忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/04 >>
SMTWTFS
12 345
6789 101112
13141516 171819
20212223 242526
27282930
Recent Entry
Recent Comment
Category
1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

1791
四つの署名(角川文庫) コナン・ドイル

四つの署名「シャーロック・ホームズシリーズ」の推理小説で有名な著者の作品ですが、このシリーズ全60作品の中で長編作品は、最初の「緋色の研究(A Study in Scarlet) 1887年」などわずか4作品しかなく、あとはすべて短篇というのはあまり知られていません。

2013年9月前半の読書と感想、書評(緋色の研究)

今回の「四つの署名(The Sign of Four)」は、長編として上記「緋色の研究」に続く2作目で、初出は1890年頃と言われています。また日本語翻訳版では複数の出版社から出版されていてそのいずれもタイトルが少しずつ違っています。

ストーリーは、暇を持て余してコカインなどを吸引してぶらぶらしていたホームズの元へ、若い女性が「軍人でインドに駐在していた父親が所用で英国に帰ってきたらそのまま行方不明になったので探して欲しい」と相談を受けます。

しかも行方不明になって以降、不思議なことが次々と依頼人の身の回りで起き、「それらについて説明をするから来て欲しい」と、謎の相手から手紙が送られてきます。

そこで、ホームズと助手のワトソンが女性の付き添いとして出掛けていきますが、その先では不思議な殺人が起きているというストーリーです。

長編と言っても文庫本でわずか216ページという短さなのであっという間に事件は解決してしまいますが、1880年当時の東インド会社やセポイの反乱など、英国がインドなどを実効支配していた頃の話なども出てきて、歴史のお勉強にもなりそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

牛の首 厳選恐怖小説集(角川ホラー文庫) 小松左京

牛の首サブタイトルに「厳選恐怖小説集」と銘打ってありますが、思ったほど怖くはないです。というのも、著者お得意の科学的なSFと、その対極にありそうな古典的な妖怪など怪談とのミックスですので、意外性はあるものの、あまり身近でベタな恐怖ではないだけに怖さを感じません。

短篇とそれより短いショートショートが計15編で構成されていて、それぞれのタイトルは 「ツウ・ペア」「安置所の碁打ち」「十一人」「怨霊の国」「飢えた宇宙」「白い部屋」「猫の首」「黒いクレジット・カード」「空飛ぶ窓」「牛の首」「ハイネックの女」「夢からの脱走」「沼」「葎生の宿」「生きている穴」です。

各作品の初出は、1964年(昭和39年)から、一番新しいものでも1978年(昭和53年)で、小説雑誌やスポーツ新聞などに掲載されていたものです。本著文庫本は2022年に発刊されています。

印象に残った作品として「飢えた宇宙」と「夢からの脱走」の2作を挙げておきます。

「飢えた宇宙」は太陽系を超え、あと10年はかかるアルファ・ケンタウリを目指している宇宙船の中で搭乗員がひとりずつ消えていなくなる事件が発生します。また積み込まれていたはずの食糧がほとんどないことも発覚し、残った搭乗員はこのままでは餓死すると絶望感に陥ります。

食糧がほとんど積み込まれなかったのは。実は人間だと寿命があり、さらに大量の食糧を積み込む必要があるので、それを一気に解決する策として、少しの血漿さえあれば不老不死のドラキュラを眠らせて密かに乗せておき、目覚めてからは搭乗員の血を吸って、、、

「夢からの脱走」は、2つのパラレルワールドを行ったり来たりする男の物語で、平和な世界で妻と子供がいるサラリーマンが、あるとき、最初は夢の中と思っていた現代の戦争に巻き込まれていて、戦闘員として戦っている自分が交互に現れてきます。それを夢と思っていたら、、、

と、まぁ、ユニークな発想が素晴らしいというか、今から50~60年ほど前に書かれた作品ですけど、十分に楽しめます。

★★☆

著者別読書感想(小松左京)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

残酷な進化論 なぜ「私たち」は「不完全」なのか(NHK出版新書) 更科功

残酷な進化論著者は分子古生物学者の大学講師で、他にも多くの著書があります。時にはこうした専門雑学というか知的好奇心を満たす書物も読んで刺激を与えておかないと脳が怠けてしまいそうです。本著は2019年に発刊された新書です。

個人的にはあまり関心がない「進化論」や「人類史」「人体」の話ですが、常識と思っていたようなことが次々と覆される快感は捨てがたいです。

例えば、人の眼は生物の中ではもっとも進んだ視覚装置と思っている人が多いと思いますが、人が「鳥目」と夜盲症を揶揄しますが、実は鳥の中でも鷹や鷲の目は人間のそれよりも優れているとか、チンパンジーの手よりも人間の手の方が原始的で進化していない形状だったりします。

結果的にはそれが小さな物をつかむときなどでは有利で道具をうまく使いこなせたわけですが、比較的安全な森の中の木の上で生活するために類人猿の手からチンパンジーの手は進化してきたようです。

話は生物の進化だけではなく、原始的な細菌の話や、心臓や肺の進化の様子など面白く読めます。

数万年後には、どんな進化した生物(人間とは限らない)が地球上で繁栄しているのかをぼんやりと考え、創造力たくましくなります。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

盤上の夜(創元SF文庫) 宮内悠介

盤上の夜著者の小説は初めて読みましたが、SF小説を得意とする1979年生まれの著者が、2010年から2012年にかけて書いた短篇作品をまとめた単行本が2012年に発刊され文壇デビューとなりました。

そして今回読んだ実質デビュー作が、直木賞候補(落選、その時受賞したのは辻村深月著『鍵のない夢を見る』)になり、日本SF大賞を受賞しました。

収録されている短篇のタイトルは、「盤上の夜」「人間の王」「清められた卓」「象を飛ばした王子」「千年の虚空」「原爆の局」の6篇で、最初の「盤上の夜」と最後の「原爆の局」の2作は連作で囲碁がテーマ、「人間の王」はチェッカー、「清められた卓」は麻雀、「象を飛ばした王子」は古代インド発祥で将棋やチェスの起源と言われているチャトランガ、「千年の虚空」は将棋をそれぞれテーマとしています。

盤上ゲームをテーマにした作品は数多くありますが、それは将棋なら将棋、麻雀なら麻雀だけで、この短篇集のように、時代や場所がそれぞれ違う中で、扱うテーマも違っているというのは珍しいです。

しかしなぜか盤上ゲームの中でも世界の競技人口が多いトップ3のトランプやチェス、オセロがこの中には入っていません。ま、どのゲームを入れるかは著者の自由ですけど。

個人的にはギャンブル性のあるゲームは苦手で、遊ぶことはあっても強くはないので、あまり詳しくもなければ興味もありません。

それだけになにか読んでいても、ゲーム独自の専門用語などがビシビシと出てきて、それらは意味不明で、読み飛ばすしかありません。なにか「わかるヤツだけわかればいいのさ」というような身勝手さが感じられます。

こうした盤上ゲームは元々が賭け事から発展していることから仕方がないですが、内容的にはアングラ的というか暗いものが多く、登場人物が熱くなっていくのと反比例して、読者(私個人のこと)は冷めていくような感じでした。

でもいろいろと知らなかった知識や雑学が得られたのは良かったです。

★★☆

【関連リンク】
 5月後半の読書 火の壁、追想の探偵、70歳の正解、囚われの山
 5月前半の読書 護られなかった者たちへ、日本史の内幕、新章 神様のカルテ、ベロニカは死ぬことにした
 4月後半の読書 おとなの教養3、蓮如 われ深き淵より、雪の階、ディプロトドンティア・マクロプス




リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR


1789
火の壁(文春文庫) 伊野上裕伸

火の壁
1938年生まれの著者の作品は今回初めて読みますが、数多くの推理小説が出版されています。中でも作家になる前に勤務していた損害保険会社での調査員の業務と経験が多くの作品に生かされているようです。

本書は1996年にサントリーミステリー大賞を受賞し、単行本が発行され、1999年に文庫化されています。

本書の主人公は損保会社と契約し、保険支払に関わる事故などの調査を請け負っている会社の調査員で、主に火災事故で火災保険の支払のための調査をおこなっています。

私も自宅には火災保険をかけていますが、保険金の支払い額を抑えるため、例え全焼して保険金が満額が支払われたとしても、自宅の再建や使い慣れた家具や電気製品などを揃えるには十分な水準ではなく、元の生活には戻れそうもないかなと思われる程度の契約で、今後見直しも必要かなと考えているところです。また地震保険も付けたいところですが悩ましいところです。

小説では、連続して自宅や店舗が不審火や失火で火災保険が支払われている曰く付きの男性について、新たな火災が起きたため、さすがにこれは疑わしいと損保会社から依頼をされ調査を始めたのが主人公の調査員です。

以前読んだ重松清著「疾走」でも放火がテーマで、重苦しいテーマでしたが、放火のテクニカルな話とともに、放火を起こす犯人の複雑な精神状態など、単なる保険金目当てだけではない様々な事情や人間関係が絡んできます。

しかし火災の原因や、失火に誰が関わったかなど、警察ではない調査員が調べていくというのは、一種の探偵と同じで、個人情報やプライバシーなど様々な制限があり困難を極めます。

そうした困難をひとつひとつクリアしていき、その中からおおよその絵を描いて、あとは保険会社とその弁護士へ引き渡していくという流れで、一般的な探偵小説のようにすべて一人で解決していくというものではありません。

推理小説としては、人間関係にやや無理がなくはありませんが、総じて知らない世界を見せてもらって面白かったというのが感想です。

★★☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

追想の探偵(双葉文庫) 月村了衛

追想の探偵
機龍警察シリーズ」の小説が有名な著者ですが、そちらはまだ読んでいません。本作品は、2017年に単行本、2020年に文庫化された連作短篇の小説です。

探偵というタイトルから「人捜しでもするのだろう」ぐらいに思って、特にあらすじとかは知らずに読み始めました。

そうすると人捜しには違いないものの、主人公が出版社で怪獣や変身もの、戦隊ものなど、特撮ドラマや映画の専門雑誌の編集長で、当時の関係者のインタビュー記事を掲載するために古い作品の監督など関係者を探していくという物語です。

特撮ものというと、1950年代から1960年代にかけて、テレビでは月光仮面や、少年ジェット、ウルトラQ、マグマ大使などがヒットし、その後はウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズ、映画ではゴジラシリーズなどへと広がっていきます。

1957年生まれの私がリアルタイムで見ていた特撮もののテレビ番組は、カネゴンやガラモンが登場していたウルトラQ以降です。

2000年頃からはそれまでのミニチュア模型やコマ送り合成などを使ったSFX(特撮)から、コンピュータグラフィックスを使ったVFXへと変わってきます。

ゴジラシリーズで言うと2004年公開の「ゴジラ FINAL WARS」まではミニチュアや着ぐるみで製作されましたが、実質その次の作品となる2016年公開の「シン・ゴジラ」からはVFXで製作されています。

したがって従来の特撮の専門家というと、主に1960年代~1990年代までに活躍した人たちということになり、その時代に活躍していた人はすでに亡くなっているか、かなり高齢ということになりますので、人捜しはたいへんです。

短篇は6編あり、それぞれに当時の特撮に関係していた人を探していきますが、今でも当時の特撮マニアが相当数いるというのには驚きます(知りませんでした)。

なお、この小説の主人公のモデルは実在していて、解説に書かれていましたが洋泉社がかつて発行していた「特撮秘宝」の編集者だった方です。単なる創造世界の中だけでなく、実際にこのような特撮のマニアックな世界があったこと自体驚きでした。

★★☆

著者別読書感想(月村了衛)


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

70歳の正解(幻冬舎新書) 和田秀樹

70歳の正解
2022年に発刊された新書で、高齢者専門の精神科医として「80歳の壁」や「70歳からの老けない生き方」など、タイトルに年齢を入れた健康指南本が多い著者です。

私と年齢が近く、したがって日々感じていることや、それぞれの年代によって必要とされるものなど、考え方に近いものがあって話はスッとはいってきます。ということはおそらく20代や30代の人がこの本を読んでも、あまりにも置かれた環境や精神的・肉体的条件が違いすぎてピンとこないでしょう。

まず最初に本を開いてみると、文字が大きく老眼の入った高齢者にも読みやすくなっています。普段細かな文字の文庫ばかりを苦労して読んでいるので、極めて楽に読めます。

内容は、平均余命まで生きるとして60代だとまだ20年以上余命があり、そのラスト20年に心身ともに健康でいられるように医者としてなにをしたら良いかという話がメインです。

そうした高齢者の健康指南本は星の数ほどあるので、その中に埋もれてしまいそうな気もします。内容的にも、他の指南書とそう変わらないかなと思います。

その中には、タバコの害と禁煙は当然書かれていますが、「最近の研究では、ニコチンはアルツハイマー型認知症を防ぐ効果がある」というアップデートされた意外な記載があり、過去に書いた著書の使い回しではないことは言えそうです。

★★☆

著者別読書感想(和田秀樹)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

囚われの山(中公文庫) 伊東潤

囚われの山
著者の作品を読むのは今回が初めてですが、1960年生まれの著者は2007年以降、歴史小説やノンフィクションを数多く出版されています。

本著は、1902年(明治35年)に青森で起きた八甲田山雪中行軍遭難事件をモチーフにした現代が舞台の小説ですが、この冬山での遭難事故として世界の中でも最多の犠牲者を出した事件については、戦史家、歴史家、学者、ジャーナリストなど多くの人が検証や研究発表、執筆を行っていて、もはや新しい謎やネタで書くのは難しいだろうと思っていました。

個人的には若い頃に高倉健主演の映画「八甲田山」をロードショーで見て、そのずっと後に映画の原作となった新田次郎著「八甲田山死の彷徨」を読んでいます。さらに東北へ旅行したときには、本著にも出てくる八甲田山雪中行軍遭難資料館を見学し、隣の幸畑墓苑にお参りしてきました。

幸畑墓苑

小説のストーリーは、出版社に勤務する中年男性が、歴史物雑誌の特集記事で八甲田山事件を取り上げる提案をしてその企画の責任者となります。

その主人公は元々は夕刊紙の記者でしたが、雑誌の編集長だった先輩に誘われて今の部署に来ています。しかしその先輩が雑誌の販売不振で退職したあと、後任にファッション雑誌の副編集長だった女性が上司としてやってきたのが不満です。さらにプライベートでも妻との関係もうまくいかずに別居状態です。

八甲田山事件の謎として、下級兵士の服装が冬山には不向きと言える軽装備だったことから、これは軍部が満州でソ連と戦う前に冬の装備の優劣や、兵士が寒冷地で凍傷に罹った場合の対応など人体実験として計画されたものではないか?というテーマと、もう一つ、当初の新聞では現地での凍死者数200名というのが、後から軍の発表では199名となっていたことに疑問を持ち、除外された1名の謎を追いかけます。

多少は八甲田事件のことを知っていたことや、夏場ですが行軍隊が迷走した馬立場から鳴沢あたりの地形を実際に俯瞰して見ているので、迷走した歩兵第5連隊の行動履歴がよく理解できました。本書の最初には、地形図と露営地の場所などが書かれた地図もついているのが親切です。

最後の命をかけたクライマックスのシーンはそれまでの緻密な設定から急に大雑把な感じへと変わってしまい、やや不満が残るところですが、なりゆきからどこかで雪山で無念の死を迎えた兵士の亡霊でも出てくるかなと思っていたら案の定でした。

それはともかく、ずっと興味を持っていたテーマでもあり、とても面白かったです。

★★☆


【関連リンク】
 5月前半の読書 護られなかった者たちへ、日本史の内幕、新章 神様のカルテ、ベロニカは死ぬことにした
 4月後半の読書 おとなの教養3、蓮如 われ深き淵より、雪の階、ディプロトドンティア・マクロプス
 4月前半の読書 無駄だらけの社会保障、あなたが消えた夜に、木漏れ日に泳ぐ魚、ロウソクの科学

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX



1787
護られなかった者たちへ(宝島社文庫) 中山七里

護られなかった者たちへ
著者の小説を読むのは今回が初めてです。1961年生まれの作家さんで、原作が映画やTVドラマにもなった数多くの小説があり、特にミステリー小説がお得意のようです。

この作品も2021年に瀬々敬久監督、佐藤健、阿部寛、清原果耶などの出演で映画が製作されていますが、ちょうどコロナ禍の真っ最中で気の毒なタイミングでした。

デビュー作は、「このミステリーがすごい!」で大賞を受賞した「さよならドビュッシー」(2010年刊)で、その後「岬洋介シリーズ」「御子柴礼司シリーズ」など多くのシリーズ物や単作のミステリーが出版されています。書店巡りが趣味だった私のレーダーに今までどうして引っかからなかったのかは謎です。

本著は2016~2017年に新聞で連載され、2018年に単行本、2021年に文庫化されています。

主人公は、傷害と放火事件を起こし逮捕され、8年ぶりに刑務所を出所してきた男性と、連続殺人事件を追いかける刑事のふたりで、物語の舞台は震災から9年ほどが経った仙台です。

本著では、生活保護の問題や、刑務所を出所した前科者が就職する難しさ、東日本大震災後に東北で起きたことなどが網羅的に出てきますので、リアルな社会を知る意味からも価値がありそうです。

特に生活保護の問題では、2006年に北九州市で起きた門司餓死事件の話も出てきますが、生活保護受給希望者の増大から政府や厚労省、自治体上層部の指示で、生活保護の申請を受け付ける窓口でできるだけはねつける水際作戦が行われていて、働くことが出来ず、食べることすらままならない人たちの姿が出てきます。

一方では、働けるのに働かない、収入があるのに申告しないなどの不正も起きていて、数少ない役所の担当者だけでは増大する申請者に丁寧な対応が難しいという実情も描かれています。

ミステリーとしては、早々に犯人が容易に想像できて上質とは思えませんが、普段はあまり馴染みがない社会の問題点を知り、考えることの大切さを知ることが出来ます。

あと、登場する警察側も、二人の刑事だけが取り上げられますが、実際は組織の中で上層部の駒としてしか動けない実際の刑事とは大きく違い、自分の判断と推理で自由に行動範囲を広げながら動き回っているのは、小説とは言えやや不満な点です。そんな優秀で自由に動き回れる刑事など今は小説の中だけでしょう(あ、小説ですね)。

★★☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで(中公新書) 磯田道史

日本史の内幕
2017年に発刊された新書で、自らが古文書を発掘し、読み込んでわかったことをまとめたものです。

テレビですっかり有名人となり、今や歴史物では欠かせない若手研究者ですが、弁舌の爽やかさと良い、和洋問わず歴史の知識の豊富さで視聴者や読者を魅了し続けています。さらに武術と軍事経験がもしあれば(なさそうですが)、漫画「マスターキートン」の主人公を地でいく人です。

この新書では、教科書には出てこないような、もっとローカルで、些細な出来事などを発掘した古文書を解読し、雑誌や新聞のコラムで披露されたものがまとめられています。

古文書という以外、特に時代やテーマがあるわけではなく、寺社に保存されていた古文書を見せてもらってわかったことや、古書店で見つけた古文書を解読してみると新たな発見があったとかが綴られています。

一例では、徳川家康が武田信玄にコテンパンにやられた三方ヶ原の戦いについて書かれた古文書や、大坂夏の陣で破れた真田幸村の首実検で家康がかけた言葉とか、家康の最初の正室築山殿の謎、新たに見つかった坂本龍馬や西郷隆盛の書状、安政地震の際の江戸商人の日記など、多岐にわたります。

一種の雑学になりますが、教科書や歴史書、小説などでお馴染みの武将や偉人が実はこういう繊細な人だったとか、あの行動はこういう意味もあったのかなど、楽しく読めます。

★★★


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

新章 神様のカルテ(小学館文庫) 夏川草介

新章 神様のカルテ
神様のカルテ」(2009年)、「神様のカルテ2」(2010年)、「神様のカルテ3」(2012年)と読んできましたが、いずれもたいへん面白く読みました。

その影響もあり、旅行で長野県へ行ったときには、わざわざ小説の舞台となった松本市にある相澤病院(小説の中では本庄病院)へ寄ってきました。相澤病院と言えば2022年に現役を引退されましたが、冬季五輪スピードスケートの金メダリスト小平奈緒さんが所属していることでも有名な病院です。

本来なら「神様のカルテ3」の次は2015年刊の「神様のカルテ0」を読むところですが、それは飛ばして2019年刊(文庫は2020年刊)この作品を読みました。

「神様のカルテ0」はそのタイトルからして最初の「神様のカルテ」の前の医学生の頃の話だと思われるのでそのうち機会があればということで。

新章と銘打ってあり、何事か?と思いましたが、勤務医として24時間365日対応の本庄病院で働いていた主人公が、さらに医療知識を身につけるべく大学病院の大学院生として働きつつ学んでいくという、自己研鑽物語です。でも安心できるのは「引きの栗原」は大学病院でも健在です。

大学病院と地域医療病院、そして開業医などのあまり知られていない医療業界の仕組みは新鮮ですが、学生の身分でわずかな報酬で寝る間も惜しみ研究の実験をしてレポートを書きつつ、大学病院の外来で若い医者の指導医をしながら、土曜日にはアルバイトで長野県内の病院をドサ回りしているという姿には頭が下がる思いがします。

今回は、主人公の妻、榛名姫は子育てで忙しく?登場場面が少なくてちょっと残念です。

そして次は新型コロナウイルスでパニックになった大学病院の様子などの話も書いてもらいたいものです。

★★☆

著者別読書感想(夏川草介)


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ベロニカは死ぬことにした(角川文庫) パウロ・コエーリョ

ベロニカは死ぬことにした
著者は1947年ブラジル生まれの作詞家で小説家の作家さんで、現在も活躍中で、過去には「アルケミスト - 夢を旅した少年」と「11分間」の2作品を読んでいます。

小説の舞台は著者の母国ブラジルではなく、中欧にあり民族間の内戦や占領時代があり、1991年にユーゴスラビアから独立を果たしたスロバキアという国です。本著でも出てきますが「スロバキアがどこにあるか知っている人は少ない」でしょう。私も知りませんでした。

この作品を原作として2006年に日本で、2009年にアメリカで映画化がされています。真木よう子が主演した日本の映画では舞台が日本に、アメリカ映画ではニューヨークに変更されているそうです。

小説の冒頭で、タイトル通りベロニカという主人公が計画的に準備してきた睡眠薬を大量に飲み自殺を図ります。自殺の理由は特になく、ただ漠然とした人生を終わらせたいというものです。

そして目が覚めた時には手足を固定されて精神病院に入院していました。

主人公は、眠りから目が覚めたあとに、睡眠薬自殺は発見が早く救われたが、心臓にダメージがあり、あと数日しか生きられないだろうと余命宣告されます。

そこから物語は佳境に入っていきますが、ベロニカ自身の物語と言うよりは、同じ精神病院に入院している女性や男性、そしてその病院で新しい治療を研究している院長など、主人公が関わっていく人たちから影響を受けながら生きるという意味を考えるようになっていく物語です。

ただ、あまりにも非日常的な話ばかりで、世界120カ国でヒットした作品という触れ込みながら、やや退屈して読みました。

以前読んだ作品とはまったく内容もプロットも違っていて、守備範囲がかなり広い作家さんなんだなぁという感想です。

★☆☆

著者別読書感想(パウロ・コエーリョ)

【関連リンク】
 4月後半の読書 おとなの教養3、蓮如 われ深き淵より、雪の階、ディプロトドンティア・マクロプス
 4月前半の読書 無駄だらけの社会保障、あなたが消えた夜に、木漏れ日に泳ぐ魚、ロウソクの科学
 3月後半の読書 ものごとに動じない人の習慣術、アジアンタムブルー、アウトサイダー 陰謀の中の人生、僕の探偵 

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX


1784
おとなの教養3 私たちは、どんな未来を生きるのか?(NHK出版新書) 池上彰

おとなの教養3過去にこのシリーズの(1)と(2)を読んでいて、とても良かったので2021年に出版されたシリーズ3作目となる本著を読みました。

1作目は時代が動いても変わらない普遍的教養(リベラル・アーツ)について、2作目が歴史や政治学、宗教、経済学を基礎に日頃のニュースを捉え直して考える力を、そしてこの3作目では不確実な未来を予測し備えるために、過去の経験や失敗から学ぶという内容です。

今回の具体的なテーマは、未来に備える上で重要な要素、つまり気候変動、未知のウイルス、データ経済とDX、米中新冷戦、人種・LGBT差別、ポスト資本主義となっています。

本著は2021年4月に発刊されましたので、新型コロナウイルスに翻弄された世界は含まれていますが、2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻による世界中の混乱や、2023年10月に始まったイスラエルとパレスチナのハマスとの戦争については当然含まれません。もし次の4作目が出ればきっとその2つの戦争について、歴史の必然性が解説されるのでしょう。

ビジネスマンや職員として毎日開かれた社会と触れていると、ある程度のニュースや、国際情勢、経済活動、IT知識などは自然と会議や同僚との会話の中に出てきて、そうした知識は上書きされていきますが、いったんリタイアしてしまい、社会とのつながりが希薄になると、端から端まで熱心に新聞を読み込む人はともかく、うわべだけのニュースや情報番組ばかりで、教養という点ではどんどん後れを取ってしまいます。

そうした社会と隔絶された状態のリタイア後の高齢者にはこうした解説本はたいへんありがたいし、高齢者以外でも、受験生や就活生も確実に時事問題や面接で強くなりそうです。

著者はテレビにもよく出演し、時事問題の解説をしていますが、概ねはバラエティ番組の中で、一時的に面白おかしく楽しむことはできても、それを自分でじっくり考えてどのように発展させていくかということについては、やはり書籍に勝るものはありません。そういう意味でこのシリーズは役立つのでお勧めです。

★★★

著者別読書感想(池上彰)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

蓮如-われ深き淵より-(中公文庫) 五木寛之

蓮如日本の仏教の布教で欠かせない平安時代末期から鎌倉時代初期に活躍した浄土宗の法然とその弟子で新たな宗派浄土真宗を作った鎌倉時代前半から中期にかけて活躍した親鸞が有名です。

そしてその親鸞の時代から200年後に親鸞聖人の教えと浄土真宗の総本山本願寺を継いで8代目の法主になったのがこの本の主人公で室町時代に生きた蓮如(1415年~1499年)です。

著者には親鸞をテーマにした小説があり、その続編とも言えるものですが、今回の作品は小説という形ではなく戯曲、つまり劇のシナリオのような形態となっています。

2014年5月前半の読書と感想、書評(親鸞)

2014年12月前半の読書と感想、書評(親鸞 激動篇)

2023年1月後半の読書と感想、書評(親鸞 完結篇)

小説ばかり読んでいるので、この戯曲スタイルにしばらくは違和感がありますが、慣れてくると、誰の発言か、どのようなバックグラウンドかなどがよくわかり、これもアリだと納得です。

最近の小説、特にミステリーなどは、犯人捜しを難しくするためかやたらと登場人物が必要以上に多い上に、その親族や関係者が次々と出てきて、誰が誰だかわからなくなったり、誰の発言なのか不明だったりしますが、シナリオならそうした煩わしさから解放されます。

法然や親鸞は比較的学校でも習っていて知っていますが、蓮如に関してはあまり一般的ではありません。法然や親鸞のように始祖や開祖ではなく、中興の祖という位置づけなので、仕方がないのかも知れません。

こうして読みやすい小説(戯曲)にしてもらえると、肩肘張ることはなく、自然体でスッと入ってくるので楽しく読めました。それにしても蓮如上人絶倫極まりなし(5人の妻と27人の子)です。

★★☆

著者別読書感想(五木寛之)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

雪の階(上)(下)(中公文庫) 奥泉光

雪の階2018年に単行本、2020年に文庫化された長編小説で、2018年に毎日出版文化賞と柴田錬三郎賞受賞を受賞しています。

小説の舞台は太平洋戦争前の軍部が勢力を増してきていた日本です。そして主人公は父親が貴族院の議員を務める伯爵の娘で女子学習院へ通うお嬢様です。

当時の政治は欧州を席巻しつつあった勢いのあるドイツと同盟を結ぶべきだという強硬派と、英米とは経済格差があり敵に回すべきではないという穏健派で二分していましたが、すでに中国へ進出していた軍部の実権が強まってきます。

一見すると、そうした戦争前の暗くて貧しいイメージがありますが、華族の世界はまだ華やかで、戦争という悲壮感はまったくありません。

そういえば、こうした戦前の華族の世界を舞台としていた小説では、柳広司氏の小説や、北村薫氏の小説などにもありましたが、農民に代表される一般庶民の自由がなく耐乏の生活ではなく煌びやかな世界です。

その侯爵の娘の友人が富士山山麓の青木ヶ原で若い軍人と心中しているのが発見されます。

しかしその相手や、亡くなる直前に主人公宛に出されたはがきなどから、これは心中に偽装された殺人ではないかと疑い、子供の頃の遊び相手でカメラマンとして活躍している女性に相談しながら真相を突き止めようとします。

宗教や政治、そして軍部と、様々な要素が絡み合って複雑な様相を呈してきますが、序盤の緻密で繊細な展開から、中盤から後半のやや大雑把に思える展開へ変わっていくのがやや気になるところですが、クライマックスを別の目的を持って計画されていたとする2.26事件へと持っていくところはさすがです。

★★☆

著者別読書感想(奥泉光)


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ディプロトドンティア・マクロプス(講談社文庫) 我孫子武丸

ディプロトドンティア・マクロプス1997年に単行本、2000年に文庫化されている「京都探偵シリーズ」と呼ばれている小説です。タイトルはなにか意味があるのか不明ですが、著者が作った造語のようです。

個人的には、子供の頃に親しんだシャーロック・ホームズや明智小五郎以来、フィリップ・マーロウや、サム・スペード、スペンサー、マット・スカダー、沢崎、工藤俊作、神山健介、佐久間公など探偵小説(シリーズ)が好きで、書店やブックオフで探偵もの小説を見つけると買わずにいられません。

著者のあとがきに書かれていましたが、この小説の原案は学生時代に書いたものということです。

つまり物語の時代は80年代前半ぐらいで、したがって現代のようにパソコンやスマホ、防犯カメラなどは出てこず、せいぜい押し売りにやってきた怪しい日本探偵互助協会の営業マンが持参してきたビデオカメラやテープレコーダーなどのひみつ探偵セットぐらいです。

堅物で有名な京大医学部の教授が失踪し、家族から探して欲しいと頼まれ、ハードボイルドタッチのシリアスものかと思っていたら、コミカルさ全開でした。

誘拐された教授の研究が、ウイルスの危険性を消して代わりに新陳代謝を促す遺伝子を動物に感染させることで、短期間で巨大化できるというもので、そのウイルスを巡って動物園のカンガルーや探偵自身が巨大化してしまうというとんでもない展開で、コミック的です。

本来のウイルスの害を消して代わりのものを動物に感染させる仕組みは、新型コロナのワクチンでmRNA(メッセンジャーRNA)で有名になりましたが、著者のアイデアに先見性があったということでしょうか。

京都大学に在学中に原案を考えたということで、事件は京都市内の縦横で発生し、探偵はじめ京都市内を駆け回り、「堀川通りをクルマで走るとがガタガタで悪路」だとか、いかにも京都に詳しい人が書いたと思わせるものでした。しかしナンセンスドラマでは観光案内にはなりません。

★☆☆

著者別読書感想(我孫子武丸)


【関連リンク】
 4月前半の読書 無駄だらけの社会保障、あなたが消えた夜に、木漏れ日に泳ぐ魚、ロウソクの科学
 3月後半の読書 ものごとに動じない人の習慣術、アジアンタムブルー、アウトサイダー 陰謀の中の人生、僕の探偵 
 3月前半の読書 とれない「痛み」はない、記憶の渚にて、袋小路の男、おれの死体を探せ

[PR] Amazn ほしいものランキング

携帯電話・スマートフォン  

スマートウォッチ

空気清浄機

洗濯機・乾燥機

衣類・ふとん乾燥機

テレビ・レコーダー

車&バイク


ヘルメット

洗車用品

自動車整備工具

釣りフィッシング     

ゴルフボール

ランニングシューズ

メンズスニーカー

レディーススニーカー

ベビー&マタニティ

ハンドケア・フットケア

シャンプー・コンディショナー 

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX

1782
イアン・フレミングイアン・フレミングは1908年に英国で生まれ、1964年(享年56歳)で亡くなった「007ジェームズ・ボンド」シリーズで有名な小説家です。陸軍士官学校を卒業後、何度か転職ののちにロイター通信でモスクワ支局長などを歴任し、その後第二次大戦中に英国海軍情報部(NID)に移っています。

そのNID勤務時代は第2次大戦中で、ナチスドイツに近づきつつあったスペインが枢軸国同盟に加わらないよう監視、妨害をする作戦などに従事していました。

そうした海外諜報活動の経験を元にして書き上げたのが「007シリーズ」で、東西冷戦時代に明るい娯楽を求めていた社会で大ヒットします。

先日、同じく英国の作家で「ジャッカルの日」などの著作があるフレデリック・フォーサイス(1938年~)の自伝を読みましたが、彼も若いときには軍隊(英国空軍)に所属し、その後新聞社やテレビ局の海外特派員などを経てから作家の道を歩んでいます。

2024年3月後半の読書と感想、書評「アウトサイダー 陰謀の中の人生 フレデリック・フォーサイス」

フォーサイスの場合は軍の情報部に勤務をした経験はなかったものの、情報部に依頼され東ドイツにいるスパイと接触をするなど東西冷戦の中で似たような経験をしています。

イアン・フレミングの作品は、007シリーズの長編小説が12作品あり、その他に007の短篇小説集が2作品あります。

また、007シリーズ以外に、有名な子供向けの物語「チキ・チキ・バン・バン(空とぶ自動車)」や、ノンフィクションが数冊残されています。映画にもなった「チキ・チキ・バン・バン」(1968年公開)は私が子供の頃(当時11歳)に親に連れられ映画館で見た記憶があります。

遺作となったのは、007シリーズの最終巻「黄金の銃をもつ男」で、その最終校正中に心臓麻痺で亡くなったそうです。56歳と作家としてはまだこれからという年齢だっただけに、急逝しなければ、シリーズの続編がいくつも書かれていたことでしょう。

ところで、007シリーズは小説よりももっぱら映画が有名で、イアン・フレミング原作の作品は長編、短篇ともほぼすべてが映画化されています。

ただ映画の制作順は小説の出版順ではなく、それぞれが独立した作品となっています。さらに、すべての作品の映画化が終わると「消されたライセンス」(1989年)以降、別の作家が書いたオリジナルストーリーで継続されています。

映画に出てくる主人公は小説とはかなり違い、映画では不死身の強いヒーローですが、小説ではなにかにつけクヨクヨと悩み、落ち込んで、時には周囲からあきられるほど酒浸りになる弱い男のシーンがよく出てきます。映画のイメージで小説を読むと驚きます。

映画のようなエンタメでは、小説で出てくる悪人を撃って落ち込むようなひ弱なヒーローでは不向きですが、そうした弱みや感情豊かな愛すべき人間性の主人公が本来の姿であり、小説のそうしたところに強く惹かれます。

私が007シリーズ(小説)を読んだのは1998年~2000年頃で、文庫本は早川書房と東京創元社の2社に別れて出版されていました。出版社は違えど日本語翻訳はどちらも井上一夫氏という変則的な形態です。

その後の新装版などでは新訳として別の翻訳者に変わっている作品もあるようです。なにぶんオリジナルの翻訳版が発刊されたのは1950年代から60年代と今から60年近く前のものなので、言葉遣いや差別用語などが今とは違っているのでそれらの修正ということもあるでしょう。

長編12作の中で私の一番好きだったのは、10作目の「女王陛下の007」です。

その10作目の最後には、ネタバレ防止のため詳しくは書きませんが、007にとって衝撃的なことが起き、その後の11作目ではふぬけになった007が遠く日本へ送られる「007は二度死ぬ」へつながっていきます。

そのふぬけ状態の007はというと、「007は二度死ぬ」の冒頭部分に出てきますが、秘密情報部部長で007の上司のMと、精神状態が最悪だった007の診断を依頼されていた神経科医のサー・ジェイムズ・モロニーとが下記のような会話を交わします。


(M)「出勤時間にも遅れるし、仕事の手を抜く、間違いを犯す、酒も飲み過ぎ、賭博クラブで大金をすっている。一番の腕利きだった部下が、保安上の危険人物にもなりかねている。」

(神経科医)「だが、彼はどこも悪くない。肉体的にはどこも悪くない。ただのショックだったんだ。本人も私にあらゆる情熱がなくなってしまったと認めている。仕事にもう興味はないし、生きていくことにすら興味がないと言うんだ」「ここ数ヶ月のうちに、彼に何か難しい任務を与えてみたかね?」

(M)「ふたつやらせた。ふたつとも失敗した。ひとつではもう少しで殺されそうになったし、もうひとつの仕事では他の連中を危険にさらすような失敗をやった。急にへまばかり足手まといになったんだ」

(神経科医)「それも神経症の徴候だな。それで、どうするつもりだね?」

(M)「クビにする。撃たれて使い物にならなくなったとか、何か不治の病に罹ったのと同じだ。これまでの経歴がどんなものであろうと、心理学者がどんな理由を見つけてくれようと、あの男の部署に能なしを置いておくことはできんからな。もちろん恩給は支給する。」

どうです?このようなヨレヨレのジェイムズ・ボンドは映画ではまず見られないでしょ?

下記の表は、007シリーズの購入時の表紙と裏表紙に書かれたあらすじ(1950~60年代の本ですから、「冒険活劇」「不死身の快男児」など、今では苦笑するしかない表現があちこちで使われています)です。

年数は日本語訳版の初版発行年、英語の原題にはオリジナル英語版のリンク(Amazon)を付けています。

また短篇集の「オクトパシー」(旧版のタイトルは「007号/ベルリン脱出」)は未読でこの表には含まれません。

ジェームズ・ボンドシリーズ イアン・フレミング
Ian Lancaster Fleming  James Bond Novel
ジェームズ・ボンドシリーズ
 
01 カジノ・ロワイヤル Casino Royale 1953年 東京創元社
カジノ・ロワイヤル ソ連の工作員でフランスの共産系労働組合の大物、ル・シッフル。

財政難に陥った彼は、今夏ヨーロッパで最高の賭けが行なわれると噂の海水浴場ロワイヤルに乗りこむ。

そうはさせじと英米仏三国の共同作戦のもと、バカラ賭博に挑む英国秘密情報部員007号、ジェームズ・ボンド。

賭け金は幾何級数的に上昇するが・・・・・!不死身の快男児ボンドが初登場。これがエンタテインメントの粋。

1999/10/05読了
  
02 死ぬのは奴らだ Live and Let Die 1954年 早川書房
死ぬのは奴らだ ボンドの今回の標的は、全米の暗黒街を牛耳る男ミスター・ビッグ彼はジャマイカから大量の古代金貨を盗み出し、世界の金相場を狂わせようと企んでいた。

Mの指令を受けたボンドはニューヨークへ飛び、旧友のCIA局員ライターとともに調査を開始した。

だがやがて、敵の罠に陥ったライターは瀕死の重傷を負い、ボンドも絶体絶命の窮地に!鮮烈なヒーロー、ジェイムズ・ボンドの名を確立した初期の傑作。改訳決定版

1998/04/17読了
  
03 ムーンレイカー Moonraker 1955年 東京創元社
ムーンレイカー 第二次大戦中ドイツ軍の破壊活動に巻きこまれたその男は、記憶が戻らぬままヒューゴ・ドラックスと名乗ることになった。

戦後、巨億の財をなした男は、国に報復攻撃用の超大型原子力ロケットの寄附を申し出、一躍英雄となる。

ところが、問題のムーンレイカー号が完成目前ドーヴァー海岸にある基地で保安係が疑惑の死を遂げた。

007号ジェームズ・ボンドはひとり、謎の渦中へ・・・・・・

1999/06/03読了
  
04 ダイヤモンドは永遠に Diamonds are Forever 1956年 東京創元社
ダイヤモンドは永遠に アフリカのダイヤモンド鉱山から、年間少なく見積もっても二百万ポンドにのぼる金額のダイヤが密輸されている!

二十世紀初頭からこの商売の主導権を握っている英国にとっては由々しき問題だった。

かくて、海外秘密情報部員ジェームズ・ボンドに、逮捕された運び屋になりかわって密輸ルートに潜入し、ダイヤを目的地アメリカへ送り届けよ、との指令が下る。

波瀾に富む会心作。

1999/06/14読了
 
05 ロシアから愛をこめて From Russia, With Love 1957年 東京創元社
ロシアから愛をこめて 相つぐ自国スパイの摘発に、失地回復のためソ連情報部は西側の重要スパイを一人、暗殺することにした。

標的は英国情報部のジェームズ・ボンド。実行にあたるのは国家保安省の公式殺人機関スメルシュである。

かくして二重三重の罠が仕掛けられたイスタンブールへ、ボンドは誘い出される・・・・・・。

不死身の快男児が追いこまれた絶体絶命の窮地!冒険活劇の粋を集めたシリーズ最高峰。

1999/09/29読了
 
06 ドクター・ノオ Doctor No 1958年 早川書房
ドクター・ノオ 紫紺の影が波のように通りを覆う黄昏。英国情報部カリブ海域地区の責任者は、本部に定期連絡を取るため静まり返ったジャマイカの高級住宅街を歩いていた。

彼が道にうずくまる三人組の男のそばを通りすぎたとき、突如、三挺の消音銃が火を噴いた。

数分後、今度は支局内で悲鳴が・・・・・・

Mの密命を帯び、ボンドは事態を探るためカリブ海に浮かぶ孤島へと飛んだ。

だが、そこは恐るべき陰謀を企む怪人ノオ博士の根城だったのだ!

1998/10/28読了
 
07 ゴールドフィンガー Goldfinger 1959年 早川書房
ゴールドフィンガー 英国情報部員ジェイムズ・ボンドは、オーリックゴールドフィンガーと名乗る謎の男と出会い、男がカードでいかさまを働くのを見破った。

が、黄金を異常に愛するこの男の正体とは、巨大な犯罪組織を牛耳る怪物だったのだ。

やがてボンドは、ゴールドフィンガーが企む恐るべき犯罪計画に単身闘いを挑んでいく!スパイ小説史上もっとも有名なヒーローが、華麗な活躍を見せる永遠の名シリーズを代表する傑作。改訳決定版。

1998/03/14読了
 
08 サンダーボール作戦 Thunderball 1961年 早川書房
サンダーボール作戦 核爆弾を搭載したNATOの爆撃機が、突如連絡を絶った。

その直後、英国首相のもとに核爆弾と引き換えに一億ポンドの金塊を要求する脅迫状が舞い込んだ。署名はスペクター。悪の首魁ブロフェルド率いる世界最強の犯罪組織が姿を現わしたのだ。

爆撃機の行方を追い、バハマへ飛んだボンドを待っていたのは謎の美女との危険な出会いだった!

海底に展開するボンドとスペクター一味の死闘。冒険活劇の醍醐味あふれる第三弾

1998/04/30読了
 
09 わたしを愛したスパイ The Spy Who Loved Me 1962年 早川書房
わたしを愛したスパイ 今度はわたしが男に牙をむく番だ―そんな決意を秘め、ヴィヴィエンヌはアメリカへ渡った。

イギリスでの生活と、彼女を弄んで捨てた男たちから逃げだして。

が、ここでも男たちの魔手が彼女を襲った。二人組のギャングが、彼女が独りでいたホテルに押し入ってきたのだ。

彼女の窮地を救ったのは、ジェイムズ・ボンドと名乗る謎の男だった・・・・・・

女性の視点からボンド像に光を当て、強烈なスリルとエロティシズムで綴る異色作

1998/06/27読了
 
10 女王陛下の007 On Her Majesty's Secret Service 1963年 早川書房
女王陛下の007 窮地を救い、ボンドが一夜を共にした女性―彼女はマフィアの首領カピューの娘だった。

彼に惚れこんだカピューは、ボンドの宿敵ブロフェルドがスイスにいる事実を突きとめてくれた。

ブロフェルドは伯爵をかたり、なぜか若い女性だけを集めて山中に潜んでいるらしい。

ボンドは准男爵に化け、敵の本拠地へ乗り込む!アルプスに展開する壮絶な追跡行。

ボンドの人生に華麗かつ残酷な歴史が刻まれる注目の一作。改訳決定版

1999/02/02読了
 
11 007は二度死ぬ You Only Live Twice 1964年 早川書房
007は二度死ぬ 愛妻を殺され、傷心のボンドをMは日本へ送りこんだ。

万能暗号解読機を入手するため、そして使い物にならず、解雇寸前のボンドに最後のチャンスを与えるためでもあった。

彼を迎えたのはタイガー田中と名乗る男だった。男は解読機を渡す代わりに、福岡で毒草を栽培する危険な植物学者の殺害を命じる。

ボンドは条件を呑んだ。だが、その学者の写真を見た彼は…!

ボンドの眼を借りた日本観が横溢する注目作。改訳決定版

2000/03/10読了
 
12 黄金の銃をもつ男 The Man with the Golden Gun 1965年 早川書房
黄金の銃をもつ男 任務中に行方不明となり、死亡したと伝えられていたボンドが突然帰国した。

報告を受けるMをボンドの銃が襲った。失踪中に洗脳されたらしい。ボンドの復帰を願うMは、再洗脳後“黄金の銃をもつ男”として恐れられる殺し屋スカラマンガの暗殺を命じた。

この男こそ、西側の情報部員を次々と亡き者にしてきた宿敵なのだ。

ボンドは身分を隠して敵の本拠地キューバに乗り込んでいく!永遠の名シリーズの掉尾を飾る迫力篇。

2000/03/06読了
 
13 バラと拳銃 短篇集 From a View To A Kill 1964年 東京創元社
バラと拳銃 常に生と死の境目で、綱渡りのように危険な任務を遂行する英国秘密情報部員007号、ジェームズ・ボンド。

パリ近郊の森の中に設置されたソ連軍情報機関の破壊、ジャマイカに横行する兇悪なナチ残党の暗殺、ローマからベニスへ通じる麻薬ルートの追跡・・・・・・。

東奔西走、世界を股にかけた不死身の快男児の、胸のすくような冒険の数々。

スリル満点の五編を収めた、ファン待望の一巻!

1999/06/16読了

もし将来に最初からリメイクされて映画化がされることになった場合は、スーパーヒーローではなく小説の主人公に限りなく近い"人間くさい"主人公で製作してもらえることを切に願っています。

【関連リンク】
1559 浅田次郎の歩き方
1472 ハリー・ボッシュシリーズはまだ未完
808 ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ