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燃える部屋(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー

「刑事 "ハリー・ボッシュ" シリーズ」の17作目となる作品で、前作に続き、定年延長で古い未解決事件を再調査する部門で刑事を続けています。

このハリー・ボッシュを主人公とするシリーズは、今から30年前の1992年のデビュー作「ナイトホークス」から2017年の「汚名」まで20作品が出版(翻訳)されています。

ベトナム帰りで若々しかった主人公ハリー・ボッシュも老練の域に達していて、相棒には若手の刑事を教育する係として、刑事になって間もない女性新人刑事がつけられます。

日本でも20年前に起きて迷宮入りしていた殺人事件を、別の犯罪でDNA検査をした結果、その殺人事件の加害者だと判明して逮捕したということが昨年ありました。

20年前はまだ科学捜査が十分できなかったことでも、最新の技術で犯人を割り出すことが可能になってきました。

今回は10年前に銃撃され命は助かったものの体内に銃弾が残ったままで取り出せず、その銃弾がどの銃から発射されたものか調べられなかったのが、被害者が死亡したことで、その銃弾を初めて分析にかけることができ、未解決事件担当へ回ってきます。

また新たに相棒となった女性新人刑事が、子供の頃に預けられていた未認可保育所での放火事故で、多くの仲間を亡くしています。その女性が刑事になったのも、その事件を密かに調べて犯人を突き止めたいと思っていることが判明します。

やっかいな過去の事件を二つを抱えて、ボッシュ刑事は定年前とは思えない活発な行動力で、活躍するという出来過ぎストーリーです。

読む方も、二つの事件(実は3つの事件)の関係者が次々と出てきますので、なにがなにやら、誰が誰だか、複雑な関係で混乱してきますが、巻頭の登場人物一覧を首っ引きでなんとか理解ができました。

日本の小説では、こうした登場人物一覧がないのが多いので苦労するときもありますが、外国人の名前は日本人にはとっつきにくいのと、同一人物でも本名とニックネーム、呼称(少佐とか)が混り、よりわかりにくいから一覧が必要なのでしょう。

★★☆

著者別読書感想(マイクル・コナリー)
ハリー・ボッシュシリーズはまだ未完 2020/10/3(土)

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朝日新聞がなくなる日 “反権力ごっこ"とフェイクニュース(ワニブックス) 新田哲史、宇佐美典也

2017年発刊の単行本で、こうした時事的な内容は、さすがに5年前の話となるとちょっと古くさく感じます。

読売新聞社出身で現在は池田信夫氏を信奉している新田氏と、元経産相官僚だった宇佐美氏の二人だけの対談という型式で話は進んでいきます。

内容的には、慰安婦問題の誤報記事と、蓮舫議員の二重国籍問題について、これでもかってぐらいに何十ページも使ってしつこく、ねちっこくほじくり返すばかりで、本のタイトルほど深掘りしたものではありません。

逆に言えば、他に問題は見つからないのかも知れません。

特に、二人の朝日新聞に対する見方が違っていて、新田氏は徹底的に朝日新聞をこきおろしますが、宇佐美氏はずっと冷静沈着で、鋭い分析をして朝日新聞にもっと頑張ってもらいたいという愛情が感じられます。

それに新田氏の「そもそも・・・」が3行で2回とか煩雑に出てきて、この本で「そもそも」が100回ぐらい出てくるのではないでしょうか(ちょっと大げさ)。きっと口癖なのでしょうけど、妙に鼻につきます。

小学生の頃から50年近く(途中数年は他紙に浮気したことがあり)朝日新聞を読んできた私としては、そりゃこれだけ巨大な組織なら、変わった考え方をした記者や、中立的な思想ではない編集者もいっぱいいるだろう?ぐらいに思っています。

それは新聞社以外のマスメディア、NHKでも、報道のTBSでも同じで、巨大メディアはそういうものと思うしかありません。

逆に小さなメディアこそ、それらに輪をかけて誤報や偏向が日常茶飯事で、特にネットメディアにいたっては、ニュースと言えば他のネットから拾ってきたものばかりで、プロとは思えない勘違いや誤字だらけというていたらくな低質なものがほとんどです。

朝日新聞が、時の権力になびいてしまうことこそもっとも危険なことですから、今のまま、反自民、反内閣、反官邸で良いと私を含めたリベラルな高齢者の多くは思っていて、それが存在価値でもあるのでしょう。

★☆☆

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傀儡に非ず(徳間時代小説文庫) 上田秀人

本業は歯科医という、私と同年代で、江戸や戦国時代の小説をメインにされてる著者の作品を読むのは今回が初めてです。

本著は2016年に単行本、2019年に文庫化された戦国時代の荒木村重を主人公とした時代小説です。

通常この時代ならば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、稀に千利休や黒田官兵衛、石田三成、毛利元就、前田利家、真田幸村あたりがメインとなりますが、荒木村重が主役というのは珍しく、偶然手に取ってみてすぐに読みたくなりました。

ドラマや映画に登場する荒木村重と言えば、平身低頭で織田家臣団に加わり(信長から刀に突き刺した餅を差し出され、そのまま手を使わず口を大きく開けて食べたという逸話は有名)、その後何度も主君だった織田信長を裏切り、果ては織田勢に包囲されると家族や家臣を置き去りにして信長と対立していた中国地方の毛利家の元へ逃げ去り、侍らしくないばかりか茶人となり、さらには僧侶となり、秀吉が天下統一した後になってから、中央(当時は大坂)に許しを得て流れてくるという描かれ方をするのがほとんどです。

この小説ではタイトルにもあるように、傀儡(くぐつ)、つまり時代の寵児信長の「操り人形」ではないぞという、ひとつ芯の通った知的な武者として描かれています。なので、下克上を成し遂げたやり手の武将ながら、最後は卑怯者というイメージとは異なります。

単なる一家臣だった主人公が、信長に抵抗しようとする主人を裏切り城を乗っ取り、信長の元で活躍して信頼を得て、元々の領土を安堵され、メキメキと下克上を実現していき、信長も何度か裏切るそぶりを見せられても許すというほどの役立つ武将となります。

そしてその役立つ男ということで、信長の目の上のたんこぶだった最後の将軍で、仮にも武将の総元締めで権威のある将軍足利義昭をおびき出し、自分の責任で殺せという命令には逡巡し、タイトルにある操り人形ではないという主人公なりの信念で、籠城していた城から逃げ出すという選択を選ぶことになります。

なかなか面白い設定で、たいへん気に入りました。

この著者の作品は、他にも戦国時代を扱った作品が多数あるので、また読んでみたいと思います。

★★☆

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残り全部バケーション(集英社文庫) 伊坂幸太郎

2012年に単行本、2015年に文庫化された連作短篇集です。収録されている作品タイトルは「残り全部バケーション」「タキオン作戦」、「検問」、「小さな兵隊」、「飛べても8分」と5章からなっています。

当たり屋や強請りなど、あくどい仕事をコンビでやっている二人が最初登場しますが、そのうちの若いほうのひとりが突然仕事を辞めたいと言いだします。

コンビは解消に向かいますが、その足を洗う条件としてもうひとりから命じられた、「知らない人と友達になる」という条件をクリアするために別の物語へ進んでいきます。

タイトルは、そうした悪徳業からきっぱり足を洗って仕事を辞めたことで、偶然に知り合った離婚間近の家族との会話の中で「仕事を昨日辞めたので、あと残りは全部バケーションだ」と言ったことから来ています。

その足を洗って辞めていった相棒をもうひとりが結果的にハメてしまうことになり、そのせいで組織の上部に処分?されてしまうことになり、そのことを最後まで後悔し、組織幹部に対して相棒を処分した仕返しを計画していきます。

さすがにミステリーやトリックの名手の著者だけあって凝った最後になっています。暇つぶしに読むのには最適で軽快な小説です。

★★☆

著者別読書感想(伊坂幸太郎)

【関連リンク】
 9月前半の読書 メタボラ(上)(下)、そこへ行くな、砂の街路図、ヒトラーの試写室
 8月後半の読書 R帝国、レインツリーの国、冷蔵庫を抱きしめて、追撃の森
 8月前半の読書 ラプラスの魔女、幸福な王子(ワイルド童話全集)、忘れられた巨人、献灯使


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メタボラ(上)(下)(朝日文庫) 桐野夏生

2005年から2006年にかけて朝日新聞に連載され、2007年に単行本、2010年に文庫化された沖縄が舞台の長編小説です。

主人公は、記憶喪失で何が起きたのかわからないものの、「ココニイテハイケナイ」という謎の声が浮かび、警察には頼らず、道で偶然出会った家出中の少年とともに自分探しの放浪の生活を始めます。

しかし現実的には、なにか大きなショックで記憶喪失になり、自分の名前もわからず、お金や持ち物がなにもなければ、怖くなって警察へ駆け込むというのが最低限の知恵ですが、なぜかそうしないことがリアリティのない小説です。

様々な職を転々としながら、ある日記憶がよみがえってきますが、主人公がここ沖縄へやってきた理由が衝撃的で、そうせざるを得なかった理由が明らかとなってきます。

上品に言えば、格差社会で下流に落ち、資本家に虐げられ絶望する若者と言えなくもありませんが、この小説の中に出てくる、さらに下流にいた外国人労働者達の国では、すでに日本よりも給与水準が高くなり、労働者の立場はやがて逆転することになりそうです。

つまり格差社会で下流なのは若者だけではなく、これからは経済縮小を続ける国内においては日本人全体ということが明らかです。

そしてもうひとつ、本書では舞台となる沖縄と、本土との様々な格差や差別、移住の問題なども露わにしています。そうしたなかなか表には現れない(知られていない)ことに触れられたことは良かったと思えます。しかし長かった、、、

★★☆

著者別読書感想(桐野夏生)

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そこへ行くな(集英社文庫) 井上荒野

2011年に単行本、2014年に文庫化された短篇集で、2011年の中央公論文芸賞を受賞しています。収録されているのは「遊園地」「ガラスの学校」「ベルモンドハイツ401」「サークル」「団地」「野球場」「病院」の7篇です。

著者の作品は過去に直木賞受賞作の「切羽へ」を読んでいます。

2022年5月後半の読書と感想、書評(切羽へ)

「切羽へ」でも感じましたが、著者は非常に感受性が高いのか、人の心理描写が細やかに描かれています。それが高齢にかかってきたオッサン読者にとっては面倒臭いというか、いらつくというか、どうにも納得感が得られません。

それが純文学だとか文芸だとか言われればその通りかもしれませんが、個人的には長い間接してきたビジネスの現場で培った、テキパキとそしてハッキリした物言いや白と黒が明瞭な世界に慣れてきたので、こうした玉虫色の世界観は読みにくいです。

その中でも「遊園地」は、長く連れ添い子供も授かっている内縁の夫婦の話で、実はその夫には別に正式に結婚した妻も子もあり、双方の妻には隠したままで両方の家を行き来していたというトンデモなお話しで、強く印象にのこりました。

いくらなんでも月の半分以上を出張で家を空けているのはおかしいと気づくでしょ。事実は小説より奇なりで、世の中にはそうした無関心で猜疑心がない人もいるのでしょうかね。

騙して二つの家庭、妻子を長年に渡ってトラブルなく養い続けている男性を、ただただ凄い!と思うしかありませんでした。

★☆☆

著者別読書感想(井上荒野)

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砂の街路図(小学館文庫) 佐々木譲

2015年に単行本、2018年に文庫版が発刊された北海道を舞台にした長編小説です。

小樽などいくつかの都市をモチーフとした架空の郡府という市内にある運河が四方に流れる明治時代に栄えた運河町という場所だけで話は進みます

主人公は東京に住む独身の高校国語教師の男性で、両親がこの郡府にある大学を卒業していて、父親が20年前に誰にも告げずこの郡府の運河町で事故で溺死となって発見されています。

父親がなぜ誰にも告げずに郡府へ来たのか、そこであまり強くない酒を大量に飲んで運河に転落する事故が起きたのか、など死に至る謎を調べるために運河町へやってきて、まるで探偵のように父親が死んだ理由を確かめていきます。

ま、小説ですから当たり前ですが、行く先々でそのヒントになることを知っている関係者に都合良く出会い、死の真相は20年前に突然起きたわけではなく、父親が学生だった40年以上前に起きた事件が元だったことがわかってきます。

そうした探偵もどきの事件と事故の謎解きで終始しますが、私も20年以上前に訪問したことがある小樽の町を思い浮かべる運河やガラス工房、古い歴史あるビルなどが次々と登場し、懐かしさが募りました。

そう言えば、以前読んでとても面白かった「地層捜査」(2012年)も、東京都新宿区の荒木町の一角だけで事件捜査が進む内容と似ている感じがします。

2019年7月前半の読書と感想、書評(地層捜査)
小説の舞台を歩く(佐々木譲著編その2)

本著にも地層捜査にも最初に舞台の地図が描かれていますが、著者と地図は切っても切れない関係になっているようです。

★★☆

著者別読書感想(佐々木譲)

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ヒトラーの試写室(角川文庫) 松岡圭祐

本著は以前読んだ義和団事件を描いた「黄砂の籠城」から続く歴史時代小説の第5弾で、2017年に文庫書き下ろし小説です。

主人公は、まだミニチュアなどを使った特殊撮影がキワモノだった戦前に、後に特殊撮影のレジェンドとなる円谷英二に師事し特殊撮影技術を学ぶ青年です。

そして第二次世界大戦中に、日独合作映画「新しき土」(1936年)や「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年)で使われた特殊撮影を見たドイツの宣伝省大臣ゲッベルスからの要請で、敵国の英国の不幸を描く「タイタニック」の沈没シーンを円谷の代理として指導監修するためドイツへ渡ることになります。

事実と想像を交えたこうした歴史小説は、実名で当時の有名人がいっぱい出てきますのでまるで実際に起きたことのように面白く読めます。例えば、主人公と年齢が近く、デビューまもなく一気に大人気俳優となった原節子との関係など、ワクワクします。

戦争中で日本とドイツの往復もままならない時代、ドイツに渡って映画先進国で果たして日本の特殊撮影技術が通用するのか?またドイツも連合国から激しい空襲を受け、やがてはソ連が首都ベルリンに肉薄している状態で、映画製作はできるのか?

また特殊撮影の技術を使って図らずも連合国が戦争犯罪を犯している証拠映像をねつ造する仕事に加担してしまったこと、それをバラそうとしてゲシュタポに捕まったり、東京に残してきた主人公の妻子や両親はドイツ領事館の計らいで空襲が激しい東京から長崎にある宿舎へ疎開していたことと原爆が投下されたという事実、、、

リアルな出来事とフィクションが織り混ざった見事な小説でした。

★★★

著者別読書感想(松岡圭祐)

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 8月後半の読書 R帝国、レインツリーの国、冷蔵庫を抱きしめて、追撃の森
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1659
R帝国(中公文庫) 中村文則

讀賣新聞に連載され2017年に単行本、2020年に文庫化された長編小説です。

近未来の日本のような架空の島国「R帝国」が隣国から突然侵略攻撃を受けますが、それは実はR帝国の政府が密かに仕組んだ謀略だった?といったノリのSF的政治小説です。

主人公は、野党議員の秘書ですが、どうして秘書ごときが、与党政府の重鎮に呼ばれて頼み事をされるのかやや無理な設定もいっぱいありますが、要は国家権力を一部の人間が握るとなんでもできちゃうと言う警告をやんわりとしているのでしょう。

地下に潜って綿々と続く反政府活動組織や、一握りの上級国民と、その他大勢の貧しい国民を支配するため、他国に蹂躙される地域を見せることで戦争を肯定的にとらえさせようとする政府との駆け引きなど、よく考えられています。

そういう意味では2月に読んだ山田宗樹著の「百年法」(2012年)も、独裁者が国家権力を握った闇が主に描かれるポリティカルSFミステリーで、なんとなく似た感じを受けました。

現在の日本はと言えば、隣国の共産党一党支配体制を厳しく批判しておきながら、ほぼ同様に圧倒的な一党支配体制が続く自国のことはすっかり忘れ、それをなんの疑問も持たずに受け入れているマスメディアや国民へ恐ろしさを感じます。

強い一党独裁体制になれば、本来は国民の僕たる役人は党の支配下に置かれ、政府や大臣に忖度するのが当たり前となり、マスメディアは太平洋戦争時の報道規制や検閲を忘れ、政府発表をそのまま垂れ流し、政府や党の有力者に近い人物や、選挙の時に支援してくれるならば反社会勢力であろうとなかろうと関係なく、様々な点で特別に優遇されます。

そういった思想や信条などはこの小説では露わにしていませんので、誰が読んでも政治スペクタルを楽しめます。ただ最後はあまりハッピーな終わり方ではないので、消化不良のままで終わってしまいますが。

著者別読書感想(中村文則)

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レインツリーの国(角川文庫) 有川浩

映画にもなって大ブレークした「阪急電車」(2008年)からもう14年が経つのですね。そろそろ直木賞の受賞なども近づいていそうな作家さんです。

本著は、著者の人気シリーズ「図書館戦争」のエピソードとして使われた内容を元に書き下ろした作品で,
Boy Meets Girlの恋愛小説です。

2015年には、三宅喜重監督、玉森裕太、西内まりや主演で映画が公開されています。

中学生の頃に読んで気になっていた小説を大人になってから偶然見つけ、それについてネットで調べていると感想が書かれている個人サイト「レインツリーの国」があり、そこで嬉しくなって自分の感想を書き込んだことから個人サイトの運営者とメールでのやりとりが始まります。

何度かメールでやりとりした後、一度実際に会って話しがしたいと持ちかけ了解してもらいます。

実際に会ってみて最初はちょっと変わった女性?ぐらいにしか思わなかったら、実は耳がほとんど聞こえない障害を持っている女性ということが判明しますが、ますますその彼女にのめり込んでいくことになります。

ま、理想的な恋愛ということなのでしょうけど、普通の男女ではなく、障害者と健常者の考え方の違いや、障害の程度で同じ障害者同士でも様々あることなど、よく取材などをして盛り込まれています。

レインツリーとはアメリカ産のネムノキのことで、日立のCMで出てくるあの大きな樹のことです。日本では障害者支援や福祉事業の名称でよく使われています。

著者別読書感想(有川浩)

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冷蔵庫を抱きしめて(新潮文庫) 荻原浩

2015年に単行本、2017年に文庫化された短篇小説集で、「ヒット・アンド・アウェイ」「冷蔵庫を抱きしめて」「アナザーフェイス」「顔も見たくないのに」「マスク」「カメレオンの地色」「それは言わない約束でしょう」「エンドロールは最後まで」の8篇が収録されています。

著者の作品は、文庫になってから見つけると進んで買って読んでいますが、好きなのは「明日の記憶」や「僕たちの戦争」などの長編小説で、今回の著作のようなテーマがバラバラの短編小説はイマイチ好きではありません。

とは言っても、先日読んだ直木賞受賞作「海の見える理髪店」は上手い!というのと、イマイチ~というのが混ざっていて、当たりに会えばラッキー、それ以外は軽く流せばいいかぁーと読んでみました。

こうした短編小説で、特に女性が主人公のものは、同様に見つけたらすぐに買う作家さんの一人奥田英朗さんには残念ながら及びません。比べられたくはないでしょうけど、どうしても同世代の人気現代エンタメ作家さんとして比べてしまいます。

中身ですが、あまり印象に深く残ったものはなく、DVや摂食障害、顔の醜形恐怖症、失語症など様々な社会問題化しているそれぞれの事象をテーマにしたもので、したがってあまり爽やかでもなければ、コミカル風に書かれていても腹を抱えて笑えるモノでもありません。そういうのばかり集められても、、、という気持ちがあります。

★☆☆

著者別読書感想(荻原浩)

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追撃の森(文春文庫) ジェフリー・ディーヴァー

読むのは3作目の著者の作品ですが、外れがない上手い書き手さんという印象です。この作品は、2008年に初出、翻訳版は2012年に発刊されています。

文庫で560ページを超える長編サスペンス小説で、原題は「The Bodies Left Behind」、直訳すれば「残された死体」という意味です。

アメリカの広大な森林公園近くの湖畔にある福祉職員と弁護士の夫婦の別荘に二人組の殺し屋が現れます。福祉職員の夫が携帯電話で警察に電話しようとしますがすぐに叩き落とされ、すぐに切れた通報を不審に思った警察は近くに住む女性の保安官補をその別荘に向かわせます。

その保安官補が主人公になりますが、殺された夫婦の友人で別荘に招待されていたという女性とともに、目撃者を殺そうと追いかけてくる二人の殺し屋から森林の中へ逃げ込みます。

武器や無線、携帯電話などはなく、ショットガンや拳銃、森の中で迷わないようにGPSや地図を持った殺し屋の執拗な追跡をかわしていくジェットコースターサスペンスというのが、単純に頭の中でわかりやすくイメージ化しやすくなっています。

この手の小説は、ドラマや映画など映像化がしやすいような作風になることが多く、わずか1日に起きることが延々と数百ページにわたって繰り広げられます。

水戸黄門じゃないけど、女性主人公が無事に生き延びるだろうということは簡単に想像できますが、別荘で起きた殺人事件はそう単純でなく、様々なトリックが仕掛けられていてそちらのほうへと話題は移っていきます。

森林での殺し屋との対決と、別荘での夫婦殺人事件、この二つの別々の小説を読んだようなお得な気持ちになりました。

★★★

著者別読書感想(ジェフリー・ディーヴァー)

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1657
親しい友人や知人から借金を頼まれたら、あなたは気前よく貸しますか?それとも断固断りますか?

昔から知人や友人とのお金の貸し借りについては美談もあれば、悲惨な結末もあります。

私の知っている身近なところであったことで、まずは美談というか幸運から言うと、友人が知人から借金を頼まれ、あまり深く理由も聞かずに数十万円を貸しました。

その知人は小さな会社を起業していて、自己資金だけでは足りず、さらに追加の事業資金が必要で、友人などに借りまくっていましたが、たまたまうまく時流に乗ってその事業が大成功。数年後にその知人から借金分の代わりに未公開株を応分をもらい、その後にマザーズへ上場。

結果論ですが、友人は上場益で数百万円の利益を得たというものがありました。

こういう知人や借金なら大歓迎ですが、事業への投資と言っても成功する率よりも失敗する率のほうが圧倒的に多いのが通常ですから、もし「事業のためお金を貸して」と言われていたら友人は貸したかどうか。

逆に悲惨な結末の話はいくつもあります。

私の親戚で、少し年上の人が親から引き継いだ商売をやっていて、あるとき「店を改修するので少しお金を貸して欲しい」と頼まれました。

店は順調そうに見えていた(詳しくチェックしたわけではなく)のですが、その頃はすでに火の車状態で、私以外に多くの人から借金をしていたことがあとでわかりました。

お金を貸した後に会ったときに雑談をしていた時、以前はBMWに乗っていたことを知っていたので、いまは何に乗っているの?と聞くと、「ボルボ(スウェーデン製の高級車)を買った」と。

おいおい、金を貸したこちらは小型国産車、しかもすでに8年ぐらい経過しているボロいクルマに乗っているのに、借金した人がボルボの新車だと?と内心むかつきました。

昔からええ格好しいで、周囲に見栄を張る人だったので、立場もわきまえずに簡単には性格は変わらないものなんだなと思いました。

簡単に貸した私が悪いのですが、ため息をついて「それはないんじゃないの~?」と嫌みのひとつも言いたくなったのをグッと飲み込みました。

結局、その事業(店)は赤字続きで、家賃が高いビルに入っていた貸店舗から撤退(廃業)せざるを得なくなり、私への借金はその後十数年してから親戚と言うことと、また少額ということもあり分割で返却されましたが、その他に借りていた大きな借金は踏み倒したようです。

その他にも知人から事業資金として数十万円を貸した金が戻ってこなかったことがあります。上に書いた成功例ではなく普通の事業失敗談です。気前がよすぎたのでしょうか、

その知人はやがて音信が取れなくなりました。何百万とか何千万とかを貸して踏み倒されたわけではないので、まだ世間一般ではマシな方かも知れません。

会社の中でもお金の貸し借りはよくあります。

私が大学卒業後に入った会社で、新入社員の時に仕事を丁寧に教えてくれた先輩が数年で突然退職されました。

その時は私は地方の支店に勤務していて東京でおこなわれた送別会には出られず、退職理由や退職後の予定などの話を聞くことができませんでしたが(当時はまだ電子メールなどなかった)、後で他の社員に聞くと、ギャンブルや派手な飲酒で会社から給料の前借りをして、それでも足りずに先輩の上司からも多額の借金をしていて、礼儀と品性と信用に重きを置いていた会社も退職を勧奨せざるを得なかったそうです。

今でもその先輩の上司だった人(私にとっても元上司)と時々会って会食しながら話しをする機会がありますが、信用して数百万円ものお金を貸して踏み倒された苦い経験はあまり思い出したくないようです。

「金は借りてもならず、貸してもならない。 貸せば金を失うし、友も失う。 借りれば倹約が馬鹿らしくなる。 」と格言を残したのはシェイクスピアですが、まさにその通りのことが、何度も目の前で起きました。

直接の借金ではありませんが、親戚の子供が大学進学するときに借りる学生ローン(数百万円)の連帯保証人を頼まれ受けざるを得なかったことがあります。子供の学生ローンの連帯保証人には、その親はなれないということでした。

電話ひとつで簡単に頼まれ、郵送で送られて来た契約書だけで安易に連帯保証人になるのは躊躇われましたが、親戚づきあい上やむを得ませんでした。

その親戚の子供は大学を卒業してから10年ほどでローンは全額無事に返却できたらしく、ホッとしましたが、最近は大学進学者の半分以上が返済ありの奨学金や学生ローンを利用しているので、そのような連帯保証人を頼まれる人も多いと思います。

承知のことですが、連帯保証というのは、本来返却すべきローンを借りた人がなんらかの都合で返却できなかったとき、有無を言わせず連帯保証人に返却する義務が生じるというものです。

しかも通常はやむを得ない理由がなく1回でも返却が滞ると、残り全額を一括して支払う義務が直ちに生じます。つまり借りた人がもし行方不明になるとか、病気や事故で入院して稼ぎがないと、連帯保証人が全額を支払わなければなりません。

最近は大学卒業後に就職せず、フリーターで起業を夢見て仲間達と準備?している人もいます。

そう言う人が毎月やってくる学生ローンや奨学金の返済を食費を削ってでも滞りなくキチンと毎月毎月支払い続けることができるのかというとなんとも心許ないというのが実情です。まったく怖いことです。

ともかく、友達の中でいい人にならなくていいから、お金の貸し借りは避けるようにと子供には言い聞かせています。

最初は千円、5千円の少額から始まり、それはすぐに返却されますが、次に1万円、10万円、30万円と徐々に増えていき、やがて返却ができずどこかへ去って行くというのが悪意のある借金の常道ですから気をつけたいものです。

【関連リンク】
1539 金利金利金利
977 奨学金という名の学生ローン
728 対外資産残高22年間世界一ということ


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ラプラスの魔女(角川文庫) 東野圭吾

2015年に単行本、2018年に文庫化された長編ミステリー小説です。2018年には三池崇史監督、櫻井翔、広瀬すず出演で映画が製作されています。

タイトルのラプラスとは、1700年代にフランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスによって提唱された「周囲の物理現象を見て解析できる能力があれば、極めて高い近未来の予測が可能になる」という「ラプラスの悪魔」と呼ばれる超人間的知性のことで、現代では量子学によってその可能性は否定されています。

もっと簡単に言うと、気象で言うと天気予報も近未来に起きる現象を予想していますが、スーパーコンピュータに頼らずとも空を見ただけで、次に何が起きるか、例えばその先の木に1時間後に雷が落ちるとか、どこそこの地域に雹が降ってくるとかがわかる特殊能力です。

主人公は複数いて、そうしたラプラスの悪魔の才能を得た二人の男女、地球化学の学者、元警官でラプラスの魔女を護衛する男、火山性ガスで中毒死した事故を殺人事件ではないかと疑い追う刑事など。様々な視点で描かれています。

もしそうしたラプラスの悪魔の能力を得た人間が、それを利用して完全犯罪を計画すればどうなるかということがメインの内容です。

小説や映画の世界にはしばしば超能力の持ち主が登場してきますが、そういうものにはもう飽き飽きしている人(私です)にも、この話は的確な未来予測能力ということで、なにか現実でもあり得そうでワクワクします。

私だったら、まず競馬場のパドックへ行き、次のレースでどの馬が勝つのかを予測します。下世話な話ですけど。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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幸福な王子 ワイルド童話全集(新潮文庫) オスカー・ワイルド

世界的に有名な童話「幸福な王子」の他、「ナイチンゲールとばらの花」「わがままな大男」「忠実な友達」「すばらしいロケット」「若い王」「王女の誕生日」「漁師とその魂」「星の子」の計9篇が収録されています。

童話とは言え、かなりややこしい話や解釈の自由度があり、大人が読んでも難解なものもあります。

「幸せな王子」も銅像とツバメの会話がメインですが、同様にナイチンゲール(花の種類)など植物や花火のロケット、鳥などあらゆるものに生命や意志がありそれら同士で会話ができるのが新鮮というか、でも人間との会話はできないとかで大人のリアルな感覚で読むと混乱してきます。

「幸福な王子」でもそうでしたが、ハッピーエンドで終わるものはなく、世の中の不条理とか、人の身勝手さ、傲慢、そしてけなげな花や鳥たちといった童話ですから~という感じです。

一番長い「漁師とその魂」だけはちょっと趣が違い、若い漁師が人魚に恋し、魂を失えば海の中で人魚と一緒になれると教えられ魂を分離することに成功します。

その魂だけが各地に出向き様々な経験を積んでいき、海へ行って若者に呼びかけて海から出てこさせます。私にはなにが言いたかったのか、意味がよくわかりませんでした。

残念ながら、世の中の汚いものを見過ぎて、純粋な気持ちで童話を読み、理解することができなくなってしまったようです。

そう言えば、以前に桐生操著の「本当は恐ろしいグリム童話〈2〉」を読んだとき、グリム童話ではありませんが「幸福な王子」が収録されていました。

2012年11月後半の読書(本当は恐ろしいグリム童話2)

また、偶然ですが、今年7月29日から公開されている映画「今夜、世界からこの恋が消えても」(2022年)の主題歌で、ヨルシカの「左右盲」は、昨年から続いている文学オマージュ作品のひとつで、この童話「幸福な王子」を歌詞のモチーフにしています。

他のグリム童話が、実は童話には相応しくないエログロで暴力的な表現などが満載ですが、この「幸福な王子」は、本書含めて一般的な童話では省略されている一緒に戦い生き残った婚約者がいて、今も悲しみ伏せっているのを勇気づけようとツバメに薔薇を届けてもらうなどさらに清らかな内容と言うことでした。

ただそれって本著にある「ナイチンゲールとばらの花」と混同してない?って気もします。

★☆☆

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忘れられた巨人(ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ

著者の作品を読むのはこれで4作目となりますが、以前に読んだ「わたしを離さないで」(2005年)を発刊した後、10年間のブランクが開き、2015年に発刊されたのがこの作品というのはあとで知りました。

2014年11月後半の読書と感想、書評(わたしを離さないで)

この長編小説のジャンルは著者の作品では珍しいファンタジーですが、子供向けの暖かなファンタジーではなく、イギリスの古代史をテーマにしたアングロサクソン人と、グレートブリテンの名の由来にもなっているブリトン人の対立がテーマとなっています。

あまり日本人には馴染みがない内容ですが、そのような英国史の物語を日系英国人(両親はともに日本人で、6歳まで長崎に在住)の著者が書くというのも面白いです。

主人公は、ブリトン人の老夫婦で、現在の村での生活に不満があり、ずっと前に出て行った息子に会うため遠出の旅に出ます。

村から一歩出ると、鬼や敵対するサクソン人、盗賊などが旅の障害となりますが、人々の記憶を失わせる原因となっている竜を敵に軍事利用されるのを防ぐためにやってきたブリトン人の騎士や、ブリトンの君主だったアーサー王に命ぜられ竜退治に執念を燃やしているブリトン人の老兵士などとともに様々な困難を乗り越えていきます。

まだ未開の土地が多かった5~6世紀の英国で、竜やら鬼やらが出てくるというところがファンタジーなんですね。5世紀と言えば日本では倭国という大和朝廷ができ、そこの代々の王がやがて天皇となっていくという時代です。

タイトルはサクソン人の騎士がその頃は多くの人種が英国で割拠している中で「昔に地中に埋められたサクソン人の巨人がやがて動き出す」と予言をしたように、やがて英国に住んでいたブリトン人やケルト人はサクソン人に駆逐されていくことになります。

まったく知らない歴史なので初めて知ることが多く、なかなか理解ができないのと、同時に新たな興味が湧いてくるのとがせめぎ合います。

しかし最後は特に話がつながるようなクライマックスなどもなく、英国料理のように評価すること自体が難しく、個人的には仲の良かった老夫婦が、なにか寂しい終わり方になっていてちょっと残念に思います。

★★☆

著者別読書感想(カズオ・イシグロ)

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献灯使(講談社文庫) 多和田葉子

1993年に「犬婿入り」で芥川賞、2003年に「容疑者の夜行列車」で谷崎潤一郎賞など数多くの賞を受賞されているドイツ在住の詩人と小説家として活躍されている方で、著書を読むのは今回が初めてです。

本著は2014年に単行本、2017年に文庫化された短・中篇小説で、「献灯使」「韋駄天どこまでも」「不死の島」「彼岸」「動物たちのバベル」の5篇が収録されています。

中でも表題の「献灯使」だけは中篇で最初にあります。しかし読み始めるとなにか不思議な世界観で、その設定が意味不明でわからず、読み進めていくのが苦痛となりました。

他の短篇を後から読むとわかりましたが、調べると「不死の島」が2012年に初出で最初、「動物たちのバベル」が2013年でその次、その他が2014年に文芸誌などで初出のもので、書かれた順で読めば小説の舞台とか状況が少しは理解した上で読めたのですが、なぜなのか不明ですが、あえて出版順とは逆の構成となっています。つまり「想像力の乏しい読者は二度、三度繰り返して読め!」ということなのかな。

それはさておき、いずれもテーマは東日本大震災や原発事故の後に書かれた悲惨な日本の未来を描いたSFで、女性の作家でSF作品を書く人は今まで少なく、意外な感じがしました。

しかし面白かったか?と聞かれると、、、この作品は私の好みではないです。折を見てまた別の作品を読んでみたいと思います。

★☆☆

【関連リンク】
 7月後半 よもつひらさか、中庭の出来事、わらの女、P・O・Sキャメルマート京洛病院店の四季
 7月前半 覘き小平次、デス・エンジェル、硝子のハンマー、老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの
 6月後半 破門、王とサーカス、アイルランドの薔薇、犬とハモニカ

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