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運命の人 (文春文庫)(1)(2)(3)(4) 山崎豊子

2005年から2009年にかけて文藝春秋に連載され、2009年に単行本、2010年から2011年にかけて文庫版が発刊されました。著者がこの作品の後に執筆していた「約束の海 」が途中で絶筆となりましたので、この作品が長編小説の完成品としては最後の作品となります。

著者は過去には「華麗なる一族」で神戸銀行(現:三井住友銀行)など銀行合併、「不毛地帯」では総合商社と政治家の癒着構造、「沈まぬ太陽」では日本航空の旧体質や航空機事故など、現実に起きたことを小説として書くスタイルが得意とされていましたが、この「運命の人」も一般的には「西山事件」と呼ばれる沖縄返還交渉密約や外務省機密漏洩で騒がれた実在する毎日新聞社記者を主人公としたものです。

この主人公になった西山太吉氏は現在84歳でご存命です。こうした小説の場合、メインの登場人物が亡くなってから出版されることが多いのですが、西山氏やその周辺の方々にキッチリと取材をした上で書かれているようで、特に問題とはなっていないようです。

1971年の沖縄返還にあたって、元の地主に支払われる現状復帰の補償費について、日本とアメリカ政府間が取り交わしたとされる密約を不正な手で入手し、スクープ記事を書いたり、証拠の電文を野党議員に渡し、国会で佐藤栄作首相や与党が追求されることになります。

その外務省から漏えいした秘密文書を漏えいした外務省職員の女性と、そそのかした罪で毎日新聞社記者が「国家公務員法違反」で起訴され、その後長く裁判がおこなわれました。

そうした事件が明るみに出た1971年から1978年に最高裁判決がでるまでの一連の事件については、当時私は中学生~高校生の時代で興味も関心もなく、まったくなにも知りませんでした。

しかし2010年に起きた尖閣諸島付近での中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件で、海上保安庁職員が無断で動画を公開したことなど、公務員の守秘義務に関してもっと厳しくするべしとの意見が高まり、第二次安倍内閣において2013年に特定秘密保護法が制定されることになり、その法律に反対する側から、こうした権力側が国民の知る権利をつぶした悪しき前例として、あらためて知る機会が出てきました。

おそらく現在65歳以上になった団塊世代なら、事件が起きたのが20代半ば頃以上ということで、その年代より上なら、この事件は当時の大きな記憶として残っているでしょう。

事件の内容は小説を読めばよくわかるので省略しますが、政府や国が必死に隠そうとした密約を、手段を選ばずに新聞記者の意地とプライドをかけてすっぱ抜こうとする双方の戦いのはずが、いつの間にか記者が外務省の女性職員をたぶらかして国家機密を手に入れたと三流の下ネタ情実事件にすり替えてしまい、その後は国家権力の強大さに押しつぶされていくという姿が描かれていきます。

また後半以降は事件そのものよりも、返還されたというものの、実態はアメリカ軍に蹂躙され続ける沖縄の現状が書かれています。いかに遠く本土に住む日本人が、沖縄を犠牲にしてきたかということがよくわかる内容です。

最近の新聞記者は手段を選ばずにスクープを追いかけるよりも、政府や国が発表することをそのまま書くいわゆる御用メディアに近いとも言われていますが、確かに政治家や高官と対等に話しができて、オフレコで得た小ネタから大スクープに結びつけていくような気概のある記者はもう現れないのかも知れません。

当然新聞社にも法令を遵守すべきコンプライアンス遵守事項があり、また有力政治家や官僚を敵に回したので、黙っていても入ってくるネタももらえず、それなら無理をしてネタをかき集めるよりも、政治家や官僚のご機嫌を取るために言われたままの大本営発表を書く方が楽だし、それなら無用なトラブルも起きないっていう方向でしょう。

ただしそれが、どの新聞も見ても同じ内容で、まるで政府広報誌みたいになり、やがては衰退していく理由のひとつでしょう。

直接この小説や事件とは関係はありませんが、官僚とマスメディアとの関係を例えた話しが「なぜ元経産官僚の古賀さんは「報ステ」降板に腹をたてたのか」に書かれています。

官僚にとっては新聞記者などマスコミは飼育している家畜なんだと。また思い上がったというか、ゆがんだ権力ですね。

すでに新聞社は新聞の質で売る時代ではなく、不動産事業で稼ぐビジネスモデルとなっていますので、この小説は過去の新聞社が無頼ながらも活気があり輝いていた時代の話しを関係者が懐かしく思い出すものとしての役目しかありません。

著者からすると、この小説は現在の活気がなくその使命を果たしてはいない新聞社などマスメディアに対してのレクイエムだったのか知れません。

あとこれは著者の責任ではありませんが、この分量(1~4巻合計約1100ページ)で4巻に分けるのはどうなのよ~って思います。商売上の理由としか考えられません。

参考までに京極夏彦著「魍魎の匣」は1冊で1060ページ、半村良著「完本妖星伝〈3〉終巻」は1044ページあります。ま、そこまでは無理にしなくてもいいけれど、せめてこの分量なら2冊ぐらいに収めてもらいたいものです。

著者別読書感想(山崎豊子)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ゲーテ格言集 (新潮文庫) ゲーテ

元はドイツの弁護士でありながら、詩人であり、戯曲作家、そして「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」など小説家としても名高いヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)が18世紀後半から19世紀にかけて書き記してきた名言を集めたものです。

名言が各ジャンルごとに整理され、それが出典先とともに書かれているだけで、特にいちいち解説など野暮なことは書かれていません。

それを読む人がどう感じ、読み取るかに任せたもので、押しつけがましいところがなく好意が持てます。

感想を書くというべきものではないので、自分が気になった言葉を備忘録を兼ねていくつかピックアップしておきます。

◆人間の過ちこそ人間を本当に愛すべきものにする。
◆才能は静けさの中で作られ、性格は世の激流の中で作られる。
◆よく見ると、およそ哲学というものは、常識をわかりにくい言葉で表したものに過ぎない
◆感覚は欺かない。判断が欺くのだ。
◆小説は一つの主観的な叙事詩である。その中で著者は世界を自分の流儀で取り扱う許可を求める。
◆卑怯者は安全な時だけ居丈高になる。
◆支配したり服従したりしないで、それでいて何物かであり得る人だけが、本当に幸福であり偉大なのだ。
◆自分自身の内心を支配することのできぬものに限って、とかく隣人の意志を支配したがるものだ。
◆実際の道徳の世界は大部分悪意と嫉妬から成り立っている。
◆不正なことが不正な方法で除かれるより、不正がおこなわれている方がまだいい。
◆人はみな、わかることだけ聞いている。
◆すぐれたものを認めないことこそ、すなわち野蛮だ。
◆どんな場合にも口論なんぞする気になるな。賢い人でも無知な者と争うと無知に陥ってしまう。
◆それによってすべてを知るが、結局肝心なことは何もわからないような本がある。
◆大きな必然は人間を高め、小さな必然は人間を低くする。
◆若い時は興味が散漫なため忘れっぽく、年を取ると興味の欠乏のため忘れっぽい。
◆学術においても実際は人は何も知ることができない。常に実践が必要である。

【関連リンク】
 3月後半の読書 彼女がその名を知らない鳥たち、「人間嫌い」のルール、インターセックス、民宿雪国
 3月前半の読書 夏の庭、マリアビートル、さらば雑司ヶ谷、ドミノ
 2月後半の読書 和菓子のアン、リフレはヤバい、屍者の帝国、三匹のオッサン

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912
ネット上のニュースを読んでいると日本語の乱れがますますひどくなってきています。

それが個人や零細なメディアの記事ならまだしも、大新聞社などが運営しているWebサイトの記事の中にもひどいものが多く、ネットの中ではそうした日本語の乱れなど気にしていちゃダメなんだろうかって最近思うようになりました。

比較的まともなNHKのテレビニュースでは、

(1)原稿を書く記者
(2)内容や構成をチェックする編集者(
3)最終確認する番組ディレクター

新聞なら

(1)記者
(2)編集者
(3)校正
(4)デスク

など、少なくとも2人以上が事前に文章をチェックをしていると思われますが、時として急に入ってきた速報など、かなり慌てて書いたと思われるようなメチャクチャな文章の原稿が届き、それをを読まされる気の毒なアナウンサーという構図が見られます。

視聴者からバカに見えるのはそれを読むアナウンサーその人であって、アホな原稿を書いた裏方さんではないですからいい迷惑でしょう。

アナウンサーもベテランともなると、おかしいと思ったらすぐに言い直したり、直前に自分で修正したりしているようですが、民放放送局のニュースでは原稿を書いているのが日本語の怪しいど素人、読むのは書かれた原稿通りにしか読めない、書かれた原稿すらふりがながついてないとまともに読めないこれまたど素人と、まるで小学生の学芸会レベルの低レベルな放送があったりします。

いわゆる現場に日本語のプロが少なくなってきているのでしょうね。ここは団塊のおじさま、おばさまの出番かも知れません(笑)

私自身も日記をあとで読み返すと、恥ずかしい誤字もあれば変な使い回しがあったりして、決して誉められたものではありませんが、少なくとも放送や新聞など公共性の高いものはもっと慎重にプロがチェックすべきでしょう。

現場にプロがいない、育っていないと言うなら、いくらでも暇を持て余している団塊世代の「言葉の乱れに神経質な」セミプロ達がいますから、安いアルバイト料で雇えばいいのです。

一般的に使われ方に誤用が多い言葉の一覧です。

三寒四温・・・冬期に寒い日と暖かい日が交互にやってくることで、これを秋や立春のあとの春にも使っている人が多い

小春日和・・・晩秋から初冬の頃の穏やかで暖かな日のことで、平気でうららかな春に使うパープリンもまだわずかにいる

五月晴れ・・・本来は梅雨の晴れ間を指す言葉で旧暦5月頃。なので新暦では5月ではなく6月に使うほうが正しい

雨模様・・・雨が降りそうな天気を指すのであって、降っている様子をいうのではない

耳障り・・・「耳障りがいい」とか平気で言うが「耳障り」は「不快に聞こえる」って意味だから「いい」わけはない

役不足・・・「オレ様は偉いのだからそんな役じゃ不満だぞ」っていう意味だからへりくだって言う「役不足」はおかしい

まんじりともせず・・・「ジッと動かないこと」ではなく「一睡もしないこと」って意味だ

煮詰まる・・・「議論が堂々巡りし煮詰まってしまった」って使われ方をするが、本来の意味は「結論が出た」状態なんだからいいはずなのだが

敷居が高い・・・「敷居が高そうな高級店」ってテレビの食レポで使われるがそれは誤りで、「あの人に迷惑をかけていて会うのは敷居が高い」という用法が正解

うがった見方(考え方)・・・もし「それはうがった見方(考え)だね」って言われたら、「物事の本質をうまく的確に言い表している」という意味が正しいいので喜ばないといけない

確信犯・・・道徳的、政治的など主義や信条にしたがい自分では良いことだと思っておこなう犯罪ってことで「犯罪とわかっていてする故意犯」のことではない

おっとり刀でやってくる・・・ゆっくりやってくるのではなく、「取るものも取らず急いでやってくること」で、誉められるべき事

潮時・・・「ここらが潮時(引き際)」って使い方は間違いで、「引退するには今が潮時(ちょうどいいタイミング)」って使い方が正解

ダントツ・・・断然トップの略なので「ダントツの1位!」とかは変でしょう~

爽やか・・・「爽やかな風が」っていう「爽やか」は俳句では秋の季語なので、細かいようだが春や夏に使うのは配慮すべきかも

苦渋を味わう/苦汁をなめる・・・混乱しがち。渋味は味わい、汁はなめる。逆は間違い。意味は双方似たようなもの。

浮き足立つ・・・「嬉しくて(楽しくて)浮き足立っている」は間違いで、「不安で落ち着かない様子」を表す言葉

新年明けましておめでとう・・・新年とは旧年から明けてなるものだから重ねて使うのは変

- ◆ - ◆ - ◆ - ◆ - ◆ - ◆ - ◆ - ◆ - ◆ -

ま、言葉は時代と共に変化していくものなので、誤用もそれがやがては誤用じゃなくなる例も多々あり、それはそれでいいのですが、やはり公共性の高い放送や新聞では用法用例をキチンと守ってもらいたいものです。

そうしないと本当にこの局や新聞社(局員や記者、アナウンサー、タレント)は教養がない、信用おけないと思われてしまいますよ。


【関連リンク】
900 テレビ・ラジオの長寿番組について
895 「ドキュメント72時間」を見て日本経済を考えた
844 内職・副業詐欺など
785 2020年東京オリンピックに向けていますぐ日本がやるべきこと
755 電子書籍を普及させるには
741 消滅すると言われていた新聞社の近況
411 業界では常識でもマスメディアでは一切報道されないこと
358 テレビ・新聞に未来はない?



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911
ヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)ということが、「パスポートの自由度ランキング」というのを発表しています。これはその国のパスポートを持っていると、世界の何カ国にビザなしまたは現地到着時取得可能で入国できるかを表したものです。

旅行や商用で海外へ行く際、ビザを発給してもらうため、東京にある大使館へ書類を揃えていちいち申請するというのは面倒なことで、余計な手間や費用がかかります。

最近では多くの国は短期間の滞在ならビザ不要にして、観光客や出張レベルのビジネスマンを積極的に受け入れようとしていますが、国の政策によっては、あまり他国からの旅行者を受け入れたくない場合もあります。

日本だってつい150年前の江戸時代は鎖国政策を敷いて外国人の入国は交易関係など一部を除き厳密に制限されていましたし、現代においても一部の国ではあまり積極的に外国と関わりたくないと思っている国もあります。

しかし一般的にはより多くの国へ自由に渡航ができるのはその国の国民にとって素晴らしいことで、そうした自由度の高いパスポートを発行している国は、より民主的で、自由度が高く、そして多くの相手国から信頼されていると言えます。

ではなぜ他国からの自由な入国を制限しなければならないかと言うと、想像ですが

・国交がない、戦争(紛争)状態である
・経済格差があり不法滞在者が増加する(犯罪増加や不法移民、不法労働など)
・国や政府に対して反動的な思想や文化が持ち込まれるのを嫌がる
・伝染病や病原菌が外国から持ち込まれるのを嫌がる
・アングラマネーが持ち込まれマネーロンダリングに使われるの防ぐ
・違法薬物や銃器などの持ち込みが増えるのを防ぐ

など。

少し前まで日本人も海外旅行をする場合、ほとんどの国でビザが必要でした。私も30年前にハネムーンで1週間アメリカへ渡るだけでビザが必要でした(日米間で短期間観光の場合のビザ免除は1989年から実施)。

こうしたビザを免除する動きは日本人観光客が世界中に出掛けていったバブル時代1980年代後半から1990年代に一気に進みました。

ビザの免除は両国同士がお互いにビザを免除するという形で政府同士が合意するケースが多いようです(必ずしもそうではない)。

したがって、ビザなし渡航が可能な国同士というのは、国交はもちろん、政府間で様々な関係もあり、お互いに大使や領事を派遣するとかの関係があるのが普通でしょう。

そのため、世界の何カ国へビザなし渡航できるかは、その国が世界の国々に対してどれだけ開かれているかという尺度にもなります。

但し、ここで言う「ビザなし渡航」には「渡航前に取得をする必要がある」ということで、相手国の空港や国境ですぐにビザが取得できる場合は「ビザなし渡航」に含めています。

では、そのビザなし渡航ができる国の数が多い国(パスポート)のランキングです。
( )内はビザなし渡航できる国数です。

1. フィンランド、スウェーデン、イギリス(173カ国)
4. デンマーク、ドイツ、ルクセンブルグ、アメリカ(172カ国)
8. ベルギー、イタリア、オランダ(171カ国)
11. カナダ、フランス、アイルランド、日本、ノルウェー、ポルトガル、スペイン(170カ国)
18. オーストリア、ニュージーランド、スイス(168カ国)
21. オーストラリア、ギリシャ、シンガポール(167カ国)
24. 韓国(166カ国)
25. アイスランド(165カ国)
26. マレーシア、マルタ(163カ国)
28. リヒテンシュタイン(159カ国)
29. ハンガリー(157カ国)
30. チェコ、スロバキア、スロベニア(155カ国)
33. ポーランド(153カ国)
34. エストニア、ラトビア、香港(152カ国)
37. キプロス、リトアニア(151カ国)
39. サンマリノ(149カ国)
40. モナコ(148カ国)
41. アルゼンチン、アンドラ(147カ国)
43. ブラジル、ブルネイ(146カ国)
45. イスラエル(144カ国)
46. ブルガリア、チリ、ルーマニア(141カ国)
48. バハマ、バルバドス(138カ国)
51. メキシコ、ウルグアイ(132カ国)
53. セントキッツネイビス連邦(131カ国)
54. アンテグアバーブーダ、台湾、バチカン市国(130カ国)
59. クロアチア(129カ国)
60. ベネズエラ(128カ国)

以下主要国やアジア諸国等を抜粋
75. ロシア(95カ国)
76. トルコ、南アフリカ(94カ国)
96. クエート(77カ国)
103. アラブ首長国連邦(72カ国)
106. カタール(71カ国)
109. タイ、ケニア(68カ国)
118. サウジアラビア(64カ国)
119. コロンビア、オマーン(63カ国)
124. キューバ、ガーナ、カザフスタン(61カ国)
131. フィリピン(58カ国)
140. インドネシア(53カ国)
146. インド(52カ国)
149. モンゴル、モロッコ(51カ国)
160. エジプト、カンボジア、アルジェリア(46カ国)
168. ベトナム(44カ国)
169. 中国、カメルーン、コンゴ、ヨルダン(43カ国)
176. 北朝鮮、エチオピア(41カ国)

以下ワースト18カ国
181. アンゴラ、ジブチ、イラン、ミャンマー(38カ国)
185. コンゴ、リビア、南スーダン、シリア(39カ国)
188. コソボ、レバノン、スリランカ、スーダン(38カ国)
192. ネパール(37カ国)
193. エリトリア(36カ国)
194. パキスタン、ソマリア(32カ国)
196. イラク(31カ国)
197. アフガニスタン(28カ国)

これをみてちょっと面白いなと思うのは、決して先進国とされる国がトップに居並ぶのではなく、北欧やヨーロッパ各国が上位に並んでいる点です。特に陸続きの国同士の場合、行き来が激しいといちいちビザなんて面倒なことはやってられません。

トップは173カ国へビザなし渡航が出来るフィンランド、スウェーデン、イギリスの3カ国。他国と陸地で接している国が多い中、島国でありながら過去に7つの海を制した大英帝国はさすがですね。その次がアメリカやドイツなどの4位、大ローマ帝国の末裔達イタリアは8位です。

日本は、カナダ、フランス、アイルランド、ノルウェー、ポルトガル、スペインと並んで11位となっています。ある記事では「日本は4位」と書いてあったりしますが、それは間違いで順位は11位です。

グループ単位で見ると日本は第4グループで、G8参加国としては残念ながら下位に甘んじていますが、アジアの国としてはトップです。G8参加国の最下位はロシアで75位です。

その他アジアの国で上位から中位までの国を見ると、シンガポール21位、韓国24位、マレーシア26位、香港34位、イスラエル45位、台湾54位、トルコ76位、クエート96位などとなっています。あれれ世界の中心という意味を国名に冠するあの国がまだ出てきませんね。

さらにアジア諸国をみると、タイ109位、サウジアラビア118位、インドネシア140位、インド146位、ベトナム168位、中国169位、北朝鮮176位、イラン181位、イラク196位など。

一番少ないのは197位のアフガニスタンでビザなし渡航できる国は28カ国です。

こうして見ると共産圏の国は政治的な理由からか、あまり人の自由な往来を歓迎していない(されない)様子がうかがえます。

いずれにしても自分の国のパスポートでより多くの国々へ気軽に出掛けられるというのは悪くないことです。

その分、航空機爆破事件を起こした北朝鮮スパイが日本人パスポートを持っていたように、犯罪者が偽造するには価値の高いパスポートとして盗難に遭いやすいというデメリットもありますが、政府も東京オリンピックを控え、積極的平和外交を推し進めていくならば、世界でもっとも自由に出入りが出来る世界有数の国に名乗りをあげてもらいたいものです。

最後に日本から渡航する際、短期の観光でも渡航前にビザが必要な国一覧をあげておきます。


オーストラリアやインド、来年オリンピックが開かれるブラジルなど、多くの観光や商用で日本人が渡航すると思いますが意外な感じです。

逆にオーストラリア人が短期観光で日本に来る際にはビザは不要ですが、インド人やブラジル人は必要となっています。


【関連リンク】
816 2050年に向けてのグランドデザイン
814 日本に外国人観光客を呼ぶ
802 観光後進国日本の現実
777 成人の力 国際比較
706 高齢化社会の行方

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910
世間では若い人のテレビ離れが叫ばれていますが、私のような50代の旧式人間にとってはテレビは娯楽や情報収集ツールとして手放せない大きな役割を果たしています。

自宅のテレビはリビングに置いている主として家族が利用するCATV契約でHDD録画ができるセットボックスが付いたものと、それとは別に自分の部屋にはネットと録画用HDDを接続している外部アンテナ経由のTVがあります。

CATV会社のHDD録画機能付きセットボックスや、この外付け大容量の録画用HDDというのは、従来からのテレビの視聴方法を大きく変えてきています。

つまりテレビを見ると言っても放送をリアルタイムで見るケースと、録画した番組をあとで見る場合(タイムシフト)があり、HDD録画がより簡単にしかも大量に録画できるようになってからは、その後者(録画してあとで見る)割合が増えてきています。

私なんかはそれへの移行がずっと遅い方で、世の中的にはそれがもっと早くから進んでいるようです。


出典:テレビ60年調査(2012年NHK放送文化研究所)をグラフ化

上記は「テレビ視聴スタイル 年代別」のグラフで、各年代ごとにテレビを視聴するスタイルを「現代的視聴」と「従来型視聴」「見ない」に分けた場合の率です。

「現代的視聴」とは、リアルタイムでテレビを見る以外に週に一度以上録画した番組を視聴しているタイプを指し、「従来型視聴」は、1日1時間以上リアルタイムだけで視聴をするタイプ、「見ない」はテレビ視聴が1日1時間未満の人という分け方です。

グラフを見ると、10代から40代までは圧倒的に録画などを併用した「現代的視聴」が多く、50代で「現代的視聴」と「従来型視聴が均衡」、60代以上になると圧倒的に「従来型視聴」という年齢層による棲み分けがハッキリ出ています。

もっとも学校や仕事があり家に不在がちな10代~50代と、リタイアしてずっと家にいる機会の多い60代以上とでテレビ視聴に差が出るのは当たり前ですが、それ以上に若い人から視聴方法の変化が起きていると思われます。

またテレビを「見ない」というのは20代~40代が多く、仕事が忙しくて見ている暇がないという現実があるのでしょう。私も社会人になった20代の頃はテレビを持ってなかった時期があったり、買ってからもあまり見た記憶がありません。

ネットを見ていると「テレビを持ってない」「テレビは見ない」と言っている人が結構目立ちますが、実態は「見ない」が多い20代でも10%程度、10人に1人という割合で、全年代平均だと現在のところではまだ5%という極めてマイナーな人達です。

おそらく30年前に家庭用VTRが普及し始めた頃から、こうした「現代的視聴」が始まったと思われますが、いわゆるビデオテープを使うアナログ録画の時代は、録画するのは保存用の映画やドラマ、趣味の番組など、録画時間に制約がある関係で、気軽になんでも番組予約って感じではありませんでした。

HDDで、しかもテラサイズの大容量で予約ができるようになってからは、気になる番組を片っ端に予約をしておき、あとで見る見ないを決めればいい的な使い方ができるようになりました。これは従来型のテレビ視聴から視聴方法が完全に変わった瞬間で、一般的には「タイムシフト視聴」と呼ばれています。

また、「タイムシフト視聴」には、NHKオンデマンドのように、ネット配信を通じて「見たいときに見られる過去の番組」という視聴スタイルも含まれます。

私の場合、ニュースやライブのスポーツ番組、それと土日曜日に放送されるNHKスペシャルなどはリアルタイムで見ますが、それ以外の番組は基本的に録画をしておき、金曜日の夜から土・日曜日にかけて、まとめて見るようにしています。映画など長い時間の番組は土日だけでは時間が足らず、連休中や夏休み、お正月休みにまとめて見たりします。

毎週予約で録画しているのは、NHKのクローズアップ現代や特報首都圏、NHKスペシャル、BS日テレの久米書店などで、あとはまだ見てなく興味のある映画やドラマ、ドキュメンタリー、上方落語の放送があれば1週間分まとめて予約をしておきます。

特に民放の番組は、リアルタイムで見ることができる番組、例えば日曜日夜の「THE!鉄腕!DASH!」なども一旦録画しておき、空いた時間や追っかけ再生でCMや繰り返し部分をすっ飛ばして短時間でサクッと見ています。

民放の番組は広告が入れられる時間は、全放送時間の18%以内という自主規制があるそうですが、ゴールデンタイムの人気番組や、視聴率の高い番組などでは番組全体の時間の約20%近くをコマーシャルが占めることがあります。その時間を削減するのにタイムシフト視聴は欠かせません。

年のせいかわかりませんが、最近のコマーシャル時間が長く感じられ、おまけに目立たせるためなのか、目に悪そうな速い動きと点滅の繰り返しばかりでイライラすることが多く、そのような粗悪なCMを見なくて済むだけでもタイムシフト視聴は価値があります。

また早回しで見ても差し支えない報道番組(クロ現など)はまとめて一気に見ます。NHKのアナウンサーは喋るスピードが決められていて、高齢者にも聴き取りやすいようにゆっくりと話してくれますので、早回しでちょうどいい感じです。一方、久米書店の久米宏の喋りのスピードや、語尾が小さくなる壇蜜の会話だと早回しで聞くと半分ぐらい何言っているのかわからなくなります。

こうしたリアルタイムで見る場合とタイムシフト(録画して視聴)で見る場合の、年代別の平日・休日別比較がありましたのでグラフ化しておきます。


出典:メディア利用の生活時間調査(2012年NHK放送文化研究所)をグラフ化
※データは男女別となっていましたので、上記は男性の視聴者分だけを抜粋しています

各年代ともリアルタイム視聴の割合が高く、特に50代と60代は平日も休日も9割以上の人がリアルタイムでテレビを視聴していることがわかります。またその年代はタイムシフト視聴は少なく平日も休日も10%台です。

面白いのは10代と40代の視聴行動が似ていて、平日・休日のリアルタイム視聴はともに70~80%台で、休日のタイムシフト視聴が平日の倍近く約30%程度と極めて高率となっています。つまり今の10代と40代は番組を録画して、休日にまとめて見るというパターンをよく活用しているようです。この年代が親子で同居している年代ということも影響しているのかもしれません。

しかしこの調査が2012年と3年前とは言え、まだリアルタイムで視聴している人の方が圧倒的に多いのは各年代でも変わりません。タイムシフト視聴が当たり前になるにはまだ少し時間がかかるのでしょう。一度やればはまっちゃいますので、今後急速に増えていくのは確実でしょう。

こうしたタイムシフト視聴が増えていくことで、原則自局以外のコマーシャルがないNHKを除き、各民放各局は対策に追われているそうです。

どういうことかと言うと、(1)CMを飛ばして見る(2)タイムリーなCMは見られたときには遺物となっているです。

(1)は私もそうですが、録画をして見るというのはNHK以外では視聴する時間の短縮のために見ているケースが多く、CMなんか見ません。でもそれでは多額の広告料を支払っているスポンサーとしては困るでしょうね。

なのでネット広告では広告効果を高めるためネイティブアドと言われる「本編そっくり似せた広告」を本編に紛れさせてしまう手法がよくとられていますが、テレビでもそうした手法が今後増えていくのかも知れません。

つまり番組の出演者が番組の中でコマーシャルを読んだり、もっと進めば番組の中でスポンサーの製品を小道具としてこれ見よがしに使ったり(当たり前に再放送があるドラマなどの場合は難しいでしょうけど)。

(2)は例えば自動車や不動産のコマーシャルで「今度の土日は決算大商談会!」とか、食品会社が「お歳暮には○○オイル」というCMをタイムリーな時期に流しても、視聴者がそれを見るのが、数週間、数ヶ月後ということがあるわけです。

上記のデータからすれば、タイムシフト視聴の割合が高い10代や40代に向けた製品やサービスの場合、(広告を見たとしても)そうした広告はタイミングを逸していて不向きと言うことです。

いずれにしてもテレビコマーシャルというのは、今でこそまだ大きな価値を持っていますが、やがては従来のように製品名連呼やブランドイメージを広めるコマーシャルフィルムを流すだけではスポンサーの自己満足に終わってしまい、厳しく費用対効果が問われ出すと、その価値は一気に下落してしまい、それが放送局のビジネスモデルに大きな打撃を与えることになりそうです。

世の中、マーケティングブームで様々な理論や手法が花盛りですが、ことテレビ広告については一番費用がでかい割には、費用対効果などマーケティング理論は無視されているという変なことになっています。

いずれにしても、そうしたテレビ広告が「えぇ!そんなに効果ないの!?」っていうことが証明されるタイミングが刻一刻と迫ってきていて今後どのようになっていくのか今から楽しみです。

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彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫) 沼田まほかる

2006年単行本、2009年に文庫化された小説で、2年ほど前に読んだデビュー作でホラーサスペンスの「九月が永遠に続けば」に続くメジャー2作目の作品です。

前作は自意識過剰気味な女性が主人公で、なんだかおど恐ろしい雰囲気がありましたが、今作も精神的にちょっとアレかなって思わせられるよくわからない女性が主人公。つらいんですよね、こういうの読むの。って読まなければいいのだけどつい手に取ってしまったので。

で、主人公は若い独身女性で、付き合っていた青年実業家にボロボロにされ捨てられ、その後自分をすごく気に入ってくれる前彼とは似ても似つかぬいやらしい中年オヤジと一緒に暮らすようになっています。

そのあたりの様子がとても暗くて精神的にどうなのよ~って思うような展開が続き、読んでいて暗澹たる気分になってきます。

そして、彼女に新しい恋人ができますが、これがまた妻も子もある不倫状態で、もう身勝手でどうしようもないところへ自分を追いやっていくのは、性なのかそういうスパイラルにはまってしまう本能的なものなのかよくわかりませんが、とにかく複雑な展開へと進んでいきます。

で、ホラー作家の面目躍如が全開になるのは終盤で。しかし意外にミステリー作品としては普通だったりします。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「人間嫌い」のルール (PHP新書) 中島義道

この哲学者で今年70才になる元大学教授の言いたい放題は結構好きで、何冊か読んでいます。

この新書は2007年刊ですから東京電気通信大学で教鞭を執っている時期で、ちょうど60才になった頃に書かれたのではないかと推察します。

著者の作品をいくつか読んできて思ったのは、著者はある意味純粋の人で、「嫌のことは嫌」「やりたくないことはやらない」「家族であっても距離を置きたい」となんでもハッキリと口に出せる人で、昔の芸術家などにはよくみられたタイプです。

ただそれって現代では「わがまま」「自己中」「気遣いできない人」「愛のない可哀想な人」などと軽蔑、あるいは同情されそうな感じですが、それを承知した上でできるってことはそれはまた凄いなって思うわけです。自分に自信がなければとてもできることじゃありません。

この本では「人間嫌い」になるにしてもいくつかのルールがあることを示し、それらのルールも守れず中途半端で怠惰なだけの「人間嫌い」になるぐらいなら、世間の迷惑だからやめておけ!って言っているような内容です。

著者別読書感想(中島義道)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

インターセックス (集英社文庫) 帚木蓬生

1947年生まれの現役の精神科医でもある著者の作品は数多くありますが、久しぶりに読みます。最近では「神様のカルテ」が大ヒットの夏川草介氏や「チーム・バチスタの栄光 」から連なるシリーズの海堂尊氏、業界重鎮渡辺淳一氏など多くの医師との二足のわらじ作家さんも多いのですが、どれも私にとっては知らない世界の話しで面白く読めます。

著者名(ペンネーム)はちょっと読みにくいですが「ははきぎ ほうせい」と読み、これは源氏物語の巻名からそれぞれ取っているとこのことです。

この作品は2008年単行本、2011年に文庫化された作品で、タイトルの「インターセックス」とは「中間的な性」の意味で、「半陰陽」とか言われたりして「先天的な生殖系・性器の異常」を指す言葉です。

この作品の前、2002年に発刊された人工子宮や男性の妊娠などをテーマとした「エンブリオ」の続編というか、舞台や登場人物はかなりダブっています。

そうしたインターセックスとみられる人はその定義によって左右されますが、一見してそれとわかる赤ちゃんは10万人に一人の割合で産まれるという報告もあります。

日本ではおおよそ毎年100万人の新生児が生まれますので、毎年10人程度で生まれる勘定になります。

公にする(してもいい)人はまずいないので、正確な統計データはなく、また原因なども特定されてはいません。

最近よく耳にする性同一性障害の人や同性愛者が性転換をしたとしても「先天的な生殖系・性器の異常」ではないので上記に含まれません。

またインターセックスとされる人でも、染色体、性器形状、生殖器官の有無、性徴、心理などがそれぞれで、一括りにできるものではないそうです。そりゃそうでしょうね。

医療の進歩によって、物心が付く前に親と医者で男女どちらかに決め、手術などで性器などを作っていくということがありましたが、近年では、それを選択するのは医者でも親でもなく、本人の意志にゆだねる、ということは成長後に決める(あるいは決めない)という意見が強くなってきているようです。

主人公はそうしたインターセックス患者を多くかかる性差医療が専門の女医で、勤務していた市民病院からリゾート地に新しくでき、最先端医療をおこなっている総合病院の院長にスカウトされ移ります。

そこで主人公は親友がこの病院と関係の深いホテルの部屋で突然死していたり、その他にも同時期に病院の関係者が不自然な死に方をしていることに気がつき、先端医療と病院経営の暗闇にメスを入れていきます。

解説にも書いてありましたが、この小説では、大きく2つの謎と知識が得られます。ひとつは犯罪ミステリーとしてのもの、もうひとつが、タイトルにもなっている男でもなく女でもないその中間の性の現実と未来について。

単なる解説や興味本位のものではなく、いろいろと重たい問題を詰め込みすぎて、ちょっと焦点がぼやけてしまった感があるものの、なかなか読み応えのあるいい小説でした。

著者別読書感想(帚木蓬生)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

民宿雪国 (祥伝社文庫) 樋口毅宏

著者のデビュー作「さらば雑司ヶ谷」と一緒に買ってきた、2010年に単行本(文庫は2013年刊)で発刊された著者の3作目の作品です。

初めての作家さんの小説を読むときは、ほとんどなにも知らずに読むことが多く、その内容や展開によっては結構戸惑ったりすることがありますが、この著者の最初の本に出会った時もぶっ飛びました。

そのおかげで、この2作目は心の準備というか耐性が十分にできあがっていますので、すんなりと入っていけます。

戦後建てられた3階建ての雪国という名の民宿を経営し、洋画家としても名声を究めた男が亡くなり、その男(=小説の主人公)の謎多き過去を調べていくという連作短編を寄せ集めたような形式です。

いきなり登場してこれが主人公?って思っていた民宿経営者の亡くなった息子の友人と名乗る青年が、いとも簡単に殺されてしまい、ちょっと混乱しましたが、その後はいたって樋口節炸裂というか、面白く読ませてくれます。

主人公をよく知る証言者として、ホテルニュージャパン火災事故で有罪となった横井英樹氏やオーム真理教の松本智津夫死刑囚を思わせる人物や、作家の安倍公房氏と思われる人物、放浪して世話になった画家の山下清氏などまで登場し、うまく時代と有名人を結びつけたりしています。

とにかく前作同様、次々と人が死ぬ(殺される)ような話しで、あまり後味はよくないですねぇ。鬱傾向のある人にはお薦めしません。

著者別読書感想(樋口毅宏)


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