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環境問題から先進国では一気に内燃機関エンジンからEV化が進むものと思われていましたが、ロシアのウクライナ侵攻によって原油や天然ガス不足からエネルギー危機が訪れ、そうした環境優先政策に暗雲が立ちこめてきました。

しかし、エンジンからモーターへの置き換えは大局的には変わらないですが、従来の内燃機関動力車の販売禁止の目標としていた期日には今後変更が生じていそうです。

個人的には、せいぜいあと10数年ぐらいしかクルマを運転しない準高齢者なので、エンジン車の新車販売禁止が10年先か20年先かはどうでもいいのですが、EV車が主流になってくることで、ガソリンスタンドが減ってしまって不便になることや、内燃機関エンジンや駆動系の整備に詳しい専門家が減ってしまうことで困るぐらいです。

なので、特に濃いEVアンチというわけではありませんが、国内で新車のEVが隅々まで普及するにはまだ無理があるのではないかな?と思っています。

テレビCMやEV試乗記事ではほとんど「EVはエコで便利」というテイストで取り上げられます。本当にエコで便利なの?という疑問があります。

その理由としては、従来から言われてきたことで、充電設備、充電時間、バッテリー性能などの問題です。

充電設備が都市部はともかく、全国的にまだ十分に設置されていないことはよく知られています。しかもメーカーによって使えない設備や、故障中で使えないものもあります。

もちろん、何年後かに充電設備事業が儲かるビジネスとなれば、どこのコンビニやコインパーキングでも充電ができるようになるでしょうけど、今のところは儲かるビジネスではなく、すぐに増える要素が見当たりません。

EVのテレビCMでは「スタンド行かないの楽ですよ~」と強調しますが、サンデードライバーの場合、2ヶ月に1度ぐらい、スタンドに行って給油と窓拭きと空気圧チェックをしてもらうのと、EVを使った後は毎回充電ケーブルを取り出して接続して何時間後に取り外して片づけるのと果たしてどっちが楽なのでしょう?

さらに、現在のマンションなど集合住宅では、敷地内に簡単に充電設備が作れない問題があります。自宅で簡単に充電できなければEVを購入するメリットはさらに減るでしょう。

充電時間は急速充電でも何十分もかかります。急いでいるときに限ってバッテリーが空になってしまうのがマーフィーの法則を出すまでもなく世の常です。それに元々充電設備すら少ないのに、急速充電器がいつもすぐに使える状態にあるとは限りません。

バッテリーの性能は、スマホの電池でもわかる通り、数年で一気に充電能力が低下します。つまり新車の時に「満充電で300km走行できる!」とカタログに書いてあっても、使い方や環境にもよりますが、3年ぐらい経つと満充電で走れる距離はその半分ぐらいと思っていても良いでしょう。

そして6~7年後には交換時期がやってきて、クルマの買い換えをするか、60~70万円かけてバッテリー交換をするか決断を迫られます。

それでもガソリン車に給油する総額より安くなるでしょうけど、毒性があり環境汚染の原因となる古いバッテリーの廃棄処理やリサイクルには多くのコストとエネルギー、大きな環境負荷がかかることも忘れてはいけません。すでにEV先進国の中国では土壌や水質汚染などが問題となっています。

さらに言うと、EVの動力源である電気はなにで作っているのか?ってこと。

現状ではまだ石炭や石油、天然ガスを燃やす火力発電がメインで、EVが増えれば増えた分だけ二酸化炭素排出が増えることになります。その点が大きく改善されない限り「エコです!」と果たして言っても良いものか、、、

あるエコ活動に熱心なVTuberのEV礼賛記事を読みました。

EVアンチの常套句「長距離運転に向かない」は本当? 実際に走ってみたら、給油より充電のが楽だった(2022.9.3 Merkmal)
この東京~大阪の旅では車両の航続距離である400kmを超える500kmを走行したが、充電のため「だけ」の時間はゼロだった。今回の旅では内燃機関より不便を感じる点はひとつもなく、騒音や振動が少なく疲れにくい上に走行性能に不満もない。今回の例では500kmの走行だったが、もちろん東京~四国や九州など1000kmを超える旅でも同様で、多くのEVオーナーが充電時間ゼロで運用できている。

この記事では触れられていませんが、長距離を走って怖いのは、予想しない渋滞や天候に遭うことです。

つまり予定では300kmの走行は楽勝!と思っていても、途中で暑かったり大雨に遭い結露対策でエアコンをフルにかけ、ワイパーを動かし、昼間でもヘッドライトやフォグライトを点けて走ることがあります。

そしてさらに事故渋滞で1時間ぐらいほとんど動かないこともあります。自然渋滞でも1時間ほどノロノロ運転をするのはよくあることです。そうした非常時には、現在のEVのバッテリーでは心許ないでしょう。

そして記事で触れられていますが、高速道路のSAで充電するにも、行楽シーズンなどでは順番待ちができていることがよく話題になります。

EV普及と同時にやらなければいけないこと…充電ステーション不足が長蛇の列を生む(BUSINESS INSIDER)
テスラのオーナーは通常自宅で充電を行うが、充電ステーションの需要が急増することがある。それは休日に旅行をするときだ。
ほかの電気自動車メーカーと同様に、テスラは充電ステーションを拡大しているが、休暇中の長い待ち時間を減らすことはできていない。

こうした試乗記事は、平日の混雑しない時期にメーカーから借りて乗りますから、ひどい渋滞に遭うことはありませんが、普通の人は混雑する連休中やお正月にこそ長距離で利用するのが普通です。

サービスエリアの駐車場が満車で、レストランやトイレに行列ができているような時に充電器だけ空いているとは思えません。

あと30分間充電すれば残りの距離は大丈夫と思っていても、その充電待ちのためプラス何時間もかかることがあるでしょう。おまけに充電待ちで並んでいる時には少なくともドライバーはレストランへ行き食事をしてというわけにはいきません。

今はまだ起きていませんが、今後充電を巡るトラブルが起きそうです。つまり、前のクルマが充電したまま何時間も放置したままで戻ってこない場合、待っている人が勝手に充電ケーブルを外して使うというようなことです。

もっと言えば、充電中のケーブルを、そのドライバーが不在であることをいいことに、勝手に外して自分のクルマに充電(盗電?)する輩や、長い順番待ちを無視して強引に割り込んでくる強面な下衆野郎も出てきそうです。

そして記事では「宿泊先にはちゃんと充電用のコンセントが設置してあるので、到着時にカチッと差し込めば翌朝には満充電まで回復」と、到着後に充電用ケーブルをつないで翌朝までつなぎっぱなしと書かれていますが、他に利用者がいないことがわかっているならともかく、本来なら他の人が利用できるよう一定時間か満充電したらケーブルを外して他の利用者に譲らなければならないはずです。

つまり、例え深夜であっても、満充電になれば降りていって、ケーブルを外して、クルマを駐車場まで移動するという面倒なことが旅先での充電利用のマナーとなります。

そうした面倒なことが多いので、例え長距離は年に数回でも、EVはいらないというのが私の感想です。

【関連リンク】
1617 2021年の車種名別販売ランキングとEV化
1505 日本のEVシフトは環境問題ではなく経済問題
1212 EVシフトと言いつつも当分需要はそれほどでもなさそう


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