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沖で待つ (文春文庫) 絲山秋子

著者は1966年生まれで、大学卒業後、総合職として大手住宅設備機器メーカーの営業職を経験したのち、2003年に作家デビューされた方です。

その後いくつか文学賞を受賞されましたが、2005年にこの作品で芥川賞を受賞されています。

そのタイトルから、漁師さんの恋愛もの?ぐらいの想像しかなかったのですが、まったく違い、著者の住宅設備機器会社での仕事をメインに、恋愛とは違う新卒同期の友情?がテーマになっている話しです。

この文庫は、その受賞作と、やはり著者が仕事を辞めた後の経験を下敷きにしたと思われる「勤労感謝の日」と、すべてひらがなとカタカナで書かれた児童文学的な「みなみのしまのぶんたろう」の短篇とセットになっています。

どの作品も、なにかとても新鮮な感じで、面白く読めました。さすが芥川賞!です。正直、過去に読んだ中ではあまり面白いと思った芥川賞作品ってないのですけどね、、、

私も卒業後に入社した会社で、転勤が何度かあり、まったく知らない街にひとり住み、営業の仕事で地元の人と交渉する仕事をしてきたという共通点があり、主人公の心の中がよくわかります。

ただ、私の場合は、著者とは違い、楽観的で住めば都、どこへ行っても、その街が好きになり、このままずっと住んでも良いなと思いながら、数年後には後ろ髪を引かれつつ次の職場へ転勤していくという青春時代を送り、仕事も生活も人生でもっとも充実していた時期かも知れません。

タイトルは、主人公の同期の男性が書いた下手な詩の中に出てくる愛の言葉で、涙を誘う展開となっていきます。

★★★

著者別読書感想(絲山秋子)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

瑕疵借り (講談社文庫) 松岡圭祐

2018年に単行本と文庫が同時に発売されたという珍しいパターンの作品です。著者としては先に単行本で回収したいでしょうけど、読者側としては大いに助かります。

著者の作品は「千里眼シリーズ」や催眠、マジックなどというものが多く、それらもいくつかは読みましたが、個人的には最近増えている歴史時代小説が気に入っています。

今回は、そのどちらでもなく、不動産の賃貸を借りている人が、孤独死で亡くなったあとしばらく発見されなかったり、部屋で自殺や事件が起きて亡くなった場合、その部屋や建物が事故物件扱いされることで起きる様々な「心理的瑕疵」がテーマです。

不動産業で不文律とされている「瑕疵借り」とは、そうした事故が起きた部屋に、誰かを一時的に住まわせることで、周囲の住人の「心理的瑕疵」を和らげたり、新たな入居者への重要事項説明で「瑕疵」の存在を早々に省いてしまおうとするものです。

私も読んで初めて知りましたが、お笑い芸人さんが笑いを取るためでもなければ、そうした瑕疵があるアパートやマンションに喜んで入居する人は少ないでしょうし、その部屋だけでなく、建物全体に影響することから、家主側からすればできるだけ早くそのような瑕疵の説明を終わらせたいということもわかります。

ただこの小説において事故物件に入居する主人公は、単にそういう家主の損得の意向を受けたものだけではなく、借主が死に至った謎や真の理由を解明し、瑕疵物件の「心理的瑕疵」にかかわる大きな不安を一掃することが目的です。そういう意味では、謎解きの探偵に近いものがあるとも言えます。

瑕疵物件と直接関係はないですが、偶然今月「高齢者の賃貸入居拒否問題と空き家 2021/10/9(土)」という記事を書いています。

不動産の話しは、身近でありながら、知らないことが数多くあり、調べてみると興味がわいてきます。

それに加えて、こうした小説を読むと、さらに深掘りして考えてみたいなと思えてきます。

小説では賃貸の事故物件が主ですが、分譲住宅においても当然事故物件は多くあり、これからも持ち家の高齢単身者の孤独死や自殺が全国各地で発生していきそうです。

というのも、自殺者の報道ではいじめなどを苦にした10代ばかりが取り上げられますが、実は年代層でみると60歳以上の自殺者が突出して多く、最近まで年間1万人を超えていました。

そうしたことも踏まえてこの小説の続編も期待したいところです。

★★☆

著者別読書感想(松岡圭祐)


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

熊野古道殺人事件 (中公文庫) 内田康夫

文庫あとがきで知りましたが、この浅見光彦シリーズの長編ミステリーは、主人公が違う短篇2篇を組み合わせ、さらに新たに取材をした時に考えついたことを加えた特殊なものということです。

実はこの文庫は、テレビで浅見光彦シリーズのドラマを見て興味を持ち、2012年に一度読んでいましたが、なぜか感想を書いてなく、あらためて読んでみました。

1991年にノベルスとして初出ということですから、30年前のことで、文庫化されたのは1995年です。浅見光彦シリーズの長編としては75番目ということになります。

シリーズの特徴でもある「ご当地紀行小説」のひとつですが、今回はタイトルでもわかるように、巡礼者が今も多い熊野古道や、古い時代におこなわれていた宗教行事、補陀落渡海(ふだらくとかい)、人形供養の淡嶋神社、女の怖い情念を描いた安珍・清姫伝説など、紀州和歌山の見所が詰め込まれています。

登場人物はちょっとややこしく、主人公の浅見光彦、ワトソン役の作家内田康夫、その内田の旧友で大学教授とその妻、その教授の下で助手を務める男とその妻、研究室の学生達、あとはいつもの地元警察官などです。

そう言えば、シリーズにはつきものの、浅見光彦に好意を寄せる美しいヒロインがこの小説に限っては出てきません。

その代わり、いつもは裏方の作家内田康夫氏が光彦よりも先に事件の不可解な謎を知ったり、光彦の愛車ソアラを運転して大事故に遭うなど大活躍します。

熊野詣と言えば常道の熊野三山(新宮市の熊野速玉大社、田辺市の熊野本宮大社、那智勝浦町の熊野那智大社)が小説の舞台としては全然出てきませんが、これらは当たり前過ぎてわざと外したのかな?と思います。

近いうちに、熊野詣をしたい気持ちになりました。

★★☆

著者別読書感想(内田康夫)


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

東京消滅 - 介護破綻と地方移住 (中公新書) 増田寛也

以前「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」(2014年刊)を読んでなかなか面白かったので、その続編とも言える本書(2015年刊)を読んでみました。

5月前半の読書と感想、書評(地方消滅 東京一極集中が招く人口急減)

2014年と2015年の2年間に3冊の書籍を一気に出されていますが、これはあとになってわかりましたが、2016年の東京都知事選に出るために「東京のことをこれだけ考えている」というものだった?とも思えます。

しかしその都知事選挙では自公などの推薦を受け、当時の安倍首相からもビデオメッセージをもらいながら小池氏に大差で惨敗しました。

ま、それはさておき、「地方消滅」と同様、様々な公表データを元にした細かな分析が延々と続きますので、老眼の入った眼にはつらく厳しい新書です。

そして著者の主張は、「日本版CCRC」と「東京圏から地方への移住政策」の二つです。

CCRCは、70年代のアメリカで始まった「高齢者が元気なうちに終末まで過ごす地域コミッティに参加する生活共同体」のことで、「Continuing Care Retirement Community」(直訳:継続ケア退職コミュニティ)の略です。

その日本版CCRCは、地方移住でも現在住んでいる地域でもどちらも良いのですが、大きな団地などによくある住民会理事がその団地の修繕計画や保安など様々なことを決めていくようなことを介護まで進め、地域で元気な住人(高齢者含む)が主体となって介護や援助が必要な高齢者の面倒を見ていき、自分が介護や援助が必要になったときには元気な人に世話を受けることになります。

アメリカでは、そうした高齢者ばかりが住む地域があり、リタイアした人達が楽しく余生を過ごす環境が整っています。

「都市から地方への移住」は、本書が書かれた以降にコロナ禍が起き、リモートワークが可能となった若い人の地方移住が流行ってきましたが、以前から言われてきたことです。

本書では、データを分析し、この先2040年頃にどこの地方なら医療や介護に余裕があるか?という具体的な地域まで記載されています。移住をしたいが場所は決まっていないと言う人には参考になりそうです。

国や自治体が進める移住政策に関して、明治時代から戦後にかけて南米やハワイ、満州、北朝鮮など様々な形で多くの国民を海外移住させたり地上の楽園と偽って帰還させ、また明治時代には北海道の奥地に国内移住を進めてきました。

これらは一種の棄民政策で、悲惨な結果になったことが多く、国や役人が言う移住政策など「まったく信用ができない!」というのが個人的な見解です。

国や自治体に頼らず、自分が住みたい場所をいくつも見て回り、お試しで少し住んでみて、それで決めるのならば問題はありませんが、少しでも国や役所が顔をのぞかせた瞬間、嫌悪する人はまだ多いのではないでしょうか。

それはともかく、そうした移住をいう人は限って「自分は生涯東京に在住が基本」です。それは、巨大企業出身の評論家などが「学生は大手ばかりに目を向けず、中小、ベンチャー企業に就職すべし!」というがごとしです。

★☆☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

最後の命 (講談社文庫) 中村文則

2007年に単行本、2010年に文庫化された小説で、2014年には松本准平監督、柳楽優弥主演で映画も公開されています、見ていませんが。

どんなあらすじなのか知らずに読み始めましたが、一人称で語られる仕事を辞めたばかりの男性主人公が事件に巻き込まれていくのをドキドキしながら読みました。

最初にこの本のタイトルを見たとき、筒井康隆著「最後の伝令」をふと思い出しましたが、内容は全然違っていて、シリアスでミステリアスな自己精神分析チック小説でした。

子供の時に友人と一緒に見てしまったことがトラウマとなっていてその友人とは長く疎遠にしていたところ、突然連絡が来て会うところから物語は進んでいきます。

そのトラウマというのが思わせぶりでなかなか出てこないのでイラッとしますが、それでも同じ男性として主人公に共感したり感情移入したりしながら読めてなかなかおもしろかったです。

ただ、小説やドラマでは当たり前になっている、偶然で事故や事件が起きて・・・というのはどうもリアリティがなさ過ぎて、そういう箇所だけは遠い場所から冷ややかに眺めているという感情が出てきます。

自分にも小説の主人公のように人の生き死にではないものの、子供の頃に受けた強烈なトラウマがいくつかあり、50年以上経った今でも頭をよぎることがありますが、それがその後の人生に影響を受けたということはたぶんなく良かったと思います。

★★☆

著者別読書感想(中村文則)

【関連リンク】
 10月前半の読書 後巷説百物語、すべては死にゆく、シルエット、ニュータウンは黄昏れて、60歳からの生き方再設計
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後巷説百物語 (角川文庫) 京極夏彦

「巷説百物語シリーズ」の第3作目で、2003年に単行本、2007年に文庫化され、2003年下半期の直木賞に輝いた作品です。

連作の中篇5作で構成されていて、それぞれのタイトルは「赤えいの魚」「天火」「山男」「五位の光」「風の神」となっていて、文庫で800ページを超えるかなりボリュームのある作品です。

シリーズは、「巷説百物語」(1999年)、「続巷説百物語」(2001年)と続き、この3作目のあとに、「前巷説百物語」(2007年)、「西巷説百物語」(2010年)と5作品があり、さらに現在シリーズ新作が雑誌に連載されているので、近いうちに6作目が登場予定です。

本当なら、シリーズ1作目から読みたかったのですが、つい直木賞受賞作というのに目がくらみこの3作目からとなってしまいました。

3作目の時代背景は、徳川時代から維新を経てご一新が起きた後の頃で、様々なところで騒がれる妖怪の仕業?と思える怪異な出来事や事件を論理的に説明がつくよう4人の男が調べていき、さらに江戸時代に各地を回って不思議な伝承などを集めていたという隠居した老人の元に集まって昔語りを聞くという流れです。

決して怪談話のようなものではなく、古来からあり、また古い書物や伝承で残っている不思議な現象や事件を逆手にとって、実はその現象は老人が若いときに出会った「小股潜りの又市」という人物が口先八丁、現代で言うとスマートな詐欺師が仕掛けていたという裏があったというスタイルで、爽快感こそあれ、おそろおどろしい怖さはありません。

「赤えいの魚」は秋田の男鹿半島近くの沖合に誰も近づけない不思議な島があるという謎、「天火」はいわゆる昔から言い伝えられている光る人魂の正体は?という話しなど、たいへん面白く読めました。

ただ大作ゆえ、文庫版は文字が詰め込まれて小さく、老眼が進んでいる我が眼には非常につらく、初めて遠近両用眼鏡を作りに走りましたが、発注から完成まで2週間もかかるということで、ついぞ間に合いませんでした。

★★★

著者別読書感想(京極夏彦)

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すべては死にゆく 二見書房 ローレンス・ブロック

しばらくマット・スカダーシリーズを読んでいなかったなと思って調べてみると、2017年にようやく見つけて読んだシリーズ第1作目の「過去からの弔鐘」(日本語版1987年)以来でした。

この「すべては死にゆく」は2005年に発刊(日本語版は2006年刊)で、もう10数年前に単行本が発刊された作品で、そのうち文庫化されるだろうと思ってずっと待っていましたが、全然その様子はなく、シリーズでその後の「償いの報酬」が文庫で出てきて結局あきらめて単行本を買いました。

シリーズは主人公の年齢も年齢ですから「償いの報酬」で終わりかなと思っていましたが、その次の「石を放つとき」(2020年)がすでに単行本で出ています。またこれも文庫化はされないのかな。

本編では主人公のスカダーが68歳になっていて、そろそろ探偵業から引退しようかという頃で、もちろんアルコールとも縁が切れていますが、禁酒を目的とするアルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous)の集会には律儀に参加しています。

マットスカダーシリーズはこの主人公が警察官時代に犯人逮捕の際、自分が撃った銃弾が跳弾して少女を殺してしまったトラウマから酒浸りとなり、警察を退職した後も、酒での失敗を繰り返す日々を送ります。

そしてあるとき恋人やAA集会で知り合ったよき助言者を得て、アルコール依存症から何度も何度も失敗しながら、ようやく抜け出すことに成功した姿を理解していなければ主人公を本当に理解できません。

このシリーズの主人公を「アル中探偵」という表現をされますがそれは第7作の「慈悲深い死」あたりまでで、それ以降は、なんとかアルコールを遠ざけて、ニューヨークの酒場でもコーヒーを飲んでいます。

詳細は、4年前に書いた「元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)」で書いています。

さて、ストーリーですが、主人公のマットと、殺人が趣味の犯人の視点の二つが中心で、その二つがジリジリと交差するところまで迫っていきます。

その殺人鬼の犯行の様子、ペドフィリアや死体損壊などいくつも書かれていて、読んでいてもあまり気持ちのよいものではありません。

犯人を究極のワルとしたいのはわかりますが、そこまで都合良く完全犯罪の殺人を繰り返すことが易々とできる一種の天才&運が強い男にしなくても良いのにと思ってしまいます。

時代背景はすでに携帯電話は当たり前になっていますが、NYの街中では防犯カメラの設置が進んでいないようで、犯人がどこに現れたかはわかっても、犯人の姿がなかなか捕らえられず、ちょっとイライラしてしまいました。

結局は勧善懲悪ですが、それにしてもマット・スカダーシリーズが久しぶりで期待が大きかったためかイマイチで、後味は決して良くないものでした。

★☆☆

著者別読書感想(ローレンス・ブロック)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

シルエット (角川文庫) 島本理生

著者の作品は初めて読みますが、30代後半の女性作家さんで、2018年には「ファーストラヴ」で直木賞を受賞されています。

この「シルエット」は2001年の作品でメジャーデビューの中篇作品で、その他に「植物たちの呼吸」「ヨル」の二つの短篇が収録されています。

内容的には、女子高生のベタベタな恋愛小説で、還暦過ぎたオッサンが読んで楽しいものではありませんが、時にはこうした異世界の話しを読むのも切り替えになっていいかな。

読んだ感想を書こうと一生懸命行に思い出して、さらに行間までを読もうと考えますが、ダメです、どうでもいいような話しばかりで、なにが言いたいのか、なにが目的なのか、どういう読後の感想を持つべきなのかさっぱりわからず、もうそういうさばけた若い感性は失っているせいか、なにも出てこずダメです。

★☆☆

著者別読書感想(島本理生)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫) 垣谷美雨

著者は私と同年代(著者が2つ若い)で、小説の中に反映される時代や考え方に共感を感じることができます。

この作品は、2013年に単行本、2015年に文庫化された長編小説ですが、著者のマイホーム購入とその後のドタバタを実際に経験したことに基づいて書かれていて、「その気持ち、わかるわかる」と面白く読めました。

著者の作品では、過去に「あなたの人生、片づけます」と「老後の資金がありません」を読んでいます。どちらも面白かったです。

タイトルから想像できるように、多摩ニュータウンの中の古びた団地の話しと、同時並行で進む女性の結婚観についての話しが交錯していきます。

バブル時に相次いで建設された、最寄り駅からバスで5分の場所にある中古の団地(4LDK!)を5千二百万円で購入した主人公の中年の主婦と、その団地で生まれ育ち、大学まで出たものの、内定していた会社が倒産したため就職ができず、アルバイトで学費の奨学金を返済しているその主人公の娘がもうひとりの主人公です。

団地を買った時がバブルの最盛期で、その後は資産価値として下落する一方になり、売っても住宅ローンの残金に足らず、売るに売れない状態になってしまうのは良くある話しです。

そんな中で、古くなってくる団地の建て替えと大規模修繕と住民の意見が分かれ対立していくというのもよく聞かれる話しです。

さらに駅からバスという場所柄、高層マンションを建てて新たに分譲することで住民の負担をなくす等価交換方式も売れる見込みがないことからどこのデベロッパーも乗ってくれません。

私の場合も、バブル時期に最寄り駅からバスで15分という中古マンションを買いましたが、バブル崩壊直後にわずか4年で売り払い、買った価格より少し高く売れたので、この主人公(著者?)のように「なぜこんなマイホーム買ったかかな、、、」という後悔はありませんでしたが、私も一歩間違えば同じ後悔をしていたでしょう。

そして小説と私の同様マンションでも1年交替で理事会があり、入居した翌年には順番が回ってきて、会計を担当しましたが、共益費や修繕積立金、町会費、駐車場代などを不払いする人がいたり、家主は住んでなく、借りて住んでる人もあったりして、それらの徴収がかなり大変だったとこを思い出します。

私もこの主人公と同様に、共同住宅は住みにくい!と早々にあきらめて一戸建てに住み替えましたが、そうした様々な気苦労も割り切れる人でないと、引く手あまたの立地物件でない限り、共同住宅には住んではいけないような気がします。

そうした前半はかなり暗い話しが多くて身につまされますが、人それぞれに譲れない事情があり、その中で共同生活する以上は、覚悟と長期的な戦略をもって臨まないとダメよというノウハウ本のようにも思えます。

ただ、もうひとつのストーリーとなっている、娘とその友人達と、都心の豪邸に住む大金持ちの御曹司との恋愛トラブルについては、あまりにもリアリティに欠けていて、リアルな団地問題とかけ離れ、ちょっと興ざめな面も感じました。

★★☆

著者別読書感想(垣谷美雨) 

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

60歳からの生き方再設計 (新潮新書) 矢部武

著者は1954年生まれということですから私と同年代(著者が3歳上)の方ですが、私ともっとも違うことが、著者は外資系企業に勤務されていたことから英語がかなりお得意で、アメリカ社会についての造詣も深そうです。

本書は2014年に発刊された定年後に気をつけないといけないことをよく言われていることがステレオタイプ的に書かれたものですが、取材した極めて珍しい?人の成功例がいくつか書かれています。

高齢者が正社員での再就職は言うまでもなく、アルバイトでも自分が希望する仕事はなかなか見つからないというのは誰でも知っていることです。

仕事が生き甲斐という人でも、もう貯蓄もあり、年金も十分にもらえるならば、とっとと引退して消費生活だけをするべきというのが私の持論です。

したがってそれとは正反対な話がこの本ではつらつらと書かれていますが、そんなにまでして働く意味が見いだせません。

タイトルの「生き方再設計」というのならば、仕事やボランティア以外の、趣味やなにもしない生き方で成功、満足している人の例も出さないと公平ではありません。おそらくその人達の方が一般的だし数も圧倒的に多そうです。

特に定年となった団塊世代以降のホワイトカラービジネスパーソンの多くは、人に教えるほどの英語力もなければ、建築士など特殊な技術や資格を持っている人は稀です。そうした特殊な人の定年後をメインに語られてもしらけるだけです。

ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、「定年後はこうするべきだ」「こうすればいい」「ひとはこうしてる」みたいな話しは、その人の価値観感そのものだけに、他人があれこれ言うのは難しそうです。

いっそ、勢古浩爾著の「定年後のリアル」のように、「人は知らないが、自分はこうしてる」という話しの方がおもしろいし参考になります。

★☆☆

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ダークナンバー (ハヤカワ文庫JA) 長沢樹

著者の作品は今回初めて読みましたが、2011年に横溝正史ミステリ大賞を受賞した「消失グラデーション」でメジャーデビューを果たした作家さんです。

この小説は、2017年に単行本、2020年に文庫化された長編ミステリー&犯罪小説で、視点がひとりではなく、閑職へ追いやられた「やり過ぎ」テレビ局員と、警視庁でやはりはみ出た分析官の二人の女性、さらに途中からは犯人の視点でも描かれていきます。

したがって、テレビ局員と警察関係、それに途中からは犯人とその関係者と、それぞれに登場人物が多く、いちいち誰の視点かということを見ておかないと混乱しそうです。誰の視点かは都度書かれているので安心ですけど。

タイトルの「ダークナンバー」とは、例えば被害者が泣き寝入りして表沙汰にならず、隠れた犯罪を犯した「存在しない犯人」のこと指しています。

この小説の中では、本来の犯行を隠すために、別の類似する犯行を重ねていき、いわゆる「連続事件」として捜査を誤った方向へと向かわせる知能犯との戦いという構図です。

主人公のテレビ局員と警視庁捜査支援分析センターの分析官が中学時代の同級生ということもあり、その二人が重い過去を引きずりながら、警察とマスメディアという立場の違いや、現在職務で背負っている様々なしがらみを避けつつ、少しずつ犯罪の真相に迫っていく姿は読み応え十分です。

ただ、警察小説としては、あまりにもあっさりしすぎていて、日本一男社会で保守的な警察の官僚組織を相手に、20代の女性分析官やメディア記者にいいように振り回されるライトな姿は想像ができません。

また複雑に錯綜した犯罪そのものについても、リアリティはなさそうで、ちょっと凝り過ぎな気がしました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人間の叡智 (文春新書 869) 佐藤優

著者は2002年に鈴木宗男事件に連座して逮捕、起訴(2009年執行猶予付きで有罪確定)された外務省職員で、裁判中の2005年に出版した「国家の罠:外務省のラスプーチンと呼ばれて」を出版し、一躍有名になった方です。

「国家の罠」は私も2011年に読みましたが、どうも「自分は悪くない」という自己弁護に徹した言い訳っぽい感じで、あまり良い印象は持ちませんでしたが、周囲にいた様々な方からは、著者のことを悪く言う人はあまりなく、さらの同書を含め作家としての能力は高そうな方です。

2011年5月の読書(国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて)

上記の逮捕起訴された事件と「国家の罠」については、確かに外務省が嫌った鈴木議員の腰巾着とみなされ斬り捨てられたというか、スケープゴートにされた感が強く、しかしそれでもめげてしまわず、転んでもタダでは起きない著者の執念とバイタリティが感じられます。

本書は、そうした事件のことはほとんど触れずに(1)なぜあなたの仕事はつらいのか(2)今、世界はどうなっているか(3)ハルマゲドンを信じている人々(4)国体、資本論、エリート(5)橋下徹はファシストか(6)いかに叡智に近づくかという章立てになっていますが、読んでみて思うのは、あまりそうした各章のサブタイトルとは関係なく(たぶん後付けと思う)、過去に経験したり見てきたこと、それに最近の動向で気になることを都度文章にしてまとめて一冊にしてみましたって感じです。

それと国際情勢に関して言えば、何十年、何百年の歴史や文化を知る必要があるものもありますが、今のアフガンのようにわずか数年でコロッと体制が変わってしまうようなこともあり、この新書が発刊された2012年はまだバラク・オバマ大統領の時代(日本は民主党政権時代)で、隔世の感があります。

しかしこの新書の「裏のテーマ」?でもある「新・帝国主義」の潮流については、オバマ後のトランプ時代、メドヴェージェフ後のプーチン、キャメロン、メイ後のボリス・ションソン、野田総理後の安倍総理など、世界中で顕著となり、先見の明があるとも言えるのでしょう。

しかし橋下徹氏の政治家としての今後の可能性を大いに期待している節がありましたが、大阪都構想に失敗(2015年)したあとは、すっかり評論家兼弁護士に落ち着いてしまった点はアテが外れました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

おにのさうし (文春文庫 ゆ 2-26) 夢枕獏

単行本で2001年に絵師天野喜孝氏との共著という形で「鬼譚草紙」が発刊(文庫版は2006年)されたもので、それからイラストと短篇の1話を削除した形で、タイトルを替えて2014年に発刊(出版社が違うので新刊)です。

こうした以前発刊された本を再版とか新装刊ではなく、別の出版社が新刊として売り出すと、Amazonのレビューでも夢枕ファンと思える人から新刊と思って読んだと文句タラタラでしたが、私も浅田次郎などの小説でタイトルこそ同じですが別の出版社から「新刊」として発刊されるという同様なことが何度かあり、非難囂々、切歯扼腕、偏袒扼腕です。

せめて、表紙か裏表紙(カバー)に「初出は○○年」ですとか表示する義務化を出版協会で決めてもらいたいものです。

収録されている3話は、「染殿の后 鬼のために 繞乱せらるる物語(繞は女編)」、「紀長谷雄 朱雀門にて女と争い 鬼と双六する語」、「篁(たかむら)物語」です。

今昔物語や古事記などに使われている和歌などをうまく利用しながら、独自の世界観を拡げていくのはかなりの教養と創造性がないとできそうもありません。

著者の作品は過去に「上弦の月を喰べる獅子」(1989年)や「陰陽師」(1988年)などを1990年代に数冊読んで以来ですから20数年ぶりに久々です。

さらにこの短篇集、テーマは鬼とエッチで、平安時代の男と女、密やかな睦言と官能の世界がそれぞれ描かれています。表現も露骨なところがあります。

元の単行本には絵師天野喜孝氏のカラー絵図が添えられているそうで、ちょっと気になるところです。

そういうわけなので、小学校や中学校の図書館に蔵書するのには相応しくありませんが、大人が秋の夜長に読むにはちょうど良い感じかも。

3話目の「篁物語」は、実在した小野篁を主人公にした、腹違いの妹との禁断の狂おしい恋愛と死、そして閻魔大王への直訴というストーリーです。

あとがきにもありましたが、ベストセラー「陰陽師」の別巻とも言えるし、平安時代の呪術師で安倍晴明のライバル蘆屋道満のスピンアウト小説とも言えるかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(夢枕獏)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

センセイの鞄 (文春文庫) 川上弘美

私とほぼ同年代の作家さんで、1994年にデビュー、1996年には「蛇を踏む」で芥川賞を受賞されていますが、私自身意外でしたが著者の作品を読むのはこれが初めてです。

この作品は、雑誌に連載後、2001年に単行本、2004年に文庫化されています。2003年には小泉今日子主演でテレビドラマも作られています。

内容は、まもなく40歳になろうかという女性の主人公が、高校生時代の国語教師で、すでに引退した老人と言って差し支えない高齢男性との長編恋愛物語で、雑誌に連載する都合でしょうが、連作短篇形式で書かれています。

居酒屋でひとり飲むのが好きな主人公が、いつものように飲んでいたら、老人に声をかけられ、教え子だという話しから仲良くなっていきます。

老人は、妻が何年も前に出奔し一人暮らしで、気ままな生活を送って、いつも寄る居酒屋で何度も見かける女性が、元教え子だということに気がつき声をかけたわけです。

主人公の独身女性にも特に恋人はいなく、元教師の老人と付かず離れずで居酒屋で会っている中で徐々に気持ちが傾いていくというなんだか切ない話しです。

しかし二人ともやたらと飲兵衛で、飲んでいるシーンばかりです。恋愛にお酒がつきものなのはわかりますが、飲んでいるシーンばかりというのには辟易させられます。

ま、著者の一番の趣味でもあるのでしょう。

大人、しかも熟年と老年の恋愛小説というのも珍しく、高齢化社会が進む中で、こういうことは珍しくなくなってきているのだろうなぁと面白く読めました。

★★☆

著者別読書感想(川上弘美)

【関連リンク】
 9月前半の読書 蝶、ぬるい毒、殺し屋、やってます。、家守、うまくいっている人の考え方
 8月後半の読書 運命のコイン、シャーロック・ホームズ対伊藤博文、経済危機のルーツ
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蝶 (文春文庫) 皆川博子

過去に「開かせていただき光栄です」(2011年)を読んだだけですが、その時には「若手作家さん?」と思っていたのですが、90歳を超えているベテラン作家さんでした。言い訳ではないですが、それだけ文体やストーリーが若々しかったということで。

2018年10月後半の読書(開かせていただき光栄です)

今回の作品は、2005年に単行本、2008年に文庫化されています。

前に読んだ作品とは違って、主に太平洋戦争中や戦後から間もない時代を背景とした短編集で、これを先に読めば作家さんの年齢も早くに想像ができたでしょう。

短篇作品は、それぞれ独立した話しで、「空の色さえ」「蝶」「艀」「想ひ出すなよ」「妙に清らの」「龍騎兵は近づけり」「幻燈」「遺し文」の8篇です。

幻想的なミステリがお得意な作家さんゆえ、この短編集もそうした内容となっています。

ただ個人的にはどうもこうしたフワフワした生と死の幻想小説は苦手で、起承転結がハッキリしたものを好みます。

ただ、私が子供だった頃にうっすらと記憶に残っている背景描写もあり、懐かしく郷愁に浸れました。

また各篇にはそれぞれ詩や俳句が添えられていて、その関連は学がないせいかイマイチよくわかりませんでしたが、作家さんの深い教養を感じられる作品でした。

★☆☆

著者別読書感想(皆川博子)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ぬるい毒(新潮文庫) 本谷有希子

著者は多くの小説を出している作家活動以外にも劇作家や演出、女優なども手がける多才な方ですが、作品を読むのは2010年に読んだ「乱暴と待機」に続き2作目です。

本著は2011年に単行本、2014年に文庫化されている中篇の現代小説です。なおこの作品で、野間文芸新人賞を受賞し、3回目の芥川賞の候補(結果は落選)にもなっています。その後、2016年には「異類婚姻譚」で見事芥川賞を受賞されています。

主人公は19歳の地方の短大生で、あるとき記憶にない高校の時の知り合いだという大学生の男性から「返却するものがある」と電話がかかってきます。

その男性が自分の好みで、それ以降連絡を待つようになり、やがてつきあっていた彼氏とも別れ、男性が住む東京で同棲しようとなっていきますが、その心理描写がなんともまどろっこしいというか、還暦過ぎたオッサンにはなんとも理解しがたいばかり。ってそりゃ当たり前か。

とにかく、若い女性の頭の中を駆け巡る想いや感情が吐き出されているばかりの内容なので、これはオッサンが読むのはちょっとツライ限りでした。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

殺し屋、やってます。 (文春文庫) 石持浅海

著者の作品は過去に「月の扉」(2003年)と「セリヌンティウスの舟」(2005年)を読んでいます。どちらも面白かった記憶があります。

この作品は2017年に単行本として、2020年に文庫化されていますが、2019年には続編として「殺し屋、続けてます。」が発刊されています。

内容は、7作の連作短編集で、それぞれのタイトルは、「黒い水筒の女」「紙おむつを買う男」「同伴者」「優柔不断な依頼人」「吸血鬼が狙っている」「標的はどっち?」「狙われた殺し屋」です。

脱サラして経営コンサルタントをしている主人公ですが、副業で殺し屋を営んでいます。ってあまり現実的じゃない話しですけど、コミカルなところとシリアスな話しとうまく組み合わせつつ、デキのよい短篇となっています。

7篇ともそれぞれ味があって面白く読めましたが、その中で一番好きだったのは「吸血鬼が狙っている」で、主人公の殺し屋はその依頼主や目的は一切知らずに仕事を受けるのですが、仕事が終わった後に仕事仲間にその推理を披露します。その内容が一番泣けたのがその作品です。

ただこの作品は月刊誌に連載していたという事情もあり、毎回短篇の前には、同じ話が繰り返されます。それがちょっとうるさい感じです。単行本化する時に、その辺りは端折るなど編集してもいいのではないかな。

殺し屋を主人公とした小説は数多くありますが、私のお気に入りはローレンス・ブロックの「殺し屋ケラー・シリーズ」で、抱腹絶倒&しんみりとできて非常に優れた作品です。

おそらくですが、著者もきっとこの「殺し屋ケラー・シリーズ」を読んで刺激を受けているのでは?と思います。

★★☆

著者別読書感想(石持浅海)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

家守 (角川文庫) 歌野晶午

2003年カッパ・ノベルス、2007年に文庫化された短篇集です。意図的ではないですが短篇が続くときはよく続いてしまいます。

家にまつわるそれぞれ独立した短篇作品でそれぞれタイトルは「人形師の家で」「家守」「埴生の宿」「鄙」「転居先不明」の5篇からなっています。

著者の作品は過去に長編ミステリーの「葉桜の季節に君を想うということ」(2003年)を読んでいます。

最初タイトルを見たとき、篠田節子著の「家鳴り」や貴志祐介著の「黒い家」をふと思い出し、「これもホラー?」って思っていましたが、純粋なホラーというのではなく、ホラー的な香りが少し漂うミステリー小説です。

印象に残ったお気に入りの小説は「人形師の家で」と「転居先不明」。

前者は子供の頃住んでいた地方にある洋館でかくれんぼをしていた友達のひとりが神隠しにあい行方不明になり、20年後にその時一緒に遊んでいた友人から呼び出されその神隠しの理由が判明する話し。

後者は、いわゆる事故物件を知らずに買った夫婦の話しと、その事故物件となった時の複雑な殺人事件についてのミステリーとがセットになった話しです。

そうそう「鄙」も良かったです。高齢化で衰退した集落の中で起きた殺人事件について、犯人が罪を認め服役しているのちに、その時旅行で滞在していた官能小説家が、真相に迫る別の推理を披露するという変わった内容でお薦めです。

★★★

著者別読書感想(歌野晶午)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

うまくいっている人の考え方 完全版 (ディスカヴァー携書) ジェリー・ミンチントン

著者はアメリカのビジネス経験の後、著述業の方で、心理学に詳しいとのことですが、特に心療内科など医療関係、あるいはカウンセラーではないそうです。

この完全版は、1999年と2004年に発刊された続編の二冊をまとめたものだそうで、2013年に発刊されています。

こうした「成功への道」「対人関係」「物事の考え方」「習慣づけ」を教えてくれる指南書はアメリカで数多く出版され、それが日本へもやってきますが、私も20代30代の頃にはついついタイトルに釣られてよくお世話になりました。

こちらの新書も、社会にでて多くの経験をし、そこで様々な問題にぶつかったり、悩んだりしたときの考え方を教えてくれますので、読者の対象年齢は20代後半から30代後半ぐらいでしょう。

私のようにすでにビジネスからリタイアした人が読んでもあまり役立ちませんが、いろいろと考えさせられるメッセージもあり、悪くはないです。

1から100までの格言とその理由が書かれていて、年齢や経験、性別、性格などによって、ピンとくるものもあれば、関係なさそうと思えるものもあり、人それぞれに読んだ感想はバラバラになりそうです。

私の場合、人の眼を気にするタイプであり、失敗すると後でクヨクヨと考えることがあるので、この100の中では、

003「したくないことは、はっきりと断る」
014「自分のしたいことをする」
018「他人からどう評価されようと気にしない」
042「他人に対する悪い感情は、さらりと忘れる」
055「自己中心的な人から遠ざかる」
084「被害者意識を持たない」
085「現実を受け入れる」
093「些細な問題にとらわれない」

などが心の隅っこに引っかかりました。

★★☆

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 8月後半の読書 運命のコイン、シャーロック・ホームズ対伊藤博文、経済危機のルーツ
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1566
運命のコイン(上)(下) (新潮文庫) ジェフリー・アーチャー

原作は2018年に、日本では2019年に発刊された長編小説で、以前読んだ短編集「嘘ばっかり」(日本版2018年刊)にそのプロローグというか第1章がすでに書かれていたという変わったスタイルでした。

1960年代後半、旧ソ連に住んでいた親子のうち、父親が労働組合設立を進めていたことが発覚し、KGBに惨殺され、さらに母子にもその災いが起きそうになり、旧ソ連から脱出することになります。

港から外国船に密航して脱出する際、アメリカ行きかイギリス行きのどちらの箱に入るか、コイントスをして決めることになります。ここまでが、第1章です。

そしてその後は、「ケインとアベル」や「クリフトン年代記」などとも共通する、貧困と絶望からの復活と成功物語が展開していきますが、これまたスタイルが変わっていて、アメリカへ渡った場合と、イギリスへ渡った場合が、同時並行で語られていきます。

最初はどうなのよーと思いましたが、まるでそれぞれが別人格の物語で、よく考えられていて楽しめます。

まだ未読の方もいると思いますので、クライマックスは書きませんが、米英それぞれに向かって成功した二人の主人公が、同時期に生まれ故郷のレニングラードに向かいます。

著者の長編ではお馴染みの主人公を徹底的に貶める悪役はソ連時代にはKGB将校で迫力ありましたが、渡米、渡英後は、同級生のライバルだったり、仕事上の元社長だったりで迫力不足、どちらかと言えば、都合の良い味方が多く出てきて安心して読めますが、ドキドキ感は薄まっています。

長さも、第7部あり、しかもそのほとんどが1部あたり上・下巻ある「クリフトン年代記」と比べると、中篇か?って思うぐらいの分量で、サクッと読めてちょうど良い感じです。

著者が描く「政治家とビジネスマンの成功物語」は、ちょっとワンパターンで飽きてきましたが、なかなか面白かったです。

★★★

著者別読書感想 ジェフリー・アーチャー

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シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫) 松岡圭祐

2ヶ月前に読んだ「黄砂の籠城」(2017年)のすぐ後に発刊された歴史長編小説で、タイトルでもわかるように、この二人が主人公です。

シャーロック・ホームズの小説は、子供の頃に読んだぐらいであまり詳しくないのですが、1891年から1894年まで主人公ホームズが行方不明(著者アーサー・コナン・ドイルが作品を書かなかった)だった時期があり、その時期に実は明治時代の日本へ渡って大きな事件を解決していたという想定です。

一方の伊藤博文は1863年に密航して渡英(事実)していて、その時に子供時代のホームズと会って親交があり、殺害した大物悪党モリアーティの残党から逃れるため、密航して日本にやってきたホームズを大英帝国の息がかかっていない日本でかくまう役目で、実質的にホームズの相棒ワトソン的な役目です。

ホームズがやってきた1891年(明治25年)の日本はというと、明治維新後に大日本帝国憲法が1889年に公布された直後で、まだ工業力などでは欧米先進国には遠く及ばない状態です。

また伊藤博文は初代総理大臣を1期務めたあと、枢密院議長に就任していた頃で、日清戦争(1894年~)、日露戦争(1904年~)以前で日本に食指を伸ばそうとしていたロシア帝国から来日していた皇太子・ニコライ(後の皇帝ニコライ2世)が滋賀県を旅行中、警察官に切りつけられ負傷するという「大津事件」が起きた直後でした。

その「大津事件」で謀反人を死刑にしろと圧力をかけてくるロシアと、法治国家として傷害事件で死刑にはできないという政府重鎮(伊藤)との間にはいり、事件の謎解きにホームズが大活躍し、さらにその後、日本を攻撃する理由を作るためのロシアの策略を暴いていきます。

こうした実際に起きた時代背景を元に、そのタイミングでちょうど行方不明だったホームズが事件の陰で活躍していたという発想はお見事!としか言いようがないです。

タイトルからすると、「ルパン対ホームズ」みたいに、この二人が対決する?と思われがちですが、もちろんそんなことはなく、上記にも書いたように伊藤はワトソンの役目を果たし、ホームズが日本国内で自由に動けるよう様々な恩恵を与え、さらに、事件解決後には英国女王陛下に願いでて恩赦が得られるようにしてくれます。

★★★

著者別読書感想 松岡圭祐

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経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか 野口悠紀雄

最初は海の向こうの話しと思っていたら、日本経済をも直撃したリーマンショックで、製造業を中心に大不況が訪れ、経済が疲弊した時代の2010年に発刊されたビジネス書です。

著者自身が、理工系でありながら大蔵官僚出身で、金融工学にも深い造形があり、リーマンショックを引き起こした金融証券ビジネスの光と影、そしてその影響で製造業が大打撃を受けた構造について詳しく、起きるべくして起きた現象として解説されています。

内容は著者が得意とする高度成長期以降の70年代に起きたニクソンショックからオイルショック、東西冷戦終結、土地バブル、ITバブル、そしてリーマンショックまで、世界と日本で起きた様々な経済危機を掘り起こし、世界はどう動き、日本はなぜ動けなかったなどを解説していきます。

こうしたわかりやすい解説は、中途半端な知識しかない私にとって助かりますが、結局は過去に起きたことをデータなどとともに「こうだった」と言っているだけで、なにか眼新しさや、目からうろこというような話しではありません。

90年代にアメリカと英国が、見事に脱工業化を果たし、金融など付加価値が高い労働やビジネスに移行したのに対し、日本やドイツは旧来の製造業から脱却できず、当初は他山の石ぐらに思っていた金融危機が回り回って製造業を基幹産業とする国に大打撃を与えたという構造はわかりやすいです。

評論家というのは、そうした結果を見てあーだこーだと言えるので、そういう意味ではズルイ存在です。

一方では未来の予測や現在進行形のことについて話すのは目立ちたがり屋で怪しげな人ぐらいで、優秀で保身を考える人は言わないものです。

アメリカの有名大学へ留学経験があることや、東西ドイツの壁の崩壊前に東ドイツへ旅行して決死の覚悟で壁の写真を撮ってきたこと、世界の有名人と懇意であることなど自慢たらしい話しが、何度も繰り返されるのがちょっと鼻につきますが、そうした過去の栄光を、自慢気に語りたくなる高齢者なのでその点はご愛敬なのでしょう。

★★☆

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 7月前半の読書 宇宙を読む、夏の情婦、永遠の出口、無人島に生きる十六人、MISSING

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