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世界の中心で愛を叫んだけもの(ハヤカワ文庫 SF) ハーラン・エリスン

奇才のSF作家と言われている著者の短篇集で原題は「(The Beast that shouted Love at The Heart of The World」とほぼ直訳のタイトルです。

最初このタイトルを見たときは、セカチュー人気にあやかって変な意訳にしたなぁーって勝手に思っていたら違いました、すみません。

著者はこうしたSF小説から、テレビドラマの脚本家として、「宇宙大作戦」や「アンタッチャブル」「ルート66」など多くの作品も手がけている多彩な方です。

この短篇集に収録されているのは下記の15篇です。

・世界の中心で愛を叫んだけもの(The Beast that shouted Love at The Heart of The World)
・101号線の決闘(Along The Scenic Route)
・不死鳥(Phoenix)
・眠れ、安らかに(Asleep: With Still Hands)
・サンタ・クロース対スパイダー(Santa Claus VS. S.P.I.D.E.R.)
・鈍いナイフで(Try A Dull Knife)
・ピトル・ポーウェブ課(The Pitill Pawob Division)
・名前のない土地(The Place with No Name)
・雪よりも白く(White on White)
・星ぼしへの脱出(Run for The Stars)
・聞いていますか?(Are Your listening?)
・満員御礼(S.R.O.)
・殺戮すべき多くの世界(Worlds to Kill)
・ガラスの小鬼が砕けるように(Shattered like A Glass Goblin)
・少年と犬(A Boy and His Dog)

SFですから、ふざけたものから、割とシリアスなものまで様々ですが、あまり真面目なリアリストが読むと混乱するというか嫌になって放り投げたくなるかも知れません。

というのも、1950年代から1960年代にかけて書かれた作品なので、最近書かれた現代のSFというイメージとはかけ離れています。それだけに「50年代にそこまで考えたか?」と読み込むとなかなか深いですが。

それだけに感想を書くのも難しく(よくわからなかったということもある)、おそらく数回読み込まないとちゃんとした感想や書評は難しそうです。

個人的には一番まっとう?な、ラストの「少年と犬」が一番面白かったです。最後はちょっとブラックでしたけど。

60年以上も経っても、異国(日本)で読み継がれている作品だけに、中身は確かそうです。よくわかりませんが。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

溺レる (文春文庫)  川上弘美

1999年に単行本、2002年に文庫化された短篇小説集で、伊藤整文学賞を受賞しています。

短篇は、「さやさや」「溺レる」「亀が鳴く」「可哀相」「七面鳥が」「百年」「神虫」「無明」の8編で、いずれも明快ではない純文学風です。

個人的には、こうした少し風変わりと思える女性から見た恋愛観や性愛などについては理解できない点も多く難解ですが、一般教養?として読み続けています。

著者は私と同年代ですが、書かれたのが23年前ということもあり、40代になり中年域にかかってきた様々な葛藤と複雑な心境(例え著者にはなくとも私にはあった)を言葉にしたものかなぁというのが感想。

この年代というのは、経験もあるし諦めもあって微妙な心理状態な時期です。そうした中での男女の機微を読むと、「そうなんだ」とか「それはないかな」とか様々な思いがよぎります。

★★☆

著者別読書感想(川上弘美)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

生きている理由 (講談社文庫) 松岡圭祐

著者の作品の中では義和団事件の「黄砂の籠城」や、キスカ島撤退作戦の「八月十五日に吹く風」など、実際にあった歴史上の事件や作戦を元に小説仕立てにした作品がとても面白く、次いでこの清朝崩壊後の歴史を下敷きにしたこの小説を読みました。

2017年に文庫で刊行された長編小説で、崩壊した清朝の王家の娘が子供の頃に日本の家庭に養女としてだされ、その後日中両国で様々な話題を提供することになる日本名川島芳子の少女時代の物語です。

川島芳子は、清朝の第10代粛親王善耆の第十四王女で、本名は愛新覺羅顯し(あいしんかくら けんし、最後の「し」は王偏に子)です。後に「男装の麗人」とか、「東洋のマタ・ハリ」とか、呼ばれることになり、最後は当時中国を支配していた中華民国に捕らわれ、売国奴として死刑に処されます。

この小説では、満蒙独立運動の先駆者で粛親王と親しかった日本人の川島浪速に8歳の時に引き取られ、表向きは川島家の養女となりますが、なぜか籍は入れずに清朝の皇族のままで育てられます。

理由は、いずれモンゴル人で満州国の軍人に清朝皇族として嫁がせ、そこで清朝王国を復興させようという目論見からでした。

そうした政略結婚(のち離婚)後の華々しい活躍と悲惨な最期はこの小説では出てこず、少女の頃に日本で様々なことが起きたことをフィクションとして書かれています。

先に挙げた歴史小説と比べると、ちょっと奇想天外、松本聯隊のの下級将校が東京においても付きっきりでガードしたり、日本の街中で相続した黄金の駒を中国人と奪い合いで派手な銃撃戦が展開されるなど、無理なところが目立ってしまい、ちょっと残念に思います。

その後の川島芳子を描いた続編が予定されているそうですが、まだ出てなさそうです。

★★☆

著者別読書感想(松岡圭祐)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ミーナの行進(中公文庫) 小川洋子

2006年に単行本、2009年に文庫化された長編小説で、2006年に谷崎潤一郎賞を受賞しています。

著者の作品では「博士の愛した数式」だけを読んでいます。その小説を読んだ後、寺尾聰や深津絵里らの出演する同名の映画も見ましたが、とても良い心が穏やかな気分になる作品でした。

この作品は最初は母子家庭の主人公の女子中学生が、母親の仕事の関係で、2年間芦屋住まいでお金持ちの叔母夫婦の元に預けられるという設定で、なにか陰湿なイジメにでも遭うような話しなのかな?と身構えましたが、まったく見当外れで、心が洗われるような話しで良かったです。

その主人公が居候させてもらう芦屋の豪邸には、叔母夫婦と、その娘、叔父の母親でドイツ人の老婆の4人の他、住み込み家政婦で実質的に家事全般を仕切っている老婆、通いの庭師でもあり飼育しているコビトカバの世話係の男性が主要な登場人物です。

時代は、著者の年齢にほぼ合わせている感じで、1972年~1973年頃に中学生時代を送っているその時代の頃の話です。

タイトルのミーナとは、主人公の叔母夫婦の娘で小学生の美奈子のことで、喘息もちで身体が弱く、学校以外は滅多に外出しない少女。

そして通学など外出するときには、クルマの排気ガスが苦手なので、コビトカバの背中に乗って移動することが多いという変わった子供です。

どちらかと言えば貧しい家庭の子だった主人公が、いきなり上流社会、しかも家族に外国人がいる家庭で暮らす毎日は刺激的で、しかもその家族の中で大事にされ育てられます。

淡い恋や、ミュンヘンオリンピック(1972年9月)での男子バレーボール日本代表チームの活躍など、様々な出来事が散りばめられていて、退屈しない面白い作品でした。

★★☆

著者別読書感想(小川洋子)

【関連リンク】
 4月前半 蜜蜂と遠雷(上)(下) 、となり町戦争、連続殺人犯、追想五断章
 3月後半 虹色天気雨、老いた家 衰えぬ街、冷たい校舎の時は止まる、ドリーム・ハウス
 3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋

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1631
1960年代の子供の頃、お米を買うときは、米穀販売の許可を受けた米屋さんで買うのが慣わしでした。米屋さんは配達もしていましたが、うちは家から歩いてすぐのところに米屋さんがあったので、いつも買いに行ってました。

その米屋さんへお使いに行ってお米などを買ってくるのも子供達の仕事で、その時に米屋さんだけに置いてあるプラッシーを一緒に買ってもらえるのが楽しみでした。

当時、オレンジジュース(と言ってもオレンジ果汁は入っていないものでしたが)と言えば、小売店や自動販売機で売っていたファンタかバヤリース、チェリオ、ミリンダあたりが定番でした。

そこに、プラッシーという、ちょっと変わったミカンの皮というか正確にはミカンパルプ(ミカンの絞りかす)がビンの中で漂っている不思議なオレンジ飲料として子供心には興味津々でした。

このプラッシーは当時は米屋さんでしか買えず、どうして?と謎でした。

理由は製造をおこなっていた武田食品工業(武田薬品工業の子会社、現ハウスウェルネスフーズ)に、当時は小売店へ卸す流通ルートがなく、ビタミン強化米で既に流通ルートがあった米穀店ルートで販売することになったということです。

また米穀店からお米を配達してもらうときに、24本入りの重いビン入りプラッシーをケースで買ってもらい一緒に配達するという戦略でした。

そのプラッシーも、食糧管理法改正や見直しで、お米を米穀店以外のスーパーなどで買うことが多くなってきた1980年代には苦境に陥り一旦販売休止となります。

しかしあの独特な味わいのプレッシーの再販を求める声があり、1998年からコンビニやスーパーでも買えるよう流通網を整備した上で再販が開始されました。

その時にはオレンジだけでなく、アップルやグレープ、サワーなどバリエーションも増え、地味ながらそこそこの人気を得ていました。

私も、好きで時々買っては子供の頃に好んで飲んでいたことを思い出したものです。

ところが、知らなかったのですが、このプラッシーとそのシリーズ製品(プラッシー1000)は昨年2021年3月で製造中止となっています。

理由は不明ですが、やはり販売量が計画通りにはいかなかったのではないでしょうか。

私のように子供の頃から親しんだ世代がすでに高齢者となり、好んでジュースを買わなくなっています。

では、今はオレンジジュース飲料ではなにがよく売れているかと言えば、「なっちゃん」や「トロピカーナ」、そして古くからある「バヤリース」「POMジュース」などです。

私も毎朝飲むオレンジジュースは、もっぱらトロピカーナの果実100%ジュースです。牛乳と半々で割って飲むと、毎日でも飽きずに美味しく飲めます。

強力な競合製品が多く、消費者の健康志向にうまく乗っかれなかった感じがします。

それにやはり、日本コカコーラやアサヒ飲料、キリンビバレッジなどが大資本をバックに囲い込みで小売りや自販機販売を強化するのに対して、そうした多様な販売手法にまで手が出せなかったのが痛手でしょう。

いずれにしても、飲むと子供の頃を思い出す、感慨深い味のプラッシーが飲めなくなってしまったのはちょっと残念です。

【関連リンク】
1607 代表的なB級ファストフードの価格推移
1426 物知りと語彙力
1269 子供時代によく見たテレビと漫画一覧

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1630
少し前にお笑いタレントの千原ジュニアさんが「人工股関節手術を受けた」という動画をアップされていました。

私は2016年と2017年の2回人工股関節置換手術を受けていますが、千原さんも私と同じ「変形性股関節症だったのかな?」と思っていたら、そうではなく「特発性大腿骨頭壊死症」という厚生労働省指定の特定疾患だそうです。

私も人工股関節置換手術を受けた後には、その後、同様な症状で悩む方向けにと動画ではなくブログで書いておきました。

1033 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)

私の場合、年々ひどくなる足の痛みの原因がわからず、様々な病院をハシゴしても不明で、それが股関節由来だとわかったのが松本人志さんの「股関節唇損傷による痛みから骨切り手術をした」という話題が出た2010年のことで、こうした有名人がそれぞれの病気のことを詳細に公表することで、同じような症状や治療や手術などについて理解が進み、たいへん良いことだと思いました。

千原ジュニアさんの手術はうまくいき、1週間で退院、2週間目には自分でクルマを運転してスタジオ入りし仕事に復帰されています。

私の時も術後の経過は良く、術後8日目に退院、2週間後には満員の通勤電車に乗り(杖をつきながら)会社へ通勤しました。

20年ぐらい前の人工股関節置換手術だと、1ヶ月は入院し、さらに1ヶ月リハビリに努め、仕事復帰は3ヶ月目とか言われていたことからすると隔世の感があります。

私が手術した病院でも私が手術を受けた後に、新たな手術用ロボティックアームが導入されていました。使ってもらえず残念。

1478 人工股関節手術の定期検査

これで執刀医の経験と技術の差はかなり縮まり、手術時間も短くなって身体への負担も少なくなりそうです。

千原ジュニアさんの手術の模様(入院、術後、2週間後)の3本の動画を載せておきます。

舛添要一元都知事の1ヶ月間の大名豪華VIPルームへの入院&人工股関節手術&公用車で湯河原の別荘通いとは違い、同様の病気で悩んでいる一般の人にはたいへん参考になります。

千原ジュニアYouTube

【ご報告】難病の手術で入院する事になりました。


手術が終わりました。ありのまま色々と報告します。


人工股関節手術から2週間後の男の経過報告


【関連リンク】
1367 進化する人工股関節置換手術
1175 人工股関節手術のその後とまとめ
1582 人工股関節置換 右側5年 左側4年定期検査


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1629
クルマの運転は19歳の頃からなので、45年間になります。さらには16歳からバイクにも乗り、プロドライバーの経験はないものの、2年間のアルバイトではライトバンに乗って毎日走り回る仕事は経験しています。

ということで、長い経験から思う「上手な運転」について3つだけ語らせてもらいます。

・車間距離をちゃんととって走る

当たり前のことですが、適切な車間距離をとることは追突などを避けるために安全上もっとも大事なことです。それだけではなく、実は疲労が軽減できて身体に良いばかりでなく、燃費が良くなりお財布にも良いのです。

適切な車間距離をとることで、ブレーキを踏む回数や時間を極力減らせます。

ブレーキを踏むという行為は本来、市街地走行であれば90度以下の急な角を曲がるとか、信号や一旦停止、踏切で完全停止する時ぐらいです。高速道路なら料金所以外でブレーキを踏むことは本来ありません。

それ以外にブレーキを踏むのは単に運転が下手なだけです。つまり前のクルマが速度を少し落としたぐらいでブレーキを踏まなければならないのは車間距離が足りないからです。

ブレーキをかけるとせっかくエネルギーを使って動いているのを止める行為なので、ガソリン車なら余計なガソリンを使ってしまったということです。

エコランレースなどを見ると、燃費を良くするためにカーブでも下り坂でもできるだけブレーキをかけずに走っていますが、それが省エネには最良の運転技術なのです。

最近は右左折するときになかなかウインカーを出さず、先に速度を落としてくる輩が多くいます。そういうクルマの後ろを車間距離をとらずにいると、なぜかわからないまま車間が詰まりブレーキを踏む羽目になります。イラッときますね。ハイ、健康にもお財布にも良くないです。

適切な車間距離をとっていると、前のクルマが様々な理由でスピードを落としても、十分にアクセルのオフだけで減速できる余裕があります。

何度も「適切な車間距離」と書いているのは、「過剰な車間距離」はこれまた問題で、後続車をいらつかせます。

どのくらいが「適切な車間距離」かは、時と場所と状況により違うので、経験と慣れと常識でわかってきます。

・ライトやウインカーは早めを心掛ける

薄暮になってもヘッドライトを点けないクルマをよく見かけます。また交差点を曲がるのにブレーキを踏んで曲がり始めてからウインカーを出す横着者もよく見かけます。

なぜライトやウインカーを早めに出すといいのか?というと、別に道交法に書いてあるからということではなく、交通の流れを円滑にし、事故を減らし、あおりなどの被害を防ぐことからです。

ウインカーを早めに出してくれると、後続車はそれに対してどのようにかわそうか(対応しようか)と考える余裕ができて交通の流れを乱すことなくスムーズな流れを止めずに済みます。

あおりをする沸点の低いバカは、自分、つまり「オレ様に対してふざけたことしやがって!」ということがきっかけとなることがほとんどです。

「早くウインカーを出してくれたら、スムーズに追い抜けたのに!」とか、「真っ暗な中からライトも点けずヌッと出てきて驚かせやがって」「俺の前でトロトロ走り続けやがって」など。

トンネルの中や立体駐車場の暗い中でもライトを点けないクルマが多いのには驚きます。

最近は自光式メーターが多いのでドライバーはライトを点けている気になっているのかも知れませんが、薄暗い中での無灯火は本当に危険です。

新車は自動点灯式が義務化されていますが、まだまだ点けないクルマが目立ちます。

ウインカーやライトを点けなかったり点けるのが遅い人は、自己中心的な性格でそれをする根本的な理由、つまり「自分の存在や行動を周囲に告知する」ということがわかっていないのでしょう。

そのような基本的なこともわからないバカでも免許が取れるのも問題ですが、それを言っても仕方がないので、できるだけ自分を守るために、また交通を円滑にするために、ひいては燃費を良くして無駄なお金を使わないようにするため、ライトやウインカーはお早めに。

・左折するときは早めの合図とできるだけ左側による

内輪差があるので、ホイールベースが長いトラックやトレーラーが角を大回りするのは仕方ありませんが、軽自動車でも左折するときに大回りをするのには閉口します。

道路交通法には左折する場合にはこう書かれています。

道路交通法 第34条(左折又は右折)
車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。

「できる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて」です。サーキットじゃあるまいし大回りしてアウトインアウトを気取っているのは単なるアホです。

私はバイクにも乗りますが、基本的に道路の左端寄りを走るバイクや自転車は、道路の左端が大きくあいているとそこへ突っ込むのが習性です。

しかもウインカーを出さず(遅れて出し)に大回りして左折するクルマがいるとは思いもよらず、横をすり抜けようとして接触事故が起きます。

左端をすり抜けようとするバイクや自転車のほうも悪いと思いますが、道交法には「できる限り左側端に寄り」となっているのに、左側を大きくあけて(しかもウインカーが遅れて)左折するほうも確実に悪いのです。

また左折渋滞という言葉があります。

大きな交差点ならたいてい独立した右折レーンが設置されていますが、左折は直進レーンと一緒になっていることが多く、左折するクルマが横断歩道を渡る歩行者などのため動けず、そのレーンをふさいでしまい、後続の直進したいクルマも動けないことで起きる渋滞のことです。

道路の幅にもよりますが、左折車がギリギリ左端に寄ってくれていれば、後続の直進車はその横を直進することが可能となるケースがかなりあります。

ところが上記に書いたように、大回りしようと完全に走行レーンをふさいだ状態で左折停止してしまうので、直進したい後続車はそのあおりを受けてしまいます。

これら3つのことは、市街地を走行していていつも思うことで、これらは「自分さえ良ければいい」「他人のことはどうでも良い」というような自己本位な運転からきているものと思われます。意識すらしていない方がほとんどだと思いますが。

交通はスムーズに流れてこそ、エネルギー消費が抑えられ、体力や神経を消耗せず、無駄な時間を費やさずに済みます。

お互い様の精神と、他人へのちょっとした気遣いで、交通はもっと円滑になります。そしてそれがその国や地域の文化度、文明度の高さにつながっていくのではと思います。

【関連リンク】
1605 年齢層別交通事故数と運転免許取得者数
1576 可搬式速度違反自動取締装置は手強い
1454 交通事故の過失割合は妥協の産物



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1628
蜜蜂と遠雷(上)(下) (幻冬舎文庫) 恩田陸

2016年に単行本として、2019年に文庫版になった長編小説ですが、2017年の直木賞を受賞した作品です。また同年の本屋大賞も受賞しています。

まだ直木賞受賞者じゃなかったの?というぐらいにベテランで売れっ子作家さんです。私も好きで2006年頃から18作品を読んでいます。好きなのは古い小説ですが「黒と茶の幻想」(2001年)や「夜のピクニック」(2004年)などです。

久しぶりにガッツリ分量のある重量級作品で読む前はちょっと身構えていましたが、読み始めると物語に引き込まれスイスイと読み進めることができました。

内容はまったく知らなかったのですが、国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられるコンテスタント達の熾烈な競争と、過去の経緯などが散りばめられています。

浜松市で開かれている国際ピアノコンクールのことは新人登竜門として有名ですが、3年に1回おこなわれているとか、アジアでは少ない国際コンクールと言うことで中韓のコンテスタントの参加が多いことなど知らないこともいっぱいありました。

最終的な着地は想像ができましたが、個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かったかなと。

つまり順位は明記せず、主人公達の決勝演奏が終わり、しばらくしてからその主要メンバーが海辺かどこかに集まって思い出を語ることで、なんとなく読者にはその順位が想像できるという終わり方を想像していました。

しかし、直木賞に相応しい力作でした。著者にしてみれば、これで賞が取れないのならもう縁がないものと諦められそうです。

しかし各コンテスタントが弾くピアノ演奏の表現力、演目のクラシック音楽の解釈などにいくつものパターンがあり、これには苦心しただろうなぁと想像できます。

読者側からすると、そこはあまり物語りの中で重要でないので、軽く読み飛ばすところではあるのですが、作家としては手を抜けません。

私としてはあまり縁のない世界ですが、いろいろと知識が広がり面白かったです。

★★★

著者別読書感想(恩田陸)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

となり町戦争(集英社文庫) 三崎亜記

久留米市役所に勤務する公務員のかたわら、この長編小説を2005年に発表して実質的なメジャーデビューをされた著者で、2007年からは専業作家として活躍されています。

そう言えば売れっ子作家の篠田節子氏も八王子市役所の勤務からデビューされていました。医者と作家と同様、市役所と作家業って相性良いのかしら?

それはともかく、小説の中にも役所の手続きの複雑さや、行政の四角四面のやり方が面白おかしく書かれていますが、それはその中にいるからこそわかることでしょう。

内容は、タイトルでわかる?とおり、となり町同士が行政上の手続きに従って戦争を始めることで、たまたまその町で暮らしていた主人公の独身男がそれに巻き込まれていくというストーリーです。

そういう意味ではリアリティはまったくありませんが、戦争という愚かな行いは、今もまだロシアがウクライナへ進行し破壊の限りを尽くし、ミャンマーでは軍部政権が反政府勢力を軍隊で弾圧していて、きっと人類は基本的に戦争(内戦含む)が好きで、世界からなくなることは永久にないのでしょう。

幸い、日本国内では太平洋戦争以降、戦争とは縁がなく、紛争中の地域は除いて攻められたり攻めたりすることもなく、比較的平和を享受しています。

この小説では、「もし・・・」という仮定の話として、国内の地方公共団体同士で内戦が起きると、お役所の手続きとしてこうなりそうという話しをコミカルに描いたもので、平和ボケした日本人にとって身近に戦争が体験できる一種ホラーの要素もあるかも知れません。

しかしなぜ戦争が起きるとかの根拠や必然性に乏しく、いくらフィクションでも設定にかなり無理があるなぁという気がします。

タイトルを見たときに思ったのは、高齢者ばかりになった過疎の町が、その社会保障費に耐えきれず、となり町と共同して高齢者同士を社会保障の予算をぶんどるために戦わせるような「現代の口減らし策」かな?と勝手に想像していました。

なお、この作品は2007年に江口洋介主演で映画化されています。見ていませんが。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

連続殺人犯(文春文庫) 小野一光

2015年に「殺人犯との対話」というタイトルで単行本が、2019年に「連続殺人犯」というタイトルに改題されて文庫版が発刊されたノンフィクションです。

タイトルにあるように、複数の人が犠牲となった実際に起きた殺人事件とその加害者を取り上げ、どうしてこのような事件を起こしたのか、起こさなければならなかったのか、裁判ではどのように証言したか、判決後に加害者はどう思っているのか?など、元雑誌記者らしく事件と加害者を深掘りした内容となっています。

著者は雑誌編集や記者のあとフリージャーナリストとして様々な事件や災害、戦争などを取材している方です。最近では「冷酷 座間9人殺人事件」(2021年)などのノンフィクションもあります。

この著作で取り上げられているのは、( )は事件発覚年

・大牟田連続4人殺人事件(2004年)
・北九州監禁連続殺人事件(2002年)
・秋田児童連続殺人事件(2006年)
・福岡3女性連続強盗殺人事件(2005年)
・大阪2児虐待死事件(2010年)
・大阪姉妹殺人事件(2005年)
・福岡一家4人殺人事件(2003年)
・中州スナックママ連続保険金殺人事件(2004年)
・尼崎連続変死事件(2011年)
・近畿連続青酸死事件(2014年)

の10件のケースです。

なかでも「尼崎連続変死事件(2011年)」は、別のノンフィクション「家族喰い 尼崎連続変死事件の真相」という単独の著作があるほど、特に詳しく書かれています。

しかしこの「尼崎連続変死事件」は、登場人物が多い上に、事件の構造が複雑で、当時新聞やテレビで知ってはいましたが、よく理解できませんでした。

全体的に、週刊誌で何週にわたって事件の詳細が報道されるものと同じで、関係者への取材や公判記録、加害者の生い立ちなどを調べ上げ幅広く書かれています。

しかしフリージャーナリストの限界もあり、収監中の加害者(犯人)や、事件後には姿を消してしまうことが多い加害者の親族から直接話しを聞けることはほとんどなく、内容のほとんどが、他の記者や弁護士、警察、司法関係者、加害者や被害者の知人、同級生などから聞いたという話しです。

そうした話しには当然ながらバイアスがかかり、裏をとることも難しく、誤解やニセ情報が一人歩きすることもありそうです。

それはともかく、いつも小説でフィクションばかりを読んでいると、それが現実と混在してしまいそうになります。時には現実に起きたことを知ることも必要だと思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

追想五断章(集英社文庫) 米澤穂信

2009年に単行本、2012年に文庫化されたちょっと変わったミステリー小説です。

最初内容はまったく知らないまま、タイトルだけで判断すると、この著者としては小難しそうな内容なのかな?と勝手に判断していましたが、そうではなく(やや解釈自体に難しさはありますが)、長編小説の中に短編小説が5つも出てくるというなかなか凝った作りの小説でした。

主人公は静岡から東京の大学へ進学したものの、1年前に実家の父親が不慮の事故で亡くなったことで、仕送りが滞りやむなく学校を休学中で、居候させてもらっている叔父の古書店を手伝っている若い男性です。

この古書店の主の叔父というのが良い味を出してますが、主人公にとってはなにか助けてもらえる存在というわけではありません。

主人公はなんとかアルバイトをして学費をため復学したいと思っていますが、そんなときに、来店した女性客から「亡くなった父親が書いた5篇の短編小説を探して欲しい」と頼まれ、謝礼を出してもらえることから、叔父には内緒で引き受けます。

ここからがミステリーに入っていくのですが、その短篇を書いた女性の父親には、外国を妻と旅行中に妻がホテルの部屋で首を吊って自殺をしたということで、実は夫が殺したのではないか?という噂がありました。

その自殺と、この短篇5篇が関わっていることが徐々に明らかとなっていき、、、というストーリーで、さらにこの5篇の短篇はいずれもリドルストーリーという最後まで残った謎が解けないまま終わる体裁で、最後の1行だけが別に保管されているというややこしい設定です。

リドルストーリーで有名な日本の小説には芥川龍之介の「藪の中」があります。その他にも既読の小説では貫井徳郎氏の「微笑む人」などもそれにあたりそうです。

実は先に読んだ恩田陸氏の直木賞受賞作品「蜂蜜と遠雷」を読んだときの感想で、「個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かった」と書きましたが、まさに読者に長い小説の余韻を残して終わるやり方もありだろうなぁと思った次第です。

いずれにしても、たいへん読み応えのある良い作品でした。

★★★

著者別読書感想(米澤穂信)

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趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
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