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ここ半年ぐらい、出不精で自宅でゲーム漬けになっている次男に、ダイエットも兼ねて社会人の身だしなみとしてゴルフぐらいやっておいたほうがいいだろうと、休日の夕方にゴルフの打ちっ放しへ毎週連れ出しています。足の調子がいいときは私も一緒に練習します。
そして練習を始めて3ヶ月ぐらい経った時、ボールを打つのがマットの上ばかりでは飽きるだろうと、先日は近所のショートコースへ行き、9ホールを回ってきました。
本当は18ホール回りたかったのですが、情けないことに私の足が途中で音を上げたので断念しました(その後1週間近く股関節痛で苦しみました)。
ちなみにショートコースのティグラウンドは全部マット敷きで、結局は練習場とあまり変わりませんでしたw。気分の問題です気分の。
私がゴルフを始めたのは30数年前、社会人になってすぐ、休日に先輩に神田のゴルフショップへ連れて行かれ、初心者用の用具一式購入(もちろん自前)、その足で東京タワー近くの打ちっ放し練習場へ行き初めて練習をしました。
その後、練習はそこそこに、年数回、多いときは10数回、会社の先輩や、仕事関係で付き合いがあった人、それに学生時代の友人などとゴルフコースへ出ましたが、ちょうどバブル景気の時期と重なり、プレー費は高額で、しかもゴルフ場は混んでいて、気軽にできなかったこともあり、ゴルフは時間とお金の無駄だと思って、熱心なプレーヤーにはなれず、そして足を痛めた10年ほど前からは徐々に遠ざかりました(調べてみると2007年と2008年に1回ずつ行ってそれが最後です)。
用具は20年ぐらい前に買い換えた一式がありますので、型は相当に古いけれど、それを持って子供に特訓指導です。
最近の都会の若い子の標準的傾向なのか、アウトドアスポーツが苦手で、したがってスポーツをする時の基本的な動作(リズミカルな体重移動やバランス感覚)が下手で、本能的な器用さにも欠けく、ボールがうまくミートできずに苦労していました。
ま、最初は誰でもそうだから仕方がない、と思っていましたが、毎週欠かさず練習に行き、それで2ヶ月経っても全然芯に当たらずまっすぐに飛ばないので、「こりゃ教え方が悪かったかなぁ」と反省し、練習場にいるレッスンプロに個人指導を頼みました。
教わっているその時はその通りやればちゃんと打てても、終わったあと1人で練習するとまったくダメダメに戻り、これは根っからの運動神経のなさ、運動音痴としか思えなくなりました。
ま、そんなことはどうでもいいのですが、ゴルフ練習場に通ってみて思ったのは、私が子供を連れて練習に行く土曜日の夕方に練習している人達の推定年齢平均はおおよそ50~55歳ぐらいで、私が昔よく通っていた30年前と比較すると確実に年齢層が高くなっています。
都心の練習場だともっと若い人が多いとか、練習場の立地場所にもよるとは思いますが。
練習しているのはもう仕事をリタイアして暇を持てあましていそうな60代以上の高齢者、私(58歳)とほぼ同年代のサラリーマン、あとはもう少し若い40代のサラリーマンと肉体労働系の作業着を着たオヤジさん連中が中心です。
いかにも20代って人は男女とも見掛けません。たま~に小学生ぐらいの息子を連れたサラリーマンが来ているぐらいです。
私がそこそこ熱心にゴルフ練習をした30年前は、ちょうどバブル時代ということもあり、土日曜日の練習場は、朝から夜まで老若男女で行列ができ(1時間待ちとか普通)、土日曜日にコースを予約するには何千万もする会員権を持った会員と一緒でないとダメとか、それでゲスト料金は1プレイ(18ホール)軽く3~4万円(昼食代は別)とか、もう無茶苦茶な世界でしたが、現在は名門コースを除き、あまりそういうことはないでしょう。
そこで、最近の国内のゴルフ場(コース)事情はどうなっているのかな?って思って調べてきました。前置き長くてすみません。
まず公益財団法人 日本生産性本部が毎年公表している「レジャー白書2015」によると、2014年度のゴルフ人口は720万人で、前年(2013年)から140万人ダウン、13年前の2001年と比べると620万人もの大幅ダウンと、ここのところずっと減らし続けています。
90年代初頭のバブル最盛期には日本の人口の1割を超える1500万人以上がゴルフをたしなんでいましたからそれから半減したことになります。
◇ ◇ ◇
次にゴルフコースに行った(プレイした)人の年間延べ総数と、営業しているゴルフ場数の推移です。
データ出典は、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会調べの「利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移」からです。
高度成長期前の1958年はゴルフ場が117カ所、延べ利用者は2,472千人でしたが、バブル頂点の1992年はゴルフ場は全国2,028カ所(1958年比17倍)で、延べ利用者は102,325千人(同41倍)で、なんと延べ利用者数は1億人を突破しています。
もちろん1人で年数十回利用した人もいるでしょうけど、均せば生まれたての赤ちゃんから入院中のお年寄りまでの国内総人口のほぼ全員が年1回ゴルフ場を利用したってことになりますからこの時のブームは驚きです。当時私も年間10回ぐらいはコースに出ていましたのでその一翼を担っていました。
90年代初頭にバブルが弾けても、それですぐにゴルフ場の開発計画、造成工事は停まらないので、2002年の2,460カ所までゴルフ場は増え続けますが、利用者は先の1992年を頂点にして、その後は平均して毎年100万人ずつ減っていくことになります。
ゴルフ場延べ利用者(2013年8675万人)数を、先の生産性本部のゴルフ人口(2013年860万人)で割ると、ゴルフ場利用者は平均して年10回利用していることになります。意外と多い感じがします。
◇ ◇ ◇
そして作りすぎたゴルフ場は利用者の減少で経営が立ちゆかなくなり、廃業や倒産の法的整理の憂き目に遭います。一季出版株式会社ゴルフ特信のデータから、ゴルフ場の法的整理件数(倒産、廃業件数)とその負債総額の推移です。
2002年は98カ所のゴルフ場が倒産等に追い込まれ、約3000億円の負債総額が出ています。その後は新設ゴルフ場もほとんどなくなり、倒産件数は減少していきますが、ゴルフ人口の減少からすれば、経営的には決して楽ではないでしょう。
バブル時期に何千万円もする会員権を買った人達はおしなべて大損し、中には経営母体が変わってしまい、旧会員は再度数百万円の追加費用を払わないと自動的に退会みたいな悲惨な状況に追い込まれた人も多いように聞きます。
私はちょうどバブル前に貯金をはたいて家を買っていたので、会員権まではとても手が回らず、勧誘は多かったのですが購入せず結果オーライでした。
ただしゴルフ場にとって現状はまだ良い条件が残っています。
それはゴルフ大好き人間が多い団塊世代(66~68歳)が一斉に定年退職したため、暇と退職金を持て余し、老後の楽しみととして会員権を購入したり、混まない平日にゴルフをする人が増えているからです。
この比較的持ち直してきた機会を捉えて、ゴルフ業界は若い人にもゴルフをやってもらおうと、様々な取り組みをおこなっていますが、どれもイマイチってものが多そうです。
プロゴルファーも石川遼や松山英樹に続く若いヒーローが出ず、女子プロに至ってはここ何年も海外勢に歯が立ちません。
さらに慣習やしきたりにこだわる団塊世代が、現在の客のシェアのほとんどを握っていることで、ゴルフ場の思い切った改革や若者向けのサービスが十分におこなえないということもあるでしょう。
若者のクルマ離れと同様、若者にとってはクルマもゴルフも、贅沢なうえにお洒落ではないレジャーでオヤジ世代のものという感覚です。
あと、自分の息子を見ていて思いますが、決定的に運動不足で、日が暮れるまで野原を駆け回って遊んだという経験もなく、なんでも欲しい情報は身体を動かさなくてもキーをいくつか叩けばすぐ手に入り、コミュニケーションするのも外へ出掛けなければならないリアルより、手元ですぐに開始でき完了するSNSばかりという若い人に、時間もお金も、そしてなによりマナーまでうるさく言われ、一緒に回るパートナーに気を遣わなければならないゴルフが、今後再び流行するか?って言うとそれはどうもなさそうに思えます。
5年先の東京オリンピックのゴルフ競技で、若い日本人スター選手の活躍があったとしても、それは一時的なもので、麻雀やパチンコと同様、若い人にとっては古臭い加齢臭が漂うレジャーとして敬遠されていくのではないでしょうか。
そしていよいよ団塊世代がより高齢化して、好きなゴルフもできなくなる10年先を考えると、いまのプチブームが去り、さらにゴルフ場利用者が急速に減じていくことになっていきます。
果たしてリッチな中国人など、多くの観光客を日本のゴルフ場にも呼び込めるかはこれからの戦略次第ってところでしょうか。
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20代の頃、もう30年近く前になりますが、大阪で数年間働いていました。仕事は企業相手の営業職で、担当エリア制になっていたので年配の前任者から地区と顧客を引き継ぎました。
担当したのは主として大阪のビジネス街の中心地、中央区の狭い一角で、端から端まで徒歩で歩いていける範囲です。
大阪のビジネス街の地理が不案内だったので、自分の足でエリアを何度もグルグルと歩き回り、既存の顧客を担当しつつ戦略を考えて新しい見込み顧客を開拓していくのが仕事です。
大阪の中心部を歩いてみて面白いなぁって思ったのは、ある地域にライバルでもある同業者が固まってあることです。
繊維関連なら船場や久太郎町、証券会社なら北浜、総合商社は本町、阿波座は電子や機械部品商社などなど。
東京でも兜町に証券会社、秋葉原に家電販売店がかたまっているとかはありますが、もっといろいろな業界ごとに固まり、その密度が濃いというか。
その中でも異彩を放っていたのは道修町(どしょうまち)で、一方通行の狭い道路の両側に製薬メーカーや薬の卸業がこれでもかってほど固まって本支店(オフィス)を構えています。
しかも当時には誰もが知っているような大メーカーが、戦前の建物?って思うような古い歴史を感じさせるビルで本店を構えていたりして驚きました(30年ほど前のことで、今ではさすがに建て替えられているようです)。
薬はそれこそ江戸時代から大きな商売の種になっていましたが、それにしても老舗の製薬会社や薬問屋が、江戸時代のまま、今でも大阪の中心部に集まって本店、支店、営業所を構えているというのは壮観でした。
その道修町のすぐ近くには有名な「適塾(てきじゅく)」跡もあり、こちらは医者でもあった緒方洪庵が開いた蘭学の塾で、大村益次郎や福澤諭吉が学び、大阪大学医学部の元となった学校です。道修町の医薬品と、そのすぐそばにあった適塾との関係に思いを寄せたりします。
大阪道修町に拠点がある製薬、化成品会社を列挙しておくと、カイゲンファーマ(本社)、小林製薬(本社)、塩野義製薬(本社)、大日本住友製薬(大阪本社)、武田薬品工業(本社)、田辺三菱製薬(本社)、扶桑薬品工業(本社)、丸善薬品産業(本社)、和光純薬工業(本社)、小野薬品工業(本店)、田村薬品工業(本社)、中間物商事(本社)、DSファーマバイオメディカル(本社)、天藤製薬(大阪本社)、ニプロファーマ(本社)、伊藤由製薬、乾卯栄養化学、イワキ、エビス薬品、関西薬品、小城製薬、金剛薬品、シオエ製薬、鈴粉末薬品、関商、第一三共、ダイト、大鵬薬品工業、高砂薬業、東洋製薬化成、常盤植物化学研究所、日新化成、日本新薬、日本製薬、日本バルク薬品、日本粉末薬品、日野薬品、富士化学工業、富士カプセル、堀江生薬、丸三薬品、丸善製薬、三国、八ツ目製薬、山善製薬、横内製薬、米山薬品工業、興和など(順不同)。
30年前から吸収や合併などもあり、だいぶんと社名が変わったりしていますが、それでもまだこれだけの会社が狭い道修町の一角に店を連ねています。
製薬会社と言えば、近代以降は研究開発施設や製造工場、倉庫・流通などの部門が必要で、こうした街の中心部にあるのはいわゆる営業販売部門と本社事務部門だけということになりますが、この業界、高齢化社会ということもあって、いまは割と景気がよさそうなのです。
話しが急展開するようですが、いま、松井大阪府知事が中心となり、2度目の大阪万博を開催できないかと旗を振っています。
「思いつきの発想」経済界総スカン!? 松井知事が2度目の大阪万博にこだわるワケ
2度目の大阪万博では、これから多くの先進国が迎える高齢化を先取りしてきた日本の得意分野の「健康」「長寿」をテーマとして、医療や介護、薬品、バイオなどの分野に焦点をあてようというもので、超高齢化を迎えている日本の、大阪道修町を抱える大阪市としては、目の付け所は青色吐息のシャープ(本社大阪市)と違ってイイカかもって思ったりします。
もちろんまもなくおこなわれる大阪府知事選挙で松井知事が圧勝して再選されることが絶対条件でしょうけど、東京で二度目のオリンピック、それなら大阪では二度目の万博という発想はシンプルで悪くはないと思います。
年齢が高齢化して新しいことはなにも受け入れられない頭が硬直化しつつある多くの大阪府民からは不評を買うことになるでしょうけれど。
もちろん団塊世代が押し寄せた1970年の万博と違って、国内の観光客はあてにできませんので、海外、特にアジアからの観光客をどれだけ呼び込めるかというのがキーとなりそうです。
日本ブームでもあり、USJや京都・奈良など世界に通用する観光資源が近くにあり、私は十分に勝算はあると思いますけどね。
別に万博だから箱物を作ってと言う旧来の発想ではなく、高齢者が生き生きと暮らせる先進的でお洒落で楽しめるコンパクトシティのモデルを大阪郊外に作り(万博終了後はもちろん高齢者用に有効活用)、そこへ視察&体験に来てもらおうというのであれば既存の施設や改築する施設も利用してそれで十分に対応が可能かなと。
来場者には日本が誇る世界最先端の医療検査機器でおもてなしをして、手軽に全身の精密診断が受けられ、詳しい検査レポートが1時間でもらえるとか、必要に応じて薬もすぐに処方してもらえるとか、医療と健康に特化したサービスを提供しなくちゃなりません。
また大阪万博と言いつつ、日本の各地の観光も兼ねられるよう、人気の高い京都や神戸、奈良、和歌山あたりまでひっくるめて会場や展示場、提携宿泊施設を拡げ、関西全域でおもてなししていくという方向性も考えられます。リニア新幹線が大阪までつながっていれば、これもいい引きになります。
もちろん何事にも反対する人はいるでしょうけど、できれば大阪市や堺市の企業が中心となって、民間の知恵とお金で税金は投入せずに立派にやっていけるのであれば、これからの日本の歩む道を世界に対して示すいいPRになっていいのではないでしょうか。
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プロ野球シーズンも終わり今年もストーブリーグが始まっていますが、毎年のことながら、去る人あり、新しく入ってくる人あり、復活・復帰する人あり、いらないと言われてもなんとか新しい雇い主を探しもがく人ありで、リストラ線上にいるサラリーマン同様、悲喜こもごもが展開されています。
見ていると、選手生命というのは、過去の実績などの実力の他、運不運、古傷の状況、ファンの人気度、人間性、性格、監督やオーナー、スタッフの好き嫌いなど様々な要素が加わります。
例えば、現状で言えば飛ぶボールの影響もあってか、セパともに打高投低傾向にあり、そうなると各チームの補強ポイントは投手が中心になり、比較的投手が採用されやすいというタイミング的なツキがあったりします。
同様に全体的に左腕の投手が稀少ならば少々難があってもサウスポー投手が採用されやすくなったりするのは運としか言いようがありません。
今期でチームを去った監督も多く、読売巨人の原監督、阪神の和田監督、横浜DeNAの中畑監督、楽天の大久保監督、オリックスは開幕当初は森脇監督でしたが、成績不振で途中休養となり、福良監督代行が新監督に昇格することになり合計12球団中5球団の監督が新しくなります。
そのプロ野球球団のチーム監督では一般的には巨人V9の川上哲治氏、再生工場と言われた野村克也氏、天性の野性的直感の長嶋茂雄氏、燃える男星野仙一氏、沈着冷静オレ流の落合博光氏などがすぐに思い起こせますが、各種の記録を調べるといろいろなことがわかります。
プロ野球は魅せるプロスポーツなので異論もあろうとは思いますが、監督に一番必要なことはまず試合に勝つことでしょう。
過去勝率が高い監督ベスト10は、
1.鶴岡一人 0.609
2.川上哲治 0.591
3.藤田元司 0.588
4.水原茂 0.585
5.天知俊一 0.581
6.原辰徳 0.576
7.森祇晶 0.574
8.濃人渉 0.563
9.落合博満 0.562
10.秋山幸二 0.553
の順番です。(2014年シーズンまで。氏名と通算勝率)
意外ですが、野村克也氏や王貞治氏、長嶋茂雄氏、西本幸雄氏など監督のイメージが強い有名どころがベスト10には入ってきません。現役監督では6位に原辰徳監督が入っていましたが、今年で勇退しましたので、来期シーズンになるとこのベスト10監督からは誰もいなくなります。
もっとも2015年シーズンから指揮を執ったソフトバンクの工藤公康監督は、今年1年間の成績が0.647というとんでもない高い勝率を出しましたので、1位の鶴岡氏を超えてダントツ1位で2年目の来期を迎えることになります。
次に(2シーズン制の)日本シリーズを制覇して日本一に輝いた回数が多い監督は、
1.川上哲治 11
2.森祇晶 6
3.水原茂 5
4.三原脩 4
5.原辰徳 3
5.上田利治 3
5.野村克也 3
5.広岡達朗 3
5.古葉竹識 3
です。(2014年シーズンまで。氏名と日本シリーズ優勝回数)
やはりV9を達成した川上氏の優勝回数が突出しています。ここの上位でも2015年現役(だった)監督は原氏のみ。あと特徴的なのは川上氏、森氏、水原氏、三原氏、原氏、広岡氏と9人中6人がなんと巨人OBです。まるで巨人OB監督でないと複数回の優勝はできないという勢いです。
その中に食い込んだ上田氏(阪急)、野村氏(南海他)、古葉氏(広島)はいずれも弱小球団を優勝に導いたとして名監督の誉れが高いですね。
あと監督業というのはなかなかハードでしかも政治的で、チームが調子がいい状態のときばかりではありませんので、当然成績不振により解雇されたり、成績は悪くなくとも、オーナーや有力選手との関係が悪くなって辞任したりということが起きます。もちろん本人の体調不良で余儀なく辞任するケースもあります。
したがって、監督業を長く勤められるというのは、まず心身ともにタフで、しかも勝率もさほど悪くなく、オーナーや選手、コーチなどスタッフ、そしてなによりもファンから信頼され愛されているゆえとも言えます。長期政権または辞めても他のチームから招聘されるのは一種の勲章みたいなところがあります。
その監督として長く指揮した年数(通算)と試合数を順に並べると、
1. 三原脩 26 3248
2. 野村克也 24 3204
3. 藤本定義 29 3200
4. 鶴岡一人 23 2994
5. 水原茂 21 2782
6. 西本幸雄 20 2665
7. 上田利治 20 2574
8. 王貞治 19 2507
9. 別当薫 20 2497
10.星野仙一 17 2277
です。(2014年シーズンまで。氏名と通算監督年数、監督としての出場試合数)
年数では試合数3位の藤本定義氏が通算29年と最長ですが、監督として指揮した試合のゲーム数は三原脩氏、野村克也氏が上回っています。ノムさんは選手兼監督の時期もありましたがさすがですね。
これほどの長期政権なら当然のごとく監督はリーグ優勝や日本一にも輝いているかと思いきや、この中では別当氏だけがリーグ優勝の経験がなく、藤本氏はリーグ優勝は9回あるものの、途中で2リーグ制になってから2度日本シリーズに監督として挑戦しましたがいずれも敗退しています。
昔はチームが優勝から遠ざかっていても、気長に監督を信頼してまかせてくれたという傾向があったのでしょう。
藤田元司氏、広岡達朗氏、落合博光氏のように短期間(7~8年)で4回のリーグ制覇をする短期決戦型監督と、上田利治氏や野村克也氏のように長期(20~24年)で5回のリーグ制覇をする長期安定型監督にタイプが分かれそうです。
ただ最近は世相や世の中全体が闇雲にスピードを求め、どうしても2~3年で結果を求められる傾向にあり、野村氏や西本氏、王氏のようにオーナーもファンも「監督にすべてお任せで、一緒に心中する気持ち」っていう感じにはなりにくいのかなと思ってます。世知辛い世の中ですからね。
あとは選手引退後の収入のことを考えると、監督やコーチを引き受けるより、テレビやラジオ、スポーツ新聞の専属解説者になるほうがずっと収入が多いという時代がありました。
監督で胃が痛む苦労するよりも、無責任な評論家になって監督以上の収入を得る方が得ってことですね。
でも最近はテレビラジオともプロ野球中継の数が大幅に減り、スポーツ新聞の販売数低下もあり、スター選手でも解説や評論活動、コラム執筆だけで安定した高額収入を得続けるのが難しくなってきています。
過去にそういう道を選んだ元スター選手がお金を得ようとするとなにか芸を磨いてバラエティ番組の道しか残されていませんが、やはり向き不向きがあり、金銭感覚が狂ってしまって派手な生活に慣れきった元スター選手にとってはますます厳しい時代です。
中には現役時代にしっかり貯めたお金で事業を始め、うまく軌道に乗せた人もいそうですけどあまり聞きません。
ま、芸能界に入っていった元選手は自己責任なのでどうでもいいのですが、プロ野球やスポーツの発展のために、選手を引退した後も直接プロ野球に関わり、目の前のお金ではなく、自分の経験を後輩に伝え、自分も勉強して次代のスター選手を育成し、なによりファンに夢を与え続けてくれている名監督、コーチ達に感謝とエールを贈りたいと思います。
元データは、
プロ野球歴代通算記録
より引用しました。
【関連リンク】
794 田中将大とダルビッシュ、松坂、前田(健)の成績を比較してみる
758 プロ野球とメジャーの試合時間
631 サッカー選手と野球選手の経済的考察
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325 元気な高齢者はいつまでも働くべきなのか
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高齢化社会もまもなく佳境に入りつつあり、年金や生活保護の受給者が増えて社会福祉にかかる経費が増大してたいへんだという話しは毎月のように耳にします。
ただ、憲法で保障されている「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を現実の制度に置き換えると生活困窮者に与えられる生活保護の支えは最低限必要な制度と思われます。
ではなぜ、これほどまでにこの制度や制度を使う人が叩かれたり、社会悪とでも言うような問題として俎上に上がってしまうのでしょう。
確かに生活保護費の不正受給や疑わしいケースが毎年摘発されたりします。そういうのはもちろん可能な限り発見して排除していくべきですが、いくらでも人手とお金をかけて調査し検挙すればいいというものでもないでしょうし、不正受給は全体の0.5%と決して頻発しているというレベルでもありません(税金の滞納率は1.3%前後、小売店での万引き被害は売上金額の0.8~1%と言われています)。
悪事をはたらく犯罪者は生活保護を不正に受給しようと考える人だけではなく、他にもいっぱいいるわけですので不正受給ばかりを調査、監視、摘発するのも限界があります。
不正受給者をなくすという以外の対策等で増加する生活保護費の問題を解決できないものか考えてみました。もちろん夢のような解決策があれば頭のいい人が先に提案して実行しているわけで、無理を承知の上でのことです。
まず生活保護受給者数と受給世帯数の推移を調べます。データの出典は厚生労働省の「被保護者調査」です。
約40年前の高度成長期の1975年には月平均で135万人だった生活保護受給者は2013年には216万人と1.6倍に増えています。人口も1975年から1.14倍増えていますが、人口比で見ると、さすがにちょっと増えすぎでしょう?っと思うのもやむを得ません。
これは生活保護受給者の数と失業率は深い関係があって、1975年は1.9%だった完全失業率は2013年は4%にまで上昇しています。まずはこれが大きいでしょう。
つまり失業率が高いと、失業後に次の仕事に就けず、やむなく生活保護を申請するという人が当然ながら増えることになります。
都会に住んでいる若い人なら「仕事がないなんて、考えられない」と思うでしょうけど、地方に住んでいる人や中高年者はこういうケースは珍しいことではありません。
また家族の介護のために地方から離れられず、また介護のために働ける時間が限られて、そういう都合のいい仕事が見つからないという人も多くいます。さらに50歳を超えていたりすると都会でも次の仕事を見つけるのは困難です。
そういう人達には、制度として家族を介護しながらでも働ける環境を提供するなど、働く場を作っていくしかないでしょう。
ちょうど介護士や介護補助員の不足ということもあるので、老人ホームに介護している家族を預け、そのホームで毎日働くという仕組みが作れないものでしょうか。
老老介護や認知症介護など介護側に大きな負担を強いて悲惨な結末を迎えることを考えると、もっと積極的に施設や福祉団体が介護と雇用に関わるべきでしょう。
また民間の老人ホームが高くて入れられないという場合でも、その費用の代わりに今まで介護をしていた家族がそのホームで働くことで要介護者が優先的にホームに入居できるのなら双方にとってメリットがありそうです。
次に、生活保護というと、イコール高齢者というイメージが強くありますが、生活保護受給世帯の内訳をよく見てみると、確かに高齢者数の増加とともにその数は増え続け、世帯別で見ると受給者全体の4割以上を占めていますが、ここ数年で割合が急速に増加しているのは、「その他の世帯」です。
「高齢者世帯」(青)とは65歳以上の男女のみか、これに18歳未満の者が加わった世帯を表しますが、一般的にみて老夫婦のみあるいは高齢者が1人で暮らす世帯と考えていいでしょう。
生活保護を受ける「高齢者世帯」は2012年は約68万世帯(2014年74万世帯)で、生活保護受給世帯全体の44%(同45%)を占めています。これは10年前と比べると24万世帯も増加(155%)していますが、生活保護受給世帯全体に占める割合は横ばい※です。※2002年の高齢者世帯が占める生活保護受給世帯の割合は46%
つまり高齢者世帯の増加で生活保護受給世帯が増えているというのは、絶対数では正しいですが、全体の割合からすると間違っているということです。
「母子世帯」(オレンジ)は配偶者がいない65歳未満の女性と18歳未満の子のみの世帯で、生活保護を受けているのは2012年で11万世帯です。10年前と比べると3万世帯(139%)の増加と、他と比べると極端な増加率ではありません。
「障害者、傷病者世帯」(緑)は世帯主が障害者または傷病者で働けない世帯で、2012年に生活保護を受給しているのは48万世帯。10年前と比べると14万世帯(141%)増えています。
そして最後の「その他の世帯」(紫)ですが、65歳以上高齢者や母子、または障害・傷病者の世帯以外の世帯のことで、いわゆる(働くことができる人がいる)普通の家庭(世帯)です。
もちろん特殊な例としては、「50歳代の世帯主が会社の倒産(または事業が失敗)で失業したが、次の仕事が決まらず、貯金もないので夫婦ともアルバイトをしながら常勤の仕事を探しつつ不足分を生活保護の受給に頼っている」とか、「ずっと引きこもりで親の年金で暮らしていたが、その親が亡くなり、かと言って40代で職歴なしだと働くこともできずに」っていうケースもあるでしょう。
この普通の世帯「その他の世帯」の受給が妙な感じで急増しています。2102年は28万世帯で、10年前と比べるとなんと20万世帯(335%)と3倍以上に増えています。
生活保護受給世帯全体に占める割合も、2002年8%だったものが、2012年には18%と2倍以上の伸びを示しています。
つまり、「高齢者世帯」の生活保護受給対策も必要ですが、それでだけではなく、「その他世帯」の生活保護受給の実体を明らかにして、その対策を早急に詰めるべきでしょう。
おそらくですが、親の介護問題や、地方都市の景況悪化、若年層より高い中高年層の失業問題などが深く関わっているように思えます。さらにニートや引きこもりの増加もこれに拍車をかけていることになるでしょう。
最後に医療費の問題です。
生活保護が受給できると医療費が無料になります。これはなにを置いても大きいですね。
貯蓄がない低所得者や年金生活者が健康で、医療費がかからなければいいのですが、そうでなく、持病があったり怪我や病気のため保険が適用されてもなお高額な医療費や薬代が必要な場合、自分で働いて治療費を稼ぐよりも、生活保護を申請する方が得という考えに立ってしまいます。それが広く知られているだけに、その流れはもう止めるに止められないでしょう。
2012年のデータでは、生活保護費全体に占める医療扶助費の割合は46.5%にまで増えてきています。つまり金額ベースでみると、「生活保護を受ける理由は生活費が半分、あとの半分は医療費がタダになるから」とも考えられるのです。
そりゃ、お金がないからと言ってまともな医療が受けられないというのは人道に反します。本来は国民皆保険制度でいつでも安い料金で医療を受けられるのが日本が世界に誇れる仕組みでした。
しかし医療が高度化し、高額な検査や高度な手術、そして新薬が次々と投入され、それに比例して医療費が高騰し、一方では医療の進歩で本来の寿命を超えてもなお生き続けることが可能となってきたため、そこに従来の保険制度だけではまかなえない医療費急増問題があるわけです。
一般的に「生活保護費の増大」って一言で片付けてしまっていますが、実際は、その半分は「医療費負担の問題」なのです。
若くて健康な人に「将来、延命治療はして欲しいか?」って聞くと、多くの人が「必要ではない」と答えます。しかし病気で気弱になった高齢者に同じ質問をすれば、多くは「して欲しい」と答えます。生活保護を受給していて医療費が一切かからないのならなおさらそう答えるでしょう。
生活保護とは無縁と思っている今の「延命処置は不要」と答える若い人も、やがて高齢となり、寿命が残りわずかになると、多くの人は同じように「延命処置して欲しい」と答えると思います。それが生命に固執する人間の性(さが)なので、それがおかしいとは思いません。
そうやって、病院では以前なら手の施しようがなく見守るだけだった高齢者や重病患者に対し、今では自腹ではとても支払えない高度な延命医療を施し、寿命を数日~数ヶ月延ばすようなことが普通におこなわれています。
そうしたことも含め、「生活保護受給資格があるのだから、今のうちに病院にいき、できるだけ多くの検査をしてもらい、長期入院をして、薬も余計にもらっておこう」というようなことが起きないよう、もう少しマシな制度にあらためることが必要でしょう。
例えば生活保護受給者でも生命に関わりのある治療以外の医療費は自己負担とか、生活保護費の中から医療費の一部を支払う仕組みとか。
と、いうことで、自分含めて誰もが将来お世話になるかもしれない生活保護に関しては、まだまだ他にもいろいろと考える余地がありますが、社会に必要な制度ということは前提にして、その中身や基準をより現実的にしていくことが重要ではないかという提言でした。
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969
時の地図 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1) 上・下 フェリクス J.パルマ
著者は47歳のスペインのSF作家で、このデビュー作の小説は2008年に出版、日本語版は2010年に発刊されています。
これを単なるSF小説と思って読み始めましたが、悪い意味ではなく、あまりにも想像していた内容と違っていたため、頭の中の混乱がしばらく収まりませんでした。
長編小説で3部に分かれていて、1部の主人公と2部の主人公はまったく別人で関係はありません。そのためまずは二つのあまり面白くもない退屈な時代小説を読むような感じです。
そしてその1部と2部に共通してちょい役で出てくる、実在したSF作家H.G.ウェルズが、3部で主人公となって登場し、いよいよ本格的なSF小説じみてくるわけです。
ある程度の年配の人なら、H.G.ウェルズを知らない人はいないと思いますが、「宇宙戦争」「透明人間」「タイムマシン」を書いたSF作家で、彼が生きた19世紀の終わり頃のロンドンがこの小説(3部とも)の舞台となっています。
こういう小説のネタばらしはいけないので、これ以上小説の中身については触れませんが、1部、2部を読んで、あまりの退屈さにそこで力尽きてしまったという人がいると気の毒なので先に書いておくと、「1部と2部はつまらないので適当に読み飛ばしておけばいい」「それに引き換え3部はとっても面白いので引き込まれる」です。
この小説でも出てくる時間旅行(タイムトラベル)については、そこで起きるパラドックスのことなど、理論上あり得ないという認識については詳しく触れられませんが、小説やドラマ、映画などでは安易によく使われています。謎は深いほど興味をそそりますからね。
こうした実在した偉人を主人公にした小説は時々見かけますが、読者の想像をかき立てるには好都合なのでしょう。ただ感想はと言うと、先にも書いたように1部と2部が無駄に長すぎて、個人的にはそれが価値を下げてしまっているなって感じです。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
贖罪 (双葉文庫) 湊かなえ
映画にもなったミステリアスな小説「告白」(2008年)で衝撃的デビューを果たした著者の3作目にあたる長編小説で、2009年に単行本、2012年に文庫が出版されました。
「告白」と同様、事件の関係者が、すぐ身近なところで起きた殺人事件について語っていくというパターンで、登場する小学生の仲良し4人組の名前と性格、現在の職業などが入り交じり、読みながら前に戻ってどういう人だっけ?と確かめるとか苦労しました。一気読みせず、あいだを置きながら少しずつ読んだせいかも知れません。
特に最後に極端などんでん返しがあるわけではなく、淡々と事件の背景や、犯人像が語られ、最後で犯人の動機につながる理由が語られますが、それも含めてどうも最後までモヤモヤした霧の晴れない感じがします。
それは主人公はじめ女性ばかりの物語で、それはそれでいいのですが、たまに出てくる男と言えば、幼児を暴行死させたり、妻の連れ子を暴行したり、妻にフランス人形と同じ格好をさせるために結婚したとか、自分に生殖能力がないけど跡継ぎが必要で、別の男性との間で妊娠した女性と結婚をしたがる男性とか、そういう変態や変人ばかりでまともな男性が誰ひとり出てきません。変なの。
現実的にはそりゃないよねって感じで、あまりにも無謀な想像の産物すぎます。
それでもテレビドラマとして映像化されたようで、そうした次から次へと起きるショッキングな展開こそが、昔のお昼の時間帯であった「愛の劇場」的な連続昼ドラみたく、昔も今もそのようなスタイルが女子ウケするのだろうかなっていうのが、平民的な中年男性の冷めた感想です。
★☆☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
家族という病 (幻冬舎新書) 下重暁子
BS日テレの「久米書店」という番組で以前紹介されていた新書で、今年の3月に発刊されています。そのテレビ番組に著者が出演し、久米宏との軽快な会話がとても面白かったと記憶しています。
著者は戦前生まれで、その後当時の女性としては非常に珍しかったと思いますが、早稲田大学へ進み、卒業後はNHKに入局してアナウンサーの職に就いた経歴の持ち主です。
早稲田大学と局アナ出身、そして現在はフリーという点では久米宏とまったく同じでその先輩(8年先輩)にあたります。
この著者の本を読むのはこれが初めてですが、その理由は今までは「女性の生き方」的な女性向けの作品を多く出されているからでしょう。
今回は女性に限らず「家族」についてで、しかも前段階でこの本に対する著者の想いを聞いていますので、取っつきやすく読めました。
ただこの著者は家族について、自分の偏見とも言える極めて特殊な状況?を元にして語られ、さらにその自分の考えとは違うものは認めたくない的な雰囲気があり、そうした押しつけがましいところが多少かんに障る部分でもあります。
男なんかには負けないぞっていう気の強い女性には割と多いタイプと感じるところです。
子供をもつ家庭や、子供を中心としてそれを家族の幸福と感じる家庭や親に対しては、あまりいい感情をお持ちではないようで、家族という中に占める親と子の関係性を否定するようなところさえ見受けられます。男性で言えば中島義道氏と共通するようなところと言っていいかも知れません。
やはり個性を売っていくためには、これほど我が強くないと有名にはなれないし本も売れないのでしょう。
しかし一般社会では、古いことわざで「血は水よりも濃い」とあるように、著者が自慢気に何度ものろけるパートナー(所詮水の関係)よりも、血を分けた親子の血のつながりのほうがずっと濃くて深いのが自然です(それ故になにか起きたとき憎悪が増長されるということもありますが)。
著者自身が、軍人だった父親やその父親に従うしか生きる術がなかった母親を尊敬できなかったということで、そういう子供時代からのトラウマが残っているのでしょうけど、世の中の多くの家族は、まず第一に親と子がもっとも信頼の置ける家族単位であるということをもっと尊重するべきじゃないかなって思うのです。期待と言うことかも知れませんが。
★☆☆
◇著者別読書感想(下重暁子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ワーカーズ・ダイジェスト (集英社文庫) 津村記久子
お仕事小説として有名な著者と言うことですが、読むのはこの本が初めてです。2008年に「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞されている若手気鋭の女流作家さんと言うのでしょうか。
この小説は2011年に単行本、その後2014年に文庫化されました。中にはタイトルになっている中編小説と、もう一編短編作品で「オノウエさんの不在」が含まれる作品です。
書評などでは、もっぱらメインの中編が話題になりますが、私はこの短編のほうが気に入りました。
内容は、同姓&誕生日が同じ未婚の32歳の男女が、それぞれ東京と大阪で全然違った仕事をしながら、日々悩みながらも生活する日常が淡々と描かれます。
年齢とともに中堅社員となって、そのことに閉塞感を感じて煮詰まっていくところが、とても現実的でいいですね。
その二人が仕事の関係で知り合いますが、その時はそれだけ。1年後に大阪で再会するまで仕事や私生活で様々な試練を乗り越えていくという、ただそれだけの物語で、それが果たして面白いのか、さっぱり面白くないのか、読む人によって変わってきそうな変わった小説だと思います。私の場合は後者です。
短編もお仕事小説で、大手建築設計関連の会社の中で、高卒の中途入社ながら、誰からも信頼される有能な技術士の「オノウエ」さんが、仕事ができるばかりに、大卒プロパー社員のねたみや反感を買ってしまい、子育てのために有給を取っただけで非難されるという、非情とも言える会社の掟にさらされます。
その不条理さについて、「オノウエ」さんと以前一緒に仕事をしたことがあり、慕っている若い社員達が淡々と語っていくというストーリー。その「オノウエ」さんが一人称として登場してこないのがいい。なかなか興味深い作品です。
あと、この小説に出てくる大阪のゴチャゴチャとした街の雰囲気が、以前西加奈子著「通天閣」に出てきた街の様子と似ているなぁって思っていたら、この二人がこの小説をネタに対談をしている集英社のサイトを偶然見つけました。
対談 津村記久子×西加奈子
対談を読むと、やっぱ二人は同年代で、大阪で長く生活していて、それで似た感覚の持ち主なのだなってことがよくわかりました。「通天閣」もこの作品も、織田作之助賞の大賞を受賞しているところも似てます。☆は中年オヤジ視点なのでちょっと辛め。
★☆☆
◇著者別読書感想(津村記久子)
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