している会社から突然そのファッション部門からの撤退を告げられます。
また同時に、高校生の時にファッションデザインをキチンと勉強するのが将来必ず仕事に生かせるからと進学を強く勧めてくれた元美術講師の恩師が、余命がわずかと同級生から知らされ、生まれ育った京都へと向かいます。
さて、主人公が勤務する会社で居場所はどうなるのか?難病の恩師の病状はどうか?消息不明になっている同じ団地の幼なじみの行方は?など、いくつもの試練と問題を抱えながら、その運命に翻弄されつつも強く生きていく姿に勇気を与えられます。
最近は、イヤミスが多い中、この小説でも半ばぐらいまでは、リストラ、父親の出奔、幼なじみの事故死、学校でのいじめなど暗い話しが多く、読んでいてもずっしりと重く暗い感じを受けますが、終盤になってようやく明るい火が灯ってきて読後感としては悪くないです。
ヒロインが独身の45歳の女性と言うことが珍しいですが、なかなかどうして、会社の中でも重要な仕事を任されている大人で、しかも多少は色気もあってと、このストーリーの主人公として良い年代の設定だと思いました。
タイトルは、最後にちょこっとだけ出てきますが、中学生時代に兄を事故で失った同級生の幼なじみを励ますため、自分で作ったシューズケースに付けた音符の飾りと、その同級生の弟がいつも口ずさんでいたドレミの歌の替え歌にちなんでいるものと思われます。
★★★
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あの女 (幻冬舎文庫)
2012年に「四〇一二号室」として単行本が刊行されましたが、その後2015年に改題されて文庫化されたミステリー小説です。
著者の代表作「殺人鬼フジコの衝動
◇2015年2月前半の読書「殺人鬼フジコの衝動」
この長編小説も、そのイヤミスのエキスはいっぱい詰まっていて、読後感はあまりよくありません。
主人公は二人いて、その二人とも小説を書いている女性作家。二人はライバル関係とも言えますが、一人は住んでいた所沢の高級タワーマンションで謎の事故に遭います。
もうひとりの作家が、その事故に遭った作家の後を継いで、編集者の後押しもあって古い所沢を舞台とした小説を書き始めます。
とにかく、小説では時代がころころと変わるので、通勤電車の中かとか、短時間で区切りながら読んでいると、今読んでいるのはいつの話しだっけ?と混乱してしまいます。
内容も複雑で、古書店に勤める老婆が阿部定が使っていた偽名と同じ名前で、同一人物?と思わせたり、作家が転落したマンションを購入しようとしている謎の人物に対し、不動産会社の担当者がバカ丁寧に心理的瑕疵ありの説明をしたりと、どこでどうつながっていくのかが最後までわかりにくいです。
ま、それが最近のミステリー小説の潮流なのでしょうけどね。
そんなこんなで、実はよくわからなかったというのが実のところで、わかるまで読み込む!というモチベーションは残念ながらないので評価も分かれそうなところです。
★☆☆
◇著者別読書感想(真梨幸子)
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いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)
2015年刊のエッセイ集で、元々は昨年ある記事のせいで事実上の廃刊となってしまった新潮45に2014年頃に連載していたエッセイに書き下ろしを加えたものとなっています。
読んでいるときに、著者橋本治氏の訃報が流れてきてビックリしました。
「桃尻娘」「桃尻語訳 枕草子」作家の橋本治さんが死去70歳(産経新聞2019.1.29)
著者の作品は過去に「巡礼
◇939 2015年7月前半の読書「巡礼」
著者の作品一覧を眺めていると、デビュー作のエロティックなコメディ「桃尻娘
この本に出てきますが、40代のバブルが弾ける直前に、事務所として借りていたマンションを今に思えばバカ高い金額で購入し、毎月150万円を返済していかねばならないという貧乏への道を選択して歩んでこられました。
また何万人にひとりが罹るという難病「顕微鏡的多発血管炎」や「カリニ肺炎」「心臓病」「脊柱管狭窄症」「慢性腎不全」と次々と病気に罹り、何ヶ月も入院したりと、波瀾万丈な人生を歩んでこられました。
そうした病気を抱えたずっとフリーとしてがむしゃらに働いてきた団塊世代の著者が老いというものについてしみじみ考えたエッセイで、正直、普通のサラリーマンには参考にはなりませんw
小説はともかく、こうしたエッセイは手抜きなのか、同じ事が繰り返されたり、どうでもよい話しを長々とあったりと、著者の息抜き?出版社に頼まれたから手慰みにちょっと書いていた?と読んでいてそう感じます。
今度はちゃんとした長編小説を読んでみます。
★☆☆
◇著者別読書感想(橋本治)
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残穢(ざんえ) (新潮文庫)
私と年齢が近い(著者が2歳若い)ホラー系小説が得意な作家さんですが、同じくホラー系ミステリー小説を得意とする売れっ子作家綾辻行人氏と学生結婚をした方です。
この作品は2012年に単行本、2015年に文庫化されていて、2013年に山本周五郎賞を受賞しています。
また2016年にはこの小説を原作とした映画「残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―
私は結構怖がりなので、あまりホラー映画やホラー小説は好んで見たり読まないのですが、過去には鈴木光司氏やディーン・R・クーンツ氏の作品は好んでよく読んでいました。
この作品の主人公は著者自身と思わせる女性作家で、過去に一般公募した怪奇現象の中から、気になる怪情報をそれで困っているフリーライターの女性とともに、原因を探しだそうと調べていくというストーリーです。
ただ最初の目次のページに「高度成長期」「戦後」「戦前」「明治大正期」など過去へ遡っていくことが明示されていて、そこでこの小説のだいたいの成り行きがわかってしまい、怖さは半減します。
つまり、「戦後にこういう悲惨な出来事があった」と出てきても、たぶんそれは本質ではなく、もっと過去に根深いなにかがあったはず?とすぐに読者はわかってしまいます。
ただ日本の社会の風習として残る「喪中」や「穢れ」などの話しは、納得のいく説明があり、よく理解ができます。
人の移動が少なく土着して生活していた古い時代にはそうした「なにかが起きた場所」というのは、忌み嫌われ、しばらく落ち着くまでは喪中期間として他人と接触を避けたり、お祓いを受けたりというしきたりが今でも残っています。
そんなわけで、心配するほどは怖くないので、ひとり住まいで夜が怖くて心配!って人でもたぶん大丈夫なホラーです。私がひとり住まいなら読みはしませんけれど、、、
★★☆
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悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第2弾の「その女アレックス
この作品は日本での刊行は2015年と第2弾の後になってしまいましたが、シリーズの第1弾(2006年刊)で、著者のデビュー作と言うことです。
私はこの著者の作品を読むのは初めてで、もちろんカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズというのがあるのもまったく知りませんでした。
このカミーユという主人公の警部は身長が子供の頃から伸びず145センチしかないというコンプレックスをもっています。
その原因が画家だった母親の喫煙習慣だったというのにはちょっと?ですけれど、そうしたハンデをものともせず、有能な警察官となっていきます。
そう言えば鬼警部アイアンサイドは刑事部長ながら下半身不随で車椅子が手放せませんし、刑事コロンボのコロンボ警部も、イタリア系ながら、ちょいワルオヤジや、ハンサムなラテン系男子というのにほど遠く、風采の上がらない斜視の小男でした。
そうしたハンデがある刑事が、そうした苦難を乗り越えて予想外?の活躍をするというのが外国の刑事ドラマのトレンドなのかも知れません。
詳細は書きませんが、タイトルにあるイレーヌとはその主人公刑事の最愛の妻の名前ですが、タイトルにあるように、ハッピーエンドには終わらないというのがこうした小説では異例であり衝撃的でした。
第2作目の「その女アレックス」を先に読んでいると、その結末もわかってしまっているかも知れません。
その大ヒットした第2弾「その女アレックス
★★★
◇著者別読書感想(ピエール・ルメートル)
【関連リンク】
2月前半の読書 まほろ駅前番外地、謎解き 関ヶ原合戦、ダブル・フォールト、嗤う名医、はなとゆめ
1月後半の読書 本能寺の変 四二七年目の真実、欲しい、アキラとあきら、ひとり暮らし
1月前半の読書 未来の年表 、約束の海、ハサミ男、さがしもの、しゃぼん玉
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まほろ駅前番外地 (文春文庫)
シリーズ第1弾「まほろ駅前多田便利軒
ただしこの短編では、本編のスピンアウト作品という位置づけで、それぞれの話しで主人公が代わり、例の便利軒の二人は脇役へ回っています。
収録されているのは「光る石」「星良一の優雅な日常」「思い出の銀幕」「岡夫人は観察する」「由良公は運が悪い」「逃げる男」「なごりの月」の七篇です。
第1作目の「まほろ駅前多田便利軒
話しは、便利屋稼業の日常が描かれているわけですが、テンポもよく比較的短くて読みやすく、内容も軽めのものが多いので、ちょっとした暇つぶしの時などに持っていると良さそうです。
主人公は高校の同級生同士で、便利屋に居候している主人公の内のひとりに、昔、家庭内で起きた問題が、少しだけ明らかになっていきます。
すでに三作目が出ていますので、それですべて明らかになっていくのかどうかわかりませんが、なかなか焦らせながら次回へ続くみたいな手法はうまいなと思いました。
★★☆
◇著者別読書感想(三浦しをん)
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謎解き 関ヶ原合戦 戦国最大の戦い、20の謎 (アスキー新書)
2000年に出版された「真説 関ヶ原合戦」から加筆修正した新書で2012年に出版されました。
著者は歴史研究家の作家で、多くの戦国時代を中心とする書籍を出されています。
タイトルの20の謎ですが、
1 関ヶ原合戦の原因は何か
2 「五大老・五奉行」制はあったのか
3 前田利家・利長父子は家康と対決するつもりだったのか
4 家康は最初から軍事対決を目論んでいたのか
5 石田三成と直江兼続の密約はあったか
6 三成の挙兵戦略はどのようなものだったか
7 前田利長・利政はどちらにつくつもりだったのか
8 家康はなぜ小山・江戸に長く留まったのか
9 徳川秀忠の中山道進軍の目的は何か
10 徳川軍の主力は家康勢か秀忠勢か
11 上杉景勝はなぜ南進せず、最上義光を攻めたのか
12 三成の東進策はなぜ実らなかったのか
13 岐阜城はなぜ簡単に落ちたのか
14 家康は大垣城の西軍とどう戦うつもりだったのか
15 西軍の関ヶ原転進には三成の秘策があったのか
16 小早川秀秋はなぜ松尾山に陣取ったのか
17 島津勢は日和見で戦わなかったのか
18 井伊直政はなぜ「抜け駆け」したのか
19 宇喜多勢は本当に精鋭だったのか
20 「島津の退き口」はどのように行われたのか
となっています。
なかでも意外に思って面白かったのは、8「家康はなぜ小山・江戸に長く留まったのか」9「徳川秀忠の中山道進軍の目的は何か」16「小早川秀秋はなぜ松尾山に陣取ったのか」かな。
家康が小山評定で家康勢が上杉攻めから反転した後、すぐに上方へ向かわず、なぜか江戸に長く滞在していた謎や、秀忠が真田攻めに苦労して関ヶ原に間に合わなかったという通説の誤り、小早川の裏切りの可能性があることをわかっていた大谷吉継の動きなど、あくまで現在ある資料と著者の推測ですが、納得できるものが多くありました。
一度、関ヶ原へ行って各陣地跡を見ておくと、本文で書かれる各陣営の動きなどその位置関係がよくわかって良いでしょう。
◆5分でわかる関ヶ原の戦い 2014/12/13(土)
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ダブル・フォールト (集英社文庫)
2014年に単行本、2017年に文庫化された長編法廷ミステリー小説です。
著者の小説は過去に20作品を読んでいますが、それらに法廷が舞台の小説はなかったと思います。
主人公は若い居候弁護士で、1999年以降の司法制度改革により、需要以上の多くの弁護士が誕生し、月収が10万円前後という厳しい現実に身を置いています。
そこへ事務所の代表弁護士から、ある殺人事件の被告の弁護をするように話しがきます。
被告は、事件を起こした後、自ら警察に出頭し、事件を大筋で認めていますが、計画的な殺人か、正当防衛か、あるいは突発的な過失致死かという争点で検察側と争うことになります。
被告を弁護する側としては、殺された被害者の凶暴性や社会的な問題点を次々と表沙汰にすることで、被告のやむを得なかった正当防衛を主張していくことになりますが、当然ながら被害者の遺族は、「人を殺し、さらにその被害者の過去を暴く」と猛反発を食うことになります。
このあたりの、被害者遺族と加害者の弁護士との関係、法廷における証人に対する質問などが、スリルとサスペンス感がいっぱいでドキドキしつつ楽しめます。
タイトルは、主人公の弁護士が若い頃から続けているテニスにちなんでのものですが、もうひとつ本小説の内容とテーマ、結末が結びつかず、意味不明なところがありました。
著者は時代劇から、歴史物、刑事物、ビジネス物など幅の広いジャンルをテーマとした小説が持ち味で、そのあふれる才能には驚かされるばかりです。
★★☆
◇著者別読書感想(真保裕一)
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嗤う名医 (集英社文庫)
「寝たきりの殺意」「シリコン」「至高の名医」「愛ドクロ」「名医の微笑」「嘘はキライ」の6編の短編が収録されている2014年に単行本、2016年文庫化された小説です。
著者は現役医師でもあり、過去には「日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか
◆「無痛」6月後半の読書 2016/6/29(水)
◆「日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか」2月後半の読書 2017/3/1(水)
どの短編も医療にまつわる話しや医療従事者がメインの話しで、ブラックユーモアも散りばめられていて、一般人は知らない医療の世界を垣間見ることができます。事実かどうかはともかく。
医療関係者が読むと、結構あるある話しなのかも知れません。
ラストで大どんでん返しがある「寝たきりの殺意」、豊胸手術の失敗と、美容整形の後始末を嫌がる医療界の無責任さがわかり女性の美容整形の痛々しさを皮肉った「シリコン」、解剖学の技術員と放射線技師の二人が、形の良い頭蓋骨を愛するあまり暴走していく「愛ドクロ」など、医者の視点から見たドタバタがなかなか楽しめます。
でもこの作家さんの小説は、やっぱり長編のほうが面白いという結論に達しました。
★★☆
◇著者別読書感想(久坂部羊)
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はなとゆめ (角川文庫)
2013年に単行本、2016年に文庫化された、平安時代絵巻風で、主人公というか語り手が清少納言という変わった趣向の長編小説です。
清少納言と言えば、今から1000年ほど前の西暦1000年頃に、都(京都)で活躍していた女流歌人であり「枕草子
その他の有名人では、陰陽師の安倍晴明がちょっと出てきたりします。平安時代の寵児ですね。
著者の作品は、過去に時代物の「天地明察
■「天地明察」2014年2月前半の読書
■「マルドゥック・スクランブル圧縮」2016年8月後半の読書
内容は、清少納言というあだ名が付けられた経緯や、代表作とされる随筆「枕草子」が書かれるゆえんとそのタイトルの話しなど。
「枕草子」は、中国の司馬遷が編集した「史記」から「敷物」を連想し、「敷物≒寝具」には「枕」が似合うという言葉遊び(しゃれ)からという説をとっています(諸説あり)。草子は冊子という意味です。
それにしても「清少納言:枕草子」は、日本の青少年が学校で習う定番ですが、その人物のことや、書かれた背景を知っている人はごくわずかでしょう。
今では古い資料を見て推定するしかないものの、さすがに千年以上前の資料が新しく発見されることはあまり考えられず、こうした作家さんが考えた小説が人気を博し、また映画など映像化もされていくようになると、やがてはこれが通例となっていくのかも知れません。
★★☆
◇著者別読書感想(冲方丁)
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祝!日記1300回!
1300
本能寺の変 四二七年目の真実
2009年に単行本が発刊され、4年後の2013年に「本能寺の変 431年目の真実
来年2020年のNHK大河ドラマは、二枚目俳優、長谷川博己が演じる明智光秀を主人公とした「麒麟がくる」に決定していますので、今後(と言っても1年先ですが)明智光秀ブームが沸騰してくるのは間違いないところでしょう。
本書の中でもなかなか興味深い話しが多く、定説と言われている様々な事柄を、別の資料からこう考えられるというような推理を述べています。
中でも傑出なのは、明智光秀と徳川家康は事前に信長暗殺の合意ができていて、本能寺の変が起きたと連絡が来てすぐ、家康は堺から楽々と伊賀越えして岡崎に帰ったあと、その後、信甲州の織田領を攻め入ったのは事前の打ち合わせ通りだったとする話し。
ただ、予想外だったのは、明智、徳川連合軍の体勢が整う前に、秀吉が中国大返しでやってきて、明智が大敗したことで、その後の予定が大きく狂ってしまったと本書では推定しています。
つまり本能寺の変は、明智光秀ひとりの陰謀ではなく、傍若無人の織田信長を恐れていた家康や、細川、長宗我部などを巻き込んだクーデターだったという話しです。
ま、ちょっと無理筋な推理の部分はあるとしても、明智の血筋としては、明智光秀ひとりが無謀にも己の欲求で天下取りに走ったというようなお馬鹿ではなかったんだということを言いたいのでしょうか。
こういう証拠になるような資料が少ない時代、その資料に矛盾があると、歴史家は自分の推理に都合が良いほうだけを取り上げ、それ以外は無視するか、ねつ造だと一笑に付してしまう傾向があります。
したがって歴史の解釈は幾通りにも考えられ、また時の権力者によってもゆがめられたり、消されたりすることも数多くあります。
この本能寺の変の真実というのも、著者の推理の部分がほとんどを占め、どこまで信憑性があるかという点については、素人が読む限りわかりません。ただ定説だけをむやみに信用するのはダメねってことは大事なことだと思いました。
著者自身の推理が絶対で断言調で書かれているのがちょっと鼻につきますが、でも割といい線を付いているのではないかなとも思えますし、歴史好きなら読んで定説との食い違いを検証してみるのも面白いかも知れません。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
欲しい (集英社文庫)
2006年単行本、2009年に文庫化された長編ミステリー小説です。著者の小説を読むのはこれが初めてですが、連作短編小説を雑誌連載中の2010年に49歳という若さで亡くなっています。
主人公は人材派遣会社を経営している40代の独身女性で、妻も子もいる男性と不倫関係にあり、なおかつ、寂しさを紛らわすため、若い男性を派遣してくれる派遣ホストもよく利用しているというちょっと話しをややこしくするようなできすぎた設定です。
ストーリーは、離婚して母子で暮らしている主人公の会社に登録し、派遣社員として働いていましたが、その職場に別れた旦那が金をせびりにきて、仕事を続けられなくなります。
その派遣社員は元旦那の暴力で離婚しましたが、消極的で強く言えないタイプで、そのようなことが起きるので仕事も続かず生活保護を受ける羽目になります。
片や、その女性の身の上話とそっくりな状況が、出会い系サイトの相談コーナーに書き込まれ、主人公の愛人がそれを読み、自分の娘にも同じようなことが起きたことで心配し、その女性にのめり込みストーカー行為をするようになります。
そしてその男性が、ストーカー被害者の女性に突き飛ばされ、歩道橋から転落し、亡くなるという事件が起きます。
このあと、また二転三転しますが、ミステリーなので、あとは書きません。
事件と言えば事件なのですが、女社長、愛人(出会い系サイト・ストーカー)、ホストと、DV、派遣、生活保護という関連性というか組み合わせってあまりピンとこないので、よく言えば意外性、悪く言えば、ありえねぇ!という感じもする小説でした。
★★☆
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アキラとあきら (徳間文庫)
2006年から2009年に雑誌に連載されながらその後単行本化はされず、2017年にテレビドラマ化されることとなり、その2017年にいきなり文庫化されて発刊されました。
2006年~2009年頃と言えば、ドラマや映画化もされ著者の代表作ともなっている三菱自動車のリコール隠し問題を描いた「空飛ぶタイヤ
元々大学卒業後に三菱銀行へ入り、10年ほどサラリーマン生活を過ごしていた筆者だけに、金融、経済、財務等には明るく、そうした経済テーマの小説が真に迫っていて群を抜いています。
人気作家になったから言うのではないのですが、デビュー作「果つる底なき
この小説の主人公は、二人のアキラ。貧しい町工場に生まれ育った山崎瑛と、大手海運会社の御曹司の階堂彬です。
その二人が知恵を絞って戦うのかと思っていたら、まったく違い、二人とも東大を出て大手都銀へ入り、入社時研修でお互いの力を認め合い、その後、様々な危機を乗り越えていくという成長物語ってところです。
二人が協力し合うのは、最後の最後のわずかなところだけで、ずっと二人の両極端な人生が、それぞれに並行して描かれます。
720ページと、かなり長い小説ですが、途中ダレるようなこともなく、次々とテンポよく話が展開していき、とても面白く読めました。さすがとしか言えません。
将来起業したい、あるいは金融や企業買収などの仕事がしたいと漠然と思っている人は、そうしたビジネスの現場で起きている割とリアルな世界を垣間見られますので、若い人にお勧めです。
★★★
◇著者別読書感想(池井戸潤)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ひとり暮らし (新潮文庫)
詩集や童話、翻訳本など多くの著作を出してきた86歳の作家であり、歌謡曲や学校校歌の作詞、鉄腕アトムなどアニメのテーマ曲の作詞、映画の脚本なども手掛ける多才な著者のエッセイ集で、2001年に発刊、2010年に文庫化されています。
「私」「ことばめぐり」「ある日」の三部構成になっていて、1980年代から90年代に雑誌等に書かれたものが集められています。
著者は1931年生まれで戦前派に属する方で、父親は哲学者で元法政大学総長という恵まれたエリートの生まれ育ちから来ているのでしょうか、下世話な庶民的な感覚ではなく、なにか吹っ切れていて、いつも遠くを見ている人という感じが文章から感じます。
ただ意外なのは、そうした教育者の父親の元にいながら、高校卒業後は大学入学や就職活動はせず、詩作に没頭して、その後作詞活動やエッセイスト、評論活動などの道へ向かいます。やはり変わり者と言えますね。現在87歳の今もご健在ですので、こんなことを書くと叱られそうです。
エッセイは、なにかテーマがあるわけでもなく、著者が60歳前後の時期に、日々の暮らしの中で、気がついたことや、感じたことが思うまま?に書かれていて、今ちょうどこのエッセイが書かれた著者の年齢に達した私が読むと、多くの共感と納得感が得られます。
もし私が、20年以上前の40代に読んでいたら、中には反感を覚えたり、目を上滑りしていくだけに終わったかも知れません。
★★☆
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