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先般、世界経済フォーラム(WEF)が各国の男女格差(ジェンダーギャップ)報告書を出しました。
高度成長期には政治は三流だけど経済は一流などとおだてられていましたが、それもとっくに怪しい状況で、男女格差に至っては日本はずっと昔から世界の三流国と言っていいのかも知れません。
【世界最低レベル】日本の男女格差は一体いつ解消されるのか 女性が働きやすい企業を増やさなければ変わらない(BLOGOS)
世界経済フォーラム(WEF)が10月26日に発表した各国の男女格差(ジェンダーギャップ)報告書 「経済活動への参加と機会」「政治への参加」「教育」「健康と生存率」の4分野の計14の項目で、男女平等の度合いを指数化して順位を決める。今回の111位はG7先進諸国の中ではもちろん最低レベル。日本と近い順位の国を見ると、エチオピア(109位)、ネパール(110位)といった発展途上国が並ぶ。同じ東アジア諸国と比較すると、韓国(116位)よりは上ではあるが、中国(99位)よりは下。 |
誰が悪いとかではなく、男女格差を許して放任してきた社会構造、文化、教育などが長く続いてきたからであることは明らかです。
世界を見回すと男女格差や、貴族などの特権階級の世襲など、様々な格差が存在していましたし、現在でもまだ残っている国もたくさんあります。
しかし世界が猛烈なスピードで変わりつつある中で、男女格差に至ってはグローバルスタンダードと比較すると遅々として改善されていないことが、国際機関に名指しで指摘をされないと理解できないという状況になっています。
今でも政治家やリーダーが女性だと、それだけで注目されたり、オジサン方の「お手並み拝見」という見下したようなスタンスが歴然と支配しています。
って言う、そういう私も長く昭和時代に生きたオヤジなので、そういう感覚はわからなくもありません。
でも仕事柄、働く女性達と一緒に仕事をする機会が多く、また上司や同僚に女性が何人もいたので、仕事で女性だからという偏見をもったことなどなく、特に意識をしたことはありません。
ただ今の団塊世代ぐらいまでは、やはり女性は結婚したら家庭に入ってというのが常識で、そうしてきた人に社会において女性の活躍をサポートすることを求めても無理がありそうです。頭ではわかっていても、自分の常識にはないことなのです。
幸い日本でも大きな力を持ってきた団塊世代が次々と現場から引退し、男女平等、女性総合職時代の人達が企業の中で力を持ってきていますので、これからは一気に変わっていく可能性があります。
あとは女性側が、「男が働いて妻と子を養ってくれる」みたいな専業主婦の幻想を捨ててくれることが必要でしょう。
ソニー生命の調査では、3人に1人の女性に専業主婦の願望があり、仕事をして管理職になりたいと思う女性は2割に満たないということでした。これは今回の結果だけではなく毎年似たような結果となっているので、本音なのだろうなと思います。
女性の活躍に関する調査 2016(ソニー生命)
それでも専業主婦願望が3割というのは20年前からすれば大きく減ってきていると思います。
あとは、社会、特に企業や役所が男女の隔てなく女性にもっと重要な仕事を任せていくようになることですが、やはり女性には出産や育児と言ったハンデがつきまといますので、その点を考慮した社会の仕組みや、子供の頃から男性が家事や介護、育児を平等に担っていくことを身につけさせる教育が必要でしょう。
女性が働きに出るために保育園の充実などもそのひとつですが、欧州などでは当たり前になっている夫が長い育休をとって、育児を担うようなことも考えないといけません。
日本の社会で、男性が育児をするというのはまだまだ珍しいのでしょうけど、今の20代の人達はあまり抵抗もないようなので、それが会社や役所の中での評価で不利にならない、男性も育児や家事をするのが当たり前という理解が進むことが求められます。
個人的なことを書くと、前述の通り、昭和人間で、自分は外で働いて、妻は家で育児を中心に家事全般を担うという生活を長く送ってきましたが、三人目の子供が生まれた頃から妻がパートに出るようになり、自分も少ないながらも育児をするようになってから、「育児というのはなんと楽しいものなんだ!」と初めて気がつきました。
もちろん育児は楽しいことばかりではなく、たいへんなことも多いですが、仕事で嫌なことをすることを考えると全然気にならないぐらいのことです。なので男だからと言って育児を放棄しちゃうのは絶対に損です。
育児のなにが楽しいかと言うと、育児は自分のDNAを持った人間をゼロから独り立ちするまで、どういう人間を作っていくかという数十年間の大きなプロジェクトだと見ることができます。
その達成感や充実感は仕事の巨大プロジェクトでも得られないほど大きなものがあります。しかも嫌なクライアントにペコペコしたり会社の利益を考えたりする必要はありません。
自分の思うように育ってくれるとは限りませんし、反抗することもあります。でもそれがその中にいると愛おしくて楽しいのです。
「リング」などで有名な小説家の鈴木光司氏は、育児や主夫として有名です。今から考えると、本当に羨ましい生活をされていると思います。
私と同い年ですので、生まれ育ってきた環境は私と同じだと思いますが、育児に関しては大きく進んだ考えの方です。
鈴木光司さん “文壇最強”子育てパパの、実践から生まれた勉強法
男女格差から育児の話しへとちょっと脱線してしまいましたが、いずれにしても男性が育児に関わり、女性が男性と平等に社会に出ていられる環境を整えていくことが、女性の社会での活躍が一層進むのではないでしょうか。
【関連リンク】
1055 働き方と社会構造
1035 最近の恋愛、結婚事情
1009 兼業禁止規程はいつ禁止されるか
787 世帯内単身者の増加が引き起こすかも知れない社会問題
724 離婚の多さと結婚という形式
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先週11月1日(火)から来年の年賀状の販売が開始されました。年賀状の声を聞くと、いよいよ今年も押し迫ってきたという感じがします。
私は昭和人間なので、年賀状との因縁は深く、古くは50年以上も前の保育園時代から先生や友達、親戚、知人に年賀状を送るという習慣を半ば義務的に繰り返してきました。こうした習慣は親が身につけさせてくれるかどうかが大きいでしょう。
そんな中で、転勤や転職をしたときには、前職で仲の良かった人達へは今まで通りに送るものの、あまり親しくはなかったけど儀礼的に送っていた上司や同僚には転職を機に送らなくなったりを何度か繰り返していきます。
そうしていくうちに、ほぼ毎年定番での送り先が固まっていきました。年を取るということは、新たに年賀状の送り先が増えないことと同義かもしれません。
もちろん高年齢になってから新たな仕事にチャレンジしたり、趣味など同好の知人が増えて、年賀状の送り先がさらに増えていくという人もいるでしょうけど、一般的に定年間際になるサラリーマンにとっては増える機会がありません。
最近は若い人を中心に、手間もお金もかかる郵便の年賀状にはあまり執着せず、メールやLINE、Twitter、Facebookなどで新年の挨拶をやってしまう人が多くなってきていると思います。それはそれで、時代の要請ですからいいんじゃないかなと思っています。私も年賀状ではなくメール等で年賀の挨拶を済ませる相手もいます。
職場での先輩で、今は引退している高齢の人と長く年賀状をやりとりしていましたが、その人からある年の年賀状で「今年の年賀状を最後にしたい」というメッセージが書かれていたことがあり、単なる生存確認のようなものであれば、年賀状という習慣をやめてしまうと言う判断もありだなぁと思ったことはあります。
今のところまだ郵送の年賀状を思い切ってやめてしまうという決断には至らず、一時期に比べると半数ぐらいに減りましたが年賀状はしばらく続けていくつもりです。
昔は、ゴム版に彫刻刀で干支を彫って版画にしたり、手書きで宛名を書いたりと、かなりの手間をかけて制作していましたが、90年代に入ってからは、まずはプリントゴッコ、そしてワープロ、その後はパソコンとカラープリンターと簡便になってきたと同時にその内容も薄くなってきました。
私の場合、なぜかプリントゴッコは使わずに、社会人になってすぐの80年代初めに無理して買ったポータプルワープロを使い、それで宛名書きもイラストなど絵図もそれでしていました。
90年代中盤頃からはご多分に漏れずWindows95パソコンとインクジェットプリンターで一気にフルカラー印刷ができるようになり、カラーのイラストや写真入りで、質が格段に上がり、また制作する手間も大きく減りました。
ちょうどその頃が人生の中で年賀状を出す相手がもっとも多い時期でしたので、それでだいぶんと助かりました。
現在は前述のように枚数も落ち着き、年賀状に使えそうな写真を毎年撮りに行くのが恒例となり、内容で勝負しています。
枚数が多いときのこと、さすがに自筆でひと言コメントや挨拶を書けないことがあり、印刷してそのまま出したところ、ある高齢者の顧問からお小言をいただいたことがあります。印刷だけでは誠意が伝わらないぞってことを遠回しに。
それ以来、どれだけ忙しくても、枚数が多くても、なにかひと言は自筆で書くように心がけています。出すだけでなく、「あなたのことをちゃんと気にかけていますよ」と思える気持ちをなにかひと言でも綴るのが重要なのでしょう。
【関連リンク】
990 お正月休みにみた映画
884 年明けにつらつら思うこと
458 初日の出のご来光を富士山とともに拝む
573 年賀状不要論への反論
310 初日の出
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にっちもさっちもいかないことってしばしば起きます。そうしたこんがらがった問題をうまく解きほぐせる能力、行動力、説得力、リーダーシップを持った人っていうのは、これからもっとも貴重な存在となっていくのかもしれません。
正直言って私はそうしたややこしい絡み合った問題に首を突っ込むのは苦手で、当然にそのような問題を解決する能力に欠けていると自覚しています。
いわゆる短気な性格ってやつです。なので釣りに行って少しでも糸が絡むと、丁寧にじっくりとほぐしていくのではなく、絡み合ったところをハサミでブチブチとすぐに切ってしまうタイプです。
それにしても最近この手の「にっちもさっちもいかないこと」っていうのが増えてきているような気がします。
世の中が複雑化してきているのか、それとも問題解決できる人が少なくなってきたのか、人々の忍耐力がなくなり、我が儘で、私利私欲の欲望が強まってきたのか、そして今まで黙っていた人々が、黙っていてくれなくなってきたのか、様々な要因が考えられそうです。
国内の政治や社会問題も、いままでならば政治家が無能でも、それを下支えする官僚が有能であれば、事務レベルの下交渉や予備交渉でなんとかなってきたという時代がありました。
しかしその官僚の力が相対的に弱まり、テストで優秀な成績をとることだけに秀でた秀才ばかりが役所に集まった結果、交渉や粘り強い説得など、リーダーシップやコミュニケーション能力、忍耐力、使命感をもった官僚がいなくなってきたようです。
その結果、今までそれぞれの道でエキスパートだった官僚達におんぶにだっこしてもらえた政治家も頼るところがなくなっているという現状です。
また政治家の質も二世や三世といった使命感で政治を目指す人達でなく、単に世襲や金儲けの仕事として政治家になる人が増え、その結果政治家としての能力、適性の低下が進み、気軽なパーティではウケ狙いで問題発言を連発しながら、国会の場では、いかにも官僚が書いた答弁原稿をただ棒読みする閣僚ばかりになってきました。
こうした無能で官僚頼りの政治家達には早々にリタイアしてもらいたいと思うばかりですが、選挙になると地盤・看板・カバンを持っているだけに強いのです。
そうした国会答弁で自分の言葉で答えられない政治家には、先の「にっちもさっちもいかない」難問を解決できるだけの能力があるとはとても思えません。
ここ数年、耳にする、日本に関係する「にっちもさっちもいかない問題」とは、一例ですけど、
・北朝鮮拉致事件
・尖閣諸島の領有権争い
・北方領土返還問題
・竹島領有権問題
・沖縄の米軍基地移転問題
・慰安婦像問題
・南京大虐殺問題
・靖国神社A級戦犯合祀問題
・引きこもり、ニート、年金未納、生活保護
・築地市場の豊洲移転問題
・ゴミ屋敷や老朽化した空き家問題
・保育園の設置場所問題、少子化対策
・ゴミ焼却場や火葬場の設置場所問題
・高齢者の運転免許証返納問題
・年金不足や医療費支出増大
・介護士、介護施設不足など福祉関連
などなど、すぐに解決できそうもない問題は、戦後から続く国際問題から、すぐ身近なところで起きている問題まで様々あります。
これらの問題は、どれだけ会合を重ねたところで、関係者全員、もしくは両国の意見が一致すると言うことは絶対になく、また国際機関も法を執行するだけの強権はないので、詰まるところお互いが譲歩して痛み分けとするか、あるいは金銭的な補償を手厚くするとか、代替案を提示して不本意ながらも同意をとっていくしかありません。
特に太平洋戦争中に起きた事件や問題をいま綺麗に解決しようというのは現実的に難しく、何世代も代わっていくことで風化していくのを気長に待つか、領土問題に関しては再び戦争をするか、政治的な決着(補償や援助も含め)しか考えられないでしょう。
もちろん戦争は勝っても負けても双方が大きく傷つき、双方にとって最悪の結果を招くことになるのは言うまでもないことです。
身近な問題は法制化や行政指導などである程度は解決の道筋を付けられますが、人々の感情にはそうした法律の裁定よりも根深く浸透していることも多く、離婚裁判に負けて自暴自棄となった宇都宮の老人が、手製の爆弾で周囲の人を巻き込んで自殺したように、暴走する人が必ずついてまわるからやっかいな問題です。
宇都宮の事件を自衛隊出身の老人という一種特別な事件という見方をする人達もいますが、身勝手な不満や欲望を爆発させて暴走する人達は、秋葉原通り魔事件(事件当時26歳、職業は警備員、運転手、派遣工員)やマツダ本社工場連続殺傷事件(事件当時42歳、職業はマツダの期間従業員)、新幹線放火事件(当時71歳、職業は流しの歌手、運転手など)を見るまでもなく年齢や職業には関係ありません。
やっかいな問題にぶつかると、昔働いていた会社のオーナー社長が時々言っていた言葉がいつも思い浮かびます。それは「何事も賛成半分、反対半分と心得よ」ということ。
つまりなにをするにしても、それに対して賛成する人と反対する人がほぼ同じ数だけいるってことを常に考えておくことです。
自分にとって良いと思うことは別の誰かにとっては悪いことで、みんなにとって良いことだと思っても、それは独りよがりでみんなのうちの半分は反対していると思って行動をするべきです。
そうまでしてみんなの意見を聞き、案を作り、それに大多数が納得してくれて、反対意見の人も渋々でも了承してもらうというのは、これは凡人には絶対にできないことです。誰かが得をすれば必ず誰かが損を受け入れざるを得ないからです。
つくづく自分にはない、他人のために犠牲になれ、かつ難問を解くために奔走するリーダー的役割を果たせる人(ってほとんどいないだろうけど)はすごいなぁって思う日々です。
それでふと考えました。
犯罪者を捕まえるために懸賞金を出すことがあります。同じように、社会の問題点をランク付けし、その問題を解決したり解決するアイデアを出した人に、国は懸賞金や生涯年金を追加するなど報奨制度を設けてみてはどうでしょう?
例えば北方領土問題や北朝鮮拉致問題解決に向けて、素晴らしい解決案を考えた人、解決に向けて交渉する人を公募して、成功報酬で各々に10億円ぐらい出してあげればよいでしょう。
空き家問題や少子化を解決する道筋を作ることができれば、65歳からの年金を倍額もらえるとかすれば、きっと頑張る人も出てくるかも。公務員はダメよ。彼らはそういう公共サービスを考えて提案、実行するのが本来の仕事なのだから。
それら報奨金の原資は?
本来こうした社会や国際問題を解決すべき公務員や政治家を減らし、公務員宿舎や議員宿舎、公務員保養施設を売っぱらえばすぐに捻出できそうです。また問題が解決することで、それによるメリットも大きいはずで、十分にペイできます。
【関連リンク】
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
970 生活保護世帯の増加は高齢者増加だけが原因なのか?
921 もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ
896 多死社会と葬儀ビジネス
680 サラリーマンなら関係ないが、国民年金の滞納率
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チャイナ インベイジョン 中国日本侵蝕 (講談社文庫) 柴田哲孝
「KAPPA」や「私立探偵・神山健介シリーズ」を読み、気に入っている著者の長編小説で、2012年(文庫は2014年)発刊です。
過去の「私立探偵・神山健介シリーズ」読書感想
渇いた夏
早春の化石
冬蛾
秋霧の街
サブタイトルにあるとおり、中国の政治中枢にいる野心家が、GDP世界第2位に躍り出た勢いそのままに、弱腰で外交下手な日本を一気に取り込んで、中国に吸収してしまおうと画策するストーリーです。
奇想天外と思えますが、尖閣諸島での日中艦船のにらみ合いや、リゾート開発や領事館建設という名目でチャイナマネーが買い漁る日本の土地、建物は現実で起きていることで、それらが日本侵攻のための下準備という設定です。
そうした下準備を終えたあと、尖閣諸島で仕組まれた武力衝突が発生します。
そして日本国内各地でテロを起こす準備をしてきた中国の特殊部隊が一斉に動き出すという流れです。
領事館は治外法権なので、各種の武器や武装兵士、テロリスト、スパイを置いておくことが可能なのです。狙われるのは政府機関、原発、自衛隊駐屯地、空港、そして皇居です。
そうした中国の動きに対して日本人の多くはきっとアメリカが助けてくれるだろうという根拠のない楽観的見通しを持っていますが、アメリカはとりあえず軍事基地が集中する沖縄さえ死守できればよく、あとは日本が自らの責任でやってとばかりに手を引く可能性があることを小説では示唆しています。
そう言えばトランプアメリカ大統領候補は、在日米軍の費用を日本が持たなければ撤退することもあり得るようなことを言ってましたっけ。
彼らにとって、軍事上地政学的に重要な沖縄はともかく、見返りもなく、アメリカ人の血を流してまで日本全体を守ってやるという義務は感じないでしょうし、財政的にも負担でしょう。
ま、過激に煽っている部分はありますが、小説としてはよくあることで、そうしたことを含んだ上でエンタメ的に読むことをお勧めします。
つまり決してここに書かれていることは過去に起きた事実と、起きるかも知れない虚構がミックスして書かれているだけに、直情的で気の短い人が読むと、「中国けしからん!」「中国よりの政策をとった旧民主党政権は国賊もの!」と感情的になりかねません。
そのように見えてしまう政治的な偏った思想が見え隠れする内容がちょっと残念な感じです。
★★☆
◇著者別読書感想(柴田哲孝)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
判決破棄 リンカーン弁護士 (講談社文庫)(上)(下) マイクル・コナリー
刑事弁護士「ミッキー・ハラーシリーズ」の3作目で、ミッキー・ハラーが登場した最初の作品「リンカーン弁護士」(2005年刊、2009年翻訳版刊)を読んだのが2009年ですから、それ以来の「ミッキー・ハラーシリーズ」です。
その2009年に最初に「リンカーン弁護士」を読んだときの自分の感想を見てみると、「複雑な人間関係とテンポのよいストーリー展開、陰のある主役、都合のいい仲間達(今度は別れた二人の妻)はいつものパターンですが、リラックスして読めるエンタテナー小説としては上出来です。男性版ハーレクイーン小説みたいな感じかな。」と書いています。ほめているのか皮肉を言っているのか微妙です。
そして著者の作品ではお馴染みの異母兄弟でロス警察のハリー・ボッシュも準主役として登場しています。
発刊順に読んでいないのと、読む間隔が空きすぎて、過去の登場人物の関係図がもうなにがなんだかよくわからなくなってきています。
思えばハリー・ボッシュが「ナイトホークス」で最初に登場したのが1992年ですから、それから24年が経っているのですね。一度どこかで整理しなければと思ってます。
この作品は2010年刊で、日本語翻訳版の文庫は2014年に発刊されています。前に著者の作品を読んだのが昨年2015年の4月で、2009年刊、翻訳版が2014年刊の「ナイン・ドラゴンズ」という、今年最下位に沈み惨めな思いをしている中日ドラゴンズナインとはなにも関係がないハリー・ボッシュ主体の作品でした。
2015年4月後半の読書と感想、書評「ナインドラゴンズ」
その二人の主役が手を組み、法廷で悪と戦うというストーリーですが、あらかじめ勝つとわかっていながら読むのは最近つまらなくなってきていて、多少のどんでん返しがあるぐらいでは、上下巻合わせて1,792円を出すのは困難に思えています。
★☆☆
◇著者別読書感想(マイクル・コナリー)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
シューマンの指 (講談社文庫) 奥泉光
2010年に書き下ろし小説として発刊された小説ですが、この2010年は講談社創業100年とシューマン生誕200年の年ということもあるそうです。
著者の作品は5月にコミカルでライトノベル的な「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」を読んでいますが、本当に同じ作家さんの作品なの?と思うぐらいにその文体、構成、ジャンルが違っています。
2016年6月前半の読書と感想、書評「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」
著者自身もフルート奏者として音楽に馴染みがあるとは言え、それにしてもクラシック音楽についてのうんちくや批評がてんこ盛りで、逆にちょっと鼻につくぐらいです。
例えばこういう部分があります。
「ロマン派音楽の特徴の一つはその物語性にある。これはオペラに期限を持つので、その意味では、バロックこそが最も物語的だといいうるし、古典派にも当然ながら物語性は色濃く刻印されている。だが、ロマン派以前の音楽が、どこかで神話の輝きを帯びた叙事詩的な性格を備えていたのに対して、ロマン派は、近代文学と同様、個人の感情や内面の葛藤を物語の軸に据えるところに特色がある。だからこそロマン派音楽は、演奏者や聴き手の「感情移入」を容易に許す。物語が感情を揺さぶり、心から溢れ出す感情が物語を産み出す-。」
こうしたクラシック音楽に関する解説や説明が随所に出てきて、また登場人物にも語らせます。
内容は、ネタバレするので書けませんが、何重にも張り巡らされた主人公の語りで進められていき、最後には関係者から驚愕の事実が喚起されそれが事実なのかどうかは不明のままで終わります。つまり読者がどう考えるかを試される結末でしょう。
基本はミステリー小説のジャンルに入るのでしょうけど、読んでいると普通の青春小説、または音楽やピアニストの世界をかいま見る職業小説、あるいはシューマンを中心としたクラッシック界のうんちく本ともとらえることができそうです。
ドラマや映画化なども今のところなく、世間ではあまり話題にはなっていませんが、なかなか面白かったですよ。そのうち誰かの目に留まり、映画化されそうな気もします。
★★★
◇著者別読書感想(奥泉光)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
きいろいゾウ (小学館文庫) 西加奈子
この小説は2006年に単行本で、その後2008年に文庫化されました。また2013年には宮崎あおいと向井理出演で映画化もされています。見てないけど。
著者の作品は過去に「通天閣」を読んでいます。コテコテの大阪下町を愛おしく書いた小説で、織田作之助賞の大賞を受賞したよい作品でした。
2013年10月前半の読書と感想、書評「通天閣」
さてこちらの小説は、若い男女が男の田舎にある実家に帰り、暮らしている日常が描かれますが、チャボや犬と会話ができたり、草木に励まされたりと、ファンタジー的な要素も含まれています。
その他、定番とも思える大人よりもしっかりした小賢しい?少年、主人公の夫の背中にある前カノと関係がある鳥の入れ墨、旦那だけに働かせて自由気ままな生活を送っている主人公と、まったくよくわからない作品です。
タイトルは、本文中に文字だけ出てきますが、主人公が子供の頃に親しんだ絵本で、病弱な女の子が月の使者となっていた黄色い象に連れられて世界中を飛び回るという、こちらもファンタジーな内容。
還暦まであと1年と少しというオヤジだと、こうしたほんわかしたファンタジー作品を味わい親しむのは、売れない芸人が大勢集まり、騒がしいだけのテレビのバラエティ番組と同様、もう厳しくなってきたなぁとつくづく感じています。
★☆☆
◇著者別読書感想(西加奈子)
【関連リンク】
10月前半の読書 だいこん 山本一力、魍魎の匣 京極夏彦、犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ
9月後半の読書 風の影(上)(下)、小説・秒速5センチメートル、名探偵に薔薇を
9月前半の読書 20歳からの社会科、八甲田山死の彷徨、WORLD WAR Z〈上〉(下)、サマータイム
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1069
今回は国交省が出している「平成27年度住宅経済関連データ」から、住宅事情や空き家問題について見てみます。
住宅経済関連データ - 国土交通省
まずは高度成長期1968年から5年ごとの総世帯数と住宅総戸数、持ち家率をグラフにしました。
人口減少に転じた後も、総世帯数がずっと伸び続けているのは、核家族化や単身での居住が進み、1世帯あたりの人数が徐々に減っていることによります。
特に子供が就職や結婚で家を出て、高齢の親だけが住む世帯がここにきて急速に増えているようです。
ざっくり言えば住宅総数-総世帯数が広義で言う空き家数に近いと思われます。
もちろんその中には別荘や事務所として使っていたりして空き家とは言えなかったり、複数世帯が1つの住居に住んでいるケースも多くありますので空き家数そのものではありません。
ただ住宅総数-総世帯数が近年かなり拡がっているのが実質の空き家が増えているという実感と重なります。
不景気が続き、マイカーや高級家電品など、所有する価値観は薄れつつあると思っていましたが、持ち家比率は1980年代前半から1990年代前半までいったんは下落してましたが、その後バルブ崩壊以降、緩やかではあるものの、ずっと上昇しているのは興味深いところです。日本人の持ち家神話はまだまだ健在ということでしょうか。
◇ ◇ ◇
次に社会問題化しつつある空き家の推移です。
一般的に言う「空き家」とは、居住者がいない「狭義の空き家」と、その狭義の空き家を含み、その他別荘や建築中の家など、本来の空き家ではないけれど普段は誰も居住していない住宅を含む「広義の空き家」の2種類があります。
下記のグラフは、水色が狭義の空き家、黄色が広義の空き家(居住世帯なしの住宅)で表し、折れ線グラフは広義の空き家率で示しています。
平成25年(2013年)の空き家率は14.1%で、5年前より0.2%上昇していて、20年後の平成45年(2033年)には空き家率は30%を超えるという予測(出典:野村総合研究所)が出されています。ちなみに純粋な狭義の空き家だけだと2013年は13.5%となります。
都市部にある空き家は持ち主次第で若者のシェアハウス、旅行客不足を補うための民泊、高齢者のグループホーム、保育園など活用の道がありますが、地方や交通の便が悪い郊外の住宅の空き家は今後も増え続けていくのでしょう。
空き家対策と言うと、崩れそうな古家をどうするか、宅地優遇の固定資産税、空き家活用支援などが言われますが、それらはどれもお金持ち(資産持ち)優遇策に他ならず、そうしたところに税金を投入するぐらいなら、入居するのに何年もかかる特別養護老人ホームの拡充など他にもっと使うべきところがありそうです。
◇ ◇ ◇
次は住宅リフォームについてです。一見すると新聞のチラシやテレビでのリフォーム番組の影響、高齢化世帯の増加によるバリアフリー化需要もあり、すごく活況を浴びているかのような錯覚を覚えますが、矢野経済研究所の調査報告では、2015年は前年比で微減、その後も横ばいが続くだろうという予測です。
国土交通省の「住宅市場動向調査」(リフォーム実施者の複数回答)では、リフォームの内容として多い順番に、
1)住宅内の設備の改善、変更(49.4%)
2)内装の模様替え(43.1%)
3)住宅街の改善、変更(32.7%)
4)冷暖房設備等の変更(20.1%)
5)高齢者等に配慮した設備(11.5%)
6)壁の位置変更など間取りの変更(11.2%)
7)住宅の構造に関する改善、変更(8.6%)
となっています。5番目の「高齢者等に配慮した設備」がもっと上位にくるのかと思っていましたが意外でした。
しかし今はまだ元気な人が多い団塊世代が、後期高齢者になっていく今後10年間でそうしたリフォームが急拡大していきそうな予感がしますが、消費税増税前の駆け込みや、リフォーム補助制度などとの兼ね合いもありそうです。
またリフォーム屋さんにとっては、どこの業者もベテランの職人さんが高齢化してしまい、人不足で若い人も集められず、どこも工事を行う人材不足で苦慮していると聞きます。
今の高齢者も二極化していて、お金持ちはリフォームするぐらいなら新しく建て替えするか、タワーマンションにでも引っ越してしまい、そうしたまとまったお金がない高齢者世帯が、少額でできるリフォームをするのではないでしょうか。
高齢者にお金持ちが多いとすると、新築や再建築が増えてくるはずなので、「新築・再建築戸数推移」も調べてみました。
持ち家の建て替えだけでなく、賃貸用住宅など含めての新築と建て替え戸数の推移ですが、この20年間を見る限りでは新築戸数と、その中に含まれる再建築戸数とも減少傾向にあるようです。
20年前の1994年には新築戸数が1561千戸、そのうち再建築戸数は389千戸ありましたが、2014年はそれぞれ880千戸(1994年比56%)、80千戸(同21%)とそれぞれ大きく減らし、中でも再建築戸数は1994年の2割にまで大きく減少しています。
新築住宅の中に占める再建率も21.7%からわずか9.1%まで下がってきています。これは以前は30年と言われていた日本の住宅の耐用年数が伸びてきたことが影響していると思われます。
確かに戦後まもなく建てられた住宅は柱も細く耐震性もありませんでしたが、1981年に改正された新耐震基準の影響もあり、80年代以降に建てられた住宅はそれまでのものと比べると頑丈そうです。
テレビのビフォー・アフターは割りと好きで時々録画しておいて見ています。ただあれはテレビ的に絵になり、建築士の腕前が試される派手なリフォームが多く、古民家を基礎からやり直したりして、これじゃ建て替えた方が安くつきそうと思うものが少なくありません。
費用も(デザイン料含まず)数千万円用意しないと見違えるほどの十分なリフォームにはならず、安い住宅メーカーなら十分に新築できそうです。
しかしあの番組が、再建築せず、リフォームでなんとか取り繕う提案を日本に広めた功績は大きいと思います。
一般的に住宅メーカーはもちろん、工務店はリフォームよりもゼロから新築するほうが楽で、実入りも良さそうですから、施主がリフォームできるってことを知らなければ、業者の言うままに新築(再建築)するのが今までの通例だったのでしょう。
日本の住宅(都市部や都市郊外の建て売り一戸建て住宅)はせいぜい30~40年しか持たないというのは、木造住宅が多いのと、地震が多く、また湿気が多い環境のせいでもありますが、団塊世代が競って持ち家を購入した1980年代から30数年が過ぎ、住宅の寿命が近づいており、リフォームをするか、建て替えるか、あるいは売却して住み替えるかの時期がもうそこに迫ってきていると考えられます。
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