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明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

今年も年初の一発目は読書感想からです。

1687
鬼棲む国、出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

著者の作品を読むのは今回が初めてです。著者は私と1年違いの1958年生まれの歴史作家さんですが、元々は大学の薬学部卒の薬剤師さんで、ちょっと変わった経歴です。

薬学部出身と言うことから、薬殺メインのミステリーか?というと、特にそういうものではなく、歴史シリーズものが多く、今回の作品も「古事記異聞シリーズ」の最初の作品で、2018年に単行本、2020年に文庫化された歴史発掘?小説です。

なぜこの本を読んだかというと、近いうちに出雲大社など島根県へ旅行に行きたいと考えていて、その時の観光の参考になるかな?と思ってのことで、内容は知らないままタイトル買いです。

出雲とその歴史に興味を持ったのは、以前読んだ加治将一著「舞い降りた天皇」からで、その時も古事記や日本書紀などに書かれた神話の世界が面白く読めました。

その後に読んだ今邑彩著「よもつひらさか」や桐野夏生著「女神記」にも出雲町にある現世と黄泉との境目「黄泉比良坂」の話が出てきます。

今回の小説では主人公の女子大生が就活に失敗し、仕方なく?大学院へ進むことになり、入れてくれることになった民俗学研究室で「なにを研究するの?」って聞かれてパッと思いついた「出雲」と答えてしまい、様々な謎を調べるために出雲へ向かうという話しです。

専門家の人が読めば穴だらけなのかも知れませんが、歴史素人の観光客(私)にとってはこれぐらいの知識でも十分過ぎます。小説ではすっ飛ばされましたが、「荒神谷遺跡」や「加茂岩倉遺跡」の見どころや、奥出雲のたたら製鉄についてもう少し詳しく知りたかったです。

あ、それは続編の「古事記異聞 オロチの郷、奥出雲」の中で出てくるのかな?まだ読んでないのでわかりませんが。

櫛にまつわる神話の話と、それに紐付いた殺人事件というのが無理矢理ストーリーの中に詰め込まれますが、それはあまりにも突拍子もなく、そういうところがちょっと残念でした。

しかし、ますます出雲への旅が楽しみになって来ました。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

A(河出文庫) 中村文則

2014年に発刊、2017年に文庫化された13篇からなる短篇集で、それぞれ「糸杉」「嘔吐」「三つの車両」「セールス・マン」「体操座り」「妖怪の村」「三つのボール」「信者たち」「晩餐は続く」「A」「B」「二年前のこと」のタイトルがつけられています。

内容はと言うと、なかなか難しく、簡単には表せません。私にとっては意味不明という意味も込めてです。

特に人物がまったく登場しない「三つのボール」などは読むのが面倒で、ほとんど読み飛ばしました。

この作家さんの小説は過去に4作品を読んでいますが、いずれも長編でそれなりに楽しめましたが、今回のような短篇集はもう結構という思いです。

著者別読書感想(中村文則)

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

厭な物語(文春文庫) アガサ・クリスティ他

アガサ・クリスティー、パトリシア・ハイスミス、モーリス・ルヴェル、ジョー・R.ランズデール、シャーリ・ジャクスン、ウラジミール・ソローキン、フランク・カフカ、リチャード・クリスチャン・マシスン、ローレンス・ブロック、フラナリー・オコナー、フレドリック・ブラウンの世界の11人の名手たちが書いたイヤミス系、ホラー&ミステリー短篇を集めたアンソロジーです。

知っている作家さんもあれば、今回初めて知る(読む)作家さんもあり、こうした寄せ集め的な作品はあらたな作家さんを知ることにも役だっていいものです。

その中には買える作品は全部買って読んでいるローレンス・ブロック作品が収められているのは嬉しい驚きでした。「おかしなことを聞くね」や「殺し屋ケラー」シリーズなど短篇作品では光るものがありますから。

クリスティは別格として、その他にも有名なカフカや、「太陽がいっぱい」「見知らぬ乗客」など原作が映画化されたミステリーを多く残したハイスミスなど読んでいて飽きません。

アメリカの作家が多いので、善人や小悪人が理由もなく銃でバンバン殺されるシーンや、陵辱、人食いまでまったく狩猟系民族のイヤミスは日本の陰湿なものとは違って桁外れに嫌な気分全開です。

しかし解説にも書かれていましたが、こうしたイヤミスはなにも現代にだけ特別流行したわけではなく、古くから神話や宗教書、童話(グリム童話など)などにも多く出ていてそれが「人間の怖いもの見たさ」の性と言えるのでしょう。

ただ欧米のこうした明るいイヤミスは、国内ではあまりにもリアリティがないので、どこか遠くの世界か宇宙の果てで起きていそうなことぐらいにしか感じられません。その点、日本人作家のイヤミスは、暗く湿っぽくていかにも日本独自なんだなぁというのを実感します。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

君たちはどう生きるか(岩波文庫) 吉野源三郎

2017年(平成29年)に大ヒットした羽賀翔一氏のマンガ「漫画 君たちはどう生きるか」は書店でよく見かけたので知っていましたが、その原作となった本書や著者吉野源三郎氏のことは恥ずかしながらよく知りませんでした。

著者は明治32年(1899年)生まれ、1981年に82歳で亡くなっています。戦前に社会主義系団体に入り治安維持法違反で逮捕されるなど左翼系の編集者でジャーナリスト、評論家、思想家、反戦活動家ですが、戦後民主主義の立役者とも言える人です。

本書以外にも、多くの著作を遺していますが、共通するのは戦前戦中に痛い目に遭った軍部や軍人を嫌う反戦思想が貫かれていることでしょう。

この小説が最初に出たのは1948年のことで、新潮社が少年向きの作品を集めた日本少国民文庫として発刊されました。その後何度か改訂されたり、読みやすいように現代語に変更したりしていくつかの出版社から刊行されています。

太平洋戦争に敗れて人心が荒れていた戦後すぐに、子供の教養教育のひとつとして書かれたもので、わかりやすい内容で、学習、教養の大切さや友情、貧富格差、職業などについて主人公の中学生コペル君と、指導役の叔父さんとのやりとりを中心に書かれています。

時代背景は戦後まもなくということから、現代の風習とは異なっていますが、内容的に古くさくはなく、いつの時代でも重要な事柄ばかりで、現代人が読んでも腑に落ちることばかりです。

そして、戦後小説などに良くあるどん底の貧しさからの成功物語と言ったものではなく、父親は早くに亡くしていますが比較的裕福な家庭のお坊ちゃんを主人公として、学校で同じクラスの貧しい家庭の子供や、さらにもっと裕福な子供、軍政時代から変わらない旧態依然の上級生でいじめっ子達との対峙など、身近な事柄を通じた成長物語です。

大人が読んでどう思うかはそれぞれだと思いますが、自分の子供の頃を思い起こして、比べてみるのも面白いかも知れません。

★★☆

【関連リンク】
 12月前半 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人
 11月後半 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男


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1684
レンブラントをとり返せ(新潮文庫) ジェフリー・アーチャー

原題は「Nothing Ventured」で2019年に出されたこの作品の翻訳版は2020年に発刊されました。この作品は、「クリフトン年代記」の中に登場する架空の主人公のひとりが人気作家で、その作家が書いたベストセラーが本著と言うことになっています。

「Nothing ventured, nothing gained」は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざで有名ですが、その前段だけですから直訳すれば「危険を冒さなければ」とでもなるのでしょうか。もうちょっと意訳すれば「当たってくだけろ!」的な感じかな。

翻訳版では小説の内容を説明するかのようなつまらない説明をグダグダつけた副題を含む正式名は「レンブラントをとり返せ-ロンドン警視庁美術骨董捜査班-」と長ったらしいタイトルがつけられています。早川書房の編集部だと、こういう大御所の作品にこんなベタなタイトルはつけないでしょう。

ともかく、美術館から盗まれたレンブラントの最後の作品と言われている「アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち」をロンドン警視庁美術骨董捜査班に入った主人公の若きヒーロー刑事が取り戻すというタイトルそのもののたわいもない話です。

同時に、美術館で知り合った婚約者の父親が、理不尽な取り調べと裁判によって殺人罪で刑が確定し収監されていることを知り、著名な弁護士である主人公の父親が一肌脱ぐというその二本立てストーリーが並行して進みます。

もちろんハッピーエンドで終わりますが、このシリーズはしばらく続くそうで、そのためか、主人公が追いつめた大物悪役は生き延びて次回作へ引き続き主人公を悩ますことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(ジェフリー・アーチャー)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

カササギたちの四季(光文社文庫) 道尾秀介

2011年に単行本、2014年に文庫化された連作短篇小説集です。2010年に「月と蟹」で直木賞を受賞した直後の作品です。

四季を意識した「鵲の橋」「蜩の川」「南の絆」「橘の寺」の4篇のミステリー短篇からなっています。

主人公は郊外にあるリサイクルショップを友人と二人で始めたのは良いけれど、客の押しに弱くて高く買い取り安く売ってしまうと言う儲からない商売をやっています。

タイトルのカササギは鳥のことではなく、その事業を一緒に始めた友人の名前です。その友人はいつも「マーフィーの法則」を愛読していて、ミステリー好き、事件や謎が起きると推理を始めますが、いつもちょっとピント外れで、主人公が裏でリカバリーしていくという流れです。

なにか連続ドラマなど映像化を視野に入れたというか、すぐに安上がりに制作できそうな舞台装置と内容ですからきっとそのうち実現するでしょう。

この短篇での設定には無理がいっぱいありそうですが、リサイクルショップで起きるミステリーというのはうまい設定です。

というのは、昔から東洋西洋問わずミステリーが起きる場所として、古書店や骨董品店などが舞台となることがよくあり、現代で言うならそれはリサイクルショップと言うことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(道尾秀介)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

仔羊の巣(創元推理文庫) 坂木司

たまたま同時期に読んだ道尾秀介著「カササギたちの四季」(2011年)と似たような展開(書かれた時期はこちらのほうがかなり前です)の連作短篇小説で、2003年に単行本、2006年に文庫化されています。

いわゆる「ひきこもり探偵シリーズ」の2作目で、シリーズ1作目の「青空の卵」(2002年)は2011年に読んでいます。

ストーリーはワンパターンで、引きこもりの友人を持つ20代も後半の主人公が、日常起きる謎などを引きこもっている友人に話聞かせ、時には目の前で問題を解決してくれるという流れです。

その謎が無理に作られたようなものではなく、十分にあり得そうな設定なのでストーリーに引き込まれていきます。よくできています。

今回は、主人公が働いている外資系保険会社の同僚や、木工細工の講師をしている老人、いつも利用している地下鉄の駅員など脇役が良い味を出していて、物語に膨らみを持たせています。

ほんわかと優しい気持ちにさせる内容もあり、落ち込んでいるときに読むと良いかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(坂木司)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

異常快楽殺人(角川ホラー文庫) 平山夢明

著者の作品は今回が初めてですが、1961年生まれのホラーや怪談話を得意とする作家さんです。

数多くの小説を書いておられますが、今回読んだのは著者のデビュー作品となる1994年に単行本、1999年に文庫化されたノンフィクションの犯罪録です。

大量殺人犯、エドワード・ゲイン、アルバート・フィッシュ、ヘンリー・リー・ルーカス、アーサー・シャウクロス、アンドレイ・チカチロ、ジョン・ウェイン・ゲーシー、ジェフリー・ダーマーなどの生い立ちや異常な犯行などをこれでもか!と、グロテスクに露わにしています。

簡単に登場人物(メインでなく同類の犯罪者として出てくる加害者も含む)のプロフィールを書いておくと、

エドワード・ゲイン(1906年~1984年)
アメリカ人。2人の殺人及び墓から9体の遺体を盗掘。死体の皮膚や骨を使って日常品を製作。小説(映画)「サイコ」や「悪魔のいけにえ」に影響を与えた。

クノー・ホフマン(1931年~?)
ドイツ人。殺人の他、墓地や遺体安置所から遺体盗難、屍姦、人肉食。

アルバート・フィッシュ(1870年~1936年)
アメリカ人。数多くの子供や成人を殺害。屍姦、死体損壊、人肉食。

フィリップ・ハーマン(1879年~1925年)
ドイツ人。50人以上の殺人、人肉食。自分が経営する精肉店で人肉を食用肉に混ぜて販売。

ヘンリー・リー・ルーカス(1936年~2001年)
アメリカ人。母親含め100件を超える殺人を自供。死体損壊、人肉食。「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデル。

アーサー・シャウクロス(1945年~2008年)
アメリカ人。陸軍でベトナム従軍。ベトナムでの残虐行為を公言。帰国後11人の殺人で有罪。死体損壊、人肉食。

アンドレイ・チカチロ(1936年~1994年)
ロシア(旧ソ連)人。52人を殺害。小説「チャイルド44」(2008年)、映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2015年)のモデル。

ジョン・ウェイン・ゲーシー(1942年~1994年)
アメリカ人。少年を含む33名を殺害。パーティなどでピエロに扮することが多かったことからキラー・クラウン(殺人ピエロ)の異名を持つ。スティーヴン・キング著の小説「IT」(1986年)にモデルの要素が加わっている。

ジェフリー・ダーマー(1960年~1994年)
アメリカ人。17人の青少年を絞殺。屍姦、死体損壊、人肉食

人肉食(カニバリズム)や殺害方法、死体損壊の方法、子供への性的虐待などがリアルに出てきますので、気の弱い人や、怖くて夜寝られなくなる人は無理かも。

映画などで描かれるショッキングなシーンもアレですけど、事実は小説より奇なりというのがよくわかります。

しかし一部は時代がかなり古いとは言え、またアメリカのような広大な土地の中に家があるとか特殊性ゆえかも知れませんが、ひとりで何十人も誘拐し、殺し、捨ててもなかなか捕まらなかったというのも驚きです。

どうしてこういう種類の本を読んだかと言えば、凶悪犯罪を犯す人物にはなにか共通すること(幼児体験とかトラウマなど)があるのだろうかということに興味を覚えたのと、元々犯罪記録や裁判記録に関心があったのと、ビジネス界から引退してからまったく脳への刺激がなくなってしまい、これでは早くボケそうと思い、少し揺さぶってみようという魂胆からです。

んで、刺激されたかって?気持ち悪いだけでした。

★★☆

【関連リンク】
 11月前半の読書 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師

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1681
民王(文春文庫) 池井戸潤

2010年単行本、2013年に文庫化された日本を舞台にし、政治を扱ったコメディSF小説です。

漢字が読めない総理大臣とか、理想を追い求めて政治家になったものの、政治力学と利権誘導などにまみれていく中で変わっていく政治家などが面白おかしく書かれています。

さらにSF要素として、アメリカの製薬会社で密かに開発された意識を別人と変換できる技術がテロ組織に漏洩して、総理大臣とそのバカ息子の意識が入れ替わるというとんでもない内容です。

著者の小説では、リコール隠しの「空飛ぶタイヤ」や、ゼネコンの談合問題を描いた「鉄の骨」、不良債権まみれの都市銀行が舞台の「果つる底なき」など硬派なものが好きですが、こうしたおちゃらけた小説も書いていたとはちょっと意外な感じがしました。

感想としては、ちょっとふざけ過ぎということで、評価は厳しいものとなります。それは上記にも書いたように「硬派なビジネス系小説」を書く(書いて欲しい)作家というイメージが私の中にはあり、それとの落差が許容できなかったためと思われます。

銀行員出身の著者にしてみれば、政治を扱うことと、それをコメディに仕立てるのはおそらくチャレンジだったと思いますが、空回りしてしまったようです。

★☆☆

著者別読書感想(池井戸潤)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

震災列島(講談社文庫) 石黒耀

以前、デビュー作の霧島火山噴火を描いた「死都日本」(2002年)を読んだことがあるパニック系?小説を得意とする著者の第2作目がこの「震災列島」です。

本職は内科医ということで、北杜夫氏、渡辺淳一氏、北村薫氏、帚木蓬生氏、久坂部羊氏、海堂尊氏、知念実希人氏、夏川草介氏など、才能ある人はなにをやってもできちゃうものです。

本著は2004年に単行本として、2010年に文庫化されています。つまりここが重要なんですが東日本大震災が起きるずっと前に、発生場所こそ違いますが、大地震と大きな津波、そして原発事故を予言していた小説です。

内容は、地面に穴を掘る掘削業者の主人公は、東海地震が起きれば、名古屋市内でも名港に近い自宅周辺では津波が到達するだろうと思っています。

そしてその住宅地には暴力団組織のフロント企業が進出してきて、東海地震にかこつけて地上げをしようと狙っています。

そして住民に対する嫌がらせが始まり、住民組合の会長をやっている主人公の父親と一緒にフロント企業へ苦情を申し立てにいき一悶着を起こします。すると主人公の娘を誘拐し重傷を負わせ、自殺へと追い込む暴挙に出てきます。

それに対して主人公は、暴力ではかなわないので、地震や地盤の知識を生かし、さらに調べて東海地震と東南海地震が必ず連動して起きるだろうことを予測して、暴力団を一網打尽にすることを計画します。

というような流れですが、個人の復讐劇だけではなく、危険な場所に立地している静岡の浜岡原発で地震による冷却水に問題が発生して建屋が水素爆発したり、管理棟の免震構造が不十分なことなど、東日本大地震を完全に予言していたと言っても良い内容です。

さらに本書の中では、政府が東海地震が起きると世界中から日本売りが殺到することを予測して、日銀とあらかじめ計画を立て非常事態が起きた際には国民の資産をすべて一時凍結する施策を練っていきます。

それだけに内容豊富で、文庫としては約2冊分になる617ページの長編です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

神と罌粟(ハヤカワ文庫) ティム・ベイカー

本著はオーストラリア人(今はフランスに在住)の著者の2作目の長編小説で、2018年に発刊され、日本語翻訳版は2020年に出版されました。

タイトルにある罌粟は「ケシ」と読みますが、医療用のモルヒネの原料として使われる一方、ヘロインなど麻薬を作る原料を指すことが多いです。原題は「CITY WITHOUT STARS」で直訳すると「星のない街」です。

舞台は2000年頃、アメリカとの国境沿いにあるメキシコの架空の街です。全編メキシコが舞台の日本語翻訳小説というのは珍しいです。今まで読んだことはなかったような気がします。

そこでは経済特区の工場が建ち並び、多くの貧しい女性労働者が、中国との激しい価格競争のために低賃金で雇われています。

そしてその街では過去から800名を超える女性が誘拐され殺されるという事件が連続して発生していますが、なぜか警察の捜査はおざなりで犯人逮捕には至っていません。

主人公と言えるのは、労働組合の女性活動家(オルグ)、女性フォトジャーナリスト、他の地区から移動してこの連続女性誘拐殺人事件の捜査にあたる刑事、犯罪組織カルテルの首領、幼い頃に虐待を受けていたカトリック教会の神父の5人です。

それぞれが語り手としてランダムに出てきて、さらに登場人物がざっと30人ぐらいいますので、ついていくのが結構しんどかったです。

さらにメキシコ人の名前や地名が日本人にあまり馴染みがないこともあってなかなか覚えられず、誰が誰だった?と、半分ぐらいまでは「登場人物一覧」と首っ引き状態でした。

警察組織や上司も腐敗しているようで、そのためあまり乗り気ではない相棒と二人だけで謎の解明と犯人逮捕へ突き進む刑事はわかりやすい構図なので、つい感情移入していきます。

その周囲では聖職者の不正と犯罪組織カルテルの結びつき、さらにはアメリカの麻薬捜査機関が出てきて邪魔をしたり、低賃金にあえぐ女性労働者を組織化し、無謀にも工場の中でストライキを画策しようとする活動家など、様々な話題がとっちらかってしまい、これほどいっぱい詰め込む必要があるの?という感じもします。

文庫としては多い510ページの長編で、登場人物や地名の難しさもあり、読むのに結構時間を要しましたが、日本とはあまり縁のないメキシコの国内事情などが少しわかって(20年以上前の架空の話ですが)それなりに楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ブラフマンの埋葬(講談社文庫) 小川洋子

少し前に読んだ「ミーナの行進」(2006年)の2年前に発刊された作品で2004年に単行本、2007年に文庫化されています。

「ミーナの行進」が自分の子供時代を彷彿させるというかヒントにしたような内容だったのに対し、この著作は見事なまでの想像だけで創作したような作品感があります。

2022年4月後半の読書と感想、書評(ミーナの行進)

しかも女性作家の小説に多い(というかほとんどがそう)自分を投影した女性を主人公にするのではなく、若い男性が主人公の話で、男性独特の感情の機微がうまく表現されています。

国内の辺鄙な場所にある資産家の大きな別荘を改築して、芸術家達が自由に使える「芸術家の家」の管理人の青年と、あるとき青年の元に怪我をして助けを求めてきた子犬のような謎の生物「ブラフマン」との出会いと別れまでの短い物語です。

その生き物は全身毛に覆われていて肉球もあり子犬のようですが、手足の爪のあいだに水かきがあり、池に連れて行くと喜々として飛び込んで泳ぐという、河童の子供か?と思ってしまいました。河童は全身が毛に覆われているとは思えませんが、私は見たことがないので。

青年のひとり語りで、町にある雑貨屋の娘への淡い想いや、古くから芸術家の家を作業場としている墓碑銘を専門的に彫る石工師との友情、生きた動物の毛アレルギーの手編み作家の高齢女性との諍いなどとともに、その町ができた経緯などがうまく物語に散りばめられてとても面白かったです。

この著作を入れてまだ3作目ですので、これからもっと読んでみたいと思ってます。

★★★

著者別読書感想(小川洋子)

【関連リンク】
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師
 10月前半 サラバ(上)(中)(下)、ペスト、団塊の秋

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1678
夜明けまで眠らない(双葉文庫) 大沢在昌

著者の作品は「佐久間公シリーズ」を始め1990年代と2000年代によく読みましたが、最近はすっかりご無沙汰してました。本著は2016年に単行本、2018年に文庫化された長編ミステリー&ハードボイルド小説です。

2007年に読んだ「死角形の遺産」以来、久しぶりに著者の作品を読みましたが、やはりハードボイルド小説を書かせれば抜きん出ているのはさすがです。

主人公は東京でタクシーの運転手をやっていますが、元は陸上自衛隊空挺隊員からフランスの外人部隊、さらにはフリーの傭兵と、いかにもという経歴です。

しかしその傭兵時代に経験した夜中に仲間の首を切り取って持ち帰るという恐ろしいゲリラ集団のトラウマが消えず、暗い夜には寝られず明るい昼間に寝るという生活から、夜間専門のタクシー運転手に落ち着いたという事情です。

そのタクシーに乗ってきた男が後席に携帯電話を置き忘れ、その忘れ物を届け出てきた男がタクシーに乗った男とは違っていたことから返却しなかったことで脅されますが、そこから物語はミステリーな展開が始まります。

最初は反社会組織との闘いかと思いきや、傭兵時代に反政府組織と戦ってきたことが絡んできて俄然面白くなります。

日本国内では派手な撃ち合いシーンは現実離れして小説でも使いにくいところですが、治外法権の外国大使館員や、その専用住宅の中での銃撃戦へとうまく持って行ってます。

シリーズ化してもおかしくない経歴を持つ影のある魅力あるスーパーヒーローの主人公ですが、残念ながら今のところ続編は出ていないようです。

★★☆

著者別読書感想(大沢在昌)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

危険なビーナス(講談社文庫) 東野圭吾

2016年に単行本、2019年に文庫化された長編ミステリー小説です。2020年にはテレビドラマ版も作られています。

主人公は動物病院の雇われ院長代理の独身男性で、早くに画家だった父親が亡くなり、母親の再婚相手の裕福な名門家で育ちますが、自分の家ではないと大学を卒業してからはその実家には寄りつきません。

母親と再婚相手との間に子供ができて、その子(主人公の弟)が名門家の跡継ぎとして育てられますが、家のメインの総合病院は継がないで、アメリカに渡ってベンチャー企業を創業しています。

その名門家の当主が危篤に陥ったことから、相続の問題もあり、アメリカから次男が帰ってきますが、婚約者だという女性から「帰国したあと行方不明になった」と主人公の元に電話が入ります。

相続には無縁でいたいと思っていた主人公ですが、その婚約者のために相続争いが予想される実家へ弟の婚約者を連れて行くことになります。

いかにも危険で妖しい雰囲気が漂いますが、相続争いというより、主人公の母親が再婚前に住んでいた家の浴槽で亡くなっていたという古い事故の話が蒸し返され、さらに危篤の当主が若い頃におこなっていた新しい脳の治療術を人体実験していたのでは?ということまで拡がっていきます。

ちょっと混乱しますが、最後はもっと驚愕の展開が待ち受けています。いやーさすがにミステリーの天才作家さんです。リアリティはないですが、予想だにしなかった展開に脱帽です。

★★★

著者別読書感想(東野圭吾)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

掏摸(河出文庫) 中村文則

2009年に単行本、2013年に文庫化された小説で、タイトル通り掏摸(スリ)を生業としている男が主人公の物語です。

そのどんどんと追いつめられていく場面がなんとも重苦しく、主人公の悩みに深く感情移入してしまいました。

元々はフリーで仕事をしていましたが、あるとき筋者と仕事で関わることになってしまい、そのボスから見込まれて無理難題を突きつけられることになっていきます。

スリのテクニックについてはおそらく取材しているのでしょう、かなり具体的に紹介されています。一種のマジシャンのようなものです。

私は20年ぐらい前、新幹線の中で、帽子掛けにかけておいた上着のポケットの中から、サイフをすられたことがあります。本を読んでいたので寝てはいなかったのですが、ガラガラの前の席にすっと座ったスリに新大阪から京都間の20分間のあいだにすられ、京都駅を発車した時にハッと気がついたら上着の向きが変わっていて、前に座った人はいなくなっていました。

しかしその上着の内ポケットにサイフが入っているとよくわかったものです。新大阪駅で土産物を買いサイフを取り出した時から、目をつけられていたのかも知れません。

小説の中でも、サイフや、奪いたい目的物が、内ポケットやズボンのポケット、バッグの中など、どこにあるかというのが決行する際の最大ポイントだということがわかります。そのためスリはしばらく様子を見て、あるいは偶然を装ってぶつかって、どこに目的物があるのかを確かめるようです。

小説の最後はフリーのスリ師の小悪は、ずっと大きな巨悪からは逃れられず、切ない結末でしたが、その巨悪を主人公にした続編「王国」があるそうですので読んでみたいと思います。

★★☆

著者別読書感想(中村文則)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

高い城の男(ハヤカワ文庫SF) フィリップ・K・ディック

映画「ブレードランナー」の原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」で有名なSFの巨匠作家ですが、同著よりも高い評価を受けているのがこの作品で、1963年にはSF小説最高の栄誉であるヒューゴー賞を受賞しています。原題は「The Man in the High Castle」と、翻訳版のタイトルは直訳です。

アメリカで最初に発表されたのは1962年で、日本語翻訳版は1965年(昭和40年)に一度出ていますが、今回の文庫は初版が1984年(昭和59年)のものです。

上記の「ブレードランナー」以外にもこの著者の作品は、「トータル・リコール」(1990年)、「マイノリティ・リポート」(2002年)、「ペイチェック 消された記憶」(2003年)、「NEXT -ネクスト-」(2007年)など、数多くの映画の原作となっています。

内容はまったく知らずに読み始めましたが、ビックリです。

第二次世界大戦が、ドイツ、日本、イタリアの枢軸国の大勝利に終わり、連合国は廃墟となりドイツと日本がアメリカを分割統治している世界が舞台です。

ドイツは、ヒトラーが病気でその後を継いでいた側近のボルマン首相が亡くなり、その後をゲーリングやゲッペルス、親衛隊幹部のハイドリヒなどが次の首相候補として政治が混乱してきます。

日本はアメリカに太平洋岸連邦を設け、サンフランシスコに日本の統治拠点を置いていますが、相変わらずユダヤ人の迫害を続けるドイツを苦々しく見ています。

そうした中でアメリカ国内で読まれているのが「イナゴ身重く横たわる」というタイトルの、第二次世界大戦で連合国側が勝っていればこうなるという内容の小説です。

この本はアメリカの管轄地域では普通に売られていますが、戦勝国ドイツの占領地域や影響力がある地域では禁書となっていて密かに回し読みされています。

その小説を書いたアメリカ人男性が住んでいるというのが、デンバー近くにある安全に配慮した高い城だという噂があり、読者で内容に感激したアメリカ人女性が謎のイタリア人のトラック運転手と一緒にその著者に会いに行こうと高い城へと向かいます。

一方、ドイツから商人と騙ってサンフランシスコへやってきたドイツ国防軍情報部大尉が、日本の在米通商代表団代表とそこへ日本から来た元陸軍参謀総長に対し、ドイツ政府内で密かに計画されている日本への核攻撃作戦を聞かされ、それを阻止するために協力して欲しいと頼まれます。ドイツは同じ戦勝国の日本さえ叩けば世界を征服できるという思惑からです。

日本の和歌や中国の易などが方々に出てきて、日本がアメリカを支配管理するとこうなるという1962年当時の創造がとてもユニークで面白いです。

昭和(前半だけか)な日本人なら一度は「もしあの戦争に勝っていたら」と夢想することがあると思いますが、それを具体的に描いたのがこの小説で、ドイツ人はかなり悪者として描かれているのに対し、日本人はドイツのユダヤ人迫害に反対の立場で、占領地においても礼を欠かさず穏やかな表現になっていてホッとします。

しかし科学技術は圧倒的にドイツが進んでいて、火星や金星までロケットを飛ばし、ドイツの航空会社ルフトハンザはロケット旅客機で超高速移動を可能としているなど飛び抜けたところが面白いです。

その点、日本はまだプラスチックの射出成形技術がなく、ドイツから技術提供を受けたいと願っているなど、旧態依然で見る影もありません。

何事にも中国の易占で現れた結果で判断するなど、やや東洋のことを誤解していたり、また和歌なども出てきたり、見方によっては哲学的なところもあって理解しにくいところも多く、西洋と東洋の距離がとてつもなく大きかった時代の1962年に書かれたSF小説というのを理解して読めばそれらも許せます。

★★☆

著者別読書感想(フィリップ・K・ディック)

【関連リンク】
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師
 10月前半 サラバ(上)(中)(下)、ペスト、団塊の秋
 9月後半 燃える部屋 上・下、朝日新聞がなくなる日、傀儡に非ず、残り全部バケーション

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友罪(集英社文庫) 薬丸岳

2013年に単行本、2015年に文庫が出版されたミステリー長編小説です。また2018年にはこの小説を原作として、生田斗真と瑛太のW主演の映画が公開されています。

主人公のひとりには神戸連続児童殺傷事件の加害者「少年A」をモチーフにし、医療少年院を出所後、作られた別名とニセの履歴をもって寮がある埼玉の鉄工所に就職します。

もうひとりの主人公は、大卒でマスコミ志望でしたがうまくいかず、アルバイトをしていた週刊誌のフリーライターの仕事と住まいを失い、とりあえず住むところを確保しようと寮がある同じ鉄工所に就職し、二人は同日に採用され働き始めます。

同時に入社した同い年の男性は、寮では薄い壁を挟んで隣ですが、毎晩悪夢に襲われてうなされていることを不審に思います。

文庫で593ページのそこそこ長尺ですが、時間の流れはゆっくりしていて、せいぜい1~2年の話です。それだけに二人の関係が濃密で、二人を中心としながらも周囲の人達が巻き込まれたり、関わってくることで様々なことが起きるというパターンです。

果たして自分の友人、仲間だと思っていた人が、実は何の罪もない子供を殺し、さらに異常者としか思えないような残虐な死体損壊をしたと知ったら果たしてそれまでと同じように付き合えるか?という問いかけをしています。

ドキュメンタリー番組などで、過去に犯罪を犯した前科者が退所後に身元を引き受けて仕事を与え更生の手助けをする人(社長)が出てきますが、なかなか難しいというのが実態です。どうしても周囲は色眼鏡で見てしまいます。

ましてや、殺人、しかも無抵抗な子供殺しで、少年法に守られ罪に問われず出所してきた人にどこまで心を許せるのか?という重苦しい問題を考えさせられます。

また同時に悪い男に騙されアダルトビデオに出演し、騙されたとわかって男の元から逃げ出したあとも男から過去の映像を職場などにばらまかれるという女性が出てきます。こちらは犯罪者ではないものの、過去の行いによって真っ当に生きようとしても人生を狂わせられてしまう破滅的な話が出てきます。

そうした心苦しい重い話ですが、最後は少しは救われるような形で終わっているのが救われます。

★★☆

著者別読書感想(薬丸岳)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

カズサビーチ(新潮文庫) 山本一力

2016年に単行本、2019年に文庫化された歴史長編小説です。最初はタイトルを見てどこか南のリゾート地の話かと勝手に想像しましたが、全然違っていました。

タイトルのカズサとは上総(かずさ)のことで、現在の千葉県の大部分で九十九里浜などを含むエリアの総称です。

著者の作品は、歴史時代小説をメインとして7作品を読んでいますが、代表的な作品で鎖国中の江戸時代に難破した後救助されアメリカへ渡って教育を受けた中濱万次郎を描いた「ジョン・マン」シリーズはまだ読んでいませんでした。

そのジョン万次郎と同じように、日本の漁船が難破して、アメリカの大型捕鯨船などに救助されたことは幾度とあったようです。

この作品では二隻の漁船、12名もの漁師を救ったものの、時はまだペリー来航の前で、ガチガチの鎖国真っ只中の日本の陸地に近づくだけで無警告で砲撃されるという状況です。

どうやって漁師達を安全に引き渡し、また多くの漁師を救ったためにその先の航海で不足することとなった食糧や燃料などを日本で積み込めるかという難題に取り組んだアメリカの船長が主人公です。

今は引退状態でロングアイランドのサグハーバーに住む船長に会いたいとやってきたのが、江戸幕府と開国交渉をおこなおうとするペリー提督の要請を受けた富豪です。

その富豪に対して、幕府との交渉の仕方や日本人気質など、船長が長い時間をかけて語るというストーリーです。

日本の江戸幕府と交渉するために、上総沖に停泊し、救助した漁師の一部を交渉役として上陸させますが、前例のないことで幕府の中でも鎖国を堅持すべしの攘夷派と、領民の命を救ってくれた恩人に報いるべきとの人権派のあいだで混乱します。

鎖国中と言うこともあり、幕府にはわずかに長崎出島にいるオランダ人から教わった英語を学んだ役人はいますが、救われた漁師に英語を理解する者はおらず、言葉でのやりとりができず、絵を描いたり仕草で伝え合ったりと想像を絶する交渉で、その苦労が偲ばれます。

実話を元にしたこうした小説はリアリティがあってグイグイと物語に引き込まれます。とても面白かったので、関連する小説「ジョン・マン」シリーズも読んでみたくなりました。

★★★

著者別読書感想(山本一力)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

コロナ倒産の真相(日経プレミアシリーズ) 帝国データバンク情報部

2021年5月発刊の新書ですので、まだコロナ禍の真っ只中で中間報告的な内容となっています。

意外だったのは、一般的にコロナ倒産第1号は、北海道にあるコロッケ製造販売業者が2020年2月に自己破産を申請したということです。

帝国データバンクがコロナ関連倒産と認定した定義は、「新型コロナが倒産の一因となったことが当事者が認めた場合、または取引先への通知にその記載があること」だそうです。

その後コロナ倒産は増え、2021年3月末時点で1237件、負債総額は4409億円にのぼっています。

しかし実際には2020年は前年から6.5%も倒産件数が減り、20年ぶりの少なさという、倒産件数が大幅に減っている変な現象が起きていました。つまりリーマンショックの時のように「不景気になったから倒産件数が増える」という図式が当てはまらないということです。

それには国や自治体からの様々な補助金や無利子融資など支援があったことが一番の要因ですが、その他にも本書では触れられていませんが、コロナ禍が起きるまで社会から批判の的となっていた企業の「内部留保」のおかげというのも大きかったのではないかなと思います。

様々な業種別の倒産例をあげて解説されていますが、要はコロナが致命傷となったものの、コロナ禍がなくとも経営状態は相当悪かった、あるいは相当無理をしていたというのが倒産した企業の実態というのがよくわかります。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

解錠師(ハヤカワ・ミステリ文庫) スティーヴ・ハミルトン

文庫で560ページという長編で、もし難解な内容だと読むのに時間がかかりそうと思っていましたが、まったくそうした心配はなく、サクッと読めちゃいました。

著者は探偵になりたくなかった探偵「アレックス・マクナイト (Alex McKnight) シリーズ」で有名になった作家さんですが、これはそのシリーズではなく2009年(翻訳版は2011年)に発刊された単独小説で、原題は「The Lock Artist」です。

もし原題のタイトルのままを翻訳版で使うと、英語では「Lock」と「Rock」の違いがわかりやすいけど日本語のカタカナだと「ロックミュージックのアーチスト」と勘違いされそうで、あえてわかりやすい漢字表現のタイトルになったと想像します。

主人公は17歳の高校生で、幼い8歳の時に悲劇が起きてそれ以来ずっと喋ることができなくなっています。

その主人公の一人称で物語は進んでいきますが、過去(高校生時代)と、高校を卒業後に様々な因縁の後にプロとして金庫破りをすることになった時代とが交互に語られていきます。現在(プロローグ)は刑務所の中です。

物語は、なぜ喋れなくなったのか?、なぜ刑務所にいるのか?、金庫破りの技術を教わった師匠ゴーストとは?、一目惚れした相手との恋の行方は?など様々な?が出てきてはその話が語られしていきます。

完全犯罪ものや悪人が活躍するピカレスクものでもなく、趣味で覚えた錠前破りを周囲の悪い人間が次々と利用して引くに引けなくなってしまい、やがては罪の意識もなく金庫破りを仕事としていくようになります。

しかし時には心の葛藤から、犯罪者からお呼びがかかるポケベル(時代は携帯電話がようやく普及し初めた頃)を捨ててしまおうとなんども逡巡するシーンが出てきます。

喋れないという障害を持ちながら、それが障害とはならない解錠師というスペシャルな仕事にのめり込んでいく姿はその成功したときの爽快感とともに気持ちが感情移入していきます。

最後はちょっと単純であっけない終わり方でしたが、たいへん面白かったです。

★★★

【関連リンク】
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 9月後半 燃える部屋、朝日新聞がなくなる日、傀儡に非ず、残り全部バケーション
 9月前半 メタボラ(上)(下)、そこへ行くな、砂の街路図、ヒトラーの試写室


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