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4月上旬の読書 2012/4/18(水)

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大人もぞっとする初版『グリム童話』―ずっと隠されてきた残酷、性愛、狂気、戦慄の世界 (王様文庫) 由良 弥生

ドイツの古い民話・伝説を収集して書かれたのがグリム童話の原点だということですが、現代に知られている作品とは大きく違い、その内容は子供に聞かせるにはちょいと過激な内容のものが多く、時代を経て少しずつその内容が書き換えられてきました。

そのグリム童話の初版に書かれた内容を翻訳したのがこの本です。

しかし実際に読んでみると、事前に思ったほどは普通で、子供だって生きるの死ぬのといったことには興味があり、子供達が毎日見ている昨今の過激なテレビドラマやバラエティと比べるとずっとマシに思えてくるから不思議なものです。

それよりもそれぞれの物語で本当はなにを言いたいのか?なにを警告しているのか?ということを無視して、意味のないおとぎ話を創り上げてしまったディズニー映画のほうが問題なんじゃないかとちょいと感じたりもします。

もちろんおとぎ話仕立てにしたのはなにもディズニーだけではなく、グリム兄弟も世間の評判を聞いて次々と内容を変えていったそうです。

そしてタイトルにあるような「残酷、性愛、狂気、戦慄の世界」のようなおぞましい内容と思えるところはほとんどなく、それだけ現在身近に起きている事故や事件や災害が、古い伝承を大きく上回るまでに至ってしまったということになるのかも知れません。なのでちょっと期待はずれの感もありました。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

プロフェッショナル〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (スペンサー・シリーズ) ロバート・B・パーカー

いよいよパーカー最後の作品まで残り少なくなってきましたが、2009年に出版され、つい先日ようやく日本で文庫化された作品です(単行本は高くて買えない)。

ボストンの私立探偵スペンサーシリーズもこの作品を含め残り3作品となります。

この作品では派手なアクションはなく、金持ちの若い妻ばかりを狙って親密交際し、やがて金をゆすり取ろうとする魅力あるジゴロと、その強請をやめさせて欲しいと依頼されたスペンサーとの関係が楽しめる作品です。

話しの前半は、スペンサーもやがて好意すら持ってしまうそのジゴロというか女たらしの男性のことをずっと調べあげ、後半はその男に入れあげるセレブな若妻を中心として物語が進んでいきます。

スペンサーの魅力ある相棒ホークもヴィニィも登場しますが、その腕前を披露する機会はまったくなく、淡々としたストーリーで盛り上がりには欠けます。

しかしこれは派手なアクションを楽しむのではなく、落ち着いてスペンサーの会話を楽しむモノなのでしょう。

著者のパーカー自身もかなり高齢(77歳頃)の作品なので、スペンサーの思考法にもその老成したところが見え隠れする、じっくりと読ませてくれるたいへん面白い一品です。

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

夜を賭けて (幻冬舎文庫) 梁石日(ヤン・ソギル)

先般、山本周五郎賞を受賞した「血と骨」(1998年)を読みましたが、それよりも数年前に書かれた作品です。

この小説を原作とした映画も作られていて、昨年反原発で一躍有名人になった山本太郎氏が主演し、韓国に昭和30年頃の大阪をオープンセットで再現して2002年に制作されたものです。

その「血と骨」の中にも同じような時代と風景が登場しますが、戦後まもなく大阪城のすぐ近くにあった東洋最大と言われた大阪砲兵工廠跡を舞台にし、在日韓国・朝鮮人が差別や貧乏にまみれ、また警察やヤクザと闘いながら鉄くず拾いで必死で生きていく姿が描かれています。

戦後にこの大阪砲兵工廠跡で鉄くずを集めて売り飛ばしていた話しは、開高健氏の「日本三文オペラ」や小松左京氏の「日本アパッチ族」にも描かれている有名な話しですが、著者の梁石日氏の子供の頃の実体験が下地になっていることは間違いありません。

戦後から10年と言えばまだ日本も貧しく、日本に残った韓国・朝鮮人の生活もたいへん厳しいものでした。

そんな中で、終戦直前の8月14日に米軍B29の大空襲で徹底的に破壊しつくされた大阪砲兵工廠跡には、掘れば軍需物資や鉄のかたまりが生き埋めになったまま放置された人間の骨と一緒にザクザク出てきます。

しかし場所は国有地で、そこに埋まっているものは国有財産ということになり、夜中にこっそりと掘り返して盗み出す主人公達と警察がぶつかるのは自然なことです。

ただ警察も混乱時期でもあり、広い工廠跡を昼夜見張ることもできず、いたちごっこが続きます。

また自らの家族を殺害し、出所してからヤクザと関わりのある同胞もやってきて、警察とヤクザと一発当てようとする労働者がこの地を舞台にややこしいことになっていきます。

すでにもうその面影もほとんどなくなってしまった大阪城公園や京橋付近ですが、こういった歴史に埋もれたあだ花の上に1970年の大阪万博(日本国中はもとより世界中から集まってくる観光客向けに大阪城公園が綺麗に整備されたのも1970年)や1990年の大阪花博(会場の鶴見緑地はこの舞台の京橋のすぐ近く)が、その延長線上にあったのだと言うことを知るにはいいことかも知れません。

前半はアパッチ族の話しがメインとなり、後半はガラリと印象を変えます。主人公の1人がその窃盗容疑で警察に捕らえられ、その罪には執行猶予がついたものの、他の思想的な事件に関与してきたと思われ、不法入国者として長崎にあった大村収容所へ入れられます。

大村収容所は刑務所ではなく強制送還するまでの収容所という扱いながら、実態は北と南で戦争が起き、在日間でも対立するコリアン達を押し込めておく場となっていて、そこでの出来事を書くことで、この大村収容所が戦後に在日韓国・朝鮮人に対していかに人権を無視したひどい施設であったかを伝えるためと推測できます。

著者別読書感想(梁石日)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ほかならぬ人へ 白石一文

「ほかならぬ人へ」は2010年、第142回直木賞の受賞作品です。父親で作家だった白石一郎氏は「海狼伝」(1987)で受賞しているので、初の親子で直木賞受賞と言うことです。

この本には表題の「ほかならぬ人へ」の他に「かけがえのない人へ」の二編が収録されています。

まず受賞作の「ほかならぬ人へ」ですが、主人公は名門資産家に生まれながら兄達と比較すると才能が大きく劣っていると自覚し、大学卒業後は家を出てスポーツ用品を扱う企業に勤める男性の、ちょっと変わった悲劇で終わるラブストーリーです。

話の先行きがさっぱり予測がつかず、意外なことばかりで、う~むと唸らせられました。

ラブストーリーと言っても先般読んだ越谷オサム氏の「陽だまりの彼女」のようなキラキラホンワカしたものではなく、親同士が決めていた幼なじみでもある元婚約者とはお友達付き合いしながら、仕事の接待で行ったキャバクラ譲に一目惚れし家族の大反対を押し切って結婚します。

ここまでならばよくある話しですが、そこから驚きの展開が一気に加速していき、読者をグイグイと引き込んでいきます。

さすがにこれ以上は書けませんが、男性が読んでも女性が読んでもワクワク、ドキドキ、最後はウルウルと、読書の素晴らしさを堪能できること間違いありません。できればもう少し長編で書いてもらいたかったところです。

白石氏の小説は私は好きで文庫化された作品はすべて読んでいますが、なぜか映画やドラマになっていません。しかしこの作品はいずれテレビドラマ化か映画化されるのではないでしょうか。

この作品なら原作者へ映画権の申込みが殺到していてもおかしくありませんが、どうなのでしょうね。

もう一方の「かけがえのない人へ」の主人公は、周りから羨まれる同僚のエリート男性との結婚が間近にせまった29歳の女性。結婚相手とは別に、昔の男(元上司)と寄りを戻して再び深い交際をしているというしたたかさ。

マリッジブルーという言葉が昔からあるけれど、相性のいい昔の男が忘れられず、結婚式直前までフラフラとしているところが、世の中の女性の多くは共感を得られるのでしょう。

男にとってはなんだかとてもやるせない一品です。最後の終わり方がちょっと残念かな。

著者別読書感想(白石一文)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ジョーカー・ゲーム (角川文庫) 柳 広司

柳広司氏の作品では最初に「トーキョー・プリズン」を読みましたが、今までにはないまったく新しい作風に衝撃を受け、その後「キング&クイーン」や「新世界」を続けて読みました。

この作品は日本陸軍のスパイ養成学校を扱った一連のD機関シリーズと呼ばれ、その後も続きますが、この文庫には表題作ほか、幽霊、ロビンソン、魔都、XXと合計5作の短編が収められています。

小説に登場するD機関とは有名な陸軍中野学校を一部モデルとしていると思われますが、第二次世界大戦前の慌ただしく動く国際情勢をにらみ、陸軍の猛反対を押し切って、元スパイだった結城中佐が設立します。

各短編ごとに学校の卒業生や訓練中のスパイ達が活躍あるいは挫折する姿を描いています。

日本は伝統的に武士道の「正々堂々と対決する」という考え方があり、相手の秘密を利用して交渉や戦いを優位にする「スパイ行為など卑怯者のやること」という精神が根強くあります。

しかし同一民族間の争いならともかく、複雑で怪奇な国際間交渉においてはこの情報収集・分析能力は雌雄を決する重要なこととなりますが、日本はその点で世界に大きく後れを取ってしまうことになります。

また映画や小説で描かれるスパイというのは知的で冷酷でそして華々しくスーパーマン的な活躍を要求されますが、ここに登場するスパイは目立たず社会に溶け込み、透明人間になることが求められます。

自分の近くで人を殺めたり逆に殺められたりすること自体は際だって目立つ行為となり、スパイとしては最悪の結果と言うことになります。

いまでは国際的な地位が低くなって、さほど重要視されないとは言え、現在の日本においても世界中の多くのスパイ達がうごめいていることを考えると、なにかとても不気味さを覚えます。

そう言えばまだ英国統治下にあった香港で仕事をしていた時、英国政府ビルの前でなかなか捕まえることができなかったタクシーをやっと停めることができ、ヤレヤレと思って乗り込もうとすると、スーツ姿の白人男性が近づいてきて「どこへ行く?」と聞いてきたので「セントラル」と答えると「俺も途中まで乗せてくれ」と有無を言わせず乗り込んでくる。

相乗りしてどこから来たか?なんの仕事をやっている?など聞かれつつ、世間話しをすることに。

その後なにが気に入ったのか名刺を出して「今度自宅でパーティをするから遊びに来い」とパーティの日時と自宅の住所を書いてくれる。「必ず来いよ」と2回念を押され、その強い押しの雰囲気に逆らえず「All right」と返答。

そして上手な広東語でタクシーの運転手に自分が降りたい場所を伝え、先に降りていきましたが、彼が降りたあと、運転手が私に向いて小声で「He is a spy, England spy.」と言ってニタリと。

唖然として見送りましたが、タクシー運転手にまで知られているスパイとはこれいかにって感じです。

スパイの親玉で有名人だったのでしょうかね。どうしようか少し迷いましたが、仕事も忙しくパーティには行きませんでした。行っていたら人生変わっていたかもしれませんね。

著者別読書感想(柳広司)

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