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生ける屍の死 (創元推理文庫) 山口雅也
この著者の小説を読むのはこれが最初ですが、1989年に「鮎川哲也と十三の謎」で発表したこの作品が実質デビュー作です。文庫版は1996年に東京創元社、2018年に全面改稿版が光文社から出版されています。
舞台はアメリカのニューイングランドにある田舎町で、主人公はアメリカ人ですが、ルーツは日本人とアメリカ人のハーフという設定です。
日本人作家が書く小説で、物語の舞台や主な登場人物が外国人という小説は意外と少なく、以前読んだ皆川博子著の「開かせていただき光栄です」などとともに珍しいパターンです。
ストーリーは、死人が生き返るというホラーの要素と、素人探偵ミステリーの基本のような事件解決スタイルが同居し、腹いっぱいになります。文庫のページ数も640ページを超え、通常の文庫2~3冊分に相当します。
過去に読んだ小説の中で、文庫1冊で長かった(分厚かった)のは、半村良著「妖星伝 終巻」や、京極夏彦著「魍魎の匣」が、それぞれ1000ページを超えてました。
さすがに1000ページを超える(約500g)と、寝転がって手で持って読んでいるとつらくなってきますが、この640ページ(約300g)は、普通の単行本と同じぐらいの重さで、ギリギリ大丈夫でした。
先日に読んだスティーヴン・キング著「呪われた町」(1975年)は、同じくアメリカで死んだ人間が生き返るという、ドラキュラ伝説を描いた物語ですが、こちらも、一度死んだ人間がなぜか生き返るという物語です。
2020年12月前半の読書と感想、書評(呪われた町)
なぜ死人が生き返るのかという謎は最後まで不明のままで、しかもドラキュラや鬼のように夜しか活動できないとか、生きている人を襲って生き血を吸うとかはなく、死人かどうかは表面上は体温がないとか、目の瞳孔が開いてよどんでいるとかしか区別がつかないというのは、あまりにも安易で都合良すぎ、何でもありの小説と言えども反則気味。
そうした死人が生き返る謎はともかく、次々と起きる殺人事件の謎に迫る、早くに毒を盛られ?一度は死人となって生き返った主人公が、刑事の謎解きを否定し、緻密な謎解きをするのは、古典ミステリーと同様な手法で、読み応えあって面白かったです。
★★☆
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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 (文春文庫) 原案 渡辺一史
進行性筋ジストロフィーという指先以外はほとんど動かせなくなった難病を抱えながらも、病院や家族から離れ、自立生活をおくる主人公鹿野靖明氏の生活を描いたノンフィクションを元とし、映画用に脚色したこの小説は、2003年に初出、2013年に文庫化されました。
この作品を原作に映画「こんな夜更けにバナナかよ」が2018年に主役を大泉洋と高畑充希で制作されました。
世の中の常識では、自分のことがほとんどできない重度障害者は、専門病院や施設で生活するのが当然という慣例?がありますが、それに敢然と立ち向かい、家を出て、また医者から入院を勧められても断り、自ら介護ボランティアを募り、不自由ながら自立した生活を送っています。
介護ボランティアをしている医学生の恋人が、そのボランティアのためにデートの約束を何度もキャンセルすることに疑惑を感じ、彼氏がボランティアをしているという家にやってきたところ、そのまま彼氏と泊まりで介護をすることになります。
全身麻痺の患者はわがままで、ボランティアに対してあれこれ遠慮なく指示をしますが、深夜になってから「バナナを食べたいから買ってきて!」と頼まれ、理不尽な怒りを抱きながら街中を走り回って買ってきます。それがタイトルになっています。
そして、その後、フリーターとしてバイトする一方でボランティアとして活動しますが、やがては身障者の生き甲斐や人権に目覚めていきます。
しかし進行性ゆえ、徐々に弱っていく患者を看取ると同時に、あきらめていた学校教師の道へ進むことを患者から提案されたことで、その気になっていくボランティア女性の成長物語でもあります。
こうした試みが、他の多くの身障者やそれに関わるボランティアや家族が、穏やかな気持ちになれて、それぞれの夢や闘病のモチベーションに少しでもなるといいですね。
★★☆
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人間の本性 (幻冬舎新書) 丹羽宇一郎
著者は伊藤忠商事社長、会長を経て日本郵政の役員、中国大使などを歴任され、あとは文化勲章だけといういわゆる上級国民の方で、この新書を読んでいてもちょっと上から目線での話しが目に付きます。ま、そういう立場が長いと、そうなりますよね。
でも人間的にはとても魅力ある方だと思います。私もこうした人と一緒に仕事がしてみたかったと思います。そうした人間的な魅力は大企業の経営者としては絶対に必要な素養でしょう。
タイトルの「人間の本性」について深く掘り下げたとはとても言えませんが、50年を超えるビジネスや国際交流の場で経験してきたこと、特に人間関係という話に重点が置かれています。
ま、タイトルは出版社の都合で「売れそうなタイトル」を編集者が付けるケースが多いですから、著者の本音が出るケースは少なそうですけどね。
「自分は仕事が楽しい」と何度も繰り返されていますが、いくら好きであっても、70過ぎても第一線の場で働くというのは、私は「百害あって一利なし」と思っています。周囲の若い人が迷惑に思うだけです。
自分はまだまだできると思っていて、さらに周囲からおだてられ、励まされ、求められというのが働くモチベーションとなっているのでしょうけど、それは、結局は若い人が成長する機会や場やお金を奪う行為で、本人は世のため人のためと思っていても、それは勝手な思い込みに過ぎません。
立派な人というのは、「Old soldiers never die, They simply fade away.」(老兵は死なず、単に消え去るのみ」が常に美しいあり方だと思っています。人の美学とでも言いましょうか。
高齢化社会と言われている今の日本では、そうしたシンプルにフェイドアウェーできる美しい老人が少なく、いつまでも第一線に立ちたがり、偉そうに自己主張を続け、晩節を汚しているのが私には理解できず良くないことに思えます。
2019年に池袋で起きたクルマの暴走死傷事故で、文化勲章までもらった元高級官僚の老人が、裁判では「事故はクルマの経年劣化による故障で自分は悪くない、無罪だ」と主張していて、被害者遺族弁護士が「クルマの経年劣化と主張しているが、ご自身の経年劣化は考えないのか」と、嘲笑気味に会見で言っていましたが、劣化した本人にはそれがわからず、しかもそれを忠告してくれる人が周囲にいない惨めで不幸な人ということでしょう。
この著者が経年劣化していると言っているのではなく、誰しも老化はあるもので、いくら人間ドックで健康体と言われても、何事も早めに後進達にすべてを委ねていくことこそ、一時代を築いてきた老人達の本当の役目ではないかなと思っています。
私が「人間の本性」というタイトルで文章を書くとすると、そうした「俺が!俺が!」の老人達の見苦しい老い方をテーマにするだろうなぁと感じました。
★★☆
【関連リンク】
12月前半の読書 呪われた町、傘をもたない蟻たちは、2025年東京不動産大暴落、殺人犯はそこにいる
11月後半の読書 砂の王国(上)(下)、おとなの教養2、晩秋の陰画、ダブル・イニシャル
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呪われた町(上)(下) (文春文庫) スティーヴン・キング
世界的に有名な著者の長編小説では「キャリー」に次いで2作目という初期の作品です。
原題は「Salem's Lot」、初出は45年前の1975年の作品で、日本語翻訳版は1983年に刊行、その後文庫版が出版されています。
キングと言えば、ミステリーやホラーの旗手ですが、こちらもドラキュラをテーマにしたミステリー&ホラー作品となっています。
ただ、まだ長編小説として2作目という初々しい?ところがあり、あまり凝った内容ではなく、東欧で古くに伝承としてあった吸血鬼というかバンパイアがアメリカの田舎町に住み着き、主人公の作家の周辺の人達が次々と感染していくというストレートで特にひねりのないストーリーです。
ドラキュラは、いまから100年以上前にイギリスのブラム・ストーカー著の小説に登場した人の生き血を吸って仲間を増やしていく吸血鬼です。
夜しか行動できない、人の生き血を吸うことで死んだまま生き続ける、歯に牙ができるなど吸血鬼というスタイル、いま日本でも大流行の「鬼滅の刃」に出てくる鬼ともかなり共通していて、西洋・東洋問わず、ほぼ同じスタイルの悪の存在を人類の敵としているのはなにか面白いというか興味を引かれます。
さすがに日本の鬼にドラキュラが弱いとされる十字架や聖水を突きつけても効果は?で、逆にドラキュラが藤の花に弱いという話しも聞こえてきません。
このドラキュラなどのバンパイアや日本の鬼が古くから伝承としてあり、象徴することは、東西世界に関係なく、過去から何度も人類を苦しめてきた、人から人へと感染し、やがては死に至らしめる未知のウイルスや細菌をイメージしているのかなと思えます。
そういう意味でも、未知のウイルスに世界が苦しめられている新型コロナウイルス時代に鬼滅が大流行したり、こうしたドラキュラ本を読むのに適しているかもです。うまくまとめちゃいました。
★★☆
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傘をもたない蟻たちは (角川文庫) 加藤シゲアキ
2015年に単行本、2018年に文庫化された短編小説集です。2016年にはテレビドラマも作られています。さすが人気アイドル作家。
過去には小説デビュー作「ピンクとグレー」を読んでいます。
2016年11月後半の読書と感想、書評(ピンクとグレー)
「染色」「Undress」「恋愛小説(仮)」「イガヌの雨」「インターセプト」「おれさまのいうとおり」「にべもなく、よるべもなく」の7編からなるこの小説は、いずれも現代的というか、著者と同世代(著者は33歳)の、まだギリギリ中年の域には達していない若者に向けた心理サスペンスというジャンルになるでしょう。
記憶に残ったのが「イガヌの雨」で、これはSF的な内容で、空から完全栄養食となる生物が大量に降ってきたことで、従来の食糧生産が落ち込み、やがては破滅の道へ進んでいくという恐ろしい話し。
あと「にべもなく、よるべもなく」はボーイズラブというか、小学生の頃からの同性の親友が、同性愛者だったという苦悩で、心が乱れていくというストーリー。
いずれも結末がイマの作品らしく、決着するようなものではなく、あとは余韻に浸って想像膨らませてくださいって感じです。
私の世代には、それが苦手なので、どうも後味がよくありません。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
2025年東京不動産大暴落 (イースト新書) 榊淳司
新書ではつきものの刺激的なタイトルで、2017年に発刊されました。そのタイトルに釣られて買いました。
コロナ騒動前に書かれたものなので、オリンピックの延期や、不動産価値、黒田日銀総裁の再任(本書では2018年の再任はないだろうと書かれてました)など、本書に書かれている想定が大きく変わってきていることを承知で読む必要があります。
タイトルにも出てくる2025年というと、すでに地方を中心に人口減少が進む中で、ボリュームが厚い団塊世代が後期高齢者になり、いよいよ東京でも人口が減少し始める時期とされています。
その他にもタワーマンションのリスクなどもよく報道される程度には書かれていますが、この本が書かれた3年後の今でも新築・中古とも、高級タワマン販売は好調を維持しています。
コロナでリモートワークが主流となり、郊外や地方への移動が進むかと言えば、実のところはより便利な都内に住みたい派が多いらしく、本書でも書かれていますが局地的バブルがますます膨れ上がっている勢いです。
そうした都内在住要求が強ければ、またこのまま都内の住宅が適度に供給され続ける限り、本書で「大暴落」とされる2025年もまだ都内の人口は地方や郊外から吸収し続け、東京の不動産価格は高止まりし続けている可能性もありそうです。
しかし、不動産の売買についての著者の話は面白く、これから家を買おうと思う人は、先に読んでおいて損はないでしょう。
私は、すでにローンが終わった郊外の古くなってきた一軒家を、売るでもなく、子供に残そうとかでもなく、悪くなった箇所を補修しつつ、終の棲家として維持していくだけですから、関係のない話しではありますが。
★★☆
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殺人犯はそこにいる (新潮文庫) 清水潔
2013年に単行本、2015年に文庫化された当時「足利事件」と呼ばれていた幼女連続誘拐殺人事件を追いかける事件記者が書いたノンフィクションです。
この著者は写真週刊誌FOCUSの記者を経て、日本テレビ報道局記者へ転職した方で、FOCUS時代には「桶川ストーカー殺人事件」を追いかけ、警察より早く犯人にたどり着いたことで有名です。
このノンフィクションでは、足利事件を調べていく過程で、足利の周囲で5件もの幼女が誘拐されて殺されているか行方不明になっているに関わらず、警察の捜査は同一犯説にはならず、無期懲役囚として服役している菅家さんはその5件のうちの1件の誘拐殺人容疑です。
現場を何度も歩き、関係者に聞き回わり、日本で初めてとされるDNA検査結果の異常さに気がつき、菅家さんは無実じゃないか?ということに気がつき、弁護士などと一緒に執念で再審で判決をひっくり返しました。
えん罪に気がついて、様々な警察や鑑識、検察などの妨害にもめげず、無罪を勝ち取ると言うだけでも1本の映画やドラマにもなりますが、実は本題は、「菅家さんが犯人だとつじつまが合わない」「殺人犯は別にいる」「その容疑者は調べて行く過程で突き止めた」ということから、「(犯人とされた)菅家さんには刑務所から退場してもらわないと次にいけない」というのがモチベーションだというのに驚きます。
桶川事件と同様、この足利事件でも警察や検察のメンツや思い込み、組織を守ることが一番重要などを徹底的に糾弾していて、ここまで書いてよく引っ張られないものだなぁと。闇夜の夜は歩けないでしょう。
さらに、同時期にDNA検査が重要な決め手となって死刑判決となりすでに執行された飯塚事件について、そのDNA検査の不自然さ、裁判所へ提出した証拠画像の一部分が消されていたこと、足利事件でDNA検査のやり直しを求めた再審が始まろうというその時期に、異様に早く死刑が執行された不自然さなどにも言及しています。
また初めて死刑囚が再審の結果無罪となった免田事件の元死刑囚にも会いにいって、警察と検察がえん罪をつくる構図を調べにいったりします。その免田さんは、つい最近、12月5日にお亡くなりになりました。
こうした事件記者の活躍は、ドラマや映画では出てくることがありますが、実際には「警察発表をそのまま報道」、「芸能人のスキャンダル隠し撮り」ぐらいしか見かけなくなっていることを危惧していましたが、著者も「変わり者」の烙印を押されながらも、一途にその事件記者の正しい道を疾走していることがわかる一冊でした。
もうちょっとシンプルに、あちこち寄り道せず、短く、読みやすく書いてくれると、もっと読者が増えるような気がします。どうしても、過去のことも含めあれもこれもと詰め込みたくなるのはわからないでもないですが。
こうした単一の事件を追いかけたノンフィクションは過去に森下香枝著『グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人』や、カポーティ著の『冷血』などを読んでいます。
2011年1月前半の読書(グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人 森下香枝著)
2014年1月前半の読書(冷血 カポーティ著)
2014年10月後半の読書(宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 高沢皓司著)
それらと比べても遜色がないというか、ジャーナリスト魂が感じられるそれ以上の骨が感じられる作品です。
★★☆
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砂の王国(上)(下) (講談社文庫) 荻原浩
2010年単行本、2013年に文庫化された長編小説です。著者の作品は好きで概ね文庫になっている小説は読んできていますが、その中でもこちらはコミカルなところはほとんどなく、シリアス路線の社会問題小説です。
国内では何年かに1回は、新興宗教の社会問題が現れては消えてを繰り返していますが、そうした繰り返される新興宗教をテーマにした作品です。
主人公は家庭に問題はあったものの、有名大学を出て、一流証券会社でエリートだけが務められるディーリングを経験してきましたが、そこから脱落してからは絵に描いたようなアルコール中毒、家庭崩壊、やがては貯金も尽き41歳でホームレスとなってしまいます。
そのホームレス生活のリアルが長々と描かれていて、気分もめちゃ落ち込んできたところで、「社会に復讐してやる」「ここから反撃だ」と、意を決して変わり者だけどその姿に威光が感じられるホームレスと、もう一人コールドリーディングが得意なインチキ占い師と競馬で得た大金を元手に怪しげな新興宗教を立ち上げます。
そうした立ち上げ時期の苦労話が、事細かいために、かなり重量感のあるページ数になってしまった感があります。もう少しあっさりした内容でも良かった気がします。
最初は地道に会員を集めていくなかで、口コミなどで徐々に広まっていき、政治家や映画俳優なども加わることで、一気に規模が大きくなっていきます。
どうもこの主人公は、自意識過剰気味なところがあり、「自分以外は誰も信じられない」「人をうまく使いこなすことができない」「1歩先を考えるのは上手いが、2歩3歩先が読めない」という、私を含めてどこにでもいそうな過去に成功したビジネスマンという感じで、「同類相憐れむ」ではないですが、憐憫の情を感じます。
事業でも小規模で社員全員の顔がよくわかっている間のマネジメントは割と簡単にできても、ある規模を超えるときに問題が噴出し、一気に崩落していくことがあります。それは宗教も同じです。
ということで、最後にどうなっていくかは、タイトルから想像しなくても自ずと知れたことですが、この主人公にも、本田技研の藤沢氏や、ソニーの井深氏など、絶対に裏切らない親友や部下、身内が周囲に何人かいれば、、、って思うと気の毒に思えてなりません。小説にリアルな感情移入してしまい、読んでいて「なにやってんだ!」とか思わず叫びそうになってしまいました。
★★☆
◇著者別読書感想(荻原浩)
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おとなの教養 2―私たちはいま、どこにいるのか? (2) (NHK出版新書) 池上彰
2014年に発刊された「おとなの教養:私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」の続編にあたる本著は2019年に新書として出版されました。
「おとなの教養:私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」は今年4月に読みましたが、とてもわかりやすく為になりましたので、今回その続編を買ってきました。
2020年4月前半の読書(「おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」)
第1章はAIとビッグデータ、第2章はキャッシュレス社会と仮想通貨、第3章は民族や人種問題、第4章は中国や中東諸国を中心とするジオポリティクス、第5章は某国大統領を中心とするポピュリズム、第6章は日本国憲法という構成です。
2019年から2020年頃において、社会人はもちろん、まもなく就活する学生さんは知っておいて損はない知識でしょう。
第1章と第2章はすでにある程度知識や経験があるので、特に目新しいことはないものの、第3章の民族、人種、部族は、知らなかったことも多く「なるほど、そうだったのか!」ということもありました。
ユダヤ民族はわかりやすいですが、中東の国々に住まう様々な民族は、歴史は古く、近代に入ってから西洋やロシアなどに翻弄され、そうした事情がわかりにくいのと、その結果として現在様々な問題が起きて気の毒に思います。そうしたこともこの本を読むまでは理解できていませんでした。
最終章の「日本国憲法」については、難しい解説ではなく、なぜ安倍前総理(執筆時は総理大臣)がなぜ憲法改正をしたがっていたのかなど、わかりやすく、腑に落ちる感じで解説されています。
そして、それらに対して、どうするべきかというのは「自分の頭で考えろ」ということが一貫しています。
★★☆
◇著者別読書感想(池上彰)
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晩秋の陰画 (祥伝社文庫) 山本一力
「あかね空」で直木賞を受賞された著者の作品は、もっぱら時代小説専門?と思っていましたが、現代ミステリー小説もあったのですね。2016年に単行本、2019年に文庫化されています。
そう言えば、思い出しましたが、7年前に自伝的な現代小説の「ワシントンハイツの旋風」を読んでいました。
2013年2月前半の読書「ワシントンハイツの旋風」
2016年に単行本、2019年に文庫化された「晩秋の陰画」「秒読み」「冒険者たち」「内なる響き」の4編が収められた短~中編の小説集です。
中でも「冒険者たち」は、私も好きな1967年の古い映画「冒険者たち」を介し、その古い映画に曰くがある男女の、少し歳はいってますが、BOY MEETS GIRL物語です。
この映画は、私の年代ではロードショーがおこなわれた時はまだ小学生でしたので、最初はテレビで放送されたのを見ました。著者の年齢(72歳)だと、ちょうど青年期に映画館で見ているのでしょう。
またあの映画に出てきたレティシアという女性を唄った井上鑑の「レティシア」(1982年)という曲は、当時好きで、曲を聴くとあの映画の場面が浮かんできました。
その女性レティシアは、映画では宝探し中に銃撃されて亡くなってしまい、重い潜水士の装備を付けて海深く沈められるシーンは、映画「タイタニック」でレオナルド・ディカプリオが力尽きて海中に沈んでいくシーンと同様泣けます。
「帰らぬ青い瞳の天使、微笑んでおくれ、もう一度だけ・・・♪」
それはさておき、どの中短編も、肩が凝らずに軽く読めるので、文字好きな人にとっては疲れたときに癒やされる清涼剤としてお勧めです。
★★☆
◇著者別読書感想(山本一力)
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ダブル・イニシャル (角川文庫) 新津きよみ
2012年に刊行された書き下ろしの文庫です。この著者の作品を読むのは初めてですが、Amazonのレビューではこの作品は散々で、選択を誤ったかも。
タイトルの「ダブル・イニシャル」とは、1970年代から90年代にかけてアメリカカリフォルニア州で実際に起きた、パメラ・パーソンズ(イニシャルがPとP)など、姓と名のアルファベットが同じ女性ばかりを狙った連続殺人事件のことを指し、それと同様の事件が日本でも起きるところから物語が始まります。
結婚して安藤亜依里(あんどうあいり AA ああ)という、ダブルイニシャルで、さらにひらがなもぞろ目の氏名に変わった主人公の友人が何者かに殺される事件が起き、続けてやはり同じダブルイニシャルでぞろ目名の女性が次々と殺されていきます。
著者の作品にはホラー要素が含まれるイヤミス的なものが多いと知っていたので、これもそうなのかな?と思いましたが、連続猟奇殺人事件ではあるものの、ホラーとは言えないどちらかと言えば準主人公の刑事が主人公の女性と一緒に犯人を追いつめていくというもので、警察小説に近いかも。
でも私的には、最後の最後で、無理矢理にあり得ない感じでどんでん返しというスタイルをとる奇抜な作品より、ストレートなこういう作品のほうが安心して読めますので、嫌いではありません。
★★☆
◇著者別読書感想(新津きよみ)
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10月前半の読書 日本を創った12人、キャロリング、トワイライト・シャッフル、カフーを待ちわびて
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顔を忘れるフツーの人、瞬時に覚える一流の人「読顔術」で心を見抜く (中公新書ラクレ) 山口真美
2015年刊のこの新書の著者は中央大学文学部で心理学の教授です。タイトルに釣られて買いましたが、先に言っておくとこのタイトルはおそらく敏腕編集者?が付けたと思われる「釣りタイトル」です。
でも、だから面白くない、役に立たないということではなく、これから社会に出るから心持ちを知っておこうという人には良いのかも知れません。
私は10数年の児童、学生時代、その後の40数年間のビジネス時代において、ずっと人の顔がなかなか覚えられなく、名前が出てこなかったり、以前会っていても覚えていなかったりして、恥ずかしい思いを何度も経験します。
社会人になってからは、名刺を交換した後に、どういう人だったかを名刺にメモしたり、ノートに特徴を書いたりして覚えようと努力してみたこともありますが、どれも成功しませんでした。
1回だけ会ったのを忘れてしまったという程度ならともかく、3~4回は会っているのに、次に会うとわからず「初めまして、、」というようなことも何度もありました。
同じ服装で会ってもわからないのに、まして、リゾート地で、私服を着ているビジネス上で数回話ししたことがある知り合いと偶然出会った時には、相手に目の前で挨拶されてもさっぱり誰かわからず、あらためて自己紹介されてえらく恥ずかしい思いをしました。
そういう事情からこのタイトルに惹かれたわけですが、そうしたビジネス等で相手の顔を覚えるテクニックとかを指南してくれる内容ではなく、学者先生らしく、人が顔を覚えていく理屈というか原理や事情などが主で、今さらそんなことを知っても関係ないやって感じです。赤ちゃんが母親の顔を真っ先に覚える理屈を知っても役には立ちません。
それよりもビジネス界から引退すると、一気に人と会う行為が激減していきます。
そうすると刺激が不足して、おそらく今まで以上に人の顔を覚える機能も衰えていくのだろうなぁって不安に思いますが、そうした時の鍛え方も「街に出て多くの人の顔を見る」以外にはなさそうで、これといった便利な方法とかはなさそうです。
★☆☆
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緑衣の女 (創元推理文庫) アーナルデュル・インドリダソン
著者は日本人にはあまり馴染みのないアイルランド在住の作家さんで、昨年「湿地」を読んでこりゃ凄い!とファンになりました。
2019年に読んだベスト書籍(海外小説部門大賞-「湿地」)
2019年6月後半の読書と感想、書評(湿地)
今回の「緑衣の女」は、「エーレンデュル捜査官シリーズ」の4作目(翻訳版が出版されているものは「湿地」に次ぎ2作目)の作品です。
こうしたシリーズものの主人公捜査官はある意味スーパーマン的な働きや才能があることが多いですけど、このシリーズのエーレンデュル捜査官は、あまり目立つことはなく、実直な雰囲気でコツコツ調べ回る、地味な刑事コロンボの警部のような雰囲気があります。ただラテン系のコロンボ警部とは違って、どちらかと言えば無口で暗め、よく言えばクールな印象です。
「湿地」と同様、アイスランドの気候の特徴なのでしょうか、なにか湿った陰湿な感じがするストーリー展開で、新たに新興住宅開発地でかなり古い人間の骨が見つかり、その骨は誰なのか?どうやってそこに埋まった(埋められた)のか?を調べて行くのがこの小説のテーマです。
特に、同時に進行していく、第二次世界大戦中のある家庭の出来事で、読むに堪えないDVが繰り返され、そこまでしつこく書くか?と思えるほど。
結果は、関係者の証言であっけなく判明しますが、なにかわざわざ?捜査が遠回りばかりをして、効率的な仕事をしたとは言えません。小説だから仕方ないのですけど。
「湿地」は初めてのアイスランドを舞台にした小説で、新鮮さがありましたが、今回はその柳の下のドジョウ的で、感動も5割引です。
しかし60年以上前の人骨を考古学者にまかせたばかりに遅々として捜査が進まなかったり、主人公のグレた娘が、死産で重篤な状態で見つかるなど、なかなか波瀾万丈の展開で退屈はせず面白く読めました。
★★☆
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微笑む人 (実業之日本社文庫) 貫井徳郎
2012年に単行本、2015年に文庫化された一見ノンフィクションのようなフィクションで、凝った作りになっています。
内容はまったく知らずに読み始めましたが、「私=作家」が事件について語っていくとスタイルなので、数ページまではトルーマン・カポーティの「冷血」のように奇怪な事件を追いかけたノンフィクションなのか?って思ってしまいました。
でも調べてみてももちろんそんな事件は実在せず、ノンフィクションを装った?小説だと知りました。
この小説を原作として今年2020年3月には、松坂桃李や尾野真千子などの出演でテレビドラマ化もされています。
ミステリー小説では割と珍しいですが、先に事件の概要や犯人はわかっていて、最難関大学を出て都市銀行に入ったエリート男性が、どうして些細な理由で妻子を殺めてしまうという不可解な事件を起こしたのか?というのを作家の私が調べて行くというストーリーです。
フィクションですが、さもありなんと思える内容で、結末はちょっと不可解でスッキリしないところが賛否両論あるでしょうけど、あとは読んだ人がどう結論づけるかってことなのでしょう。
コミカルなものから、リアリティのあるものまで、担当範囲が広い多作な作家さんで、多くは読んでいませんが、外れは少ないかなという印象で、この著者の小説なら安心して買ってこれます。
★★☆
◇著者別読書感想(貫井徳郎)
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陰翳礼讃 (中公文庫) 谷崎潤一郎
難しい旧漢字のタイトルは「いんえいらいさん」と読みます。今の漢字で書くと陰影礼賛となります。
1933年から雑誌に連載され、1939年に単行本として発刊された随筆(エッセイ)です。今回読んだ文庫は1975年初版、2008年改版の中央公論新社版です。
実はこの本は、2015年2月に購入したまま、5年半も塩漬けにしていました。特に理由はないのですが、タイトルをみただけではやや重々しい感じがしていました。
しかしNHKBSプレミアムの「100分de名著」という番組で、これが紹介されていて、「意外に面白そう」と読む気になったわけです。
著者の作品は、10代の頃に代表作「春琴抄」と「細雪」を読んだ記憶がありますが、本は親のものだったのか、私の蔵書の中にはありません。
このエッセイ集には、「陰翳礼讃」「懶惰(懶は正しくはりっしんべんに頼)」「恋愛及び色情」「客ぎらい」「旅のいろいろ」「厠のいろいろ」の6つのテーマ別に書かれています。
「陰翳礼讃」は世界的建築家の安藤忠雄氏が絶賛していて、若手の建築家にはぜひ読んで欲しいと言っていましたが、その核心は西洋と東洋で建築様式が違うのは、光の取り入れ方や照明の明るさの違いからくるもので、東洋では光と影をうまく使い分ける手法が基本にあるということです。
和風建築の仏間とか、床の間とか廊下、障子、厠(トイレ)などはすべて薄暗い中で使われることを前提とし最適化されているもので、それを、太陽光を目一杯取り込み、また明るい照明灯を並べてやたら明るくする西洋式とのマッチングは最悪だというようなことが経験と実感で書かれています。
和食についても、その器やお膳には暗めの色の漆塗りなど漆器を使い、西洋風の白一色ということがありません。
要は薄暗い灯りの中で一番美味しそうに見せる設定が千数百年の歴史を経て完成されていて、それを明るい食卓で食べるのは本来の和食の楽しみ方を逸していると。
確かに古くからあるお寺や古民家の中って薄暗いのが当たり前で、そうした中で、人々は何千年と生活をしてきたわけで、簡易で明るい照明が、家庭に普及したのは、せいぜい100年前ぐらいからです。
この本が書かれたのはおよそ今から90年前で、そうした明るい電灯があちこちで普及してきて、従来の陰影を大事にし日本独自に発展、進化してきた生活文化を憂う名文だと思います。
私も子供の頃、夏休みに田舎にあった親の旧家(農家)へ行くと、部屋は大きく広いのに、電灯は最小限で、部屋の中はいつも薄暗く、手元に灯りが必要な時は、行灯に模した小型の電灯が置いてあったりしたことを思い出します。
その他のエッセイでは同世代作家の芥川龍之介(谷崎が6歳下)との交流など、面白く読めました。
しかし、当時はまだなかった筆ペンがいずれできるだろうという予言や、中国では当時一般的に、掃除をするときに雑巾とふきんの区別がなく、便器を拭いた布でそのまま食器も拭いたりすることを指摘していましたが、少し前に中国の高級ホテルで、その模様(便器を拭いた雑巾でコップをぬぐう)が動画で紹介(スクープ?)されていて、大きな話題となっていました。
この本を読んで、「そっか、あれは間違いが起きたのではなく、そういう文化だったのか」と目からうろこで、そうした観察力が凄いな~と思った次第です。
★★★
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マリー・アントワネット (角川文庫)(上)(下) シュテファン・ツヴァイク
著者は19世紀末から20世紀前半に活躍したオーストリア出身の作家で、伝記文学が多い作家さんで有名な方です。
この著書は1932年に英語版が出版されました。1932年というと日本では昭和7年で、5.15事件が起き犬養毅首相が暗殺された年です。
マリー・アントワネットは1793年に死刑が執行されたので、それから139年後の出来事を調べ尽くして書かれたものです。100年以上前のことを調べるってさぞかし大変なことでしょうね。
日本語翻訳版は、1980年に岩波文庫で出版されましたが、その後いくつかの出版社で刊行されています。今回買ったのは2007年版の角川文庫版です。
この伝記を元にして作られたのが、かの有名な池田理代子作の漫画「ベルサイユのばら」で、主人公のふたり(オスカルとアンドレ)は架空の存在ですが、背景はまさにこのマリー・アントワネットの時代です。
この「マリー・アントワネット」という名前を知らない人はいないと思いますが、その伝記を読んでみようと思ったきっかけはAimer(エメ)が歌う「marie」という曲を聴いてからです。
この歌は、昨年2019年から今年1月まで国立西洋美術館でおこなわれた「日本・オーストリア友好150周年 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」のイメージソングで、マリー・アントワネットを情緒豊かに歌い上げた寂しく悲しい歌です。
一般的に知られているマリー・アントワネットは「ルイ16世の王妃」「アントワネットの代名詞でもあるヴェルサイユ宮殿は世界一豪華絢爛」「贅沢三昧を謳歌しフランス王室をつぶした」「フランス自由革命でギロチン処刑された」ぐらいです。
上記の歌の歌詞にも少し出てきますが、ちょっと調べると「14歳の時、オーストリアのハプスブルク家から政略結婚でフランス王室へ送り込まれた」「フランス語がわからないままいきなり王妃になり、様々な嫌がらせを受け苦労する」などなど。
しかしこの伝記を読むとそれほど単純なものではなく、母親も手を焼く自己中心的で自由奔放なオーストリア娘が、政略結婚で元々敵対していた隣国(フランス)の皇太子妃として送り込まれ、その後王妃となってからも、遊ぶことにしか興味がない自堕落な生活を送り、そうしたことが徐々に政治と国民の不満のはけ口へと深みにはまっていく姿が、自業自得というよりかは哀れに思えてきます。
単に興味本位ではなく、研究者として残された証拠(手紙など)を元にして、著者の推測もくわえつつ、文章は文学的な表現が散りばめられまさに文学です。たいへん長い作品で、しかも揶揄が多くて読みにくいところもありますが、ジックリと読む価値は十分ありました。
★★★
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カイシャデイズ (文春文庫) 山本幸久
2008年に単行本、2011年に文庫化された連作短編の小説です。
実は情けないことに、8年前2012年に一度読んでいましたが、全然気がつかず(笑)最後まで読みきりました。
読後にデータに登録しようとしたところ、すでに記録があることに気がつきました。
調べると感想もその時に書いています。
2012年7月後半の読書(カイシャデイズ)
アハハハ、とうとう認知症が入ってきたのか、老人性記憶障害かも。困ったものです。いやマジで。
それにしても、世知辛い今の世の中で、悪者がいないし、死者も出てこない、気軽に読める面白いよくできた小説です。これなら何度読んでもいいかな。ってフォローにはなっていませんが。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
君が代は千代に八千代に (文春文庫) 髙橋源一郎
2002年に初出で、2005年に文庫化された短編小説集です。著者の小説を読むのは初めてで、こういう小説を書く人だとはちょっと意外というか想定外でした。
Mama told me/Papa I love you/Mother Father Brother Sister/殺しのライセンス/素数/SF/ヨウコ/チェンジ/チェンジ2/人生/君が代は千代に八千代に/愛と結婚の幻想/鬼畜の13編の短編で、それぞれのタイトル見てもわかるように、もうなにがなにやら~です。
皮肉っぽくまたコミカル路線ではあるものの、近親相姦や、小児性愛者、麻薬中毒、タング・スプリッターなどボディモディフィケーションやらもうなんでもありのカオス全開の世界観で、読んでいて気持ち悪くなる人もいるんじゃないかと勝手に想像しました。
文芸雑誌文學界で連載された短編と言うことですが、文藝春秋もまた思い切ったことをって気もします。
個別の感想は、ちょっと混乱しているというか、よく理解出来ない、面倒くさいというのが真相で、書けないことをお詫びします。
よく「文庫版あとがき」で著者が書くことはありますが、巻末の解説を著者自らが書くというのも面白く、素数や、タング・スプリッターについて書かれた経緯などがわかりそういうのもありだと思いました。
ちなみにこの小説の後に出版されたと解説で書いている「素数」を扱ったベストセラーというのは小川洋子著「博士の愛した数式」(2003年刊)かな?
また同様に「タング・スプリッター(スプリット・タン)」は言うまでもなく芥川賞を受賞した金原ひとみ著「蛇にピアス」(2004年刊)でしょう。
★☆☆
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