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1403
年金の一部(特別支給の老齢厚生年金)が受給できるのは、まだ少し先(約1年後)になりますが、心配性の性格でもあるので年金相談会に予約して行ってきました。

本当は、年末のブログネタにでもと思って、12月初めに予約を入れ、中旬ぐらいに行ければと考えていたのですが、12月中は全部予約が埋まっていて、1月中旬にやっと予約が取れました。結構混んでいるのですね。

まず、年金の相談先ですが、サラリーマンならば、地元の社会保険事務所か、日本年金機構(以下機構)があります。

どちらで相談しても基本的には変わりませんが、旧社会保険庁のデタラメぶりを知っているだけに、その直系の流れをくむ陰気な社会保険事務所とはあまり関わりたくないので、機構を選びました。

機構だってそのまま社会保険庁の業務を引き継いでいるので、変わりがないと言えばその通りですが、対応してくれる相談員が社会保険事務所と違い、所属する公務員ではなく、一般の社会保険労務士が委託を受けおこなっています。それだけに、四角四面な公務員と違い、いろいろと相談しやすそうに思えます。

それに、社会保険事務所では、このご時世にまだ「相談は窓口へ先着順」って感じで、事前の予約は受け付けていないようです。機構は、先着順の窓口もありますが、事前予約も受け付けていて、無駄な待ち時間を減らすことができます。

病院でも、人気ラーメンでも、福袋でも、日本人は真面目に静に並ぶのが好きですね。私はせっかちな性格で、時間を無駄にしたくないので、極力そうした待ち時間をなくせるならそういう(予約)方法をとります。

予約をするために、まず機構へ電話をすると、年金番号や氏名、相談内容等を聞かれます。相談内容によって係員や相談場所も変わってくるそうです。

幸い、私の相談は受給時の手続きやタイミングなど平凡な内容ですので、どこの相談所でもOKとのことでした。複雑で対応が違う相談ってどういう相談なのでしょうかね?

ブログにも何度か書いてきたように、今年の6月で仕事は辞めて、無収入になりますので、1日でも早く年金をもらわないと、虎の子の貯金を食い尽くしてしまいます。

そんなわけで、相談に行くのは、63歳になってすぐに申請を(年金は自分で申請しないともらえない)するために、その準備を万全にしておくためと、年金受給に関して様々な特例などを知っておきたいからです。

例えば、63歳から「特別支給の老齢厚生年金」をもらい、65歳から支給される「老齢基礎年金」だけ68歳とかに繰り下げ支給できるのか?とか、年金受給しながら、勤労者の子供の扶養家族に入れるのか?今はもう働く気はないけど、もしあと2年ほど働くと「厚生年金の加入期間44年の特例」の可能性があり、それはどれほど得なのか?など。

専門家なら当たり前のことでも、とにかく年金に関してのことは難しすぎて、素人にはよくわかりません。社会保険庁があった昔は「一般庶民はなにも考えるな!お上が与えてやる!」みたいなところがあったんだと思います。

相談センターでは、社会保険労務士の方が対面で相談にのってくれ、様々な書類やデータもその場で出力してくれました。

その中には、今年6月まで今の給料で勤務した場合の63歳から65歳まで受給できる「特別支給の老齢厚生年金」の額、そして65歳以降の「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の額、それと知らなかったのですが、配偶者加給、差額加給(失業中、国民年金を支払った分)など、受給できる詳細を出してもらえました。

いくら本を読んでもネットで調べても、知りたい事ってなかなかわからないもので、こうした年金相談の場で社会保険労務士さんに聞くのが一番早くて正確だと実感しました。

もちろん社会保険労務士さんにも得意分野や経験度によっては、年金相談に関してあまり頼りにならない場合もあるので、闇雲になんでも信じるだけは避けるべきです。

63歳になって「特別支給の老齢厚生年金」を誕生日のある月の翌月からもらうためには、63歳の誕生日の前日以降できるだけ早くに申請をする必要があります。年金は自動的にはくれないので、忘れていると自己責任となります。

問題はその際に戸籍謄本が必要とのことを知りました。私の場合、本籍地が遠隔地のため、郵送で申請し、返送してもらうため、誕生日から1~2週間遅れての申請となりそうです。

というのも、その申請日(誕生日前日)以降の日付の戸籍謄本をとることが必要で、事前に取得しておくことができません。面倒くさいですね~。

配偶者加給などの関係もあり、申請可能日まで離婚していない、死別していないなどの証拠書類ということなのでしょう。

それだけ取得すれば、そのまま、年金相談センターで、必要事項を記入し、申請するところまで見てくれるとのこと。63歳の誕生日が過ぎて、戸籍謄本が取れ次第、もう一度、予約を取って来ることにしました。

付け加えておくと、様々な銀行やJAなど金融機関でも、社会保険労務士を講師にして年金相談会をおこなっていますが、当然ながらそうした金融機関で年金受け取り(振込先)を誘導することが目的ですから、その金融機関に振り込みをする気がなければそういうところへ行くのはどうかなと思います。

個人的に年金の受け取りはどこでも良いのですが、近所に店舗がなく不便ですけど、現役時代から住宅ローンやネットバンキングを使っている都市銀行をそのまま使おうと思っています。

今後コンビニでの現金引き出しが有料化されたり、ネットで他行への振り込みが有料(現在は優遇制度で月3回まで無料)になったりすれば、その時点で受け取り先金融機関を変更することもできるでしょうからね。

【関連リンク】
1384 ねんきん定期便を精読する
1136 定年延長の功罪と年代格差
970 生活保護世帯の増加は高齢者増加だけが原因なのか?
921 もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ
680 サラリーマンなら関係ないが、国民年金の滞納率



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1402
以前、学校の教職員の平均年齢が上がってきて、若い人の採用が進まない問題をこのブログで書いたことがあります。調べるとなんと11年も前に書いた記事でした。

527 教員の高齢化について

最近、ふと気になっているのが、同じく地方公務員の警察官の高齢化です。

先般、バイクに乗っていた際に、ちょっとした違反をしてしまい、その場に居合わせたバイクの警察官に呼び止められました。

その時の警察官は、もう定年過ぎてる?と思えるほど髪の毛が真っ白で、かなりくたびれたお爺さんっぽい人で、「お爺ちゃん!危ないからバイクなんか乗ってちゃダメよ~」と言ってあげたくなりそうでした。皮肉やイヤミではなく。

そんなベテランっぽい老警官がバイク(白バイではなくスクーター)に乗って街中を警邏しているのにちょっと驚きました。

警察官は教員と同様、同じ地方公務員ですから、団塊世代の大量退職以降、警察官の年齢構成ってどのように変化しているのか気になりました。

ただ、教員と違い、警察官は割とつぶしが効き、定年後も早期退職時にも天下り先というのが割と豊富に用意されていて、その点は教員より恵まれていそうです。

そのためか警察官は、定年までは勤務せず、天下り先へどんどん転職してしまうという風土もあるそうで、そのあたりも教師のままで定年を迎えることが多い教員と違う点です。

命に関わる危険な仕事で、組織内は体育会系ブラック、若造のキャリアにアゴで使われる悲哀をたっぷり味わい、しかも現場と事務の両方をひとりでこなさなければならない忙しい仕事ですので、給料は同世代平均と比べると意外に高目なのですが、年齢を重ねていくと体力的、精神的につらくなり、転職する人が多いのだろうと想像できます。

天下り先としては、パッと思い浮かべるだけでも、「交通安全協会」や「交通安全センター」、「公安委員会指定の自動車教習所」、「放置車両確認機関(駐車監視員)」、「警備会社」、「タクシー会社」「損害保険会社」「金融機関」など。

その他にも、生活安全課とは関係が深い「パチンコ業界」など風営法関連や、分割された各地の旧道路公団、信号機や標識を作っている企業などにも、その利権独占メリットが享受できる代わりに警察官OBの積極採用は欠かせません。

以前なら、総会屋対策などのため大手企業がこぞって警察官OBを採用していたことがありますが、最近は後ろめたいことをしている会社以外では、そうしたことは減ってきているようです。

特に目立ったのが、団塊世代の大量定年に合わせるように、今までの企業や団体以外にと急いで警察官の再就職先をひねり出したのが「駐車監視員」の制度で2006年から始まっています。

また少子化や若者のクルマ離れにより、経営が傾きかけてきた公安指定の自動車教習所に対し、認知機能検査や実技の「高齢者講習」の制度を新たなビジネスとして加え、多くの警察官天下り先の危機を救いました。

ま、再就職先の確保は今後も続くでしょうけど、現在の警察官の年齢構成はどうなっているのでしょう。

現在と言ってもなかなかこうしたデータはなく、ちょうど団塊世代が定年で次々と辞めていったあと、6年前のデータです。

警察署の捜査員の年齢構成の推移(平成5~平成25年)


このグラフを見る限り40代や50代の割合が大きく減ってきて、若手にチャンスがある職場というイメージです。

上記のグラフは警察庁が広報として出しているもので、おそらく団塊世代を一掃した後に、若手の優秀な警察官を募集するために、2014年頃に「若手が活躍できる職場」というイメージをPRしたくて作ったものでしょう。

ただ、よく見ると、5~6年前には30~40歳のゾーンに入っている、就職氷河期時代に大量採用した(できた)、いわゆる団塊ジュニア世代のボリュームが異常に大きく、この世代が現在は40~50歳に入っていると思われます。それが最近の年齢構成を出していない理由かなと思います。

この団塊ジュニア層がこれから10年ぐらい先に定年を迎えるとき、また新たな再就職先の確保が警察の命題となっていくのでしょう。

ということで、現在定年間近の人の割合(6年前のグラフで、40代後半から50代前半ぐらいの人)は、教員などと比べると少なく、先に書いたバイクで警邏している高齢警官が余っている?というのはどうも違っている感じです。

【関連リンク】
1338 防衛大学校の深い闇
1007 退職金の不思議
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
575 自殺者数と失業者数の相関関係
527 教員の高齢化について

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1401
2013年から続けてきたこの年間ベスト書籍は、今回で8回目となります。

いや~飽きっぽい性格に関わらず、また誰からも評価されることもないのに、よく続いているものです。とりあえず10回までは続けてみたいです。

1295 リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍
1191 リス天管理人が2017年に読んだベスト書籍
1093 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
993 リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍
886 リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍
784 リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍
676 2012年に読んだ本のベストを発表

まず2019年の1年間に読んだ書籍は全部で108作品で、冊数としては115冊(上下巻などあるため)。冊数で見ると、月あたり平均9.6冊読んだことになります。

前年の2018年は99作品110冊でしたので、作品数で9作品、冊数で5冊増えています。2018年は4巻からなる「村上海賊の娘」など複数巻の作品が多かったため作品数が大きく減っています。

さて、今年の大賞発表も、
■新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門
■海外小説部門
■国内小説部門
の3つの部門でそれぞれおこないます。

先に断っておきますが、諸般の事情から旧作や文庫本ばかり読みますので、出たばかりの新刊本はまず読みません。したがって新刊本は大賞候補には入ってきません。その点が多くの書籍の賞とは違います。

■新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門

2018年は26作品だった新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門の対象作品は、2019年は29作品を読み、前年より少し増加しました。

しかし、大賞候補作品はというと、これといった突出した作品がなく、中庸な作品が並び立つことになりました。言い換えると昨年は不作の年(昨年発刊された本ということではなく、昨年読んだ本という意味)と言わざるを得ません。

29作品の中から、大賞候補作は18作品あります。

謎解き 関ヶ原合戦 戦国最大の戦い、20の謎 桐野作人
「やりがいのある仕事」という幻想 森博嗣
「日本の四季」がなくなる日 連鎖する異常気象 中村尚
アンガーマネジメント入門 小林浩志
ひとり暮らし 谷川俊太郎
ファスト風土化する日本 郊外化とその病理 三浦展
言ってはいけない 残酷すぎる真実 橘玲
新個人主義のすすめ 林 望
生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント 西原理恵子
地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 増田寛也
日本農業への正しい絶望法 神門善久
非属の才能 山田玲司
美学への招待 佐々木健一
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史
本能寺の変 四二七年目の真実 明智憲三郎
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 河合雅司
友がみな我よりえらく見える日は 上原隆
堕落論 坂口安吾

この中から、大賞は、、、、、、、、

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 橘玲 著

ということにしておきます。

感想は、
1313 3月前半の読書と感想、書評

私自身、皮肉が好きな嫌みなヤツですので、こうした世間の空気読まず「事実とは違って本当はね、、」っていう暴露本的なものが肌に合っているというか、好感を感じてしまいます。やや偏向してますね。

皮肉にしても暴露にしても「だったらそれがどうした?」って言われかねませんが、こうした裏に隠されたり、誤魔化されている世界を垣間見て、「ヤレヤレ」と深くため息をつくのもワルかないかな~という歳になりました。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

■海外小説部門

海外小説は、2018年は9作品(13冊)だったところ、2019年は8作品(9冊)と少し減りました。これだけAI活用の機械翻訳ブームが来ていても、翻訳小説にはまだ応用できていないらしく、したがって、時間あたりの賃金が高い有能な人の手作業での翻訳のため、原価が高くなり、なかなか手を出せないのと、次々新たな作家さんが出てきてどの作品が自分にあっていそうかよくかわからず、つい安全策をとって、新書や国内小説へと向かってしまいます。今年はもうちょっと意識して海外作品を読みたいと思います。

大賞候補作品は下記の7作品からです。

Yの悲劇 エラリー・クイーン
悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル
その女アレックス ピエール・ルメートル
暗夜を渉る ロバート・B・パーカー
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ジョナサン・サフラン・フォア
湿地 アーナルデュル・インドリダソン
彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ

結構迷います。シンプルで上質なミステリーと言えば名作「Yの悲劇」ですが、読み物として楽しいのは「湿地」や「彼女のいない飛行機」など。国内でも大流行しているイヤミスな「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」などは私の中ではイマイチです。

ここは心を鬼にしてえいやっ!と決めると、大賞作品は、

湿地 (創元推理文庫) アーナルデュル・インドリダソン著 に決定!

感想は、
1344 6月後半の読書と感想、書評

著者は日本と馴染みが少ない、アイスランドの作家さんで、北欧ミステリーという言葉もあとで知りました。作品は地元で2000年に発刊され、日本語翻訳版はだいぶんと遅れて2012年に出ています。

有能なベテラン刑事が主人公で、通りすがりの強盗殺人ではないかと思われた事件に違和感を感じ取り、殺された孤独な老人の過去を調べていき、犯人を追い詰めていくミステリーです。

刑事物の小説は星の数ほどありますが、タイトル通り、湿気でジットリと粘つくような場面が目に浮かびそうになる文章はとても印象に残ります。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

■国内小説部門

最多の国内小説は2018年に64作品(71冊)でしたが、2019年は71作品(77冊)とやや増加しています。

できるだけ意識をして偏らないように、古いものから新しいもの、男性作家も女性作家も、ベテランから若手まで幅を持たせて読むようにしています。

そうすると、古い小説は廃刊の危機などを乗り越えて、本当に良いものだけが残っていきますので、評価はどうしても古い作品に有利となってしまうのはやむを得ないかも知れません。

過去の国内小説部門の1位を書いておくと、

2012年 「あかね空」 山本一力
2013年 「東京セブンローズ(上)(下)」 井上ひさし著
2014年 「東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー
2015年 「屍者の帝国」 伊藤計劃×円城塔
2016年 「八甲田山死の彷徨」 新田次郎
2017年 「漂流者たち 私立探偵・神山健介」 柴田哲孝
2018年 「紀ノ川」 有吉佐和子

と、古いものから、割と新しい作品まで、無難なところに落ち着いているような感じです。

さて、今年は、どういう結果となるでしょうか。

全71作品の中から大賞の候補は下記の12作品です。

アキラとあきら 池井戸潤
ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石 上・下巻 伊集院静
ハサミ男 殊能将之
国境(上)(下)  黒川博行
手のひらの音符 藤岡陽子
赤ひげ診療譚 山本周五郎
占星術殺人事件 島田荘司
地層捜査 佐々木譲
田園発港行き自転車(上)(下) 宮本輝
夜と霧の隅で 北杜夫
約束の海 山崎豊子
俘虜記 大岡昇平

ベテラン作家さんや、売れっ子作家が並びますが、この中から大賞の1作を選ぶとすれば、、、

赤ひげ診療譚 (新潮文庫) 山本周五郎著 に決定!

感想は、
1370 9月後半の読書と感想、書評

今回は昨年に続き60年以上も前の古い小説(1959年発刊)が大賞となりました。2018年の国内小説大賞も偶然ですが、同じ1959年刊の小説「紀ノ川」(有吉佐和子著)でした。

やはりよいものは時代を問わず読み継がれ、そしてそれは決して色あせていかないということでしょう。

30年ほど前にレンタルビデオでこの小説を原作とした映画を借りて見ましたが、その時は登場人物達の背景がよくわからず、単に黒澤明監督の名作映画ということと、三船敏郎演じる主人公だけをうっとりして見ている感じでした。今回、年末にBSで放送されていたので録画し、お正月にゆっくり見ることができました。

そうしたことから、私的には、まず小説で、時代や登場人物の背景を知ってから映画を見るというのが好きです。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

国内小説の次点として2作品あげておきます。

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石 (講談社文庫) 上・下巻 伊集院静著

感想は、
1374 10月前半の読書と感想、書評

約束の海 (新潮文庫) 山崎豊子著

感想は、
1296 1月前半の読書と感想、書評

この選考は新鮮味がなく、ベテラン作家さんの作品となってしまいましたが、ここは奇をてらうことなく、いたって真面目に検討した結果です。

「ノボさん」は、明治初期に活躍した文人であり詩人、正岡子規を主人公にした伝記的な作品ですが、同級生でもあった夏目漱石との友情をメインにもってきて、面白い作品に仕上がっています。

夏目漱石は長生きして数多くの作品を残しましたが、短命に終わった子規(34歳没)の生涯と、そのユニークな発想や行動を、あの老けた感じで頭でっかちの横顔の写真からは想像できない行動的な人物像を描いています。

正岡子規は日本で野球普及に大きく貢献した人物で、そのつながりから、野球好きな著者が子規をテーマにした小説を書こうとしたのは自然な成り行きでしょう。


「約束の海」は、著者の遺作となった作品ですが、著者独特の実際に起きた事件や事故をモデルにした小説の集大成という気がします。

ただ残念なことに、この小説は第1部と第2部で終わり、本来はクライマックスとなる予定だった第3部に至れず亡くなったのは残念です。

さて、今年はまたどんな名作に出会えるかワクワクドキドキ楽しみです。



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1400
光圀伝 (角川文庫)(上)(下) 冲方 丁

2012年に単行本、2015年に文庫化された、水戸黄門様として有名な徳川光圀(1628年~1700年)の伝記風歴史小説です。

著者の作品は、過去に「天地明察」(2009年)、「マルドゥック・スクランブル」(2003年)を読んでいます。本書のような歴史物から、SFまで幅が広い作家さんです。

なんでも地元水戸市では、観光振興や話題作りのため、この作品を原作とした大河ドラマの制作をNHKに提案しているのだとか。

但し、民放で制作される勧善懲悪の好好爺の水戸黄門様と違い、夜な夜な屋敷を抜け出し、頻繁に吉原通いをし、酔った勢いで将軍からもらった刀で無宿人相手に試し斬りをする、侍女に手を出してはらませたりと、それが通用した時代と若気の至りとは言え、そのイメージの落差に眉をひそめる人も多そうで、そういうことを考えると大河ドラマでは実現しそうもありません。

そうしたやんちゃな若いときに、老成した宮本武蔵や沢庵和尚と出会って、武蔵に漢詩を褒めてもらうシーンなどは著者の創造力を堪能できる小説の醍醐味です。

上記に書いたように、光圀は若いときには無鉄砲な若者でしたが、やがて妻をめとり、本来は水戸徳川家の光圀の後を継ぐべきだった兄の長子を後継に据えることで、義を果たしたいと新妻に頼みます。

また明暦の大火で、多くの重要な歴史史料が焼けてしまったことを憂い、才ある妻とともに修史事業に邁進していくことで、後世に名を残すことになります。

知らなかったのですが、水戸、尾張、紀州の徳川御三家の当主とその世子(跡継ぎ)は、それぞれの領地(水戸、名古屋、和歌山)に住まうのではなく、常に江戸に住まうというのが当時のしきたりだったということ。

数年ごとの参勤交代でかかる多額の経費は不要だった代わりに、将軍の許可がないと滅多なことでは地元に帰れず、不自由なことも多かったでしょう。

したがって、三男として生まれた光圀ですが、兄は幼児の時に病死したり、病弱だったことから、当主(父親の徳川頼房)から世子を命ぜられ、それ以降の人生のほとんどは江戸住まいとなります。

若いときから、常に死に別れが身近につきまとい、正妻にいたっては5年しか連れ添っていなかったり、兄から預かった世継ぎの養子もすぐに病死、若いときに意気投合して親友となった儒教家も若くして亡くなったりと、ツキがない人です。

この小説では、引退前の光圀がどういう人生を送ってきたのか、なぜその時代の大名として今でも語り継がれるようになったのかなど、フィクションの小説とは言え、知らないことが多く面白かったです。

★★★

著者別読書感想(冲方丁)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

たんぽぽ団地のひみつ (新潮文庫) 重松清

2015年に単行本「たんぽぽ団地」、2018年に改題されて文庫化された、著者のお得意の高度成長期に建てられた団地を舞台とする長編小説です。

著者の作品は、社会問題を鋭く捉えた作品から、ほのぼのとする小説まで様々で、2000年頃からボチボチ買って読んできました。

調べると過去16作品(冊数では19冊)を読みましたが、年間5冊以上も上梓される売れっ子多作作家さんゆえ、全然追いついていません。一番最近読んだのが2018年に読んだ「ファミレス(上)(下)」(文庫版2016年刊)で、こうして振り返ると著者の作品を読むのは1年に1話ペースです。今年はもう少し増やそうと思います。

ストーリーは、小説やドラマによくある時空もので、1960年代に次々建てられたニュータウン団地、そこで生まれ育ち生活してきた子供達が、やがて大きくなった時に、忘れ去られ、取り壊されていくそれらの団地の想い出を回想するというもの。

1960年代を象徴するツールとして出てくる「ガリ版」は、私の年代では小学生時代に実際よく使っていたもので、つい最近、松本市にある国宝「旧開智学校」の中にそれが展示されていたのを見て、懐かしさひとしおでした。

思い出すのは小学校の上級生になった頃には、それまでのガリ版印刷から、画期的なコピー機が導入され、ちょうどその両方を経験したことを思い出します。最初に使ったコピー機は感光紙を使った湿式タイプで、1枚単価がやたらと高価なもの(と先生に言われた)でした。

小学生を主人公として、やんわりとした中に、懐かしさと人の温かさなどが伝わってくる良い作品でした。

★★☆

著者別読書感想(重松清)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

涙香迷宮 (講談社文庫) 竹本健治

2016年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。この著者の作品を読むのは今回が初めてです。

小説のタイトルにもなっている「涙香」とは、実際に明治から大正時代にかけて新聞業界等で活躍した「黒岩涙香(本名:黒岩周六)」のことで、この人物が書き残したとされる詩文をめぐるミステリーがテーマです。

正直、この「黒岩涙香」という人物のことは初めて知りました。Wikipediaによると「日本の小説家、思想家、作家、翻訳家、ジャーナリスト。翻訳家、作家、記者として活動し、『萬朝報(よろずちょうほう)』を創刊した。」とありますが、その多くは古い文体で書かれた翻訳本であまり馴染みがないと言うことでしょう(現代訳のものもあるでしょうけど)。

Amazonで検索すると「幽霊塔」や「鉄仮面」「巌窟王」など、多くの名著の翻訳本が普通に並んでいます。その訳本自体を読んだことはありませんが、子供の頃に漫画や絵本になったものは見たり読んだことはあります。

残されたミステリーを解くのは、主人公であり、囲碁のタイトルを総なめにしているプロ棋士の牧場智久という設定です。この牧場智久を主人公とした作品は他にも何冊かあるようです。

主人公が関わるきっかけは、囲碁の途中に殺されたと思われる事件が起きた時、たまたま刑事と一緒にいたことからですが、それと並行して、囲碁や連珠にも造詣が深かった涙香が残した茨城にある別荘というか荒れた隠れ家の中を調査しようと同好の士達が集まることになり、それに参加します。

隠れ家の各部屋に書かれていた「いろは文」(いろはの48字を使い、かなを重複させず、意味が通るように作られた誦文で七五調(色は匂へど 散りぬるを/我が世誰ぞ 常ならむ/・・など)の中に秘められた謎を解こうとします。

そしてその隠れ家の中で毒殺事件が起きます。しかも台風の影響で、すぐには警察や救急車も近づけず、世間と隔離された山の中の隠れ家です。

その殺人事件の犯人捜しと、涙香が作ったとされる「いろは文」に隠された謎とを解いていくという流れですが、そのために著者は48種以上の「いろは文」を作成せざるを得なく、そのたいへんな苦労が忍ばれます。

事件としてのミステリーはやや平凡な気もしますが、上記のように涙香が考えた(とする)誦文など、なかなか手間のかかった力作であると同時に、半ば埋もれてしまた黒岩涙香という超絶多才な人物を掘り起こしたということで、よい作品だと思います。


★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

高熱隧道 (新潮文庫) 吉村昭

1967年に単行本として発刊されたノンフィクション小説です。完全なノンフィクションではないのは、登場する人物や企業が、それぞれモデルはあるものの、実際の名称からは変えていたりするからです。

戦前の1936年に着工した黒部川第三発電所(仙人谷ダム)を建設するため、その工事資材を運び込むためのトロッコを走らせるトンネル軌道工事が小説のメインとなっています。

時は、第二次世界大戦前の世界中がきな臭くなっていた頃、関西の軍需工場へ電力を供給する必要があり、国家的事業として、建設会社が地元の漁師でも立ち入らないという難攻不落な道を切り開いていく実話を元にしています。

また一般的に黒部ダムというと馴染みが深いのは、映画「黒部の太陽」で有名な黒部第4ダムで、こちらは戦後に建設されたもので、この小説の話しとは違います。

小説のタイトルになっている通り、このトンネルを掘削していく途中で、異常なほど高温の熱水帯にぶつかり、勢いよく熱湯があふれ出てきて工事は難航を極めます。その温度は100度を軽く超えるという凄まじいものです。

現代のようにシールドマシンがあるわけでなく、人力で岩盤に穴をあけ、その中にダイナマイトを詰めて爆破していくという工法でトンネルを掘削していきます。そしてダイナマイトがトンネル内の熱で自然発火してしまい暴発するなどして多くの犠牲が伴います。

そうした難工事の上、厳しい冬には大きな雪崩(泡雪崩)で鉄筋の宿舎が吹き飛ぶなどして、このトンネル工事だけでも300名を越える犠牲者を出します。

請け負った建設会社の工事監督や現場土木技師は、計画を立て、工事の方法を考え、命令する立場ですが、当然ながら灼熱のトンネル内で身を削りながら作業をするのも、ダイナマイトの誤爆で吹き飛ばされるのも、突貫工事のため現場宿舎に泊まり雪崩に巻き込まれるのも、岩を満載したトロッコが暴走して押しつぶされるのも人夫達です。

そうしたことから、命令を下す側と、お金のためとはいえ、次々と仲間が死んでいく人夫側とで、次第に不穏な空気が流れ出します。

トンネルが完成した時、普通は「黒部の太陽」でもそうだったように、関わったみんなが肩を抱き合い、うれしさで感動するところ、この小説のラストでは、人夫のリーダー役の人夫頭の助言で、監督や現場土木技師達は、誰にも告げず、そっと静かにその現場から逃げ去るように去って行くところが、この工事が只者ではなかったことを象徴しています。

★★★

著者別読書感想(吉村昭)

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1399
今年は5年に一度の国勢調査がおこなわれる年ですので、そこで様々な統計結果の分析と傾向から近未来の将来までが、つまびらかにされていくことになります。

その中で、ひとつ注目しているのが、生涯未婚率です。

生涯未婚率というのは、男女別で50歳時点で一度も結婚したことがない人の率を表しますが、これが高まると、当然ながら出生数に影響し、10数年先には生産年齢人口や年金の賦課方式の限界にも影響してくることになります。

近年では、結婚という形式にこだわらないというカップルや、LGBTの同性婚など、様々な家族の形が増えてきているので、一概に過去のデータとの比較は正確ではない面がありますが、統計はそうした形式ばったものしかないので、仕方がありません。

過去の総務省の国勢調査と、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(2020年以降予測)」からすると、生涯未婚率は留まることなく、今後も高まっていくと予想されています。


男性23.4%、女性14.1%…生涯未婚率の現状と今後(Yahoo!ニュース)
直近確定値は男性23.4%、女性は14.1%。男性は1985年から上昇勾配がキツくなり、1995年以降はほぼ一直線での増加。女性は1975年からはほぼ横ばいの動きを示していたが、1995年からは上昇に転じ、次第に伸び方が急上昇を示している。

この「生涯未婚率」の名称が今年から変わるそうです。

「生涯未婚率」やめます、政府(共同通信社)
50歳まで一度も結婚をしたことのない人の割合を示す「生涯未婚率」について、政府が表現を変更し、「50歳時未婚率」に統一することが23日、分かった。「50歳以降は結婚できないのか」といった意見を受け、「生涯」という言葉は正確性を欠くと判断。

ま、確かに50歳を過ぎてから結婚する人も増えてきているでしょうから、実態に合わせたということなのでしょう。

しかし、婚姻という形態に縛られず、実態として同居し、家族となっている人達や、同性カップルが養子をもらって子育てしているというケースまでは、今のところ統計上は補足できないでしょう。それらも無視できない数になってくれば、やがては変わってくるのかもしれません。

20代~50代の未婚男性と未婚女性では、人口数で300万人以上の差があります(2015年国勢調査)。つまり男余りな状態です。さらに60代以上ともなるとそれに増して寿命の長い女性が圧倒的に多いです。

「未婚男性」は未婚女性より340万人超多い現実(東洋経済オンライン)
日本全国の未婚女性がすべて結婚したとしても300万人の未婚男性には相手がいないということです。もっとも、未婚女性全員が結婚するわけではありませんから、実際にはもっと多くの男性が余るという計算になります。

生物学的に、生まれたての時には女性より男性の方が身体が弱く、乳幼児死亡率が高いので、男性の方がやや多く生まれてきますが、戦後になってから医学の進歩により、出産後から幼年期で亡くなる赤ちゃんの数が劇的に減ったため、そういうアンバランスになってきたと言われています。

結婚する相手が見つからないという場合、よく考えられるのは外国人花嫁を連れてくるというものです。今でも地方の農家などでは、多く見られます。バブル経済が華やかな頃、1980年代後半あたりから一時期はブームとなりました。

親戚づきあいなど田舎のしきたりや風習が残り、両親と同居し、しかも労働(家事、育児、農業、介護)がたいへんな農家へ嫁ぎたいという女性がバブル時期以降、急速に減ってきたことが大きな要因でしょう。

しかしこうした外国人花嫁も、すでに世界中で男余りが顕著化し、特に中国の男余りは日本とは桁違いの数となっていて、それだけ花嫁の争奪戦が激しくなってきています。

そうしたことを若いとき、できれば小学生から中学生の頃にちゃんと教育で教えていれば、男性はもっと若いうちから積極的に結婚相手を探すでしょうし、それがひいては晩婚化にも歯止めがかかりそうな気がします。

あとは、若くして結婚した場合、共働きは当たり前として、もし子供ができたときのサポート体制や、休業補償など金銭的負担をいかに減らすことができるかというのが、今後の生涯未婚率の上昇を抑え、少子化に歯止めをかけられるかでしょう。

今のまま、なにもしないと、今後経済成長がますます進み、裕福になっていくアジア諸国へ、逆に高齢化と人口減少で経済力が低下していく日本の女性が、よりよい結婚生活と子育て環境を求め、海外へ嫁いでいくと言うことも考えられそうです。

そうしたことを防ぎ、日本で結婚し、豊かな生活ができるのかという分岐点に近づいてきているような気がします。

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