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介護退職 (祥伝社文庫) 楡周平

Cの福音」のようなダークヒーローものから、どこにでもいるサラリーマンが直面する社会の問題を描いた「ラストワンマイル」や「プラチナタウン」のようなビジネスマンものまで幅広くこなす著者ですが、この作品もタイトルをみればすべてがわかってしまう「親の介護」と「それにともなう会社との関係」を描いた現代サラリーマン悲哀物語で、2011年に単行本、2014年9月に文庫化された作品です。

主人公は50を少し回ったばかりの大手家電メーカー管理職で、アメリカへの本格進出を図るべく忙しい毎日をおくるサラリーマン。家には妻と息子の三人家族、自宅マンションのローンがあり、どこにでもある都会の風景です。

そして私立中学校を目指す頭のいい子供、子供の教育に熱心な専業主婦の妻、自分は超大手有優良企業に勤務し、年収は1千万円超えという、公私とも順風満帆な、普通の人にとってはめちゃ羨ましい限りの暮らしぶりです。

しかしその主人公には、秋田の実家でひとり暮しをしている母親がいて、その母親が雪かきの最中に転んで骨折をしたという知らせが飛び込んできます。父親はずっと以前に病気で亡くしています。

この母親の怪我から始まり、主人公とその家族に、様々な試練が訪れることになりますが、考えてみると地方に年老いた親を残して都会で暮らすすべての人にとって他人事ではないストーリーです。

少し前に「仕事と介護の両立という難題」という記事を書きましたが、まさにこの主人公は職場で「介護のため休みたい」とは言えない「隠れ介護」の立場に立たされます。

この主人公の妻は、母親の介護と子供の受験のストレスで倒れてしまい、主人公が母親の介護をするしかなくなります。そして、介護のため会社を休みがちになった主人公に対し、上司が言い放ちます。

「会社は無尽講のような相互扶助を目的とする組織じゃない。与えられた職務を果たすことができないとなれば、誰かにその役割を移さなければならないものだ。そして何より優先されるのは個人じゃない。組織、ひいては会社の利益だ」

「仕事も介護も、どちらも大変だ。一つでも全力を尽くさなければ全うできないものを、君一人でやっていくのは不可能だ。そして仕事には引き継ぐ人間がいるが、介護、ましてや面倒を見るのが親ともなればそうはいかない。このまま無理をして今度は君が倒れたんじゃ、お母さんの面倒は誰が見る。家族はどうなる。状況をよく考えることだ。」

母親と、その介護ストレスで倒れた妻の二人の介護のため、しばしば会社を遅刻したり早退する主人公に対し、上司の正論たる警告がサラリーマンにとってはズシリと重く響くことでしょう。

著者別読書感想(楡周平)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

沈黙の画布 (新潮文庫) 篠田 節子

2007年から2008年にかけて日経新聞夕刊で連載されていた小説で、2009年に「薄暮」として単行本、その後改題されて2012年に文庫化されています。

著者は大学を卒業後、八王子市役所に10数年間勤めていたという作家としては地味で変わり種の方ですが、デビュー後は新人賞など順調に賞を重ね、1997年には「女たちのジハード」で直木賞を得ていますので、元々文才のある優れた方なのでしょう。

主人公は大手の出版社で元々美術雑誌を担当していた中年男性で、廃刊になったために別の編集部へ異動しますが、美術への関心は薄れず、かつて新潟で創作をしていたという無名作家の作品集を手掛けることになります。

絵画の世界は素人には理解できない複雑怪奇な世界で、子弟制度や日展審査の腐敗、売買に関わる闇の世界、著作権など様々な利権や慣習がはびこっています。

そうした中で、絵画で食っていける人の数は、おそらく芸能や音楽で食っていける人よりもずっと少ないはずで、バブルの時でもなければ、大きなスポンサーがついていたり、実家がとても裕福であるとか、特殊な才能以外に恵まれた環境でなければなりません。

そういうことから今後日本で藤田嗣治や横山大観、東山魁夷、平山郁夫と言った世界で認められる大画家はもう出てこないのかも知れません。

この作風からすると、旅とうんちく話しがやたらと多い宮本輝氏の作品を読んでいるような感覚を受けます。

著者の作品は「絹の変容」「弥勒」など4冊ほど読んでいますが、これは日経新聞の連載と言うこともあって、主要読者の男性中高年者向けに少し地味な味付けにしているのかなという感じを受けます。

著者別読書感想(篠田節子)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫) リリー・フランキー

2006年の著書ですが、本屋大賞にも選ばれ、ドラマや映画にもなり、大ヒットしたことはよく覚えています。

天の邪鬼ですが、そうした読む前にあまりにも有名になった本はその時には読みたくないのです。

しばらく経って忘れられてきたことにこそっと読むようにしています。

読み進めると、先日読んだ島田洋七著「佐賀のがばいばあちゃん 」と雰囲気が似ているなぁって思わなくもありません。

有名人の貧乏な子供時代と、破天荒な祖母や母親、父親などを面白おかしく描くことで、小説としての人情噺の出来上がりってヤツです。

著者は1963年生まれということは私よりも6年あとで、子供の頃の描写では、流行や子供の遊びなど、かなり違っているはずなのに、結構似ていたりして驚きです。

調べてみてわかったのは、子供の遊びが大きく変化したのは1983年に発売されたファミコンが出てきて以降からなんですね。

1983年以降に小学生だったという人は、1971年以降の生まれで、現在なら40歳前後の人達にあたります。それまでの小学生の遊びは似たり寄ったりで1970年前後生まれかどうかで分かれるようです。

さて内容は炭坑の街、筑豊での祖母との生活や小倉での母との生活、出ていって滅多に帰ってこない父親との話しなど、子供時代の話しが半分。後の半分は、大分の高校を卒業し、東京へ出て美大に入ってから癌と闘病する母親を東京に呼び、苦心しながらも生活の基盤を作っていく姿などが描かれています。

タイトルにもなっている東京タワーは後半にならないと出てこず、このタイトルはどうなのよ、と思わなくもないですが、主人公のひとりでもある母親が、病棟からジッと眺める東京タワーを象徴的に使いたかったのだろうなぁと。

今では高校と大学で学んできたデザインやイラスト以外にも、音楽家や俳優などでも活躍し、そのいずれもが高い評価を受けているマルチタレントの著者ですが、30歳ぐらいまでの長い極貧生活とちゃらんぽらんな性格は、それでもちゃんと生きていけて、しかもチャンスをものにして才能が開花するんだと元気をもらうことができます。

どこまでが真実で、どこからが創作かは本人しかわかりませんが、小説として出した以上、それなりに脚色はしてあるはずで、そのまますべてを信じることはできないものの、まったくすべてを創作された小説にはない生々しさや、主人公の身勝手さや葛藤などが前面に出ていて、読む人を圧倒します。なるほど多くの人に支持されるいい作品だと思います。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ

著者は1954年生まれ長崎県出身の日系イギリス人作家で、5歳の時に父親の仕事の関係で渡英し、そのまま英国に帰化した方で、三作目の「日の名残り」(1989年)は英国で最高の文学賞ブッカー賞を受賞しています。

この作品は著者の6番目の長編小説で2005年に発表、2006年に日本語訳版が発刊されています。また2010年には映画化され、日本でも2011年に公開されています。

小説の前半は英国独特の全寮制学校と思えるようなところで、学んでいる生徒達の日々の生活が綴られています。

思春期の少年少女達の日々の生活ですから、面白いと言えば面白く、淡々として平易と言えば平易な文章が続きます。

しかし、中盤あたりまでくると、どうもこの少年少女達は、世間から隔離された、親のいない特別な少年少女だということが段々とわかってきます。

詳しくはネタバレになるので書けませんが、決してSFやホラー、ミステリーとも違う、なんというかテーマは重いのですが、純文学に近いものと言っていいでしょう。

主人公はキャシーという女性で、病人の介護をしている現在から、一気に過去の全寮制の生活へと飛びます。

そこでは教師とのふれあい、同級生や先輩との友情や恋愛など、繊細で壊れそうなどこにでもいる心が不安定な少年少女達で、前半だけを読むと青春ドラマかと思ってしまいそうです。

タイトルの「わたしをは離さないで(Never Let Me Go)」は、主人公がまだ少女の頃に寄宿舎で手に入れたカセットテープに入っていたお気に入りの曲のことで、それをひとりで聞いて無邪気に踊っている姿を、ジッと見つめていた教師が、なぜか涙を流しているのを見てしまいます。

本来なら深夜に音楽を聴いていて怒られると思っていたのに、涙を流していたということが、強く印象に残り、やがてはそのカセットは盗まれてなくなってしまいますが、大人になってから、中古品の店で見つけます。

その教師もやがては学校からいなくなり、そして主人公達がなぜ集められて生かされているのか、誰のために生きているのか、自分達は誰の子供なのかなど、やがて明らかになっていきます。

著者別読書感想(カズオ・イシグロ)


【関連リンク】
 11月前半の読書 何ものも恐れるな〈上〉(中)(下) 、木暮荘物語、ファイアボール・ブルース、梅干しはデパ地下よりBARで売れ!?
 10月後半の読書 シッダールタ、おひとりさまの老後、正義を振りかざす君へ、宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作、肩ごしの恋人
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老朽化してきたマンションの様々な問題が指摘されています。

マンションは70年代の高度成長期から建ち始め、バブル期を経て、リーマンショック前の平成19年までに数多くが建設され、中長期で見ればほぼ一貫して右上がりで順調に建設され販売されてきました。


出典:国土交通省平成25年度住宅関連データ マンションの供給戸数(竣工ベース)

ちょっと小さくて見えにくいかも知れませんが、マンション戸数は2013年(平成24年)末現在で、累計590万戸、多い年で年20万戸、ここ3年は低調で年9~10万戸のペースで増えています。

そしてマンションの寿命はというと、鉄筋または鉄骨コンクリート造りで建物自体は平均的に50年程度と言われていますが、水回りや外壁、設備など大規模な修繕が必要になるのが20~30年と言われています。

もちろん大事に使えば建物自体は100年以上持つことも証明されていますが、日本のように雨が多くて湿度が高く、それに地震が多い場合、その後の技術の進歩などもあり、欧米の基準はそのまま当てはまりません。

そして上記の寿命50年、大規模改修30年というのには、但書きがあり、普段から小規模な改修や補修をこまめにおこない、水漏れやコンクリートのひび割れ等が見つかれば、早めに補修し対策をしているような場合で、もし管理状態が悪い場合や、バブル時によくあったとされる手抜き工事で建築されていたりすれば、当然寿命も短くなります。

バブル時には人手不足や建設を急ぐため、鉄筋を減らす手抜き作業をおこなったり、本来コンクリに川砂を混ぜるところを安価で手に入れやすい塩分を含む海砂を使い、中の鉄筋がボロボロになっている欠陥などもよく指摘され、全国ではそういうマンションが相当数あるのではないでしょうか。

建築後30年を迎える、バブル直前の1983年以前に建てられたマンションは全国で129万戸あり、その中には新耐震基準以前に建てられた1980年以前のマンションが106万戸が含まれています。

この30年以上前に建てられたマンションは、耐震基準の問題や、間取り、設備の関係からすでに大規模な修繕等を行われているケースが多く見られます。

修繕が行われず、人が住まなくなったマンションでは、スラム化した廃墟となっているところもあります。

では今後の十年間で新たに建設後30年を迎えるマンション数(バブル時期の1984~1993年に建設されたマンション)はと言うと、30年前以前に建てられたマンション総数よりも多い135万戸にのぼります。

1年で20万戸近くを販売してきた2000年代と比べると10年で135万戸増とやや少なく感じますが、ちょうどこの頃からマンションの供給が急増していった時期です。

このマンションブームが起きたのは、現在66歳前後の団塊世代が30代後半で、結婚後に子供ができ、そろそろマイホームでも買おうかと、競ってお洒落な新築マンションを購入した時期と一致します。

今から考えると不動産会社は夢のようですが、新築マンションは作ればすぐに売り切れ、買いたくても抽選で当たらないとなかなか買えなかった時代です。つまりこの築30年以上のマンションの所有者の多くは、転売していなければ団塊世代の人達ということです。

管理組合がしっかりしていて、修繕積立金も十分に貯まっている一部のマンションは問題ないのですが、そういうマンションは少なそうです。

私が30代で初めて購入した6年落ちの中古マンションが、新築だった頃がその時期の建築にあたると思われますが、その時買ったマンションは修繕積立金がえらく高く、部屋数50数戸の中規模マンションでしたが、それを支払わない所有者が約1割もいて、順番に回ってくる管理組合役員の仕事をしていた時には積立金の滞納者に苦慮しました。

そのマンションは交通が不便だったせいか、敷地に広い駐車場があり、そこの駐車場収入と修繕積立金で、ある程度将来の補修費に回せるかなと思いましたが、当時は何十年も先のことより、マンション購入の際に少しでも住人の負担を少なく見せようと、管理費や修繕積立金を格安に設定していた新築マンションも多くみられ、そういうところは、どこか補修をするたびに追加で多額の臨時費用を集めなくてはならないでしょう。これは半端なく難しいことです。

実際に住んでみてわかったのですが、分譲マンションであっても、数年経つとその中の1~2割程度の人は他人に貸していて所有者が住んでいないケースと、あと収入が年金だけの高齢者だけで住んでいるケースがあります。

そうした所有者から一時的に発生する1戸あたり数十万~数百万円の修繕費、補修費を支払いたくない、貯金がなく年金生活なのでそんなに一度に支払えないという声が必ず出てきます。

またエレベーターの故障で大修理が発生したときは、元の保守費用や修繕積立金の範囲であれば問題ないものの、追加で徴収となれば共有部分とはいえ1階や2階の住人は「使っていない」と支払いを当然のごとく拒みます。それがマンション管理の難しいところです。

スキーや保養地で有名な越後湯沢に、バブル時代に建てられた温泉付き豪華リゾートマンションが数十万円で売りに出ていたりしますが、その理由は前の所有者が滞納した管理費や温泉利用経費、修繕積立金と利息など合計千数百万円を、前のオーナーに代わって一括で支払う条件がついていたりするものです。

マンションってメリットも多いのですが、そうした月々の費用が決してバカにならないものなのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、マンションの管理状態が悪いとどうなるのか?

・補修のため予想以上にコストがかかり修繕積立金が底をつく
・臨時の修繕積立金を集めるにも所有者が不在で集金できない、意図的に払わない
・管理組合の内部でも「補修する・しない」で対立が起きる
・所有者が出ていき、代わりに無責任な賃借人や不審な会社が入居する
・コミュニティが壊れ、当番制の管理組合の機能が維持できなくなる
・共有部にゴミが散らばり、空室が増え、スラム化していく
・建物の老朽化が一気に進み、壁がはがれ落ちたり下水道が詰まったりする
・不審な人物がマンションに終始出入りするようになる
・不審火やボヤ騒ぎ、住民同士の喧嘩などが起きる
・資産価値が激減する

これらがさらに負のスパイラルに陥ると、どんどんひどくなっていく可能性があるということです。

特に住人が60代以上の高齢者ばかりになると、年金生活者ばかりになり、独居老人や寝たきりの病人、認知症を患っている人も増えていきます。ここで運営が難しくなってくるのがマンション管理組合です。

高齢者は時間と経験はあるのでそういう面はいいのですが、反対意見の住人を時間をかけて粘り強く説得していくような忍耐力や、周囲の意見に合わせる協調性、それにチャレンジ意欲や体力には劣ります。そうした短気でわがままで身勝手で、かつ健康に不安がある住人ばかりになったとき、果たしてそのマンションの管理組合は正常な機能が維持できるでしょうか。

資産価値の高い、都市部に建つマンションならば、そういう心配はない?

とんでもない!

都市部のマンションこそ、所有者同士のつながりが希薄で、隣の人がなにをやっている人かもわからないなんていうのは当たり前、所有者が人に貸した部屋は、知らない間に不法在留外国人のたまり場となったり、暴力団風や風俗関係者など怪しげな人達の根城として使われたりして、住人でも怖くて近づけない、住人同士目を合わせられないということも起きているそうです。

資産価値が高い間に売ってしまった人はまだラッキーですが、住み慣れた場所を離れるというのが高齢者にとってはなによりも厳しいものなのです。

またウォーターフロントのお洒落な高層マンションも、これからオリンピックで賑わい、いましばらくはいいのですが、人口減少が顕著になってくる十数年先を考えたときは、意外と各地へのアクセスが不便で、周辺に店舗が少なく、生活感のない地域だけに、簡単にスラム化しやすい地域だと言われています。

50年前に若いカップルがあこがれた高島平団地や多摩ニュータウン、千里ニュータウンの今の姿や今後の状況をみればそれもうなずけるでしょう。

50年前はそれぞれ歩いていける範囲にスーパーや市場があったのが今はみな撤退して買い物に行くのも大変になってきています。

その点、古くからある下町や山の手界隈は、店の入れ替わりや世代交代はあっても、地域住民同士のつながりは強固に残っていて、親から子へと古くからの住人がずっと住み続け、地域のコミュニティが残り、地価もそう大きく変動しません。

述べてきたように、老朽化してきたマンションの問題は、ほぼ全部の住人から尊敬される行動的で誠実な強いリーダーがいない限り、修繕ひとつを行うにしても、ましてや大規模修繕や建て替えをおこなうような時には住民同士それぞれの価値観や余裕資金の差で、大いに揉めることが容易に想像できます。そしてそういうリーダーがいたとしても、今後何十年も元気で活動できるかわかりません。

マンション内で住人同士が揉め出すと、お金のある人は、それに嫌気がさして、とっとと別の場所へ引っ越しをしていき、引っ越しをするだけの余裕のない高齢者だけが、空き部屋や増え、雨漏りや落書きが残る、ゴミが散らかったままのスラム化したマンションに残されるという、ちょっと想像するにおぞましい光景が浮かんできます。

老朽化したマンションを若者が住みたくなるように、うまくリノベーションして、元の住人と新しい住人とがうまく共生していくといういい例もチラホラ出ているようですが(多くは不動産デベロッパーの宣伝ですが)、終の棲家としてせっかく買ったマンションなのですから、住み続けられなくなる前に、早めの老朽化対応が必要です。

例えばですが、家族用の3LDKの部屋を長く空き部屋にしている所有者から、管理組合が安く買取るか長期賃貸契約し、それを3人用のシェアハウスとしてお洒落にリノベーションして、若い人に貸すとかできるでしょう。家賃月15万円支払える若い人はいなくても、月5万円ならすぐに見つけられそうです。

シェアハウスの住人になった(貧乏な)若い人には、土・日曜日の半日、高齢者の買い物の送迎や荷物運びをアルバイトとして管理組合から依頼することもできますし、逆に若い人達の夕食を、元の住人の高齢者が作ってあげる高齢者のパートも考えられます。

若者が入ってくると静かな環境が壊されると嫌がる高齢者(必ず新しいことに反対する人はいます)をどうやって説得するか、所有者から購入や賃貸する資金をどうやって調達し返済していくかなど、やはり強いリーダーシップをもった人が必要ですね。


【関連リンク】
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用
753 ユニットバスへのリフォーム道険し
728 対外資産残高22年間世界一ということ



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873
父親が亡くなって11年が経ちました。鏡に映る自分の顔が、まだ記憶に残る父親の顔とよく似ていることに気がついて愕然としたり、自分でも年を取ったなと感じる日々です。

父親は大正8年(1919年)生まれだったので、私とは38年の差があります。つまり38歳の時の子供だったわけです。

小学校の頃までは同じ家で暮らしていましたが、私が中学生に上がった頃には、仕事の関係で東京へ単身赴任してしまい、その後はお正月を除き、あまり一緒の生活をした記憶がありません。

父親が64歳で仕事を引退した後に(1983年頃)、実家に戻ってきましたが、その時はすでに私は就職をして東京で寮生活をおくっていましたので、すれ違いで一緒に暮らした期間はほとんどありません。

その父親が40代後半に胃潰瘍で1週間ほど入院していたことがあり、まだ私は小学校の低学年の頃ですが、母親に連れられて何度か病院へお見舞いに行ったことを覚えています。私も50歳の時にやはり胃潰瘍で1週間の入院をし、さすがに遺伝子を譲り受けた親子だとその時思い知りました。

その父親は82歳で天寿を全うしましたが、直接の原因は腎不全でした。亡くなる何年も前から腎臓を悪くし、毎週2回の人工透析をおこなっていました。

その頃には関西出張の時や、夏休みにはお見舞いを兼ねて実家に帰りましたので、子供の時を除くと一番父親と一緒に過ごすことができた時期かも知れません。

父親は腎臓病で長く療養していましたが、そうすると私も腎臓を悪くする遺伝子を持っている可能性がありそうです。現在は人間ドックの検査では特に腎臓に異常は見つかっていませんが、父親が60歳を過ぎてから悪化したように、いつ体内のDNAに埋め込まれた時限爆弾が炸裂するかわかりません。

その腎臓ですが、心臓や肺、胃などと比べてあまり馴染みがなく、私も最近になるまで特に関心がありませんでした。

腎臓の役割は、

 (1)老廃物を体外に排出
 (2)血圧を調節する
 (3)血液を作る一部の役目
 (4)体液量、イオンバランスの調整
 (5)強い骨を作る

とされています。

一般的には、人工透析のことから(1)の血液の中から老廃物を漉して綺麗にしているだけと思われがちですが、それら以外にも結構多くの重要な役目を担っています。

腎臓が不調になると起きやすい代表的な症状は、物忘れ、冷え、アレルギー、低血圧、貧血、ストレス、手足のむくみ、頻尿、夜尿症、倦怠や疲労感、湿疹、メニエール症候群(耳鳴り、めまい、難聴)、骨の異常などがあります。

その中で私が特にこの腎臓疾患の中で関心を持ったのが、年のせいだと言ってしまえばその通りですが、頻尿や骨の異常のほか、耳鳴り、めまい、難聴などを引き起こすメニエール症候群です。

特に耳鳴りはもう40代ぐらいの時からずっとで、常時耳の中でキーンとかジーとか鳴り続けています。立ちくらみもよく起きます。

また夜にスイカやミカンなど水分の多い果物を多めに摂った時など、夜中に何度もトイレに起きたり、昼間でも利尿効果のあるコーヒーを飲むと1時間おきにトイレに行きたくなったりすることがあります。

また若いときには冷え性とはまったく無縁でしたが、最近は手足がよく冷えてしまい、自分でも冷え性になったなと思いますし、仕事でストレスは溜まりまくり、手足にむくみはないですが、骨の異常で股関節臼蓋形成不全に陥ったりしています。

もしかするとこれらの症状から、被害妄想かもしれませんが、父親の遺伝子がそろそろと動き出し、腎臓の機能が弱ってきている証拠ではないかと勝手に想像しています。

そこで、筋肉と違って内臓を鍛えるということはできませんので、せめて腎臓の働きをよくする食べ物はなにかと思って調べたところ、腎臓が正常な人と、腎不全や腎炎を起こしている人とでは逆になることもあるそうで難しいものです。

例えば、ナトリウムの排出を促すカリウムが多い食品(白菜とかスイカ)は腎臓が健康な人にはよい働きをしますが、逆に腎臓病に罹っている人には制限すべき食品ということになります。

腎臓をを悪くしていた頃の父親がそうでしたが、食べ物の中でも味の濃いものや塩分の多いもの(中華料理、塩焼き、梅干し、ハム、ソーセージ、味噌、ソース、醤油など)は減塩以外のものしかダメでしたが、逆に腎臓が正常の場合は、梅干しなどは腎臓をよくする働きがあったりします。ただし塩分の取りすぎはいずれにしても成人病の原因となり、正常であってもやはり控えるべきということです。

高齢になってから、和食には欠かせない塩や味噌、醤油を制限されたのでは、食事の楽しみが半分以上失われてしまいそうですので、腎臓はなんとか最後まで大事に使いたいものです。

今のところまだ腎臓は健康ですので、ダイコン、カボチャ、きのこ、あずき、そら豆、梅干し、白菜、スイカ、山芋、柿などを意識して食べて腎臓強化に努めたいと思っています。

また腎臓の働きをよくする漢方薬もたくさんありますので、それも今度試してみようかと画策しているところです。

こうして高齢化社会においては健康食品がやたらともてはやされるのでしょうね。中高年者以上がメインの読者とされる新聞広告で、健康食品の広告が載らない日はないですから。


【腎臓関連書籍】

体の不調は腎臓でよくする!  北濱 みどり
腎臓のはなし - 130グラムの臓器の大きな役割 坂井 建雄
高血圧の9割は「脚」で下がる!  石原 結實
42才からの腎臓病―腎機能に問題があると言われたら(42才からの未病対策)  川村 哲也


【関連リンク】
833 もうひとつの人生があれば
759 糖質ダイエットについての備忘録その1
738 日本人の年齢別死因は
737 日本人が罹りやすい病気


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872
NHKなどで高齢者の貧困問題が取り上げられ、それに対する支援の必要性をマスコミが訴えかけると、一部の人からは「お金持ちのほとんどは高齢者なんだから、これ以上高齢者を優遇する政策なんて必要ないじゃん!」「支援するにも財源はどこよ?」ってもっともらしく言う人がいます。

その根拠として、よく使われるのが下記の総務省統計局の家計調査などです。

総務省統計局家計調査
貯蓄・負債編 二人以上の世帯 世帯主の年齢階級別(2013年度)


これを見る限り、60~70歳と70歳以上の高齢者の貯蓄金額が突出していて、全体の割合でも60歳以上の世帯主がいる二人以上の世帯の貯蓄額は全体の半数を超えています。

ま、ちょうど高齢者の仲間入りをした団塊世代は、長年働いてきたことによる退職金や貯蓄で資産形成ができていること、年代的にも親からの遺産相続を終えて、人生でもっとも多くの資産を保有していると言っても間違いないでしょう。だからと言って現在の高齢者の大半が資産家というわけではありません。

つまり「世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の分布」を見てみると、2000万円以上の世帯資産を持つ裕福な高齢者世帯が43%あるのに対し、300万円未満の資産しかない二人以上の高齢者世帯も11%以上あります。

さらに「二人以上の高齢者世帯」ではなく、個人(単身世帯含む)で見た場合、60歳以上の高齢者では「2000万円以上」の貯蓄があると答えた人は15.3%、「1000万円以上」で26.1%に対し、「貯蓄なし」が9.9%、「貯蓄なし」を含め「300万円未満」が30.4%にのぼります。

つまり60歳以上高齢者全体でみると約3割が貯蓄は300万円未満という、いわば貧困状態なのです。(出典:内閣府平成23年度高齢者の経済生活に関する意識調査結果)



300万円近くも貯蓄があればいいじゃないと思うのは現役で働いている人だけで、健康の問題等で働けない人や、働きたくてもそうそう仕事が見つからない高齢者の場合、今後得られる収入は年金しかなく、300万円未満の貯金というのは、大きな病気や怪我でもして入院したり、また家の修繕など、ちょっとしたことですぐになくなってしまいかねない実に心許ないものです。

総務省統計局データと内閣府意識調査のデータで結構貯蓄額に差があり「?」と思うところもありますが、これらの調査データというのは、全国民対象の国勢調査以外では何千万人の各世代からせいぜい千人程度のアンケートや調査表のサンプルをとって得られたもので、必ずしも実態を現しているものではありません。

例えば、資産がほとんどない人と、数千万円の資産がある人に「保有資産のアンケート」が送られた場合、どちらのほうが回収率が高いかと言えば、調査と税務署と関係がなく秘密が保持されるのが前提であれば、資産がある人からのほうが回収率が高いのは明かです。

そういう偏りの積み重ねと、極めて少数のサンプル数での統計データですから、内容に大きく食い違いがあっても不思議ではありません。

それはともかく、高齢者、65歳以上と仮定すればおよそ3200万人ですが、貯蓄額が300万円に満たない30%の人数と言えば960万人です。

前述の通り、「恵まれた高齢者にこれ以上手厚くする必要などない!」という人もいますが、二人以上いる世帯の平均貯蓄額平均(1101万円)に遠く及ばない、高齢者の30%、960万人を、国は将来のある若者のために見捨ててしまって構わないというつもりでしょうか。

それともそういう高齢者は家族や親戚が手厚くサポートをするべきだと言うのでしょうか?

この家族(息子や娘)が自分の親など高齢者の生活の面倒を見なくちゃいけないという流れは一見正しそうですが、それが結果的に貧困の連鎖を続けることになります。

つまり、貧しい親を子供が介護や金銭的な支援をしなければならないと、その子供は高等教育を受けたくても、親の介護の世話や医療費を稼ぐために受けられず、そして学歴がなく働ける時間に制限があるため非正規労働しか選べず、いつまでも貧困から脱出できない人を作るということです。

高齢者向けの支援を反対する人って、高齢者向けの費用を削って、あるいは高齢者も負担する消費税をもっと取って、その中から若者向け、少子化対策にもっとお金を使えと言います。

では、現在、若者の支援や、少子化対策に国のお金(税金)は使われていないのでしょうか?

内閣府 行政刷新会議事務局の発表しているデータでは、(主として若者の)就労支援(120億円)、求職者支援(628億円)、非正規から正規社員化支援(194億円)、雇用創出(350億円)、待機児童ゼロ施策(200億円)、35人以下学級の促進(教職員の増員)、高校授業料の無料化、新たな子供手当、学校施設整備などにも使える地域自主戦略交付金(1兆円)などがあります。

被災地支援の復興予算19兆円に比べるとごくわずかですが、それは高齢者向け支援も同じ事で、高齢者が受けられる支援というものは特に目新しいものはなく、逆に高齢者医療費の負担増など負担を増やす方向にあります。

だからNHKなども「高齢者の貧困問題をなんとかしないと」と問題提起しているわけです。

ちなみに国が決めている高齢者向けとされている介護支援(33億円)、地域医療支援(19億円)というのがありますが、介護支援策=介護事業者や介護者への支援、地域医療支援は都市部に集中する高度医療から在宅医療や中小の地域病院の活用ということで、決して貧困層の高齢者のための支援ではありません。

それらを並べて比べてみると、高齢者からは、「若者や現役世代への優遇策ばかりで、もっと切実な貧困にあえぐ高齢者福祉に力を入れてくれよ」という声が出ても不思議ではないのです。

なぜそういう「高齢者支援ばかり優遇されている」と思われるのでしょうか?

もちろん日和見主義の一部マスコミの世論誘導もありますが、ひとつは年金の将来像が見えないので、今の高齢者がもらっている年金を若い人がうらやむ気持ちから。

次に高度成長と終身雇用を生き延びてきた高齢者が得た退職金が、終身雇用と年功序列賃金の崩壊で今後は消えつつあることに対する不安。

3つめに旧厚生省・医学界・医薬業界などにつきまとう規制と既得権益による医療費高騰のツケが回ってきて、税金で負担する医療費支出が膨大になりすぎてしまったこと(それを高齢者に責任転嫁している)。

そして最後に政治に関心の高い団塊世代以上の国民の声が、政治や社会の声に反映しやすいことなどが考えられます。声が大きいと、それだけ目立ちますので、なにか高齢者ばかり優遇されているという錯覚を覚えます。

そんなわけで、高齢者向けの社会福祉コストがかかりすぎ!って言うのなら、若い人達や現役世代への支援コストと比較してものを言えよってことで、単に老い先短いいうだけで、困っている高齢者を切り捨ててしまうような社会保障なんて許せるか!っていうのが私の結論です。


【関連リンク】
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
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何ものも恐れるな〈上〉(中)(下) ディーン・R. クーンツ

数多くのヒット作を生み出してきた人気作家ですが、なぜか1999年に単行本で発刊され、その後文庫化はされていません。発刊したのが「超訳」で有名?なアカデミー出版という英語教材などが中心の小さな会社?だからでしょうか。またAmazonで探しても上中下巻の上巻だけしか売られていません。そんなの買わないってば。

内容はクーンツお得意のバイオホラー、医療ホラーもので、古くは「ウォッチャーズ」「心の昏き川」などに代表されるものと大差ありませんが、毎度ドキドキさせられ、時間を忘れて3巻はあっという間に読み終えてしまいます。

遺伝子工学により生まれたなぞの動物や生物と人間の闘いって書いちゃうと、荒唐無稽なものになってしまいますが、ま、それはあえて否定しません。クーンツファンならそれも承知の上で読んでいるわけですから。

主人公は色素性乾皮症(XP)と言われる遺伝性の難病患者で、日光はもちろん、電球などの明るい光りをも皮膚や目に当たると組織が壊れ、癌が発生してしまう病気の持ち主です。

したがって、外へ出る時は日光があたらない夜中で、しかも街灯やクルマのライトにあたらないよう夏でも肌を出せず、紫外線を通さないゴーグルや手袋が必須、顔にはクリームを塗ります。部屋の中でもロウソク程度の灯りにしなくてはならず、そうした大きなハンデキャップを背負った主人公が、愛犬のレトリバーと、両親の死の謎について調べていきます。

タイトルは主人公が死に直面した父親から「何ものも恐れるな。怖いものなどなにもない」と言い聞かされ、降りかかる数々の災難にも負けず、勇気と知恵を出して巨悪と正面切って対決するところから付けられているように思われます。

なお米国ではこの小説の続編として「Seize the Night (Moonlight Bay Trilogy) 」が出ているようですが、翻訳版はまだ出てません。

著者別読書感想(ディーン・R・クーンツ)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

木暮荘物語 (祥伝社文庫) 三浦しをん

2014年10月に文庫版が発刊(単行本は2010年発刊)されたばかりの連作短編小説です。小田急線世田谷代田駅から徒歩で数分にある(架空の)オンボロアパート木暮荘を舞台として、そこの大家さんや住人、通りすがりの人に起きる様々な風景が描かれています。

著者の書いた小説で最初に読んだのが「風が強く吹いている」でしたが、こちらも大学の陸上部の住人が住む世田谷のおんぼろ下宿が舞台で、共通性を感じるというか著者自身この街に強い愛着があるのでしょう。

短編のそれぞれタイトルは、「シンプリーヘブン」「心身」「柱の実り」「黒い飲み物」「穴」「ピース」「嘘の味」で、シンプリーヘブンはアパートの住人の若い女性がフラリと外国に旅に出掛けて3年ぶりに戻ってきた元彼と、現在付き合っている今彼との奇妙な三角関係で悩むストーリーなど、おかしくもあり、奇妙な人間関係が展開されます。

しかし、主人公が男性の場合でも、やっぱり女性視点だなぁって強く感じます。女性の登場人物はステレオタイプと言っちゃなんですが、いずれも気だてもよく可愛く性はおおらかで、男性は風俗嬢を部屋に呼ぼうとする老人でも、天井の穴から女子大生の生活を覗く独身男でも、それなりに周囲の女性からは拒絶反応がなく、嫌われず、ありえねぇって感じ。

どうもこうした甘ったるくて都合のいい人間関係が主役の小説が最近多くて、中年域を完全に超えて、まもなく高齢域に入らんとする私には、ちょっとキツイかなぁって感じです。

著者の作品では前述の「風が強く吹いている」や「神去なあなあ日常」、「舟を編む」など、ひとつのことに打ち込む男性を主人公にした小説はたいへん面白く書かれていると思うのですが、なぜか女性を主人公にすると、変にわざとらしく作ってしまうのか、ベタになってしまっている感じがして、そうも好きになれません。これから読む前にそこのところ選ばなくては。

著者別読書感想(三浦しをん)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ファイアボール・ブルース (文春文庫) 桐野 夏生

この小説の初出は1995年の「ファイアボール・ブルース―逃亡」で、1998年に改題されてこの文庫版が発刊されています。そして2002年には続編の「ファイアボール・ブルース」が出ています。

主人公はマイナーな女子プロセス団体に所属するレスラーで、まだ勝ち星はなし、マチュアレスリングで優勝経験のあるレスラーの付き人もしています。

プロレスの場合、基本は筋書きのあるスポーツではあるものの、そういうところは一切触れられず、一途に強い者が勝つ式の純情路線まっしぐらで描かれています。

本場アメリカからやってきたという触れ込みの女子レスラーとの対戦で、ほとんど試合をしないまま会場から逃げ出したレスラーを不審に思った対戦者と主人公、それにマイナーなプロレス専門誌の編集者兼記者が、東京の川に浮かんだ謎の外国人女性との関係に迫っていきます。

ま、プロレスは小さな子供の時に父親が見ているときに一緒に見ていたぐらいで、たいして興味はなく、女子プロレスに至ってはテレビ放送もほとんどないし、一時期は歌手としてデビューしたレスラーもいたようですが、まったく興味も関心もなく、当然ながらなにも知りません。

そう言えば数年前には不知火京介著の「マッチメイク」を読みました。こちらは男性のプロレスラーが主人公で、どちらもその普段の生活や興業の模様がよく描かれています。それにどちらも殺人事件が身近に起きてと、純粋なプロレス青春群像ってやつでないのは残念です。

非日常でないのはプロレスだけで十分なので、加えて非日常的な殺人事件など絡ませなくても十分に面白そうなストーリーができそうに思えるのですが、そのように願う読者は贅沢でアマちゃんなのでしょうか。

著者別読書感想(桐野夏生)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

梅干しはデパ地下よりBARで売れ!? 小寺正典

著者は松下電器産業(現Panasonic)出身のビジネスコンサルタントで、前著「役割を全うする生き方があなたを成功に導く―やり遂げる力・関わる力」に続く2冊目のビジネス書とのことです。

今回は前著とは違って、わかりやすいマーケティングの入門書という位置付けで、まるで漫画かライトノベルを読むような感覚で、気楽に読み進められます。

最近はこうしたドラマ風のストーリー性をもたせたビジネス書も多く、特に若い人にも取っつきやすくていい傾向です。私もビジネス書を読むときは、なにか正座でもして姿勢を正して読まないといけないかと思いますが(思うだけでしませんが)、こうした小説風のものなら寝ころんで読んでも違和感はありません。

主人公は和歌山の老舗梅干し製造会社の若社長。同業者や海外製品などに苦戦を強いられている中で、幼なじみの同級生でずっと東京に行っていた女性が親の介護のために和歌山へ帰ってきて、この梅干し会社に入社したことで、マーケティング手法を活用し大きな改革が進められていきます。

この女性こそ、東京の大手食品会社でプロダクトマネージャーをやってきたマーケティングのプロで、今まで老舗という立場に甘えてきた企業や古参の社員にカツを入れていきます。

梅干しというと我が家でもそうですが、私は大好きですが、子供や若い人にはあまり人気がなく、高齢者が中心の消費者となっています。つまり先細りの衰退産業と言えるかもしれません。

しかし伝統的な梅干しは見方を変えれば世界にも誇れる健康食品でもあり、酸っぱく塩辛いというイメージから脱することができれば新たな需要も生まれ、というところから大きな夢と無限の可能性が広がっていきます。

今後このマーケティングのプロを主人公にした続編が出ると面白いかもしれません。次はどの業界へ飛び込むのかと考えると楽しみです。

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