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幽界森娘異聞(講談社文庫) 笙野頼子

ほぼ私と同年代(2歳違い)の三重県出身の著者の小説は今回が初めてです。ちょっと変わったというか私にとっては難解な小説を得意とされているようです。

今回の作品は、2000年~2001年に群像で掲載された後、2001年に単行本、2006年に文庫化された(私)小説です。

(私)と加えたのは、文中に何度も(笙野注)があり、「私」の主張を強く意識したエッセイ風な内容となっているからです。

それにしてもまったく内容は知らず読み始めたところ、タイトルの「森娘」というのが、文豪森鴎外の娘で明治・大正・昭和を生きた作家の森茉莉のことであるとわかりました。タイトルからすると、なんとなくファンタジーもの?と勝手に思っていました。

贅沢貧乏」などを書いた森鴎外の娘(森娘)、森茉莉が書いたエッセイや小説などから引用し、その考え方や思いを著者なりに評価というか持ち上げていきます。

その他にも、森娘と関わった作家や、エッセイに書かれた主にテレビで活躍した芸能人などの話が出てきます。例えば室生犀星、志賀直哉、白洲正子、円地文子、三島由紀夫、米原万里、山口百恵、桃井かおりなどなど。

またどういう関係かはともかく、主人公(著者?)が飼っている猫たちの話しも多分に加わって、これはエッセイなのか小説なのか、よくわからないところもあります。読み進めていくのが結構苦痛でした。

私は米原万里の小説やエッセイは好きですが、この著者や「森娘」の感性と精神性が理解できず苦手だと言うことがわかりました。

★☆☆

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保険ぎらい 「人生最大の資産リスク」対策(PHP新書) 荻原博子

テレビの情報番組で引っ張りだこの経済評論家の著者ですが、著書も数多くあって、一度読んでみたいと思って買ってきました。今回は2020年発刊の新書ですが、「年金だけでも暮らせます」(2019年)も一緒に買ってきましたのでそれは近いうちに。

新書はタイトルで売れるかどうかが決まってしまう側面がありますが、この著書のタイトル(主題)はシンプルながらわかりやすくて良いと思いますが、副題につけられた「人生最大の・・」はちょっとどうかな?って感じです。

中身をじっくり読むとわかりますが、要は健康面では公的保険(加入必須の健康保険や介護保険等)が多くの部分をカバーしてくれているので、「生命保険や医療保険の必要性はほとんどない」ことや、死亡や病気になる確率はどこの保険会社でも同じデータを使うので、「有名芸能人を使ったテレビ広告や保険アドバイザーなどの人件費が少ない保険会社のほうが保険料が安くなる」のでそちらを選ぶべきなど。

また保険は掛け捨てが基本で、学資保険や養老保険など掛け捨てではない保険の場合、「昔の金利が高い時代に契約したもの以外は意味がない」など、保険選びや保険解約のノウハウ、知恵がメインです。

ただし、広くすべての人を対象としているので、本の半分ぐらいは自分(引退した65歳)とは関係がない話し(iDeCoとか、労災、介護休暇など)があり、そこは飛ばして読めるので、サクッと読めるかわりに内容的に薄かったということもあります。

しかしこれを多くの人に読まれると、特に大手、しかもテレビ広告をよく出しているような保険会社は困るでしょうね。したがって、保険会社のスポンサーが多いテレビの情報番組等で触れるのがタブーなことばかりです。

この本に書かれていた内容で、私が知らなかったことや誤解していたことなどを今後別の機会に書いてみたいと思います。

★★☆

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ホテル・ニューハンプシャー(上)(下)(新潮文庫) ジョン・アーヴィング

著者は1942年生まれで今年81歳になるアメリカの作家です。有名な作品には「ガープの世界」(1978年)などがあります。この作品、「The Hotel New Hampshire」は1981年にアメリカで発刊されました。日本語翻訳版は1986年に単行本、1989年に文庫化されています。

ニューハンプシャーというのはアメリカの州の名前だということは知っていても、はてどの辺りにあったっけ?とわからない日本人が多いと思いますが、私もそのひとりです。

アメリカ合衆国の北東部、カナダ国境に近く、大西洋に面していてメイン州とバーモント州、マサチューセッツ州に囲まれている州です。歴史ある場所ですが東海岸で大きな産業があるわけではないので日本人には馴染みがない州です。

そこで生まれ育った1家族の物語で、時代は第2次大戦前後、両親と5人の子供と1匹の熊(その後犬)が中心で、語り手は次男で、中年になってからその当時家族に起きたことを語っていくという流れです。

タイトルは、ハーバードを出た父親が戻ってきてから妻となった女性の実家を売って得た金で廃校になった女子高を買い取って改装し、従業員を雇ってホテルを経営することになりますが、場所は観光地はなく企業もなく、経営は思わしくなく、子供達もそれに否応なく巻き込まれていきます。

ホテル経営に活路が見いだせず、昔に知り合ったウイーンに住むユダヤ人に誘われ、ホテルを売って、オーストリアのウィーンへと家族で移住することになります。そこでも古びたビルの中で(第二次)ニューハンプシャーホテルと名付けたホテルを経営することになります。

一見すると一家のホテル経営苦労物語に見えますが、その中身は、奇形、レイプ、同性愛、近親相姦、オーストラリアで合法化されている売春、ユダヤ人迫害、テロリスト達との対決など話題性、エンタメ性豊富というか詰め込みすぎ?という感じもします。

この小説を読んでいたときはもっと古い時期(1960年代)ぐらいの作品かなと思っていましたが、意外に1981年と40数年前の作品でした。というのも、戦前や戦後間もない頃の話しが中心で、その時代がまだすぐ近くにあるような感じがしたから。

あとで知りましたが、1984年(日本公開は1986年)に、ジョディ・フォスターやロブ・ロウが主演したこの作品を原作とした映画が作られています。機会があれば見たいかな。

★★☆

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A2Z(講談社文庫) 山田詠美

2000年に単行本、2003年に文庫化された大人の恋愛小説と言えるでしょう。タイトルのA2Zは、章立てことにABC順にアルファベット仕立てになっていて、そのアルファベットの単語がその章の中で使われているというたわいもないことです。

ちょうど読書していた時期と同じタイミングで、Amazonプライムビデオのオリジナルドラマが2月3日に公開されました。主演は適応障害のためしばらく休んでいて久しぶりに登場する深田恭子主演とのことです。

主人公は大手出版社で文芸書籍の編集を担当している35歳の既婚女性です。小説にはこうした出版社や編集者を扱ったものが多いのも身近にそのネタや知識があるから書きやすいのでしょう。

その主人公の女性がまたぶっ飛んでいて、夫の浮気を知ことになっても取り乱すこともなく、並行して自分も10歳年下の若い男性といい仲になり、さらに新しく担当することになった若手の有望新人作家にも言い寄られと、夫が若い女性にぞっこんになるのは別として、これは多くの女性からは夢のようで憧れられるでしょう。

その浮気男の夫も、終盤には浮気相手にふられて主人公の元へ戻ってきますが、今度は主人公が家を出て若い男との逢瀬を継続する道を選びます。

と、まぁ、ベタな女性向きの不倫恋愛小説ですが、登場する人物がみないい人で、悪者役というか悪意のある人が出てこないのがちょっと不意義な感じです。

それだけにサラッと軽く飛ばして読めますが、還暦過ぎた男性が読むにはちょっと違和感がありまくりでした。

★★☆

著者別読書感想(山田詠美)

【関連リンク】
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 1月前半の読書 志賀越みち、ファーストラヴ、一八八八切り裂きジャック、帰郷
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