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先日NHKの番組の中で、仕事が終わっても、まっすぐ家には帰らず、時間をつぶしている「フラリーマン」が増えているという趣旨の話がありました。
放送後には反響が大きかったせいか、NHKやまとめサイトに、感想や意見、その後の様子などがアップされています。
“フラリーマン” まっすぐ帰らない男たち(NHK Web)
NHKおはよう日本で取り上げられた「フラリーマン」に賛否両論 みんなの反応は?(まとめまとめ)
私に言わせると、「そんな暇な時間があるならとっとと家に帰ってやるべきこといくらでもあるだろうに」と思ってしまいますが、番組の中では様々な理由を挙げる人がいて、少し納得するところもありました。
まずなぜフラリーマンが増えたかと言えば、明らかに電通事件を筆頭に多くの企業が残業抑制に走り、それで今まで当たり前に夜遅くまで残業していた会社員が、今まで仕事に充てていた時間が余ってしまい、かと言ってまっすぐに家に帰りたくない理由がそれぞれにあって、ということなのでしょう。
独身の人なら、外で過ごしても家にまっすぐ帰っても変わりはないので、どちらでもいいのでしょうけど、結婚している人は、家族、特に小さな子供や、介護すべき高齢の両親などがいると、家に早く帰っても気が休まらないということで、帰りたくないという事情があるそうです。
女性からすれば、暇な時間があるのなら、少しでも家事や育児、介護を手伝ってよ!と言うことなのですが、会社で1日働き、帰ってからも家事や育児で働くというのはよほどできた旦那以外、なかなか積極的にできることではありません。
すでに共稼ぎ率が専業主婦世帯を大きく超えているので、過半の働く女性からすれば、「なにを甘いこと言っているの!」とお叱りを受けそうですが、元々育児や家事をやってこなかった多くの男性にとってはハードルが高く、急にそれをやって当たり前と言われても戸惑うばかりでしょう。
番組の中でも、ちょっと特例だとは思いますが、帰って家事を手伝っても妻からダメだしを喰らい、結局は妻が全部やり直しすることになり、余計手間が増えたと妻から言われ、早く帰れなくなった人が出ていました。
せめて、そうした訓練を受けていればまだいいのですが、「そんなことも知らないの?」って、妻からなじられながら家事や育児、介護をおこなう男性の姿が哀れに思えてきます。
これも今までが職場が男性社会で、家のことは妻に任せるという慣習があり、それが変化してもなんとか逃げ延びようとしてきた男性側に非があるのは重々承知で、今はそれの変革期で、過渡期ということと言えそうです。
番組の中でも「どうして?」という問いに、「家では邪魔者扱いされてしまう」とか、「長く親の介護をやってきてストレスがたまっている」とか、「会社や家庭から離れたひとりの時間を持ちたい」という様々な理由が挙げられていましたが、あまり説得力のあるものではありませんでした。どちらかと言えばなんとなくという消極的理由って感じです。
そして決定的だったのが、子供のいない場合と、子供がいる場合では、子供がいる家庭の場合のほうがフラリーマンが多いという統計結果が出ていました。
せっかく政府が本腰入れて「働き方改革」を推進し、女性活躍の場を作ろうとしていますが、こうした家庭に帰りたくないという人が増えていくほど、その目論見は大きく崩れていきそうです。
どうすればいいのでしょう?
ひとつには、男性も家事をと言うのなら、主夫率をもっと高めて、子育てや家事が得意だという男性を多く作り出していくのも方法でしょう。
男性が家事や子育て、介護などをおこないやすい環境を作らないといつまで経ってもそれは進みません。そのためには女性がもっと働き、一家の家計を支える人が増えなくちゃいけません。
日本の専業主婦率は激減してきているとは言えまだ38%です。一方増えてきていると大げさに言われている主夫率はなんと0.4%という少なさです。
男性も家事や育児、介護をもっとやれ!と言うなら、主夫率もせめて20~30%ぐらいはないと、男女平等とはとても言えません。現在の50倍以上数を増やさないといけません。
そうした家事や育児、介護に向く男性を育てるために、花嫁学校ならぬ、花婿学校を全国に作って、激しい弱肉強食の競争社会はゴメンだ、人の役に立つ仕事がしたい、料理や掃除など家事が好き、福祉に興味があるという男性を誘導し主夫を養成するとかも国策として必要でしょう。
番組を見ていて思ったのは、登場するフラリーマンはみな、居酒屋とかに寄ってお酒を飲むから帰るのが遅いのではなく、家から持ってきた腐りかけのおにぎりを食べて飢えをしのぎ、お金のかからない公園のベンチや量販店などをブラつき、時間をつぶしているのがなんともはやでした。
残業が減ると当然手当が減り、手取額が減りますから、今までのように気軽に帰りに一杯とか、パチンコ店で時間を潰していうこともできなくなってきているのでしょう。
なんのための働き方改革かわからなくなってきますね。
本来なら、もっと前向きに、もしまっすぐ家に帰りたくないのなら、夜間の学校や講座へ通ってなにか新しい資格や趣味にチャレンジするとか、NPOなどのボランティア活動に参加するとか、夜でも空いている図書館を探して勉強したり、もっと有効な時間の使い方がありそうです。
そうした歳や内容には関係がなく、学習する意欲の積み重ねが、きっと10数年後には思わぬ役に立ったり、人生に厚みをもたらせてくれたりするものです。思っていても、それがなかなかできない人が多いと思いますが。
【関連リンク】
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1162
9月になると新学期が始まると言うこともあり、中高生の自殺が増えるという話しが数多く出ていました。確かに8月下旬から9月初旬に賭けてそのような報道が多く見られました。
首都圏で中高生の死亡相次ぐ 新学期に自殺か(産経ニュース)
東京都内で女子中学生と男子高校生が死亡しているのがそれぞれ見つかり、千葉県では男子高校生とみられる男性が電車にはねられた。警視庁や千葉県警によると、いずれも自殺の可能性があるという。中略 東京都と埼玉県では8月30、31両日、少なくとも中高生3人がマンションから転落するなどして死亡。いずれも自殺とみられる。 |
同級生や先輩からのイジメや校内暴力、恐喝、教師の暴言などにより、新学期の始まる4月や、長い夏休み明けの9月、冬休み明けの1月などに学校へ行きたくない、学校へ行くぐらいなら死んだほうがマシと思い悩む子供がいても不思議ではありません。
そうした学校へ行きたくない子供達の逃げ場を提供しようとする動きも最近多く見られます。また、テレビなどでも、追い詰められた子供に「学校へ行かなくても良い」「図書館へ行こう」とか呼びかけています。
新学期が死ぬほど苦しい君へ 「義務教育は1日も通わず卒業できる」(AERA dot.)
あの日、学校へ行かなかったから、私は自分の命を拾ったのだと今でも思っています。1年のうちで最も子ども自殺が多くなる「9月1日」を前にすると、自分が不登校だったころのことをどうしても思い出します。 |
2015年の夏休み終盤の8月25日には鎌倉図書館員のツイートが社会に大きな反響を与えました。このツイート以降、多くのメディアで「つらければ学校へ行かなくてもよい」というメッセージが普通に使われるようになりました。
もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。 |
公共施設で勤務する公務員たる者が「学校を休んで図書館へ来いとはけしからん!」と言う一部の人もいたでしょうけど、このツイートは多くの人に支持、理解されています。
大人でも4月に社会人となり、1ヶ月が過ぎた後、5月の長い連休明けになると、会社へ行きたくなくなるいわゆる五月病というのもあります。
ただ、そうした「夏休み明けに自殺が急激に増える」というのは統計的には根拠がなく、元々年代別で言えばかなり少ない20歳未満の自殺数ということもあり、9月だけ特異的に自殺が増加するという傾向は見られません。
何度かこの日記でも自殺について取り上げてきましたが、繰り返すと、日本の自殺者のほとんどは中高年者であり、理由は健康問題、経済的理由ということです。
警察庁のデータでは、自殺者数は2016年(H28)は21,897人(男性15,121人、女性6,766人)となっていて総数では7年連続で減少しています。
そのうち、中高生が含まれる20歳未満の自殺者数は520名、全体に占める割合は、他の各年代が10数%に対しわずか2%という少なさです。20歳未満を中高生だけに限定すればさらにこの何分の一に減ります。つまり20歳未満の自殺は稀なことであり、統計上では表面には出てこない極めて小さな数値になってしまいます。
20代は少子化で人口が少ないから低くて当たり前?
人口10万人あたりの自殺者数を割合にした自殺率で見ると、20歳未満は2.4%、つまり20歳未満の10万人の中の2.4人が自殺をしたことになります。
同じ自殺率で50代は27.1%で、10万人中27人が自殺でなくなっています。20歳未満と比べるとざっと11倍という高率です。
「人の命に軽重はない」ということであれば、この20歳未満の自殺者への対策はまったく無視をしてもよいレベルで、それよりも50代の自殺を防止をすることに全力を挙げれば自殺者数、自殺率とも大きく下げることができます。
そして月別の自殺死亡率を見ると、毎年特異的に多いのは3月と5月で、それぞれ自殺率平均は19.6%、19.2%(2016年)となっています。次が4月と6月で、概ね春(3~6月)に集中している傾向があります。
これは推定ですが、企業の1年が3月末が期末で4月に新年度を迎え、それに合わせて就職、人事異動、退職などがおこなわれることと関係がありそうです。
中高生の自殺が多いと言われる9月の自殺率は平均で16.9%で、自殺が特異的に少ない12月や8月に次いで、比較的自殺が少ない月のグループに入ります。
年齢別の月別の数字が調べられなかったので、20歳未満の9月の自殺率がどうなっているかはわかりませんが、20歳未満は他の年代と比べて極めて少ない自殺者数、自殺率ですから、全体の傾向に与える影響も少なく本当に多いのかどうか判断が付きません。
上記の記事は、「学校が嫌で自殺を選ぶぐらいなら不登校を選ぼう」という主張であり、それは正しい提案でしょう。
私の年代(昭和32年生まれ)では、不登校になる中高生というのは極めて少なかったような気がしますが、イジメや暴力がなかったわけではありません。
そして今の時代、子供達に「我慢、根性が足りない」とか「這ってでも学校へ行くべき」とか言うつもりはまったくなく、親から金をせびって学校をサボって放蕩の限りを尽くすのでなければ、選択肢として、フリースクールや高校生以上なら働きながら通信教育を受けるなど、通常の登校以外の別の方法を考えるのもアリだと思います。
ちなみに有名人で過去に子供時代に不登校を経験した人を上げておくと、
小栗旬、星野源、安室奈美恵、指原莉乃、マツコ・デラックス、千原ジュニア、伊集院光、吉木りさ、中川翔子、藤田ニコル、平山あや、栗原類、手嶌葵、なだぎ武、チュートリアル徳井、西田敏行、宮崎哲弥、宮本亜門、樹木希林、家入一真、小飼弾など(敬称略)で、大人になってから素晴らしい活躍をされている方がたくさんいらっしゃいます。
現代の感覚では、不登校=ダメ人間ではありませんし、それで人生が決まってしまうわけでもないということを子供はもちろん、教育熱心な親も教育関係者もよく理解しておくべきでしょう。
【関連リンク】
1076 繰り返すな過労自殺
919 春は自殺者が多いという話し
575 自殺者数と失業者数の相関関係
338 自殺者数が年間3万名を超えている意味
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福島の原発事故以来、「政府寄りだ」とか、「左寄りだ」とか、「反日だ」とか、様々なマスコミやメディアに対して「偏向報道だ!」という意味の発言を目にすることが増えました。
20年ほど前までは、情報発信をする側は巨大な組織(放送局や新聞社)しかなく、細々とやっている雑誌社などは発信力が弱かったので、従来はこうした「偏向報道だ!」と叫ぶ声はかき消されてしまうのが普通でした。
最近は、TwitterやFacebookなどSNSで、手軽に個人の発言が広く拡散されることで、日常的によく目にすることが増えてきました。
櫻井よしこ「国民から受信料を取って偏向報道するNHKおかしくない?朝日新聞より悪質」(NET GEEK)
アメリカでもトランプ大統領が、そうしたSNSをうまく利用して、特定の新聞社や放送局を「フェイクニュースだ!」と決めつけ、自分にとって都合が悪いニュースや記事を偏向していると強く非難しています。
こうしてみると、この偏向報道と言うものは、ある特定人物から見た偏向であって、なにを基準に偏向しているのか?ってところが見えにくくなってしまっています。
実のところ個人の意見や見解ほど偏向しているものはなく、それを避けるために、放送局や新聞社では記者やデスク、編集委員、ディレクター、プロデューサーなどが複数人で内容をチェックして、できるだけ個人の意見を排し、中立の立場で報道しようとしていて、その心がけが本来正しい姿と言えます。
そのため、新聞社や放送局独自の判断だけではなく、専門家や学者、評論家、そして関係者などにも意見を求め、幅広い意見や見解を得ようと、たいへん面倒くさい涙ぐましい努力をしています。
そうした複数のチェックを経てきた報道に対し(それでも社や局の方針や主義主張によって偏りがあるのはやむを得ないとして)、ある特定の偏見や誤解や思想や宗教観や政治信条をもった個人が、「マスコミの報道は偏向している!」と声を大にして言うのは矛盾していておかしくはないでしょうか?
もちろん大手マスコミも、まったく政治信条が中立の人ばかりが働いているわけではなく、また経営層や編集長、デスク、ディレクターなど主要なメンバーの政治信条や思想などが色濃く反映され、右にも左にも、労働者にも経営者にも、愛国にも反日にも、保守にも革新にも、与党にも野党にも旗色が変わることがあるしょう。それは決しておかしいことではありません。
同じ事件や政策でも新聞社によって評価が違ったり、取り上げ方が違うのはそのせいで、様々な意見が出るそれ自体は国家統制で記事の内容が縛られたり検閲されて、一面的な報道だけが許される某国と違って健全なことだと思います。
自分にとって心地よい報道する機関は「公正中立」で、自分にとって都合が悪かったり、意見が違う報道は「偏向だ!」と、そう言う人こそまったく信用が置けません。
NHKの場合は、各人が好みで選び購読する新聞と違って、視聴者から強制的に聴取聴料をとっているから、より中立の立場にこだわらないとダメという(偏向した)意見もありますが、思想信条を持った普通の人達が、それぞれ予算や締め切りや上司の意向などを忖度しつつ作るものである以上、厳に公平公正ものが作れるはずがありません。
将来AIがニュース記事を作ることが想定されますが、それだって過去の傾向を取り入れた恣意的な内容で作られることになるでしょう。まさかAIが独自に中立性を宣言し、過去の膨大なデータにはとらわれず、自分の判断で記事を書くわけでもありません。
NHKに限らず、まずはそれらを理解した上で、報道や論評を見たり聞くべき事なのです。そして個人がどう判断をするかは自己責任の範疇で、明らかな虚偽でなければマスコミの報道にクレームをつける筋合いのものではありません。
例えば選挙の際、選挙運動臨時特例法に基づいた政見放送以外では、主要な候補者には多くの時間が使われて報道され、その他泡沫候補は最後に名前が紹介されるぐらいでほとんど時間が使われないのも、泡沫候補やその支持者にしてみると偏向報道だ!ということになります。
それは確かにマスコミの原則である公平公正な報道ではないですね。でも多人数の候補者を同じ時間だけ使って公平に報道しないことも、合理性や視聴者の利便性などから、グレーと認識しつつも認められているわけです。
しかし、さすがに個人や特定の政治信条や思想、宗教、主義で集まった組織集団より、公共的な機関や会社組織になっているマスメディアの中立性、報道倫理はずっとマシなレベルが維持されています。
上記の櫻井よしこ氏が、もしひとりでマスメディアを立ち上げたら、そりゃ一般的に言って超偏向報道メディアに分類されそうです。それは櫻井氏に限らず個人の主張なんて、一般的に見て公正中立なんてあり得ないわけです。
それでもやっぱりマスコミは偏向報道だ!と思う人は、冷静になって視点を変えてみると、自分自身がかなり偏屈で、思想的に偏向しているのだということに気がつくでしょう。気がつかないならそれはもう洗脳されて非合法活動に走るオーム真理教の元幹部のように手の打ちようがない重症です。
過去にNHKも朝日新聞も毎日新聞も読売新聞も、政治家や軍部に協力をして、対中、対米英戦争に向かっていく国民世論を形成してきたという愚かな黒歴史を持っています。
そうした愚かなマスコミやメディアだから、また同じ過ちを犯すという心配もないわけではありませんし、マスコミ批判において、なんとかのひとつ覚えのように今でも必ずそれを持ち出す人がいます。
しかしあの時代、自由報道が許されない時代、マスコミが生き残る(新聞を発行したり放送電波を飛ばす)方法として、軍部に協力する以外の選択肢があったのでしょうか?
当時のマスコミに、軍部を批判したり、統帥権を持つ天皇を批判したり、多くの国民の支持を集めている好戦的な政治家を公然と批判ができたでしょうか?
もしそれをおこなえば、たちまち関係者は連座し、良くて監獄行き、悪ければ拷問された上に刑死という時代でした。同時に新聞発行や電波送信も止められてしまったでしょう。
結果的にはマスコミが果たした戦争責任の罪は小さくないと思いますが、そうした軍部の暴走を止められなかったのはマスコミの責任だ!と一方的に押しつけて、それに一緒に乗っかった大多数の国民が被害者面していて良いとは思えません。
やたらと最近目に付く「マスコミは偏向報道だ!」という"クソリプ""クソ記事"に反応してしまい、普段はマスコミ批判を嬉々とおこなっているマスメディア嫌いの私が、珍しくマスコミ、マスメディアを全面的に擁護してしまいました。
【関連リンク】
1006 都合よく利用される虚報
491 首相や東電バッシングに思うこと
428 報道は弱いモノの味方なのか?
411 業界では常識でもマスメディアでは一切報道されないこと
358 テレビ・新聞に未来はない?
382 マスメディアと評論家を信じてはいけない
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朝や昼の情報番組を見ていると、定期的な特集として出てくるのが、ギャンブル依存症やアルコール依存症などの社会問題です。
たいていは近年の依存症患者数の推移をとりあげ、その実態報道ということで、モザイクをかけた依存症の人の日常を追いかけるという内容です。
これらのネタには尽きませんので、テレビ各局とも、大きな事件や話題がない時のため、埋め草的な特集として常時用意してあるという感じです。
ついこの前には、朝の時間に「ギャンブル依存症280万人!」という内容の特集がテレビでやっていました。
最近、東京オリンピックに合わせ、公営カジノを認可しようという動きがあり、それとともに盛んになってきたのがギャンブル依存症対策に力を入れようという運動です。
日本でギャンブルと言えば、公営の競馬、競輪、競艇、オートレースが主と考えられていますが、実は金額でも利用者でも一番多いのは公的にはギャンブル(賭け事)とはされていないパチンコです。
4種の代表的公営ギャンブルの売上合計は2兆円ほどですが、パチンコの年間売上は20兆円ほどあり、桁違いに大きなものとなっています。
パチンコで換金できるのは暗黙の了解ですが、管轄の警察は表面上はそれを認めておらず、あくまで景品の買い取りをしているだけというスタンスですから笑わせてくれます。
その警察とパチンコ業界とのつながりは深く、天下りも大量で、ズブズブの関係ということもよく知られています。
そのパチンコですが、ギャンブル性というか射幸心を抑えるために、今まで大勝ちすると10万円ぐらいの収入になった出玉を、3年後までには5万円程度にするという出玉規制の方針が決まり、段階的に新しい機械にかわっていくそうです。
警察庁が風営法施行規則を改正。パチンコ業界「悪夢の倒産ラッシュ」(週プレNEWS)
ここ数年、パチンコ業界は不況で、参加人口はピーク時(1994年)の約3000万人から940万に激減してます。さらにパチンコ台のスペックが下がれば、その940万人もホールから遠ざかってしまいかねない。 |
大勝ちができないと依存症が減るという目論見だそうですが、果たしてそうなのかは謎です。
私も独身時代には、たまにパチンコを打ちに行ったことがありますが、もうここ30年ぐらい入ったことがなく、あまり知らないのですが、昔のようにサラリーマンがちょっと暇つぶしで1万円を超えない範囲でちんたら遊ぶゲームから、数万円をつぎ込んで、1日で10数万円を目標に稼ごうとする人達への特殊な賭けのゲームへと変わってきました。
そのきっかけとなったのは、言うまでもなく1980年に最初のフィーバー機が登場し、一攫千金の大当たりするマシンがブームとなり、その後もギャンブル性が強い機種が次々と登場したことによります。
また、大勝ちすることもあれば、当然大負けすることもあるという、博打性が強く、それだけに射幸心を煽り、その魔力にはまってしまい、依存症に罹ってしまう人が増えているのだとか。
私が行かなくなった理由も、当時から増えつつあった、パチプロやセミプロと言われる、定職を持たずにパチンコに朝から夜までいて、その稼ぎで生活をしている、機種や釘にやたらと詳しく、また常連同士で徒党を組んでパチンコ台を融通しあうプレーヤー(軍団と呼ばれる)がホールに増え、私のようなまるっきり素人がフラリと行って楽しめるような場ではなくなったからです。
さて、依存症対策ですが、ギャンブル依存症の場合は、アルコール依存症とは違い、病気とひとくくりできないところに難しさがあるように思います。
つまり上記でも書いたパチプロのように、それをギャンブルを生活の糧にしている人が実際に多くいるってことです。
多少ながら、競馬や競輪等でもその配当金を目当てに予想し、また当たり券を予想するプログラムを使って、それを本職としている人がいますが、パチプロの数は半端ないところが問題です。
パチンコの遊技人数は約1000万人と言われていますので、その20人にひとりがパチプロ(セミプロ含む)と想定すると50万人、50人にひとりとすると20万人ということになります。私の感覚ではそのあいだぐらいかなと思います。
パチプロは所得の申告をしませんので、国はその人数をつかめません。無職の人もいれば、別の仕事と掛け持ちでやっている人もいるでしょう。
そうしたパチプロは、決してギャンブル依存症という人ばかりではないでしょうけど、パチンコの規制が強まり、儲けが出なくなると、どうやって生活を立てていくのか気になるところです。
ギャンブル依存症対策もたいへんですが、規制強化に乗り出すのなら、少なく見ても20万人のパチプロの再就職問題も合わせて考えておかないと、下手をするとそのまま地下へ潜って非合法事業に手を出したり、生活保護受給へ突入していきそうな予感もします。
【関連リンク】
1111 ギャンブル依存対策もいいけど、引きこもり中年問題もね
941 それでも宝くじに夢を見る
819 パチンコ業界その未来は?
693 引きこもりが長期化する前にすべきこと
604 ニート対策ひとつの考え方
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危険なささやき (1983年) (ハヤカワ・ミステリ文庫) J.P.マンシェット
日本語版は1983年に発刊されたフランスの私立探偵小説というちょっと珍しいジャンルの作品です。
フランスの小説ということもあって、この小説を原作としたアラン・ドロンが制作・監督・主演をこなした同名の映画作品が1981年に作られていて、そちらのほうが一般的にはよく知られているかも知れません。
そしてこの小説の翻訳者が、フランスを舞台にした犯罪小説やミステリー小説を多く書き、また2001年に「愛の領分」で直木賞に輝いた藤田宜永氏というのも注目される点です。
小説の舞台になっているのが1970年代後半頃のフランスで、有名なシャンゼリゼや凱旋門など観光地ではなく、パリ郊外などあまり知らない場所で展開していきます。
また当然ですが、時代柄携帯電話やパソコンなど情報機器らしいものはなにもなく、昔ながらの知恵と足で情報を得て、事件に首を突っ込んでいきます。
主人公が行方不明になった女性を探そうとした途端に、殺し屋が現れ、事件から手を引くように脅されたり、依頼人と駅で待ち合わせをしたら目の前で射殺されてしまったり、さらにはガールフレンドが誘拐されてしまうという、よくわからないまま大きな陰謀に巻き込まれていきます。
派手なドンパチや暴力シーン、アクションシーンもふんだんにあり、確かに映画に向きそうなエンタメ的展開です。
書かれた時代が時代だけあって、今読むとなにか懐かしい香りがする上質なミステリー探偵小説でした。古い文庫本だけに文字のサイズが小さく、目の焦点が合いにくくなってきた高齢の身にはちょっとつらいのはやむを得ません。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
会社の品格 (幻冬舎新書) 小笹芳央
著者は元リクで卒業してリンクアンドモチベーションを設立して活躍されている有名な方です。2007年に出版されました。
どうも私は「品格」という言葉に弱く、30数年前に新卒で入社した(営業が主体の)会社の当時の社長がよく言っていた「一流の環境にいれば一流の品格が身につき一流の営業ができる」と、当時はまだ小さい会社ながら、かなり無理をして超一流のビルの中に(小さく)事務所を構えていたことを思い出します。
で、「一流の品格」ってなんぞや?とずっと考え続けてきましたが、実は今でもよくわかっていません。品格って時と立場と環境によりますよね、たぶん。
それ故に、書籍で「品格」と名の付くものは、自然と手が動き、片っ端から買ってきて読んでいるってわけです。
「国家の品格」「男の品格」「女性の品格」「女と男の品格。」「日本人の品格」「遊びの品格」「親の品格」などなど。
で、この本は新書にありがちな著者の会社の事業PR本という側面は多々あるものの、経営者が自分では気がつかず、残念な会社となっていく気づきになるかもしれません。
うつけな経営者が「なるほど!そうか!」と手を打つかどうかはわかりませんが、著者の経営する会社に相談してみよう!と考えるかも知れません。
企業経営者が書いた新書を読むと必ずと言って良いほどそうした自社PR本となっていて、印刷部数のうち書店で販売された数よりも会社が買い取って客や見込み客に配った数のほうが多いのではないか?って思うこともありますが、物書きができる中小企業経営者にとってはそれが最善の策とも言えそうです。
この本は、そうした自社PRももちろん詰め込まれていますが、ははーんなるほどねという納得感もあり、特に目新しさはありませんが、暇つぶしの自己啓発には悪くありません。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
男の勘ちがい (文春文庫) 南美希子
amazonが日本に法人を設立したのが1998年ですから、この本が出版された1992年にはまだ本の通販は一般的ではなかったということになります。
だから何なのだ?と言われても困りますが、1991年に設立されて急拡大中のブックオフで見つけたこの本の中身はかなり赤茶けていて、いかにも古書という感じがします。1992年と言えばわずか25年前なんですけどね。
著者は元テレ朝のアナウンサーで、この本を執筆したときは33歳とありましたから、今では還暦を超え、立派な高齢者の仲間入りをされています。今でもバラエティ番組などに時々出演されているようです。
この本が書かれた頃の世の中はまだバブルに踊っているさなかで、「車載電話付きの高級外車」や「地上げオヤジとその愛人」とか、「カルティエのリング」「アラミスを付けた男」とか懐かしいことばが満載です。今真面目に書かれているそういう時代表現を読むとなんだか皮肉を綴った漫画です。
しかし著者とはひとつ違いの同年代で、そうした時代をともに見てきただけに、笑えるに笑えません。
ちょっと今読むと時代があまりにも違いすぎて、男女とも役には立ちそうもありませんが、バブル時代の饗宴をちょっと懐かしむにはちょうど良いかもしれません。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録 (文春文庫) 加藤廣
「信長の棺」(2005年)のスピンアウトもので2011年発刊(文庫は2013年)の短編集です。
「藤吉郎放浪記」「安土城の幽霊」「つくもなす物語」の三編からなるこの「小説は、タイトルにもある通り、「信長の棺」の戦国時代末期のそれぞれ独立した物語です。
しがない商人から時代の寵児へと駆け上がっていく秀吉=藤吉郎の身分や山の民として生まれた出自を必死に隠し、己の才能だけを頼りに信長に近づき、腹心として当時の家督制度、武家社会に真っ向立ち向かっていく姿を描いた「藤吉郎放浪記」。
信長の理不尽な命令に振り回されて悔しがる愚図で小心者の家康が、腹心の部下服部半蔵を使って信長に偽の幽霊を見せて一泡吹かせようとするものの、安土城には信長に取り憑いた本物の幽霊が先にいて、取り憑かれた幽霊を祓うために頼ったのが阿弥陀寺の住職、清玉上人だったという話しの「安土城の幽霊」。
室町時代に宋から日本へ渡り、足利義満に献上されたとされ、現在も静嘉堂文庫美術館に所蔵されている「九十九茄子〈つくもなす〉」という見事な茶器が、足利義満(金閣寺建立)→足利義政(銀閣寺建立)→山名是豊(応仁の乱)→伊佐宋雲→朝倉教景→松永久秀→足利義昭→織田信長→豊臣秀吉→有馬則頼→徳川家康→藤重藤元→岩崎弥之助(三菱グループ創設者)と数奇な運命をたどっていく話しの「つくもなす物語」。
いずれも戦国時代ファンにとってはフィクションとした「異聞」ではあるものの、なかなか面白い内容となっていて、エンタメとして楽しめます。
★★☆
【関連リンク】
8月後半の読書 白雪姫殺人事件、里山資本主義、デセプション・ポイント、漂流者たち
8月前半の読書 転落の街、となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術、長女たち、殺戮にいたる病
7月後半の読書 漂えど沈まず、そして奔流へ 新・病葉流れて、本と私、落日燃ゆ、いっぽん桜
7月前半の読書 思考の整理学、白砂、ちょいな人々、静かな黄昏の国、召集令状
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