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社会人を35年もやっていると、様々な大きな事件や事故などに、直接的、間接的に身近に関わったり、目撃したり、近くで遭遇することがあります。

そうした中で、幸い直接的には関係しませんでしたが、私が身近なところで見た大きな出来事について備忘録的に書いておきます。

備忘録ですので他人が読んで面白いとか、関係者ではないので、なにか新しい事実があるわけではありません。あしからず。

1980年(昭和50年)8月19日発生 新宿バス放火事件(東京)
当時私は同年4月に入社したばかりのピカピカ?の新入社員で、新宿の高層ビルに入っている会社に勤務していました。
当日も朝から勤務をし、夜になって仕事が一段落した頃(事件は夜9時過ぎ発生)、ふと窓の下を見るとすぐ近くの新宿駅前のビルあたりからモウモウと黒煙が立ち上ってきます。
同時に赤色灯を付けた消防車が何十台も集まってくる様子がよく見えました。遮音性が高いビルの中なので外のサイレンの音は聞こえません。その時は駅前ビルの火事だなぁと思っていました。
その後残業を終えて10時頃に帰宅するため新宿駅へ向かいましたが、新宿駅周辺では、まだ大勢の人が集まっていて騒然としています。
一緒にいた先輩から「なにがあったのか聞いてこい」と言われ、野次馬っぽい集団に聞いてみたところ「バスが燃えて死人が出たらしい」とのこと。当時住んでいた寮に帰ってテレビで見ると、男が発車待ちのバスの中にガソリンを撒いて火を付けたという事件であることを知り、翌日の新聞にはバスの車内の写真が掲載され、一番後ろの席にはたぶん人だったと思われる黒い塊が生々しく写っていたのに衝撃を受けました。
死亡者6名、負傷者14名、加害者は無期懲役の判決を受けたのち収監中の刑務所内で自殺


1982年(昭和57年)2月8日発生 ホテルニュージャパン火災(東京)
同じく新宿の高層ビル内で勤務をしていましたが、早朝に出社して窓の外を見ると赤坂見付あたりでもの凄い黒煙が上がっているのに気がつきました。大きな火事だということはわかりましたが、当時はネットもなく、またオフィスにはテレビ等もなかったので詳細はわからず、夕方になって新聞でその詳細を知りました。
出火したのは深夜の3時過ぎということなので、私がオフィスから黒煙を見た朝の8時頃はすでに消火活動中だったようですが、鎮火するのは火事発生からなんと9時間(昼の12時頃鎮火)もかかってということです。
火災の原因は宿泊客の寝たばこ、死者33名、負傷者34名


1982年10月27日発生 勝田清孝拳銃強奪逃走事件(名古屋)
同日夜、名古屋市千種区内において警察官が襲われ拳銃を奪われるという事件が起きました。このとき私は名古屋駅前の支店に勤務。住まいは事件が起きた同じ千種区にある会社の寮で、事件が発生した場所の近くにありました。
この事件は後に死刑が確定し執行された希代の凶悪犯勝田清孝が、追い詰められ最後のあがきに近い犯行で、逮捕後に語った話しでは約10年間に22人(裁判で確定したのは8人)を殺害したという凶悪極まりない連続殺人犯の犯行でした。
仕事を終えてなにも知らずに地下鉄に乗り、寮へ向かったところ、駅を出ると周辺にパトカーがいっぱい停まっていてなにか緊迫した様子。駅からミニバイクに乗って寮に着くまで2回、強面の警察官に職務質問され、「はて?」と思いましたが、帰宅後にテレビで見たニュースで納得。その後犯人は奪った拳銃を使い、さらに強盗や殺人を重ね、拳銃強奪から3ヶ月後に逮捕されました。
次々と女性や、見知らぬ行きずりの人を殺していくのは、この前読んだ真梨幸子著「殺人鬼フジコの衝動」の男バーションという感じがします。でも小説とは違って現実のことですから驚くしかありません。


かい人21面相事件(大阪)
  ◇1984年3月18日発生 江崎グリコ社長誘拐事件
  ◇1984年5月10日発生 江崎グリコ脅迫事件
  ◇1984年6月22日発生 丸大食品脅迫事件
  ◇1984年9月12日発生 森永製菓脅迫事件
  ◇1984年11月7日発生 ハウス食品脅迫事件
事件は3月18日に突然江崎グリコ社長が自宅から誘拐されたという衝撃的なニュースで幕を開けました。誘拐事件は本来なら報道規制がされますが、一部のマスコミ(夕刊紙)がスクープを流したため、すぐに拡がりました。メジャーな新聞テレビではなにも伝えず、夕刊紙だけが一面で派手に書くという、なにを信用していいのかよくわからない不思議な数日でした。
その後のグリコ森永事件として象徴的な「危険、食べたら死ぬで」のメモを貼った青酸入り菓子が置かれた企業脅迫事件は、江崎社長誘拐事件から2ヶ月経った5月以降に発生します。
当時は江崎社長またはグリコや江崎家への個人的な恨みの犯行という印象が強く、それが事件の初動捜査を誤らせた要因のひとつでもありました。
当時私は大阪支店に勤務をしていたこともあり、事件発生の場所、犯人が指定した場所、毒入り菓子が置かれた場所など、馴染みがある場所で次々と起きていく事件を、何者かわからない漠然とした恐怖を身近に感じていました。
毒入りチョコが発見されてから、スーパーやコンビニなど小売店からグリコ製品や森永製品が相次いで撤去されました。個人的には当時は独身で子供もいなかったのでそうしたお菓子類の需要はなく、不便はなかったのですが、それでも一部の取引先が、大きな損失を受けている様子が耳に入ってきました。
そして会社でも窮地のグリコや森永を少しでも助けようと、社員に対し「お菓子詰め合わせパック(千円)」を有志で購入するなど支援をおこないました。正直1人住まいの20代独身男がポッキーやキャラメル、チョコレートなどを何袋も買わされて、処分に困ったのですが。
最終的にこの事件は犯人を検挙することはできず、2000年に時効を迎えています。


1995年(平成7年)3月20日発生 地下鉄サリン事件(東京)
日本を、いや世界を震撼させた化学兵器による世界初のテロ事件です。
事件が起きた当時は川崎に住まいを移し、都内(渋谷区)へ通勤していました。そして毎日乗っていたのが営団地下鉄日比谷線で、朝は8時過ぎには会社に着くよう毎日通勤していました。
そして朝の8時頃、日比谷線、丸ノ内線、千代田線の車内で、ほぼ同時にサリンが撒かれました。
私が乗っていた日比谷線の車輌かどうかは不明ですが、降りて会社に向かう途中に事件は起きていました。後に判明したことですが、日比谷線では私が通勤で乗っていた区間ですでにサリンが撒かれた(ビニールに入れたサリンを傘で突き刺して漏れ出させた)ようで、一歩違えば直接被害を受けていました。同僚の中には日比谷線に乗車中ガスを吸い、病院へ運ばれた人が何人もいます。
当時はサリンという化学物質のことはあまり知られていませんでした。この事件の半年前には松本でサリンのような神経ガスが撒かれるという事件が発生しており、その時の初動捜査の誤りから実行犯を突き止められなかったことが、この大規模な殺戮テロへと発展することになりました。
死者13人、負傷者6300人、首謀者麻原彰晃死刑、他死刑判決9名


以上、東京・名古屋・大阪で勤務をしていたとき、それぞれ重大事件や事故を身近で目撃したり遭遇したことは、たまたま偶然に違いありませんが、その時の緊張や経験したことはいつまでも忘れられません。

事故や事件ではありませんが、1995年(平成7年)1月17日の阪神淡路大震災の時は東京で勤務していて、直接は経験をしていませんが、2011年3月11日の東日本大震災の時は都内の高層ビルの中で大きく揺られていました。

これ以上揺れると大きな窓ガラスが外れ、机やロッカーなどが飛び出すのではないかと思うような揺れ方でした。

津波や火災、原発事故に巻き込まれた多くの方と比べると、まったく影響がなかった部類に入りますが、それでも当日は電車がすべて止まり、自宅までの20kmを悪い足で歩いて帰ることはできず、会社で泊まりを覚悟していたところ、深夜になってから電車が動き出し、しかもありがたいことに終夜運転をするとの情報で、無事深夜2時過ぎには家にたどり着けました。

地震発生直後に全線翌朝までの運休を決めて駅のシャッターを下ろして帰宅難民と化した乗客を追い出したJR東日本と違い、急ぎ安全確認をおこない、確認が出来たところから順次運転再開し、改札は定期や切符などなくても誰でもフリーで出入りできるようにして、終夜で電車を走らせてくれた私鉄各社とその社員さんには本当に感謝です。

また電話やメールが全滅状態の中で、Twitterによるリアルタイムでの情報提供がとても役立ちました。

様々な出来事やアクシデントが身近なところで起きるのは必然のことと思いますが、もしいつなにが起きても慌てず、あきらめず、そして弱者を先に助ける行動と、正しい情報を集めて見極める能力を身につけておきたいものです。


【関連リンク】
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850 少年犯罪は増加、凶悪化しているのか?
842 ひき逃げは絶対に許してはいけない
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
751 自動車事故と車種や装備の関係
693 引きこもりが長期化する前にすべきこと


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赤猫異聞 (新潮文庫) 浅田次郎

単行本は2012年、文庫版が2014年12月に発刊されました。文庫が出るとなにも考えずすぐ買ってしまう浅田次郎氏の長編時代劇です。

赤猫とは元々は「赤猫を這わす」ということから火付けや放火を意味する江戸時代からある隠語のようですが、それが転じて火事を意味することも多いようです。

ちょうど10年前、2005年に読んだ重松清著「疾走」の中では、主人公の兄の放火犯を「赤犬」と呼び、その家族を村八分にする土地の話しが書かれていたのを思い出しましたが、地域によって猫だったり犬だったりするのでしょう。

昔から「喧嘩と火事は江戸の華」と言われるぐらいに、江戸ではしばしば大きな火事に見舞われています。

そして、今で言う刑務所、江戸時代は牢屋敷と呼ばれていましたが、そこに閉じこめられていた罪人も、その大火が近くまで迫ってきた時には、一時的に解き放ちがおこなわれることがあります。

物語の時代は慶応から明治に変わり、その元年の暮れも押し詰まった頃、ちょうど江戸の牢屋敷で不可解な斬首の刑が実行されようとしていた時に、半鐘が鳴り響きます。火事が起き火が迫ってきたことから、牢につながれていた罪人達の解き放ちが実行されます。

その中でも重罪人と言われているのが「客分で招かれていた地場の親分に裏切られ、賭場の全責任をかぶらされた信州無宿繁松」、「旗本の次男で新政府の役人相手に夜な夜な辻斬りをしていた岩瀬七之丞」、「悪党の与力にうまく利用された末に捨てられた夜鷹の元締めで江戸三美人の白魚のお仙」の3人です。

解き放ちの際にこの重罪の3人だけは後々面倒だから大火事のどさくさに紛れて切って捨てようとした同心仲間を信義にもとると説得し、「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者は死罪、三人とも戻れば全員が無罪、全員が戻らなければ牢屋の鍵役同心が切腹」という妙な条件を付けて解き放されることに決まります。

そして、時代は平和な明治に飛んで、その三人や番人から解き放ち後に起きた不思議な出来事を伝聞として書き残すため、役人が聴き取りに回るというストーリーです。

こういうストーリーは黒澤映画にもなった芥川龍之介の「藪の中」で使われたものと同様の流れですが、最後に「種明かし」と「浅田流泣かせ処」が用意万端整えられています。

とっても面白かったです。おそらく「壬生義士伝」同様、そのうち映画化が企画されるのではと思います。

著者別読書感想(浅田次郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫) 真梨幸子

2008年に単行本、2011年に文庫化された大ヒットしたミステリー小説です。最初はタイトルから受ける印象は、山田宗樹著の「嫌われ松子の一生」みたいな話しかなぁと思っていましたが、読んでいる途中には百田尚樹著の「モンスター」にも似ているか?と感じたり、過去に読んだいろんな作品が頭の中をよぎります。

ネットではこの小説の仕掛けについて喧喧囂囂と議論や感想が述べられていますが、私も最後まで読んだ後、ちゃんと内容が理解できていませんでした。

ネットでのネタ晴らしを読んで「あーそうなのか」ってわかったぐらいです。頭がよくて勘のいい人ばかりじゃないのだから、そんなにややこしい仕掛けにしなくてもいいのになっていう感想です。

最初からどうも凝りすぎていて途中でどうなっているのかスッキリしないまま読み進めていくことになりますが、こうした最後まで読んだあと、再び最初の話しを読み返して考えないと気がつかないというマニアックな内容がいいと言う人がいるのでしょうかね。

内容はとにかく、自分の都合で簡単に人を殺して、証拠隠滅のため解体したり、子供を虐待して死なせたりと、やたらと殺しやいじめのシーンが平板に出てくる後味の悪い小説です。

ま、ミステリー小説の中で殺人が起きるのは半ば常識ですが、それにしてもちょっとやり過ぎの感があって、あまりにも非現実的なホラー色、カルト色満載で、どこか未知の世界の出来事って感じですが、そういうのがたまらなく好きっていうマニアがいても、小説の世界ならば別に不思議ではありません。私個人的にはもういいですけれど。

著者別読書感想(真梨幸子)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

モップガール (小学館文庫) 加藤実秋

2007年に単行本、2009年に文庫化された小説で、その後シリーズ化され2012年には続編の「モップガール2 事件現場掃除人」が発刊されています。

また2007年には小説と設定が少し違っているようですが、北川景子主演でテレビドラマ化もされています(見たことありません)。

元々はテレビドラマ化をする目的で書かれたということで、登場人物、ストーリーともわかりやすくというか単純に描かれています。

内容はアルバイト募集の広告を見て、清掃会社で働くことになった主人公の若い女性は、仕事をしてみてビックリ、事件や事故の生々しい現場の後を掃除するいわゆる特殊清掃もおこなっている会社です。

次々人が殺される「殺人鬼フジコの衝動」のあとにまた生々しい殺人現場の小説かい!って思わなくもないですが、たまたま山積みにされた中から手に取ったのがそれというだけで、他意はありません。

作品は連続テレビドラマ化に便利なように、連作短編形式で、主人公の女性が特殊な各清掃現場で、突然体調に異変が起き、五感に直接訴えかけられ、それが事件の謎や真相を暴き出すという単純な流れです。

なので最初の1話を読んだ後は、その変形バージョンの繰り返しに過ぎず、やや興味も落ちてしまうのが難点かな。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー (ベスト新書) 常見陽平

著者は典型的な元リクっぽい感じで、頭はいいのだろうけど、理屈が多くて好きには慣れないタイプの人だなと思っていましたが、面白そうなタイトルにひかれて読んでみました。

著者も自ら20代の頃は「意識高い系(笑)」だったと述べていて、その経験を元に、アラフォーになった現在(出版は2012年)振り返ってみて感じたことが書かれています。

Amazonのこの新書の書評では散々なことを書かれていますが、私は読んでみて意外?とすんなり納得のいくところも多々あり、バラエティ番組をボーとみているかのように楽しく面白く読めました。著者もプチ炎上商法をうまく利用されているそうなので、賛否両論あるのは承知の上のことでしょう。

私のような団塊世代と団塊ジュニア世代に挟まれたいわゆる「しらけ世代(笑)」にとっては、団塊世代に散々いいように使われ、振り回されたあげく、今度は団塊ジュニア世代から突き上げられたり、中途半端とバカにされてきて、その両世代には恨み神髄というか、気持ちは分かり合えないものと自覚しています。

著者はその団塊ジュニアど真ん中な人で、団塊世代の中にも少なからずいた自意識過剰気味なリーダー的存在と、文字通り親子そっくり似ていると言わざるを得ません。

いや、著作がつまらないというのではなく、人間的な暖かさがないというか、上から目線で下々を嘲笑している感じが、常に引け目や負い目を感じている人(私)にとっては、なんだか身につまされる思いがするのです。

内容は、「意識高い系(笑)」の若者の時代的な変化や生態を面白おかしくまとめたもので、一緒になって「あるある」と嘲笑した向きには著者と一体感がもてるのではと思われます。


【関連リンク】
 1月後半の読書 殺し屋ケラーの帰郷、模倣犯(1)~(5)
 1月前半の読書 羊の目、シティ・オブ・ボーンズ、日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率、ボトルネック、銀の匙
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高齢化社会と言うことは、裏を返せばこれから一気に死者が増えていくという社会です。NHKでも「多死社会」という造語を使って、それで起きる様々な問題点を特集していました。

まず、年間死亡者の数がどのような推移をしてきて、これからどうなるのか、厚労省が発表している2014年までの人口動態統計(実績値)と、国立社会保障・人口問題研究所が過去に発表した2015年以降の人口推計値(中位)を元に、1947年(昭和22年)から2060年までの年間出生数推移と年間死亡数推移をグラフ化してみました。



このグラフからは、すでに2014年(実績値)は年間出生数が1,001,000人に対し、死亡数は1,269,000人と死亡者数が268,000人超過しています。

268,000人と言えば、茨城県水戸市、東京都目黒区、大阪府八尾市、福井県福井市、徳島県徳島市、長崎県佐世保市などの人口と近く、毎年それらの比較的大きな市区が毎年一つ消えてなくなるということです。

出生数と死亡数が逆転したのは割と最近のことで、10年前の2005年からです(出生数1,062,530、死亡数1,083,796)。

そして今のペースでいくと、15年後の2030年には死亡数は160万人を超えると予測されています。出生数は今後の出生率の変化により、読めないことが多いのですが、死亡数に関しては多少寿命が延びたとしても大きな変化はないでしょうから確実性のある数値です。

推計でもっとも死亡数が多くなるのは今から24年後の2039年で、出生数676,633に対して死亡数は1,669,180と約100万人近い死亡数の超過となります。

死亡数のピークは団塊世代の平均的寿命(男80歳、女86歳)が尽きる頃かな?って思っていましたが、実はそうではなく2039年と言えば団塊世代は寿命をずっと超えた90~92歳になっています。

年間の死者数167万人と言えば、毎日4,500人以上が亡くなる計算です。毎日これだけの死者がでてくる日本は、もう死や葬儀というのは珍しいものではなく、誰でもごく身近なものとなるでしょう。

5年間の太平洋戦争で亡くなった方(自然死や病死は除く)はおよそ300万人と言われていますから、平均すると1年間でおよそ60万人、その3倍近い死が毎年続くのです。

その年間死者数160万人超えは2030年から2049年までの20年間続くことになります。

この急速な死者数の伸びは、大きな社会現象を起こします。

・空き家の増加
・飼い主不在ペットの増加
・墓地、霊園の不足
・無縁仏、無縁墓の増加
・墓石の不法投棄
・火葬場、葬儀場の不足
・葬祭ビジネスの空前の活況

など。

東京都が樹林墓地として共同墓地を売り出したのは2012年ですが、申し込みが殺到したのは記憶に新しいところです。少子化や子供や孫がいない夫婦が増え、核家族世代を中心に「先祖代々のお墓を守って」という時代ではなくなってきていますので、このような子供らが墓守をする必要がない共同墓地がこれからの主流となっていくのでしょう。

私は次男坊ということで、早々に外へ出ましたので、もしお墓が欲しいなら自分で作らなければならず、子供らの負担も考えるともう共同墓地スタイルでいいかなって最近思ってます。

火葬場の不足もかなり深刻になってきているようです。

現在全国に火葬場は1500箇所ほど(意外と数はあります)ですが、最新設備の施設ばかりではなく、同時に火葬できる数が少ないところが多そうです。

4年前の東日本大震災の時はかなり広範囲で火葬がおこなわれていたようですが、それでも追いつかず、保管にも限界があり一時的に土葬せざるをえない状態でした。

迷惑施設の要素が強い火葬場は、新たに建設したり拡張するのが難しい施設です。そのため火葬の空きを待つため、都市部においてはすでに1週間も10日も亡くなった人の遺体を保管するケースが出てきているのです。

そのため遺族や親戚にとっても、本来ならお通夜、葬儀・告別式、出棺、火葬という一連の流れが一気にはできず、お通夜の後一週間後に本葬と火葬と、何度も親族が集まらなければならない問題が起きています。

また火葬場が空かないため、その間遺体を保管しておくのは一般住宅では無理なので、遺体安置所に預けることになります。こうした施設が住宅地の中に作られ、問題を引き起こしています。

遺体安置所は冷蔵施設もあれば、単にドライアイスと一緒に保管するだけの施設など様々です。死亡証明書がある遺体は法律的には単なる物ですので、保管場所の規制などは特にありません。

川崎で遺体保管所めぐり論争 超高齢化社会の隠れた課題表面化(神奈川新聞)

確かに自宅の隣に何十体もの遺体が安置され、換気扇が24時間回され、日々霊柩車が出入りするとなると、社会に必要な施設だとは頭の中でわかっていても近隣住人にとっては迷惑施設です。引っ越したいと思っても、そのせいで住宅価格は大きく下がってしまうでしょうから損害が大きくなります。

今後、火葬に時間がかかることが普通になると、お葬式の形が変わってくるのではないでしょうか。つまり、お通夜と葬式(告別式)は亡くなったら速やかに行い、その後は火葬業者に任せて、後日火葬後の遺骨だけを受け取るという形になるかも知れません。

そうなると、例えば住宅のある場所から遠く離れ迷惑が掛からない廃村となった山奥に火葬場を建てて、そこでシステマティックに火葬して遺骨だけを遺族に返すというやり方ができそうです。最後のお見送りができませんが、仕方がありません。

これからの葬儀業者の力は、速やかに火葬場が押さえられるか?自前の火葬場を持っているか?が業績拡大の鍵となりそうです。

さて、葬儀ビジネスは古くから縄張りや利権がはびこっている業界で、例えば病院で人が亡くなると、自動的に決まった出入りの葬儀業者があとを引き取って遺族と交渉をするというケースがほとんどです。つまり病院と葬祭業者の間には協力関係というか癒着ができているわけです。

最近ではあらかじめ自分が死んだときの葬儀を事前に依頼しておくというパターンや、遺族が自分で探して直接依頼をすることも増えてきているでしょうけど、まだ多くはなさそうです。

病院で亡くなった場合はもちろんですが、不思議と死人が出ると、それからほとんど時間をおかずに葬祭業者が尋ねてきて、沈痛な面持ちで、「後のことはすべてお任せください」とばかりに優しく遺族を慰めます。その情報収集力とタイミングは見事なものです。それもノウハウのひとつではあるのでしょう。

葬儀業者は特に規制や資格要件など必要はなく、参入障壁が低い産業と言われています。つまりノウハウさえあれば大きな資本力がなくともすぐに始められるビジネスです。

葬儀会社は通常は冠婚葬祭業者として括られますが、冠婚葬祭業者は大きくブライダル業界と葬儀業界に分かれています。そしてこの業界は国内では数少ない「景気に左右されない10年以上右肩上がりで売上を伸ばしている業界」です。

ブライダル業界もここ数年伸びていますが、今後は?となると少子化や節約志向により楽観視できません。やはり葬祭が今後は冠婚葬祭の中では大きな売上と収益を生むものと思われます。

そして先ほどのグラフ通り、これから少なくとも20年は安定して顧客が増えていきます。為替変動や海外リスク、原油価格などにも影響されない超ドメスティックで確実性の高いビジネスでもあります。


【関連リンク】
876 介護にまつわるあれこれ
738 日本人の年齢別死因は
711 地方が限界集落化していく
689 自分の終焉をどう演出するか



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895
NHKの番組で(関東では)金曜日の夜に放送がある「ドキュメント72時間」は好きで、ほぼ毎回見ています。

先日放映された「金券ショップでつかむ幸せは」という回は、池袋駅近くのチケットショップが取り上げられ、そこを訪れる人間模様を72時間にわたって取材をしていました。

それを見て感心したというか驚いたのは、地下鉄やJRの近距離チケット(たぶん回数券?)をそこで買うことによって5円、10円を削っている人が結構いるということです。

私も昔出張が多かったときには、チケットショップによって新幹線チケットを安く買ったりしたことは何度もありますが、それは片道で500円とか安くなる故でした。

大阪の地下鉄では、今でもそうか不明ですが、券売機の近くにおばちゃんがいて、190円の乗車券を190円で販売してくれる(つまりおばちゃんは回数券を約1割安く買って、定価で売ることでその差額が利益となり、買う人はいちいち券売機にお金を1枚1枚入れる手間なくサッと買うことができる)という商売が成り立っていることは知っていましたが、わざわざ5円10円のためにチケットショップに寄るという心理状態は正直理解を超えていました。

インタビューでは「生活のため少しでも安く」という話しが多いようでしたが、アベノミクスや円安によって大手輸出企業中心に景気のいい話が出てきていますが、社会の実態は「5円でも10円でも節約したい」というのが現実のようです。

実質賃金、過去2番目の下げ幅 給与は4年ぶり増(朝日新聞)
物価上昇の伸びを差し引いた実質賃金指数は2・5%減と3年続けて減り、減少幅も過去2番目に大きくなった。

厚労省発表の勤労統計調査では、2014年に支払われた現金給与総額は残業代の増加などもあり前年比で0.8%増となりましたが、消費税増税や円安による輸入品価格の上昇などの影響で物価も上がり、その結果、実質賃金指数(物価上昇分を差し引いた現実的な賃金の指数)は-2.5%となりました。

どういうことかと言うと、多少給与賞与は上がったけれど、それ以上に消費者物価が上がってしまい、「国民生活は、より厳しくなってしまった」ということです。

確かにみんなもう忘れているかも知れませんが、電気、保険、運賃、乳製品、レトルト食品、カップ麺、コーヒー、ファストフードなどが2014年から値上げラッシュが続き、この2015年も食品を中心に電気・ガス、自動車、日用品などの値上げが目白押しです。

これじゃ賃金が多少上がったところで、とても物価に追いつくことなど難しく、景気がいいのは儲かっている一部大企業の役員・社員と、大量の株式などを保有しているこれまたごく一部の富裕層だけで、勤労者の9割以上を占める中小零細企業に真面目に勤めている人やフリーターはその恩恵に浸ることはなさそうです。

不景気の元凶「デフレからの脱却」を合い言葉にして、異次元的金融緩和や公共投資、政府消費、社会保障費をばらまいてきましたが、その恩恵を受けるのは極めて少数の、しかも大企業のみということになります。

「これからトリクルダウン理論で貧しい者にもお金が回ってくるぞ」という声も聞かれますが、余ったお金を持っているのはもう大きなものを消費しない高齢層であったり、海外向け投資ばかり熱心で、それ以外は内部留保したがる大企業ばかりなので、どうもそういうことには何年待っても起きそうもないというのが実態でしょう。

一般的に「株価が上がれば景気がよくなり消費も増える」と思われがちですが、1980年代バブル時代と違い、多数の国民マインドとしては「将来の不安のための貯蓄」ですから、景気も消費も増えないサイクルに陥っています。

先述した番組の中で、ある中年?男性が、5円10円を節約をして「今は1千万円の貯金ができた」「貯金は不安な将来の老後のため」と言っていましたが、そうした将来に対する不安がある限り、1600兆円を超える個人金融資産や1000兆円近い企業の金融資産残高も出てこないのではないでしょうか。

現在は原油価格が下がってきていて、そのおかげで多少救われているところがありますが、いつまでも今の傾向が続くとは思えません。

原油価格が上昇に向かえば円安が進んでいる中で、円高だった以前より家計や企業活動により深刻な影響が起きることは容易に想像できます。

ここらで大半の国民のことを思えば、「円安誘導政策は誤りだった」ことを認め、「経済成長戦略よりも成熟社会戦略への転換」「物価安定施策」を打ち出す時期にきているのではないかなと思っています。

公共投資もいつまでも防波堤の高さや住宅地のかさ上げを2mにするか3mにするかとチマチマとやってないで、被災地に最先端の国立大学、海外名門全寮制スクール、国立研究機関、国際機関、国連施設などを置き、自然に人(外国人含め)やお金が集まってくるような知恵をもっと使ってもらいたいものです。

【関連リンク】
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799 成長するという妄想
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631 サッカー選手と野球選手の経済的考察
498 失業率推移ではなく失業者数推移でみると

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火災保険や地震保険についていろいろと調べたので書いてみたいと思います。

なお、私は保険会社や保険代理店とはどこも利害関係がなく、またはアフェリエイトにより保険で収益を得ようとする立場にはありません。

したがって、保険はなにがいいとか、これがお勧めとか、特定の保険を誘導するのが目的ではありません。

今年に入ってからすでに火事に関する話題を2度書きました。

火事と高齢化社会の因果関係 2015/1/17(土) 
火事と賠償 2015/1/31(土) 

私の自宅は、22年前に購入した建売の一軒家で、住宅ローンを借りる時の条件で、住宅ローンの期間と同じ25年間の火災保険に加入させられています。

それで、ローン支払い中は保険は大丈夫とタカをくくっていましたが、よく見ると当初組んだ住宅ローンは25年ローンでしたが、10数年前にリストラに遭った時、住宅ローンの月々の支払額を減額するために支払期間を3年間延長していました。

つまり火災保険は当初の予定通り25年で終了しますが、住宅ローンはその後も続くことになります。

火災保険が切れ、住宅ローンが残っているのに万が一火災に見舞われると、シャレになりません。家は燃えてなくなり、住宅ローンの支払い債務は残り、再建の目途も立たないまま焼け出されるという目に遭うことになります。そうなると悲惨極まりないですね。

この冬は、近所で相次いで火事が起きていて、その悲惨な現場を目の当たりにし、自宅がもし火災に遭ったら?と考えていたとき、自宅の火災保険がまもなく切れることに気がつき、今後のこともあるので火災保険について調べました。

現在は住宅ローンを借りた際に一括払いで加入したもので、家財や地震保険などの特例はなく、建物の最低限を補償するプランとなっています。

今さらですがそれもちょっと心配なところなので、今の保険に家財補償や地震保険をプラスするか検討する必要があります。

そして3年後には火災保険が切れますので、新たに加入しなくてはいけませんが、調べてみたところ、さすがに22年前と比較すると、保険金や補償内容などが大きく変わっています。

今の保険は長期契約で特に安くはなっていたとはいえ、当時と比べると保険料が断然上がっています。

あらためて火災保険(含む地震保険)に入る理由は?

・火事はどんなに気をつけていても起きるときは起きる(自動車事故と同じ)
・大きな地震のあと発生した火災で自宅が被害を受けた場合、火災保険だけは補償されない
・近所で起きた火事で類焼した場合でもまず自己責任となる(損害賠償してもらえない)
・延焼せずとも放水等で建物や家財(窓、床、電気配線、家電類)に被害を受けることがある
・自分自身と同様、近所の住人も高齢化してきている(火事が起きやすい環境にある)
・火事以外にも古くなった住宅は地震や台風・竜巻など自然災害でも被害が出そう

です。

全世帯に占める火災保険加入者数のデータが見当たらないので、地震保険の世帯加入率から逆算すると2013年で約48%となります。

つまり約半分の家(マンションなど含む)は火災保険に入っていないとことになりますが、賃貸集合住宅などは大家さんがまとめて入っていることが多いでしょうから実際のところはもうもっと高くなるでしょう。

火災保険はどこの損害保険会社でも同じようなものかと思っていましたが、調べると各社で補償範囲の選択法に結構差があることがわかりました。

保険料算出に最低限必要なものは、住居用火災保険の場合、まず木造の場合は従来工法か、耐火、耐震基準に適合しているかどうか、あるいは鉄筋コンクリートかによっていくつかランクがあります。

当然ながら火事の被害が出やすいのは「木造(従来工法)>木造(耐火基準)>鉄筋コンクリート」で、「燃えにくい=被害が小さい」分だけ保険料は安くなります。

それと住宅のある地域(都道府県単位)によって大きく高低差がつきます。これは人口が多い地域ほど火事の延焼のリスクが高いということなのでしょうか、東京都や神奈川県は高くなっているようです。

東京・神奈川の家の大きさ(広さ)が地方と比べると小さい(狭い)ということも理由にありそうです。

ただ地震保険ならわかりますが、火災保険だけでも大きな差がつくのはどうも解せません。火事の発生率は特に東京や神奈川が高いと言うことはありません。

住宅の再建費用は家の構造と床面積で自動的に計算されるか、あるいは自分でこれぐらいの補償が必要と選択できるケースがあります。

標準的な住宅の再建価格は、全労済の火災保険(2015年1月現在)を例にとると、東京の木造一戸建て住宅で床面積(坪数)×80万円、鉄筋コンクリート造りで×90万円が標準価格とされています。

普通の2階建て一戸建てで多い床総面積25坪(約83m2)の場合なら、木造で2000万円、鉄筋コンクリートなら2250万円ってことですね。

この坪単価は平均的な坪建築単価より少し高めのような気がしますが、その理由は整地された更地の上に建てる住宅費用概算ではなく、古家の建て替えの場合の費用概算だからでしょう。

実際の新築費用はセキスイハウスなど大手プレハブメーカーの木造住宅なら坪単価80万円程度はしますし、テレビCMでお馴染みのタマホームだと坪50万円ぐらいで済む場合もあるようです。

上記は住宅再建の費用だけで、それ以外に家具や電気製品など家財がなければ住めません。家が燃えたり放水で水浸しになると、家財はほとんど使えなくなります。

例え壊れていなくても10年以上使っている家電製品を取り外し、長期保管し、新たに設置する手間と費用を考えると買い換えは必須となるでしょう。

火災保険にはそうした家財の補償もセットになっているのが多く、その補償額や掛け金は自分で選択できる場合と、世帯主の年齢や世帯人数で上限が定められていたり標準化されている場合があります。

これも全労済の例をとると、20代のカップル2名だけの住まいの家財だと700万円まで、世帯主が50代で四人家族だと2000万円程度の補償となります。

世帯主の年齢が高いほど持ち物が増え、高価なものが増えているという考え方でしょう。もちろんもっと高額の補償を希望する場合や、逆に少なくてもいいという場合には補償額の調整ができるようです。

と言っても実際に家財を一通り揃えるといくらぐらいかかるものか、パッとはわかりませんね。

大雑把に計算してみると、4人家族として、家具(洋服箪笥とベッド×4、ドレッサー、リビングとダイニングの各セットなどで計200万円、家電品(冷蔵庫、洗濯機、テレビ数台、エアコン×5など)で計200万円、ふとんやカーテン×4、カーペット×4、衣類×4など計200万円とすると合計600万円ってところです。

ま、リビングに1脚100万円以上する高級ソファーを入れるような贅沢を言わなければ、余裕を見ても800万円の補償があれば十分かな。

住宅と家財を合わせた補償金額が決まり、あとは加入者が現実的な保険金額を考えながら、例えば建築する家はもっと質素でいいので補償額は少なくてもいいとか、家財も最低限でいいからと下げることで支払う保険金(掛け金)も下がります。

保険会社によってはもっと細かく、火災の損害だけ(水濡れは補償なし)とか、火災の場合でも残存物の処理費用は別扱いだったり細かく分けられていますが、要は火災保険にいくら支払うか?(支払えるか)がポイントになってくるでしょう。それによってどのオプションをどのぐらい付けるか変わってきそうです。

そして最後に保険金に最も大きく影響する地震に対する補償を加えるか検討します。

ところがです。火災保険の補償が再建する費用の100%の補償が可能なのに対し、この地震保険は、目一杯保険を掛けたとしても、それで得られる補償は、火災保険で補償される限度の30~50%しか補償されません。

それだけ地震のリスクは火事や水害と比べて大きく高く広範囲に及ぶということなので、地震保険に入っておけばすべて安心か?と言うと甚だ疑問です。

この地震保険の料率は、損害保険料率算出機構が算出し、金融庁が認可した地震保険基準料率を、そのまま適用する仕組みで、保険会社間でその掛け金と補償内容にはほとんど差がないということで、自動車保険の自賠責(強制保険)と似たところがあります。

なので、地震保険に加入していたとしても、万一地震で住宅ローン中の家が被害を被ったときには、地震保険で出た保険金だけで自宅を再建、補修することはまず不可能で、全壊の時には新築費用の70~50%を新たに自己負担(二重ローン)して再建することになります。なんだか非情な話しですね。

二重ローンが嫌ならば、地震保険で出た補償金で借家に入り、マイホームの土地を更地にして、それを二束三文で叩き売り、得たお金で元々のローンを返済するって方法しかありません。

ま、預貯金がたっぷりある人や、出来た子供が2世代ローンを引き受けてくれる人は別として、実際の多くの人は手放すしかなくなるのではないでしょうか。

しかも、しかもです、地震保険の保険金支払額は半端なく高額です。危険度が高いとされる東京都、神奈川県、静岡県は特に高額になります。建物の種別によっては火災保険と同様にいくつかランクがありますが、多くの場合最高に高い一般木造住宅が多いのではないでしょうか。



それでも阪神淡路大震災で教訓となったように、都市部では地震が発端に起きる火災で広範囲に延焼するってことも多そうなので、地震保険には入っておきたいところです。

比較的リーズナブルと言われる共済の保険を例に(東京都、木造一戸建て27坪、世帯主50代、世帯人数4人)とって火災保険と地震保険の掛け金(支払い保険料)を見ると(2014年2月現在)、

通常の火災保険で住宅+家財で3千万円の補償を得るには年間21,000円(月1,800円程度)の支払いですが、地震保険で(補償額最大の)9百万円の補償を受けるためには、火災保険の2倍近く年間39,000円(月3,300円程度)が別途必要です。

これで火災保険+地震保険に加入すると年6万円(月5,100円程度)の掛け金(保険金)となります。それって普通の家庭にはめちゃ負担大きくないですか?

地震保険に入ることで年4万円近く増額しても、万一の地震被害でもらえるのは最大(全損と判定された場合)でも900万円で、それでは壊れた家の再建などとても不可能でしょう。果たして地震保険にも加入しておくべきかどうか迷うところです。

これでは地震保険の加入者は伸びないだろうと思っていましたが、火災保険加入者で地震保険にも加入している割合は2013年でおよそ58.1%、全世帯比率では27.9%(一般社団法人日本損害保険協会データ)と、意外に高いように感じますが、地域によって偏りがあるようです。

整理すると下記のようになります。


 全世帯の中で火災保険(地震保険含む)に加入している割合・・・約48%
 全世帯の中で火災保険に地震保険を付帯して加入している割合・・・27.9%
 火災保険全加入者の中で地震保険を付帯して加入している割合・・・58.1%


それだけ保険金が高い割に補償が少なくても地震への最低限の備えをしている人が多いということで、ちょっと驚きです。あと地震保険は一定額まで所得税や住民税の控除対象になるのでそうしたメリットはあります。

この地震保険の仕組みは、自動車の自賠責保険と同様、お役人様と保険会社の利権がガッチリと組み込まれていそうで、保障額の低さと保険金の高さはちょっと異常としか思えませんが、変わることはなさそうです。

一方ではマスコミは盛んに地震の脅威を日々煽り続けます。NHK以外のマスメディアと損害保険会社は大量の広告出稿による利害関係者でもあり、どこまでその報道を信用していいのか、広告主のために利益誘導をおこなっているのではと、勘ぐりたくもなります。

このようにいろいろと考えると、持ち家のメリットデメリットにはあまり書かれませんが、持ち家というのは結構面倒くさく不便なものかも知れませんね。


【関連リンク】
892 火事と賠償
888 火事と高齢化社会の因果関係
740 高齢者の犯罪が増加
594 震災など非常時の備え その1
317 発火する衣料



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