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1694
ボートの三人男(中公文庫) ジェローム・K・ジェローム

内容は知らず、タイトル買いです。著者は19世紀後半と20世紀初旬に活躍した英国の作家さんです。

原題は「Three Men in a Boat, To Say Nothing of the Dog!」で、基本翻訳のタイトルと同じですが「犬は除く」が付いています。

英国ロンドンに流れるテムズ川はよく知られていますが、19世紀後半においてもその川の流れと周辺の街並みはあまり変わっておらず、貸しボートを借りて仲間と遊んだり旅行をすることがそこそこ人気だったようです。

しかし読んでいても地名だけではいまいちピンとこず、せっかくなので地図とルート、作品に出てくる町や川の堰の名前を一覧化しておきました。ロンドンやオックスフォードにいた人ならなんとなくイメージが湧いてくるでしょう。

3menmap1

◆テムズ川をさかのぼるボートの航路◆
Jとハリーと犬のモンモランシーがロンドンからキングストンまで機関車で移動
キングストン(Kingston) 2人と1匹が貸しボートに乗船
ハンプトン・コート(Hampton Court)
モールジー(Molesey)
ウォルトン橋(Walton Bridge)
ハリフォード(Halliford)
シェパートン(Shepperton)
ウェーブリッジ(Weybridge) ジョージがバンジョーを抱えて合流乗船
ステーンズ(Staines)
ベルウィアーロック(Bell Weir Lock)
ボヴェニー閘門(Boveney Lock)
クッカム閘門(Cookham Lock)
マーロー(Marlow)
ソニング閘門(Sonning Lock)
ハーリー堰(Hurley Lock)
メドメナム(Medmenham)
ハンブルデン閘門(Hambleden)
ワーグレーブ(Wargrave)
シップレイク(Shiplake)
ソニング閘門(Sonning Lock)
レディング(Reading) ストリートリー手前までスチームランチに曳いてもらう
メイプルダーラム閘門(Mapledurham Lock)
ゴーリング閘門(Goring Lock)
ストリートリー(Streatley)
ウォリンフォード(Wallingford)
ドーチェスター(Dorchester)
アビンドン閘門(Abingdon Lock)
スンドフォード閘門(Sandford Lock)
イフリー閘門(Iffley Lock)
オックスフォード(Oxford)

帰りは流れにまかせてパンボーン(Pangbourne)まで下り、そこでボートを置いて機関車でロンドンへ

当初は、真面目な旅行案内書的な内容をかくつもりだったのですが、本題から大きく外れたユーモアがメインの小説になっています。

ただユーモアと言っても、100年前のユーモアで、現在もそれで笑えるか?ということもありますが、素直に苦笑するしかありません。

とにかく話しの行方がどこへいくのかわからないほどあっちこっちへと飛び、今のことなのか、過去のことなのか時々わからなくなったりします。しかしテムズ川上流の優雅な情景が目に浮かぶようなうまい表現が多く、読んでいてリゾート気分になります。

翻訳者が小説家でもある丸谷才一氏で、おそらくその丸谷氏が努力されて、これでも読みやすくなっているのだろうと思います。

面白かったかって?

う~ん、名作らしいのですが、いまいち「なにが言いたい?」「なにが教訓?」「どれがユーモア?」と混乱するところは私の読解力か感受性のなさか、いまいち満足するには至りませんでした。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

叫びと祈り(創元推理文庫) 梓崎優

著者の作品を読むのは今回が初めてです。1983年東京都生まれで兼業作家さんということですから勤め人でもあるのでしょうか。

この作品は実質的なデビュー作で、2010年に出版、2013年に文庫化された連作短篇集で、解説を読むと、当初は最初の短編だけを発表したところ好評で、プラス4作を書いて合計5作品の連作としてまとめたものだということです。

その5作品のタイトルは、「砂漠を走る船の道」「白い巨人」「凍れるルーシー」「叫び」「祈り」です。

最後の「祈り」以外の舞台は外国で、「砂漠を走る船の道」は西アフリカのマリ付近の砂漠地帯、「白い巨人」はスペインのラ・マンチャ地方、「凍れるルーシー」は南ロシア、「叫び」はブラジルのアマゾン流域です。

そうした外国で、不可解な事件が起き、その謎解きをするのが、日本の出版社に勤務する7カ国語を操る日本人青年です。

少し前に読んだ、「アイルランドの薔薇」(石持浅海著)も、こちらは長編小説でしたが似たような感じです。

連作短編と書きましたが、それぞれ5つの作品は完全に独立していて、主人公の日本人青年だけが共通しています。しかも最後の「祈り」はその大活躍した日本人青年が、記憶喪失に陥っていてサナトリウムのような場所に入院しています。

いずれも話がぶっ飛んでいて、その中身にリアリティはありませんが、デビュー作で創作した作品と考えると末恐ろしい新人作家の登場!という感じでしょうか。これからが楽しみな作家さんです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

帰れないヨッパライたちへ 生きるための深層心理学(NHK出版新書) きたやまおさむ

医学生時代には加藤和彦らとザ・フォーク・クルセダーズで一世を風靡したミュージシャンであり、多くのヒット曲の作詞家でもある著者ですが、現在は東京で精神科医として活動されています。

著者の作品は過去に「さすらいびとの子守歌」「戦争を知らない子供たち」「止まらない回転木馬」「人形遊び」の4作を読んでいます。いずれも1970年代のことで今から50年近く前のことです。

たまたま懐かしい名前を新書コーナーで見つけたので買って読みましたが、以前の著作とはまったく違い、精神分析医療に関わる話しが中心で、あまり馴染みがないこともあり意味不明でした。

こうした実際に経験してきた治療に関しての話しは、医学的なレポートや論文ならともかく、こうした新書で書くには例え匿名にしたとしても書くのは難しそうです。

なので、自分が経験した芸能界からの逃避や、英国で師事した専門家の話、その他精神医学でよく言われていることなどの話しが中心となります。

それならそれで、おそらく出版社の人から強く勧められたのだと思いますが、「昔のふざけたコミカルソング」を彷彿とさせる「帰れないヨッパライ」などタイトルに使わなければ良いのにと思ってしまいます。

専門書ともエッセイとも違うちょっと中途半端なものになってしまったのは残念です。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

親鸞 完結篇(上)(下)(講談社文庫) 五木寛之

2010年に「親鸞」、2012年に「親鸞 激動篇」が出版され、三部作最後のこの作品が2014年(文庫は2016年)に発刊されました。元々は東京新聞や中日新聞、京都新聞など多くの地方紙で連載されてきた小説です。

過去に前2作は読んでいます。

2014年5月前半の読書と感想、書評(親鸞)
2014年12月前半の読書と感想、書評(親鸞 激動篇)

浄土真宗の宗祖、親鸞聖人が主役の小説で、これは伝記ではなく小説なのでエンタメ性がかなり盛られているようですが、大きな流れとしては判明している限りにおいて人生をなぞってはいるようです。

この完結編の時代背景は13世紀中盤、鎌倉時代の京都で、前作の激動篇では、誰でも念仏を唱えれば浄土へいけるという専修念仏に対し、比叡山や奈良の古寺勢力からの反発があり、民衆を惑わすと後鳥羽上皇から法然らとともに地方へ流罪となり、越後、そして東国(茨城)へと地元の名士達の協力を得ながら布教を継続していきます。

この完結篇では、60才を超えた親鸞が、東国から再び京都へと戻ってきます。そして90才で入滅するまでの様々な出来事が描かれています。

親鸞がまだ若い時に京都で知り合った多くの人達が再登場します。親鸞を慕うものもあれば、敵視するものもあり、様々な思惑が交錯し、さらに身内の長男までもが反発して東国へと旅立ってしまいます。

しかしこの時代に90才まで生きるというのは、もうそれだけで常人ではなく奇蹟の人でしょう。鎌倉時代の平均寿命は24才ということで、これは出産時や子供の頃に亡くなる子が多かったことからそうなりますが、それでも70才を超えて健在なのは極めて珍しいことでしょう。

昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出てきた源頼朝は51才、主人公の2代目執権北条義時は61才、その息子3代目北条泰時は59才、姉の北条政子は68才で亡くなっています。

過去には親鸞を主人公にした小説やそれを原作とした映画がいくつか作られています。この五木親鸞もいつかは映画化されるかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(五木寛之)

【関連リンク】
 1月前半の読書 志賀越みち、ファーストラヴ、一八八八切り裂きジャック、帰郷
 12月後半の読書 鬼棲む国、出雲 古事記異聞、A、厭な物語、君たちはどう生きるか
 12月前半の読書 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人

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1692
読書をして個人的な趣味趣向でそれぞれランクづけをしていますが、その中から毎年年間ベスト(大賞)を選んでいます。

内容によって「新書/ビジネス/ノンフィクション」「海外翻訳小説」「日本国内小説」の3部門に分けて独善的に評価をしています。

そしてその書籍というのは、数多くの賞と違って、私が前年に読んだ本から選びますので、新刊本はほとんどなく、小説に至ってはほぼ文庫しか読まないので、中には古典に分類されるような本もあります。

  ◇   ◇   ◇

2022年の1年間で読んだ本の合計は作品数が99作品、上下巻を2冊とカウントする冊数では107冊となりました。一昨年の2021年と比較すると作品数で+6作品と増加しましたが、冊数では▲5冊と減少しました。

2013年から10年間の冊数と作品数の推移は下記の表の通りです。年間の読書した冊数は98~117冊で、平均すると年間108冊、1ヶ月当たり9冊平均で読んだことになります。

新書
ノンフィク
冊数 海外小説 冊数 日本小説 冊数 作品数計 冊数計 月間平均
冊数
2022年 11 11 15 16 73 80 99 107 8.9
2021年 22 22 13 21 58 69 93 112 9.3
2020年 29 30 14 19 51 56 94 105 8.8
2019年 29 29 8 9 71 77 108 115 9.6
2018年 26 26 9 13 64 71 99 110 9.2
2017年 26 26 16 21 62 70 104 117 9.8
2016年 14 14 12 16 65 79 91 109 9.1
2015年 17 - 12 - 65 - 94 107 8.9
2014年 26 26 17 13 70 62 113 101 8.4
2013年 - - - - - - 86 98 8.2

2020年に仕事から引退しましたが、その前と後で読書した冊数に大きな差はありません。おかしいな?暇な時間が増えたはずなのに、、、

  ◇   ◇   ◇

それでは、まず「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」です。

2022年は11作品(冊数)と例年の半分以下という少なさでした。やはりビジネス界から身を引くと、新書やビジネス書への興味は失われていきます。

そして今回のこの部門では残念ながら「たいへん面白かった(役に立った)」という★3つをとった作品がなく、「宇宙を読む」「無人島に生きる十六人」「生きて帰ってきた男」など優秀な作品が多かった当たり年の昨年とは大きく変わってしまいました。

しかし受賞なしというのも寂しいので、今回は「新・日本の階級社会」(橋本健二)、「戦国時代の大誤解」(鈴木眞哉)、「老いた家 衰えぬ街」(野澤千絵)、「異常快楽殺人」(平山夢明)の4候補の中から、、、

戦国時代の大誤解」(鈴木眞哉著)が大賞を受賞しました!

パチパチパチ

パチパチパチ


著者はかつて戦国時代に活躍した和歌山の傭兵集団雑賀衆の子孫の方で、2007年に発刊された新書です。

感想は、「5月前半の読書と感想、書評(戦国時代の大誤解)」に書いています。


  ◇   ◇   ◇

「海外小説」は、15作品で16冊を読みました。ー昨年2021年と比較すると作品数は2作品増えましたが、冊数としては5冊減りました。

その15作品の中から候補は「解錠師」(スティーヴ・ハミルトン)、「ペスト」(カミュ)、「追撃の森」(ジェフリー・ディーヴァー)、「IQ」(ジョー・イデ)の4作品の候補から、、、

今回は甲乙つけがたく2作品、「ペスト」カミュ著と、「追撃の森」ジェフリー・ディーヴァー著に決定しました!

パチパチパチ

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「ペスト」の感想は、「10月前半の読書と感想、書評(ペスト)

「追撃の森」の感想は、「8月後半の読書と感想、書評(追撃の森

「ペスト」は、古い小説ですが、コロナ禍に読むと、目には見えない未知のウイルスとの壮絶でむなしい戦いが身近に感じられます。

また「追撃の森」は、広大な自然公園の中で、殺し屋と女性保安官とが知力を絞った一昼夜の息詰まる攻防戦を描いていますが、物語にグイグイと引き込まれていき、最後のどんでん返しなど、なかなか楽しめる小説でした。

  ◇   ◇   ◇

「国内小説」は、最も多い73作品、80冊を2022年の1年間に読みました。前年から15作品、11冊増加しています。

その73作品の中から、印象深い「サラバ(上)(中)(下)」(西加奈子)、「ヒトラーの試写室」(松岡圭祐)、「蜜蜂と遠雷(上)(下)」(恩田陸)、「カズサビーチ」(山本一力)、「追想五断章」(米澤穂信)、「ツリーハウス」(角田光代)の6作品が大賞候補となります。

その中から、、、迷いつつ、、、

カズサビーチ」山本一力著に決定しました!

パチパチパチ・・・

パチパチパチ・・・


読書感想はこちらです。
2022年10月後半の読書と感想、書評(カズサビーチ)

タイトルからイメージしていた内容とまったく違う展開で、鎖国が続く幕末時代を背景に、アメリカの捕鯨船を中心に、遭難した日本人漁民を救助し、日本へ送り届けようとするアメリカ船と、前例がない江戸近くへの外国船入港を許すかどうかというストーリーです。

こうした実際に起きた出来事を下敷きにした歴史小説はとてもリアリティがあり、個人的にはとても好きです。

そう言えば、著者の山本一力氏は、ちょうど10年前、「2012年に読んだ本のベスト」で、時代小説の「あかね空」が大賞を受賞しています。


そして僅差の次点には「蜜蜂と遠雷(上)(下)」恩田陸著を選びました。

パチパチパチ・・・

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読書感想はこちら
2022年4月前半の読書と感想、書評(蜜蜂と遠雷(上)(下))

こちらは直木賞を受賞した作品ですが、私的にはまったく馴染みのなかった国際ピアノコンクールの舞台裏や、人生をかけた参加者達のピリピリした様子など、読んでいて迫力があり、感情移入もしやすく良い小説だと思いました。

その他の「サラバ」や「ツリーハウス」「追想五断章」「ヒトラーの試写室」も、決してなにかが劣っているわけではなく、十分に楽しめる面白い作品でした。あくまで個人的な趣味趣向で選んでいるだけです。

【関連リンク】
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
1401 2019年に読んだベスト書籍

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志賀越みち(光文社文庫) 伊集院静

2010年に単行本が発刊されてずっと文庫化されるのを首を長くして待っていたら、ようやく昨年末(2022年12月)に文庫版が発刊されました。単行本から文庫になるまで12年もかかるのって珍しくないですか?なにか事情でもあったのでしょうかね。

それはともかく、ベタベタな恋愛小説のこの著作は、私も何度もクルマで走ったことがある志賀越みち(=山中越え)が最初と最後に出てくる小説で、志賀と言っても信州の志賀高原ではなく、滋賀県にかつてあって現在は大津市に吸収されている志賀町から、比叡山の中腹を通って京都の白川へ通じている険しい山道のことを指しています。

時代は昭和30年代、主人公は東京の大学生で、大学で知り合った京都祇園の芸者置屋の息子に誘われ京都へやってきます。

そして朝の散歩中に建仁寺で熱心にお参りする女性に一目惚れし、その女性が祇園でも有名な舞子さん(芸者さんの卵)で、、、という禁断の恋が始まって、、、。わかりやすいドラマです。

祇園の掟というか、当時は現在と比べてもより保守的で男尊女卑な世界がまだ残っている中での恋愛物語は読んでいても新鮮な感じがします。

様々な祇園の行事や、見習いからスタートし、舞子、芸者へと上に登っていく色町の世界、踊りや所作の厳しさ、上客との関係など、様々なしきたりや風俗が垣間見られてなにか行った気になれて楽しめます。

今でこそ、舞子や芸者の世界に飛び込むのは、第一に本人の希望があってのことですが、昭和30年代と言うとまだ、悪い言葉で言えば口入れ屋を通して10代初めの娘をお金で売ってしまうというようなことがおこなわれていた時代です。

そうした不幸を背負いながらも一所懸命に日本有数の花街・祇園で生きていこうとする女性と、裕福な家庭の大学生で、長期間学校を休んで親の金で京都や金沢でブラブラ遊んでいる男との恋愛ですから、これはもう女性を泣かす悲恋に終わるだろうと思うのは火を見るまでもなく明らかです。

京都にはあまり縁がないと思っていた著者ですが、よく調べて書いてあり、本当にしばらくそこに住んでいたのだろうか?と思うような祇園の風景描写が素晴らしいです。

★★★

著者別読書感想(伊集院静)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ファーストラヴ(文春文庫) 島本理生

2018年に単行本、2020年に文庫化され、2018年の直木賞を受賞したミステリー小説です。

また2020年にはテレビドラマ、2021年には、堤幸彦監督、北川景子、中村倫也などの出演で映画が製作されています。

内容はまったく知らずに読み始めましたが、タイトルから「中高生の甘ったるい青春恋愛もの?」と思ってましたが大きく外れてしまいました。

女子大生でアナウンサー志望の女性が、入社試験を途中で離脱して画家で美術学校の講師を勤める父親の職場へ行き、そこで父親を刺殺して逃げるという事件が起きます。女性はまもなく逮捕され、犯行を自白します。

主人公は有名になりたいという野心をもった臨床心理士の既婚女性で、その主人公の夫の弟が上記加害者の弁護人となり、二人でどうしてこの事件が起きたのかを調べて行きます。

殺された父親の言いなりだった母親、加害者の幼馴染みの親友、父親の同僚、父親が自宅でおこなっていた絵画教室の参加者、加害者の元恋人など多くの人物から話しを聞きますが、謎はなかなか解けません。

様々なところに伏線は引かれていますが、結局はその根っこは思わぬところにあって意外性に驚かされるというか、これでは謎解きは無理という話です。

こうした小説では、熱血弁護士や弁護士から調査を依頼された探偵が主役で活躍するというストーリーが多いですが、臨床心理士を主役にしたのはうまいやり方でしょう。

ただ現実的には、警察や弁護士、医師ならともかく、臨床心理士に心開いて正直にプライベートな話しをしてくれる人はそうはいないだろうと思いますが。

これが直木賞?と、ちょっと意外な感じもしましたが、主人公の女性や担当弁護士もそれぞれ子供の頃に家庭的な問題を引きずっていて、そうした中で、加害者女性の家庭問題に深く関わっていくという多重的な内容が評価されたのかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(島本理生)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

一八八八切り裂きジャック(角川文庫) 服部まゆみ

1996年に単行本、2002年に文庫化された長編ミステリー小説で、タイトル通り19世紀末1888年に英国ロンドンで起きた6件(5件という説もある)の連続殺人事件「切り裂きジャック(Jack the Ripper)」事件をモチーフにしています。

著者の小説は過去に読んだことがあると思っていましたが、調べると今回が初めてだというのに気がつきました。著者は1948年東京都生まれで2007年に52歳の若さで亡くなられています。

切り裂きジャックがロンドンの貧民が多く住む地域で娼婦ばかりを狙って次々と殺害し、同時に短時間で全身を解剖するかのように内臓を取り出し切り刻むという手口は、そこの住民だけでなく英国中を震撼させました。

結果的に犯人は捕まることはなく、同様の殺害はなぜか収束しましたが、当時から現在まで130年以上様々な憶測や推理がされ続けています。

本著では、その事件に偶然立ち会うことになった二人の日本人留学生(ひとりはロンドン警察、ひとりはロンドン病院勤務)が、この小説では主人公として活躍します。

こうした実際の歴史をベースにしたシチュエーションは、小説では時々ありますが、個人的には背景などがわかりやすく好きです。ただリアルとフィクションが混ざりますが、結果としての歴史は変わらないので結末に大きな衝撃はありません。

最近読んで面白かったのは、松岡圭祐著の「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」「ヒトラーの試写室」などです。

切り裂きジャックが跋扈した当時、日本は明治維新(1868年)後に西洋文明に早く追いつこうと、法律、政治、医療、軍事など様々な分野で欧米に留学生を送っていたことから、小説では国を背負って医学や警察の研修を受ける公費留学生達に主人公を仕立て上げています。

同じく同時期にドイツへ留学していた?若い頃の森鴎外(森林太郎)や北里柴三郎も登場します。

また切り裂きジャック事件とは別に、その事件が起きた地区にはロンドン病院があり、当時その病院の地下には「エレファントマン」という名前で有名になった病気で極度の奇形となったジョゼフ・ケアリー・メリックが見世物小屋から保護され暮らしていたことから、それとの関係性に気がついて事件と関わりがあることを突き止めていくことになります。

その他にも、18世紀後半に蝋で精密に作られた人体解剖モデル、「解体されたヴィーナス」で有名なクレメンテ・スシーニの作品が出てきて一気に怪奇ムードが増幅されます。

殺害された人物や王室、警察関係者、病院関係者などは実名で登場しますので、関連記事や歴史書と比較して読むとその時の緊迫した模様がヒシヒシと伝わってきます。

ただ、この手の小説としては、文庫本で769ページと長く、いろいろ詰め込みすぎって気もします。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

帰郷(集英社文庫) 浅田次郎

2016年単行本、2019年に文庫化された短篇集です。長編小説も素晴らしいけど、短編小説の名手でもあります。現在活躍中の日本人の作家さんでは、著者と奥田英朗の二人が突出している気がします。

収録されているのは「歸鄕」「鉄の沈黙」「夜の遊園地」「不寝番」「金鵄のもとに」「無言歌」の6篇です。

いずれも太平洋戦争時の下級兵士または元兵士を取り上げていて、南方の総員玉砕の激戦地から奇跡的に帰還してきたものの帰る場所がない男や、本来は後方で兵器の修理をする技術者が最前線に送り込まれ、逃れようがない立場に陥る話しなど、「泣かせの浅田」の本領発揮、すべての物語に悲哀がつきまといます。

その中でも唯一ホラーとファンタジーの中間的な「不寝番」は、著者自身が陸上自衛隊で経験したことがあると思われる当番制で夜間の見張りに立つ不寝番で、なぜか旧陸軍の兵士へ不寝番を変わることになってしまう話し。

陸上自衛隊の富士の隊舎は旧陸軍時代からそのまま使われていますが、そこで不寝番をしていた隊員(士長)が時間が来たので次の当番を起こしにいきます。そして起きてきた当番の上等兵(旧陸軍の階級)に不寝番の申し送りをしますが、お互いちょっと違和感を感じてしばらく話しをすることになります。

最後の「無言歌」に至っては、仲の良い二人の兵士が夢で見たことを互いに話し合うストーリーですが、それは実は特殊潜航艇の中で、しかも故障して海底に着底してしまい、まもなく酸素も尽きようかという涙なしでは読めません。

★★★

著者別読書感想(浅田次郎)

【関連リンク】
 12月後半 鬼棲む国、出雲 古事記異聞、A、厭な物語、君たちはどう生きるか
 12月前半 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人
 11月後半 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬


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明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

今年も年初の一発目は読書感想からです。

1687
鬼棲む国、出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

著者の作品を読むのは今回が初めてです。著者は私と1年違いの1958年生まれの歴史作家さんですが、元々は大学の薬学部卒の薬剤師さんで、ちょっと変わった経歴です。

薬学部出身と言うことから、薬殺メインのミステリーか?というと、特にそういうものではなく、歴史シリーズものが多く、今回の作品も「古事記異聞シリーズ」の最初の作品で、2018年に単行本、2020年に文庫化された歴史発掘?小説です。

なぜこの本を読んだかというと、近いうちに出雲大社など島根県へ旅行に行きたいと考えていて、その時の観光の参考になるかな?と思ってのことで、内容は知らないままタイトル買いです。

出雲とその歴史に興味を持ったのは、以前読んだ加治将一著「舞い降りた天皇」からで、その時も古事記や日本書紀などに書かれた神話の世界が面白く読めました。

その後に読んだ今邑彩著「よもつひらさか」や桐野夏生著「女神記」にも出雲町にある現世と黄泉との境目「黄泉比良坂」の話が出てきます。

今回の小説では主人公の女子大生が就活に失敗し、仕方なく?大学院へ進むことになり、入れてくれることになった民俗学研究室で「なにを研究するの?」って聞かれてパッと思いついた「出雲」と答えてしまい、様々な謎を調べるために出雲へ向かうという話しです。

専門家の人が読めば穴だらけなのかも知れませんが、歴史素人の観光客(私)にとってはこれぐらいの知識でも十分過ぎます。小説ではすっ飛ばされましたが、「荒神谷遺跡」や「加茂岩倉遺跡」の見どころや、奥出雲のたたら製鉄についてもう少し詳しく知りたかったです。

あ、それは続編の「古事記異聞 オロチの郷、奥出雲」の中で出てくるのかな?まだ読んでないのでわかりませんが。

櫛にまつわる神話の話と、それに紐付いた殺人事件というのが無理矢理ストーリーの中に詰め込まれますが、それはあまりにも突拍子もなく、そういうところがちょっと残念でした。

しかし、ますます出雲への旅が楽しみになって来ました。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

A(河出文庫) 中村文則

2014年に発刊、2017年に文庫化された13篇からなる短篇集で、それぞれ「糸杉」「嘔吐」「三つの車両」「セールス・マン」「体操座り」「妖怪の村」「三つのボール」「信者たち」「晩餐は続く」「A」「B」「二年前のこと」のタイトルがつけられています。

内容はと言うと、なかなか難しく、簡単には表せません。私にとっては意味不明という意味も込めてです。

特に人物がまったく登場しない「三つのボール」などは読むのが面倒で、ほとんど読み飛ばしました。

この作家さんの小説は過去に4作品を読んでいますが、いずれも長編でそれなりに楽しめましたが、今回のような短篇集はもう結構という思いです。

著者別読書感想(中村文則)

★☆☆

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厭な物語(文春文庫) アガサ・クリスティ他

アガサ・クリスティー、パトリシア・ハイスミス、モーリス・ルヴェル、ジョー・R.ランズデール、シャーリ・ジャクスン、ウラジミール・ソローキン、フランク・カフカ、リチャード・クリスチャン・マシスン、ローレンス・ブロック、フラナリー・オコナー、フレドリック・ブラウンの世界の11人の名手たちが書いたイヤミス系、ホラー&ミステリー短篇を集めたアンソロジーです。

知っている作家さんもあれば、今回初めて知る(読む)作家さんもあり、こうした寄せ集め的な作品はあらたな作家さんを知ることにも役だっていいものです。

その中には買える作品は全部買って読んでいるローレンス・ブロック作品が収められているのは嬉しい驚きでした。「おかしなことを聞くね」や「殺し屋ケラー」シリーズなど短篇作品では光るものがありますから。

クリスティは別格として、その他にも有名なカフカや、「太陽がいっぱい」「見知らぬ乗客」など原作が映画化されたミステリーを多く残したハイスミスなど読んでいて飽きません。

アメリカの作家が多いので、善人や小悪人が理由もなく銃でバンバン殺されるシーンや、陵辱、人食いまでまったく狩猟系民族のイヤミスは日本の陰湿なものとは違って桁外れに嫌な気分全開です。

しかし解説にも書かれていましたが、こうしたイヤミスはなにも現代にだけ特別流行したわけではなく、古くから神話や宗教書、童話(グリム童話など)などにも多く出ていてそれが「人間の怖いもの見たさ」の性と言えるのでしょう。

ただ欧米のこうした明るいイヤミスは、国内ではあまりにもリアリティがないので、どこか遠くの世界か宇宙の果てで起きていそうなことぐらいにしか感じられません。その点、日本人作家のイヤミスは、暗く湿っぽくていかにも日本独自なんだなぁというのを実感します。

★★☆

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君たちはどう生きるか(岩波文庫) 吉野源三郎

2017年(平成29年)に大ヒットした羽賀翔一氏のマンガ「漫画 君たちはどう生きるか」は書店でよく見かけたので知っていましたが、その原作となった本書や著者吉野源三郎氏のことは恥ずかしながらよく知りませんでした。

著者は明治32年(1899年)生まれ、1981年に82歳で亡くなっています。戦前に社会主義系団体に入り治安維持法違反で逮捕されるなど左翼系の編集者でジャーナリスト、評論家、思想家、反戦活動家ですが、戦後民主主義の立役者とも言える人です。

本書以外にも、多くの著作を遺していますが、共通するのは戦前戦中に痛い目に遭った軍部や軍人を嫌う反戦思想が貫かれていることでしょう。

この小説が最初に出たのは1948年のことで、新潮社が少年向きの作品を集めた日本少国民文庫として発刊されました。その後何度か改訂されたり、読みやすいように現代語に変更したりしていくつかの出版社から刊行されています。

太平洋戦争に敗れて人心が荒れていた戦後すぐに、子供の教養教育のひとつとして書かれたもので、わかりやすい内容で、学習、教養の大切さや友情、貧富格差、職業などについて主人公の中学生コペル君と、指導役の叔父さんとのやりとりを中心に書かれています。

時代背景は戦後まもなくということから、現代の風習とは異なっていますが、内容的に古くさくはなく、いつの時代でも重要な事柄ばかりで、現代人が読んでも腑に落ちることばかりです。

そして、戦後小説などに良くあるどん底の貧しさからの成功物語と言ったものではなく、父親は早くに亡くしていますが比較的裕福な家庭のお坊ちゃんを主人公として、学校で同じクラスの貧しい家庭の子供や、さらにもっと裕福な子供、軍政時代から変わらない旧態依然の上級生でいじめっ子達との対峙など、身近な事柄を通じた成長物語です。

大人が読んでどう思うかはそれぞれだと思いますが、自分の子供の頃を思い起こして、比べてみるのも面白いかも知れません。

★★☆

【関連リンク】
 12月前半 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人
 11月後半 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男


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レンブラントをとり返せ(新潮文庫) ジェフリー・アーチャー

原題は「Nothing Ventured」で2019年に出されたこの作品の翻訳版は2020年に発刊されました。この作品は、「クリフトン年代記」の中に登場する架空の主人公のひとりが人気作家で、その作家が書いたベストセラーが本著と言うことになっています。

「Nothing ventured, nothing gained」は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざで有名ですが、その前段だけですから直訳すれば「危険を冒さなければ」とでもなるのでしょうか。もうちょっと意訳すれば「当たってくだけろ!」的な感じかな。

翻訳版では小説の内容を説明するかのようなつまらない説明をグダグダつけた副題を含む正式名は「レンブラントをとり返せ-ロンドン警視庁美術骨董捜査班-」と長ったらしいタイトルがつけられています。早川書房の編集部だと、こういう大御所の作品にこんなベタなタイトルはつけないでしょう。

ともかく、美術館から盗まれたレンブラントの最後の作品と言われている「アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち」をロンドン警視庁美術骨董捜査班に入った主人公の若きヒーロー刑事が取り戻すというタイトルそのもののたわいもない話です。

同時に、美術館で知り合った婚約者の父親が、理不尽な取り調べと裁判によって殺人罪で刑が確定し収監されていることを知り、著名な弁護士である主人公の父親が一肌脱ぐというその二本立てストーリーが並行して進みます。

もちろんハッピーエンドで終わりますが、このシリーズはしばらく続くそうで、そのためか、主人公が追いつめた大物悪役は生き延びて次回作へ引き続き主人公を悩ますことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(ジェフリー・アーチャー)

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カササギたちの四季(光文社文庫) 道尾秀介

2011年に単行本、2014年に文庫化された連作短篇小説集です。2010年に「月と蟹」で直木賞を受賞した直後の作品です。

四季を意識した「鵲の橋」「蜩の川」「南の絆」「橘の寺」の4篇のミステリー短篇からなっています。

主人公は郊外にあるリサイクルショップを友人と二人で始めたのは良いけれど、客の押しに弱くて高く買い取り安く売ってしまうと言う儲からない商売をやっています。

タイトルのカササギは鳥のことではなく、その事業を一緒に始めた友人の名前です。その友人はいつも「マーフィーの法則」を愛読していて、ミステリー好き、事件や謎が起きると推理を始めますが、いつもちょっとピント外れで、主人公が裏でリカバリーしていくという流れです。

なにか連続ドラマなど映像化を視野に入れたというか、すぐに安上がりに制作できそうな舞台装置と内容ですからきっとそのうち実現するでしょう。

この短篇での設定には無理がいっぱいありそうですが、リサイクルショップで起きるミステリーというのはうまい設定です。

というのは、昔から東洋西洋問わずミステリーが起きる場所として、古書店や骨董品店などが舞台となることがよくあり、現代で言うならそれはリサイクルショップと言うことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(道尾秀介)

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仔羊の巣(創元推理文庫) 坂木司

たまたま同時期に読んだ道尾秀介著「カササギたちの四季」(2011年)と似たような展開(書かれた時期はこちらのほうがかなり前です)の連作短篇小説で、2003年に単行本、2006年に文庫化されています。

いわゆる「ひきこもり探偵シリーズ」の2作目で、シリーズ1作目の「青空の卵」(2002年)は2011年に読んでいます。

ストーリーはワンパターンで、引きこもりの友人を持つ20代も後半の主人公が、日常起きる謎などを引きこもっている友人に話聞かせ、時には目の前で問題を解決してくれるという流れです。

その謎が無理に作られたようなものではなく、十分にあり得そうな設定なのでストーリーに引き込まれていきます。よくできています。

今回は、主人公が働いている外資系保険会社の同僚や、木工細工の講師をしている老人、いつも利用している地下鉄の駅員など脇役が良い味を出していて、物語に膨らみを持たせています。

ほんわかと優しい気持ちにさせる内容もあり、落ち込んでいるときに読むと良いかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(坂木司)

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異常快楽殺人(角川ホラー文庫) 平山夢明

著者の作品は今回が初めてですが、1961年生まれのホラーや怪談話を得意とする作家さんです。

数多くの小説を書いておられますが、今回読んだのは著者のデビュー作品となる1994年に単行本、1999年に文庫化されたノンフィクションの犯罪録です。

大量殺人犯、エドワード・ゲイン、アルバート・フィッシュ、ヘンリー・リー・ルーカス、アーサー・シャウクロス、アンドレイ・チカチロ、ジョン・ウェイン・ゲーシー、ジェフリー・ダーマーなどの生い立ちや異常な犯行などをこれでもか!と、グロテスクに露わにしています。

簡単に登場人物(メインでなく同類の犯罪者として出てくる加害者も含む)のプロフィールを書いておくと、

エドワード・ゲイン(1906年~1984年)
アメリカ人。2人の殺人及び墓から9体の遺体を盗掘。死体の皮膚や骨を使って日常品を製作。小説(映画)「サイコ」や「悪魔のいけにえ」に影響を与えた。

クノー・ホフマン(1931年~?)
ドイツ人。殺人の他、墓地や遺体安置所から遺体盗難、屍姦、人肉食。

アルバート・フィッシュ(1870年~1936年)
アメリカ人。数多くの子供や成人を殺害。屍姦、死体損壊、人肉食。

フィリップ・ハーマン(1879年~1925年)
ドイツ人。50人以上の殺人、人肉食。自分が経営する精肉店で人肉を食用肉に混ぜて販売。

ヘンリー・リー・ルーカス(1936年~2001年)
アメリカ人。母親含め100件を超える殺人を自供。死体損壊、人肉食。「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデル。

アーサー・シャウクロス(1945年~2008年)
アメリカ人。陸軍でベトナム従軍。ベトナムでの残虐行為を公言。帰国後11人の殺人で有罪。死体損壊、人肉食。

アンドレイ・チカチロ(1936年~1994年)
ロシア(旧ソ連)人。52人を殺害。小説「チャイルド44」(2008年)、映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2015年)のモデル。

ジョン・ウェイン・ゲーシー(1942年~1994年)
アメリカ人。少年を含む33名を殺害。パーティなどでピエロに扮することが多かったことからキラー・クラウン(殺人ピエロ)の異名を持つ。スティーヴン・キング著の小説「IT」(1986年)にモデルの要素が加わっている。

ジェフリー・ダーマー(1960年~1994年)
アメリカ人。17人の青少年を絞殺。屍姦、死体損壊、人肉食

人肉食(カニバリズム)や殺害方法、死体損壊の方法、子供への性的虐待などがリアルに出てきますので、気の弱い人や、怖くて夜寝られなくなる人は無理かも。

映画などで描かれるショッキングなシーンもアレですけど、事実は小説より奇なりというのがよくわかります。

しかし一部は時代がかなり古いとは言え、またアメリカのような広大な土地の中に家があるとか特殊性ゆえかも知れませんが、ひとりで何十人も誘拐し、殺し、捨ててもなかなか捕まらなかったというのも驚きです。

どうしてこういう種類の本を読んだかと言えば、凶悪犯罪を犯す人物にはなにか共通すること(幼児体験とかトラウマなど)があるのだろうかということに興味を覚えたのと、元々犯罪記録や裁判記録に関心があったのと、ビジネス界から引退してからまったく脳への刺激がなくなってしまい、これでは早くボケそうと思い、少し揺さぶってみようという魂胆からです。

んで、刺激されたかって?気持ち悪いだけでした。

★★☆

【関連リンク】
 11月前半の読書 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師

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