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ものごとに動じない人の習慣術(KAWADE夢新書) 菅原圭

ものごとに動じない人の習慣術著者は元出版社で勤務したあとフリーライター、作家として活動されていて数多くの啓発本を出版されています。

この本は、2020年出版ということでまだ新しい本と思って買いましたが、元は2008年に出版した同名の新装版ということで、すっかり河出書房新社に騙されてしまいました。

お正月に国立競技場へラグビーの試合を見に行ったとき、河出書房新社のビルが健在で懐かしかったです。

というのも、40数年前の1980年頃に、週1回は河出書房新社へ仕事で通っていたことがあり、当時の担当者が「良かったら読んでみて」とくださった書籍は読んだ後今でも私の書棚に置いてあります。

河出書房新社は、歴史ある名門の出版社ですが、過去2度倒産の憂き目に遭い、苦労しながら再建してきた会社で、社名につけられた「新社」がそれを物語っています。仕事ではたいへんお世話になったこともあり、陰ながらずっと応援していました。

閑話休題、著書の感想ですが、20代後半から30代の人向けと思われる内容で、還暦過ぎた酸いも甘いも経験してきた親父が読むのには向きませんでした。

私も若いときにもっとこういう自己啓発本を読んでいれば、また違った人生を歩んでいたかもと思いますが、なにぶん今の人向きにノリが軽い話が多く、私の若いときの仕事や上司には絶対服従の根性論とは違っていますから合わなかったでしょう。

個人的には、予定通りにいかなかったときに、冷静になれず慌ててしまう性格で、それを直したいな~と思ってタイトルに惹かれ手に取りましたが、そういう感じではありませんでした。

★☆☆

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アジアンタムブルー(角川文庫) 大崎善生

アジアンタムブルー著者の作品は、20年前の2004年に「パイロットフィッシュ」(2001年)を読んで以来なので20年ぶりです。本著は2002年に単行本、2005年に文庫版が出版されています。また2006年には阿部寛主演で映画も製作されています。見てないけど。

この作品は、「パイロットフィッシュ」、「エンプティスター」(2012年)とともにエロ系雑誌の編集者、山崎隆二を主人公とする恋愛三部作です。

アジアンタムブルーって何?と知らないまま読み始めましたが、作中に「観葉植物のアジアンタムが水不足で葉がちりちりになってしまい、その状態がみるみるうちに葉全体に広がってしまう現象のこと」ということだそうです。

観葉植物のアジアンタムの話や、熱帯魚の王様といわれている飼育が難しいディスカスの話、ブリティッシュ・ロック、そして酒と料理の話など、著者の趣味の多くが小説の中で生かされている感じがします。

内容は、仕事がらみで知り合った女性のカメラマンと付き合うようになったきっかけや、一緒に同棲を始めた後にその恋人が胃がんの末期ということがわかり、、、という悲恋の物語です。

ま、若い恋人や連れ合いが不治の病に倒れてあらためて愛を考えるというのは恋愛小説やドラマでは定番過ぎて、もう今はお腹いっぱいっていう感じですが、青春時代に読むとそれなりに感動もするのでしょう。えぇ私にもそういう時期がありましたもの。

この小説に出てくる登場人物はいずれも魅力的で、主人公と気の合うSMの女王や、主人公と仕事を超えて気の合う風俗ライター、恋人の余命宣告をし主人公の無茶な提案を受け入れてくれる主治医、フランスのニースで知り合ったタクシー運転手など善人ばかりで、実際には周囲に山ほどいるはずの悪人は表だって出てこない私の好きなタイプの小説です。

★★☆

著者別読書感想(大崎善生)

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アウトサイダー 陰謀の中の人生(角川文庫) フレデリック・フォーサイス

アウトサイダー日本語版の単行本が2016年に出版されたこの作品は著者の今までの国際陰謀スリラーとは違い、完全な自伝です。

理解のある両親の元で比較的裕福な家庭に育った著者の中学生時代、全寮制の高校時代、そしてパイロットを志望して空軍に入り、その後は海外特派員になりたくて新聞社や放送局(BBC)などで活躍する姿とその失望などが生々しく書かれています。

ジャーナリストとして世界中を飛び回ったことで、デビュー作「ジャッカルの日」や2作目「オデッサファイル」、3作目「戦争の犬たち」の構想を得て、窮乏状態をなんとかしようと小説を書いて打開しようと出版社を回ったことなどリアルです。

そして出版社回りがうまくいかずバーでやけ酒を飲んでいるところに知り合った紳士の助けで幸運もありベストセラー作家として上り詰めていきます。

特に秀逸だったのは新聞社に記者として勤務していた時に、どこへ行くにも監視がつく東ドイツのベルリンでの勤務時代です。

子供の頃からフランスやドイツにホームステイして多国語を自由に操れるようになり、その能力を生かしてまるでサスペンス映画のような様々な危機をしのいでいきます。

また英国の情報部から東ドイツのドレスデンまで行き、ソ連のスパイと書類を交換する仕事を頼まれ、自分のクルマで美術研究者として活動するシーンはスパイ映画も顔負けの展開です。

その後はアフリカへ飛んで、ナイジェリアから独立しようとするビアフラとの戦争を中に入り込んで取材をしてレポートを揚げますが、雇い主のBBCは英国政府が支持するナイジェリア政府の汚点は表面化することがなく、逆に著者はビアフラで悲惨な飢餓状態や英国製の武器で一般市民が蹂躙されるのを目の当たりにします。

解説で少し書かれていましたが、著者はアフリカの赤道ギニア共和国の政府を転覆させようと、私財をつぎ込み傭兵を雇ってクーデターを起こしたと言われていますが、本文中にはそれらのことはあまり触れられていません。著者にとっては根も葉もないことなのか、それとも触れたくない大きな汚点だったのかは不明です。

あと、著者はずっと昔のインタビュー記事で、日本嫌いということが書かれていたのを読んだことがあります。

理由は確か太平洋戦争時の日本軍と英国軍の戦いと、日本の戦争捕虜の扱いなどに憤慨したということでしたが、今ではその日本嫌いの思いは薄まっているようで、本著の中にも夫婦で日本を旅行し、高野山などへ行ったことなどが書かれています。しかし相変わらず日本や日本人が好きという感じではなさそうです。

この自伝がおそらく著者の最後の作品となりそうです。1996年に一度絶筆宣言をし、その4年後に再び作品を出した経緯がありますが、もうお金を稼がなくても十分らしいので、そのモチベーションはなさそうです。

★★★

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)

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僕の探偵(創元推理文庫) 新野剛志

僕の探偵2012年に「素人がいっぱい ラブホリックの事件簿」というタイトルで単行本が出版され、2016年に文庫が出版されるときにタイトルが変更された連作短篇集です。

「死者に名を」「雨宿り」「女王様のクリスマスプレゼント」「恋は紫色」「生者に花を」の5篇で組み立てられていて、最後まで読むと不可思議な登場人物の謎などが明らかになります。

単行本タイトルの「ラブホリック」とは主人公が勤務する渋谷の風俗店デリバリーヘルスの店名で、その主人公と大学時代の頭脳明晰な友人が探偵役で、三軒茶屋のアパートで同居しています。

そのデルヘリで起きる様々な事件や不可解な出来事を推理して解決に導くホームズ役が主人公の友人で、その周囲でオタオタするのがワトソン役の主人公というよくあるパターンです。

解説でも書かれていましたが、居候として同居する友人が探偵役とするのは、三浦しをん著の直木賞受賞作「まほろ駅前多田便利軒」と設定等が似ているところがあります。

ま、事件も風俗の仕事の様子もあまりリアリティはなく、さすがに著者自身が実際に現場経験してきた空港勤務の旅行代理店職員「あぽやん」と比べて内容に軽さと薄さが目立ちます。仕方ないですけど。

★★☆

著者別読書感想(新野剛志)

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