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蛇行する月 (双葉文庫) 桜木紫乃

2013年に単行本、2016年に文庫化された連作短編小説です。自身の出身地でもある釧路近くが舞台で、思うようにいかない仕事や、妻子あるずっと年上の男性と駆け落ちした高校時代の同級生の話しとか、創造が書いたことが主体でしょうけど、現実的にどこにでもありそうな話しが中心です。

過去には「ラブレス」や、直木賞を受賞した「ホテルローヤル」を読みましたが、舞台が同じと言うこともあり、なんとなく続編や番外編を読んでいるような錯覚にもなります。

最近の作品は知りませんが、人気作家となった今では、これからもっと小説の舞台や登場人物の幅を拡げていく必要がありそうです。

それとも、あえてこの北海道、しかも釧路というシチュエーションにこだわっていくのかな?

こだわって書くのも一つの持ち味で、悪くはないと思いますが、名前で売れると踏んだ出版社からはやいのやいのと言われているでしょうね。「旅費を出すから海外に取材旅行へ行きましょう!」とか。

この著者が書く労働は、常に暗く厳しく、まるで蟹工船のような過酷なもので、そうした中でもがき働く人物をうまく描写していくというのがお得意です。

よほど、労働においては今までろくなことがなく、恨みを持っているなということが考えられますが、それは売れっ子作家になってからは改善できたのか気にかかるところです。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

みっともない老い方: 60歳からの「生き直し」のすすめ (PHP新書) 川北 義則

2011年刊の新書で、この今年83歳でますます意気軒昂?な著者の著書には「○○の品格」とか「××歳からの」的な、年齢や性格に応じた先輩からの指南書のような本が多い感じですね。それがまた売れるのでしょう。

この数多くの著書がある著者の本の中では、過去に「遊びの品格」と「男の品格」を読んでいます。どちらもそこそこ面白かったので、お勧めです。

こちらのテーマもタイトル通り、主としてリタイヤ後の主として男性高齢者に向けた常識的な生き方指南書という感じです。

なかなか60歳で即引退とはいかないのが実情ですが、少しでも老後の生活を豊かにするため、少なくてもいいから稼ぐ方法を考えようとか、妻との関係を今までのような任せっきりではなく、大きく考え方を改め、料理を学んでおくとか、地域行事への参加、時にはひとり旅をしたりと、いくつか実践すべきことが書かれています。

そうは言っても、退職金など当てに出来ない多くの人は、65歳からしか年金がもらえなくなった制度と合わせると、60歳から5年間は、少しでも稼げる方法で働くしかないわけで、どちらかと言えば、そちらの方法指南のほうが大事じゃないかなと思ってしまいます。

筆者のように40代で独立し、うまく事業を経営していれば60歳という定年もなく、いつまでも働けるでしょうけど、この本の読者のほとんどはそうではないだけに、苦しんでいるわけです。

ま、会社に安住していたのは自業自得だって言われてしまえばその通りですが、多少でもバブルを経験した人達にとって、夢よもう一度!とか、あのときは良かったとか、なかなかいいときの思いが捨てられず、気持ちを切り替えられないというのが本当のところでしょう。

なので、定年を迎えて、やっと会社の束縛から離れられる!と一瞬喜んでも、次に待っているのは、不安な老後と、年金受給までどうやってしのぐか?という、いつまでも逃れようのないジレンマとの戦いだってことがこのお気楽な本を読んでの感想です。

★★☆

著者別読書感想(川北義則)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

天空の蜂 (講談社文庫) 東野圭吾

1995年に単行本、1998年に文庫化された書き下ろし長編小説です。2015年には堤幸彦監督、江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵などの出演で映画化されています。

今や押しも押されぬ不動の人気作家の著者ですが、この小説が出た当時はデビュー10年に満たない若手作家のひとりでした。

もっともこの頃から多くの意欲的な作品を次々出して、人気作家の階段を上り始めていましたが。

主人公は、三菱重工を思わせる原子力プラントや自衛隊ヘリコプターなどを複合的に製造しているメーカー技術者で、新たに開発した自衛隊用の大型ヘリのテスト飛行日に格納庫から盗み出されてしまいます。

無線操縦と、予め仕込まれた自動操縦機能で、無人の大型ヘリは、名古屋の工場から敦賀市にある新しい原発の上空へ向かい、その真上でホバリングを始めます。

同時に盗み出した犯人から、「爆薬を搭載したヘリを原発に墜落させたくないのなら、日本中の原発を今すぐに停めて破壊せよ」という脅迫が届けられます。

しかし、無人のはずのヘリに試験飛行を見に来ていた主人公の息子が乗っていることがわかり、犯人との交渉で自衛隊員が飛行中のヘリから子供を救出することになります。

というようなアクション場面が満載の優れたエンタテインメントで、小説発表後20年も経った後ですが、映像化することでその魅力がさらに伝わりやすく、映画化されたのも頷けます。

原発事故の話しや原発の仕組みなどが節々に登場しますが、この小説から16年後には、テロではないものの、本当に原発が水素爆発し、原子炉がメルトダウンするという大きな悲劇に見舞われることになります。

まるで、その時を想像していたかのような深い内容で、おそらく東北震災後に映画化されたのも、そうした原発事故を受けて、単なるエンタメだけでは終わらず、あらためてこの作品が持っている奥深さを表面化したいと考えたのではないかなと思われます。

いろいろと無理のある設定もありましたが、そうしたことを吹き飛ばすような深いリアリティのあるアクション小説と言えるでしょう。

★★★

著者別読書感想(東野圭吾)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

夏美のホタル (角川文庫) 森沢 明夫

高倉健最後の主演の映画としても有名な「あなたへ」の原作小説など数多くの小説を書かれている作家さんの2010年単行本、2014年文庫版発刊された青春小説です。

名前はよく知っていただけに、意外でしたがこの著者の作品を読むのは初めてです。

2016年には廣木隆一監督、有村架純主演で映画も制作されていました。どうも設定がだいぶんと小説と映画では違うようですけど。

プロのカメラマンを目指して芸術大学に通う男性と、その恋人で幼稚園の先生をしている主人公の女性が主人公で、女性の運転するバイクでツーリング中に立ち寄った田舎の酒屋で、年老いた親子と出会います。

その親子や近くに住むまた強面の仏師との交流もあり、夏休みの間、親子の家の離れを借りて住むことになります。

コンクールに出すための写真を撮影したり、川遊びを教えてもらったりと、まるでそこの家の子供になったようなひと夏の経験を過ごします。

そして、やがて夏が終わり、その家から元へ帰りますが、半身が不自由な高齢の子供が先に逝き、そしてその子と一緒に暮らしてきた親の老婆も亡くなります。

ただそれだけの物語ですが、不思議な人と人のつながりや、「生まれてきてありがとう」という親の気持ちなど、いろいろと考えさせられる内容となっています。

短い特に大きな展開も波乱もない地味な小説ですが、著者の思いが詰まった良い小説でした。

★★★

【関連リンク】
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シャンタラム〈上・中・下〉 (新潮文庫) グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ

2011年に出版された、この破天荒な内容の小説は、著者の自伝的な内容と言うことをあとで知って驚きました。

著者のプロフィールには、
1952年、豪メルボルン生れ。十代から無政府主義運動に身を投じるも、家庭の破綻を機にヘロイン中毒に。1977年、カネ欲しさに武装強盗を働き、服役中の1980年に重警備刑務所から脱走。1982年、ボンベイに渡り、スラム住民のために無資格・無料診療所を開設。その後、ボンベイ・マフィアと行動を共にし、アフガン・ゲリラにも従軍。タレント事務所設立、ロックバンド結成、旅行代理店経営、薬物密輸の後に再逮捕され、残された刑期を務め上げる。

とありますが、「タレント事務所設立」より前のプロフィール通りに話が展開していきます。

話しはオーストラリアで強盗事件を起こし刑務所に収監されていた主人公が、脱獄して偽のパスポートを使いボンベイ(1995年からムンバイと変更)に到着してからの話しです。

その刑務所から脱獄した場面も、小説のかなり後になってから、回想というか、自身の身の上を語るときに改めて出てきます。

小説ではインド・ボンベイでの話しがほとんどで、そこを拠点として近隣諸国へ出かけるときもありますが、インド人の宗教観や住んでいる人種、複雑な種族、言語、交通、地方など、目に浮かぶような叙情的な表現があちこちに見られます。

そして賄賂やスラムの中やインドの刑務所の中での激しい拷問のことまで、1980年代のインドの裏の実態を(やや大げさに)知るには役立つかもしれません。

登場人物は、インド人ばかりでなく、インドに住み着いた欧米人や中東、アフリカ系民族など多彩な顔ぶれが登場し、多くの名前を覚えるのに苦労しました。

Amazonの書評では、☆5以外の、☆4から☆1までがほぼ同数という、珍しく賛否が分かれるもので、私も読み進めていく中で、何度か、この冗長で回りくどい独白表現に退屈しました。とにかく無駄と思えるどうでもよい話しがダラダラと続き、あくびが止まらない。

その点はプロの書き手ではないのだから仕方ないかと思いましたが、そうであるならば、せめてプロの編集者がなんとかすべきかなとも思ったり。

上・中・下の3巻合わせて約1800ページを超える長編で、有能で合理的な編集者なら、内容やストーリーを一切変えることなく、文章は半分以下に納めることができたのではないかなと思います(いかにも自信過剰気味の著者がそれを許さないのかもしれませんが)。

Amazonのカスタマーレビューで☆5を付けた中に「一気に読ませる傑作」と書かれていましたが、それを書いた人は、おそらく10ページも読んでいないのだろうなってことがすぐにわかります。

とにかく、覚えにくい人物名が次々と出てきて、聞き慣れないインドの風習や地理、ヒンディー語やマラーティー語での言い回し、中東イスラム圏の言葉や風習、マリファナやハッシシなどの麻薬類などがわんさかと登場してきますので、つかえつかえで読むことになり、登場人物の名前とどういう素性かをいちいち先頭ページで確認し、退屈な場面ではあくびをかみ殺しながらページを繰ることになり、一気にスラスラ読めることはまずありません。

もっとも中巻ぐらいからは慣れてくるのか、それとも、インドを出て戦火が続くアフガニスタンへ武装して出掛けるなど、場面が大きく場が動くためなのかわかりませんが、進展が早くなり、読むスピードも自然と上がってきます。こうこなくっちゃね。

昔はニューヨークが人種のるつぼと言われていましたが、この小説を読んでいると、さしずめ今ではその表現が最適なのはインドなのかも?と思わせられますが、それは欧米人(著者=主人公はオセアニア人ですが)から見たインドの姿で、付き合う相手にバイアスが相当にかかっているには違いないでしょう。

もちろん21世紀のインドは、大きく変わっていて、小説で出てきたような街も風習もかなり消えかかっていることでしょうけど、本質的なところでは当時のまま、特に西洋人から見たインドはそれほど変わっていないように見えるかもですね。

★☆☆

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老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書) 野澤千絵

2016年刊のこの新書は、ゼネコンにも勤務経験がある東洋大学理工学部教授が書いたタイトル通り、住宅の老朽化と、それと並行して起きる街の崩壊を警鐘した本です。

要点としては、人口が減り、空き家が増えてきているのに、新築の住宅も増え続け、やがてはこれらもスラム化、老朽化することで、大変なことが起きますよ~という話しです。

但し、本書に書かれている部分で、ちょっと誤魔化してありましたが、世帯数自体は本書が書かれた2016年以降の2017年時点でもまだ増え続けている(1世帯の人数が減っている)ので、世帯数が増えれば住宅数が増えても問題ないのでは?と逆に質問したくなりました。

もう一つ、農家が相続税対策のために誰も入居したがらないような不便な場所に節税マンションを建設しまくっているというような話しですが、入居者がいようがいまいが、それは大きなお世話であって、要は彼らは節税のために建てているだけのことで、賃貸経営には興味はないでしょう。

入居者が期待できない住宅のために、水道や電気・ガスなどの公共インフラを整備しなければならなくなるのは、行政や公益事業を行う民間企業の責任で、行政がそれをおこないたくないなら建築許可を出さなければ良いだけの話しで、許可を出した以上は整備する義務が生じます。

もし節税できる方法がアパート建設ではなく、駐車場でも養殖池でも野菜工場でも、太陽光発電でも同じであれば、農家はそちらを選ぶ人も出てくるのではないかな。インフラ整備が嫌ならそういう方法、手段だってあります。

現在湾岸エリアに次々と建っていく超高層マンションに対しては、今でも問題化している階数格差問題の他、中規模マンションなどでもよく問題となる修繕積立金の未収問題や、大規模補修工事や建て替え時の所有権者の同意の難しさに触れています。

確かに購入当時はバブリーであっても、10年後20年後も所有者がバブリーであり続けるとは限りませんし、所有者=住人というケースもそう多くはなさそうで、そうした時に所有者に応分の負担や義務を頼んでも素直に応じてくれるとはとても思えません。外国人(特に中国人)が投資目的で購入していたりすればなおさらでしょう。

この本を読むと、とにかく超高層マンションなど買えなくなることは必至です。もっとも買える身分でもありませんが。

行政の責任として、緩い規制のために起きる焼き畑的住宅建設というようなことが何度も繰り返して書かれていますが、日本人の特質として、古くからある郊外の住宅地の中古物件には魅力を感じず、例え不便な場所でも新築物件に惹かれるというのがあります。

ましてや、ヨーロッパのように石造りで歴史ある住宅が魅力というような感性や価値観はなく、安普請で歩くたびにギシギシ音がする中古住宅に住みたいと思う新婚さんはまずいません。

利害が多い政策よりも、文化や人の価値観を変えていかなければ、今後も古い住宅地は空き家になってそのまま残り、新しい場所に次々と新しい住宅地が作られ続けていくのだろうなと読んでいて思いました。

★★☆

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昨夜のカレー、明日のパン (河出文庫) 木皿 泉

著者は、主としてテレビドラマ等の脚本家の和泉務と妻鹿年季子夫婦の共作ペンネームというちょっとユニークな形式です。この小説は連作短編集で、著者の小説デビュー作品です。

またこの作品を原作としてNHK BSでドラマ化されています。主人公に仲里依紗、その他に鹿賀丈史、星野源、吉田羊など人気俳優が目白押しで楽しそうなドラマです。

19歳で結婚し、その3年後には夫を病気で亡くした主人公は、その夫の父親(義父)と二人で夫の実家に住み続けています。

その後会社の同僚から、求婚されますが、どうにも煮え切らず、ズルズルと居心地が良い義父の家に収まっています。

その実家の隣人の元航空会社のCAをやっていた女性や、義父が始めた山登りを教えてくれる主人公の知り合いの山ガール、義父の嫁になる女性など、主人公と様々な縁がある人たちが1話ごとに登場してきて心温まる?話しが淡々と続きます。

その他にも、顔面神経痛で笑ってはいけないときに突然笑ってしまうことで辞めた元産婦人科医とか、事故で正座が出来ずに実家の寺を継ぐのを辞めた友人とか、笑うことが出来ないCAとか、急に涙があふれると身近な人が亡くなるとか、「ま、小説ですから」というノリで、そういう人がいれば楽しいだろうなと思うだけで、リアリティはなく、強大な敵の弱点を知りたいときに、身近に天才ハッカーが現れ、すべてを調べてくれるみたいな、ご都合主義小説の一つかなぁって思うのでした。

★★☆

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決算書は「直感」で9割読める とことん手軽な会計入門 (PHPビジネス新書) 梅田泰宏

2012年に刊行された新書です。著者は公認会計士。税理士で、監査法人中央会計事務所(現・みすず監査法人)から独立して税理士法人キャッスルロック・パートナーズを設立し、その代表という絵に描いたようなエリートビジネスマン。

経理や財務の話しとなると、一般的な文系ビジネスマンにとっては頭の痛い話しで、大学で簿記なども一応学んだとはいえ私も同様で、こうした本は読めば読むほど頭の中が混乱してくるという気もします。

この新書では会社の中では当たり前に作られている基本的な「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」について、経理に詳しくない人でも直感で見て理解することができる方法を教えてくれます。

数字を直感的にって言われても、真面目な人ほどそう大雑把に言われてもなぁって思うことでしょう。

しかし、現に経理担当者でもなければ、数字なんてものは一種の計器みたいなもので、それを詳細なデジタル計器ではなく、アナログ計器で大雑把に把握しておくという考え方には賛同できます。

それでもちゃんとこの本を理解し読み解くには、バランスシート、貸方・借方、キャッシュフロー、自己資本、純資産、営業外損益、税引き前利益等、経理用語は遠慮なくビシバシと出てきますので、最低限の経理知識は必要でしょう。

その他にも、株の投資などで役立ちそうな経営分析や、今後主流となっていく国際会計基準(IFRS)の計算書などの読み方も解説されています。

★★☆

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枯木灘 (河出文庫) 中上健次

和歌山県新宮市生まれの著者には和歌山、特にこの小説の舞台となった紀伊半島の先端近く枯木灘周辺を舞台にしたものが多くあります。

この「枯木灘」は1977年に出版されましたが、その前1976年に芥川賞を受賞した短編集「」の続編となり、自身の複雑な出生から家族関係を下敷きにした自伝的な要素がかなり含まれています。

さらに1983年刊の「地の果て 至上の時」は「枯木灘」の続編で、「」と併せて三部作と言われています。

主人公は暴力事件で刑務所に行くことになる父親と、前の夫と死別したあと内縁関係となっていた母親から生まれ、その後母親がまた別の男と再婚し、その家で認知してもらって名前も変わるという複雑な人間関係です。

その義理の父親が始め、息子が後を継いでいる土方の現場監督をしながら日々暮らしています。

小説では路地と書かれていますが、主人公が暮らすのは被差別部落地域の中で、その中で、肉体を酷使する土方の仕事が自分に合っていると思っています。

とにかく、血族がいっぱいいて、複雑に絡み合っていて、その中には近親相姦的なものもありと、読んでいてもその人間関係図がすぐにはわからず苦労します。

と思って調べていたら、文庫の巻末に、主人公を中心とする相関図があり「早く言ってよ~」って感じです。

と言っても、この相関図を見ても、容易に理解することができず、複雑怪奇で小説の中で関係性の説明を読まないと、さっぱりわからないだろうなと思います。

それにしてもひとつの小説でこれぐらい同じことが何度も繰り返して書かれたものって他を知りません。

実際に著者の子供の頃に起きたことですが、主人公の父親違いの兄が桃の節句に自殺したことや、姉が気が狂ったことなど、それぞれ10数回も繰り返して書かれています。丁寧なのか、強調したいのか、それともちょっと読者を馬鹿にしているのか、先に書いたことを忘れているのか、よくわかりません。

よく新聞連載小説だと、途中から読む人のために、同じことを繰り返して書かれることもあります。でもその場合は、書籍として出版する際に、手を入れることも多いでしょう。

この小説は新聞連載ではなく、修正しようと思えばいくらでも機会はあったでしょうに、それほど大事とも思えないことが何度も繰り返されるので、文章の質についてちょっと疑いたくもなります。

主人公を中心として、人間の重き昏い性というか、血族からは簡単に抜け出せない当時の村社会など、貧困というのではないですが、終戦後の昭和の地方の姿がよく現れています。

先日読んだ桜木紫乃著の「ラブレス」でも戦後の地方で繰り広げられる庶民の生きるための戦いが描かれてましたが、「ラブレス」が「女の戦い」に対し、こちらは血縁の憎悪を絡めた「男の戦い」ということになるでしょうか。

まだ短編集の「」も続編の「地の果て 至上の時」も読んでいないので、近いうちに買ってこようと思っています。

★★☆

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果てしなき渇き (宝島社文庫) 深町秋生

読み進めているうちにあれ?と気がつきましたが、これまた過去に一度読んだ小説でした。2007年に文庫化されてすぐそのタイトルに惹かれて購入し読んでいました。11年前のことですね、忘れていても仕方ないかな。

ダブって購入してしまったのは、ここ1~2ヶ月の間に、「ロマンス」柳広司著、「月の扉」石持浅海著とこれで3冊目となります。いよいよ老人惚けと言われても仕方ありません。

この小説を原作として2014年に「渇き。」という題名で映画が作られています。監督が中島哲也、出演は役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、オダギリジョーなどです。残念ながら見ていません。

主人公は、妻の不倫相手に重傷を負わせ刑事を退職、妻とも別れ、現在は通報があれば駆けつける警備員をしています。

ある夜、コンビニから緊急通報があり、駆けつけると、店員や客3名が惨殺されている現場に遭遇し、その凄惨な現場を目撃することになります。この事件があとで少し絡んできます。

その後、離婚した妻から「娘が行方不明になった」と電話がかかってきます。

娘の部屋から大量の覚醒剤が見つかったことから、娘を信じたい親として警察には届けることを躊躇し、主人公が自ら調べて娘を探すという展開です。

行方不明となった原因を調べると、学校でのいじめ問題、ヤクザ組織とつながる不良グループ、麻薬の密売、売春組織と、話しは徐々に大きくなり、首を突っ込む主人公はあちこちでボコボコにされ、また聞き込み先で死体を発見することになり、警察からもにらまれます。

それでもなんとか、手がかりを見つけ、なぜ娘がこうした事件や組織に関わってきたのかがわかっていきます。

なかなか手の込んだミステリー仕立てのハードボイルド作品というかノワール作品となっていますが、暴力性、凶悪度が強く、後味というか、読み進めているあいだ中、どうにも理解しがたい気持ち悪さがついて回ります。いつも寝る前に読んでいるせいで悪夢も見ました。

元刑事とはいえ、主人公も清く正しくってわけではなく、逆に相当なワルで、家庭には向かない大きな屈折と暴力性を内に抱え、こうした小説で主人公に据えるには珍しいキャラクターかなと思います。

著者はこの作品がメジャーデビュー作ということで、それまではサラリーマンをしながら、コツコツと短編小説や共著、ライターの仕事をこなしていたようです。

そしてこのデビュー作を宝島社などが主催する「このミステリーがすごい大賞」に応募、見事受賞します。

いきなりこのボリュームと、内容の濃さには驚くばかりですが、いい年したオッサンが読むにはどうしてもまだ荒削りなところばかりが目についてしまい、個人的な評価としては高くありません。

それでも、その後の作品をいくつか読んでみたいなとは思っています。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

氷菓 (角川文庫) 米澤穂信

2001年に出版、2006年に文庫化されたライトノベル「古典部シリーズ」の第1作目となり、著者のメジャーデビュー作品です。

この「古典部シリーズ」は、「愚者のエンドロール」(2002年)、「クドリャフカの順番」(2005年)、「遠まわりする雛」(2007年)、「ふたりの距離の概算」(2010年)、「いまさら翼といわれても」(2016年)と、6作品がすでに出版されていて、人気シリーズとなっているようです。

またこの作品を原作として2012年にテレビアニメ、2017年には実写映画が公開されています。

実写映画の監督は安里麻里、出演者は山﨑賢人、広瀬アリスなど。もちろん見てません。

こうした青春学園もの小説は苦手というか、もう還暦を迎えたおっさんが読んでも感情移入もできず、つい敬遠しがちなのですが、読書感想や書評では好評ということで、読んでみました。

形式的には連作短編のようなスタイルをとり、高校に入学した主人公が姉の命令で潰れかかっている古典部に入部し、そこで出会った豪農の令嬢、幼なじみの親友などとともに、不可解な謎を次々と解いていくというものです。

シンプルでありながら、短編という読みやすさから、普段からあまり読書に馴染がない高校生でもちょうどよいのではないでしょうか。

★★☆

著者別読書感想(米澤穂信)

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蛇にピアス (集英社文庫) 金原ひとみ

2004年に単行本、2006年に文庫本が出版された著者のデビュー作です。そして2004年の芥川賞に綿矢りさ氏と共に受賞し、一躍有名になった作品です。

その後、本作を原作として2008年に蜷川幸雄監督、吉高由里子、高良健吾などの出演で映画化されています。

主人公は19歳の時々コンパニオンのアルバイトをしている自由奔放な女性で、同じく若いフリーターの男性と同棲をしています。

その彼氏のスプリット・タン(蛇のように舌に二股の切れ目を入れる)に憧れて、真似してそれを実行しようとしたり、彼氏の紹介で知り合った入れ墨の彫り師に頼んで背中に麒麟(中国神話に現れる伝説上の霊獣)と竜の彫り物を入れたりと、かなり発展的で、かつ、入れ墨代代わりに彫り師には彼氏に内緒でSEXで払うという過激とも言える内容です。

タイトルの意味は、上記の蛇のようなスプリット・タンをするために、最初は舌に小さめのピアス用の穴をあけて、徐々にそれを拡げていき、最後にカットして下の先を二股にしてしまう方法のことを指していると思われます。

ま、一般庶民にとっては、スプリット・タンはもちろん、ファッションで入れる大きな入れ墨も縁遠いと思いますので、それを小説という架空の世界で想像して楽しむ分には良いんじゃないかと思います。

しかし、読んでいて肉体改造や、暴力的なシーンに気持ち悪くなってくることもあって、まっとうな人にとっては後味はよくないでしょう。

それにしても、「え?これで芥川賞がとれるんだ!」と思った売れない作家や、メジャーデビューしたいと思っているアマチュア作家がきっと大勢いるでしょう。

この作品が受賞したことで、もし世の中に影響を及ぼしたとすれば、それが最大の貢献だったかもしれません。

★☆☆

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フェルマーの最終定理 (新潮文庫) サイモン・シン

17世紀に数学者フェルマーが残した「3以上の自然数nについて、xn(xのn乗)+yn(yのn乗)=zn(zのn乗となる自然数の組(x,y,z)は存在しない」という定理について、フェルマーが「証明できるけど余白がないので書かない」とした証明を、360年後にやってのけた数学者アンドリュー・ワイルズのノンフィクションドラマです。

なにか難しそうで最初はためらわれましたが、多くの先駆者達のお勧め本に上がっていましたので、思い切って買ってきて読んでみました。

この文庫は2006年刊ですが、先の2000年に「フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで」という単行本が出ています。

数学者とはまったく縁がなくその論理思考は知りませんが、以前読んだ小川洋子著「博士の愛した数式」やその映画で、数学者のおかしな行動や思考については興味がありました。

こちらの著書では、ピタゴラスやアルキメデスなど小学校で習う天才数学者が歩んできた数論から始まり、世界的な数学者が次々と登場してきます。

その中でも17世紀に生まれ、裁判官をしながら数式解明に情熱を燃やし、ある数式の解は存在しないことを解明したが、余白がないので書かないと残していたフランスのピエール・ド・フェルマーについての話しが長く続きます。

その解明に向けてとにかく、約数、素数、完全数ぐらいまではともかく、無理数、過剰数、不足数、べき数、有理数、虚数、楕円方程式、モジュラー形式、4次元、5次元など次々と初めて聞くことばが出てきて混乱します。

しかし著者は素人にもわかるようにといちいち説明を入れてくれていますが、ベースにほとんど知識がない文系人間だけに、一度読んでも数ページ先に出てくると「あれ?なんだっけ?」って行ったり来たりすることになり、なかなか先へ進まないもどかしさがあります。

この300年以上解明されなかった最終定理には、「谷山-志村予想」と言われる整数論で、日本人数学者も関わっていることに驚きました。まったく普通の日本人には馴染みがないでしょうから。

こうした数論が、果たして現実の社会にどれだけ役立つのか?という疑問は一般の人と同様に持ち合わせていますが、それを言ったら、芸術家が作る作品や音楽、エンタテナーとしてのプロスポーツなどと同様、人類の能力を極限まで高めていくものという理解をしてもいいのではないかなと読んで思った次第です。

それにしても、普段ライトな小説慣れしていることもあってか、こうした難しいドキュメンタリー小説は肩が凝ってしまいます。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ロマンス (文春文庫) 柳広司

2011年に単行本、2013年に文庫化された昭和初期の華族社会にまつわるミステリー小説です。

実は、単行本が出てまもなく購入し、2012年に一度読んで、感想も書いています。

9月後半の読書 2012/10/3(水)「ロマンス」

ありゃりゃです。今回は文庫本を読み始めてすぐに、アレ?これ知っているぞと気がつきました。

少し前にダブって読んでいた石持浅海著「月の扉」は読み進めても気がつきませんでしたが、こちらは印象がまだ強く残っていました。

って、買うときに気がつけよ!ってことで、老化現象と思われても仕方ありません。

昭和初期の華族が幅をきかせていた時代に、両親を事故で亡くした異色の華族青年が主人公で、謎だらけの殺人事件に遭遇し、その謎を解き明かしていくという内容です。

太平洋戦争前の、陸軍、特高、共産党シンパ、華族など、一般庶民には関わりのない特殊な世界ですが、テンポ良く意外な結末で、読者を引きつけてくれます。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

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ヘヴン (講談社文庫) 川上未映子

2009年に発刊、2012年に文庫化された小説です。2008年に「乳と卵(らん)」で芥川賞を受賞されている作家さんですが、著者の作品を読むのは今回が初めてです。

主題は中学生のイジメ問題を中心にして物事の善悪を考えさせようとするほろ苦い内容です。

ただ、底が浅いというか、ステレオタイプというか、あまり深くは洞察せずに、著者が思ったまま感じたまま、サクッと書いたなって感じを受ける、お手軽携帯小説って感じがします。

こうした今現実に普通に起きているテーマを用いる場合、もう少し小説として考えさせられる内容にするとかできなかったのかな~と思わずにいられません。

それでは売れないからね、て言われてしまうとそうなのですけどね。

★☆☆

著者別読書感想(川上未映子)

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雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ) 城平京

著者の作品では2年前に「名探偵に薔薇を」を読んでいます。その時の私の評価はあまり高くありませんでしたが、、、

9月後半の読書と感想、書評(名探偵に薔薇を)2016/9/28(水)

こちらの作品もタイトルからして、若向けの携帯小説っぽいなぁ~と思いつつ、ネットの読者の評価は高かったので購入してみました。

2016年に文庫(書き下ろし?)で発刊されています。発刊は講談社タイガという珍しいレーベルで、なぜ講談社文庫ではないのか不明です。

内容は、相撲好きの両親に育てられた男子中学生が両親を事故で失い、田舎町で刑事をやっている叔父とその親(祖父)に引き取られ、転校してくるところから始まります。

その町では相撲が人気で、なんとカエルを神と崇め、相撲を奉納するというハチャメチャな展開。

主人公の少年は両親の影響もあり、小柄で不向きながらも相撲道場に10年も通い、それなりに相撲のことは知り尽くしています。

日本書紀によって「相撲」という言葉が初めて登場し、現在では土俵の上は女人禁制となっているものの、最初に記述された相撲は男性職人の手を狂わせるために仕組まれた女相撲だったとか、相撲の歴史や、様々な技など知らなかったことも散りばめられ、相撲ファンならずとも、気軽に読めるお手軽なファンタジー&ミステリーファンなら面白く読めるかも。

平安時代から鎌倉時代の作と言われる鳥獣戯画にもウサギを投げ飛ばすカエルの絵が描かれていましたが、カエルと相撲はなにか相性が良いのかも知れません。

★★☆

【関連リンク】
 5月後半の読書 心に雹の降りしきる、人のセックスを笑うな、人類資金VII、噂
 5月前半の読書 この国の冷たさの正体 一億総「自己責任」時代を生き抜く、月の扉、時計じかけのオレンジ、光媒の花
 4月後半の読書 夜明け前の死、わが心のジェニファー、ラブレス、できる人という幻想 4つの強迫観念を乗り越える

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1230
心に雹の降りしきる (双葉文庫) 香納諒一

2011年刊、2014年文庫刊のハードボイルドタッチの警察ミステリー小説です。この作家さんの本を読むのはこれが初めてです。

作家デビューは28年前の1990年で、現在55歳、ハードボイルド系の警察小説がお得意の分野と言うことです。

主人公は県警の刑事で、7年前に行方不明となった幼児の事件を担当しましたが未解決のままで、しかも金持ちの被害者家族から情報提供の懸賞金を奪う目的で、偽情報を使うなど、悪事にも手を染め、現在もそれを気に病んでいます。

行方不明の幼児が着ていた服と似た服がフリーマーケットで見つかったという父親からの通報で、それを見つけた探偵に会いますが、その後その探偵は「こんな偶然があるのか」という言葉を残して殺害されてしまいます。

その後、県知事の汚職や、暴力団組織の暗躍など多くの事件が起き、次々と関係者が殺されていき、途中で誰が誰だかよくわからなかったりしてややこしい限りです。

ハードボイルドタッチと言っても、時には懸賞金詐欺にも応じる弱い性格の刑事で、人間味があると言えばそういうことになります。

舞台は地方都市ですが、地方でこれだけ関連した殺人事件が次々起きれば、日本中を揺るがす大事件となりそうで、ちょっと違和感があります。

ネタバレになっちゃいますが、最後には誰もがあきらめていた行方不明の少女が無事救い出される展開にちょっとホッとします。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人のセックスを笑うな (河出文庫) 山崎ナオコーラ

2004年に作家としてデビューしたときの最初の小説です。この作品でいきなり芥川賞の候補にあがりましたが、残念ながらデビュー1作目での受賞とはならず、その後も作品が4回芥川賞候補となりながら、いずれも落選中です。

ナオコーラとはユニークなペンネームですが、単に本名の直子に好きなコーラをくっつけただけというシンプルでかつ書店に並ぶと目立ちやすいネーミングです。山崎直子じゃ、若い人向けにPRするには地味すぎますものね。

2008年には井口奈己監督で映画化されました。主演は松山ケンイチ、永作博美です。主人公は小説の設定では19歳ですが、松山ケンイチは当時23歳ですから、そう無理はなかったのでしょうね。

主人公の男性は19歳の絵画の専門学校の学生、ヒロインは既婚で39歳、その専門学校の教師で売れない画家という年の差がある恋愛小説です。

ま、題名が売れる要素を持っていて、中身はというと、、、ちょっと甘く切ない夢見る乙女の想像を文字にしてみたらこんなのができましたって感じかな。

いや決してつまらなくはないですよ。それなりに楽しめましたが、心に残るような話しかって言えば、携帯小説のように暇つぶしに読んですっとそのまま通り過ぎていくような小説でした。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人類資金7 (講談社文庫) 福井晴敏

たいへん長い小説で、2013年から書き下ろしで順次発刊されてきましたが、その最終巻(第7巻)です。2年前の2016年に一気に1~6巻まで読みましたが、最後の7巻だけ手に入れるのが遅れてしまいました。

2月前半の読書と感想、書評 2016/2/17(水)
「人類資金 (講談社文庫) 1・2・3・4・5・6巻 福井晴敏」

1~6巻は200ページ程度の薄い文庫でしたが、この7巻だけはそれまでの3冊分以上の700ページを超えるやたらと分厚い文庫です。

また2013年には、阪本順治監督、佐藤浩市主演で映画も制作されていて、これで全巻読んだことでもあるので、機会があれば作品も見たいと思っています。

戦後すぐから噂が多くあったM資金をめぐる話しですが、何度も出ては消え、消えてはまた蘇るを繰り返してきました。

曰く、「フィリピンを占領したときに財宝を集めて日本へ送り隠されている」「フィリピンを奪還したアメリカのマッカーサー司令官が躍起になって探したが見つからなかった」「戦後の復興にこのM資金が密かに使われた」などなど。

この小説では、そのM資金を管理、運用する日本とアメリカの財団が、それぞれの思惑と、そろそろ表に出して人類に役立てようとする日本人と、それを阻止するアメリカ人、M資金詐欺を糧としている詐欺師、遠巻きに財産を保護する防衛省、裏の世界に通ずる日本最大の暴力団組織などが入り乱れての欺し合い、裏切り、血縁、清算、投資など多くの要素がぶち込まれています。

最終的にはこのM資金はタイトルにあるように、人類のために使われるべきとして、まずはアジアの最貧国と言われている国の通信インフラの構築と国民ひとりひとりが世界とつながるためのタブレットを配布するなどに使われることになります。

そうした壮大な物語で、読み終わった後には、ふぅと、大きなため息をつくことになります。

★★★

著者別読書感想(福井晴敏)

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噂 (新潮文庫) 荻原浩

2001年刊、2006年に文庫化された、1997年にデビューした著者の比較的初期の頃の作品です。

年齢が同年代と言うこともあり、作風が気に入り、好きな作家さんで、「オロロ畑でつかまえて」の頃から文庫化された小説はほとんど読んでいますが、この作品は漏れていました。

著者の作品には「なかよし小鳩組」などコミカルな作品も多いのですが、逆に若年性アルツハイマーを描いた「明日の記憶」などシリアスな小説も多くあります。

この小説は、売らんがために創出したクチコミで顧客の商品を売りたい広告会社の社員と、猟奇殺人を追う刑事が主人公のシリアスな小説です。

この本が書かれた当時は、まだネットの普及もそれほどではなく、ようやく携帯電話が高校生にも普及してきた時代ですが、いまのネット社会に普通にあるクチコミの拡散手法や欺瞞的なステルス・マーケティングのような話題がバンバン出てきて、先を見る目があるので驚きです。

10年ぐらい前に書かれた犯罪小説を読むと、どうしても内容に古さを感じてしまいますが、この小説ではそれが感じられず、よく考えられた小説です。

★★★

著者別読書感想(荻原浩)

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